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蛋白質核酸酵素:植物2次代謝産物の分子多様性を創出するIII型

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蛋白質核酸酵素:植物2次代謝産物の分子多様性を創出するIII型
Review
植物2次 代謝産物の分子多様性を創出する
III型
ポリケタイ ド合成酵素の生合成工学
阿部郁朗
多様な化学構造 と生物 活性を示す植物 ポ リケタイ ドの基本骨格 を構 築する,カ ル コン合成酵 素
スーパー ファミ リーと総 称されるIII型ポ リケタイ ド合成酵素 に関す る研究 は,近 年 それ らの結
晶構 造が報告 され るなど,急 展 開を遂げつつ ある.本 稿 では,こ う した研究の動 向 とあわせ,
結 晶構造 に基づい て部位 特異的変異 を導入 して酵素機能 を改変 する可能性や,こ れ ら酵素 が示
す異例ともいえ る広範 な基質特異性 を利用 した非天然型化合物 ライブラ リーの 構築 について解
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説 する.
Key words III型 ポ リケタイ ド合成酵素
カル コン合 成酵素 スー パー フ ァミ リー
代謝産物 生合成工学
は じめに
植 物2次
れ て い る.
健 康 食 品 ブ ー ム で そ の 抗 が ん作 用 な どが 話 題 に な っ て
PKS酵
素 反 応 は,脂 肪 酸 生 合 成 の 場 合 と同 様 な,CoA
い る お 茶 や 赤 ワ イ ンの ポ リ フ ェ ノ ー ル,脂 肪 分 解 パ ワー
エ ス テ ル の 縮 合 に よ る 炭 素 鎖 伸 長 の 化 学 で あ る.PKS
の ラズ ベ リー ケ トン,抗 ア レル ギ ー 薬 の基 に な っ た ク ロ
は,分 子 進 化 的 に は脂 肪 酸 合 成 酵 素 と同 一 の起 源 を もつ
モ ン化 合 物,さ
も の と考 え られ て お り,複 数 の 機 能 ドメ イ ンが1本
らに大麻 の幻覚 発 現物 質 カ ンナ ビ ノ イ
のポ
ド,そ して お そ ら くア ロエ や ダ イ オ ウ な どの 薬 効 成 分 ア
リ ペ プチ ド鎖 に 連 続 し て存 在 す るI型(モ
ン トラ キ ノ ン類 に 至 る ま で,こ
個 々 の 機 能 を有 す る酵 素 サ ブ ユ ニ ッ トの 複 合 体 か らな る
な,実
れ ら一見 互 い に無 関係
に多 岐 に わ た る化 学 構 造 と生 物 活 性 を有 す る植 物
有 用2次
代 謝 産 物 の 基 本 骨 格 が,カ
(chalcone synthase;CHS)ス
ル コ ン合 成 酵 素
ー パ ー フ ァ ミ リー と総 称
II型(サ ブ ユ ニ ッ ト型),そ
に 分 類 さ れ る(図1).I型
タ ー ゼ(ketosynthase;KS)の
ジ ュ ー ル 型),
し て 上 述 し たIII型(CHS型)
やII型 のPKSは,ケ
ほ か に も,ア
トシ ン
シル キ ャ リ
さ れ る 一 連 のIII型 ポ リ ケ タ イ ド合 成 酵 素(polyketide
ア ー ・プ ロ テ イ ン(acyl carrier protein;ACP)な
synthase;PKS)に
ざ ま な機 能 を もつ ドメ イ ンや サ ブユ ニ ッ トか ら構 成 され
よ っ て 生 合 成 さ れ る こ とが,最
近に
な り しだ い に 明 らか に され つ つ あ る1∼3).III型PKSは
い
どさま
る長 大 で 複 雑 な酵 素 蛋 白 質複 合 体 で あ る.抗 生 物 質 と し
ず れ も,植 物 に 普 遍 的 に 存 在 す る フ ラ ボ ノ イ ドの 基 本
て 重 要 な マ ク ロ ライ ドや テ トラサ イ ク リ ンの 骨 格 を構築
骨 格 を構 築 す るCHSと
す る 放 線 菌 や 糸 状 菌 由 来 のI型
ア ミ ノ 酸 レベ ル で50∼70%程
やII型 のPKSに
つ いて
度 の 配 列 相 同性 を示 し,こ れ ま で に 多 くの 植 物 か ら200
は,コ
種 を こ え る 相 同 遺 伝 子 が 得 ら れ て い る.シ
ニ ッ トの 遺 伝 子 モ ジ ュ ー ル の 組 換 え な ど に よ る生 合 成 工
ナ(Arabidopsis thaliana),イ
ロイ ヌナ ズ
ネ(Oryza sativa)な
ど,ゲ
ノ ム 中 に 複 数 の遺 伝 子 コ ピー が 存 在 す る例 も多 い.し
し,各
か
遺 伝 子 が コ ー ドす る 蛋 白 質 が 実 際 に どの よ う な
ン ビナ トリア ル 生 合 成 の 概 念 に基 づ き,各 触 媒 ユ
学 の研 究 が 現 在 盛 ん に 行 な わ れ て い る4,5).こ れ に 対 し,
お もに 植 物 に特 異 的 に 存 在 す るIII型酵 素 は,KSの
構 成 さ れ る.縮 合 反 応 に は,脂 肪 酸 合 成 酵 素 が 必 要 とす
酵 素 機 能 を担 っ て い る の か,確 認 され た 例 は 限 られ て お
るACPや4'-ホ
り,酵 素 の 構 造 機 能 相 関 に つ い て は 今 後 の 研 究 が 待 た
酵 素 活 性 中 心 の シス テ イ ン残 基 がCoAエ
Ikuro
Abe,静
Engineered
岡 県 立 大 学 薬 学 部
biosynthesis
of plant
みで
ス ホ パ ン テ イ ン を ま っ た く要 求 せ ず,
ス テ ル か ら直
E-mail:[email protected]
polyketides
蛋 白質 核 酸 酵 素
Vol.48
No.16(2003)
2275
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図1
ポ リ ケ タ イ ド合 成 酵 素 の 反 応 様 式
(a)複 数 の 機 能 ドメ イ ン が1本
の ポ リ ペ プ チ ド鎖 に 連 続 し て 存 在 す るI型(モ
す る 酵 素 サブ ユ ニ ッ トの 複 合 体 か ら な るII型(サブ
ジ ュ ー ル 型)に よ る マ ク ロ ラ イ ドの 生 成,(b)個
ユ ニ ッ ト型)に よ る テ トラ サ イ ク リ ン の 生 成,(c)KSの
々 の機 能 を有
み で 構 成 さ れ るIII型(CHS型)に
よ る カ ル コ ン の 生 成.
