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友人選択の基準にみる象徴的境界

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友人選択の基準にみる象徴的境界
駒澤社会学研究 48号 2016年
友人選択の基準にみる象徴的境界
―バウンダリー・ワークとしての友人選択―
Symbolic Boundaries in Mate Selection in Japan
片 岡 え み
Emi Kataoka
1 .問題設定
「類は友を呼ぶ」ということわざに示されるように、友人とのつきあいにお
いて、われわれは自分と共通した特徴をもつ人を選ぶ傾向があるといわれる。
では、人々は何を基準に友人を選択しているのだろうか。またどのような人を
友人として好ましいと思うのだろうか。すなわち、われわれはどのような主観
的な境界線を用いて、自らの友人にしたい人とそうしたくない他者とを区別し
ているのだろうか。
この問題は、友人関係における集団的なメンバーシップの感覚が、どのよう
な基準に支えられているのかという問でもある。人と人の絆は集団を形成し、
あるいはそこから階級的なアイデンティティが形成される場合もある。集団形
成の基礎となる人々の主観的な境界設定に目を向けることにより、これを社会
学的な問題として検討することにしたい。
Keywords : 友人選択、象徴的境界、文化、境界線
Correspondence Author :
Emi KATAOKA
Professor of Sociology,
Department of Sociology, Komazawa University
1-23-1 Komazawa, Setagaya-ku, Tokyo, 154-8525, Japan
Email: [email protected]
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Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
本研究ではつきあいたいと思う友人選択の基準に着目し、他者と自分(ある
いは「自分たち」の集団)との差異を評価するときに、どのような基準を用い
ているかについて、都市部の成人男女を対象とした無作為調査データから明ら
かする。
友人選択の基準には、どのような種類があるのだろうか。人々は、地位や経
済力などの社会経済的な条件で、互いを評価しているのか、それとも文化や教
養のような「文化的差異」によって、互いを識別し、類別しているだろうか。
こ の 疑 問 に 答 え る た め に、 本 研 究 で は ア メ リ カ の 文 化 社 会 学 者 で あ る
Michèle Lamont(1992)が使用した「象徴的境界」(symbolic boundaries)の概
念を用いて、都市部の人々の友人選択の基準を明らかにする。
人々が自分と他者とを区別し差異を見出す際に用いる基準、あるいは類似し
ていると判断する際に用いる「主観的な境界線の基準」が、どのような要素か
ら構成されているか、本稿ではその日本的特徴を具体的に明らかにしよう。
2 .象徴的境界とは何か
象徴的境界とは、自分と他者との間に引く主観的境界線(Lamont 1992,
Lamont & Molnár 2002)のことである。そして象徴的境界は、人々を分類(カ
テゴライズ)するときに用いられる基準のことでもある。
人々は他者との間に、主観的にあるいは無意識的に、「見えない」境界線
(boundary)を引く作業をすることがある。仲間であるという感覚、敵だとい
う知覚、人との距離感、疎外感、親近感、排除などの人間関係にかかわる心理
的な問題において、人々はあたかもそこに見えない境界線があるように感じる
ことがある。
境界線を引くこと、逆に他者から境界線を引かれることによって、さまざま
な集団的・社会的な問題が生まれてくる。同じ境界線の内側であれば、友人と
なり、あるいは同じ集団メンバーと認識するだろうが、境界線の向こう側にい
る人は主観的には他者なのである。場合によっては、それが排除につながるこ
ともある。
Lamont(1992)は、象徴的境界(symbolic boundaries)について、アメリカ
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駒澤社会学研究 48号 2016年
とフランスのUpper-Middle階級の男性にインタビュー調査を行い、かれらが価
値を置く人たちの特徴とその基準を明らかにした。
Lamontは、
「あなたにとって価値のある人々(worthy people)はどういう人
ですか」という質問をインタビュー形式で行い、その判断基準を明らかにして
いる。すなわち「社会的差異のハイスティタス・シグナルに注目」(Lamont
1992)したということであり、次のように述べている。
「
「われわれ」は「かれら」よりましだと信じる方法が異なっている。地位評
価の根底にある基準と、
象徴的境界線そのものの特徴をともに分析する。
(中略)
このことは、より適切で複雑な地位の見方があるということを展開するもの
だ。それにより、社会や社会階級が文化的にいかに異なっているかを理解する
手助けとなる。
」
(Lamont 1992)
「境界は「われわれはだれであるか」を定義しようとするときに立ち現れる。
つねに他者との類似性と他者との差異を参照し、タイプ化の体系を作る。……
差異を生み出すことによって、アイデンティティを特徴づけ、安全や威厳や名
誉の感覚を発達させる。
」
(Lamont 1992)
Lamontのいう象徴的境界線の研究とは、価値ある人とはどういう人なのか
を問うなかで、そうではない(尊敬できない)他者との間にある境界線の基準
を、インタビュー調査から明らかにするという特徴をもっている。
Lamontの研究は、ブルデューの「ディスタンクシオン」の感覚に関する社
会学的研究をベースにしている。そして、地位の源泉としての文化資本を発展
的にとらえて、道徳領域へと拡大していく作業を行った。またLamontは、労
働者階級の人々の威厳や名誉の感覚についても分析を行い、文化という視点か
ら、象徴的次元における階級と不平等の問題を探究している。
社会階層論的な文脈で言えば、象徴的境界とは社会的地位評価の根底にある
基準と強く関連している。あるいはソーシャル・キャピタルを形成する場合の
基準になるともいえる。人とのつきあいの基準だからである。
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Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
しかし階層論で扱われてきた社会的地位の構成要素と、ここで扱う象徴的境
界の基準は同じではない。従来の階層論、階級論で扱われてきた地位の源泉と
は、職業、収入、学歴、人種、性別、勢力、権力関係、文化などであり、ここ
で詳しく述べることはしないが、いくつもの異なる理論的背景がある。社会階
層論および階級論では、大きくわけて社会的地位や階級を職業という単一概念
もしくは単一指標で測定する理論と、多次元的な地位指標で測定しようとする
立場等、様々なアプローチが存在する。
Lamontのいう象徴的境界の理論は、地位概念のなかの象徴的な次元を問題
にしており、それゆえ文化的な側面をより強調する点に特徴がある。その理由
は彼女の場合、調査対象が中上流階級の男性中心であることと、ハイステイタ
スの人々の基準を明らかにするという研究目的をもっていたからである。
象徴的境界は、文化的な戦略や社交などに象徴的に現れてくる。また価値観
や態度、趣味などの嗜好性、そしてライフスタイル、教育戦略などの様々な側
面に現れてくる。ファッションのように目に見えるもの、実体をもって明確に
差異が示されることで、境界線がどこにあるのかわかる場合もある。しかし多
くは、必ずしも明確にならないで、価値観や趣味の違いとして認識されている
ことも多い。人間関係の面では、気が合わない、相性が悪いという形で認識さ
