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脳疾患への MagnetizationTransfer

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脳疾患への MagnetizationTransfer
-総説
脳疾患への M
a
g
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e
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z
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t
i
o
nT
r
a
n
s
f
e
r法の応用とその解釈
羽生春夫
要
"
'
日
高分子と水の相互作用を利用した m
a
g
n
e
t
i
z
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t
i
o
nt
r
a
n
s
f
e
r (MT) 法は,従来の撮像法から得られな
い微細な分子構造的変化の検出に優れ,組織の特性評価としての有用な情報をもたらす.本法の撮像法
は比較的簡便であり,特別なハードウエアも必要とせず,多くの頭蓋内疾患や中枢神経疾患への臨床活
用が期待される.
(脳循環代謝
13 ・ 217~225 ,
2
0
0
1
)
キーワード:M
a
g
n
e
t
i
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i
o
nt
r
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r,m
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cr
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s
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c
ei
m
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g
i
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g,B
r
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n
1
. 原理と撮像法
はじめに
生体内のプロトンは,自由水として自由に動け
M
a
g
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z
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o
nt
r
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s
f
e
r (MT) 法とは,高分子
と水の相互作用を利用した新しい撮像法であ
るプロトンから高分子(蛋白質など)に結合し運
る1)本法はすでに, M Rangiographyにおける
動の制限されたプロトンまでさまざまな形で存在
組織コントラストの向上のために広く利用されて
する.自由プロトンは狭い共鳴周波数をもち, T
いるが,一方組織成分や分子構造の違いなどに
2が長い (>10ms) のに対して,高分子プロト
よって異なったコントラストが得られることか
Hz) をもち, T 2
ンは広い共鳴周波数(約 20k
i
o
p
h
y
s
i
c
a
lまたは b
i
o
c
h
e
m
i
c
a
lな情報をもた
ら
, b
が非常に短い (<200μs) ため,通常の方法から
らしてくれる.そのため,組織の特性評価 (
t
i
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s
u
e
c
h
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r
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o
n
) としての活用法が期待されて
f
r
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rp
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(
o
b
s
e
r
v
a
b
l
e
)
いる.本稿では,はじめに M T法の原理と撮像
法について述べ,次いで脳疾患への臨床応用につ
いて解説する.
.
.
.
-
S
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r
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排 r_..
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n
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c
ep
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:
東京医科大学老年病科
干1
6
0
00
2
3 東京都新宿区西新宿 6-7-1
a
x
:
0
3
3
3
4
2
2
3
0
5
T
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l
:
0
3
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3
4
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1
1,F
図1 M
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f
e
r法の原理.
E
m
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k
c
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mn
elP
目
目
-217一
l
脳循環代謝第 1
3巻 第 4号
ことができる.いかなる撮像条件下においても,
MR信号は観測されない引 (
図1
)
.
自 由 プ ロ ト ン の 共 鳴 周 波 数 か ら 離 れ た RF
正常者のデータベースとの比較が必要で、あるが,
p
u
l
s
e(
o
f
f
r
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o
n
a
n
c
ep
u
l
s
e
) を照射すると,高分
筆者の施設ではファントム実験の成績をもとに
子プロトンが選択的に照射され,飽和した高分子
MRI装置ごとに娠像条件を変え,最適条件を設
c
h
e
m
i
c
a
lexchange)
プロトンの磁化が化学交換 (
f
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o
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c
ep
u
l
s
eの照射前
定している.なお, o
や交差緩和 (
c
r
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sr
e
l
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x
a
t
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o
n
)などの過程を経て,
後から MTR計算画像が作成されるまでの時間は
m
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nt
r
a
n
s
自由プロトンへ移動する (
およそ 5分程度である.
f
e
r
).この時,自由プロトンの信号強度が減少す
2
. 臨床応用
るが,この信号変化によって高分子プロトン量を
間接的に評価することができる.
一般に, M T効果の程度は下記の式
1
) 健常者の MTR (
図2
)
MTR (
m
a
g
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r
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f
e
rr
a
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o
)=[(Mo-
健常脳では,灰白質よりも白質で MTRが高い.