KS;ketosynthase,ACP;acyl
carrier
protein,AT;acyltransferase,KR;ketoreductase,DH;dehydratase,ER;enoylre-
ductase,TE;thioesterase.
接 ア シ ル基 を 受 け取 っ て,ポ
リケ タイ ド鎖 の伸 長 を触 媒
CHSのX線
結 晶 構 造 解 析 が 報 告 さ れ る な ど,そ の 構 造 と
す る の が 特 徴 で あ る.巨 大 で 複 雑 なI型 やII型 のPKS
機 能 に 関 す る研 究 は急 展 開 を遂 げ つ つ あ る.本 稿 で は,
に 比 べ,分
最 近 の研 究 の 動 向 とあ わせ,結
子 量42∼44Kの
ー か らな るIII型PKSは
単 純 な蛋 白質 の ホモ ダ イマ
,大 腸 菌 に お い て も遺 伝 子 発 現
晶 構 造 に基 づ く部 位 特 異
的 変 異 導 入 に よ る酵 素 機 能 改 変 の 可 能性 や,こ
れ ら酵 素
可 能 な,比 較 的 安 定 で取 扱 い の容 易 な 酵 素 で あ る.PKS
が 示 す 異 例 と もい え る広 範 な 基 質 特 異 性 を利 用 し た非 天
酵 素 研 究 の 中心 的 課 題 と もい え る,基 質 の分 子 認 識 や 酵
然 型 新 規 化 合 物 ラ イ ブ ラ リー の 構 築 につ い て解 説 す る.
素 反 応 機 構,さ
ら に そ の 人 為 的 な 制 御 に よ る有 用 物 質 生
産 とい っ た 問 題 を考 え る う え で,き わ め て優 れ た モ デ ル
I.カ ル コン合 成酵 素 スー パー フ ァミ リー
シ ス テ ム と な りう る.
こ う し た 植 物 由 来III型PKS酵
素 に 関 し て は,近 年
多様 な構 造 と生物活性 を示す植物 ポ リケ タイ ドの生合
成 に お い て,そ
の 基 本 骨 格 を決
定 す る カ ル コ ン合 成 酵 素(CHS)
と ス チ ル ベ ン合 成 酵 素(stilbene
synthase;STS)は,そ
れ ぞ れ
1分 子 の ク マ ロ イ ルCoA(1a)を
ス タ ー タ ー と し て,3分
ロ ニ ルCoAに
子 のマ
由 来 す るC2単
を 順 次 縮 合 し た の ち,共
位
通 のテ
ト ラ ケ タ イ ド中 間 体 の 生 成 を 経
て,CHSで
は ク ラ イ ゼ ン縮 合
に よ り閉 環 して新 た な 芳 香 環 を
形 成 し4,2',4',6'-テ
トラ ヒ ド
ロ キ シ カ ル コ ン(ナ リ ン ゲ ニ ン
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カ ル コ ン)(2a)を,一
方,STS
で は 脱 炭 酸 を 伴 っ た ア ル ドー ル
縮 合 に よ り3,4',5-ト
リ ヒ ドロ
キ シ ス チ ル ベ ン(レ ス ベ ラ ト ロ
ー ル)(3a)を
ま た,精
生 成 す る(図2)2,3)
.
製 酵 素 を 用 い たin vitro
の 反 応 で は,主
生成物 であ るカ
ル コ ン や ス チ ル ベ ン 以 外 に も,
2分 子 あ る い は3分
ルCoAが
子 のマ ロニ
縮 合 した段 階 で酵 素
反 応 が 終 了 して 生 成 した もの と
考 え られ る,ビ ス ノ ル ヤ ン ゴ ニ ン
(bisnoryangonin;BNY)(4a)
や ク マ ロ イ ル トリ酢 酸 ラ ク ト ン
(p-coumaroyltriacetic
tone;CTAL)(5a)と
acid lacい っ たパ
イ ロ ン誘 導 体 が 副 生 成 物 と して
得 ら れ る6).カ
ル コ ンは フラボ
ノ イ ドの 生 合 成 前 駆 体 と し て 植
物 に 普 遍 的 に存 在 す る の に 対
し,ス
チ ル ベ ン は ブ ド ウ(Vitis
vinifera),ピ
hypo-gaea),マ
tris,Pinus
ー ナ ッ ツ(Arachis
ツ(Pinus
strobus)な
sylvesど,限
ら
図2
CHSスー パ ー フ ァミ リーを構
成 す るIII型ポ リケ タ イ ド合 成 酵 素 が
触 媒 するCoAエ
ステル の縮 合反 応
蛋 白質 核 酸 酵 素
Vol.48
No.16(2003)
2277
れ た 植 物 に よ り種 特 異 的 に 生 産 さ れ7),抗
オ リベ
ト ー ル 酸 合 成 酵 素(olivetolic
こ と に よ り フ ィ トア レ キ シ ン(植 物 生 体 防 御 物 質)と し て
OAS)10)は,ヘ
機 能 す る も の と 考 え ら れ て い る.ま
導 体 を,ま
ワ カ ワ(Piper
methysticum)(ポ
た,天
然 か ら は,カ
リネ シ ア で は そ の根 を興 奮
キ サ ノ イ ルCoAか
た,ホ
ッ プ(Humulus
ン合 成 酵 素(valerophenone
acidsynthase;
ら レゾ ル シ ノ ー ル誘
lupulus)の
バ レロ フ ェ ノ
synthase;VPS)11)は,イ
ソ
性 嗜 好 飲 料 と す る)の ス チ リ ル パ イ ロ ン 誘 導 体(カ
ヴァラ
バ レ リ ルCoAを
ク ト ン)1)や,ア
含 まれ
前 駆 体 と な る フ ロ ロ グ ル シ ノ ー ル 誘 導 体 を 生 産 す る.さ
マ チ ャ(Hydrangea
macrophylla)に
る セ コ イ リ ド イ ド誘 導;体6)の よ う に,BNYやCTALに
ら に,芳
由 来 す る 生 理 活 性2次
と し て,ガ
CHSやSTS以
代 謝 産 物 も 数 多 く 知 ら れ て い る.
