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パンフレット『衆議院憲法調査会』

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パンフレット『衆議院憲法調査会』
(平成12年1月∼平成16年10月)
平 成 16 年 11 月
衆議院憲法調査会事務局
このパンフレットは、衆議院憲法調査会の傍聴に来られた方をはじめとした国
民のみなさまに、本調査会について知っていただくため、調査の経過及びその概
要等を紹介したものです。
したがって、ここに記載されている内容は、衆議院憲法調査会としての一定の
調査結果を報告するものではなく、これまでの調査会、地方公聴会、公聴会での
参考人等の意見や委員の質疑の内容等を、衆議院憲法調査会事務局において、事
務的に、その趣旨を違えないように要約して紹介したものです。
― 目
次 ―
1.
憲法調査会の設置の経緯……………………………………………
1
2.
憲法調査会の概要……………………………………………………
2
3.
憲法調査会の委員名簿………………………………………………
3
4.
憲法調査会小委員会の概要…………………………………………
4
5.
憲法調査会の調査の経過……………………………………………
5
1
憲法調査会及び小委員会における調査………………………
5
2
公聴会……………………………………………………………
20
3
地方公聴会………………………………………………………
21
4
海外調査…………………………………………………………
24
5
その他の活動……………………………………………………
30
6
中間報告書………………………………………………………
31
憲法調査会の最近の調査の概要等…………………………………
32
1
憲法調査会における議論の概要………………………………
32
2
憲法調査会小委員会における議論の概要……………………
38
3
公聴会の概要……………………………………………………
57
4
地方公聴会の概要………………………………………………
61
5
海外調査の概要…………………………………………………
73
7.
主な憲法関連用語の解説……………………………………………
79
8.
憲法調査会のことを知るには………………………………………
94
6.
参考条文
(日本国憲法、国会法(抄)、衆議院憲法調査会規程)
省略
この資料では衆議院における会派名を以下のように表記しています。
自民
自由民主党
民主
民主党・無所属クラブ
公明
公明党
共産
日本共産党
社民
社会民主党・市民連合
自由
自由党
保守
保守党
21 クラブ
21 世紀クラブ
保守新党
保守新党
1.憲法調査会の設置の経緯
平成 11 年の第 145 回国会において、国会法が改正され、「日本国憲法につい
て広範かつ総合的に調査を行うため」、各議院に憲法調査会が設置されることと
なり、第 147 回国会の召集日(平成 12 年 1 月 20 日)から同調査会が発足しま
した。これは、国権の最高機関である国会において、施行から 50 有余年が経過
した日本国憲法を論議の俎上に載せる初めての試みであると言えます。
【略年表】
昭和 30 年代
平成 9 年∼平成 11 年 2 月
平成 11 年 3 月
平成 11 年 6 月
平成 11 年 7 月
平成 12 年 1 月 20 日
(第 147 回国会召集日)
昭和 32 年 8 月、内閣に憲法調査会が設置され、7 年間に
わたる日本国憲法についての検討及び関係諸問題の調査審
議の末、昭和 39 年 7 月に内閣及び国会に対し、本文及び別
冊の 12 の附属文書からなる最終報告書が提出された。
国会に憲法論議の場を設けようとする動きが、日本国憲
法施行 50 周年(平成 9 年)を機として超党派(共産・社民
を除く。)の議員により結成された憲法調査委員会設置推進
議員連盟(会長:中山太郎衆議院議員)における議論から
本格化した。
同議連では、当初、常任委員会としての設置を目指して
いたが、憲法改正に直結するという危惧感からこれに反対
する意見も強かった。このため、平成 11 年 2 月、自民・民
主・公明・自由・改革クラブの 5 党間で、議案提出権を持
たない調査会を設置することについて議院運営委員会及び
議会制度協議会で協議する旨合意するに至った。
上記合意を受けて 5 党の幹事長が衆議院議院運営委員長
に対し申入れを行い、衆議院議長の私的諮問機関である議
会制度協議会において、協議が開始されることとなった。
議会制度協議会の協議結果の報告を受け、衆議院議院運
営委員会の国会法改正等に関する小委員会における議論が
開始された。
7 月 6 日、国会法の一部を改正する法律案及び衆議院憲
法調査会規程案を衆議院議院運営委員会提出案とすること
に決し、同日、衆議院本会議で可決した。
参議院においては参議院にも憲法調査会を設置する旨の
修正を加えた後可決し、同月 29 日の衆議院本会議で回付案
が同意され、成立した(8 月 4 日に公布)。
各議院に憲法調査会が設置された。
なお、平成 11 年 7 月 6 日、衆議院議院運営委員会理事会において、以下のよ
うな憲法調査会設置に関する申合せがなされています。
①憲法調査会は、議案提出権がないことを確認する。
②調査期間は、概ね 5 年程度を目途とする。
③会長が会長代理を指名し、野党第一党の幹事の中から選定する。
1
2.憲法調査会の概要
(1)設置の趣旨(国会法 102 条の 6、衆議院憲法調査会規程 1 条)
衆議院憲法調査会は、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うた
め、衆議院に置かれた機関です。
(2)報告書(同規程 2 条)
衆議院憲法調査会は、調査を終えたときは、調査の経過及び結果を記載し
た報告書を作成し、会長からこれを議長に提出することになっています。
また、調査期間中においても、それまでの調査の経過を記載した中間報告
書を作成し、提出することができることとなっています。
(3)調査会の委員(同規程 3 条、4 条)
衆議院憲法調査会は、50 人の委員で組織されます。委員は、各会派の所属
議員数の比率により、これを各会派に割り当てる形で議長が選任します。
(4)調査会の会長及び幹事(同規程 5 条∼7 条)
衆議院憲法調査会の会長(1 人)及び幹事(9 人)は、委員の互選により選
任されます。会長は、調査会の議事を整理し、秩序を保持し、調査会を代表
します。会長に事故があるときは、会長代理その他の幹事が会長の職務を行
います。
衆議院憲法調査会の運営は、会長が主宰する幹事会で協議決定されます。
会長は、幹事会において、会長代理その他の幹事及び幹事を出していない会
派の委員(オブザーバー)の意向をよく聴いて、公平円満な調査会運営をす
るよう心がけています。
(5)小委員会(同規程 8 条)
衆議院憲法調査会は、小委員会を設けることができます。
(6)調査会の開会(同規程 9 条)
衆議院憲法調査会は、国会の会期中であると閉会中であるとを問わず、い
つでも開会することができます。具体的な調査会の開会の日時は、幹事会で
協議決定されます。
(7)委員派遣(同規程 14 条)
衆議院憲法調査会は、議長の承認を得て、調査のため委員を派遣すること
ができます。このようにして派遣された委員が、派遣先で国民から意見を聴
くことを、一般に「地方公聴会」と呼んでいます。
(8)公聴会(同規程 17 条)
衆議院憲法調査会は、調査のため必要があるときは、議長の承認を得て、公
聴会を開くことができます。
(9)会議の公開(同規程 22 条)
衆議院憲法調査会の会議は、原則として公開とされています。
2
3.憲法調査会の委員名簿
委員名簿(平成 16 年 10 月 28 日現在)
○
会長
中
山
太
郎君
自民
幹事
近
藤
幹事
福
田
康
夫君
自民
幹事

田
幹事
古
屋
圭
司君
自民
幹事
保
岡
幹事 ※枝
野
幸
男君
民主
幹事
中
幹事
山
花
郁
夫君
民主
幹事
伊
藤
公
介君
加
藤
勝
坂
本
剛
渡
彦君
自民
元君
自民
興
治君
自民
川
正
春君
民主
赤
松
正
雄君
公明
自民
大
村
秀
章君
自民
信君
自民
河
野
太
郎君
自民
二君
自民
柴
山
昌
彦君
自民
海
紀三朗君
自民
中
谷
元君
自民
永
岡
洋
治君
自民
野
田
毅君
自民

梨
康
弘君
自民
平
井
卓
也君
自民
平
沼
赳
夫君
自民
二
田
孝
治君
自民
松
野
博
一君
自民
松
宮
勲君
自民
三
原
朝
彦君
自民
森
山
弓君
自民
渡
辺
博
道君
自民
青
木
愛君
民主
稲
見
哲
男君
民主
大
出
彰君
民主
鹿
野
道
彦君
民主
鈴
木
克
昌君
民主
園
田
康
博君
民主
田
中
紀子君
民主
惠君
民主
中
根
康
浩君
民主
辻
基
眞
長
島
昭
久君
民主
計
屋
圭
宏君
民主
古
川
元
久君
民主
馬
淵
澄
夫君
民主
浩
史君
民主
和
田

志君
民主
昭
宏君
公明
笠
渡
部
恒
三君
民主
太
田
佐
藤
茂
樹君
公明
福
島
豊君
公明
○山
口
富
男君
共産
土
井
たか子君
社民
(※は会長代理、○は幹事会オブザーバー)
3
4.憲法調査会小委員会の概要
第 154 回国会から第 157 回国会まで及び第 159 回国会では、日本国憲法の三
原則及びこれまでの議論、国民の関心等を勘案して、日本国憲法に関する個別
の論点についての専門的・効果的な調査を進めるため、衆議院憲法調査会規程 8
条に基づき、小委員会が設置されました。
各国会において設置された小委員会は次のとおりです。
・第 154 回国会(平成 14 年 2 月 7 日設置)及び第 155 回国会(平成 14 年
11 月 7 日設置)
名
称
目
的
員
数
小 154 回
委
員
長 155 回
基本的人権の保障
に関する調査小委
員会
基本的人権の保障
について調査する
ため
政治の基本機構の
あり方に関する調
査小委員会
政治の基本機構の
あり方について調
査するため
国際社会における日
本のあり方に関する
調査小委員会
国際社会における日
本のあり方について
調査するため
地方自治に関する
調査小委員会
地方自治について
調査するため
16 名(自民 7、民主 4、公明 1、自由 1、共産 1、社民 1、保守 1)
島
聡君(民主)
高市 早苗君(自民)
中川 昭一君(自民)
保岡 興治君(自民)
大出
彰君(民主)
保岡 興治君(自民)
中川 昭一君(自民)
西田
司君(自民)
・第 156 回国会(平成 15 年 1 月 30 日設置)、第 157 回国会(平成 15 年
10 月 2 日設置)及び第 159 回国会(平成 16 年 1 月 22 日設置)
名
称
目
的
156 回
員
数 157 回
159 回
最高法規としての
憲法のあり方に関
する調査小委員会
最高法規としての
憲法のあり方につ
いて調査するため
安全保障及び国際
協力等に関する調
査小委員会
安全保障及び国際
協力等について調
査するため
基本的人権の保障
に関する調査小委
員会
基本的人権の保障
について調査する
ため
統治機構のあり方
に関する調査小委
員会
統治機構のあり方
について調査する
ため
16 名(自民 7、民主 4、公明 1、自由 1、共産 1、社民 1、保守新党 1)
16 名(自民 7、民主 5、公明 1、共産 1、社民 1、保守新党 1)
15 名(自民 7、民主 5、公明 1、共産 1、社民 1)
156 回
保岡 興治君(自民)
中川 昭一君(自民)
大出
彰君(民主)
杉浦 正健君(自民)
小 157 回
委
員
長
159 回
保岡 興治君(自民)
中山 正暉君(自民)
大出
彰君(民主)
杉浦 正健君(自民)
保岡 興治君(自民)
近藤 基彦君(自民)
山花 郁夫君(民主)
木下
厚君(民主)
(平成 16 年 3 月 23 日以降)
鈴木 克昌君(民主)
※会長及び会長代理については、各小委員会に出席できることとされています。
4
5.憲法調査会の調査の経過
憲法調査会は、平成 12 年 1 月 20 日に設置されて以降平成 13 年 12 月まで、
「日本国憲法の制定経緯」、「戦後の主な違憲判決」及び「21 世紀の日本のある
べき姿」をテーマに、日本国憲法についての広範かつ総合的な調査を進めまし
た。平成 14 年は、憲法調査会の下に「基本的人権の保障」、「政治の基本機構の
あり方」、「国際社会における日本のあり方」及び「地方自治」の四つのテーマ
をそれぞれ専門的に調査する小委員会を設置し、日本国憲法に関する個別論点
について調査を行いました。平成 15 年から平成 16 年 7 月にかけては、憲法調
査会の下に「最高法規としての憲法のあり方」、「安全保障及び国際協力等」、
「基本的人権の保障」及び「統治機構のあり方」の四つのテーマをそれぞれ専
門的に調査する小委員会を設置し、日本国憲法に関する個別論点について調査
を行いました。現在は、小委員会を設置せず、憲法調査会において委員間の議
論を中心に調査を行っています。
この間、国民各層の意見を聴取するため、平成 13 年には宮城県仙台市、兵庫
県神戸市及び愛知県名古屋市に、平成 14 年には沖縄県名護市、北海道札幌市及
び福岡県福岡市に、平成 15 年には石川県金沢市及び香川県高松市に、平成 16
年には広島県広島市に委員派遣(いわゆる「地方公聴会」)を行い、さらに、同
年には衆議院内にて公聴会を開催しました。
また、主に憲法調査会のメンバーをもって構成された調査議員団が 5 度にわ
たり海外に派遣され、平成 12 年はドイツ、スイス、イタリア及びフランス並び
にフィンランドの憲法事情について、平成 13 年はロシア及びハンガリーその他
の東欧各国、オランダ及びスペインをはじめとする王室制度を有する 5 カ国並
びにイスラエルの憲法事情について、平成 14 年は英国、タイ及びシンガポール
をはじめとする東南アジア 5 カ国、中国及び韓国の憲法事情について、平成 15
年は米国、カナダ及びメキシコの憲法事情について、平成 16 年は EU、スウェ
ーデン及びフィンランドの憲法事情について調査が行われました。
1
憲法調査会及び小委員会における調査
(1)第 147 回国会
平成 12 年 1 月 20 日に召集された第 147 回国会では、①会長及び幹事の互選、
②各会派からの意見表明、③「日本国憲法の制定経緯」についての調査、④憲
法記念日に向けての自由討議、⑤「戦後の主な違憲判決」についての調査を行
いました。
第 147 回国会の調査経過は次のとおりです。
5
年月日
H12.