Ms)/Mo]x100(%)
特に脳梁で最も高く,これは有髄線維(ミエリン)
(Mo=o
f
f
r
e
s
o
n
a
n
c
ep
u
l
s
e照射前の信号強度,
の密度に起因している.同様の理由から,灰白質
の中では視床の MTRが比較的高い.正常加齢に
Ms=off.
・
r
e
s
o
n
a
n
c
ep
u
l
s
e照射後の信号強度)
で表される.これは高分子結合水と自由水の総和
ともなう変化としては,脳梁や前頭葉白質で
に対する高分子結合水の割合を示す指標と考えら
MTRの 低 下 が み ら れ た と の 報 告 が み ら れ る
れ
, MTRが高ければ高分子結合水がより多く,
がぺ加齢による有意な変化を認めなかったとす
低ければ自由水がより多いことを示す.中枢神経
る報告もあるい.
系では,高分子プロトンはミエリンや神経細胞膜
などに豊富に含まれ,これら高分子プロトンを多
く含む組織では自由プロトンへの磁化移動が大き
く自由プロトンの信号低下が大きくなるため
(Ms
/Moが小となる), MTRは高い.一方,高
分子プロトンが少ない組織(例えば脳脊髄液など)
では,自由プロトンへの磁化移動が小さく自由プ
ロトンの信号低下が小さいため (Ms
/Moが大と
なる), MTRは低い.このように,高分子プロ
トンと自由プロトンの存在する割合で MTRに差
異がみられることから,組織の分子構造的変化の
評価が可能となる.
MTRは 撮 像 条 件 に よ っ て 異 な り , o
f
f
r
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s
o
nancep
u
l
s
eの波形,照射時間,強度,周波数な
どの組み合わせによって左右される.例えば, o
f
f
-
r
e
s
o
n
a
n
c
e周波数は,小さい方が高分子プロトン
の M T効果がより大きくなるが,あまり小さく
図 2 健常脳
(
7
4歳,久ー
性)の MTR計算画像.
灰白質より大脳白質や脳梁で高信号となる. i
楽
音i
l
灰白
すると直接自由プロトンを照射してしまうことに
質の中では,視床がやや高信号となり.
f
f
r
e
s
o
n
a
n
c
eの位置を設定す
なるため,適当な o
ことを示す. tJ最{象条件は
る必要がある.パルスシーケンスについては, SE
法や
GRE法があり, T1強調画像,プロトン密
度強調画像, T2強調画像に類似した画像を得る
-218
MTRが高い
GRE法 (
T
R:
3
9
0m
s
.T
E
:
1
2m
s
. フ リ ッ プ 角 60度)で. o
f
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.
r
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n
c
eパ ル ス
g
a
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y
p
e
. パ ル ス 強 度 は 13μT. o
f
f
.
21
.5H
zの 術 城 帽 で
r
e
s
o
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n
c
e周波数は1.0KHzで. 1
の波形は
8.
19
2ms間照射した.
脳疾患への M
a
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r
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f
e
ri
去の応用とその解釈
2
) 多発性硬化症
ことを示し,これは正常白質の量の減少を反映し
M T法は従来のいかなる画像診断法よりも脱髄
たものと考えられる(図 3
)
. この全脳 MTRヒ
巣を鋭敏にかつより特異的に検出することから,
ストグラムによる解析は,身体障害度や知的機能
m
u
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p
l
es
c
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r
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s
.MS)
欧米では多発性硬化症 (
障害とも密接な相闘がみられ11),病態把握や治療
の診断にルーチン検査として活用されている .MS
効果判定などにも応用できる.
の病変は,炎症,浮腫,脱髄,グリオーシス,壊
なお, MSに関しては最近の Neurology誌の総
死など多彩な変化を示すが,これを反映して病巣
説 12)を参照されたい.