外 に も,天
性 を 示 すIII型PKSが
合 成 酵 素(acridone
CoAの
来 の ア ク リ ドン
synthase;ACS)8)は,ク
マ ロ イ ル
代 わ り に ア ン ト ラ ニ ルCoAを
ウ(Hypericum
縮 合 す る.ま
androsaemum)由
酵 素(benzophenone
ス ター タ ー と して
た,オ
方,芳
hybrida)由
来 の4-ヒ
ドロキ
シ-6-メ チ ル-2-パ イ ロ ン(ト リ 酢 酸 ラ ク ト ン)合 成 酵 素(2pyrone
synthase;2-PS)12),ア
マ チ ャ(H.macrophylla)
由 来 の ク マ ロ イ ル ト リ 酢 酸 ラ ク ト ン 合 成 酵 素(CTAL
synthase;CTAS)6),そ
素(styrylpyrone
し て,ス
チ リ ルパ イ ロ ン合 成 酵
synthase;SPS)1)な
ど が 知 ら れ て い
来 の ベ ン ゾ フ ェ ノ ン合 成
CoAの
縮 合 数 に つ い て み て み る と,ほ
と ん どの 酵 素 が
CHSと
同 様 に3分
縮 合 し て テ トラ
ベ ン ゾ イ ル
の ベ ン ゾ フ ェ ノ ン は さ ら に代
子 の マ ロ ニ ルCoAを
ケ タ イ ド を 生 成 す る の に 対 し,2-PSやSPSで
子,ま
麻
た,後
BAS)13)は,1分
述 す る ダ イ オ ウ(Rheum
イ オ ウ 由来BAS.一
子 の マ ロ ニ ルCoAの
合 し てC6-C4骨
図3
植 物 由 来III型 ポ リケ タ イ ド合 成 酵 素 の ア ミ ノ 酸 配 列 の 比 較
M.s CHS:ア
ル フ ァル フ ァ由 来CHS,S.b
CHS:コ
ガネ バ ナ 由来CHS,A.h
ン ル ー ダ由 来ACS,R.pBAS:ダ
リ ケ タ イ ド鎖 の 長 さ を 決 定 す る マ ロ ニ ル
STS:ピ
連 のCHSスー
は2分
palmatum)由
ベ ン ザ ル ァ セ ト ン 合 成 酵 素(benzalacetone
香 環 を も た な い 脂 肪 酸 のCoA
sativa)の カ ン ナ ビ ノ イ ドの 生 合 成 に か か わ る
R.gACS:ヘ
ー ベ ラ(Gerbera
方,ポ
エ ス テ ル を ス タ ー タ ー と す る も の も 知 ら れ て お り,大
(Cannabis
香 環 の 代 わ り にα-パ イ ロ ン 環 を 形 成 す る 酵 素
る.一
ま ざ ま な 生 物 活 性 を 有 す る キ サ ン ト ン誘 導
体 に 変 換 さ れ る.一
ス ター ター と して ビー ル の 苦 味 成 分 の
トギ リ ソ
synthase;BPS)9)は
基 質 と す る が,こ
謝 さ れ て,さ
と え ば,
graveolens)由
3分 子 の マ ロ ニ ルCoAを
CoAを
然 か らは さまざ まな酵素 活
報 告 さ れ て い る(図2).た
薬 用 植 物 ヘ ン ル ー ダ(Ruta
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菌 活 性 を示 す
synthase;
み を脱 炭 酸 的 に縮
格 を も つ ジ ケ タ イ ド(6)を 生 成 す る.
ー ナ ッツ由 来STS,G.h2PS:ガ
ー ベ ラ 由来2-PS,
パー フ ァミ リー酵 素 は 互 い に50∼70%の
相 同性 を示
す が,そ の ア ミ ノ酸 配 列 か ら酵 素 機 能 を推 定 す る の は不 可 能 で あ る.酵 素活 性 中 心 を構 成 す る4つ の アミ ノ酸 残基(Cys164,Phe215,His
303,Asn336)の
2278
うち,BASの
蛋白質 核酸 酵素
み が 唯一 特 徴 的 にPhe215を
Vol.48
No.16(2003)
欠損 して い る.
来 の
上 述 し た 一 連 のCHSス
ーパ ー ファ ミリー酵素 につ い
て は,す で に ク ロ ー ニ ング が 報 告 さ れ て お り,ア
ミノ酸
度 の 相 同性 を示 す こ とが 明
は,CHSと
らか に され て い る(図3).し
か し,ポ ス トゲ ノ ム の 時 代
示 し,大
くの 関 連 酵 素 遺 伝 子 の 同 定 が 容 易 に は な っ
,い
くつ か の 全 長cDNAク
ー ン を 得 る こ と に 成 功 し た .こ
レベ ル で 互 い に50∼70%程
に あ っ て,多
の う ち1つ
ア ミ ノ 酸 レベ ル で60∼75%程
ロ
の ク ロー ン
度 の相 同性 を
腸 菌 で 遺 伝 子 発 現 さ せ た 組 換 え 酵 素 は,1分
の ク マ ロ イ ルCoAと1分
子 の マ ロ ニ ルCoAと
子
の脱炭酸
た もの の,活 性 部 位 の微 妙 な構 造 の 違 い で 基 質 や 生 成 物
的 縮 合 反 応 に よ りベ ン ザ ル ア セ ト ン(6)(ジ
の 特 異 性 が 大 き く変 化 す る こ とが 知 られ て お り,そ の た
単 一 生 成 物 と し て 与 え た13).こ
め ア ミ ノ酸 配 列 か ら酵 素 機 能 を推 定 す るの は不 可 能 で あ
は ダ イ オ ウ の 抗 炎 症 成 分 で あ る リ ン ド レ イ ン(図4)な
る の が 現 状 で あ る.こ
ど,フ
れ らIII型PKSは,ほ
ぼ同一 の ケ
ケ タ イ ド)を
の こ と か ら,本
ア セ ト ン 合 成 酵 素(BAS)で
るが,酵
ス ー パ ー フ ァ ミ リ ー に 属 す る 酵 素 の う ち で,1分
素 の構 造 機 能 相 関,と
マ ロニ ルCoA縮
くに ス ター ター基 質 や 伸
さ ら に ポ リケ タイ ド鎖 長 を決 定 す る
合 数 の 制 御 とい っ た 問 題 は 非 常 に 興 味
深 い もの が あ る.
