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Database Center for Life Science Online Service
血 管 内皮 細 胞 は血 管 内表 面 を 被 う単 層 上 皮 細 胞 で あ り, 近 年, 組 織 培 養 法 が確 立 し, 多 方 面 か ら の研 究 が 進 み, 一 躍 脚 光 を 浴 び る よ うに な った 。 こ の細 胞 は線 溶 系 活性 化酵 素 で あ る プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ ーを 合 成 し, 血 液 中 に分 泌 す る細 胞 で あ るこ とか ら, 血 栓 症 との関 係 で活 性 化 因子 誘 導 物 質 の研 究 や, Database Center for Life Science Online Service が 行 なわ れ て きた 。 また 最 近, 1 Key word 合 成 され た ア クチ ベ ー タ ーの 生化 学 的 研 究 ウ ロキ ナ ーゼ と組 織 ア クチベ ー タ ー との比 較 研 究 が 行 な わ れ, 多 くの知 見 が得 られ て い る。 本 稿 で は, プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチベ ー タ ー の 基 礎 知 識 お よび 内皮 細 胞 と線 溶 系 との関 係 な どを, 筆 者 らの研 究 を含 め ま とめ てみ た。 度 の 日本 人 の 死亡 者 数 お よび 死亡 血 管 内 皮 細 胞 に 関 す る 生 化 学 的研 究 の 発 展 は, 1973 原 因 につ い ての 厚 生 省統 計 情報 部 の 調査 報 告 に よる と, は じめ に 年, Jaffe ら^<1,2)>に よる細 胞培 養 法 の 確 立 を嚆 矢 とす る。 死 亡 率 の 第1位 は悪 性新 生物 (malignant そ の後 の研 究成 果 に つ い て は 立 派 な 成 書 が あ り^<3)>, それ 23.9%を 1982年 占 め, 第2位 お よび 第3位 に脳 血 管 疾 患 lebrovasculardiseases) eases)の17.7%と neoplasms) の20.7%, で (ce に よる と, (1)内皮 細 胞 の成 長 因 子 な どに よ る成 長 の調 節 心 疾 患 (heart dis 機 構, (2)血 液 凝 固 因 子の 活 性 化 調 節 の場 と して の内 皮 細 続 いて い る。 と ころ で, 第2位 お よ 胞 の役 割, (3)内皮 細 胞 内 で 合 成 され る蛋 白質 に 関 す る基 び 第3位 の疾 患 は い ずれ も血 管 内 で の障 害 に関 連 す る も 礎 的 研 究, (4) 結 合 組 織 形 成 に 関 係 あ る フ ィ ブ ロネ クチ の で あ り, そ の 死亡 率合 計 は38.4%と ン, コ ラー ゲ ン, トロ ンボ ス ポ ン ジ ンな ど の細 胞 機 能 と 物-い わ ゆ る癌-の な り, 悪 性 新 生 それ を は る か に上 回 って い る。 の関 連, (5)血 小 板 と内皮 細 胞 との 相 互 作 用 に か か わ る プ 脳 血 管 疾 患 お よび 心 疾 患 は, 脳 出血 ・脳 血 栓 ・脳 硬 ロス タ グラ ンジ ン誘 導 体, (6) 白血 球, T細 胞 と内 皮 細 胞 塞 ・心 不 全 お よび心 筋 硬 塞 で代 表 され る血 管 系 の疾 病 で との 関 係, (7) 内皮 細 胞 の病 理 学 的 側 面 と して, 血 管 損 傷 あ り, 現 在 そ の臨 床 医 学 的 研 究 のみ な らず, 基 礎 医 学, に対 す る 内皮 細 胞 の応 答 につ い て の 研 究, な どが 総 括 さ 生化 学 的 研 究 が 幅 広 く行 なわ れ てい る。 基 礎 的 研 究 を 大 れ て い る。 別 す る と, (1) 血 液 凝 固 因 子 お よび 線 溶 系 因 子 を 含 む 本 稿 で は, 内 皮 細 胞 の有 す る多 くの機 能 の 中 で, と く 血 漿 蛋 白質 の研 究, (2) 血 小 板 の粘 着, 凝 集, 放 出反 応 に 線 溶 系 の亢 進 とい う現 象 に焦 点 を あ て, プ ラス ミノ ゲ に 関す る研 究, そ れ に加え近 ン ア ク チベ ー タ ーを 中心 と し, そ の周 辺 を解 説 す る と と 血 管 内 皮 細 胞 に 関 す る 研 究 が著 し く進 歩 して もに, 筆 者 ら の研 究 室 で 得 られ た 研 究 成 果 を概 説 す る。 年, (3) が 主 流 とされ て きた が, きた 。 これ は 止 血 あ るい は 血 栓 形 成 が, 一 連 の血 漿 蛋 白 と くに 興 味 あ る現 象 は, あ る種 の植 物 ス テ ロー ル-シ 質, 血 小 板 お よび 血 管 内 皮 細 胞 の三 者 の 微 妙 な相 互 作用 トステ ロ ール あ るい は フ コ ス テ ロー ル-が に よって 誘 起 され る現 象 で あ るか らで あ る。 胞 の プ ラ ス ミノ ゲ ン ア クチベ ー タ ー の合 成 お よび細 胞 外 Hiromi Hagiwara, ŽR 2-12-1) 152, Stimulative Motoyuki [Laboratory Shimonaka, of Biological Yuji Inada, Chemistry, 東 京工 業大 学 理 学 部 化学 科 生 物 化 学 教 室 Tokyo Institute of Technology, (〒152 Ookayama, 血 管 内皮 細 東 京 都 目黒 区 大 岡 Meguroku, Japan] Production of Plasminogen Activator in Endothelial Cells with Various 【プラス ミノ ゲ ン ア クチ ベ ー ター 】 【内皮 細 胞 】 【植 物 ス テ ロー ル 】 【線 溶】 Inducers including Phytosterol Tokyo 2 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 30 No. 1 (1985) 放 出 を誘 起 す る現 象 の発 見 で あ り, こ の現 象 が 各 種 血 栓 症 の 治 療 に 役 立 つ こ とを 夢 み て い る。 