れる場合もある。 すなわち対象を分類するなかに、自らのハビトゥスでもある知的認識枠組み
が立ち現れてくるのである。ハビトゥスは構造に規定されるとともに、構造を
生み出すものでもある(Bourdieu 1979)
。そして他者との間にある文化的差異
を主体がどう認識するかという問題は、本人の持っているハビトゥスが作動し
た結果である。
友人選択に即して述べるならば、どういう基準で友人を選ぶのか、どういう
人であればつきあいたいのか、つきあいたくないのかという「選択」は、各自
がもつハビトゥスによって異なっている。境界線を引くという行為が、差異を
生み出し、あるいは差異を認識する実践でもある(Bourdieu 1979)。こうした
日常的実践の中で友人選択の基準は形成されるだけでなく、ブルデューのいう
ように、生まれ育った家庭の歴史的文化的背景や生育過程での経験によって、
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駒澤社会学研究 48号 2016年
歴史的に形成されるハビトゥスの一側面なのである。
友人選択とは、ある意味、自分と他人の境界線をたえず確認し、設定しなお
し、維持し、新たな境界線を引くというような日常的なワークである。これを
Lamont(1992)は、
バウンダリー・ワーク(Boundary Work)と呼ぶ。無意識に、
あるいは意識的にハビトゥスが作動することによって、バウンダリー・ワーク
は日々行われている。その結果として、
使用する象徴的境界線の基準の違いは、
実際に、その人の社会的軌道や社会的位置などの社会的属性や社会的背景に
よって異なると考えられる。
本稿では、バウンダリー・ワークの概念を用いて、友人選択における象徴的
境界の存在を量的調査から明らかにしよう。
3 .バウンダリー・ワークの 3 つの基準
友人とのつきあいや友人選択の際に、
その集団的なメンバーシップの感覚を、
われわれは何を基準に選択しているのだろうか。いいかえれば、われわれはど
んな境界線を他者との間に引いているのだろうか。
ここで筆者は、Lamontのバウンダリー・ワークという考え方を援用するこ
とで、
友人選択の基準を明らかにすることができると考えた。Lamont
(1992)
は、
その著書のなかで次のように述べている。
「バウンダリー・ワークは集団メンバーシップの感覚を発達させる方法でも
ある。それは共有された感情をベースにした絆を生み出す。…したがって境界
線は、人々を階級や労働集団、職種、人種、ジェンダーなどに分離していく。
境界線は集団だけでなく不平等をも生み出す。…なぜなら境界線は地位を獲得
し、資源を独占し、攻撃をかわし、社会的優越を正当化するための手段である
から。境界線はしばしば卓越化したライフスタイルや習慣、性格、能力などと
関連する。
」
(1)
の人々、
Lamontはアメリカとフランスの中上流階級(upper-middle class)
とくに白人男性への調査から、worthy peopleとはどういう人かについて次の 3
つの象徴的境界線が用いられていることを明らかにした。それは、モラル・バ
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Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
ウンダリーズ(道徳的境界)
、社会経済的バウンダリーズ、文化的バウンダリー
ズである。以下では、バウンダリーを境界もしくは境界線という。
道徳的境界は、worthy peopleというのが、誠実さや労働倫理、正直な人であ
ることを強調する場合である。社会経済的境界は、判断基準に、その人がお金
持ちであること、富や権力を所有していること、専門的な仕事で成功している
ことなど、社会的地位に言及する場合に作動していると考えられる。そして文
化的境界というのは、高い教育や知性、上品なマナー、洗練された趣味をもっ
ている、ハイカルチャー嗜好があるなどの理由をあげて、その人が尊敬に値す
ると言及する場合である。そして洗練性だけでなく、コスモポリタニズムを基
礎に引かれる境界であるとLamontはいう。
3 つの象徴的境界(Lamont 1992)
( 1 )モラル・バウンダリーズ
誠実さ、労働倫理、正直(高潔さ)の基準に言及する。
( 2 )社会経済的バウンダリーズ
判断の基礎として、富、権力、専門的な仕事の成功などによって示さ
れる人々の社会的位置に言及する。
( 3 )文化的バウンダリー
教育、知性、マナー、趣味、ハイカルチャーなどに言及する。
洗練性、コスモポリタニズムを基礎に引かれる境界である
Lamontの研究の主な知見は、次の 3 点である。
① アメリカのupper-middle階級の人々は、文化的境界よりも、社会経済的境
界と道徳的境界をより強調する。
② フランスのupper-middle階級は、道徳的境界と文化的境界をより強調する
傾向がある。しかし社会経済的境界を強調する者が増加している。
③ アメリカでもフランスでも、upper-middle階級にとって文化的境界の重要
性は失われつつある。
そしてLamont(1992)は、「ブルデューは文化的境界と経済的境界の重要性
を強調しすぎたために、道徳的境界の重要性を過小評価した」と主張した。
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駒澤社会学研究 48号 2016年
4 .日本での研究の意義
Lamontの研究成果から、筆者はこの象徴的境界およびバウンダリー・ワー
クについての研究を、日本においても展開する必要があること、そしてそれを
行うにあたり、次の 3 点に注意したいと考える。
まず第 1 に、アメリカおよびフランスにおける象徴的境界線に関する基準は
多元化しつつあると解釈すべきである。国によってその方向性は異なっている
ことは重要な知見である。わが国では、これ以外に異なる基準がみいだせるか
どうか。
第 2 に、Lamontの研究はupper-middle階級だけを調査していることの限界が
ある。upper-middle以外の人々の象徴的境界基準としては、当然、適用できない。
年齢や社会的地位による差異を明確にする必要がある。
第 3 に、同時期に筆者が実施したインタビュー調査結果からは、わが国の都
市部中流階層は、道徳的境界を使用することが多いことがわかっている(未発
表)
。しかし道徳的境界を使用するのは、日本の場合、中流階層以外でも、と
くに女性に顕著にみられたので、わが国ではモラル・バウンダリーが一般化し
ている可能性が高い。
そこでインタビュー調査だけでなく、量的調査によっても、象徴的境界の基
準を明らかにする必要性があると考えた。
再度、本稿の課題を明確化すると、( 1 )友人選択において、どのような象
徴的境界線が作動しているか明らかにすること、および( 2 )友人選択に使用
される象徴的境界と不平等との関連性を明らかにすることである。どのような
集団が、どのような象徴的境界線を基準に使って、友人選択を判断しているの
かを解明したい。
具体的には、対象者の資本の保有状況(社会的位置、社会経済資本、文化資
本の保有状態の違い、社会的軌道)と象徴的境界の関連性を検討する。
さらに、( 3 )象徴的境界線と階層帰属意識や社会的成功感などの階級アイ
デンティティとの関連性を明らかにすること。
( 4 )わが国の都市地域で暮ら
す人々にとっての、象徴的境界の意味を考察することを目的としている。
45
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5 .調査の概要
使用するデータは、1999年 1 月∼ 2 月にかけて、神奈川県川崎市で実施した
無作為標本調査データである(片岡編 2000)
。川崎市を選んだ理由は、東京
に隣接する都市であること、住民の階層的多様性が高いことによる。海側の工
業地帯と山側の住宅街と東西に細長く伸びており、かなり異なる層の人々が同
じ市内に住んでいる。わが国においても最も地域住民、地域環境の面でも多様
性の高い都市のひとつである。
本調査の母集団は、川崎市民20−69歳男女(1999年 1 月 1 日現在)で、昭和
