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医学研究会KCIT(第2回)

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医学研究会KCIT(第2回)
第2回 Kobe Cardiovascular
平 成 2 1 年 1 1 月 2 1 日 ( 土 )
ホ テ ル 北 野 プ ラ ザ 六 甲
Imaging & Therapeutics
K-CIT研究会
NEWS 第2回KCITが盛況のなか、無事終了しました。
議事録
2010年2月作成
K-CIT代表世話人
神戸労災病院 循環器科
井上信孝
神戸大学循環器内科
藤原 征
平成21年11月21日、ホテル北野プラザ六甲荘において、
Kobe Cardiovascular Imaging &Therapeutics (K-CIT)が行われました。
この研究会は、循環器診療の画像診断から治療までを包括的に、かつフランク
に議論することを目的に設立されたものです。
第二回目の今回は、特別講演として、神戸市立医療センター中央市民病院
の加地修一郎先生とお招きして「循環器診療における心臓MRI検査の現状と
将来」の演題で、循環器MRIの関して最新の知見についてご講演頂きました。
加地先生には、自験例の様々な画像を提示して頂き、循環器診療における
心臓MRIの位置づけ、MRIの有用性、そしてその限界について判り易く解説して
頂きました。また特別講演に先立って、以下の3例の症例検討を行いました。い
ずれの症例も興味深く、熱い討論で盛り上がりました。
第3回は、平成22年4月17日に兵庫医科大学循環器内科教授 増山理先生
をお招きして、ラッセホールにて開催する予定です。多くの方の参加をお待ちし
ています。
神戸労災病院 循環器科 井上信孝
一般演題
①「これは心筋炎の再燃なのか?-PET所見の解釈-」
神戸大学医学部附属病院 循環器内科
高峰佐智子、藤原征、川合宏哉、平田健一
②「無症候性心筋虚血を伴った慢性腎不全の一例」
神戸労災病院 内科
森健茂 田中伸明 小澤徹 井上信孝 大西一男
③「4ヶ月続く全身倦怠感、食思不振を主訴に来院した74歳女性の症例」
神戸大学医学部附属病院 総合内科
森寛行 宮本宣友 秋田穂束 K-CIT世話人
豊橋ハートセンター
寺島充康
三木市民病院 大橋佳隆
六甲アイランド病院 土井智文
神鋼病院 宮島 透
済生会兵庫県病院 矢持 亘
甲南病院 野中英美
神戸大学循環器内科 福家啓起 特別講演
神戸労災病院 小澤 徹
「循環器診療における心臓MRI検査の現状と将来」
社会保険神戸中央病院 近藤盛彦
神戸掖済会病院
藤 久和
神戸市立医療センター中央市民病院 加地 修一郎 神戸市立医療センター中央市民病院 加地修一郎 第3回 K-CIT研究会 開催予告
日 時 : 平成22年4月17日(土) 17時開催予定
場 所 : ラッセホール
特別講演 : 兵庫医科大学循環器内科 教授 増山理先生 桜橋渡辺病院 循環器内科 黒飛俊哉先生 特別講演
「循環器診療における心臓MRI検査の現状と将来」 神戸市立医療センター 中央市民病院 循環器内科 先端医療センター 加地 修一郎
循環器診療における画像診断には、冠動脈造影、心エコー図、核医学検査、心臓CT検
査などが
あげられるが、心臓MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査による画像診断には、他の検
査にはない、いくつかの特徴がある。まず一つは、シネ撮像により左室の形態と動きを高
画質で描出出来る事である。次に、遅延造影撮像により、心筋蘇生能(viability)を診断す
ることが可能である事である。これら以外にも、撮像法を変えることにより、多様な目的の