1. 血 管内皮細胞 血 管 内皮 細 胞 (vascular し た よ う に, 血 管 の3層 膜 : tunica media, endothelial cell) は 図1に の 膜 (外 膜 : tunica 内 膜 : tunica intima) externa, 示 中 の うち で血 液 と接 す る 内膜 を 構 成 して い る細 胞 で あ る。 血 管 内皮 細 胞 の 生 理 機 能 と して は 次 の2つ (1) 血液関門 (blood が よ く知 られ て い る^<3,4)>。 barrier)-血 液 と組 織 と の 間 の種 々 な物 質 の通 過 を調 節 す る。 (2) 抗血栓 面 板 の血 管 壁 (thromboresistant (コ ラ ー ゲ ン層) 線 溶 系 の恒 常 性 を保 つ surface)-血 小 へ の 粘 着 を 防 ぐ。 血 液 凝 固, (以 上 の は た ら き を 図2に 模式化 Database Center for Life Science Online Service した)。 抗 血 栓 面 の 形 成 に つ い て は, 胞 が 血 液 凝 固, 培 養 細 胞 を用 い て 内皮 細 線 溶 系 お よび血 小 板 な どに重 要 な役 割 を もつ 物 質 を合 成 分 泌 して い る こ とが判 明 した こ とで 明 ら か に な っ た 。 内 皮 細 胞 が 合 成 分 泌 して い る 物 質 を あ げ る と, 血 小 板 凝 集 を 防 止 し, タ サ イ ク リン (prostacyclin 血 管 を 拡 張 させ る プ ロス ; プ ロス タ グ ラ ン ジ ン I_2 : PGI_2)^<5,6)>,血 小 板 粘 着 と 出 血 時 間 に 関 与 す る 血 液 凝 固 第 VII因 子 抗 原 ラ ン ト因 子 (factor (von VIII antigen)^<1,7)>と フ ォ ン ・ビ ル ブ Willebrand 図1. ウ シ頸 動 脈 の顕 微 鏡 写 真 (ヘ マ トキ シ リソ-エ オ ジン 染 色) (a) (40倍) A : 内膜, B : 中膜, C : 外 膜 (b) (400倍) D : 内 皮 細 胞 (核), E : 基 底 膜, F : 中 膜 (矢 印 : 平 滑 筋 細 胞 (核))。 こ の染 色 法 で は 細 胞 の 核 が 染 色 さ れ る。 factor)^<8)>や 線 溶 系 を 活 性 化 さ せ る プ ラ ス ミ ノ ゲ ン ア ク チ ベ ー タ ー (plasminogen 固 第VIII因 子, フ ォ ン ・ビル ブ ラ ン ト因 子 に 関 して は, 最 activator)^<9,10)>な ど が あ る 。 プ ロ ス タ サ イ ク リ ン, 血 液 凝 近 のす ぐれ た 総 説 お よび 成 書 が あ る^<11∼15)>。 図2. 2 抗血栓面 としての内皮細胞のはた らき プラス ミノゲン活性化因子の血管内皮細胞での産生 3 プ ラ ス ミ ノ ゲ ンア ク チ ベ ー タ ー に は 組 織中 に 存 在 す る 組 織 ア クチ ベ ー ター (tissue activator) す る ウ ロ キ ナ ー ゼ (urokinase) や, 理 的 に重 要 な 血 液 中 の プ ラス ミノゲ ンア クチ ベ ー タ ー は, 血 管 内 皮 細 胞 が 合 成 し, 分 泌 し た も の で あ る の で, 血 管 内 皮 細 胞 の 培 養 は これ ら の 基 礎 研 究 と し て, きわ め ら^<1,2)>に よ り, ヒ ト臍 帯 静 脈 内 皮 細 胞 の 培 養 が 行 な わ れ て 以 来, 各 種血 管 内 皮 細胞 が培 養 され て き た が^<16∼22)>, そ れ ぞ れ, そ の培 養 の方 法 が 異 な る。 本 稿 で は そ の 一 例 と し て, 筆 者 ら の 行 な っ た ウ シ頸 動 脈 内 Database Center for Life Science Online Service 線 溶 系 は 生 体 が 有 す る 防 御 機 構 の1つ ラ ス ミ ノ ゲ ン (Plasminogen) (bovine carotid プ ラ ス ミ ノ ゲ ン は 分 子 量93,000, す る 糖 蛋 artery) は 屠 殺 場 よ り新 ク リー ン ベ ン チ 内 で 血 管 を 切 り開 き, メ 561 の 結 合 が 切 断 さ れ, ペ ニ シ リ ン (penicillin), マ イ シ ン (streptomycin) minimum 50μg/ml essential medium) る 。95%空 37℃ 酸 ガ ス, 培 養 を 行 な う 。 そ の 結 果, 示 す よ う に, ス ト レプ ト に 分 散 さ せ, (9cm^2) 3aに 50 を 含 む イ ー グル 最 小 必 須培 地 ー ニ ン グ プ ラ ス チ ッ ク ペ ト リ皿 気 ・5%炭 serum), 中 で浮 遊 コ さ せ の培 養 条件 で初 代 浮 遊 して い た 内皮 細胞 塊 は 図 ペ ト リ皿 に 付 着 し, 胞 の 増 殖 が 始 ま る 。 図3bは そ こか ら内皮 細 ペ ト リ皿 一 面 に 細 胞 が 増 殖 Arg Glu-plg Lys Glu-Pln ペ プ チ ドが 遊 離 し, N は プ ラ ス ミ ン に よ り, ま た Lys-Plg ノ ゲ ン ア ク チ ベ ー タ ー に よ り, いずれ も Glu-Plg 前 者 の 経 路 のほ によ っ て, い 。 ま た, Lys-Pln は2つ Glu-Plg→Lys-Plg→Lys-Pln, Glu-Pln→Lys-Pln は プ ラス ミ の 経 路, う が 後 者 に 比 べ て, に変 換 され る。 活 性 化 速 度 が大 き プ ラ ス ミ ノ ゲ ン 分 子 中 に は リ ジ ン お よ び ε- ア ミノ カ プ ロ ン酸 な ど と結 合 す る部 位 で 継 代 培 養 を 行 な い, ウシ 多 量 の細 胞 を得 る。 が 存 在 し, (Lysine-binding 合 す る 。 