01.20(木)
回次
第1回
議
題
議
第2回
02.24(木)
第3回
03.09(木)
第4回
03.23(木)
第5回
04.06(木)
第6回
04.20(木)
第7回
04.27(木)
第8回
等
会長及び幹事の互選
委員葉梨信行君、鹿野道彦君、平田米男君、野田毅君、
佐々木陸海君及び伊藤茂君から意見を聴取した。
日本国憲法に関する件
02.17(木)
事
日本国憲法に関する件
参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。
(日本国憲法の制定経緯)
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
日本国憲法に関する件
駒澤大学法学部教授
(日本国憲法の制定経緯)
駒澤大学大学院法学研究科委員長
西
修 君
日本大学法学部教授
青山 武憲 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(日本国憲法の制定経緯)
獨協大学法学部教授
古関 彰一 君
広島大学総合科学部助教授
村田 晃嗣 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(日本国憲法の制定経緯)
名古屋大学名誉教授
長谷川正安 君
香川大学法学部教授
高橋 正俊 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(日本国憲法の制定経緯)
東京大学法学部教授
北岡 伸一 君
筑波大学社会科学系教授
進藤 榮一 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(日本国憲法の制定経緯)
神戸大学大学院法学研究科教授
五百旗頭真 君
横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授 天川
晃 君
日本国憲法に関する件
自由討議を行った。
日本国憲法に関する件
自由討議を行った。
(日本国憲法の制定経緯)
最高裁判所当局から説明を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(説明者)
05.25(木) 第 10 回
(戦後の主な違憲判決)
最高裁判所事務総局行政局長
千葉 勝美 君
05.11(木)
第9回
(2)第 148 回国会
第 42 回衆議院議員総選挙後、平成 12 年 7 月 4 日に召集された第 148 回国会
では、会長及び幹事の互選を行いました。
第 148 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
H12.
07.05(水)
回次
第1回
議
題
議
事
等
会長及び幹事の互選
(3)第 149 回国会
平成 12 年 7 月 28 日に召集された第 149 回国会では、
「今後の憲法調査会の
進め方」についての自由討議を行いました。
第 149 回国会の調査経過は次のとおりです。
6
年月日
H12.
08.03(木)
回次
議
題
議
日本国憲法に関する件
第1回
自由討議を行った。
(今後の憲法調査会の進め方)
事
等
(4)第 150 回国会
平成 12 年 9 月 21 日に召集された第 150 回国会では、「21 世紀の日本のある
べき姿」についての調査を行いました。
第 150 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
回次
H12.
09.28(木)
第1回
10.12(木)
第2回
10.26(木)
第3回
11.09(木)
第4回
11.30(木)
第5回
12.07(木)
(閉会中)
第6回
12.21(木)
(閉会中)
第7回
議
題
議
事
等
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
日本国憲法に関する件
東京大学大学院情報学環教授
田中 明彦 君
(21 世紀の日本のあるべき姿)
作家
小田
実 君
参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。
欧州各国憲法調査議員団の調査の概要について、会長中
日本国憲法に関する件
山太郎君から説明を聴取した。
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿) 作家・日本財団会長
曽野 綾子 君
日本大学大学院総合社会情報研究科教授 近藤 大博 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿)
財団法人国際東アジア研究センター所長 市村 真一 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿) 東京大学教授
佐々木 毅 君
南山大学教授・法学博士
小林
武 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿) 東京都知事
石原太郎 君
ジャーナリスト
櫻井よしこ 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿) 評論家・麗澤大学教授
松本 健一 君
上智大学教授
渡部 昇一 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿)
国際基督教大学教養学部教授
村上陽一郎 君
(5)第 151 回国会
平成 13 年 1 月 31 日に召集された第 151 回国会では、①「21 世紀の日本のあ
るべき姿」についての調査を行うとともに、②仙台及び神戸にてそれぞれ地方
公聴会を開催しました。
第 151 回国会の調査経過は次のとおりです。
7
年月日
回次
H13.
02.08(木)
第1回
02.22(木)
第2回
03.08(木)
第3回
03.22(木)
第4回
04.16(月)
04.26(木)
05.17(木)
06.04(月)
06.14(木)
議
題
議
事
等
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
日本国憲法に関する件
岩手県立大学長
西澤 潤一 君
(21 世紀の日本のあるべき姿)
東京大学教授
高橋
進 君
参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
理化学研究所ゲノム科学総合研究センター
日本国憲法に関する件
遺伝子構造・機能研究グループ
(21 世紀の日本のあるべき姿)
プロジェクトディレクター
林﨑 良英 君
日本大学人口研究所次長
日本大学経済学部教授
小川 直宏 君
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿)
ソフトバンク株式会社代表取締役社長 孫
正義 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
(21 世紀の日本のあるべき姿) 学習院大学法学部教授
坂本多加雄 君
東京大学社会情報研究所教授
姜
尚中 君
日本国憲法について
第1回地方公聴会(宮城県仙台市)
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を
聴取した。
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
第6回
(21 世紀の日本のあるべき姿) 地方財政審議会委員
木村 陽子 君
九州大学大学院法学研究院教授
大隈 義和 君
日本国憲法について
第2回地方公聴会(兵庫県神戸市)
(21 世紀の日本のあるべき姿)
自由討議を行った。
第7回 日本国憲法に関する件
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を
聴取した。
第5回
日本国憲法に関する件
(6)第 152 回国会
平成 13 年 8 月 7 日に召集された第 152 回国会では、会期が短かったため、憲
法調査会は開かれませんでした。
(7)第 153 回国会
平成 13 年 9 月 27 日に召集された第 153 回国会では、①ロシア等欧州各国及
びイスラエル憲法調査議員団の調査概要についての報告聴取及び自由討議、
②「21 世紀の日本のあるべき姿」について、それぞれ国際連合と安全保障、統
治機構に関する諸問題、人権保障に関する諸問題をテーマとして調査を行うと
ともに、③名古屋にて地方公聴会を開催しました。
第 153 回国会の調査経過は次のとおりです。
8
年月日
回次
H13.
10.11(木)
第1回
10.25(木)
11.08(木)
12.06(木)
題
議
事
等
ロシア等欧州各国及びイスラエル憲法調査議員団の調
査の概要について、会長中山太郎君から説明を聴取した
後、討議を行った。
日本国憲法に関する件
日本国憲法に関する件
参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。
(21 世紀の日本のあるべき姿)
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
第2回 (21 世紀の日本のあるべき姿) 東京大学教授
大沼 保昭 君
拓殖大学国際開発学部教授
森本
敏 君
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
日本国憲法に関する件
(参考人)
第3回
(21 世紀の日本のあるべき姿) 東京大学法学部教授
長谷部恭男 君
東京大学大学院法学政治学研究科教授 森田
朗 君
11.26(月)
11.29(木)
議
国際社会における日本の役割
日本国憲法に関する件
第4回 (21 世紀の日本のあるべき姿)
第3回地方公聴会(愛知県名古屋市)
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
中部大学中部高等学術研究所所長 武者小路公秀 君
城西大学経済学部教授
畑尻
剛 君
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取した。
日本国憲法に関する件
日本国憲法に関する件
第5回
自由討議を行った。
(21 世紀の日本のあるべき姿)
(8)第 154 回国会
平成 14 年 1 月 21 日に召集された第 154 回国会では、日本国憲法に関する個
別の論点についての専門的・効果的な調査を行うため、調査会の下に小委員会
を設置して調査を進めることとしました。各小委員会の調査方法については、
基本的にこれまでと同様に参考人を招致して意見を聴取し、これに対して質疑
を行う形で進めることとしましたが、参考人が退席した後に委員のみで自由討
議を行うことにより、議論を深めることとしました。
同国会では、各小委員会において、①基本的人権の保障についての調査、②
政治の基本機構のあり方についての調査、③国際社会における日本のあり方に
ついての調査、④地方自治についての調査を行う一方、憲法調査会において、
①各小委員長からの報告及び自由討議を行うとともに、②沖縄及び札幌にてそ
れぞれ地方公聴会を開催し、③沖縄地方公聴会については、報告を聴取した後
に我が国の安全保障についての自由討議を行いました。
第 154 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
回次
議
題
H14.
02.07(木)
第1回
日本国憲法に関する件
議
事
等
基本的人権の保障に関する調査小委員会、政治の基本機構のあ
り方に関する調査小委員会、国際社会における日本のあり方に
関する調査小委員会及び地方自治に関する調査小委員会を設置
することに、協議決定した。
小委員会における参考人出頭要求に関する件について、協議決
定した。
9
年月日
回次
人権小
第1回
02.14(木)
政治小
第1回
国際小
第1回
02.28(木)
地方小
第1回
政治小
第2回
03.14(木)
人権小
第2回
03.19(火)
03.28(木)
国際小
第2回
人権小
第3回
04.11(木)
政治小
第3回
04.22(月)
第3回
国際小
第3回
05.09(木)
地方小
第3回
05.16(木)
題
議
事
等
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
成城大学法学部教授
棟居 快行 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
政治の基本機構のあり方に
(参考人)
関する件
東京大学教授
高橋 和之 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
国際社会における日本のあ
(参考人)
り方に関する件
名古屋大学大学院法学研究科教授
松井 芳郎 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
地方自治に関する件
(参考人)
筑波大学教授
岩崎美紀子 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
政治の基本機構のあり方に
(参考人)
関する件
北海道大学大学院法学研究科教授
山口 二郎 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
成蹊大学教授
安念 潤司 君
第2回
地方小
第2回
04.25(木)
議
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
東京大学大学院法学政治学研究科教授 森田
朗 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
国際社会における日本のあ
(参考人)
り方に関する件
日本貿易振興会理事長
畠山
襄 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
広島大学法学部長
阪本 昌成 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
政治の基本機構のあり方に
(参考人)
関する件
京都大学教授
大石
眞 君
日本国憲法について
第4回地方公聴会(沖縄県名護市)
(21 世紀の日本と憲法)
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取し
日本国憲法に関する件
た後、自由討議を行った。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
国際社会における日本のあ
(参考人)
り方に関する件
株式会社三井物産戦略研究所所長
寺島 実郎 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
地方自治に関する件
(参考人)
東京大学教授
神野 直彦 君
地方自治に関する件
第4回
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
政治小
第4回
政治の基本機構のあり方に
関する件
人権小
第4回
基本的人権の保障に関する件
05.23(木)
10
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
大阪大学大学院法学研究科教授
松井 茂記 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
日本政策研究センター所長
伊藤 哲夫 君
年月日
06.06(木)
回次
議
題
地方小
第4回
地方自治に関する件
国際小
第4回
国際社会における日本のあ
り方に関する件
日本国憲法について
(21 世紀の日本と憲法)
06.24(月)
人権小
第5回
基本的人権の保障に関する件
政治小
第5回
政治の基本機構のあり方に
関する件
国際小
第5回
国際社会における日本のあ
り方に関する件
地方小
第5回
地方自治に関する件
第5回
日本国憲法に関する件
07.04(木)
07.11(木)
07.25(木)
議
事
等
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
鳥取県知事
片山 善博 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
杏林大学総合政策学部教授
田久保忠衛 君
第5回地方公聴会(北海道札幌市)
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
日本労働組合総連合会事務局長
草野 忠義 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
高崎経済大学助教授
八木 秀次 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
東京大学社会科学研究所助教授
中村 民雄 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
三重県知事
北川 正恭 君
自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する調査小委員長、政治の基本機構のあ
り方に関する調査小委員長、国際社会における日本のあり方に
関する調査小委員長及び地方自治に関する調査小委員長から、
それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取した。
(9)第 155 回国会
平成 14 年 10 月 18 日に召集された第 155 回国会では、憲法調査会において、
①中間報告書の協議決定、②英国及びアジア各国憲法調査議員団の調査概要に
ついての報告聴取及び自由討議、③各小委員長からの報告及び自由討議を行う
とともに、④福岡にて地方公聴会を開催しました。
また、第 154 回国会と同様、日本国憲法に関する個別の論点についての専門
的・効果的な調査を行うため、調査会の下に小委員会を設置して調査を進める
こととしました。
第 155 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
H14.
10.24(木)
11.01(金)
11.07(木)
回次
議
題
第1回
幹事の辞任及び補欠選任
第2回
中間報告書に関する件
第3回
議
事
等
中間報告書について、協議決定した。
英国及びアジア各国憲法調査議員団の調査の概要につ
いて、会長中山太郎君から説明を聴取した後、討議を行
った。
基本的人権の保障に関する調査小委員会、政治の基本機構のあ
り方に関する調査小委員会、国際社会における日本のあり方に
関する調査小委員会及び地方自治に関する調査小委員会を設置
することに、協議決定した。
小委員会における参考人出頭要求に関する件について、協議決
定した。
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
日本国憲法に関する件
11
年月日
回次
議
題
国際小
第1回
国際社会における日本のあ
り方に関する件
政治小
第1回
政治の基本機構のあり方に
関する件
人権小
第1回
基本的人権の保障に関する件
地方小
第1回
地方自治に関する件
11.14(木)
11.28(木)
12.09(月)
12.12(木)
第4回
議
事
等
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
政策研究大学院大学助教授
岩間 陽子 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
京都大学総合人間学部助教授
高田
篤 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
東京大学大学院教育学研究科教授
苅谷 剛彦 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
埼玉県志木市長
穂坂 邦夫 君
日本国憲法について
(21 世紀の日本と憲法)
第 6 回地方公聴会(福岡県福岡市)
日本国憲法に関する件
自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する調査小委員長、政治の基本機構のあ
り方に関する調査小委員長、国際社会における日本のあり方に
関する調査小委員長及び地方自治に関する調査小委員長から、
それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取した。
(10)第 156 回国会
平成 15 年 1 月 20 日に召集された第 156 回国会では、第 154 回国会・第 155
回国会と同様、日本国憲法に関する個別の論点についての専門的・効果的な調
査を行うため、調査会の下に小委員会を設置して調査を進めることとしました。
第 156 回国会における各小委員会の調査テーマについては、第 154 回国会・
第 155 回国会における各小委員会の調査テーマを改編し、「最高法規としての憲
法のあり方」、「安全保障及び国際協力等」、「基本的人権の保障」及び「統治機
構のあり方」について調査することとしました。小委員会における調査方法と
して、従来の、参考人から意見を聴取してこれに対する質疑を行い、参考人が
退席した後自由討議を行う方法の他、参考人を招致せず、特定の憲法上の論点
について、小委員から意見を聴取してこれに対する質疑又は発言を行い、その
後自由討議を行う方法も導入されました。
一方、憲法調査会においては、①「現在の国際情勢と国際協力」、「条約と憲
法」というテーマでイラク問題・北朝鮮問題をめぐる憲法的諸問題についての
自由討議、②各小委員長からの報告及び自由討議、③憲法記念日に向けての自
由討議を 4 月 17 日の小委員長報告及び自由討議と併せて行うとともに、④金沢
及び高松にて地方公聴会を開催しました。
小委員長からの報告及び自由討議については、第 154 回国会・第 155 回国会
ではそれぞれの会期の終わりに行っていたのに対して、第 156 回国会では小委
員会が開催された月の終わりに行うこととしました。
12
第 156 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
回次
H15.