撮像ができるという特徴がある。このような特徴を臨床にどういかしていくかが重要な課題
であり、本講演では、当科が2003年から行ってきた心臓MRI検査の経験をもとに、心臓
MRI検査の現状と将来について、概説した。
心臓MRI検査による解剖、左室壁運動評価
心臓MRI検査により、心臓全体の解剖や左室壁運動を詳細に検討することが可能である。
従来、このような評価は心エコー図がGold Standardとされてきたが、心エコー図の問題点は、常に
最良の画像を得られるわけではない事にある。肥満や、肺疾患が原因で約10%の症例で、心エ
コー図は
適切な画像が得られないと報告されている。心臓MRI検査は、こうした心エコー図が描出困難の症
例でも、左室壁運動や心臓全体の解剖の描出が可能である。左室壁運動については、Steady
State法による超高速撮像により、50msec前後の時間解像度で描出することが可能である。この
方法を利用することにより、肥大型心筋症や拡張型心筋症、二次性心筋症の正確な診断が可能
である。当科でも、多くの心筋症や二次性心筋症の撮像を経験し、臨床診断に非常に有用であっ
た。(図1)
図説
図1 左室中部閉塞性肥大型心筋症例
における心臓MRI画像
Steady State法によるシネ画像で、左は
左室二腔断面像の、右は三腔断面像を
示す。高い組織コントラストで肥大した心
筋および心内腔が鮮明に描出されてい
る。
また、心臓MRI検査は任意の断面を撮像できることから、短軸像を8-10mm前後のスライ
ス厚で多断面撮像することが可能であり、正確な左室機能評価が可能である。(図2)特
に、心筋梗塞後などで局所に壁運動異常が存在する場合には、心エコー図や血管造影の
ように、二方向からの左室機能評価には限界があり、心臓MRIによる評価が優れている。
当院でもMASS analysisという心機能解析ソフトを使用して全例で左室機能を解析している。
(図3)このような正確な左室機能評価は、左室形成術の術前評価や、心筋梗塞後のリモ
デリング評価などに有用である。
図2 心臓MRIに
よる左室容量計
測
上段は左室拡張
末期像、下段は
左室収縮末期像。
各断面か
ら、Simpson法に
より左室容量を計
測する。
図3 自動解析ソフトによる心機能評価
心筋の心内膜側と心外膜側を自動的にトレース(左図)
し、短時間で左室容量曲線(右図)を求めることが可能
である。
遅延造影による心筋蘇生能(Viability)の評価
心臓MRI検査では、造影剤であるガドリニウムを使用して、心筋蘇生能を評価することが
可能である。ガドリニウムを静注後、10-20分後にT1強調撮像することにより、障害された心
筋あるいは繊維化した部分が造影される。これを遅延造影と呼び、心筋蘇生能の指標とし
て考えられている。この方法は、当時ノースウェスタン大学のKim博士らが最初に提唱し、広
く受け入れられている。(N Engl J Med. 2000;343(20):1445-53.)具体的には、左室壁の75%を
越える貫壁性の遅延造影を認めた場合は血行再建をしても壁運動は改善しないとされる。
図4(次ページ)に実際の遅延造影の画像を示す。この遅延造影は、冠動脈インターベンショ
ンや冠動脈バイパス術の術前評価のみならず、心筋梗塞サイズの同定や心室内血栓の鑑
別、心筋症の診断、致死性不整脈のリスク評価などに有用とされている。なかでも心サルコ
イドーシスや心アミロイドーシスなどの二次性心筋症の診断に役立つと報告されている。ま
た遅延造影された部分の心筋容量が、予後に関与していることが最近の研究で明らかにさ
れている。我々も最近、虚血性心疾患患者において、遅延造影の容量が心血管イベントの
予測因子である事を報告した。
心臓MRIによる心筋虚血の評価