5 年12月31日生まれから昭和54年 1 月 1 日までに生まれた人を対象としてい
る。サンプリング方法は確率比例抽出法で、4000サンプルを抽出した。具体的
には、抽出された合計200地点から20標本ずつを系統抽出法で選びだし、対象
者リストを作成した。
質問紙調査「ライフスタイルと文化に関する意識調査」を作成し、1999年 1
月末に対象者4000名に、郵送法で配布し回収した。最終的に回収できた有効票
は958で、有効回答率は24.0%である。男女の内訳は、男性438(45.7%)
、女性
518(54.1%)
、不明 2 (0.2%)であった。
川崎市の人口構成と有効データとを比較するため、平成 7 年度(1995年度)
国勢調査結果(川崎市)を用いて比較した結果、本データは次のような特徴を
もっている(片岡編 2000)
。
① 男女比:サンプルは女性が少し多く回答している。
② 年齢:高い年齢層の割合が多く、20才台の若い年齢層が少ない。
③ 就業形態:川崎市全体の構成と比較すると、サンプルには男性の経営者役
員や自営業主の層がやや多いという特徴がみられる。女性の就業形態は川
崎市の国勢調査結果と近い。
④
職業構成:有職者に占める男性の専門・管理職層の割合が回収データで高
くなっていた。川崎市国勢調査では、有職男性のうち専門職は17.9%、管
理職は6.0%、事務が14.4%であるが、調査では有職男性の30.2%が経営・
管理職、21.4%が専門職と約半分の男性データは、専門・管理職という上
層ホワイトカラー、事務が14.0%であった。男性の有職者の約65%がホワ
46
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イトカラーで、職業的な偏りが見られた。
女性サンプルでも、専門職の比率が高く、女性有職者の26.4%をしめた(川
崎市国勢調査では15.8%)
。
⑤
学歴構成:調査データ全体の47.1%が短大以上の高等教育経験者(専門学
校は含まず)
、男性では54.7%、女性41.3%であった。
以上のように、本サンプルは高学歴で専門・管理職層がやや多くなるという
偏りをもっているが、このことはLamontの調査対象であったupper-middleクラ
スの割合が多いということでもあるので、属性をコントロールすることで、意
義のある知見を得られるともいえる。
6 .友人選択基準にみる象徴的境界
(1)
友人選択基準の測定
友人選択にかかわる象徴的境界の基準がどこにあるかを測定するために、17
の異なる特徴をもつ人間のタイプ例を示し、友人としてつきあいたいかどうか
に関して、 5 段階(ぜひつきあいたい 5、できればつきあいたい 4、つきあっ
てもかまわない 3、できればつきあいたくない 2、絶対につきあいたくない 1)
の回答選択肢から 1 つの番号を選んでもらった。
質問文「あなたは次のようなタイプの人をどう思いますか。あなたが友人とし
てつきあうとしたら、どうですか。それぞれについて、あてはまる番
号に○をつけてください。
」
図 1 では、友人選択基準の単純集計を提示した。多くの人が「つきあって
もかまわない」
、
「つきあいたい」
、
「ぜひつきあいたい」という肯定的回答の合
計回答%が多い項目は、これら 3 項目の合計%の順に、⑯「趣味の洗練された
人」
、⑤「仕事をがんばり業績をあげている人」
、⑫「ことば使いや態度が上品
な人」
、⑭「政治や経済などの高度な知識をもっている人」
、⑮「クラシック音
楽や芸術の話をよくする人」、①「道徳的でまちがったことにはきびしいまじ
めな人」であった。
47
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
逆に、
「絶対につきあいたくない」
「できればつきあいたくない」の合計回答
%が多かったのは、順に⑨「悪いことと知っていても、平気でできる人」、⑦「高
級ブランド品を身につけることにこだわる人」
、⑩「風俗関係のお店に行く人」
、
③「商売や金もうけの話をよくする人」
、⑪「ギャンブルの好きな人」であった。
しかしこれらのうち、風俗関係やギャンブルなど、大衆的な文化的特徴をも
つ人ともつきあってもかまわないと考える人が、 3 割前後の割合で存在すると
いうことも、事実である。
22.0
①道徳的
12.2
つきあってもかまわない 55.4
できればつきあいたい 22.8
7.5
1.5
②節約倹約
9.8
30.7
つきあってもかまわない 50.8
7.2
0.6
③金もうけ
20.1
できればつきあいたくない 47.3
つきあってもかまわない 27.9 4.1
0.7
④出世志向
17.9
できればつきあいたくない 41.3
つきあってもかまわない 36.5
3.5
1.4
⑤仕事業績
7.9
⑥トップで采配
9.6
⑦ブランド
つきあってもかまわない 46.3
29.4
できればつきあいたい 31.9
つきあってもかまわない 43.8
絶対につきあいたくない 44.1
12.5
12.7
37.0
4.4
つきあってもかまわない 17.6
1.2
0.1
1.3
⑧下ネタ
16.1
⑨悪いこと平気
できればつきあいたくない 30.6
つきあってもかまわない 46.5
絶対につきあいたくない 63.1
⑩風俗関連
絶対につきあいたくない 37.8
⑪ギャンブル
絶対につきあいたくない 36.7
5.5
できればつきあいたくない 30.1
できればつきあいたくない 30.5
5.6
0.9
0.4
1.2
0.3
30.1
0.6
⑫上品
2.9
⑬専門書
8.2
2.8
つきあってもかまわない 23.4 2.9
つきあってもかまわない 48.0
8.5
⑭高度な知識
36.3
31.1
9.4
28.4
12.6
できればつきあいたい
3.4
12.2
つきあってもかまわない 44.7
つきあってもかまわない 44.7
30.8
12.3
22.1
⑮クラシック
11.8
つきあってもかまわない 53.8
できればつきあいたい 22.3
10.0
1.1
⑯趣味洗練
6.7
つきあってもかまわない 36.5
⑰カラオケ好き
8.0
できればつきあいたくない 34.4
できればつきあいたい 36.1
2.5
2
0%
20%
絶対につきあいたくない
できればつきあいたい
つきあってもかまわない 48.3
40%
60%
できればつきあいたくない
ぜひつきあいたい
図 1 友人選択の基準
48
19.6
80%
6.8
100%
つきあってもかまわない
駒澤社会学研究 48号 2016年
(2)
友人選択にみる 4 つの象徴的境界
図 1 に示した友人選択の基準17項目を主成分分析(バリマックス回転)にか
け情報を縮約した結果、⑰カラオケの項目の共通性が低かったので分析から除
外し、全部で16項目から 4 つの異なる友人選択の主成分が析出された。
第Ⅰ主成分は、
「趣味の洗練された人」
、「クラシック音楽や芸術の話をよく
する人」
、
「政治や経済などの高度な知識を持っている人」、
「専門書をよく読ん
でいて議論が好きな人」
、
「ことば使いや態度が上品な人」の 5 項目から構成さ
れる主成分で、これを文化的境界と名付けた。
第Ⅱ主成分は、「ギャンブルの好きな人」、「風俗関係のお店に行く人」、
「悪
いことと知っていても平気でできる人」
「下ネタなどの冗談をすぐいう人」
、
「高
級ブランド品を身につけることにこだわる人」の 5 項目からなり、これを大衆
的境界とした。
第Ⅲ主成分は、
「トップに立って采配をふるおうとする人」や「業績をあげ
表 1 友人選択における象徴的境界
主成分分析(バリマックス回転)
Ⅰ
Ⅱ
文化的境界
大衆的境界
Ⅲ
社会経済的境界
Ⅳ
道徳的境界
趣味の洗練された人
0.765
-0.063
0.178
0.046
クラシック音楽や芸術の話をよくする人
0.722
0.002
-0.032
-0.023
政治や経済などの高度な知識を持っている人
0.639
0.085
0.381
0.114
専門書をよく読んでいて、議論の好きな人
0.617
0.232
0.101
0.172
ことば使いや態度が上品な人
0.561
-0.098
0.128
0.320
ギャンブルの好きな人
0.046
0.747
0.052
0.027
-0.012
0.746