01.30(木)
第1回
最高小
第1回
02.06(木)
安国小
第1回
統治小
第1回
02.13(木)
人権小
第1回
02.27(木)
第2回
安国小
第2回
03.06(木)
最高小
第2回
統治小
第2回
03.13(木)
人権小
第2回
議
題
議
事
等
日本国憲法に関する件
自由討議を行った。
(現在の国際情勢と国際協力)
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会、安全保
障及び国際協力等に関する調査小委員会、基本的人権の保障に
関する調査小委員会及び統治機構のあり方に関する調査小委員
日本国憲法に関する件
会を設置することに、協議決定した。
小委員会における参考人出頭要求に関する件について、
協議決定した。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあ
(参考人)
り方に関する件
國學院大学講師、東京経済大学講師
(象徴天皇制)
元共同通信記者
髙橋
紘 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に
(参考人)
拓殖大学国際開発学部教授
森本
敏 君
関する件(非常事態と憲法)
法政大学法学部教授
五十嵐敬喜 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
統治機構のあり方に関する件
(参考人)
(地方自治)
岩手県知事
増田 寛也 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
基本的人権の保障に関する件
慶應義塾学事顧問
(教育を受ける権利)
日本私立学校共済・振興事業団理事長 鳥居 泰彦 君
早稲田大学教授
岡村 遼司 君
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長、安全保
日本国憲法に関する件
障及び国際協力等に関する調査小委員長、統治機構のあり方に
関する調査小委員長及び基本的人権の保障に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に
(参考人)
関する件(非常事態と憲法)
国際政治・軍事アナリスト
小川 和久 君
最高法規としての憲法のあ 参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
り方に関する件
(参考人)
元最高裁判所判事
園部 逸夫 君
(象徴天皇制)
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
統治機構のあり方に関する件
(参考人)
(地方自治)
新潟県亀田町長
阿部 學雄 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
基本的人権の保障に関する件
東京大学教授
菅野 和夫 君
(労働基本権)
内閣府情報公開審査会委員
元労働省女性局長
藤井 龍子 君
03.18(火) 第3回
03.20(木) 第4回
03.27(木) 第5回
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
日本国憲法に関する件
(条約と憲法)
自由討議を行った。
日本国憲法に関する件
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長、統治機
構のあり方に関する調査小委員長、基本的人権の保障に関する
調査小委員長及び安全保障及び国際協力等に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
13
年月日
回次
最高小
第3回
04.03(木)
安国小
第3回
04.17(木) 第6回
05.08(木)
安国小
第4回
最高小
第4回
05.12(月)
人権小
第3回
05.15(木)
統治小
第3回
05.29(木) 第7回
06. 05(木)
統治小
第4回
人権小
第4回
06. 09(月)
06.12(木) 第 8 回
議
題
議
事
等
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
最高法規としての憲法のあ
り方に関する件
国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室主任
北海道大学名誉教授
高見 勝利 君
(硬性憲法としての改正手続)
日本大学法学部教授
長尾 龍一 君
小委員から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に
(基調発言者)
野田
毅 君(自民)
関する件
(国際協力)
(基調発言者)
首藤 信彦 君(民主)
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長及び安全
日本国憲法に関する件
保障及び国際協力等に関する調査小委員長から、それぞれ報告
を聴取した。
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
安全保障及び国際協力等に
AMDAグループ代表
関する件(国際機関と憲法)
特定非営利活動法人AMDA理事長 菅波
茂 君
財団法人日本国際問題研究所理事長 佐藤 行雄 君
最高法規としての憲法のあ 参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
り方に関する件
(参考人)
(明治憲法と日本国憲法)
東京大学名誉教授
坂野 潤治 君
日本国憲法について
(特に、非常事態(安全保障
を含む)と憲法、統治機構(地 第7回地方公聴会(石川県金沢市)
方自治を含む)のあり方及び
基本的人権の保障のあり方)
基本的人権の保障に関する件 参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(知る権利・アクセス権と
(参考人)
プライバシー権)
中央大学法学部教授
堀部 政男 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
統治機構のあり方に関する件
前内閣法制局長官
(司法制度及び憲法裁判所)
弁護士
津野
修 君
前最高裁判所長官
山口
繁 君
自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に関する調査小委員長、最高法規とし
ての憲法のあり方に関する調査小委員長、基本的人権の保障に
日本国憲法に関する件
関する調査小委員長及び統治機構のあり方に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取した。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
統治機構のあり方に関する件
(参考人)
神戸学院大学法学部法律学科助教授 窪田 好男 君
(財政)
新潟大学助教授
桜内 文城 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
(基本的人権と公共の福祉)
千葉大学法経学部助教授
小林 正弥 君
日本国憲法について
(特に、非常事態(安全保障
を含む)と憲法、統治機構(地 第 8 回地方公聴会(香川県高松市)
方自治を含む)のあり方及び
基本的人権の保障のあり方)
自由討議を行った。
統治機構のあり方に関する調査小委員長及び基本的人権の保障
日本国憲法に関する件
に関する調査小委員長から、それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取した。
14
年月日
07. 03(木)
回次
議
題
最高小
第5回
最高法規としての憲法のあ
り方に関する件
(前文)
安国小
第5回
安全保障及び国際協力等に
関する件
(憲法第 9 条)
人権小
第5回
基本的人権の保障に関する件
(社会保障と憲法)
統治小
第5回
統治機構のあり方に関する件
(国会と内閣の関係)
07.10(木)
07.24(木) 第 9 回
日本国憲法に関する件
議
事
等
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
鹿島建設株式会社常任顧問
英
正道 君
小委員から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(基調発言者)
近藤 基彦 君(自民)
藤井 裕久 君(自由)
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
北海道大学長
中村 睦男 君
東京学芸大学教育学部助教授
小塩 士 君
国立国会図書館当局から説明を聴取した。
(説明者)
国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室主任
高見 勝利 君
小委員から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(基調発言者)
古川 元久 君(民主)
(基調発言者)
井上 喜一 君(保守新党)
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長、安全保
障及び国際協力等に関する調査小委員長、基本的人権の保障に
関する調査小委員長及び統治機構のあり方に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
(11)第 157 回国会
平成 15 年 9 月 26 日に召集された第 157 回国会では、①米国、カナダ及びメ
キシコ憲法調査議員団の調査概要についての報告聴取、②自由討議を行いまし
た。
また、第 156 回国会と同様の 4 小委員会が設置されましたが、衆議院が解散
されたため、小委員会での調査は行われませんでした。
第 157 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
H15.
10.02(木)
回次
第1回
議
題
議
事
等
自由討議を行った。
米国、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団の調査の概要
について、会長中山太郎君から説明を聴取した。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会、安全保
障及び国際協力等に関する調査小委員会、基本的人権の保障に
関する調査小委員会及び統治機構のあり方に関する調査小委員
会を設置することに、協議決定した。
小委員会における参考人出頭要求に関する件について、協議決
定した。
日本国憲法に関する件
(12)第 158 回国会
第 43 回衆議院議員総選挙後、平成 15 年 11 月 19 日に召集された第 158 回国
会では、会長及び幹事の互選を行いました。
第 158 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
H15.
11.20(木)
回次
第1回
議
題
議
会長及び幹事の互選
15
事
等
(13)第 159 回国会
平成 16 年 1 月 19 日に召集された第 159 回国会では、日本国憲法に関する個
別の論点についての専門的・効果的な調査を引き続き行うため、調査会の下に
第 156 回国会・第 157 回国会と同様の小委員会を設置して調査を進めることと
しました。憲法調査会及び小委員会での調査方法は第 156 回国会と同様です。
第 159 回国会では、各小委員会において調査を行う一方、憲法調査会におい
て、①自由討議、②各小委員長からの報告及び自由討議、③「科学技術の進歩
と憲法」についての調査、④公聴会を行うとともに、⑤広島にて地方公聴会を
開催しました。
第 159 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
回次
H16.
01.22(木)
第1回
02.05(木)
議
題
日本国憲法に関する件
最高小
第1回
最高法規としての憲法のあ
り方に関する件
(天皇制)
安国小
第1回
安全保障及び国際協力等に
関する件
(憲法第9条)
人権小
第1回
基本的人権の保障に関する件
(法の下の平等)
統治小
第1回
統治機構のあり方に関する件
(司法制度)
02.19(木)
02.26(木) 第2回
安国小
第2回
03.04(木)
最高小
第2回
日本国憲法に関する件
議
事
等
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会、安全保
障及び国際協力等に関する調査小委員会、基本的人権の保障に
関する調査小委員会及び統治機構のあり方に関する調査小委員
会を設置することに、協議決定した。
小委員会における参考人出頭要求に関する件について、協議決
定した。
委員派遣承認申請に関する件について、協議決定した。
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
流通経済大学法学部教授
九州大学名誉教授
横田 耕一 君
小委員から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(基調発言者)
中谷
元 君(自民)
松本 剛明 君(民主)
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
中央大学(法科大学院開設準備室)教授 内野 正幸 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
立命館大学法学部教授
市川 正人 君
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長、安全保
障及び国際協力等に関する調査小委員長、基本的人権の保障に
関する調査小委員長及び統治機構のあり方に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
安全保障及び国際協力等に
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
関する件
(参考人)
(国家統合・国際機関への加入及
駐日欧州委員会代表部大使 ベルンハルド・ツェプター 君
びそれに伴う国家主権の移譲)
最高法規としての憲法のあ 参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
り方に関する件
(参考人)
(直接民主制の諸制度)
大阪産業大学人間環境学部助教授
井口 秀作 君
16
年月日
回次
統治小
第2回
03.11(木)
人権小
第2回
03.15(月)
03.18(木) 第3回
03.23(火)
議
題
議
事
等
統治機構のあり方に関する件 参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(人権擁護委員会その他の準
(参考人)
司法機関・オンブズマン制度) 東海大学政治経済学部教授
宇都宮深志 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
(市民的・政治的自由)
学習院大学法学部長
野坂 泰司 君
日本国憲法について
(特に、非常事態(安全保障を含
む)と憲法、統治機構(地方自治 第9回地方公聴会(広島県広島市)
を含む)
のあり方及び基本的人権
の保障のあり方)
自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に関する調査小委員長、最高法規とし
ての憲法のあり方に関する調査小委員長、統治機構のあり方に
日本国憲法に関する件
関する調査小委員長及び基本的人権の保障に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する調査について、派遣委員から報告を聴取した。
第4回
公聴会開会承認要求の件について、協議決定した。
最高小
第3回
最高法規としての憲法のあ
り方に関する件(憲法保障)
安国小
第3回
安全保障及び国際協力等に
関する件(非常事態と憲法)
人権小
第3回
基本的人権の保障に関する件
(公共の福祉)
統治小
第3回
統治機構のあり方に関する件
(財政)
03.25(木)
04.01(木)
日本国憲法に関する件
04.08(木) 第5回
04.15(木)
第6回
安国小
第4回
04.22(木)
最高小
第4回
最高裁判所当局から説明を聴取し、参考人から意見を聴取し、
質疑を行った後、自由討議を行った。
(説明者)
最高裁判所事務総長
竹﨑 博允 君
(参考人)
北海道大学大学院法学研究科教授
笹田 栄司 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
岩手県立大学総合政策学部教授
小針
司 君
防衛大学校助教授
松浦 一夫 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(参考人)
大阪大学大学院高等司法研究科教授 松本 和彦 君
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
東京大学大学院法学政治学研究科教授 碓井 光明 君
千葉大学法経学部教授
広井 良典 君
自由討議を行った。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長、安全保
障及び国際協力等に関する調査小委員長、基本的人権の保障に
関する調査小委員長及び統治機構のあり方に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する件
参考人から意見を聴取することに、協議決定した。
(科学技術の進歩と憲法)
参考人から意見を聴取した後、質疑を行った。
(参考人)
日本国憲法に関する件
元早稲田大学教授
(科学技術の進歩と憲法)
早稲田大学国際バイオエシックス・バイオ法研究所元所長
木村 利人 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に
(参考人)
関する件 (地域安全保障)
青山学院大学国際政治経済学部教授 池
努 君
最高法規としての憲法のあ 参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
り方に関する件
(参考人)
(憲法と国際法)
北星学園大学経済学部助教授
藤 正彰 君
17
年月日
回次
05.12(水)
公聴会
第1回
05.13(木)
公聴会
第2回
統治小
第4回
05.20(木)
人権小
第4回
人権小
第5回
05.27(木)
統治小
第5回
06.03(木) 第7回
06.10(木) 第8回
議
題
議
事
等
公述人から意見を聞いた後、質疑を行った。
(公述人)
上智大学法学部教授
猪口 邦子 君
早稲田大学大学院教授
川本 裕子 君
日本国憲法に関する件
元群馬県林業改良普及協会事務局長 井ノ川金三 君
慶應義塾大学総合政策学部助教授
小熊 英二 君
東京大学大学院教授・文化人類学者 船曳 建夫 君
東亜大学学長
山崎 正和 君
公述人から意見を聞いた後、質疑を行った。
(公述人)
日本国憲法に関する件
弁護士
吉田 健一 君
日本電子専門学校専任講師
安保 克也 君
元四国学院大学大学院生
日髙
明 君
統治機構のあり方に関する件 参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
(中央政府と地方政府の権限
(参考人)
のあり方)
地方自治総合研究所理事・主任研究員 山 幸宣 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
(経済的・社会的・文化的自由)
関西大学法科大学院教授
野呂
充 君
参考人から意見を聴取し、質疑を行った後、自由討議を行った。
基本的人権の保障に関する件
(参考人)
(刑事手続上の権利・被害者の人権)
早稲田大学法学部・法務研究科教授 田口 守一 君
会計検査院当局から説明を聴取し、参考人から意見を聴取し、
質疑を行った後、自由討議を行った。
統治機構のあり方に関する件
(説明者)
(二院制と会計検査制度)
会計検査院長
森下 伸昭 君
(参考人)
一橋大学大学院法学研究科助教授
只野 雅人 君
自由討議を行った。
安全保障及び国際協力等に関する調査小委員長、最高法規とし
日本国憲法に関する件
ての憲法のあり方に関する調査小委員長、基本的人権の保障に
関する調査小委員長及び統治機構のあり方に関する調査小委員
長から、それぞれ報告を聴取した。
日本国憲法に関する件
自由討議を行った。
(14)第 160 回国会
平成 16 年 7 月 30 日に召集された第 160 回国会では、前国会会期終了日前後
に相次いで公表された自由民主党、民主党及び公明党の憲法調査会の論点整理、
憲法提言等に関して 3 党より発言を聴取した後、各会派からの意見聴取を行い
ました。
第 160 回国会の調査経過は次のとおりです。
年月日
回次
議
題
H16.