プ ラ ス ミ ノ ゲ ン 分 子 中 の Lysine-binding 植 え 継 ぎ を 行 な い, 他 は初 代 培 養 と同一 条 件 は 全 部 で5カ そ の 部 位 を 介 し て フ ィ ブ リ ン分 子 と 結 有 し, 他 の4カ 所 あ り, (a) (b) site 1つ は リ ジ ン に 対 し強 い 親 和 力 を 所 は 弱 い 親 和 力 を 有 す る^<27)>。Lys-Plg は フ ィ ブ リ ン分 子 上 のE部 図3. に変 す な お よ び Glu-Plg→ Lys-Pln %ト 替 え, N の プ ラ ス ミ ノ ゲ ン に 変 換 さ れ る (Lys-Plg)。 換 さ れ る 。 以 上 の よ うに, わ ち ま た, は プ ラ ス ミ ン に よ り限 定 分 解 を 受 け や す く, site) リ プ シ ン溶 液 で 分 散 さ せ, 560- ト リ プ シ ン様 の セ リ ン酵 し た 状 態 を 示 した も の で あ る 。 こ の 状 態 の 細 胞 を0.05 胎 児 血 清 だ け は10%に を有 素 で あ る プ ラ ス ミ ン に 変 換 さ れ る (Glu-Pln)。 末端 (fetal bovine 端 に Glu ク チ ベ ー タ ー に よ り プ ラ ス ミ ノ ゲ ン分 子 中 の 末 端 を 構 成 す る 分 子 量 約8,000の シ胎 児血 清 N末 白 質 で あ る (Glu-Plg)^<26)>。 プ ラ ス ミ ノ ゲ ンア ス で 内 表 面 か ら 内 皮 細 胞 だ け を 削 り取 る 。 得 ら れ た 内 皮 (Eagle's プ を プ ラ ス ミ ン (plasmin) 細 胞 塊 を20%ウ unit/ml であ 血 管 の 損 傷 部 な ど に 生 じ た フ ィ ブ リ ン塊 を 溶 解 す る^<25)>。 Val 皮 細 胞 の 培 養 法 に つ い て 述 べ る^<23,24)>。 鮮 な も の を 得, 血 液 凝 固, に 変 換 さ せ る 酵 素 で あ る 。 生 じた プ ラ ス ミ ン は 選 択 的 に に Jaffe ウ シ頸 動 脈 プ ラ ス ミ ノ ゲ ン ・プ ラ ス ミ ン 変 換 り, 本 稿 で 述 べ る プ ラ ス ミ ノ ゲ ン ア ク チ ベ ー タ ー は, て 重 要 で あ る。 1973年 II. 尿 中 に存 在 な ど が 知 ら れ て い る 。生 位 と 高 い 親 和 力 で, Glu-Plg は ペ トリ皿に付着 した ウシ頸動脈 内皮細胞塊か らの内皮細胞 の増殖 (初代培 養) 継代培養を行 なった血管内皮細胞 の16回 植 え継 ぎを行なったあ との顕微 鏡写真 3 4 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 30 No. 1 (1985) 図4. 線 溶 系 の 主 要 機 構^<27∼29)> → : 酵 素 反 応, 【tautomer】 結合を : 表 わ し, 線 の 太 さ が 親 和 力 の 強 さ を 示 して い る 。 Database Center for Life Science Online Service フ ィブ リ ン分 子 上 のD部 位 と低 い親 和 力 で そ れ ぞ れ 結 合 る^<34)>。 して お り, 結 合 す る プ ラス ミノ ゲ ンの 数 は フ ィ ブ リン1 プ ラ ス ミノ ゲ ン ア クチ ベ ー ター に 関 す る 研 究 は, ヒ ト 分 子 に対 し, E部 位 お よびD部 位 そ れ ぞ れ2個 の 合 計4 床 か ら得 られ る ウ ロキ ナ ー ゼ たつ い て, さ か ん に 行 な わ 個 で あ る と考 え られ て い る^<28,29)>。 れ た^<35,36)>。 そ れ は, そ の単 離 精 製 が比 較 的 簡 便 で, 均 一 血 液 内 に は, プ ラス ミンに対 して 特 異 的 に 結 合 し, そ な もの が 大量 に 得 られ るた め で あ る 。 ウ ロキ ナ ーゼ は 分 の酵 素 機 能 を消 失 させ る蛋 白質 が存 在 す る。 そ の阻 害 子 量54,000と31,500の2種 蛋 白 質 と して 現 在 ま で, α_2-プラス ミンイ ン ヒ ビ タ ー が, 後 者 は 前 者 の 会 解 産物 で あ る と考 え られ て い る。 (α_2-PI), α_2-マク ロ グ ロ ブ リン, ヘ パ リン ・ア ンチ トロ ンビ ンIII複合 体 な どが報 告 さ れ て い る。 これ らの 阻 害 蛋 白質 の 中 で最 も効 果 的 に プ ラス ミン活 性 を 阻 害 す る もの 類 の もの が知 られ て い る 表1に 各 種 組 織 か ら 単 離 精 製 さ れ た組 織 ア クチ ベ ー タ ー とそ の 分 子 量 を 示 す^<37∼46)>。 と くに, ヒ ト メ ラ ノー マ 細 胞 の組 織 ア ク チベ ー タ ーの 研 究 で は, Pennica ら^<47)> は α_2-PIであ り, プ ラス ミン と化 学量 論 的 に 結 合 し阻 害 が メ ラ ノー マ 細 胞 か ら 組 織 ア クチベ ー タ ー に 対 す る す るだ け で な く, プ ラス ミノ ゲ ンの フ ィ ブ リン mRNA の吸着 を得, 遺 伝 子工 学 的 手 法 を 用 い て ア ミノ酸 配 列 な どを 明 らか に した (図5)。 を も 阻害 す る。 メ ラ ノ ーマ 細 胞 の 組織 ア クチベ ー タ ーは 単 鎖 の糖 蛋 白質 で あ り, 530個 の ア ミノ III. 酸 残 基 で構 成 きれ て い る。 そ の中 で Arg 3-SeR 4と プ ラ ス ミ ノゲ ンア ク チ ベ ー タ ー プラス ミノ ゲ ン ア ク チベ ー タ ーは, 単 一 な も ので は な い。 組 織 に 存 在 す る組 織 ア クチ ベ ー タ ー, 血 管 壁 か ら分 泌 され る血 管 内皮 ア クチベ ー タ ー (vascular activator), 尿 中 に 存 在 す る ウ ロキ ナ ー ゼな どが あ り, いず れ も蛋 白 分 解 酵 素 で あ る。 また, ス ト レプ トキ ナ ーゼ (streptoki nase)や ス タ フ ィ ロキ ナ ーゼ (staphylokinase) の よう に, 微 生 物 が 産 生 す る蛋 白分 解 酵 素 で な い ア クチ ベ ー タ ー も存 在 す る。 