0.120
0.169
0.033
0.669
0.046
-0.159
-0.046
0.601
0.105
0.301
0.028
0.431
0.374
-0.019
0.034
風俗関係のお店にいく人
悪いことと知っていても平気でできる人
下ネタなどの冗談をすぐいう人
高級ブランド品を身につけることにこだわる人
トップにたって采配をふるおうとする人
0.237
0.122
0.787
仕事をがんばり、業績をあげている人
0.401
-0.081
0.679
0.167
-0.037
0.229
0.605
0.400
商売や金もうけの話をよくする人
0.053
0.447
0.555
-0.127
節約や倹約にきびしい人
0.073
0.196
0.168
0.783
道徳的でまちがったことにはきびしいまじめな人
0.438
-0.131
-0.048
0.609
固 有 値
4.064
2.491
1.153
1.082
16.5%
15.7%
13.5%
9.3%
出世志向の強い人
主成分寄与率
因子抽出法:主成分分析
回転法:Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
49
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
ている人」
、
「出世志向」
、
「金もうけの話」など、社会経済的地位を志向する態
度であり、これを社会経済的境界とした。
第Ⅳ主成分は、節約や倹約、道徳的でまじめといった道徳的境界に関する軸
である。道徳に関連する項目が少なかったため、Ⅳ軸の寄与率は低いが、友人
選択の基準として、Lamontのいう道徳的境界が析出されたことは重要である。
以上の結果から、Lamontがアメリカとフランスで見出した 3 つの象徴的境
界、すなわち文化的境界、社会経済的境界、道徳的境界は、このデータでも存
在している。さらに今回のデータの特徴は、おそらくLamontは決して質問す
ることのなかった大衆的な境界についてあえて質問し、大衆的な価値や態度、
あるいは非道徳的な側面を持っている人を友人として好ましい、あるいはつき
あってもかまわないとする人々が一定数存在し、友人選択の基準となっている
可能性があることが明らかになったということである。すなわちギャンブルや
下ネタ、風俗関係に行く、悪いことと知っていても平気でするなどの、一般的
にはあまり好ましいとされていない不道徳な特性をもつタイプの人と、「つき
あってもかまわない」という寛容的な人が一定程度いたことは、わが国の大衆
文化の一側面を表しているとともに、むしろそれが好ましい友人選択の基準で
あり、あるいは選択の支障にならないケースが多々あることを物語っている。
この大衆的境界を析出できたことは、本調査が対面ではなく質問紙調査法で
実施され、人間像のプラス面とマイナス面をまんべんなく提示して、中立的に
友人選択の基準を調べることができたからである。Lamontは対面的なインタ
ビューで「尊敬に値する人」という質問の仕方であったがゆえに、マイナスの
価値態度基準を人々が回答する余地がほとんどなかったことや、中流から下の
人々の友人選択基準を調査していないからである。
次に、これら 4 つの主成分得点を各ケースごとに算出し、バウンダリー・ワー
クと諸変数との関連をみていく。
7 .バウンダリーの社会的特徴
(1)
バウンダリー・ワークのジェンダー差と学歴差
最初に 4 つの境界線に関して、主成分得点を性別・学歴別に集計し、さらに
50
駒澤社会学研究 48号 2016年
性別と学歴別の 8 つのカテゴリーごとにその平均点を算出した(表 2 、表 3 、
表 4 )である。また表 2 の平均点を図示した結果が、図 2 である。
表 2 および表 2 を図示した図 2 をみると、大衆的境界スコアでのみ、男女差
が統計的に有意になっている。つまり男性のほうが女性よりも、大衆的な人と
のつきあいに対して寛容で、大衆的な人とつきあいたいと答える割合が多いこ
とを意味している。しかしほかの境界については、男女差はなかった。大衆的
境界は、ジェンダーと強い関連をもつ境界線である。
表 3 に示すように、 4 つの境界のうち、文化的境界と大衆的境界の 2 つで有
意な学歴による差異が生じていた。社会経済的境界と道徳的境界では、学歴に
よる有意な差は生じていない。
表 2 境界線スコアのジェンダー差
性別
平均値
男
N
SD
平均値
女
N
SD
平均値
合計
N
SD
文化的境界
大衆的境界
0.006
0.379
社会経済的境界
0.046
道徳的境界
419
419
419
419
0.969
1.009
0.988
1.008
-0.009
-0.331
-0.043
-0.051
481
481
481
481
1.024
0.868
1.011
0.987
-0.002
-0.001
-0.001
-0.004
900
900
900
900
0.998
1.001
1.001
0.997
0.051
F値
.054
128.6
1.775
2.336
有意確率
n.s.
p<.0001
n.s.
n.s.
図 2 境界線スコアのジェンダー差
51
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
表 3 境界線スコアの学歴差
学歴 4 分類
文化的境界
大衆的境界
-0.690
-0.091
-0.097
83
83
83
83
0.985
0.958
1.082
1.034
-0.203
-0.099
-0.076
-0.057
247
247
247
247
SD
0.904
0.933
0.926
0.956
平均値
0.069
-0.123
0.089
0.000
211
211
211
211
SD
0.971
0.968
1.133
1.054
平均値
0.339
0.199
0.063
0.063
334
334
334
334
SD
0.918
1.055
0.909
0.953
平均値
0.023
0.010
0.015
0.000
875
875
875
875
0.985
1.001
0.990
0.987
3
3
3
3
F値
33.852
6.596
1.706
0.899
有意確率
p<.001
p<.001
n.s.
n.s.
平均値
中学
N
SD
平均値
高校
N
短大
N
大学・大学院
合計
N
N
SD
df
社会経済的境界
道徳的境界
-0.078
つまり高学歴の者ほど、文化的境界を使用していることがわかる。文化的境
界スコアの学歴差は、他と比べても大きい。また興味深いことに、大衆的境界
をよく使う傾向があるのは、
四年制大学以上の高学歴層であることがわかった。
これはあとで詳しく述べるが、男性の高学歴層の一部にみられる特徴であり、
大卒男性は大衆的境界を好んでいるものが他の学歴層よりも多いのである。
また表 4 では、性別と学歴別に分類した 8 カテゴリーごとのスコア平均値を
算出し、図 3 と図 4 に分けて、平均スコアを示した。
52
駒澤社会学研究 48号 2016年
表 4 ジェンダー・学歴別の各境界スコア(平均)
最終学歴 4 分類
文化的境界 社会経済的境界
大衆的境界
道徳的境界
男性・中学 -0.742
0.031
0.325
-0.086
女性・中学
-0.637
-0.229
-0.517
-0.069
男性・高校
-0.200
-0.027
0.218
0.018
女性・高校
-0.204
-0.111
-0.326
-0.111
男性・短大
-0.044
0.169
0.503
0.098
女性・短大
0.107
0.063
-0.332
-0.033
男性・大学・大学院
0.297
0.113
0.455
0.087
女性・大学・大学院
0.415
-0.029
-0.243
0.001
Note : 短大には、高等専門学校と専門学校を含む。
女性・短大
男性・大学・大学院
男性・短大
男性・中学
女性・短大
女性・中学
男性・中学
女性・大学・大学院
女性・高校
女性・中学
男性・高校
女性・大学・大学院
男性・大学・大学院
女性・高校
男性・短大
男性・高校
文化的境界 p<.05
社会経済的境界 n.s.