CHS様III型PKS酵
ロ ニ ルCoAの
素 が 存 在 す る こ とが 明 らか に さ れ,
注 目 を集 め て い る(図2).こ
ト ン や,シ
あ る こ と が 判 明 し た.CHS
子 の マ
み を 縮 合 さ せ る も の と し て は,BASが
一 の 例 で あ る(図2)
.ま た,BASの
リ ー(Rubus ideaeus)果
と こ ろで 近 年,植 物 以 外 に も,放 線 菌 な どの 微 生 物 に,
ク ロー ン
ェ ニ ル ブ タ ノ イ ド生 合 成 の 鍵 酵 素 と な る ベ ンザ ル
ミス トリー に よ って 一 連 の ポ リケ タイ ド化 合 物 を生 産 す
長基 質の分子 認識
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ー ニ ング を試 みた ところ
唯
発 見 に よ り,ラ ズ ベ
実 の香 気 成 分 で あ る ラ ズ ベ リ ー ケ
ョ ウ ガ(Zingiber officinale)の
ウ コ ン(Curuma longa)の
ジ ン ゲ ロ ー ル,
ク ル ク ミ ン な ど,一
連 の フェ
れ ら微 生 物 の酵 素 は植 物 の
場 合 と は異 な り,た とえ ばStreptomyces griseus由 来 の酵
素(RppA)は,5分
て,1,3,6,8-テ
子 の マ ロ ニ ルCoAの
み を基 質 と し
トラ ヒ ドロ キ シ ナ フ タ レ ン(ペ ン タ ケ タ
イ ド)を 隼 成 し,こ の 放 線 菌 に お け る メ ラ ニ ン合 成 を担
う こ とが 判 明 して い る14).一 方,Amycolatopsis orienta
由 来 の 酵 素(DHPAS)は3,5-ジ
ヒ ドロ キ シ フ ェ ニ ル 酢 酸
(テ トラ ケ タ イ ド)を 生 成 す るが,こ
れ は さ ら に3,5-ジ
ヒ ドロ キ シ フ ェ ニ ル グ リ シ ン とい う変 形 ア ミノ 酸 に変 換
さ れ,バ
ン コ マ イ シ ンな どの 抗 生 物 質 の 生 合 成 にお い て
重 要 な 役 割 を 演 ず る こ と に な る15).こ れ ら微 生 物 酵 素
は,酵 素 活 性 中 心 を構 成 す る ア ミノ 酸 残 基 を含 む 領 域 を
除 い て,高
30%程
等 植 物 のCHSと
は全 体 の ア ミ ノ酸 レベ ル で
度 の相 同性 しか 示 さ な い.ま
た互 い の相 同性 も
低 い こ とか ら,そ れ ぞ れ が 異 な る ポ リ ケ タイ ドの 生 産 に
か か わ っ て い る 可 能 性 が 予 想 さ れ る.
筆 者 らの 研 究 室 で は,さ
ら な る新 規III型PKS酵
素を
求 め て,遺 伝 子 ク ロ ー ニ ン グ の試 み を続 け て い る.な か
で も潟 下,抗
菌,消 炎,鎮
静 な ど多 彩 な薬 効 で 知 られ る
代 表 的 な 薬 用 植 物 で あ る ダ イ オ ウ(Rhem
は,ク
ロモ ンや ナ フ タ レ ン を は じめ,ア
palmatm)
ン トラ キ ノ ン誘
導 体 な ど の ポ リケ タ イ ド化 合 物 を 豊 富 に産 生 し,し た が
っ て 植 物 に 普 遍 的 に 存 在 す るCHS以
PKS酵
素 遺 伝 子 の 存 在 が 予 想 さ れ る.そ
外 に も,複
数の
こで まず,CHS
ス ーパ ー フ ァ ミ リ ー酵 素 にお い て 保 存 さ れ て い る配 列 を
基 に設 計 し た 縮 重 入 りプ ラ イ マ ー を用 い て,PCRク
ロ
図4
ベ ンザル ア セ トン に 由来 す る こと が予 想 さ れる 植 物2
次 代謝産 物
蛋 白質 核 酸 酵 素
Vol.48
No.16(2003)
2279
ニ ル ブ タ ノ イ ド(図4)のC6-C4骨
III型PKSが
格 の 生 合 成 に,実 際 に
広 く関 与 す る 可 能 性 が 示 さ れ た.現 在,他
の ク ロ ー ンに つ い て も酵 素 機 能 を 検 討 中 で あ るが,最
III型PKSに
は 上 述 した よ う に,ナ
近
フ タ レ ン(ペ ン タ ケ タ
ま れ,隣 接 す るHis303と
たCys164の
の 水 素 結 合 に よ り安 定 化 さ れ
チ オ レー トア ニ オ ンが,こ
れ を求核 攻撃 し
て チ オ エ ス テ ル を 形 成 す る こ と に よ り反 応 が 開 始 さ れ る
(図5a).次
い で マ ロ ニ ルCoAの
脱 炭 酸 を伴 っ た ポ リケ
イ ド)な ど,カ ル コ ン以 外 の 骨 格 を構 築 す る酵 素 の 存 在
タ イ ド鎖 の 伸 長 反応 を3回
く り返 し(図5b∼e),最
終的
が 次 々 に 明 らか に さ れ て お り,ア ン トラ キ ノ ン(オ ク
に テ トラケ タ イ ド中 間 体 が ク ライ ゼ ン縮 合 に よ り閉 環,
タケ タ イ ド)な どの 骨 格 を構 築 す る新 しい タ イ プ の 酵 素
新 た に芳 香 環 を 形 成 して 反 応 が 終 了 す る(図5f).こ
の発 見 も待 望 され る と こ ろで あ る.
間,His303とAsn336は,マ
の
イ ナ ス に荷 電 した遷 移 状 態
中 間体 を安 定 化 す る こ と に よ り,マ ロ ニ ルCoAの
脱炭
酸 とそ の 結 果 生 じ る カ ル ボ ア ニ オ ンの 求 核 攻 撃 を促 進
II.ポ リケタイ ド合成酵素の構造と機能
し,一 方,活 性 中 心 の 入 り口 に位 置 す るPhe215は,マ
分 子 量42Kの
蛋 白質 のホモ ダイマ ーか らなる アル フ
ア ル フ ァ(Medicago sativa)由
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年 にNoelら
に よ り1.56Aの
が 報 告 さ れ て い る16).酵
来CHSに
結 晶構造 解析
素 の 活 性 中 心 は,4つ
酸 残 基(Cys164,Phe215,His303,Asn336)で
る 中 心 部 の 大 き な キ ャ ビ テ ィ に 存 在 し,ス
ク マ ロ イ ルCoAが
酵 素 活 性 中 心 を構 成 す る上 述 した4つ
の ア ミノ
は,CHS以
構 成 され
CHSス
タ ー ター 基 質
結 合 す る ポ ケ ッ ト と,マ
子 の 配 向性 を保 ち つ つ,ポ
リ ケ タ イ ド鎖
の 伸 長 反 応 に関 与 す る もの と考 え られ て い る17∼22).