08.05(木)
第1回
日本国憲法に関する件
議
事
等
委員保岡興治君、枝野幸男君、太田昭宏君、近藤基彦君、山花
郁夫君、赤松正雄君、山口富男君及び土井たか子君から意見を
聴取した。
18
(15)第 161 回国会
平成 16 年 10 月 12 日に召集された第 161 回国会では、小委員会を設置せず、
憲法調査会において委員間の議論を中心に調査を行うこととしました。
同国会では、現在(平成 16 年 10 月 21 日)までのところ、①EU 憲法及びス
ウェーデン・フィンランド憲法調査議員団の調査概要についての報告聴取及び自
由討議、②「議会オンブズマンその他の行政に対するチェックの仕組み」、③「国
際機関と憲法」についての調査を行いました。
第 161 回国会の調査経過は次のとおりです(平成 16 年 10 月 21 日現在)。
年月日
回次
議
題
H16.
10.14(木)
第1回
日本国憲法に関する件
10.21(木) 第2回
日本国憲法に関する件
議
事
等
EU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員
団の調査の概要について、会長中山太郎君から説明を聴
取した後、討議を行った。
公聴会開会承認要求の件について、協議決定した。
自由討議を行った。
19
2
公聴会
日本国憲法に関する調査のため、国民の各層から日本国憲法に関する件につ
いて意見を聴取する公聴会を、平成 16 年 5 月 12 日及び 13 日に開催しました。
公述人は次のとおりです。
第 159 回国会第 1 回公聴会(平成 16 年 5 月 12 日)
公述人
上智大学法学部教授
早稲田大学大学院教授
元群馬県林業改良普及協会事務局長
慶應義塾大学総合政策学部助教授
東京大学大学院教授・文化人類学者
東亜大学学長
猪口 邦子
川本 裕子
井ノ川金三
小熊 英二
船曳 建夫
山崎 正和
君
君
君
君
君
君
第 159 回国会第 2 回公聴会(平成 16 年 5 月 13 日)
公述人
弁護士
日本電子専門学校専任講師
元四国学院大学大学院生
20
吉田
安保
日髙
健一 君
克也 君
明 君
3
地方公聴会
日本国憲法についての国民各層の意見を聴取し、憲法調査会における調査の
参考にするため、宮城県仙台市、兵庫県神戸市、愛知県名古屋市、沖縄県名護
市、北海道札幌市、福岡県福岡市、石川県金沢市、香川県高松市及び広島県広
島市にて地方公聴会を開催しました。
各地方公聴会においては、意見陳述者から意見が開陳され、これに対し派遣
委員から質疑が行われ、傍聴者からも意見が述べられました。
各地方公聴会の派遣委員及び意見陳述者は次のとおりです。
仙台地方公聴会(第 151 回国会平成 13 年 4 月 16 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
中山 太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民) 鹿野 道彦君(民主)
仙谷 由人君(民主) 斉藤 鉄夫君(公明) 藤島 正之君(自由)
春名 章君(共産) 金子 哲夫君(社民) 小池百合子君(保守)
近藤 基彦君(21クラブ)
仙台経済同友会代表幹事
手島 典男 君
宮城県鹿島台町長
鹿野 文永 君
東北大学名誉教授
志村 憲助 君
東北大学文学部教授
田中 英道 君
専修大学法学部教授・東北大学名誉教授
小田中聰樹 君
「憲法」を愛する女性ネット代表
久保田真 君
東北福祉大学助教授
米谷 光正 君
弘前学院聖愛高等学校教諭
濱田 武人 君
専修大学北上高等学校講師・志民学習会代表
遠藤 政則 君
みやぎ生協平和活動委員会委員長
齋藤 孝子 君
神戸地方公聴会(第 151 回国会平成 13 年 6 月 4 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
中川 昭一君(自民) 中山 太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民)
鹿野 道彦君(民主) 中川 正春君(民主) 斉藤 鉄夫君(公明)
塩田
晋君(自由) 春名 章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
小池百合子君(保守) 近藤 基彦君(21クラブ)
兵庫県知事
貝原 俊民 君
川西市長
柴生
進 君
神戸市長
笹山 幸俊 君
学校法人大前学園理事長
大前 繁雄 君
神戸大学副学長・大学院法学研究科教授
浦部 法穂 君
弁護士
中北龍太郎 君
兵庫県医師会会長
橋本 章男 君
兵庫県北淡町長
小久保正雄 君
会社経営
塚本 英樹 君
大阪工業大学助教授
中田 作成 君
21
名古屋地方公聴会(第 153 回国会平成 13 年 11 月 26 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
中山 太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民) 鳩山 夫君(自民)
鹿野 道彦君(民主) 島
聡君(民主) 斉藤 鉄夫君(公明)
都築
譲君(自由) 春名 章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
宇田川芳雄君(21クラブ)
名古屋大学名誉教授
田口富久治 君
主婦
西
英子 君
岐阜県立高等学校教諭
野原 清嗣 君
名古屋大学大学院法学研究科博士課程後期課程 川畑 博昭 君
弁護士
古井戸康雄 君
大学生
加藤 征憲 君
沖縄地方公聴会(第 154 回国会平成 14 年 4 月 22 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
久間 章生君(自民) 中山 太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民)
島
聡君(民主) 中野 寛成君(民主) 赤松 正雄君(公明)
藤島 正之君(自由) 春名 章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
井上 喜一君(保守)
平和憲法・地方自治問題研究所主宰
山内 徳信 君
弁護士
新垣
勉 君
ビジネススクール校長
恵 隆之介 君
沖縄国際大学法学部教授
垣花 豊順 君
大学生
稲福絵梨香 君
沖縄県議会議員
安次富 修 君
札幌地方公聴会(第 154 回国会平成 14 年 6 月 24 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
中川 昭一君(自民) 中山 太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民)
中川 正春君(民主) 中野 寛成君(民主) 赤松 正雄君(公明)
武山百合子君(自由) 春名 章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
井上 喜一君(保守)
大東亜商事株式会社代表取締役
稲津 定俊 君
農業
石塚
修 君
北海道弁護士会連合会理事長
田中
宏 君
大学生
佐藤 聖美 君
小樽商科大学教授
結城洋一郎 君
弁護士
馬杉 榮一 君
福岡地方公聴会(第 155 回国会平成 14 年 12 月 9 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
中山 太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民) 保岡 興治君(自民)
大出
彰君(民主) 仙谷 由人君(民主) 江田 康幸君(公明)
武山百合子君(自由) 春名 章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
地方公務員
日下部恭久 君
弁護士
後藤 好成 君
会社員
西座 聖樹 君
元九州産業大学教授
林
力 君
主婦
宮崎 優子 君
福岡大学名誉教授・元長崎県立大学学長
石村 善治 君
22
金沢地方公聴会(第 156 回国会平成 15 年 5 月 12 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
※
中川 昭一君(自民) 中山
桑原
豊君(民主) 仙谷
一川 保夫君(自由) 春名
無職
福井県立大学教授
弁護士
弁護士
大学教授
太郎君(自民) 葉梨 信行君(自民)
由人君(民主) 遠藤 和良君(公明)
章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
山本 利男 君
島田 洋一 君
岩淵 正明 君
松田 智美 君
鴨野 幸雄 君
意見陳述を予定されていた蓮池ハツイ君は、お身内に御不幸があったことから
欠席されたため、意見陳述応募の際に寄せられた意見の要旨を事務局が朗読した。
高松地方公聴会(第 156 回国会平成 15 年 6 月 9 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
中山 太郎君(自民) 葉梨
仙谷 由人君(民主) 古川
武山百合子君(自由) 春名
山谷えり子君(保守新党)
弁護士
四国学院大学教授
学生
元中学校社会科教師
主婦
香川大学法学部助教授
信行君(自民) 平井 卓也君(自民)
元久君(民主) 遠藤 和良君(公明)
章君(共産) 金子 哲夫君(社民)
草薙 順一
根本 博愛
高木 健一
西原 一宇
坂上ハツ子
鹿子嶋 仁
君
君
君
君
君
君
広島地方公聴会(第 159 回国会平成 16 年 3 月 15 日)
派遣
委員
意 見
陳述者
元君(自民)
渡海紀三朗君(自民) 中山 太郎君(自民) 田
仙谷 由人君(民主) 山花 郁夫君(民主) 斉藤 鉄夫君(公明)
山口 富男君(共産) 土井たか子君(社民)
公務員
佐藤 周一 君
広島大学大学院教授・医師
秀
道広 君
元広島平和記念資料館館長
高橋 昭博 君
団体職員
平田香奈子 君
社会福祉法人みどりの町理事長
岡田 孝裕 君
岡山県議会議員
小田 春人 君
23
4
海外調査
(1)衆議院欧州各国憲法調査議員団(平成 12 年 9 月 10 日∼19 日)
平成 12 年 9 月 10 日から同月 19 日にかけて、衆議院より中山太郎憲法調査会
会長を団長とする衆議院欧州各国憲法調査議員団が派遣され、ドイツ、スイス、
イタリア及びフランス並びにフィンランドの憲法に関する実情等について調査
が行われました。
この調査議員団は、中山太郎会長を団長、鹿野道彦会長代理を副団長として、
石川要三君(自民)、中川昭一君(自民)、葉梨信行君(自民)、仙谷由人君(民
主)、赤松正雄君(公明)、春名章君(共産)及び辻元清美君(社民)の 9 名
をもって構成されました。
訪問先及び懇談相手は次のとおりです。
日付
訪問国
連邦憲法裁判所
H12.
9.11
ドイツ
9.12
9.13
スイス
9.14
9.15
9.18
訪問先
イタリア
フランス
懇談相手
ユタ・リンバッハ長官
ウド・シュタイナー裁判官
アルベルト・トハー・ヴ
良心的兵役拒否者
ォーンハイム養護施設
日本国大使公邸
鈴木徹書記官(在フィンランド日本国大使館)
アルフレッド・ハルテンバッハ議員(社会民主党法務部
連邦議会
会長)
レモ・ギジン下院議員(外務委員・元憲法改正委員、
社会民主党)
ウルリッヒ・フィッシャー下院議員(外務委員、自由民
主党)
レモ・ガリ下院議員(外務委員、キリスト教民主党)
連邦議会
ジョン・クレール議会事務局次長
アレッサンドロ・デルプレット議会事務局広報官
(スイス連邦司法警察省)
ルチウス・マーダー憲法・行政部長
ディター・ビダーマン上級顧問(元憲法改正チーム次長)
リダ・フローア法制部長
日本国大使公邸
作家 塩野七生氏
チェーザレ・ミラベッリ長官
フェルナンド・サントスォッソ判事
リカルド・キエッパ判事
憲法裁判所
フランコ・ビーレ判事
ジョヴァンニ・マリア・フリック判事
マウリツィオ・ネーヴォラ儀典長
衆議院(下院)憲法問 ローザ・ルッソ・イェルヴォリーノ委員長(人民党)
ジャコモ・ガッラ議員(中道右翼連合)
題委員会
クリスティーヌ・ラゼルジュ副議長(社会党)
国民議会
エティエンヌ・パント議員(仏日友好議員連盟副会長・
ヴェルサイユ市長、共和国連合)
イヴ・ギュエナ総裁
憲法院
シモンヌ・ヴェイユ委員
ジョン・クロード・コリアール委員
24
(2)衆議院ロシア等欧州各国及びイスラエル憲法調査議員団(平成13年8月28日
∼9月7日)
平成 13 年 8 月 28 日から同年 9 月 7 日にかけて、衆議院より中山太郎憲法調
査会会長を団長とする衆議院ロシア等欧州各国及びイスラエル憲法調査議員団
が派遣され、ロシア及びハンガリーその他の東欧諸国を含めた 5 カ国、オラン
ダ及びスペインをはじめとする王室制度を有する 5 カ国並びにイスラエルの合
計 11 カ国の憲法事情について調査が行われました。
この憲法調査議員団は、中山太郎会長を団長、鹿野道彦会長代理を副団長と
して、葉梨信行君(自民)、保岡興治君(自民)、仙谷由人君(民主)、斉藤鉄夫
君(公明)、山口富男君(共産)、金子哲夫君(社民)及び近藤基彦君(21 クラ
ブ)の 9 名をもって構成されました。
訪問先及び懇談相手は次のとおりです。
日付
訪問国
訪問先
国家院(下院)
H13.