図 3 性別・学歴別の文化的境界スコアと経済的境界スコア
Note : 学歴で「短大」=短大、高等専門学校、専門学校の合計
図 3 から明らかなように、文化的境界は男女ともに学歴による影響が有意で
あり、学歴が高い人ほど文化的境界線スコアが有意に高い。また同じ学歴であ
れば、男性よりも女性のほうが、文化的境界を使用している。しかし社会経済
的境界については、性別・学歴別の平均点の差は有意ではない。
図 4 からは、大衆的境界がもっぱらジェンダーによって決まってくることが
わかる。大衆的境界を使用するのは、もっぱら男性であり、男性の中で学歴間
比較をすると、高学歴男性ほど大衆的境界を使用する人が多いことがわかる。
53
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
女性はここでも、大衆的境界を使用していないことがわかる。道徳的境界につ
いては、ジェンダーと学歴により分類したカテゴリー間の差異は有意ではな
かった。
男性・短大
女性・短大
女性・高校
女性・中学
男性・中学
女性・短大
女性・高校
女性・大学・大学院
女性・大学・大学院
男性・大学・大学院
男性・大学・大学院
男性・高校
男性・高校
男性・中学
男性・短大
女性・中学
大衆的境界 p<.05
道徳的境界 n.s.
図 4 性別・学歴別の大衆的境界スコアと道徳的境界スコア
(2)
年齢コホートによる差異
次に、友人選択における象徴的境界に対する年齢の影響を検討する。男性に
ついては図 5 に、女性については図 6 に示している。男性の場合、大衆的境界
は若い年齢コーホートほど有意に高い値を示し、若い男性が大衆的境界を使用
することがわかる。女性の場合、大衆的境界の値は、どの年齢コホートでも平
均より低いマイナス値を示し、男性と大きく異なっている。
社会経済的境界については、男性では年齢による差異はほとんどみられない
が、女性では年齢差がみられ、20代、30代の若い年齢層で、この社会経済的境
界を用いる人が多いことがわかる。しかし年齢が50歳以上と高くなるほど、女
性はこの境界線を使用しなくなり、マイナスの値を示す。
道徳的境界については、男性では年齢コホートによる差異はほとんどみられ
ないが、女性では年齢差がみられ、20代、30代の若い年齢層に顕著である。し
かし40代以上の女性では、道徳的境界は全体平均よりも低くなっている。
54
駒澤社会学研究 48号 2016年
文化
大衆
男 20-29才
男 50-59才
経済
男 30-39才
男 60-69才
道徳性
男 40-49才
図 5 男性・年齢コホート別の境界線スコア
文化
大衆
女 20-29才
女 50-59才
経済
女 30-39才
女 60-69才
道徳性
女 40-49才
図 6 女性・年齢コホート別の境界線スコア
(3)
職業とバウンダリー
図 7 は、職業別に算出した友人選択基準の境界スコアの平均値である。現在
就いている職種を 6 分類にまとめ、 4 つの境界線スコアの平均値を示した。職
業カテゴリーごとのスコア平均に関する平均の差の検定を行うと、道徳的境界
を除き、文化的境界、大衆的境界、社会経済的境界の 3 つでは、 1 %水準で有
意な平均の差が認められた。詳しい結果は注 2 に掲載している( 2 )。
55
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
まず文化的境界であるが、これは専門職、経営・管理職、事務職のホワイト
カラー職の人々ほど多く用い、それ以外の職種では低い値を示し、有意な差が
生じていた(p<.001)。大衆的境界は、専門職、経営・管理職、ブルーカラー
で多く使用され(p<.01)、男性が好む基準である。社会経済的基準は、経営・
管理職、事務職、サービス職において多く、専門職とブルーカラーで少ない
(p<.001)
。
ブルー
サービス
販売
事務
社会経済的境界
販売
経営・管理
専門
ブルー
販売
事務
経営・管理
サービス
大衆的境界
経営・管理
サービス
専門
販売
事務
専門
事務
ブルー
経営・管理
専門
ブルー
サービス
販売
事務
経営・管理
専門
文化的境界
サービス
道徳的境界
ブルー
図 7 現在の職業別の境界線スコア
(4)
経済資本と友人選択基準
友人選択の基準は、経済資本の多寡、すなわち世帯年収(税込)によって異
なるのだろうか。結論からいうと、表 5 に示すように、文化的境界スコのみが、
0.1%水準で世帯収入による有意差を示したが、他の 3 つのスコアは10%水準で
有意であり、非常に弱い関連しか見いだせなかった。
すなわち経済的に豊かな人々は文化的境界で友人を選んでいるが(図 8 参
照)、他の基準については経済資本との関連は弱いかほとんど見いだせないと
いうことである。
56
駒澤社会学研究 48号 2016年
表 5 世帯年収と境界線スコア
世帯年収
文化的境界
-0.191
182
1.036
-0.127
235
0.962
0.129
266
0.887
0.336
149
1.032
0.024
832
0.986
3
11.069
p<.001
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
0-500万未満
500-800万未満
800-1250万未満
1250万以上
合計
df
F値
有意確率
(両側検定)
大衆的境界
0.119
182
1.016
0.043
235
1.011
0.025
266
0.971
-0.154
149
1.013
0.019
832
1.002
3
2.140
p<.10
社会経済的境界
-0.130
182
0.998
-0.016
235
0.902
0.067
266
0.984
0.144
149
1.104
0.014
832
0.990
3
2.493
p<.10
道徳的境界
0.183
182
0.960
-0.034
235
1.046
-0.015
266
0.958
-0.045
149
0.997
0.018
832
0.993
3
2.193
p<.10
そこで、実際に文化的境界がどの程度の差異を示すか、より細分化した世帯
収入のカテゴリーごとに、スコア平均値を図 8 に示し た。
3000万円以上
2000∼3000万円未満
1500∼2000万円未満
1250∼1500万円未満
1000∼1250万円未満
900∼1000万円未満
800∼900万円未満
700∼800万円未満
600∼700万円未満
500∼600万円未満
300∼400万円未満
400∼500万円未満
200∼300万円未満
100∼200万円未満
100万円未満
なし
図 8 世帯収入と文化的境界スコア
57
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
(5)
階層帰属意識とバウンダリー
友人選択の基準が、階層帰属意識と関連をもつかどうかを検討しよう。階層
帰属意識を測定する質問は、「川崎市内にお住まいの方々を以下のように 1 か
ら10までの10の層に分けるとすると、あなたはどこに位置していると思います
か。
」である。その結果、境界線スコアを算出できた有効回答数でみると、一
番上の 1 を選択した人は 3 名と少なく、また下の10番も 8 名と少ないので、そ
のカテゴリーの平均値の信頼性は低いが、 1 と10のカテゴリーを除けば、階層
帰属意識と各境界線スコアの関係を検討することができる。
表 6 に示すように、分散分析による平均値のグループ間比較では、文化的境
界スコアと社会経済的境界スコアの 2 つにおいて、階層意識は有意な関連性を
もっていた。
図 9 に示すように、文化的境界スコアは階層意識とパラレルな関係にあり、
階層帰属意識が上に近いほど、
文化的境界線を多く使用する傾向がみてとれる。
社会経済的境界についても、同様の傾向であった。
大衆的境界は、グループ間の有意差は統計的にはなかったものの、階層帰属