心臓MRI検査では、ガドリニウム静注の際の初回通過像から虚血の診断をすることが可
能である。ガドリニウムはT1時間を短縮させるが、T1強調撮像すると濃度を反映した画像を
得ることが出来る。この原理を利用して、心臓核医学検査と同様に、安静時とATP負荷時の
心筋潅流像から心筋の虚血を診断する。この方法は心筋パフュージョンMRIなどと称されて
おり、心臓核医学検査に比べて空間解像度が高いため、心内膜下の虚血などが診断可能
とされる。最近、MR-IMPACTという多施設共同研究の結果が報告され、心臓核医学検査と
同等以上の診断精度があることが明らかになった。(Eur Heart J. 2008;29:480-9)
図4 陳旧性心筋梗塞例における遅延造影
上段は下壁梗塞例の遅延造影像。左図は左
室短軸像、右図は左室二腔断面像を示す。下
壁の一部に
遅延造影を認めるが、貫壁性ではなく、梗塞領
域はviable(蘇生能あり)と考えられる。
下段は、広範囲な下後壁梗塞例の遅延造影
像。上段と同じく、左図は左室短軸像、右図は
左室二腔断面像を示す。下後壁および、前壁
中隔にも遅延造影を認める。上段の遅延造影
とは対照的に、下壁の一部は貫壁性で、同部
位の梗塞領域はnon-viable(蘇生能なし)と考
えられる。 冠動脈Magnetic Resonance Angiography (MRA)
冠動脈MRAでは、ナビゲーターという横隔膜の動きをモニターする呼吸同期を使用し
て、
三次元撮像をする方法が行われる。なかでも、冠動脈の位置決めを全く行わず心臓
全体を一回で撮像して、その後に冠動脈を再構成する方法が主流になりつつある。こ
の方法で撮像したWhole-heart coronary MRAが冠動脈病変の診断に非常に高い診
断率を有すると報告されている。
ただし、心臓CT検査の進歩が著しく、臨床で使用される機会は少なくなっているのが
現状である。
現状と将来について
心臓MRI検査は、多様性に満ちた撮像が可能である反面、他の画像診断モダリ
ティーと常に競合する側面がある。撮像に時間がかかる点や専門的で難しい点、ペー
スメーカー植え込み例などの禁忌症例がある点、心臓CTなどに比べて解像度が低い
点などが普及を阻んでいるといえる。
現時点では、左室機能や心臓全体の形態評価、心筋蘇生能の評価、心筋パフュー
ジョンによる心筋虚血の評価が、心臓MRIの主な適応と思われる。現在、ハード面で
は、1.5テスラから3.0テスラにアップグレードされた装置が実用化されており、マルチ
チャンネルコイルとともに、超高速撮像かつ高画質化することが予想される。またソフ
ト面でも、リアルタイム心臓MRI検査などの新しい撮像法が、実用化されつつあり、こ
のような技術革新とともに、すこしずつ循環器診療の臨床で使用されるようになること
が期待されている。
一般講演
症例検討1
症例検討2
症例検討3
Kobe Cardiovascular Imaging & Therapeutics
「これは心筋炎の再燃なのか?-PET所見の解釈-」
神戸大学医学部附属病院 循環器内科
高峰佐智子、藤原征、川合宏哉、平田健一
「無症候性心筋虚血を伴った慢性腎不全の一例」
神戸労災病院 内科
森健茂 田中伸明 小澤徹 井上信孝 大西一男
「4ヶ月続く全身倦怠感、食思不振を主訴に来院した74歳女性の症例」
神戸大学医学部附属病院 総合内科
森寛行 宮本宣友 秋田穂束 症例検討1
「これは心筋炎の再燃なのか?-PET所見の解釈-」
神戸大学医学部附属病院 循環器内科
高峰佐智子、藤原征、川合宏哉、平田健一
症例76歳女性。平成20年12月頃より労作時呼吸苦と下腿浮腫が出現し、徐々に症状
の増悪を認めたため近医受診。胸部X線にて心拡大、肺うっ血像を認め心不全が疑わ
れたため、平成21年1月13日当院紹介入院となる。入院時の心エコーでびまん性の左