8.29
8.30
8.31
9.2
9.3
懇談相手
ザドルノフ議員
ジューコフ議員
ザカーエフ議員
バルジャノヴァ議員
ルキン副議長
ルキャノフ国家建設委員長
エブドキーモフ第一法務次官
ロシア
ジーミン対外関係局第一次長
フェドロフ連邦構成主体法制局次長
パンチェンコ立法活動局長
法務省
シュリピツィン法案作成局次長
ボロディナ国家・地方機関関係法担当局長
ゴルジュスキン対外関係局専門員
連 邦 憲法 裁判 所 附属 ストラシュン副所長
憲法裁判分析センター クドリャブツェフ事務局長
安田国彦書記官(在ハンガリー日本国大使館)
大杉恵美書記官(在ポーランド日本国大使館)
ハンガリー 日本国大使公邸
佐藤輝書記官(在チェッコ日本国大使館)
好井正信書記官(在ルーマニア日本国大使館)
アルテス議長
第一院(上院)
ロディウス長官
女王官房府
ピータース憲法問題王国関係局長代理
オランダ 内務省
ヴェーゼル法律顧問
梶本洋之書記官(在スウェーデン日本国大使館)
藤田順三参事官(在デンマーク日本国大使館)
日本国大使館
大槻大輔書記官(在ベルギー日本国大使館)
ショフマン検事次長
ホテル内会議室
シトリート司法相
司法省
ショハム クネセット基本法委員会法律顧問
ホテル内会議室
ピネス クネセット基本法委員会委員長
イスラエル
ペレス副首相兼外相
外務省
カルモン博士
セガル テルアビブ大学教授
ホテル内会議室
アレンス イスラエル日本友好議員連盟会長
25
日付
訪問国
訪問先
国務院
9.5
スペイン
下院憲法委員会
懇談相手
カベロ議長
ラビージャ常任評議員
ロドリゲス常任評議員
エレロ評議員
マリスカル・デ・ガンテ委員長
シスネロス議員
ベラ議員
ジャネー・イ・グアスク議員
ベルムデス・デ・カストロ議員
ガリード議員
ドレゴ・デ・カルロス委員会課長
(3)衆議院英国及びアジア各国憲法調査議員団(平成 14 年 9 月 23 日∼10 月 5 日)
平成 14 年 9 月 23 日から同年 10 月 5 日にかけて、衆議院より中山太郎憲法
調査会会長を団長とする衆議院英国及びアジア各国憲法調査議員団が派遣され、
英国、タイ及びシンガポールをはじめとする東南アジア 5 カ国、中国及び韓国
の憲法事情について調査が行われました。
この憲法調査議員団は、中山太郎会長を団長として、葉梨信行君(自民)
、中
川正春君(民主)及び春名章君(共産)の 4 名をもって構成されました。
訪問先及び懇談相手は次のとおりです。
日付
訪問国
訪問先
議員会館
H14.
9.24
副首相府
英国
9.25
9.27
イアン・スコッター(イングランド)地域議会部長
マイケル・ドーソン リージョナル・ポリシー・ユニット・リーダー
ニック・レインズフォールド デボリューション担当閣外大臣
コンスティチューション・
ロバート・ヘーゼル ロンドン大学教授
ユニット
(上院改革に関する上下両院合同委員会)
デビッド・ビーミッシュ氏
日本国大使館
タイ
懇談相手
(人権に関する上下両院合同委員会)
ポール・エバンス氏
憲法裁判所
ラーマ7 世研究所
バンコク市内
9.28 シンガポール 日本国大使公邸
(政府上院改革チーム)
ジュディス・シンプソン氏
ローラ・ビーモント氏
ステファン・ベティ氏
アンソニー・ザカルスキー氏
(公務員組合評議会事務局)
チャールズ・コクラン事務局長
スチット判事
ボウォンサック・ウワンノー事務局長
マルット・ブンナーク元下院議長
槙田邦彦大使(在シンガポール日本国大使館)
辻優公使(在シンガポール日本国大使館)
吉田雅治公使(在フィリピン日本国大使館)
牛尾滋書記官(在マレーシア日本国大使館)
和田充広参事官(在インドネシア日本国大使館)
谷昌紀書記官(在インドネシア日本国大使館)
26
日付
訪問国
訪問先
司法長官庁
外務省
9.30 シンガポール 日本国大使館
10.2
中国
10.3
10.4
韓国
懇談相手
ジェフェリー・チャン司法長官庁民事局長
ジャヤクマール法相兼外相
ティオ・リーアン シンガポール国立大学助教授
チン・テットヤン国会議員
日本国大使公邸
ラヴィンドラン国会議員
チャールズ・チョン国会議員
曾憲義 法学院長
韓大元 法学副院長
許崇徳 教授
中国人民大学
張正釗 教授
楊建順 教授
莫于川 教授
劉俊傑 中央党校社会発展研究所教授
ホテル内会議室
劉志剛 中央党校出版社研究員
人民大会堂
張春生 全人代常務委員会法制工作委員会副主任
朴寛用 議長
国会
金鍾斗 国会法制室長
憲法裁判所
朴容相 処長
金昌國 委員長
朴庚緒 常任委員
国家人権委員会事務局 柳時春 常任委員
崔永愛 事務総長
羅英姫 教育協力局長
(4)衆議院米国、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団(平成 15 年 8 月 31 日∼9
月 13 日)
平成 15 年 8 月 31 日から同年 9 月 13 日にかけて、衆議院より中山太郎憲法
調査会会長を団長とする衆議院米国、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団が派
遣され、各国の憲法事情について調査が行われました。
この憲法調査議員団は、中山太郎会長を団長、仙谷由人会長代理を副団長と
して、中川昭一君(自民)及び山口富男君(共産)の 4 名をもって構成されま
した。
訪問先及び懇談相手は次のとおりです。
日付
訪問国
H15.
9.1
訪問先
サクラメント市内
米国
9.2
UC バークレイ校
懇談相手
バリー・キーン 元カリフォルニア州上院議員
スコット・キーン 在サンフランシスコ日本国総領事
館政治コンサルタント
中山団長講演 「衆議院憲法調査会の活動と 21 世紀
の『日本の憲法』
」
T.J.ペンペル 政治学部教授・東アジア研究所長
スティーブン・ヴォーゲル 政治学部准教授
マイケル・ツィーレンツィガー 東アジア研究所客員研究員
加藤淳子 客員講師(東京大学教授)
ジェシー・ショパー 法学部教授
ステファン・バーネット 法学部教授
ゴードン・シルバースタイン 政治学部助教授
27
日付
9.4
9.8
訪問国
訪問先
国立自治大学
メキシコシティー市内
メキシコ
連邦最高裁判所
メキシコシティー市内
会計検査院
議会予算局
米国
9.9
連邦議会下院
国務省
連邦最高裁判所
連邦最高裁判所
9.11
カナダ
国防省
連邦議会下院
枢密院事務局
懇談相手
フェルナンド・セラーノ 法学部長
イグナシオ・ブルゴア 国立自治大学名誉教授
ヘナロ・ゴンゴラ 判事
フェルナンド・ソラーナ 元外務大臣
デビッド・ウォーカー 院長
ダグラス・ホルツイーキン 局長
トマス・レイノルズ 共和党選挙対策委員長
スティーブ・チャボット 司法委員会憲法小委員長
ロバート・ネイ 議院管理委員長
リチャード・アーミテイジ 国務副長官
アントニン・スカリア 判事
ベヴァリー・マクラクラン 長官
マイケル・バスタラシェ 判事
ドルー・ロバートソン 国際安全保障政策局長(海軍
少将)
キャロライン・キーラー 国際安全保障政策局平和維
持政策部員
ドン・ブードリア 国務大臣・下院政府総務
キース・クリスティ 事務総長補(政府間関係担当)
(5)衆議院EU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団(平成 16 年
9 月 5 日∼17 日)
平成 16 年 9 月 5 日から同月 17 日にかけて、衆議院より中山太郎憲法調査会
会長を団長とする衆議院 EU 憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団
が派遣され、EU、スウェーデン及びフィンランドの憲法事情について調査が行
われました。
この調査には、中山太郎会長を団長として、田元君(自民)、仙谷由人君(民
主)、枝野幸男君(民主)、保岡興治君(自民)、中谷元君(自民)及び近藤基彦
君(自民)の 7 名が参加しました。
訪問先及び懇談相手は次のとおりです。
日付
H16.
9.6
9.7
訪問国
訪問先
懇談相手
ストックホルム国際
アリソン.J.K.ベイルズ所長
平和研究所(SIPRI)
トミー・ヴァイデリッヒ EU 諮問委員会委員長
ペール・ヴェステルベリ第一副議長
スウェーデン
ヤン・ペンレヴ元国会オンブズマン(現副国会オン
国会
ブズマン)
ボー・ケンベリ議員(元保健・社会保障大臣)
ヨーテ・ヴァルストローム議員(社会保障委員会)
法務省
トーマス・ボードストローム法務大臣
28
日付
訪問国
9.8
訪問先
国会
ヘルシンキ市内
フィンランド
9.9
国会
9.10
ベルギー
EU 理事会
欧州議会
欧州委員会
9.13
欧州人権裁判所
9.14
欧州議会
9.15
9.16
フランス
欧州議会
懇談相手
ヴァイスト行政委員会委員長
ポフヨ行政委員会副委員長
ハウタラ議員(行政委員会)
グスタフソン雇用・男女平等委員会委員長
ホルムルンド雇用・男女平等委員会副委員長
ティーリカイネン議員(雇用・男女平等委員会)
ムスタヤルヴィ議員(雇用・男女平等委員会、憲法委員会)
サトネン議員(憲法委員会)
ルンドゥグレン議員(憲法委員会)
ムスタヤルヴィ議員(雇用・男女平等委員会、憲法委員会)
キルユネン議員(コンベンション・フィンランド国会
代表)
ピーリス EU 理事会法律顧問
デハーネ コンベンション副議長(元ベルギー首相)
バレンズエラ対外関係総局次長
ファン・ヌッフェル「欧州の将来」タスクフォース課長
ルジウス・ヴィルトハーバー長官
アントニオ・ヴィトリーノ司法・内務問題担当欧州委
員会委員
ニキフォロス・ディアマンドロス欧州オンブズマン
ヤルツェンボウスキー欧州議会議員(対日交流議員
団長候補)
メンデス・デ・ビゴ欧州議会議員(コンベンション
欧州議会代表団長、憲法問題委員会)
ヘンシュ欧州議会議員(コンベンション欧州議会代
表団副団長、外交委員会)
ライネン欧州議会憲法問題委員会委員長
ダフ欧州議会議員(コンベンション欧州議会代表団
副団長、憲法問題委員会)
ブローク欧州議会外交委員会委員長
29
5
その他の活動
(1)憲法のひろば
憲法調査会では、憲法に関して広く国民一般の意見を受付ける窓口として「憲
法のひろば」を平成 12 年 2 月 25 日から開設し、郵便、FAX 及び電子メールに
よって意見を受付けています。寄せられた意見は、憲法調査会事務局において
整理集計し、会長、幹事及びオブザーバーに対して定期的に報告され、憲法調
査会での議論の参考に供されています。これまでに寄せられた意見総数は、平
成 16 年 10 月 22 日現在で 2,420 件です。
(2)論文募集
平成 12 年には、憲法調査会設置後初めて迎える憲法記念日に向けて PR 活動
を行い、
「憲法調査会に望むもの」をテーマに国民各層から論文を募集し、その
結果、計 214 件の論文が寄せられました。幹事会の協議により、特に参考にな
るもの 19 件を選定し、同年 5 月 11 日の憲法調査会議録に参照掲載しました。
(3)ポスターの作製及び配付
平成 12 年に、上記論文募集に併せて、憲法論議について国民の関心を喚起す
るため、「憲法を見つめることは、国を考えること、生活を思うこと。/5 月 3
日は憲法記念日」との標語を使用したポスターを作製し、衆議院議員、政党、
省庁、都道府県、市、主要団体、大学法学部などに配付しました。なお、平成
15 年 3 月、ポスターを再作製し、関係各所に改めて配付しました。
(4)衆議院憲法調査会ニュース
第 150 回国会からは、国民各層に対する広報活動の一環として、憲法調査会
における議論をまとめた「衆議院憲法調査会ニュース」を憲法調査会の開会毎
に発行し、FAX 及び電子メールで希望者に対して送付するとともに、傍聴者に
も配付するなどして情報公開に努めています。
(5)衆議院憲法調査会ホームページ
インターネットが憲法調査会と国民をつなぐ重要な手段であることにかんが
み、平成 12 年 1 月 20 日に憲法調査会が設置されると同時に衆議院ホームペー
ジ(http://www.shugiin.go.jp)内に憲法調査会のページを開設しました。現在
では、各会議における議論の概要、配付資料、今後の開会予定等について情報
を提供しています。
また、平成 12 年 7 月からは英語版のホームページも作成しています。
30
6
中間報告書
(1)中間報告書の提出等
衆議院憲法調査会の調査期間は、衆議院議院運営委員会理事会の申合せによ
り、「概ね 5 年程度を目途とする」こととされていますが、第 154 回国会をもっ
て、その調査期間の折り返し点となる 2 年半が経過いたしました。
本調査会は、衆議院憲法調査会規程第 2 条第 2 項の規定により、それまでの
調査の経過及びその内容を取りまとめた中間報告書を作成し、平成 14 年 11 月 1
日、衆議院議長に提出いたしました。
また、同月 29 日の衆議院本会議において、中山太郎会長から、中間報告書の
提出の経緯及び概要について報告がなされました。
(2)中間報告書の構成
中間報告書は、本調査会が第 147 回国会召集日(平成 12 年 1 月 20 日)に設
置されてから第 155 回国会の平成 14 年 10 月 24 日までの本調査会の調査の経
過及びその内容を取りまとめたものです。その構成は、以下のようになってお
ります。
第1編
憲法調査会の設置の経緯
第2編
憲法調査会の設置の趣旨とその組織及び運営
第3編
憲法調査会の調査の経過及びその内容
第1章
調査の経過
第2章
調査の概要
第3章
憲法調査会における委員及び参考人等の発言に関する論点整理
第4編
資料
*中間報告書は、英訳版も作成されています。
*中間報告書は、英訳版も含め、全文が衆議院ホームページ(http://www.shugiin.go.jp)
内の憲法調査会のページにおいて公開されています。
31
6.憲法調査会の最近の調査の概要等
1
憲法調査会における議論の概要
ここでは、第 159 回、第 160 回及び第 161 回国会の憲法調査会における議論
の概要を紹介します。
(1)第159回国会
第1回(平成 16年1月22日)
○
○
幹事の辞任許可及び補欠選任を行いました。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会、安全保障及び国際
協力等に関する調査小委員会、基本的人権の保障に関する調査小委員会及び
統治機構のあり方に関する調査小委員会を設置することに協議決定しました。
○ 小委員会における参考人出頭要求に関する件について、協議決定しました。
○ 委員派遣承認申請に関する件について、協議決定しました。
○ 委員間の自由討議を行いました。
委員間の自由討議では、9 条改正の是非、自衛隊のイラク派遣と国際法及び憲
法との関係、イラク復興支援のあり方、道州制導入等による地方分権推進の必
要性、年金制度改革における「国民負担率」のあり方や国の「財政」との関係、