また, 血 漿 中 の血 液 凝 固 第XII因子^<30,31)>と プ レカ リク レイ ン^<32)>に 依 存 した プ ラ ス ミノゲ ンの活 性 化 機 構 が報 告 さ れ て い る。す な わ ち, 活 性 化 第XII因子 は 直 接 プ ラス ミノ ゲ ンを 活 性化 す る こ とは な い が, プ レ カ リ ク レイ ンを 活 性型 カ リク レイ ンに 変 換 す る。 この カ リク レイ ンは プ ラス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー ター 活 性 を 有 して お り^<33)>, プ ラ ス ミノ ゲ ンを 活 性 化 す る。 さ らに, 高分 子量 キ ニ ノ ゲ ンが 線溶 活 性 化 に 関与 す る こ と も知 ら れ て い 4 表1. 各 種 器 官 の プ ラス ミノ ゲン 活 性 化 因子 Arg Database Center for Life Science Online Service プラス ミノゲン活性化因子 の血管内皮細胞 での産生 図5. 5 ヒ ト組 織 ア ク チ ベー タ ー の 構 造^<47,48)> ヒ ト組 織 ア クチ ベ ー ター は ア ミノ酸 残 基 数530で あ り, → の 部 分 が 容 易 に 開 裂 し, 鎖になる。ギザギザの部分には 糖 が結 合す る と考 え られ る 。 278-Ile 279 で 限 定 分 解 が 容 易 に起 こ り, ジ ス ル フ ィ ド ン親 和 性 が 強 く, フ ィ ブ リノ ゲ ンー フ ィ ブ リ ン変 換 に際 で 結 合 した2本 鎖 に な る こ とが 知 ら れ て い る^<48)>。Rij して フ ィブ リ ンに 吸着 し, フ ィ ブ リン表 面 で 阻 害 因子 な ken^<49)>は, 分 子 量72,000, どか ら の影 響 を受 け ず に 効 果 的 に プ ラ ス ミノ ゲ ンー プ ラ ジス ル フ ィ ドに よ り結 合 した 2本 鎖 の ア クチ ベ ー タ ーを メラ ノ ー マ細 胞 か ら精 製 し, ス ミ ン変 換 を行 な い, フ ィブ リン分 解 を 行 な う。 これ に 軽 鎖側 に活 性 部 位 を 構 成 す る セ リ ン残 基 の存 在 を報 告 し 対 して ウ ロキ ナ ー ゼ は, フ ィ ブ リンに 対 す る親 和 性 が 低 ている。 く, フ ィブ リ ンの存 在 に 関 係 な く プ ラ ス ミノ ゲ ンを 活 性 各 種 プ ラス ミノ ゲ ン ア クチベ ー タ ーに 対 す る抗 体 を と 化 す る^<53)>。 組 織 ア クチ ベ ー タ ー の プ ラス ミノ ゲ ン活 性 化 り, 免 疫 学 的 に比 較 検 討 す る と, 子 宮 組 織 や ヒ トメラ ノ に お い て は, フ ィブ リンが 存在 す る場 合 と存 在 し ない 場 ー マ細 胞 な ど, 組 織 ア クチ ベ ー タ ーに 対 す る抗 体 と ウ ロ 合 とで は, そ の活 性 化 速 度 は著 し く異 な り, ミカ エ リス キ ナ ー ゼ に対 す る抗 体 の2つ に 分 類 され る。 そ れ ぞ れ の 定 数 で 前 老 は後 者 の100倍 程 度 低 くな る^<51∼53)>。 抗 体 に対 応 して, ア ク チベ ー タ ーは 組 織 ア クチベ ー タ ー 血 管 内 皮 細 胞 か ら血 液 中 に放 出 され る プ ラス ミノ ゲ ン 型 と ウ ロキ ナ ーゼ 型 に 分 類 され る^<50)>。 組 織 ア クチベ ー タ ア クチ ベ ー タ ー は, 血 栓 溶 解 とい う役 割上, 最 も重 要 と ー と ウ ロキ ナ ーゼ は どち ら も ジ イ ソプ ロ ピル フ ル オ ロリ ン酸 (DFP) で活 性 が阻 害 され る セ リ ン酵 素 で あ るが, 思 わ れ る。 研 究 の初 期 の段 階 にお い て Aoki^<43)>,Binder ら^<44)>は ヒ ト下 肢血 管 を 灌 流 す る こ とに よ り, 血 管壁 か ら 両 者 の プ ラ ス ミノ ゲ ンを 活 性 化 す る機 構 は 図6に 示 す よ 浸 み 出 して くる ア クチ ベ ー タ ー を分 離 ・精 製 し, 分 子 量 うに異 な る。 す な わ ち, 組 織 ア クチ ベ ー タ ー は フ ィブ リ 80,000^<43)>あ る い は67,000∼75,000^<44)>の も の を そ れ ぞ れ 1. 組 織 ア クチ ベ ー タ ー+フ 2. 組 織 ア クチ ベ ー タ ー ・フ ィ ブ リン複 合 体+プ ラス ミノ ゲン ウ ロキ ナ ー ゼ+プ ラ ス ミ ノゲン → プ ラ ス ミン → 線 溶 図6. ィブ リン → 組 織 ア クチ ベ ー タ ー ・フ ィブ リン複 合 体 → プ ラス ミン →線溶 組 織 ア クチ ベ ー タ ー と ウ ロキ ナ ー ゼ の プ ラ ス ミ ノゲン 活 性 化 機 構 5 6 蛋 白 質 核 酸 酵 素 得 た 。 そ の後, 培 養 血 管 内皮 細 胞 か らプ ラス ミノ ゲ ンア Vol. 30 表2. No. 1 (1985) プ ラス ミ ノゲン 活性 化 因子 分 泌 に 影響 す る物 質 クチベ ー タ ーが 培 養 液 に分 泌 され る こ とが 明 ら か に な り^<54)>, 血 管 内 に お い て は, 内皮 細 胞 が ア クチ ベ ー タ ー を 絶 えず 血 液 中 に分 泌 して い る と考 え られ る よ う に な っ た 。Levin 60,000の ら^<59)>は 培 養 ヒ ト臍帯 静 脈 内皮 細 胞 に分 子 量 組 織 ア クヂ ベ ー タ ー を見 い だ して い るが, Bo oyseら^<46)>はウ ロ キ ナ ー ゼ型 の ア クチ ベ ー タ ー も存 在 し て い る と報 告 して い るる。 ま た, Levin ら^<10)>は 培 養 ウ シ大 動脈 内皮 細 胞 か ら分 子 量74,000と100,000の チ ベー タ ー型 と, 52,000の 組織 ア ク ウ ロキ ナ ー ゼ型 の ア クチ ベ ー タ ーが 分 泌 され る と報 告 して い る。 筆者 ら^<55)>も , 培養 ウシ頸 動 脈 内皮 細 胞 に2つ の 型 の ア クチ ベ ー ター の存 在 を 確 か め た。 