室機能障害(EF 31%)を指摘され、心不全治療のためβブロッカー、ARBなどの投与を
開始。安静時99mTc-TFシンチでは明らかな集積異常を認めなかったが、FDG-PETに
て心筋全体の集積の亢進が認められ、また心臓MRIにてT2強調画像にて左室壁全体
の輝度が亢進していたことから、心筋における炎症の存在が示唆された。心筋生検では
炎症細胞の浸潤を認め、心筋炎が疑われた。治療開始2カ月後もEF 40%程度までしか
改善しなかったため、同年3月3日よりステロイドの投与を開始。ステロイド投与開始1カ
月後にはEF 63%まで改善した。また、同時期のFDG-PETでも心筋への集積亢進は消
失していたことから、ステロイドを漸減し、同年9月には中止となった。しかしながら、中止
一ヶ月後のFDG-PETの心筋への集積亢進と、心臓MRIのT2強調画像における左室壁
全体の輝度の亢進を認めた。同時期の心筋生検では明らかな炎症細胞の浸潤を認め
ず、心機能の悪化も認められなかったことから、現在はステロイドを投与せず経過観察
中である
症例検討2 「無症候性心筋虚血を伴った慢性腎不全の一例」
神戸労災病院 内科 森健茂 田中伸明 小澤徹 井上信孝 大西一男
症例45歳男性。糖尿病性腎症、慢性腎不全にて維持透析中。冠動脈CTにて
冠動脈高度狭窄を疑われ、心臓カテーテル検査紹介受診となった。運動負荷
心筋シンチグラフィーでは、左前下行枝領域を中心に、回旋枝領域及びRCA領
域にも心筋虚血を認め、また負荷時に一過性の心腔拡大も伴い、高度の心筋
虚血が示唆された。冠動脈造影では、LAD#6に90%狭窄、Cx#11分岐直後に
90%狭窄を認めた 症例検討では、冠動脈CT、冠動脈造影、心筋シンチグラフィーの画像所見の
関連、それぞれのmodalityの有用性と限界についての討論があった。多枝病
変例の心筋シンチでは、虚血部位がcancella;onされ過小評価され判断が難し
い場合ある。そのような時は、本症例のように負荷時の心腔の拡大は診断に
有用であることが意見として述べられた。また透析症例では、冠動脈石灰化に
より冠動脈CTの評価に限界がある点が指摘された。
症例検討3 「4ヶ月続く全身倦怠感、食思不振を主訴に来院した74歳女性の症例」
神戸大学医学部附属病院 総合内科 森寛行 宮本宣友 秋田穂束
74歳女性。4ヶ月前から全身倦怠感、食思不振が出現し次第に増悪。その後、頭痛も
伴い、1週間前からは37℃台前半の微熱を認めた。5kg/3ヶ月の体重減少。皮疹や関
節痛・筋肉痛を認めなかった。理学所見:右こめかみの血管拡張を触知。圧痛(‐)。両
下肢に軽度のpiEng edema。血液検査:分節核優位の白血球増多(10700/μl)。著明
な炎症反応の亢進(CRP17 赤沈>100mm/hr )。高齢者の亜急性に出現した不明熱
で炎症反応が高値、理学所見で側頭動脈の拡張を触知したため側頭動脈炎を疑い、
側頭動脈エコーを施行。初診時には有意な所見を認めなかったが、1週間後の再検
査では血管周囲のhalo sign(図)を認め側頭動脈炎と考えた。側頭動脈炎に対してス
テロイド導入予定であったが、治療開始前に臨床症状の改善、血液検査上の炎症反
応低下、エコー上のhalo signの消失がみられ、自然軽快傾向を示したので無投薬で
経過観察とした。
側頭動脈炎は合併症として失明を来たすこともあり、
一般的には生検による確定診断とステロイドによる
治療が行われるが、自然軽快を来たした症例報告も
まれながら存在する。今回はエコーでその経過を追
うことができた。高齢者の不明熱、炎症反応亢進の
鑑別診断として、側頭動脈炎に留意する必要がある 。
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