意識が 6 ∼ 9 の階層意識の低い層で比較的高いスコアを示すことがわかる。
図 9 階層意識(10段階)と文化的境界スコアの平均値
58
駒澤社会学研究 48号 2016年
表 6 階層帰属意識と境界線スコア
階層帰属意識
文化的境界
大衆的境界
0.284
-0.120
-0.512
3
3
3
3
SD
0.493
1.505
0.643
0.890
平均値
0.709
-0.139
0.409
0.335
9
9
9
9
SD
0.947
1.302
1.487
1.033
平均値
0.420
-0.126
0.051
0.132
90
90
90
90
SD
0.974
0.893
1.054
0.970
平均値
0.235
0.052
0.242
-0.081
131
131
131
131
0.968
1.108
0.940
1.060
-0.050
-0.019
0.099
-0.017
299
299
299
299
0.936
0.923
1.010
0.960
-0.098
0.108
-0.051
0.018
119
119
119
119
0.935
1.032
0.885
0.956
-0.083
0.045
-0.103
0.122
89
89
89
89
1.097
1.033
0.995
0.996
-0.254
0.047
-0.485
-0.034
72
72
72
72
1.013
1.090
0.978
1.090
-0.293
0.558
-0.378
-0.099
20
20
20
20
SD
0.850
1.088
1.115
1.188
平均値
0.309
-0.370
-0.123
0.216
8
8
8
8
SD
1.090
0.820
0.859
1.143
平均値
0.024
0.020
0.011
0.007
840
840
840
840
0.986
1.003
1.004
1.001
平均値
1上
N
2
N
3
N
4
N
SD
平均値
5
N
SD
平均値
6
N
SD
平均値
7
N
SD
平均値
8
N
SD
平均値
9
N
10下
N
合計
N
SD
df
F値
有意確率
社会経済的境界
道徳的境界
-1.336
9
9
9
9
4.386
1.197
3.876
1.206
p<.001
n.s.
p<.001
n.s.
59
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
(6)
社会的成功感とバウンダリー
社会的成功感と友人選択の基準の関連を検討すると、階層帰属意識とは異な
る関係性を見出すことができた。
社会的成功感は、次の質問と回答選択肢によって測定し、次の結果を得た。
社会的成功感:
「市内にお住まいの方々と比較して、あなたはどのくらい社
会的に成功していると思いますか。
」
1 .非常に成功している(0.9%)
2 .成功している(14.6%)
3 .すこし成功している(41.8%)
4.あまり成功していない
(27.7%)
5 .ほとんど成功していない(15.0%)
社会的成功感と境界線スコアの分布を分散分析にかけたところ、表 7 に示す
結果が得られている。すなわち道徳的境界を除く 3 つの境界線スコアで、社会
的成功感が有意な差を示した。
社会的に成功していると感じているものほど、文化的境界と社会経済的境界
を使用するが、大衆的境界は使用しない。大衆的境界を使う人は、社会的成功
感が低い人に多いのである。
表 7 社会的成功感と境界線スコア
社会的成功感
1 非常に成功
2 成功
3 少し成功
4 あまり成功
していない
5 ほとんど成功
していない
合計
df
F値
有意確率
60
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
文化的境界
0.094
6
1.599
0.269
125
0.984
0.008
352
1.006
-0.034
230
0.932
-0.128
128
1.007
0.015
841
0.992
4
2.897
p<.05
大衆的境界
-0.432
6
1.104
-0.236
125
0.906
0.008
352
1.010
0.124
230
1.000
0.193
128
1.045
0.028
841
1.005
4
3.949
p<.01
社会経済的境界
0.649
6
1.143
0.298
125
1.021
0.078
352
0.959
-0.041
230
0.939
-0.335
128
1.065
0.019
841
0.997
4
7.825
p<.001
道徳的境界
0.477
6
1.747
-0.045
125
0.980
0.027
352
1.020
-0.023
230
0.839
0.042
128
1.197
0.008
841
1.003
4
.539
n.s.
駒澤社会学研究 48号 2016年
(7)
社会的軌道とバウンダリー
ここで社会的軌道の効果、つまり親世代の階層状況が本人の友人選択基準に
どのような影響を与えているかを調べた。
父母の学歴の影響、父職業の影響、親からの学歴移動パターの影響について
調べた。
表 8 父学歴と境界線スコア
父 学 歴
文化的境界
平均値
中学以下
(旧制高小以下)
高校
(旧制中学)
大衆的境界
社会経済的境界
道徳的境界
-.223
-.037
.020
N
293
293
293
-.05
293
SD
.987
.912
.967
.949
平均値
.145
.100
.005
-.039
N
227
227
227
227
SD
.960
1.008
.997
.975
.243
.105
平均値
大学・短大・
高専・大学院
N
(旧制高校・師範含む)
SD
.014
.038
279
279
279
279
.961
1.088
1.032
1.026
平均値
.044
.020
.022
.005
N
799
799
799
799
SD
.991
1.004
.998
.985
合計
2
2
2
2
F値
df
18.134
1.194
0.071
2.250
有意確率
p<.001
n.s.
n.s.
n.s.
表 8 の結果から、父学歴は文化的境界に対してのみ影響を与えている。父学
歴が高いほど、その子どもである本人は、文化的境界を用いて友人選択してい
る。また表 9 の結果から、母学歴は文化的境界と大衆的境界に対して、有意な
効果をもっていた。母学歴が高いほど、文化的境界を用いる傾向にあり、また
大衆的境界をも用いるという矛盾した結果であった。これについては、すでに
みてきたように、男性高学歴層が大衆的境界を用いる傾向があることに起因し
ていると推測できる。
すなわち男性の高学歴層は、文化的に洗練された基準で友人を選ぶものと、
そうではなく全く逆に大衆的で不道徳的な価値態度をもつ友人を好むものに、
分かれている可能性が高い。
61
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
表 9 母学歴と境界線スコア
母 学 歴
中学以下
(旧制高小以下)
高校
(旧制高女)
大学・短大・
高専・大学院
合計
df
F値
有意確率
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
平均値
N
SD
文化的境界
-0.166
304
1.004
0.103
379
0.950
0.406
120
1.007
0.047
803
0.997
2
15.865
p<.001
大衆的境界
-0.097
304
0.915
0.050
379
1.010
0.170
120
1.179
0.012
803
1.006
2
3.566
p<.05
社会経済的境界
-0.059
304
1.011
0.050
379
0.976
0.106
120
1.040
0.017
803
1.000
2
1.585
n.s.