社会保障制度の充実と 25 条の規定のあり方、違憲立法審査権のあり方(p.88の
「日本と諸外国の違憲審査制度」参照)、憲法改正手続規定のあり方及び憲法改
正国民投票法整備の必要性(p.92の「日本国憲法の改正手続」参照)等につい
て、発言がありました。
第2回(平成 16年2月26日)
○
各小委員長から報告を聴取した後、委員間の自由討議を行いました。
委員間の自由討議では、①「天皇制(皇室典範その他の皇族関連法に関する
調査を含む)」に関しては、女性による皇位継承を認めること、天皇の行為につ
いての区分のあり方等について、②「憲法第 9 条−特に、自衛隊のイラク派遣
並びに集団的安全保障及び集団的自衛権」に関しては、国際協調主義と日米同
盟の関係、国際連合による集団的安全保障のあり方、集団的自衛権を認めるこ
との是非(p.82の「憲法 9 条に関する政府見解」参照)等について、③「法の
32
下の平等(平等原則に関する重要問題∼1 票の格差の問題、非嫡出子相続分
等 企業と人権に関する議論を含む)」に関しては、1 票の格差を是正する必要
性、「平等」の概念、憲法の保障する人権の充実化を実現することの必要性等に
ついて、④「司法制度−特に、国民の司法参加、利用しやすい司法制度等の司
法制度改革」に関しては、国民の司法参加のあり方、行政訴訟制度の見直し、
違憲審査制の活性化等について、発言がありました。
第3回(平成 16年3月18日)
○
○
広島地方公聴会の報告を聴取しました。
各小委員長から報告を聴取した後、委員間の自由討議を行いました。
委員間の自由討議では、①「国家統合・国際機関への加入及びそれに伴う国
家主権の移譲(特に、EU 憲法と EU 加盟国の憲法、「EU 軍」)」に関しては、
アジアにおける地域安全保障の枠組みの必要性、地域安全保障の枠組みの構築
と集団安全保障や集団的自衛権との関係等について、②「直接民主制の諸制度」
に関しては、代表民主制と直接民主制の関係、直接民主制に関する規定を憲法
に取り入れることの是非、国民投票法整備の必要性等について、③「人権擁護
委員会その他の準司法機関・オンブズマン制度」に関しては、国会の行政監視
のための委員会の活用の必要性、オンブズマン制度の憲法上の位置付け、オン
ブズマン制度と行政相談制度の関係等について、④「市民的・政治的自由(特
に、思想良心の自由、信教の自由・政教分離)に関しては、首相の靖国神社参
拝と憲法との関係、政教分離原則が憲法上規定されていることの意味、人権保
障の観点からの住民訴訟・客観訴訟や憲法裁判所の導入の必要性等について、
発言がありました。
第4回(平成 16年3月23日)
○
○
幹事の辞任許可及び補欠選任を行いました。
公聴会開会承認要求の件について、協議決定しました。
第5回(平成 16年4月8日)
○
○
参考人から意見を聴取することに、協議決定しました。
各小委員長から報告を聴取した後、委員間の自由討議を行いました。
33
委員間の自由討議では、①「憲法保障(特に、憲法裁判制度及び最高裁判所
の役割)」に関しては、現行の違憲審査制度の問題点及び改善策(p.88の「日本
と諸外国の違憲審査制度」参照)、憲法裁判所導入の是非、首相の靖国神社参拝
をめぐる損害賠償請求訴訟の福岡地裁判決に対する評価等について、②「非常
事態と憲法(国民保護法制を含む)」に関しては、非常事態に関する規定を憲法
上明記することの是非、国会に提出された国民保護法制に対する評価、非常事
態における人権制約の根拠等について、③「公共の福祉(特に、表現の自由や
学問の自由との調整)」に関しては、人権と公共の福祉との関係、首相の靖国神
社参拝問題と政教分離原則や思想良心の自由・信教の自由との関係、環境権や
プライバシー権等の新しい人権を憲法に規定することの是非(p.84の「新しい
人権」参照)等について、④「財政(特に、国民負担率の問題を含む社会保障
の財源問題、国会による財政統制)」に関しては、財政民主主義を改めて憲法上
に位置づけることの必要性、89 条を削除することの是非、25 条の社会保障の権
利・国の責務の角度から見た年金制度の検討の必要性等について、発言があり
ました。
第6回(平成 16年4月15日)
き むら り ひと
○木村利人参考人(元早稲田大学教授・早稲田大学国際バイオエシックス・バイ
オ法研究所元所長)
参考人からは、まず、参考人が「いのち」の問題を、
さまざまな研究領域の枠を超えた「超学際的」学問と
して把握し直す「バイオエシックス」の構築を試みて
きたこと、そのきっかけは、ベトナムの大学で教鞭を
とっていた 1970 年に、ベトナム戦争当時の枯葉作戦
の実態を知ったことなどが挙げられるということが
述べられました。
そして、その後、スイスの大学にいたときに参加した“Genetics and Quality
of Life”という会議においては、生命医科学に関する公共政策(public policy)
は国際的・国内的に、「公開の場」で一般市民を含めさまざまな分野の専門家の
協力によりつくることに重要な意味があることが提言されたこと、先端生命科
学技術の分野においてこの会議の手法が取り入れられ、1960 年代までは学会の
専門家・医療や健康の行政担当者が中心になってガイドラインを作っていたシ
ステムが大きく変わることになったことが紹介されました。
また、日本においては、通常、法律は社会の後追いをするという発想しかさ
れていないのに対し、アメリカにおいては、法律が社会に影響を与えて積極的
に変化させるという発想があり、たとえばハーバード・ロー・スクールの憲法
ゼミ上級コースでも 500 年の過去と未来を展望する歴史的なスケールで研究や
34
論議がなされているという指摘がありました。
さらに、かつては、日本のみならず世界各国において、医療の情報は、患者
に提供されないことが当然であったが、現在は、「インフォームド・コンセント」
が求められる時代、すなわち患者が医師による診断や処置についての医療情報
を入手し、それに基づき自分のいのちをめぐっての選択やリスクについての最
終的な「価値判断」を自ら行う時代になったことが述べられました。
最後に、私たちは、今の日本を考えるだけでなく、100 年先、200 年先の日本
を見据えて、人権・平和・人間の尊厳の方向性を考えていかなければならない
ことが述べられました。
これに対して、先端生命科学技術に対する日米欧の法制の態度が異なってい
ることの背景、医療の現場におけるカルテの開示の限界領域、宗教的土壌とい
う観点から見たバイオエシックス、科学者が、科学者として、そして一人の人
間として負う社会的責任、フランスの生命倫理法の「人体の人権宣言」のよう
な枠組みを日本においても作ること等について質疑がなされました。
第7回(平成 16年6月3日)
○
○
幹事の補欠選任を行いました。
各小委員長から報告を聴取した後、委員間の自由討議を行いました。
委員間の自由討議では、①「地域安全保障(憲法の視点からの FTA 問題を含
む)」に関しては、集団的自衛権を行使することの是非(p.82の「憲法 9 条に関
する政府見解」参照)、地域安全保障のあり方、アジア太平洋地域における我が
国の貢献のあり方等について、②「憲法と国際法(特に、人権の国際的保障)」
に関しては、人権条約の積極的な国内適用の必要性、憲法と条約の関係を明確
にする必要性、国会の主導による条約の承認手続の必要性等について、③「経
済的・社会的・文化的自由(特に、職業選択の自由・財産権)
」に関しては、財
産権に対する制約の場合における公共の福祉の概念、計画段階からの住民参加
の必要性等都市計画と景観保護のあり方等について、④「刑事手続上の権利(行
刑上の問題を含む)
・被害者の人権」に関しては、刑事手続の運用を職権主義か
ら当事者主義へ転換する必要性、裁判員制度が機能し得るような環境整備を図
る必要性、私人間における人権侵害に対しても取り組む必要性等について、⑤
「中央政府と地方政府の権限のあり方(特に、課税自主権)」に関しては、地方
自治体の統治システムについて各自治体の自由裁量に任せていく必要性、地方
自治体が独自に必要な財源を確保できるようにする必要性、現在の地方分権や
市町村合併の進め方の問題点等について、⑥「二院制と会計検査制度」に関し
ては、二院制を維持することの意義(p.85の「二院制(両院制)」参照)、両院
の選挙制度や機能を見直す必要性、一院制への移行を検討する必要性等につい
35
て発言がありました。
第8回(平成 16年6月10日)
○
今国会の締めくくりとしての自由討議を行いました。
委員間の自由討議では、憲法改正のための手続法を制定する必要性(p.92の
「日本国憲法の改正手続」参照)
、我が国の国際軍縮への取組等を国内にもアピ
ールする必要性、さまざまな改革の提案について憲法改正により行うべきもの
と法律改正等により行うべきものとを整理する必要性、未来志向の憲法論を展
開する必要性、憲法の諸原則を活かしていくことの必要性(p.81の「日本国憲
法の諸原則」参照)、日本の伝統や文化等を踏まえた新憲法を制定すべきこと、
憲法と現実の間に生じている問題を改正により解消する必要性、憲法問題は拙
速を避けて国民的議論を展開する必要性、憲法改正で新たな義務を国民に課す
ことへの疑問、国会による条約承認手続を見直す必要性、議会制民主主義を健
全に機能させるための方策、地方分権の一層の推進、宗教教育の重要性、9 条を
改正して自衛権や国際貢献を明記する必要性、女性に皇位継承権を認めること
の是非、憲法改正手続の要件を緩和することの是非、
「公共の福祉」についての
考え方、安全保障のあり方、憲法の制定過程を調査することの意義、憲法改正
案の発議権を有する委員会を設置する必要性、今後も 9 条については堅持して
いく必要性等について、発言がありました。
(2)第160回国会
第1回(平成 16年8月5日)
○
○
論点整理、提言等を公表した政党から発言を聴取しました。
各会派を代表しての発言を聴取しました。
論点整理、提言等を公表した政党の発言では、新憲法制定に当たっての基本
的考え方、現行憲法についての党内の共通認識、党内における憲法論議の方向
性等について、発言がありました。また、各会派を代表しての発言においては、
憲法に自衛権、自衛隊を明確に位置付ける必要性、国家権力の恣意的な解釈を
許さない基本法を確立する必要性、9 条改正についての党内議論の現状、政党の
提言等を調査会の調査事項にすることの妥当性等について、発言がありました。
36
(3)第161回国会
第1回(平成 16年10月14日)
○
○
○
幹事の辞任許可及び補欠選任を行いました。
公聴会開会承認要求の件について、協議決定しました。
EU 憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団の調査の概要を中
山団長から聴取し、調査に参加した委員からの発言がなされた後、委員から
自由な発言がなされました。
各委員からは、EU 憲法条約に対する評価、EU の拡大、EU 憲法条約の批准
と国民投票、国際的テロリズムへの対応のあり方、オンブズマンと法の支配の
確立、我が国の安全保障政策のあり方、国連憲章が定める平和の構築と 21 世紀
における 9 条の意義、
憲法問題を専門に取り扱う常設の憲法委員会設置の是非、
海外調査のあり方等について、発言がありました。
第2回(平成 16年10月21日)
○
「議会オンブズマンその他の行政に対するチェックの仕組み」について、
また、「国際機関と憲法∼特に国連憲章を中心として∼」について、それぞれ
委員間の自由討議を行いました。
「議会オンブズマンその他の行政に対するチェックの仕組み」についての委
員間の自由討議では、我が国におけるオンブズマン制度導入の要否、オンブズ
マン制度の憲法上の位置付け、現行の苦情処理制度等とオンブズマン制度との
関係、議会の行政に対するチェック機能強化の重要性、請願権・国政調査権の
意義、行政統制における行政訴訟の意義等について発言がありました。
「国際機関と憲法∼特に国連憲章を中心として∼」についての委員間の自由
討議では、国連の集団安全保障への参加と憲法との関係、国際貢献のあり方や
その根拠規定の明記の是非、9 条を活かした国際貢献のあり方、安保理常任理事
国入りと憲法との関係、常設の憲法委員会の設置の是非等について発言があり
ました。
37
2
憲法調査会小委員会における議論の概要
ここでは、第 159 回国会における小委員会ごとの議論の概要を紹介します。
(1)最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会
第1回(平成16年2月5日)
よこ た こういち
○横田耕一参考人(流通経済大学法学部教授・九州大学名誉教授)
参考人からは、天皇制についても憲法の規範に沿った理
解が必要であり、憲法の条項に違反する「伝統」は否定さ
れなければならない、また、天皇の「公」「私」の区別は
厳格になされるべきとの立場から、①憲法の基本原則と
「象徴天皇制」との関係(p.82の「象徴天皇制」参照)、
②憲法規範的にみた天皇の地位、権能及び根拠、③天皇は
「元首」か、日本は「君主国」か、「公的行為」は存在す
るか及び公私の混同という規範解釈上のこれまでの主要な論点についての説明
がなされました。
その上で、①現在の天皇は主権者ではなく国政上の権能も有していないもの
の、高度な政治的機能を果たしてきたと言えるが、近年の天皇・皇族の「スタ
ー化」や「伝統」の変更・廃止による権威の足下を崩す行為は、天皇の「統合
力」の希薄化を招いている、②女性天皇は、憲法の下位法である皇室典範を憲
法の規範に沿うように改正すれば認められるが、男女差別が依然存在する現状
では、更なる「国民統合能力」の希薄化を招来する可能性を否定できないとの
意見が述べられました。
これに対して、女性天皇を認めることの問題点、日本の歴史や伝統と近代立
憲主義との調和、天皇制の憲法規範上の意味等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、女性天皇を認める場合の問題点、
天皇の公的行為の意義、日本の歴史や伝統を尊重することの意義等について発
言がなされました。
38
第2回(平成16年3月4日)
い ぐちしゅうさく
○井口 秀 作参考人(大阪産業大学人間環境学部助教授)
参考人からは、①直接民主制には、「純粋直接民主制」
型と「半直接制」型があり、主として問題となるのは後
者である、②昨今の国民投票の増大は「レフェレンダム
旋風」とも呼ばれることもあるが、地域的な偏りなどの
点で、この増大も相対化してみる必要がある、③増加し
ているのは、国民からの要求による「下からのレフェレ
ンダム」が制度化されている国であること等の認識が示
された上で、国民投票制度の諸類型について説明がなされました。続いて、直
接民主制の日本への導入については、直接民主制を排除することを特質とする
ような憲法原理は、現行憲法の下では採用の余地はなく、また、直接民主制の