血 液 中 に 存 在 す る ウ ロキ ナー ゼ型 の ア クチ ベ ー タ ー Database Center for Life Science Online Service と, 尿 中か ら単 離 され た ウ ロキ ナ ー ゼ が 同一 の もの で あ るか 否 か とい う問 題 に 関 して, 最 近 Booyse ら^<56)>は, ヒ ト臍帯 静 脈 内皮 細 胞 か ら得 た ウ ロキ ナ ー ゼ 型 の ア クチ ベ ー タ ー と ヒ トウ ロキ ナ ー ゼ を 用 い て , SDSゲ ル 電気 泳 動, ペ プ チ ドマ ッ プな どに よ り検 討 した 結 果, 両 者 の 識 別 が不 可能 で あ る と報 告 して い る。 作 動性 物 質 また は トロ ン ビ ン (thrombin)^<71)> を 経 口あ る 血 管 内皮 細 胞 は プ ラ ス ミノ ゲ ン ア クチ ベ ー タ ーを 合 成 す る の み な らず, 分 子 量50,000前 後 の 阻 害 因 子 を も合 い は 血 管 内へ 投 与 す る と, 血 管 内 の 線 溶 系 活 性, す な わ ち プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ ー量 が 上 昇 す る こ とが 知 成 す る^<17,19,54,57∼62)>。Loskutoff^<61,62)> の報 告 に よれ ば, 内 皮 られ て い る。た と えば, バ ゾプ レ ッシ ン2∼10μgの 細 胞 で 合 成 され る阻 害 因 子 の量 は 同細 胞 の合 成 す る全 蛋 中 へ の投 与 に よ って, 血 管 内 皮 細 胞 に 貯 わ え られ て い た 白質 の2∼12%に ア クチベ ー タ ー は放 出 され, 血 中 の線 溶 系 が亢 進 す る。 も達 す る。 さ らに, こ の阻 害 因 子 は 血液 素 な ど) に対 そ の後, 内皮 細 胞 の培 養 が 可 能 と な っ てか らは, 培 養 し安 定 な 蛋 白質 で あ り, 組 織 ア クチ ベ ー タ ー型 とウ ロキ 液 中 に種 々 の物 質 を溶 か し, 内皮 細 胞 よ り合 成 あ るい は ナ ーゼ 型 の 両 ア クチ ベ ー タ ー の 機 能 を 阻害 す る。 しか 分 泌 され る プ ラス ミノ ゲ ンア クチベ ー タ ー量 の増 減 を 調 し, こ の阻 害 因 子 の 生理 的役 割 お よび 阻 害機 構 は ま だ 明 べ る研 究 が行 なわ れ る よ うに な った 。 た とえ ば, ス テ ロ 確 で ない 。 イ ドホ ル モ ンの培 養 液 へ の添 加 に よ り, 培 養 内皮 細 胞 か 熱, pH, 変 性 剤 (4Mグ ア ニ ジ ン, 6M尿 らの ア クチ ベ ー タ ー分 泌 の抑 制 が 報 告 され^<72)>, また, IV. プ ラ ス ミ ノ ゲ ン ア ク チ ベ ー ター 誘 起 物 質 こ の 現 象 とは反 対 に, ヒ ト培 養 癌 細 胞 で は ス テ ロイ ドホ ル モ ンの エ ス トラ ジ オ ール な どに よ り, ア クチ ベ ー タ ーの 生 体 内 で の血 液 凝 固, 線 溶 系 の調 節 機 構 の解 明 お よび 分 泌 が 促 進 す る と の報 告 も あ る^<73)>。 そ の他, 培 養 内 皮 細 血 栓 症 の 予 防 と治 療 とい う2つ の 目的 か ら, 血 管 内 皮 細 胞 に エ タ ノ ー ルを 終 濃 度1%程 胞 内 プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ ー の合 成 あ るい は 細 胞 ー タ ー の分 泌 が亢 進 され る^<74)>。Loskutoff ら^<70)>は 培養内 度 添 加 す る と, ア クチ ベ 外 へ の分 泌 を亢 進 また は抑 制 させ る物 質 の探 索 が 多 くの 皮 細 胞 に トロ ンビ ンを 加 え る こ とに よ りア クチベ ー タ ー 研 究 者 に よ っ て行 なわ れ て い る。 そ の結 果 は表2に 示 さ の合 成 と分 泌 が抑 制 され る と報 告 して い るが, れ てい るが^<63∼77)>, そ の 他, ス トレス, 運 動, 血 管 の圧 迫 ンの フ ィ ブ リノゲ ンー フ ィブ リ ン変 換 に よ り血 栓 を 形 成 な ど に よる線 溶 系 の亢 進 も プ ラス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ す る とい う本来 の 性質 と考 え あわ せ る と, た いへ ん興 味 ーに よる こ とが知 られ て い る。 表2に 示 した よ うに, ス 深 い 。 しか し, 先 に 述 べ た よ うに^<71)>, トロ ンビン が 血 管 トロ ン ビ タ ノ ゾ ロー ル^<63)>, メチ ル ア ン ドロス テ ンジ オ ー ル な ど^<65)> 内 の 線 溶 活 性 を亢 進 させ る とい う報 告 もあ り, 培 養 内皮 の ス テ ロイ ド化 合 物, バ ゾプ レ ッシ ン(vasopressin) とそ 細 胞 とい う単 一 系 を 用 い た場 合 と, 血 管 内 とい う全 体系 の誘 導 体 や ア ドレナ リ ン (adrenaline) で の場 合 で, 6 な ど^<66∼68)>の 血管 トロ ンビ ンが 同 じ作 用 を す る とは 一 概 に 言 7 プ ラス ミノゲン活性化因子の血管内皮細胞での産生 表3. え ない こ とが わ か る。 また, これ ら の誘 起 物 質 が ど の よ うに細 胞 に 作 用 し, ア クチベ ー タ ーを 放 出す るか につ い ス テ ロ イ ドに よる ウシ 血 管 内皮 細 胞 の プ ラ ス ミノ ゲン ア ク チ ベ ー ター の 産 生 ては まだ 明確 で ない 。 筆 者 ら は, あ る種 の植 物 ス テ ロー ル の培 養 内皮 細 胞 へ の添 加 に よっ て, ア クチベ ー タ ー の 合 成 お よび 分 泌 が亢 進 され る現 象 を観 察 した^<24,55)>。 次 に, これ ら の研 究 につ い て 述 べ る。 V. シ トス テ ロ ー ル お よ びフ コ ス テ ロ ー ル に よ るプ ラス ミノゲ ンア ク チ ベ ー ター の 誘 導 実 験 に使 用 した ス テ ロイ ドの構 造 を表3に 示 す 。 