の MTRも多様で、ある.組織学的な脱髄の程度を
3
) 大脳白質病変
反映して,病巣中心部の MTRは低く,周辺にい
ピンスワンガー病や脳血管性痴呆では, T2強
くにしたがって高くなることがしられている 5)
調画像やプロトン密度強調画像, FLAIR画像か
また,脱髄の高度な急性期病巣で MTRが低く,
ら広範な大脳白質病変(高信号域病変として一様
グリオーシスをともなう慢↑生期では高くなること
e
r
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v
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a
rh
y
に描出され,側脳室に接した p
から,脱髄巣の年齢を推定する上でも有用であ
p
e
r
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i
t
y,PVHや深部白質にみられる deep
る6) 脱髄巣はしばしば造影効果を伴うが,通常
w
h
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ematterh
y
p
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r
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t
y,DWMHがある)が
量の造影剤で造影される病巣は 3倍量の造影剤で
観察され,知的機能障害との関連が指摘されてい
造影される病巣よりも MTRが低くより組織障害
る.同様の白質病変はその他の神経疾患やさらに
の強いことが示されている 7) 一方, T2強調画
健常老年者で観察されることも少なくない.画像
像などで一見正常にみえる領域でも MTRの低下
的に観察される白質病変の成因や組織学的背景,
がみられ叩),顕微鏡的な脱髄を反映しているも
臨床的意義はそれぞれ異なり,多様な病態が含ま
のと推測されている.
れているものと考えられるが,従来の撮像法から
最近, vanBuchemら101
.1
)は全脳における MTR
それぞれの病態の相違を区別することはできな
のヒストグラムを作成し, MS患者では正常者と
かった. M T法では,組織病変の相違を反映して
の比較からヒストグラムのピークが低下している
大脳白質病変の鑑別の可能性が示されている.
明らかな知的機能障害や神経症状のみられない
老年者の非特異的な大脳白質病変 (PVH領域)の
八八パ仰いいい
100
c
]
)
M
a
官
MTRは正常白質に比べてわずか 8-14%程度の
低下 13-15)を示すにすぎないが,脳血管性痴呆やピ
ンスワンガー病の PVH病変はおよそ 20%前後
の低下がみられ,両者の相違は明らかである 16,17)
(
図4
).さらに, MSの脱髄巣(約 30%の低下)
や慢性期脳梗塞巣(約 35%の低下)ではより高
50
度の MTRの低下がみられており, MTRの測定
c
]
)
側
i
2
5
が種々の原因からなる大脳白質病変の鑑別に有用
となる口) (
図5
)
. PVH領域は,病理組織学的に
梗塞や脱髄,グリオーシスなど明らかな虚血性の
20
30
40
50
60
MTR
組織障害を示す場合から,ほとんど組織障害をと
l
u
i
ddynamicsの障害による脳間質内の
もなわず f
図 3 多発性硬化症の全脳における MTRヒストグラ
ム (
v
a
n
B
u
c
h
e
mら仙の報告より引用).
多発性硬化症の患者では,ピークの高さが低く,
MTRの低値となるピクセル数が増加している(実
線:多発性硬化症,点線:正常コントロール).
水分貯留からなるより生理的な変化まで多様な病
態が含まれる. MTRの低下は主としで髄鞘や軸
索の崩壊の程度を反映し知的機能障害や神経症
候との密接な関連も認められているべしたがっ
-219
脳循環代謝第 1
3巻 第 4号
ピンスワンガー病
非痴呆老年者
T
2
MTR
図 4 ピンスワンガー病忽者 (
80歳,女性)と非痴呆老年者 (
8
2歳,男性)の T2
強調画像と MTR計算画像.
T2強調岡{象では,広範な PVHが観察されるが両者の相違を区別することは困縦
である. MTR計算画像では,ピンスワンガー病患者の P
VH領域はより低信号と
なり, MTRの低下がみられる.
て,大脳白質病変の組織障害の程度を推定し,臨
おして組織の微細構築学的評価が可能となる 18)
床症候との関連を評価する場合には MTRの測定
筆者の経験では, MTRや ADCの測定 l酬 はとも
が有用である.特に今日,定義や概念などに問題
にピンスワンガー病とその他の虚血性白質病変と
の多いピンスワンガー病を論じる際には,従来の
の鑑別に有用であったが, MTRの方が測定値の
画像診断に加えた M T法による解析は必須と考
変動が少なく再現性が高いこと,病変を識別する
えられる.
良好なコントラストが得られること,そして簡{更
虚血性大脳白質病変の鑑別診断に有用な情報を
もたらす撮像法としては,他に拡散強調画像があ
性などの点で,実際の臨床の場では MTRの方が
有用と考えている.