困難性も相当程度に克服されていると考えられるが、直接民主制を導入した場
合、①立憲主義との関係では、違憲審査制が十分に機能していない現状では少
数者保護がなされない危険性があること、②政党との関係では、国民投票の結
果次第ではマニフェストによる政権選択の意義が薄れる危険性があること、他
方で、③討議民主主義との関係では、国民投票は国民の間に議論を誘発する効
果があること等が述べられました。
さらに、現行憲法の下では、①住民投票の充実、②諮問型国民投票の導入、
③一定の要件の下で国民に法案の発案権を与えることが考えられるが、直接民
主制は、国民主権の具体化、民主主義の強化に重要な役割を果たす手段ではあ
るが、一つの手段に過ぎない、また、直接民主制導入の議論を避ける必要はな
いが、すべてが解決できるかのような過大な期待はすべきではないとした上で、
直接民主制に堪え得るような議会、政党、司法の整備が必要であり、それは日
本国憲法の理念の具体化に他ならないとの見解が述べられました。
これに対して、直接民主制を導入するに当たっての留意点、直接民主制を導
入することの意義、日本国憲法の理念を具体化することの必要性等について質
疑がなされました。
参考人の質疑を踏まえた自由討議においては、直接民主制を導入することの
必要性、憲法改正のための国民投票法を制定する必要性等について発言がなさ
れました。
39
第3回(平成16年3月25日)
たけさきひろ のぶ
ささ だ えい じ
○説明者・竹﨑博允君(最高裁判所事務総長)及び笹田栄司参考人(北海道大
学大学院法学研究科教授)
竹﨑事務総長からは、まず、最高裁判所の事件処理体制について説明があり、
その中で、最高裁判所の裁判官は、一人当たり年間約 2000 件の事件に関与して
いることから、多忙であることは否めないが、平成 10 年の民事訴訟法の改正に
よる上告制度の整備が最高裁判所の裁判官の負担軽減に寄与しており、また、
憲法問題については、事柄の重大性からして、多忙であるが故に必要な判断が
できないことはないと言ってよいであろうとの見解が示されました。次いで、
最高裁判所の裁判官の選任、裁判所の人的・物的態勢及び裁判官の独立の保障
についての説明がなされ、①司法制度を予算面から諸外国と対比してみること
は、制度が大きく異なる等の理由から必ずしも有効な方法とはいえないと思わ
れ、むしろ司法制度の機能については、一つ一つの「法の要請」が十分に果た
されているか否かといった分析的検討が不可欠であること、②「2 割司法」とい
う議論は極めて実証性の乏しい議論であり、この用語にとらわれることは必ず
しも適当ではないが、司法制度を国民がより利用しやすく頼りがいのあるもの
とするため充実強化を図らなければならないということは、今回の司法制度改
革を支える大きな思想であり、この観点から、真に国民のためになる改革を実
現していく必要があること等が述べられました。
笹田参考人からは、最高裁判所に対する現状認識とし
て、①多くの上告事件を抱えていること、②大法廷への
回付が少ないこと、③これまでに出された法令違憲判決
は 5 種 6 件のみであること、④憲法規定を正面に押し出
すことなく、法律レベルで解決を図るケースがあること、
⑤憲法裁判の前提となる「裁判を受ける権利」の保障に
関しては、判例理論のレベルが昭和 35 年以来停滞して
いることが示された後、我が国の最高裁判所判事の任用
笹田参考人
資格について比較法的にみた特徴及び違憲審査制(p.88の「日本と諸外国の違
憲審査制度」参照)が活性化しない原因が述べられました。その上で、①最高
裁判所への上告制限、②憲法裁判所設置論、③カナダの参照意見制度等の違憲
審査制活性化のためのさまざまな試みについての評価、及び最高裁判所の「上
告審機能」と「違憲審査機能」とを分離するという独自の機構改革案について
の説明がなされました。また、違憲審査制が停滞している現状については、立
法による最高裁判所の改革を図ることが必要であり、最高裁判所の機構改革に
よる大幅な負担軽減を前提とした最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置及び
最高裁判所裁判官国民審査制の改革など、複合的なプランが考えられるべきで
あるとの意見が述べられました。
これに対して、我が国の司法制度が抱えている問題点、憲法裁判所の設置の
40
是非、司法制度改革のあり方等について質疑がなされました。
最高裁判所当局及び参考人に対する質疑を踏まえた自由討議においては、最
高裁判所の機構改革のあり方、司法機能が健全であることの必要性、憲法裁判
所を設置する必要性、憲法 81 条の趣旨等について発言がなされました。
第4回(平成16年4月22日)
さいとうまさあき
○藤正彰参考人(北星学園大学経済学部助教授)
参考人からは、まず、憲法と国際法の関係について総
論的な説明がなされ、その中で、①国法体系における条
約の取扱いという問題を考える上では、各国の憲法規定
や国家機関の実行などの分析に力を注ぐべきであると
の意見が近年の主流であること、②従来は憲法と条約が
矛盾・衝突するケースが重要な論点となったが、憲法と
国際人権条約は人権保障を目指すという点で共通して
おり、完全な矛盾・衝突は必ずしも多くはないこと、③法律に対する条約の優
位は、憲法の「国際主義」を基調として他の憲法の諸原理との調和を求めた結
果と解するのが整合的であることなどが述べられました。
次に、国際人権条約の内容の実現のためには、国内裁判所による国内的実施
が重要であるが、現状では、国内裁判所は国際人権条約の活用に積極的である
とはいえないとの指摘がなされました。その上で、国際人権条約の国内的実施
に当たっては、国際人権条約の内容を違憲審査制の枠組みで実現する「違憲審
査制とのすり合わせ」として、①憲法の条約適合的解釈など国際人権条約の憲
法解釈の基準への援用、②国際人権条約違反を理由とする最高裁への上訴の容
認が必要であるとの意見が述べられました。
また、近時問題となっている国際人権規約(自由権規約)の規約人権委員会
の意見・見解と国内裁判所の関係について、国内裁判所において当該意見等を
可能な限り顧慮することは、条約の誠実な遵守を謳う憲法 98 条 2 項の要請に適
うものであるとの指摘がなされました。
これに対して、憲法・法律と条約とが矛盾した場合の解消方法、条約の国会
承認の要否及び留保の是非の判断権の所在、国際人権条約の国内直接適用の必
要性等について質疑がなされました。
参考人の質疑を踏まえた自由討議においては、国際人権条約の批准の際の国
の主体的判断の必要性、条約が遵守されない国際状況への懸念等について発言
がなされました。
41
(2)安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会
第1回(平成16年2月5日)
なかたにげん
まつもとたけあき
○基調発言者・中谷元君及び基調発言者・松本剛明君
中谷委員からは、戦後大きな機能を果たしてきた 9 条が国際情勢の変化によ
り現実と乖離したことから憲法の軽視と形骸化が生じていること、また、9 条の
下で海外派遣された自衛隊の自己防衛が困難になっているとの認識が示されま
した。その上で、現行憲法下では、①外国部隊等の警護、②任務遂行のための
武器使用、③日本周辺での米軍への攻撃に対する応戦、④国連軍への参加がで
きず、⑤アジアの安全保障機構への参加の制約となり、⑥仮に日韓防衛条約が
締結されても片務的になることから、憲法改正により安全保障上の環境整備を
すべきこと、安保理常任理事国入りし、国連のイニシアティブをとるとともに、
複合的になっている国連の安全保障政策に対応し参加・協力すべきこと、新憲
法に自衛権、自衛隊の役割、国際貢献についての権限を明記すること(p.82の
「憲法 9 条に関する政府見解」参照)、平和主義や国連中心主義の理念を 9 条の
中心にすることについて意見が述べられました。
松本委員からは、政治は時代の要請に応えるべきだが、「法治」の観点から、
必要なら法を整備すべきで法を飛び越えるべきではないとの認識の下、イラク
戦争については、国際法からみた攻撃の根拠や、先制攻撃による自衛権発動の
是非等、その大義を検証すべきであり、自衛隊のイラク派遣については、政府
の憲法論議を避けた特措法の構成に無理があるとの見解が述べられました。ま
た、国連については現実を直視しつつも理想に近づく道を選択すべきであり、
国連軍、多国籍軍、平和維持活動等の集団安全保障活動への幅広い参加を可能
にするため、①同活動を 9 条の枠外とする解釈、②安全保障に関する基本法制
定、③憲法改正の選択肢があること、集団的自衛権については、日米安保条約
のあり方や将来の見直しも視野に入れる必要があること、太平洋、東アジアに
おける安全保障網の構築を考える際、これを行使できないことが外交上の足か
せになる懸念があること、集団的自衛権は主権国固有の権利であり、政府解釈
の論理的検証が必要であることについて、意見が述べられました。
これに関連して、集団的自衛権の保持や行使を憲法上明記することの是非、
自衛隊の海外派遣の際の国会承認のあり方、自衛隊のイラク派遣と交戦権の否
認との関係、自衛隊の海外への「派遣」と「派兵」との関係等について質疑又
は発言がなされました。
これらの質疑又は発言を踏まえた自由討議においては、集団的自衛権の国際
法上の位置付け、集団的自衛権や集団的安全保障に関する規定を憲法上設ける
ことの是非、自衛隊の海外派遣の際の武器使用基準のあり方、国際法及び憲法
から見た自衛隊のイラク派遣の是非等について発言がなされました。
42
第2回(平成16年3月4日)
○ベルンハルド・ツェプター参考人(駐日欧州委員会代表部大使)
参考人からは、欧州統合が「欧州諸国間の戦争を二度
と起こさない」という教訓の下で進められ、欧州に平和
や経済的繁栄をもたらしたこと、EU がある分野では国
家主権の一部をプールし、他の分野では単に政府間協力
を行うという国家と国際機関のいわば「混成体」である
こと、その発展過程には事前のゴールを設定した「青写
真」はなく、加盟国が特定分野で合意した共通利益の上
にボトムアップで構築されるプロセスをとっているこ
と等について説明がなされました。次いで、統合の推進力は、協力、競争、連
帯であること、EU 立法は、加盟国の国内法に対する EU 法の優位や、意思決定
を可能な限り市民に近いところで行うとする原則等に基づくこと、域内の経済
格差是正のために多額の資金援助が行われていること、外交政策問題に関して
共同行動が試みられたが、成功には至っていないこと等について説明がなされ
ました。さらに、EU 統合の深化と拡大は加盟国憲法の適合化を要求したが、主
権の一部移譲を受け入れる政治社会文化の存在がこれを可能にしたこと、現在、
討議過程にある EU 憲法草案は、EU の民主的正当性を強化し、ヨーロピアン・
アイデンティティの必要性を強調し、透明で包括的な法体系を提示しているこ
と等について説明がありました。その上で、欧州の経験は、そのままでは他の
地域のモデルにはならないが、統合の手法や手続等に関して参考になるのでは
ないかとの見解が示されました。
これに対して、EU の安全保障・防衛政策の方向性、基本権憲章、国民投票制
度、「欧州オンブズマン」制度の内容、個人情報保護、ヨーロピアン・アイデン
ティティの内容、イラク戦争に対し欧州各国の態度の不一致から得た教訓、EU
憲法制定による国家観・憲法観の変化等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、欧州との比較においてアジアの
地域安全保障の構築の必要性や構築に当たって考慮すべき点、平和主義を踏ま
えた北東アジアにおける安全保障対話の必要性、地域安全保障と集団安全保障
及び集団的自衛権との関係等について発言がなされました。
43
第3回(平成16年3月25日)
こ ばりつかさ
まつうらかず お
○小針 司 参考人(岩手県立大学総合政策学部教授)及び松浦一夫参考人(防衛
大学校助教授)
小針参考人からは、非常事態の対処に関して現行憲法
は極めて謙抑的であるとの見解が述べられた後、非常事
態に対処する権限と憲法の関係は、(a)憲法典の効力の停
止、(b)憲法典に列挙された条文の停止、(c)憲法典上の条
文の効力は停止されないが、憲法上に規定された非常措
置権により変容を被る場合、(d)憲法典上に非常事態対処
規定を欠くにもかかわらず非常事態に対処する必要があ
小針参考人
る場合に類型化でき、我が国の現行憲法の類型は(d)であ
り、人権制約の法理は「公共の福祉」に見出すしかないとの指摘がなされまし
た。その上で、非常事態法制の構築に当たっては人権保障のあり方が多様かつ
複雑になっている点を考慮しなければならず、また、現行憲法における個人主
義的世界観からは、国家は個人の生命、身体及び財産を保護してこそ、その支
配を正当化できるとの説明がありました。最後に、「国→地方公共団体→国民」
から「国民→地方公共団体→国」という防衛観の視座の転換が必要であり、ま
た、有事にあってこそ有事法制が効果を発揮し、国民の生命、身体及び財産を
守り、国家の安全を確保することから、非常事態の対処規定は憲法典に明記さ
れるべきとの見解が示されました。
松浦参考人からは、諸外国においては、民間防衛が軍
事的防衛と平時の災害救助を結びつける分野として考え
られているとの指摘があり、欧州各国等の国民保護法制
の概略について説明がありました。特に、ドイツでは、
基本法(憲法)上「防衛」を、「市民の保護を含む防衛」
と位置付け、「軍事的防衛」と、国民保護を含む「非軍事
的防衛」を合わせた「総合防衛」がドイツの緊急事態法
松浦参考人
制の基礎にあり、両者がセットで考えられているとの説明
がなされました。また、ドイツにおける「市民保護再編法」において、「自己防
護」を市民保護の基本とし、公的機関はそれを補完するものとされている点、
ボランティア組織が防災組織として国の災害救助体制を支えるほか、有事にお
いても国民保護にあたることとされているなど重要な存在と位置付けられてい
る点は、我が国においても参考になるとの意見が述べられました。最近は、2002
年に決定された「市民保護の新戦略」に基づき、「連邦市民保護・災害救助庁」
の設置等の措置がとられ、また、民間航空機を使ったテロへの対処を内容とす
る「航空保安法」が議会で審議されているとの説明がなされました。
これに対して、非常事態に関する規定を憲法上明記することの必要性とその
規定の仕方、国民保護法案についての評価や私権制限の憲法上の根拠、非常事
44
態法制の検討に当たって諸外国の憲法等の諸条件を念頭におくことの必要性等
について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、非常事態に関する規定を憲法上
明記することの必要性、国民保護法案の実効性、自衛隊に対する国会による監
視・規制のあり方、国民の安全確保についての議論の必要性等について発言が