この 中 で コ レス テ ロー ル の24位 に エ チ ル基 の 導 入 さ れ た シ トズ テ ロー ル (sitosterol)^<78∼81)> は 高等 植 物 の緑 葉 に 含 ま れ, 同 じ く24位 に エ チ リデ ン基 の導 入 さ れた フ コス テ Database Center for Life Science Online Service ロ ール (fucosterol)^<82)> は 褐 藻 に 含 まれ る。これ ら2種 の ステ ロー ル は, 培 養 内皮 細 胞 の プ ラス ミノゲ ンア クチ ベ ー タ ーの 合 成 と分 泌 を亢 進 させ た 。 ステ ロー ル の 効果 を み る た め の 実験 方 法 は, 図7に 示 す よ うに, ま ず 培 養 内 皮 細 胞 (10∼16 回植 え継 ぎ を 行 な った もの) の培 養 液 に ステ ロイ ドを添 加 し, 1世 代 培 養 を 行 な う。 細 胞 が ペ ト リ皿 一 面 に増 殖 した あ と, ステ ロイ ドを 含 む 培 養 液 を 取 り除 き, 細 胞 を ステ ロイ ドと血 清 を 含 まな い 培 養 液 で 洗 浄 し, さ らに 同 じ培 養 液 を 加 え て保 温 を 始 め る。 必 要 な 時 間 ご とに 培 養 液 を 抜 き出 し, 細 胞 か ら分 泌 され た プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチベ ー タ ー量 を 測 定 す る。一 方, 0.5% Triton X-100を 含む培養液を用 い て細 胞 の抽 出液 を得, 細 胞 内 に存 在 す る プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー ター量 を測 定 す る。 プ ラス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ ー量 を測 定す る方 法 に は 合 成 基質 (S-2251な 図7. ど) を用 い る方 法^<52)>, フ ィ ブ リン平 板法 (fibrin plate method)^<83,84)>, ユ ー グ ロ ブ リ ン の 溶 解 時間 を調 べ る方 法 (euglobulin lysis time method)^<84)>, [^<125>I]フ ィ ブ リ ン を 用 い る 方 法^<54,70)>,お よ び 筆 者 ら の 考 ス テ ロール 処 理 した 細 胞 内 外 の プ ラ ス ミノ ゲン ア ク チ ベ ー タ ー を 含 む 試 料 の調 製 法^<24)> 7 8 蛋 白 質 Database Center for Life Science Online Service 図8. 案 した フ ィ ブ リン懸 濁 液 法 核 酸 酵 素 フ ィ ブ リリ懸 濁 液 法 の操 作 法 (a) Vol. 30 No. 1 と ウ ロキ ナ ーゼ を用 い た 標 準 曲線 (b)^<24)> (fibrin suspension method)^<85∼87)> 表3は, な どが あ る。 フ ィブ リ ン懸 濁 液 法 は (図8a), プ ラス ミンの 天 然 基 質 で あ る フ ィブ リン単 量 体 の会 合 体 を 超 音 波 破 砕 し, 均 一 な フ ィブ リ ン粒 子 の溶 液 を 得 る。 これ を基 質 と して プ ラ ス ミノ ゲ ン存 在 下 で 内皮 細 胞 抽 出 液 または 培 養 液 を 加 え, 37℃ で保 温 し, フ ィブ リ ンの分 解 に よる濁 度 の減 少 を 測 定 す る (図8b)。 プ ラス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ ー 量 は, ウ ロキ ナ ーゼ を 用 い, 濁度 が20 %減 少 した 時 間 を ウ ロキ ナ ー ゼ 国 際 単 位 (IU) ロ ッ トし, 検 量 線 を 作 製 し, ウ ロキ ナ ー ゼIUに に対 しプ 換算 し た。 各 種 ス テ ロ イ ドを 終 濃 度25μMに に 培 養 液 に 添 加 し, 8時 間 保 温 後, ク チ ベ ー タ ー 量 を 測 定 し, 対 照 の 活 性 を1.00と な るよ う 細 胞 か ら分 泌 した ア ス テ ロ イ ドを 添 加 しな か っ た した 場 合 の相 対 活 性 を 表 わ した も の で あ る 。 動 物 中 に 存 在 す る ス テ ロ ー ル で あ る コ レス テ ロー ル (cholesterol) は 対 照 と変 わ り な く, rone)や や 側 鎖 の長 さ の異 な る ステ ロイ ド ま た, テ ス トス テ ロ ン エ ス ト ラ ジ オ ー ル (estradiol) (testoste な ど の性 ステ ロ イ ドホ ル モ ン で は 抑 制 の 傾 向 さ え 見 ら れ た 。 こ れ に 対 し て フコ ス テ ロ ー ル と シ トス テ ロ ー ルは, ア ク チベー ター の分 泌 を 飛 躍 的 に促 進 させ た 。 図9と 図9. (1985) 図10は シ トス テ ロ ー ル 処 理 を した 細 胞 か ら の ス テ ロ イ ド処 理 した 細 胞 か ら の ア ク チ ベ ー タ ー 分 泌 の経 時 変 化^<24)> (●) シ トス テ ロー ル 処 理, (○) 対 照, (▲) コ レス テ ロ ー ル処 理, (△) アン ドロス テン 処 理 。 ス テ ロイ ドの 終 濃 度 は25μMと 8 した 。 図10. シ トス テ ロール 各 濃 度 に お け る内 皮 細 胞 の プ ラ ス ミノ ゲン ア クチ ベ ー タ ー分 泌 量 の変 化^<24)> プラス ミノゲン活性化因子の血管内皮細胞での産生 ア クチ ベ ー タ ー分 泌 の経 時 的 変 化 と, 添 加 す る シ トス テ 時 間 保 温 の間 に, シ トス テ ロー ル処 理 で は 対照 に 対 して ロー ル の濃 度 変 化 を, そ れ ぞ れ 観 察 した も の で あ る。 シ 約3倍, トス テ ロー ル処 理 を した 細 胞 か らは, 時 間 と と もに 指 数 ー活 性 の新 た な 増 加 が 観 察 され た 。 