つ い て は,1999
分 解 能 でX線
ロニ ルCoA分
外 のIII型PKSで
も 保 存 さ れ て お り,他 の
ー パ ー フ ァ ミ リ ー 酵 素 に お い て も同 様 な ケ ミス
ト リー に よ っ て,CoAエ
ス テル の縮合 お よび伸 長反 応
が 進 行 す る もの と予 想 さ れ る.た
ロ ニ ルCoA
の ア ミノ酸 残 基
と え ば,CHSと
共通
の 縮 合 に よ り ポ リ ケ タ イ ド鎖 の 伸 長 と 閉 環 反 応 が 進 行 す
の テ トラ ケ タ イ ド中 間体 の 生 成 を 経 て ス チ ル ベ ンの骨 格
る ポ ケ ッ トと か ら な る.酵
を 構 築 す るSTSは,ア
素 反 応 の メ カ ニ ズ ム は,ま
ス タ ー タ ー と な る ク マ ロ イ ルCoAが
図5
ミノ 酸 レベ ル で 互 い に70%程
度 の 相 同性 を示 し,酵 素 反 応 に 関 与 す る保 存 領 域 の ア ミ
カ ル コ ン 合 成 酵 素 反 応 の メカ ニ ズ ム
(a)ス タ ー ター 基 質 ク マ ロイ ルCoAの
結 合,(b)伸
中 間 体 の生 成,(d)ト リケ タイ ド中 間体 の 生 成,(e)テ
2280
ず
活 性 部 位 に 取 り込
蛋 白質
核酸 酵素
Vol.48
No.16(2003)
長 基 質 マ ロ ニルCoAの
脱 炭 酸 反 応,(c)新
た な 炭 素-炭 素 結 合 の 形 成 に よ る ジ ケ タ イ ド
トラ ケ タ イ ド中 間 体 の生 成,(f)テ トラケ タ イ ド中 間体 の 閉 環 と新 た な 芳 香 環の 形 成.
ノ 酸 は お お む ね 同 一 と 考 え ら れ る.そ
CHSの
生 成 物 特 異 性 の 制 御 が,酵
れ で はSTSと
素活 性 部位 の どの よ
う な構 造 の差 異 に起 因 す るの で あ ろ うか.最
STSの
を構 成 す る キ ャ ビ テ ィ 自体 は881A3と,CHSと
近 得 られ た
結 晶 構 造 に基 づ く と,両 酵 素 蛋 白 質 は 全 体 的 に
子 の マ ロ ニ ルCoAを
取 り込 む だ け
の ス ペ ー ス は十 分 に あ る こ とが 予 想 され る.し か しな が
らBASで
は,こ
のPhe215が
欠 損 し て お り,こ の た め
は ほ ぼ 同 一 の 立 体構 造 を 共 有 して お り,ど うや ら活 性 部
に ポ リケ タ イ ド鎖 の伸 長 が1回
位 の微 妙 な構 造 の 違 い が,最 終 的 な テ トラ ケ タ イ ド中 間
が 考 え ら れ る.そ
体 の フ ォ ー ル デ ィ ング と閉 環 反 応 に 大 き な影 響 を及 ぼ す
換 す る こ と に よ り カル コ ン合 成 能 が 回復 す る の で は な い
よ うで あ る3).こ の 結 果,CHSで
か と考 え,部 位 特 異 的 変 異 に よ りPheに
反 応 が,一 方,STSで
は ク ラ イ ゼ ン型 の 閉環
は脱 炭 酸 を伴 っ た ア ル ドー ル 縮 合
で 終 わ っ て し ま う可 能 性
こ で 筆 者 ら は,こ
のLeuをPheに
置
置 換 した と こ
ろ,は た して この ミュ ー タ ン トは3分 子 の マ ロ ニ ルCoA
が 進 行 して ス チ ル ベ ン の 骨 格 を形 成 す る こ と に な る(図
を取 り込 ん で,実
2).興
示 さ れ た25).
一 方 ,薬 用 植 物 コ ガ ネバ ナ(Scutellaria baicalensis)由
味 深 い こ と に,大 腸 菌 に発 現 した ピ ー ナ ッ ツ 由 来
のSTSは,少
な くと もin vitroの 反応 で は,ス チ ル ベ ン
に加 え て2∼3%程
度 の カ ル コ ン を も生 成 す る こ とが 報
告 さ れ て い る23).
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様 な 大 き さ で,3分
ほ ぼ同
の キ ャ ビ テ ィの 大 き さ と形 状 が,酵
素 の 基 質 と生 成 物 特
異 性 を 決 定 す る重 要 な 要 因 と な る こ とが,最
セ
ス タ ー ター と して2分 子 の マ ロニ ルCoAを
縮 合 す る ガ ー ベ ラ 由 来 の2-PSは,ア
CHSと
近や は り
に よ り明 らか に さ れ て い る24).す な わ ち,ア
チ ルCoAを
にPhe215の
変 異 を 導 入 して 酵 素 活 性 に
及 ぼす 影 響 を検 討 した と こ ろ,同
活 性 中 心 を構 成 す る ア ミ ノ酸 残 基 に 加 え て,活 性 部 位
Noelら
来CHSに,逆
際 に カ ル コ ン合 成 能 を回 復 す る こ とが
ア ミ ノ酸 レベ ル で74%の
置 換 体 で 若 干 量 の カ ル コ ンの 生 成 が 認 め ら れ
た も の の,他 の置 換 体(Tyr,His,Ser,Cys,Leu,Ala)
で は ポ リ ケ タ イ ド鎖 の 伸 長 反 応 が2回
い,主
相 同 性 を 示 し,蛋 白 質
の活
で 終 了 して し ま
生 成 物 と して2分 子 の マ ロ ニ ルCoAを
BNY(4a)(ト
ル フ ァ ル フ ァ由 来
全 体 で は ほ ぼ 同 一 の立 体 構 造 を共 有 す る もの の,そ
るTrpの
じ芳 香 族 ア ミノ 酸 で あ
縮 合 した
リ ケ タ イ ド)を 与 え る こ とが 示 さ れ た25).