げられる.この方法では,水分子の拡散係数 (
a
p
-
p
a
r
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n
td
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o
nc
o
e
f
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c
i
e
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t,ADC) の i
l
lJ定をと
ビンスワンガー病に類似した虚血性の大脳白質
病変を伴う遺伝性の疾患として CADASIL (
c
e
r
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-
-220一
脳疾患への
M
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e
r:
i
去の応用とその解釈
Hvj
り
。
Z3
504
る.したがって,拡散強調画像のように虚血巣の
早期検出としての有用性はないが,梗塞巣の発症
40
後時間の推定や経時的変化の観察などに役立つ.
35
なお,内頚動脈閉塞症による慢性低湛流におい
て,梗塞には至らない虚血組織の MTRは種々の
30
p
o
s
i
t
r
o
ne
m
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s
s
i
o
nt
o
程度に低下し,これが PET(
2
5
NWM
PVH-ND
十 12%)
PVH
占 D
(
-20%)
MS-plaque
・
( 30%)
mography) による脳酸素消費量と有意な相聞を
I
n
f
a
r
c
t
(-35%)
認めることから,組織の可逆性の有無を判定する
図 5 大脳白質病変の MTR (平均±標準偏差)NWM:健常者の正常白質, PVH-ND:非 痴 呆 老 年 者
のP
VH,PVH-BD:ビンスワンガ-'}荷の PVH,M
S
p
l
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q
u
e 多発性硬化症のJ
J
見髄斑, I
n
f
a
r
c
t
:慢 性 W
J脳 梗
塞巣.
図の下方に
指標となりうることが報告されている加.
5
) アルツハイマー病
アルツハイマー病 (
A
l
z
h
e
i
m
e
r
'sd
i
s
e
a
s
e,AD)
では,海馬や海馬傍回を含む側頭葉内側部に高度
NWMに対する MTRの低下率を示す.
な病理学的変化が生じ, CTや MRIから海馬領
域の著しい萎縮がみられる.しかし多くの容積
測定 (
v
o
l
u
m
e
t
r
y
) による成績では海馬領域の萎
b
r
a
la
u
t
o
s
o
m
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r
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h
a
l
o
p
a
t
h
y
) があ
る.本疾患でも同様に,大脳白質病変の MTRは
縮は必ずしも ADに特有な変化ではなく,その
他の痴呆性疾患でも同様に観察される.海馬の
MTRを測定した検討では, ADでは有意な MTR
低値となるが,さらに正常と思われる白質や灰白
の低下がみられたのに対して,その他の痴呆性疾
質の広範な領域でも MTRの低下が認められてい
患(脳血管性痴呆やパーキンソン病,前頭側頭型
る211
痴呆など)では側頭葉内側部の萎縮がみられでも
その他にも大脳白質病変は種々の疾患で認めら
p
r
o
g
r
e
s
s
i
v
em
u
l
れるが,進行性多巣性白質脳症 (
有意な MTRの低下がみられなかったことから,
ADと そ の 他 の 痴 呆 患 者 と の 鑑 別 に 応 用 で き
る べ さ ら に MTRの低下は,病初期からみとめ
t
i
f
o
c
a
l
l
e
u
k
o
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p
h
a
l
o
p
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t
h
y,PML)や HIV脳症
(
H
I
V
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s
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o
c
i
a
t
e
dw
h
i
t
em
a
t
t
e
rl
e
s
i
o
n
)の大脳白
質で MTRの低下がみられ,特に PMLでは脱髄
を反映して MTRの低下は著明である却.
組織学的背景についてはまだ十分な検討はなされ
髄鞘の代謝障害に起因した形成不全は白質ジス
ていないが, ADの病初期からみられる内嘆野皮
トロフイーと総称されるが,このうち副腎白質ジ
質から海馬支脚, CA1ニューロンに及ぶ神経細
rabbe病 (
g
l
o
b
o
i
dc
e
l
l
l
e
u
k
o
ストロフィ _23)や K
d
y
s
t
r
o
p
h
y
)加では,髄鞘の脱落を反映して高度の
胞脱落やグリオーシス,一部有髄線維の減少など
られ早期診断としても活用できる可能性が指摘さ
れている加(図 6
)
. 海馬における MTRの低下の
の変化を反映したものと推測される.
また, ADでは脳梁の萎縮がみとめられ,大脳
MTRの低下がみられる.