こ れ に対 して, シ ク 的 に ア クチ ベ ー タ ー分 泌 が 高 ま り, 6時 間 後 に は 対 照 に ロヘ キ シ ミ ド処理 を 行 な うと, どの細 胞 で も新 た な ア ク 比べ て約3∼4倍 も分 泌 量 が 高 ま って い る。 また, シ ト ステ ロー ル を20∼50μMに な る よ う培 養 液 に 加 え る と, 細 胞 か らの ア クチ ベ ー タ ーの 分 泌 量 は 増 加 した 。 こ こ ま では 内皮 細 胞 か ら分 泌 され る プ ラ ス ミノ ゲ ンア Database Center for Life Science Online Service 9 フ コ ステ ロ ー ル処 理 で は 約7倍 の ア クチ ベー タ チ ベ ー ター 活 性 の増 加 は 観 察 され な い。 こ の こ とか ら, 両 ス テ ロー ル は 内皮 細 胞 の 蛋 白質 合 成 を刺 激 して い る と 思 わ れ る。 フ コス テ ロ ール と シ トス テ ロ ー ルそ の も のは, プ ラス クチ ベ ー タ ー量 の み を 測 定 して きた が, 次 に, 細胞 内 で ミノゲ ンを 活性 化 す る能 力 を もた ない し, プ ラス ミ ノゲ の ア クチ ベ ー タ ー量 が フ コ ス テ ロ ール と シ トステ ロー ル ンア クチ ベ ー ター に 作 用 し活 性 を 高 め る とい う作 用 も保 処 理 で ど の よ うに変 化 す るか に つ い て 述 べ る (表4)。 持 して い な い。 両 ス テ ロ ール で 内皮 細 胞 を処 理 す る と, 細胞 抽 出 液 の 次 に, この 内皮 細 胞 内 で 合 成 され た プ ラス ミノゲ ンア 0時 間 に お い て, す で に対 照 に 比 べ て ア クチ ベ ー ター を クチ ベ ー ター の 分 子量 を 調 べ る と 同時 に, そ の ア クチ ベ 多 量 に 貯 わ え て お り, さ らに8時 間 保 温後 の 細 胞 抽 出液 ー タ ー が組 織 ア クチ ベ ー タ ー型 か ウ ロキ ナ ー ゼ型 か い ず 中 のア クチベ ー ター量 は0時 間 の 値 とほ ぼ 等 しい もの で れ の種 類 に 属 す る か 調 べ た 。 分 子 量 は フ ィブ リ ン ・オ ー あ った が, 培 養 液 中 に は 多量 の ア クチ ベ ー ター が 分 泌 さ トグ ラ フ ィ ー (fibrin autography)^<10,88)> に よ り推 定 す る。 れ, 細 胞 内 外 の ア クチ ベ ー タ ーの 総和 は 対 照 と比 べ, は す な わ ち, Laemmli^<89)> の 条件 で 試 料 を ス ラ ブ電 気 泳 動 法 るか に 大 きい 。 この事 実 か ら, フ コス テ ロ ール あ る い は に よ り泳 動 させ た ゲル を, プ ラ ス ミノ ゲ ンを含 む フ ィブ シ トステ ロ ール で の 内皮 細胞 の処 理 は, ア クチ ベ ー タ ー リン寒 天 ゲル 上 に重 ね 合 わ せ, 37℃ で保 温 し, フ ィブ リ の 分 泌 だ け で な く, 合 成 を も亢 進 させ て い る こ とが 示 唆 ンが溶 解 した 位 置 か ら ア クチ ベ ー タ ー の分 子 量 を 測 定 し され た 。 これ を さ らに 明確 にす る た め に, 蛋 白質合 成 阻 た。 ま た, フ ィブ リン寒 天 ゲ ルに プ ラ ス ミノ ゲ ンだ け で 害 剤 で あ る シ ク ロヘ キ シ ミ ド (cycloheximide) を細 胞 な く, 組 織 ア クチ ベ ー ター あ るい は ウ ロキ ナ ーゼ の抗 体 に 加 え, ア クチ ベ ー タ ー量 に どの よ うな効 果 を お よぼす を添 加 す る と, それ ぞ れ 対 応 す る ア クチベ ー タ ーが 抗 体 か 検討 した (表5)。 シ ク ロヘ キ ジ ミ ド処 理 を行 なわ な か った 細胞 で は, 8 表4. 表5. ス テ ロイ ド処 理 を した 内皮 細 胞 内外 の プ ラ ス ミノ ゲン ア クチベ ー タ ー 量^<55)> 蛋 白 質 合 成 阻 害 剤 シ ク ロヘ キ シ ミ ドに よ る内 皮 細 胞 の プ ラス ミノゲ ン ア クチ ベ ー タ ー合 成 の 阻 害^<55)> 図11. フ ィ ブ リン ・オ ー トグ ラ フ ィー に よる細 胞 培 養 液 中 の プ ラス ミノ ゲン ア クチ ベ ー タ ー の 同 定^<55)> (a) A : 対 照 細 胞 の試 料, 細 胞 の 試 料, (b) C B : シ トス テ ロー ル処 理 : フ コ ス テ ロール 処 理 細 胞 の試 料。 シ トス テ ロール 処 理 細 胞 の 試 料 を 電気 泳 動 し, そ の ゲルをA : 対 照 フ ィブ リン 寒 天 ゲ ル, B : 抗 組 織 ア クチ ベ ー タ ー を 添 加 した フ ィブ リン寒 天 ゲル に 載 せ た と き の オ ー トグ ラム。 9 10 蛋 白 質 核 酸 酵 素 に よ って 中和 され, フ ィ ブ リン溶 解 は 観 察 され な い こ と そ の 結 果, ウ シ頸 動 脈 内 皮 細 胞 で は 図11に 55,000, No. 1 (1985) 本 稿 を ま とめ る に あた り貴 重 な 助 言 を い た だ い た 東 京 都 老 人 総 合 研 究 所 薬 理 研 究 室, 室 田誠 逸, 森 田 育 男, 昭 和大 学 薬 学 部 生 物 化 学 教 室, 中村 泰 治, 中谷 一泰, 東 京工 業 大学 理 学 部 化学 か ら, ア ク チベー タ ー の種 類 を 確 か めた 。 に, 分 子 量31,000, Vol. 30 示す よう 科, 池 川信 夫, 九 州大 学 医 学 部病 理 学 教 室, 田 中健 蔵, 居 石克 夫, 諸 先生 方 に 深 謝 い た します 。 81,000と130,000の4つ の プ ラ ス ミノ ゲ ンア クチ ベ ー タ ーが 観 察 され た 。 図11a のAは ス テ ロー ル処 理 を して い な い細 胞, Bは ロー ル処 理, 文 シ トステ Cは フ コス テ ロー ル処 理 を した 細 胞 の 培 養 液 を 調 べ た もの で あ るが, 両 ス テ ロ ール 処 理 に よ って (文献番号を太字に したものは 特に重要な文献である ことを示す) 1) Jaffe, 各 ア クチ ベ ー タ ー の活 性 が 高 ま って い る こ とが 観 察 され た 。 