こ の結 果 か ら もPhe215が
ポ リケ タ イ ド鎖 の 伸 長 反 応 に
お い て重 要 な役 割 を担 う こ とが 再 確 認 され たが,し
かし
なが ら興 味 深 い こ と に,い ず れ の 逆 変 異 酵 素 に お い て も
性 部 位 キ ャ ビ テ ィ の 大 き さ(274A3)は,CHS(923A3)と
ベ ンザ ル ア セ トン(6)(ジ ケ タ イ ド)の 生 成 は 認 め られ な
比 べ て1/3程
結 晶構 造 解 析 の 結
か っ た 、 一 方,Noelら
タ ー ター 基 質 の結 合 ポ ケ ッ トの 体 積
つ い て,Phe215をSerに
度 しか な い こ と がX線
果 示 され て い る.ス
が 明 ら か に小 さ く,こ の こ とが2-PSの
基 質お よび生成
物 特 異 性 を 決 定 して い る よ う で あ る.Noelら
の 活 性 中心 キ ャ ビ テ ィ を構 成 す る28ア
ち4残 基 がCHSで
ミノ 酸 残 基 の う
変 異 酵 素 を作 製 し て そ の 活 性 を詳 細 に 検 討 した と こ ろ,
や 完 全 に2-PSと
変 異 酵 素 が,も
は
して機 能 す る こ と を報 告 して い る24).
筆 者 らが ク ロ ー ニ ン グ に 成 功 し た ダ イ オ ウ 由 来BAS
は,ク マ ロ イ ルCoAに1分
炭 酸 的 に 縮 合 す るCHSス
子 の マ ロニ ルCoAの
み を脱
ー パ ー フ ァ ミ リー酵 素 で あ
る13).興 味 深 い こ とに,BASで
置 換 し た ミュ ー タ ン トが,も
基 質 と して は 受 け つ け ず,代
りに ア ン トラ ニ ルCoAを
は,2-PS
は異 な る こ とに 着 目 し,部 位 特 異 的
3ア ミ ノ 酸 を 同 時 に 置 換 し たCHSの
はや ク マ ロ イ ルCoAを
は,ア ル フ ァ ル フ ァ由 来CHSに
は活 性 中心 を構成 す る4
ス タ ー ター と し て 非 天 然 型 新
規 テ トラ ケ タ イ ド ・パ イ ロ ン誘 導 体 を 生 成 す る こ と を報
告 して い る26).
こ う した 一 連 の 結 果 は い ず れ も,III型PKS酵
る.今 後 さ らに,結 晶 構 造 に 基 づ く部 位 特 異 的 変 異 の導
入 や キ メ ラ酵 素 の作 製 な どに よ り,活 性 部 位 キ ャ ビ テ ィ
の 大 き さや,活 性 中 心 ア ミノ 酸 残 基 の 立 体 配 置 を変 化 さ
せ て酵 素 機 能 の改 変 が 可 能 に な る.そ の 際,酵
ス タ ー ター お よび伸 長 基 質 の 分 子 認 識,さ
タ イ ド鎖 伸 長 の 鍵 とな る マ ロ ニ ルCoA縮
が 保 存 さ れ て い る一 方 で,マ
構 の解 明 が 課 題 とな ろ う.
脱 炭酸 とポ
素 の構
造 機 能 相 関 を考 え る う え で た い へ ん興 味 深 い もの と い え
つ の ア ミ ノ酸 残 基 の う ち3つ(Cys164,His303,Asn336)
ロ ニ ルCoAの
わ
素 による
らに,ポ
リケ
合 数 の制 御 機
リ ケ タ イ ド鎖 の 伸 長 に 関 与 す る と さ れ るPhe215がLeu
に置 換 し て い る の が 特 徴 的 で,III型PKSと
215を 欠 く唯 一 最 初 の 例 で あ る(図3).CHSと
して はPhe
III.非天然型新規化合物ライブラリーの構築
の 相 同性
に基 づ い て ホ モ ロ ジ ー モ デ ル を組 ん で み る と,活 性 部 位
2次 代 謝 酵 素 の な か に は,酵 素 活 性 中 心 構 造 の 微 妙 な
蛋白質 核酸 酵素
Vol.48
No.16(2003)
2281
違 い で 基 質 や 生 成 物 の 特 異 性 が 大 き く変 化 す る もの が あ
り,こ れ が2次 代 謝 産物 の 「分 子 多 様 性 」 と多 彩 な 「生
イ ロ ン誘 導 体 と と も
に,高 収 率 で認 め られ た.さ らに 驚 くべ き こ とに,(3)CHS
物 活 性 」 を もた らす 直 接 の原 因 と な っ て い る.一 方 で,
に お い て は,ベ
2次 代 謝酵 素 の 基 質 特 異 性 の 制 御 は,生 命 活 動 に必 須 な
み な らず,芳 香 環 を もた な い 脂 肪 族 エ ス テ ル ま で もが 同
1次 代 謝 酵 素 の そ れ と比 べ て 必 ず し も厳 密 な もの で は な
様 に基 質 と し て 受 け 入 れ られ,3分
く,こ う した 広 範 な基 質 特 異 性 を利 用 して,非
を縮 合 の の ち,新 た な芳 香 環 を形 成 し て フ ロ ロ グ ル シ ノ
ー ル 誘 導 体 を生 成 す る こ とが 示 され た .こ れ に対 し,(4)
規 化 合 物 の 効 率 的 な 生 産 が 可 能 と な る.そ
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香 族 テ トラ ケ タ イ ドの 生 成 が,パ
天然 型 新
こで筆 者 ら
どの芳香 族 エス テ ル の
ン ゾ イ ルCoAや
子 の マ ロ ニ ルCoA
は,有 機 化 学 の 視 点 か ら,化 学 的 に合 成 した 人 工 基 質 を
STSで
プ ロ ー ブ と し て,CHSを
新た
た場 合 に は芳 香 環 の 形 成 に よ る レゾ ル シ ノ ー ル 誘 導 体 の
な 酵 素 機 能 の 探 索 と開 拓 を試 み て い る.酵 素 結 晶構 造 に
生 成 は 認 め られ ず,若 干 の 違 い を示 し た.一 方,非 常 に
基 づ く と,活 性 中心 キ ャ ビ テ ィ に は こ れ ら修 飾 基 質 を受
興 味 深 い こ とに,(5)CHS,STSい
ず れ の酵 素 にお い て
け 入 れ る だ け の ス ペ ー ス が 十 分 にあ る もの と予 想 され,
も,4分
縮 合 し た 生 成 物 や,1
した が っ て 修 飾 基 質 の構 造 に対 応 して在 来 み られ な い 骨
分 子 の マ ロニ ルCoAの
格 を有 す る 「超 天 然 型 」 化 合 物 を与 え る可 能 性 も十 分 に
セ トン型 の生 成 物 は ま っ た く検 出 され な か っ た.