このように,髄鞘や軸索の脱落,崩壊の程度を
皮質病変に伴う二次変性が推測されている.明ら
反映する M T法は,大脳白質病変の診断に対し
かな脳梁の萎縮が出現する前から MTRの低下が
て鋭敏かつより特異的な撮像法といえるため有用
観察されるためより早期の変性が検出可能と考え
られる 29)
性が高い.
6
) その他
4
) 脳梗塞
急性期病巣の MTRは低下しないが,その後経
パーキンソン病の大脳基底核で MTRの異常は
時的に低下していき,慢性期では著しい低値を示
認められないが,進行性核上性麻癖では病理組織
す日.これは梗塞巣が経時的に自由水が増加して
学的変化を反映して淡蒼球や被殻および前頭葉白
いくという組織病変に対応した変化と推察され
質で MTRの有意な低下がみられる 30) さらに,
-221ー
脳循環代謝第 1
3巻 第 4号
アルツハイマー病
健常老年者
Mo
Ms
MTR
図 6 アルツハイマー病 (
7
3歳,男性, MMSE2
0,CDR1
) と健常老年者 (
6
8歳
,
上
段
)
, Ms (
中
段
)
, MTR計算画像(下段).
女性)の Mo (
アルツハイマー病では Mo像 (T1強調画像)で海馬領域の軽度の萎縮が認められ,
Ms像で海馬領域は高信号となる.その結果, MTR計算画像ではやや低信号とな
りMTRの低下が観察される.
線条体黒質変性症では被殻で高度な MTRの低下
正常圧水頭症で T2強調画像では異常を認めない
がみられ,パーキンソン症候群の鑑別診断に有用
ような大脳白質でも MTRの低下がみられ,びま
と思われる.
ん性白質病変の存在が示唆されている 33)
精神分裂病の側頭葉白質や前頭葉,側頭葉皮質
側頭葉てんかんにおける病側の扇桃体や海馬の
でも MTRの低下がみられ,髄鞘や軸索の異常お
MTRは低下するが,必ずしも脳波上の焦点とは
よび広範な領域での微細なニューロンの障害が推
一致しないことが報告されている刊.
測されている刊.
実験的に作成されたワーラ一変性の経時的変化
筋萎縮性側索硬化症の内包後脚で MTRの低下
がみられ錐体路変性の検出に有用であったとする
を MTRの変化として捉えられ,特に早期の微妙
な変化が検出されたとする報告がある 35)
報告がみられる却.
頭部外傷後のぴまん性軸索損傷において,通常
-222-
脳疾患への M
a
g
n
e
t
i
z
a
t
i
o
nT
r
a
n
s
f
e
r法の応用とその解釈
の MRIで検出できなかった損傷部位が MTRの
低下として検出され,損傷の程度を定量的に評価
できることが報告されている却.
脳腫蕩における MTRは概して正常組織より低
値となるが,特に悪性腫蕩で低いことが報告され
ている 3ぺ転移性脳腫蕩では,造影剤で描出され
る病変の周囲でも MTRの低下がみとめられてお
り,通常の MRIでは描出されない部分の異常も
検出できる可能性が示されている却.
乳幼児の髄鞘形成過程についての報告もみられ
る制0) 新生児期の白質,灰白質の MTRは低値
であったが,生後 3-4カ月以降で MTRが増加
し,髄鞘の量的増加や髄鞘内の脂質組成変化が原
因と推測されている.
その他の中枢神経系病変として,視神経や頚髄
病変(多くは MSに関した報告)における臨床応
用が報告されているが,ここでは紙面の都合上割
愛する.
おわりに
MT法は,従来の撮像法では得られないような
微細な分子構造的変化の検出に優れ,さらに組織
の特性評価としての有用な情報をもたらすことか
ら,多くの頭蓋内疾患への臨床応用が期待されて
いる.本法の撮像法そのものは比較的簡便であり,
特別なハードウエアも必要とせず,低磁場装置か
ら高磁場装置まで多くの MRI装置での利用が可
能なことから,今後幅広い臨床への普及が期待さ
れる.
謝辞御校閲をいただきました東京医科大学老年病
学高崎優教授に深謝申し上げます.また,本研
究に御協力をいただきました東京医科大学放射線科
阿部公彦教授および東京医科大学 MRIチームの佐々
木一良氏,勝山宏章氏に感謝申し上げます.
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-225一
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