図11bのA, Bは と E. 2756 C. 2) 3) E. Database Center for Life Science Online Service 55,000の 活 性 の消 失 が観 察 さ れ た^<54)>。 ウシ頸 動 脈 内 皮 細 胞 で は, お もに 分 子 量55,000の ウ ロキ ナ ー ゼ型 の ア クチ ベ ー ター が 存 在 した 。ま た, 31,000の Nossel, 5) ア 6) クチ ベ ー タ ーが 分 解 され るた め で あ ろ う^<10)>。 以 上 の よ うに, 植 物 ステロー ル の フ コス テ ロー ル と シ 7) 8) L., W., Nachman, 2757-2764 Vogel, H. Cell, G., 93, Levin, E. 9) Johnson, A. Giddings, Fass, J.: J. J. Clin. D. N., A. B. B., 65, L., 299-312 Lewis, Proc. 762- 841-850 J. C., Natl. Bloom, Mann, K. Acad. K., D. Levin, J., 703, E. G., 631-636 15) 16) とす る計 画 が あ る 。 しか しな が ら, 組 織 ア ク チベ ー タ ー 17) ト由 来 の もの で あ った と して も抗 原 性 の発 現 の危 惧 に よ 18) 19) る。 そ れ に 対 し, シ トス テ ロー ル あ る い は フ コス テ ロー 20) ゲ ンア クチベ ー タ ー の合 成 お よび 細 胞 外 へ の分 泌 が亢 進 21) 22) L.: Bowie, USA., 74, E. Collen, G., D. Biochim. 113-115 Loskutoff, Rijken, D.: C., Bio (1982) D. J.: J. Cell Biol., (1982) 室 田 誠 逸 編 : プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン の 生 化 学-基 東京化学同人 (1982) 鹿取 信 ・山 本 尚 三 ・佐 藤 和 雄 : プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン, 講 談 社 サ イ エ ン テ ィ フ ィ ク (1978) 医学 社 作 用 を 有 す るた め, 組 織 プ ラス ミノゲ ンア クチ ベ ー タ ー G., Sci. 伊 藤 正 一 : 凝 固 ・線 溶 ・キ ニ ン, い とい う欠 点 や 一 次線 溶 の亢 進 に よる 出血 傾 向 な どの副 A. (1983) (1977) Bykowska, Levin, Jarvis, 29, 14) 10 J. 67, Invest., ーゼ が 使 用 され て い る。 しか し, そ の血 中滞 溜 時 間 が 短 医 薬 製 剤 に な る こ とが期 待 され る。 Am. Weksler, 室 田 誠 逸 : 生 化 学, され るな らば, 血 栓 の予 防 あ るい は治 療 に対 す る新 しい New Invest., 13) ル の血 中 投 与 に よ っ て, も し内皮 細 胞 内 で の プ ラス ミノ L.: J., Clin. 現 在, 血 栓 症 の治 療 には, お も に ウ ロキ ナ ま す ます血 栓 溶 解 に対 す る即 効 性 の医 薬 の開 発 が 望 まれ of Press, A. D. K.: R.: Res., 礎 と 実 験, 12) 待 で きな い 。 そ こで, 今 後 J. Pathobiology Academic Loskutoff, phys.Acta, 10•z 11) って, そ の安 全 性 は100%期 L.: (1978) J. C., J. W.: 94, を 遺 伝 子工 学 的 手 法 を 用 い て 生 産 し よ うと した 場 合, ヒ R. (1981) Loskutoff, 明 らか に な った 。 現 在, これ らス テ ロー ル を動 物 に投 与 を 用 い, ウ ロキ ナ ー ゼ の 代わ りに医 薬 と して使 用 し よ う 2745- (1973) Robertson, 802-848 G., 5702-5706 主 で あ るが, 少 量 の組 織 ア クチ ベ ー タ ー型 を 含む こ とが お わ りに C. G., 52, (1982) Path., E. す こ と, お よび そ の ア クチベ ー ター は ウ ロキ ナ ー ゼ型 が い る。 Becker, Invest., (1980) ゲ ンア クチベ ー タ ー の合 成 を亢 進 させ, そ の 分 泌 を 促 し, 線 溶 系 の亢 進 が起 こる か ど うか とい う問 題 が 残 って L. 52, H. T hromb. トス テ ロ ール は ウ シ血 管 内皮 細 胞 に作 用 し, プ ラ ス ミノ Hoyer, Thorgeirsson, 769 た り現 わ れ な か った りして い るが, これ は55,000の A., Tack-Goldman, 活性が現われ L., Clin. Endothelial York 4•z R. J. Invest., t he 消 失 した 。 ま た, 抗 ウ ロキ ナ ー ゼ 抗 体 で は31,000と Nachman, R.: (1973) Jaffe, Clin. 含 む も の (B) を 比較 した もの で, 抗 組 織 ア クチベ ー タ ー抗 体 で81 ,000と130,000の ア クチベ ー タ ー活 性 が A., Minick, フ ィブ リン寒 天 に 抗組 織 ア クチ ベ ー タ ー抗 体 (メ ラ ノ ー マ細 胞) を 含 まな い もの (A) 献 54, 1∼23 (1982) 127-139, 中外 (1979) Takahashi, H.: Blood & Vessel, 15, 111-127 (1984) Gospodarowicz, D., Moran, J., Braun, D., Birdwell, C.: Proc. Natl. Acad. Sci. 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