は じめ とす るIII型PKSの
は,ベ
ン ゾ イ ルCoAな
脂 肪 族CoAを
子 以 上 の マ ロ ニ ルCoAを
作 用 させ
脱 炭酸 的縮合 によ るベ ンザ ル ア
う して得 られ る化 合 物 につ いて
そ れ で は,脱 炭 酸 を伴 っ た ク ラ イ ゼ ン縮 合 の く り返 し
も,天 然 に存 在 す る ポ リ ケ タ イ ド化 合 物 と同 様 に重 要 な
に よ りポ リ ケ タイ ド鎖 の伸 長 ユ ニ ッ トと して 機 能 す る マ
生 物 活 性 を 示 し,医 薬 品 な どの シー ド化 合 物 と な る こ と
ロ ニ ルCoAに
が 期 待 さ れ る か らで あ る.
ルCoA(7)や
考 え ら れ る.ま た,こ
まず 酵 素 反 応 の ス ター タ ー ユ ニ ッ トに対 す る基 質 特 異
代 え て,炭 素 数 が1つ 多 い メ チ ル マ ロ ニ
ス ク シ ニ ルCoA(8)を
うで あ ろ うか(図6b)30).コ
性 に焦 点 を 絞 っ て,化 学 合 成 した 基 質 ア ナ ロ グ を,大 腸
ル マ ロニ ルCoAと
菌 に 発 現 させ 精 製 し た コ ガ ネ バ ナ(S.baicalensis)由
は,1分
CHS,あ
る い は,ピ
ー ナ ッ ツ(A.hypogaea)由
に作 用 させ る こ とに よ り酵 素 変 換 を試 み た.す
本 来 の 基 質 で あ る ク マ ロ イ ルCoA(1a)の
キ シ基 をハ ロゲ ンで 置換 したCoAエ
る い は,ベ
来
来STS
な わ ち,
芳 香 環 ヒ ドロ
ス テ ル(1b-1e),あ
ンゼ ン環 を フ ラ ンや チ オ フ ェ ン とい っ た ヘ テ
ロ 芳 香 環 で 置 換,した基 質 ア ナ ロ グ(1f,1g),さ
ン ゾ イ ルCoA(1h)な
イ ルCoA(1j)な
らに,ベ
ど の 芳 香 族 エ ス テ ル や,ヘ
キサ ノ
どの 脂 肪 族 エ ス テ ル を基 質 と し て 作 用
させ た(図6a)27∼29).
まず,(1)両 酵 素 の 場 合 と も,フ
ッ素置 換 アナ ログで
作用 させ た場合 は ど
ガ ネ バ ナ 由 来CHSに,メ
ク マ ロ イ ルCoAを
子 の メ チ ル マ ロ ニ ルCoAを
作 用 させ た 場 合 に
縮 合 した 段 階 で ポ
リケ タ イ ド鎖 の 伸 長 が 停 止 し て し ま い,脱
る こ と を 見 い だ した.こ
れ に 対 し,ス
ク シ ニ ルCoAを
作 用 させ た場 合 に は,酵 素 反 応 は ま っ た く進 行 せ ず,こ
れ は 立 体 的 な 要 因 に 加 え て,ス
炭 素 の 求核 性 が,β
ク シ ニ ルCoAの
ケ ト酸 で あ る マ ロ ニ ルCoAに
生 理 型 ス ター ター 基 質 と して ベ ンゾ イ ル
CoA(1h)や
ヘ キ サ ノ イ ルCoA(1j)を,ま
た,非
伸 長 基 質 と して メ チ ル マ ロ ニ ルCoAを
誘 導 体 と と も に得 られ た の に対 し,立 体 的 にか さ 高 い 塩
の メ チ ル マ ロ ニ ルCoAを
素 や 臭 素 な どの 置 換 体 で は,2分
(10-12)を 生 成 した(図6c)31).
一 般 に酵 素 の 基 質 特 異 性 は厳 密 で ,鍵
の こ とか ら クマ ロ イ ルCoAの
芳香 環
現 され るが,こ
生理型
「同 時 に」 作 用
「同 時 に」 基 質 と して 受 け 入 れ,2分
られ る の み で,こ
比べ
最 後 に,非
れ カ ル コ ンお よ び ス チ ル ベ ンの フ ッ素 置 換 体 がパ イ ロ ン
子 あ る い は3分 子 の マ
α位 の
て,確 実 に 落 ち る こ とが そ の 原 因 と して 考 え られ た.
させ た と こ ろ,驚
の 縮 合 に よ り生 じるパ イ ロ ン 誘 導 体 が 得
炭酸 の後 に
C6-C5骨 格 を も つ ジ ケ タ イ ド(9)を 主 生 成 物 と し て 与 え
は 最 後 の芳 香 環 の形 成 まで 酵 素 反 応 が 進 行 し て,そ れ ぞ
ロ ニ ルCoAと
チ
くべ き こ と に酵 素 は こ れ ら ア ナ ロ グ も
子 あ る い は3分 子
縮 合 し た新 規 バ イ ロ ン誘 導 体
と鍵 穴 な ど と表
の よ う に植 物 由 来III型PKSがin
vitroで
置 換 基 の 立体 電 子 的 な 要 因 が酵 素 反 応 に大 き な影 響 を与
示 した 基 質 特 異 性 制 御 の 寛 容 さ(い い 加 減 さ!)と 触 媒 能
え る こ とが 示 さ れ た.次
の ポ テ ンシ ャル は特 筆 に値 す べ き も の が あ る.結 局,一
に,(2)ク マ ロ イ ルCoAの
芳香
環 を フ ラ ンや チ オ フ ェ ン で置 換 した ア ナ ロ グ を作 用 させ
部 の ア ナ ロ グ 体 を 除 い て,ほ
た場 合,意 外 な こ と に,こ れ ら修 飾 基 質 も 同様 に ス タ ー
が,酵 素 反 応 の ス ター タ ー あ る い は伸 長 基 質 と して 機 能
ター と して 機 能 し,ヘ テ ロ芳 香 環 を もつ 非 天 然 型 新 規 芳
し,一 連 の 非 天 然 型 新 規 ポ リケ タ イ ドを生 成 す る こ とが
2282
蛋 白質
核酸
酵素
Vol.48
No.16(2003)
とん どすべ て の人 工基 質
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図6
ス ターター 基 質 ア ナ ロ グ(a),伸
長 基 質 ア ナ ロ グ(b),両
基 質 ア ナ ロ グ(c)を 同 時 に 用 い た 場 合 のCHSお
よ びSTSに
よ
る酵素 変換
通 常,CHSお
よ びSTSは,本
来 の 基質 で あ る ク マ ロイ ルCoA(1a)を
トロー ル(3a)を 生 成 す る.ま た,in bitroの
ス タ ー ター と して,そ れ ぞ れ ナ リンゲ ニ ン カル コ ン(2a)と レス ベ ラ
酵 素反 応 で は,こ れ 以 外 に も,2分
が終 了 して 生成 した も の と考 え られ るBNY(4a)とCTAL(5a)が
子 あ る い は3分 子 の マ ロ ニ ルCoAが
縮 合 した 段 階 で 反 応
副 生 成 物 と して得 られ る.