道徳的境界
-0.020
304
0.993
-0.021
379
0.942
0.160
120
1.061
0.006
803
0.981
2
1.731
n.s.
次に父親の職業の影響をみておこう。表10は、父親の主な職業別に集計した
境界線スコア平均値と標準偏差である。
文化的境界と道徳的境界において、父職が有意な差をもたらしている。文化
的境界スコアは、父職が専門職および管理・経営の場合に、もっとも高い値を
示す。また道徳的境界については、農業とサービス職で高く、販売職で最も低
い値を示した。
以上の結果から、文化的境界は、いずれの出身階層地位指標をみても、最も
親世代の影響を受けていることがわかる。
さらに、社会的軌道を学歴の世代間移動に限定して検討した結果、図10に示
すように、母学歴と本人学歴が両方高い場合に、文化的境界のスコアが高くな
り、
母学歴の独自効果が認められた。
しかし父学歴では明瞭な差はでていなかっ
た(結果略)。このことは、片岡がかつてSSM全国調査およびそれに先立つ神
戸調査でも明らかにしたように、わが国では男性は全体的に大衆文化嗜好が強
く学歴差も小さいこと、それに対して女性は文化資本を女性の地位にとって重
要な要素とみなしているがゆえに、文化資本は母から子(とくに娘)へと継承
されるという「文化的再生産のジェンダー構造」と名付けた日本的特徴を傍証
している(片岡 1992, 1996, 1997, 2001a, 2002, 2003)
。
62
駒澤社会学研究 48号 2016年
表10 父職別の境界線スコア
父職業 7 分類
平均値
専門
N
SD
平均値
経営・管理
N
SD
平均値
事務
N
SD
平均値
販売
N
SD
平均値
サービス
N
SD
平均値
ブルーカラー
N
SD
平均値
農業
N
SD
平均値
合計
N
SD
df
F値
有意確率
文化的境界
.409
86
.910
.250
176
.985
.056
59
.970
.096
51
.946
.308
21
1.023
-.126
138
.958
-.233
71
.930
.099
602
.978
6
5.091
p<.001.
大衆的境界
.080
86
1.250
.053
176
1.016
.067
59
1.091
-.087
51
.982
.263
21
1.073
.062
138
1.001
-.248
71
.790
.020
602
1.034
6
1.218
n.s.
社会経済的境界
-.188
86
1.021
.139
176
1.069
.072
59
.995
.042
51
.989
-.164
21
.893
.015
138
.900
-.012
71
.872
.021
602
.984
6
1.236
n.s.
道徳的境界
-.028
86
.842
.012
176
1.065
.012
59
1.216
-.442
51
.895
.173
21
.698
.052
138
.946
.158
71
.891
-.000
602
.987
6
2.224
p<.05
母大学→大学
0.505
母高校→大学
0.199
母中学→大学
0.129
母中学→高校
-0.240
母中学→中学
-0.723
母高校→高校
-0.133
母高校→中学
-0.779
母中学→中学 母中学→高校 母中学→大学 母高校→中学 母高校→高校 母高校→大学 母大学→大学
図10 世代間学歴移動パターン(母学歴―本人学歴)と文化的境界スコア
63
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
(8)
その他の要因
上記以外に、
「中学 3 年時の成績(自己申告)」や「階層帰属意識の判断基準
8 項目」
、
「15歳時の暮らし向き」
、
「生活満足度」と、 4 つの象徴的境界スコア
の関連を統計的に探ってみた。具体的な数値は省略するが、次の結果の要約の
部分で、結果をまとめている。
8 .友人選択における象徴的境界の特徴
これまでの分析結果から、
象徴的境界の 4 つの基準について、
統計的にわかっ
たことを、表11にまとめた。◎は 1 %水準で、〇は 5 %水準で統計的に有意な
差が見いだせた項目であり、△は10%水準、×は有意ではなかったことを意味
している。また各境界線を多く使用する代表的なカテゴリーについて、簡便に
記載している。
表11 境界スコアと変数間の関連性(一元配置分散分析)
有意確率 ◎→ 1 %水準有意 ○→ 5 %水準 △→10%水準 ×→有意でない
説明変数
文化的境界
性別
×
年齢コホート
学歴
職業分類
( 6 分類)
大衆的境界
社会経済的境界
道徳的境界
◎ 男性
×
×
×
◎ 若い
◎ 若い
◎ 若い
◎ 大学
◎ 大学
◎ ホワイト
◎ 上層ホワイト
&ブルーカラー
×
×
◎ 経営・管理
サービス職
×
世帯収入
◎ 高収入
△ 低収入
△ 高収入
△ 低収入
15歳時暮らし向き
◎ 豊か
×
×
×
中 3 学力
◎ 上
×
×
○ 下
◎ 上
× 低
◎ 上
×
社会的成功
○ 成功 ◎ 成功していない
◎ 成功
×
仕事の満足度
×
○ 不満足
×
×
生活の満足度
◎ 満足
◎ 不満足
×
×
収入
○ 考慮した
×
×
×
財産
○
×
×
○ 考慮
住宅
◎
×
×
−
学歴
◎
◎ 考慮しない
×
×
職業の内容
◎
○ 考慮しない
×
×
職業の安定性
○
○ 考慮しない
×
×
勤め先の知名度
○
×
△ 考慮した
×
教養や趣味
◎
◎ 考慮しない
×
×
◎ 上層ホワイト
×
×
× 父学歴
◎ 高
× ×
×
母学歴
◎ 高
○ 大卒
×
×
階層帰属意識
(10段階)
階層判断基準
父職業
(上層ホワイト・下層
ホワイト・ブルー)
64
駒澤社会学研究 48号 2016年
表11を概観すると、階層的な地位変数ともっとも強い関連を示すのが、文化
的境界であることがわかる。さらに道徳的境界は、もっとも階層的な影響をう
けない友人選択基準であることも明らかである。
以下、各境界線の基準ごとに、分析結果を要約する。
(1)
文化的境界の特徴
文化的境界を友人選択に用いる人の特徴は、学歴が高く、学校での成績もよ
い、学校で成功している文化資本の高い人たちである。文化的境界はホワイト
カラーの採用する友人選択基準であるとともに、経済資本にも恵まれており世
帯収入は高い人々の友人選択基準となっている。したがって文化的境界を採用
する人は、社会的にも成功感が高く、生活満足度も相対的に高かった。
出身階層をみても、両親の学歴や父親の職業階層が高い人が多かった。父母
の学歴が高く、父親の職業も専門・管理・経営という上層ホワイトカラーに顕
著にみられ、同時に15歳時の暮らし向きが豊かであった人ほど文化的境界を使
用していた。母学歴はとくに効果をもっていた。
性別や年齢コホートによる差異は、見いだせなかった。
文化的境界を作動させる人は、出身階層においても、現在階層においても、
文化資本、経済資本ともに恵まれた状況にある人達が多いといえる。
また 文化的境界を作動させる人ほど、階層序列や階層判断に敏感であると
いう結果も得られた。
(2)
大衆的境界の特徴
友人選択における大衆的境界とは、単に大衆的な価値だけでなく、不道徳的
な行為を許容するという内容も含んでいる。若い高学歴男性の専門職と管理職
の男性とブルーカラー男性に特徴的にみられ、かれらは大衆的あるいは不道徳
なことがらに寛容である友人とつきあってもよいと考えている。この大衆的境
界で友人を選択する人の特徴は、学歴は大学卒と高くても、収入が低く、あま
り社会的に成功したとは思っていない男性、また仕事や生活にも不満を抱いて
いる男性に多いという特徴があった。女性はこの基準をほとんど採用しないと
65