蛋 白質 核 酸 酵 素
Vol.48
No.16(2003)
2283
示 され た.も
ち ろ ん 同様 な事 態 が 植 物 の細 胞 内 で 実 際 に
起 こ る こ と は 植 物 に と っ て は な は だ不 都 合 な は ず で あ
り,細 胞 内 で の 酵 素 蛋 白質 の発 現 や 基 質 の供 給 な どを厳
密 に 制 御 す る 機 構 が 存 在 す る に 違 い な い.い
ず れ にせ
3)
4)
5)市
6)
せ る こ とに よ り,こ れ まで 以 上 の 「分 子 多 様 性 」 と新 し
8)
(1984)
Lukacin,
9)
10)田
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る 生 合 成 酵 素 を と りあ げ,こ れ を利 用,そ
11)
12)
して 改 変 す る
こ と に よ り新 規 有 用 物 質 の生 産 に結 びつ け て い く試 み は
た い へ ん魅 力 的 で あ る.そ の 意 味 で,比 較 的 安 定 で取 り
扱 い の 容 易 な一 連 のIII型PKS酵
よ う.近 年,結
に 関 して 数 々 の興 味 深 い 事 実 が 明 らか に さ れ て きた が,
そ の触 媒 機 構 の全 容 を 解 明 す る ま で に は 至 っ て い な い.
一方
,酵 素 の 構 造 機 能 相 関 や 分 子 進 化 の 問 題,さ ら に実
際 の 植 物 に お け る生 合 成 の 改 変 と い っ た 問 題 に つ い て
は,今 後 の研 究 の展 開 が 待 た れ て お り,有 機 化 学,構
生 物 学,植
13)
素 は 格 好 の材 料 と い え
晶構 造 の解 明 な ど に よ り,酵 素 反 応 機 構
に立 っ た 共 同 作 業 が 必 要 と され て い る.新
14)
15)
16)
17)
造
物 生 理 学 な ど多 領 域 の 学 問 の 相 互 理 解 の う え
18)
しい 機 能 を有
19)
す る 「ス ー パ ー 改 変 酵 素 」 と 「超 天 然 型 ポ リ ケ タ イ ド」
の創 出 を め ざ した 生 合 成 工 学 に,ひ
き続 き挑 戦 した い.
本 稿 執 筆 に あた り,静 岡 県 立 大 学 薬 学 部 野 口博 司教 授 を は じめ
20)
21)
とす る共 同研 究者 の 方 々 に厚 くお礼 申 し上 げ る.ま た,共 同研 究
を通 し て 貴 重 な 情 報 を ご 教 示 い た だ い た フ ラ イ ブ ル グ 大 学
Joachim
Schroder教 授,な
らび に ソ ー ク研 究所Joseph
Noel教 授
22)
に深 謝 す る.本 研 究 の一 部 は,文 部 科 学省,日 本 学 術振 興 会,(財)
東京 生 化 学 研 究 会,な
らび に(財)ノ バ ル テ ィス科 学 振 興 財 団 の研
23)
究助 成 に よ り行 な わ れた もの で あ り,こ こ に深 く感謝 す る.
24)
25)
1)
Dewick, P. M.: Medicinal Natural
A Biosyn-
26)
2)
thetic Approach, 2nd Ed., Wiley, West Sussex (2002)
Schroder, J.: in Comprehensive Natural Products Chemistry (ed. Sankawa, U.), Vol. 2, pp. 749-771, Elsevier, Oxford
27)
(1999)
28)
2284
蚤白 質 核 酸
酵素
Vol.48
Products,
No.16(2003)
K., Urbanke,
C., Ernwein,
C.,
Liu, B., Falkenstein-Paul, H., Schmidt, W., Beerhues,
Plant J., 34, 847-855 (2003)
中 伸 治 ・田 浦 太 志 ・森 本 聡 ・正 山征 洋:日
L. :
本薬 学会 第
121年 会,講 演 要 旨 集2,p、108(2001)
今 後 の 天 然 物 化 学 研 究 の展 開 に つ い て 考 え た 場 合,多
薬 品 と して 重 要 な2次 代 謝 産 物 の 基 本 骨 格 構 築 にか か わ
R., Springob,
Schroder, G., Schroder, J., Matern, U. : FEBS Lett., 448,
135-140(1999)
ブ ラ リ ー の 効 率 的 な 生 産 が 可 能 に な る.
様 な化 学 構 造 と生 物 活 性 を有 す るポ リ ケ タイ ドな ど,医
白 質 核 酸 酵 素,44,1562-1571(1999)
7)
い 「生 物 活 性 」 を備 え た,「 超 天 然 型 」 新 規 化 合 物 ラ イ
お わ りに
瀬 浩 志:蛋
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よ,こ う した 異 例 と もい え る広 範 な 基 質 特 異 性 を利 用 し
て,今 後 さ ら に新 た な 基 質 ア ナ ロ グ と酵 素 と を組 み合 わ
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略 歴:1984年
30)
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年 よ り静 岡 県 立 大 学 薬 学 部 講 師.研
31)
29)
同大学大学 院薬学
の 生 物 有 機 化 学.抱
究 テ ー マ:生
合成酵 素
負:生 合 成 酵 素 を 利 用 した 新 しし、
天然
物 化 学 の 分 野 を 開 拓 した い.
Database Center for Life Science Online Service
277-1280(2003)
東 京 大 学 薬 学 部 卒,1989年
系 研 究 科 博 士 課 程 修 了,同 年 フ ラ ンス 政 府 給 費 留 学 生,1991
∼98年 ニ ュ-ヨ ー ク州 立 大 学
,ユ タ 大 学 研 究 助 教 授,1998
蛋白質 核酸
酵素
Vol.48
No.16(2003)
2285
Fly UP