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
いうことも明らかとなった。
かれらのもう一つの特徴は、階層帰属判断において学歴や職業の内容および
安定性を考慮していないこと、また教養や趣味を階層判断に使用しないという
点で、文化資本や洗練された趣味に反発を示す反文化資本的な価値基準をもっ
ていることである。
戦後の急激な高学歴化のなかで、元手となる文化資本を家族からは受け継が
ずに大学へ進んだ層、あるいはブルーカラーの仕事についた層で、仕事や生活
への不満が大きいという特徴からみて、たとえ大学を出ていたとしても、恵ま
れた職業状況にはないと考えられる。
(3)
社会経済的境界の特徴
社会経済的境界を使って友人を判断する人は、年齢的には若く、管理職や経
営者層のほかサービス職で金銭的に高収入を得るという方法で社会的に成功し
た人々に多くみられる。かれらの特徴は、社会的に成功しているという感覚が
強いことである。また階層帰属意識も高い部類であるが、階層意識の判断基準
については、一貫した特徴はみられない。割合としては多くないが、男女とも
に若い世代に見いだせる友人選択基準である。
(4)
道徳的境界の特徴
道徳的境界は、性別を問わずに多くの人が共有することはあるものの、年齢
的には若い人に多く、学力は下のほうであったものが多いという特徴をもつ。
しかし全体的にみて、友人を選ぶ場合に道徳的境界を用いる人の特徴は、あま
り明確ではない。なぜなら階層変数や属性変数とはほとんど有意な関連性をも
たず、階層をこえて広くいきわたっている友人選択基準だからである。
9 .知見と結論
以上の分析を通して、友人選択において使用される 4 つの基準について得ら
れた知見と結論をまとめておこう。
① 友人選択に文化的境界を用いるのは、専門職、管理職など大卒の上層ホワ
66
駒澤社会学研究 48号 2016年
イトカラー(専門、管理、経営)を中心とした都市部のupper-middle階級で
ある。かれらが保有している高い文化資本を、友人にも求めるという点が特
徴的である。この基準を重視する人は、親世代から豊かな経済資本と文化資
本をもっている階層から出てきているものが多く、社会的に成功しており、
階層帰属意識も高い。
しかし経済よりは文化的な要素を重視するという点で、
かれらの階層文化と関連していることがわかる。
特に教員をはじめとする文化的専門職や研究技術職層、総合職・事務職な
どのホワイトカラーに多く見られる特質である。都市部のupper-middleクラ
スの人々は文化的境界線を使用している。
Upper-middleクラスの人々が文化的境界線によって、
友人交際を判断し(排
除し)、文化基準として同じような嗜好性をもつ人々と交際している。かれ
らは正統文化趣味のライフスタイルともなじみやすいことから、友人を選ぶ
際に、文化的境界線を引くことは、階級の文化戦略、社交戦略となっている
可能性が高い。すなわち中上流の人々が友人としてつきあうか、つきあわな
いかを判断するステイタスシンボルは、ここでいうような文化的な特徴を
もっているということになる。
文化的境界は、
(出身階層からみても)教育システムを通じて階層再生産
を果たしたupper-middleクラスの用いるバウンダリー・ワークである。母学
歴などの社会的軌道の効果があることから、文化資本の蓄積のうえに、文化
的境界を用いた友人選択を行っているといえる。
② 大衆的境界は、若い男性を中心に広がり、男性比率の高い上層ホワイトカ
ラー職とブルーカラー職の両方で使用されている。学歴は比較的高いが、大
衆趣味と関連が高く、これにより、階層による文化的差異がみえにくくなっ
ていると考えられる。
この大衆的境界は明らかに男性中心の文化戦略である。社会のなかで、あ
るいは職場の中で男性特有の大衆的文化によってジェンダーの壁を作り出
し、女性を排除するシンボルとして作用しているのではないか。
③ 社会経済的境界は、経営・管理的な仕事、ビジネス関連の仕事に就く人々
の間で支持されるが、文化的専門職層には支持されていない。
67
Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
④ 分析では提示していないが、友人選択における文化的境界と大衆的境界の
2 重戦略を使い分けている集団があり、それは男性のホワイトカラーのビジ
ネス関連の職業についている人たちであった(結果略)
。
⑤ 友人選択における道徳的境界は、階層的地位によるバイアスがほとんどな
いことから、国民文化として人々が望んでいる特性でもある。ブルデューが
イギリス国民を指して述べたような、国民文化としての文化資本にあたると
考えられる。
注
( 1 )Lamontはアメリカのニューヨークとインディアナポリスおよびフランスのパリにおい
て実施したupper-middleクラスに対する調査において、この階級に所属する人々の定
義を 3 つの群に分類し、これらに属するものと定義している。①大学卒の専門職、準
専門職(例えばソーシャルワーク、司書、初等中等学校教員)、②公的あるいは非営
利セクターの経営管理グループ(エグゼクテゥブ、中間管理職、経営者)、③ビジネ
スマン(自営専門職、さまざまな規模のビジネスオーナー)である。
(2)
現在の職業別に求めた境界線スコアは、表のとおりである。
現職 6 分類
平均値
大衆的境界
社会経済的境界
道徳的境界
0.288
0.248
-0.146
156
156
156
156
SD
0.991
1.100
0.876
0.958
平均値
0.102
0.146
0.438
0.059
122
122
122
122
SD
0.920
0.938
0.930
0.884
平均値
0.266
-0.155
0.187
-0.047
153
153
153
153
0.896
0.960
1.031
1.063
-0.335
0.013
-0.015
-0.123
63
63
63
63
0.872
0.882
0.775
0.830
-0.346
-0.049
0.224
-0.095
66
66
66
66
1.069
0.971
1.206
0.945
-0.299
0.271
-0.289
0.108
94
94
94
94
SD
0.954
1.021
1.108
1.139
平均値
0.040
0.085
0.070
-0.003
654
654
654
654
0.982
1.004
1.014
0.985
有意確率
p<.001
p<.01
p<.001
n. s.
F値
10.537
3.674
8.242
0.705
5
5
5
5
専門
度数
経営・管理
度数
事務
度数
SD
平均値
販売
度数
SD
平均値
サービス
度数
SD
平均値
ブルー
度数
合計
度数
SD
df
68
文化的境界
0.013
駒澤社会学研究 48号 2016年
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Komazawa Journal of Sociology No.48, 2016
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*本研究は、平成 9 年度∼ 11年度科学研究費補助金 基盤研究B
(1)研究代表:片岡栄美に
よる共同研究内で実施された調査データを使用した。また結果は、2005年 6 月の関東社会
学会第53回大会@立教大学でのテーマ部会A「文化戦略の社会学」にて筆者が報告した「大
衆文化社会のディスタンクシオン」の報告資料に基づいている。
**筆者は平成26年(2014年) 4 月より、通称を片岡栄美から片岡えみに改名した。
70
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