なされました。
第4回(平成16年4月22日)
き く ち つとむ
○池 努 参考人(青山学院大学国際政治経済学部教授)
参考人からは、アジア太平洋の地域安全保障を考え
るに当たっては、国際社会との協力・協調関係の重視、
軍事力だけではなく経済活動等総合的な取組、テロ等
への新しい脅威への対応が重要であるとの認識が述べ
られました。そして、アジア太平洋地域には、(a)近代
化を終えて安定した国家、(b)近代化の途上にある国家、
(c)国家体制が脆弱な国家が存在し、(b)及び(c)に属する
国家が関わる問題として、①国内体制の脆弱性に伴う
問題、②国家間紛争及び③テロや経済問題などの新しい問題があり、これらが
同地域の安全保障上の課題となるとの見解が述べられました。さらにこれに対
する地域諸国の対応として、①地域安全保障の環境整備としての同盟の機能強
化、②政府間又は官民合同での地域安全保障対話の拡大、③内政への地域諸国
による共同介入・共同関与が挙げられるとの見解が述べられました。最後に FTA
が地域安全保障にもたらす効果について、FTA は地域経済の安定化や国境を越
えた利害の共有等のプラス面を持つ反面、締結国間の利益の不均衡を生じさせ
ることによる国内政治の対立の惹起等のマイナス面を有することから、多少の
効果は期待できるが、過剰な期待はできないとの見解が述べられました。
これに対して、アジア地域の安全保障のあり方、FTA 締結による我が国の経
済的プレゼンスの高まりに対するアジア諸国の受け止め方、東南アジア友好協
力条約の果たす役割、多国間の協調的安全保障を重視する必要性、北朝鮮問題
をめぐる六カ国協議と地域安全保障との関係等について質疑がなされました。
参考人の質疑を踏まえた自由討議においては、地域安全保障の観点からの
FTA の推進、冷戦後における平和的な外交手段の充実の必要性、環境や食料な
どバランスのとれた安全保障への取組等について発言がなされました。
45
(3)基本的人権の保障に関する調査小委員会
第1回(平成16年2月19日)
うち の まさゆき
○内野正幸参考人(中央大学(法科大学院開設準備室)教授)
参考人からは、まず、人権の領域では(プライバシー
などの明文化も含め)憲法改正の必要性は少なく、現憲
法下で諸施策を充実させるべきであるとの意見が述べ
られました。そして、憲法の平等条項の読み方として、
①14 条 1 項の列挙事由は例示と考えるべきである、②
憲法による差別禁止は絶対的なものではなく合理的区
別を許すものである、という説明がありました。その上
で、平等の観念には、諸個人をその事実上の違いにかか
わらず一律に同等に扱うべきことを求める「形式的平等」と事実上の劣位者を
より有利に扱うことにより結果を平等なものに近づけようとする「実質的平等」
があるが、14 条が要求しているのは形式的平等であり、実質的平等の実現の役
割は、主に立法政策に期待されているという見解が主張されました。形式的平
等が問題になる事例として、議員定数不均衡問題や婚外子への差別が紹介され、
また、実質的平等については、アファーマティブ・アクションを含め立法や行
政の政策によって推進すべきであるという意見が述べられました。そして、①
女性差別については、女性差別撤廃条約が紹介され、男女共同参画社会の実現
が今後の重要な課題であること、②民間社会における平等と差別については、
企業関係の問題は男女雇用機会均等法や労働基準法などにより法的には少しず
つ解決されてきていること、これに関連して住友電工男女差別訴訟の大阪高裁
における和解は画期的なものとして評価できるという指摘がありました。民間
社会における差別については憲法の人権規定の間接適用によって理論上十分対
応できるが、私人間における差別禁止のルール作りが必要であり、この意味で、
人権擁護法案の見直し・再提出又は差別禁止法の検討が必要であるとの意見が
述べられました。
これに対して、形式的平等・実質的平等と憲法上の要請、議員定数不均衡問
題に関する衆議院と参議院の異なった取扱いの理論的根拠、国公立学校の男女
別学の是非等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、人権の領域においては憲法改正
の必要性は少ないとの参考人の意見に関し電子政府の進展に伴う個人情報保護
の要請をはじめとする新しい人権の明記の必要性(p.84の「新しい人権」参照)、
私人間効力についての米独の理論の導入、実質的平等実現のための措置として
のアファーマティブ・アクション等について発言がなされました。
46
第2回(平成16年3月11日)
の さかやす じ
○野坂泰司参考人(学習院大学法学部長)
参考人からは、まず、思想・良心の自由は、人間存
在にとって根源的な自由であり、思想・良心の自由が憲
法に規定されるに至ったのは、明治憲法下において思
想の自由が抑圧された苦い経験への反省に基づくもの
であるとの説明がなされました。その上で、三菱樹脂
事件やアメリカにおけるヘイト・クライムの加重処罰
などを取り上げながら、思想・良心の自由の内容につい
ての説明がなされました。中でも、国旗・国歌の問題
は、思想・良心に関わる最も重要な問題の一つであるとの指摘がありました。
次に、信教の自由は、思想の自由と並んで、人権宣言の中核をなす最も重要
な人権であり、内心の自由としての信仰の自由は絶対的に保障されるが、信仰
に基づく行為の自由は、必要不可欠な公共的利益を達成するための最小限度の
制約に服するとの説明がなされました。その上で、信教の自由の保障を促進又
は補強するために政教分離原則があり、憲法上「厳格な分離」が要求されてい
ることは疑いの余地がないが、判例の「目的効果基準」はその客観性に問題が
あり、本格的な再検討がなされるべきとの問題提起がありました。また、内閣
総理大臣の靖国神社参拝等を例にとりながら、政教分離原則の下で許される国
家行為についての検討がなされました。
これに対して、「目的効果基準」と内閣総理大臣の靖国神社参拝、政教分離原
則違反に係る訴訟を可能にする住民訴訟類似の制度の立法政策的視点からの検
討、裁判員になることを思想・信条を理由として辞退できるとしたことに対する
評価等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、政教分離原則と制度的保障、ド
イツにおける「闘う民主制」のような内心の自由に対する制限の可能性、内閣
総理大臣の靖国神社参拝等について発言がなされました。
47
第3回(平成16年4月1日)
まつもとかずひこ
○松本和彦参考人(大阪大学大学院高等司法研究科教授)
参考人からは、まず、人権と公共の福祉の関係を巡る
争いは、問いの立て方を巡る争いだったとの説明があり、
この点、通説的見解によると、「人権」対「公共の福祉」
の「二項対立図式」により問題設定をするとの紹介があ
りました。その上で参考人は、「問 1.人権は公共の福祉
によって制限できるのか」及び「問 2.人権を制限する
公共の福祉とは何か」という二つの命題を設定し、それ
に沿って意見陳述が行われました。
問 1 については、最高裁は基本的人権といえども絶対無制限ではなく、公共
の福祉によって制限されると判示し、学説もおおむねこれを肯定的に受け止め
ているが、「二項対立図式」による問題設定そのものが正しいのかという点にお
いて若干の異論もあるという説明がありました。
問 2 については、最高裁による正面からの回答はなく、個別事例ごとのアド
ホックな回答にとどまっていること、さらに、近年、学説上は問 2 のような問
題の立て方自体されなくなっていること、すなわち、公共の福祉と人権との調
整は微妙な作業であって、「公共の福祉とは何か」を問うだけでは済まず、「公
共の福祉と人権との相互調整の方法はいかにあるべきか」へと問いが転換しつ
つあるとの説明がありました。これについては、
「二項対立図式」の問いを「正
当な『目的』を達成するための正当な『手段』による規制」の問いへと立て直
し、規制の「目的」と「手段」を細やかに検討することにより、公共の福祉を
重視しつつ人権を尊重することが可能になるとの意見が示されました。
最後に、誰がこの「問い」に答えるのかについては、「議会」が人権と公共の
福祉の調整を「法律の形式」で行うことの意義が特に強調されました。
これに対して、メディアの表現の自由と個人のプライバシー権との調整、法
律の留保の理論の再構築、「本質性の原理」等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、市民の安全・秩序維持などの公
共の福祉のための施策と市民の人権の調整、法律により議会が権利調整を行う
ことは果たして可能か、科学技術が大変な進展をしている中で裁判所に権利調
整を行うだけの能力が備わっているか等について発言がなされました。
48
第4回(平成16年5月20日)
の
ろ みつる
○野呂 充 参考人(関西大学法科大学院教授)
参考人からは、土地所有権とは、土地という財産に特
有ないわば普遍的な制限を伴うもので、一般的な経済的
自由の理論には解消できない特殊性があるとした上で、
財産権に関連して、都市計画法制、都市景観法制及び財
産権保障のあり方の 3 点について、日本とドイツとを比
較しつつ以下のような指摘がなされました。①都市計画
法制について、新規開発・建築のコントロールには、ド
イツでは「計画なければ開発なし」の原則が妥当するのに対し、日本では「開
発・建築自由」の原則が妥当すること、②都市景観法制については、ドイツで
は、地域限定のない醜悪化の禁止(法律に基づく)と積極的な景観保護・形成
(市町村の条例に基づく)の「二段階規制システム」の法制度がとられている
のに対し、日本では、都市計画法に定める美観地区等の制度があるが、それら
はドイツのような「計画なくして開発なし」の原則を前提としていないため十
分活用されておらず、これからは「計画なくして開発なし」の原則に少しでも
近付けるような制度改革を進めていくことが必要であること、③憲法による財
産権保障とまちづくりとの関わりについては、日本国憲法 29 条とボン基本法 14
条 2 項との規定上の差は実質的な問題にはあまり影響がないが、ドイツの判例
が所有権の制限等の判断に当たって「土地所有権の社会的制約」を強調し、「状
況拘束性理論」に依拠している点は重要であること。そして、ドイツの景観保
護法制が、日本と異なって強制力をもっている理由として、まだ試論ではある
が、ドイツでは、土地所有権について、
「特定の場所」で「特定のデザイン」の建
築を行う権利が相対化されるという特殊性が認められているためではないかとの
指摘もなされました。
これに対して、①財産権における「公共の福祉」概念の変化、②「都市計画
権」を憲法に明記することの要否、③都市計画権限における日本とドイツの地
方分権の差、④環境保護の責任について定めたボン基本法 20a 条は、我が国に
おける人権の観念を転換させる上で参考になるのではないか等について質疑が
なされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、圏央道東京地裁判決に対する評
価と批判、29 条の「公共の福祉」にはまちづくりに伴う人権制約を含めて考え
るべきであるという意見等が出されました。
49
第5回(平成16年5月27日)
た ぐちもりかず
○田口守一参考人(早稲田大学法学部・法務研究科教授)
参考人からは、まず、刑事手続上の人権に関する憲法
規範の意義について、刑事手続条項が 10 箇条にも及ぶ
ことは、比較憲法的にも珍しく、憲法が刑事手続規範を
重視している点、今後の刑事手続における人権を考える
際、被疑者等の具体的な自己決定を尊重するという「積
極的人権」をも保障していくことが大きな課題である点
などが述べられました。
その上で、①被疑者の人権に関して、適正手続規定(憲
法 31 条)の意義、緊急逮捕(刑訴法 210 条)の合憲性、
被疑者の公的弁護制度の導入、通信傍受法による傍受手続、電磁的記録の押収
手続の整備によるサイバー犯罪(ハイテク犯罪)への対処について、また、②
被告人の人権に関して、裁判員制度の導入や裁判の迅速化、刑事免責制度とア
レインメント(有罪答弁制度)の導入、裁判所の裁判を受ける権利の規定(同
32 条)に関する裁判員制度の合憲性等について、③受刑者の人権については、
死刑制度の合憲性と行刑のあり方について述べられた後、④被害者の人権につ
いては、その法的地位を考える上で、被害者保護の必要性、被害者の手続参加
及び被害者の救済の 3 点が問題であり、法改正等による改善が図られているが、
これを新たに憲法に書き込むことには慎重であるべきであるとの見解が示され
ました。
また、司法制度改革は、司法のみならず「この国のかたち(constitution)」
に関わる問題であり、「国家権力」が民主主義化し、「国民」が統治客体から統
治主体へと変化している動きと捉えることができるとの見解が述べられました。
これに対して、①死刑制度の存廃、②裁判員制度、③被疑者の取調べにおけ
る弁護人立会権、④被害者の人権等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、①死刑制度の存廃、②裁判官の
国民感覚とのずれと再教育の必要性、③司法制度改革審議会に見られる司法制
度改革の思想に対する危惧、④憲法の刑事手続規定の制定過程と意義の重要性
等について意見が出されました。
50
(4)統治機構のあり方に関する調査小委員会
第1回(平成16年2月19日)
いちかわまさ と
○市川正人参考人(立命館大学法学部教授)
参考人からは、まず、司法権の意義、「具体的事件・
争訟性」の要件の意義について説明がなされた後、「裁
判を受ける権利」は、裁判へのアクセスの実質的保障を
含む、適正な手続による裁判を受ける権利や公権力によ
る権利侵害に対して実効的救済を受ける権利を意味す
ること、司法制度改革の背景と改革においては人的基盤
の拡充が重要であることについて意見が述べられました。
その上で、利用しやすい司法の実現のために、裁判へのアクセスの拡充と行
政訴訟制度の改革が必要であるが、行政訴訟制度については、より大胆な改革
を期待するとの見解が述べられました。
また、裁判員制度の導入により司法への国民参加を進めることに基本的に異
論はなく、合憲と解されるが、その際、司法の「非民主的な」性格を踏まえ、
憲法と法律のみに従い公平な手続の下で判断するという裁判の性格に配慮する
必要があること、同制度は、刑事裁判の現状を転換する起爆剤にも厳罰主義の
「イチジクの葉」にもなりうる改革であるとの意見が述べられ、また、憲法裁
判所の設置に慎重な考え、今回の司法制度改革は付随的違憲審査制の活性化に
もつながるとの考えが述べられました。
これに対して、法曹の質の確保の方策、裁判員制度と被告人の裁判を受ける
権利の保障や我が国の社会的土壌との関係、現行憲法の指向する「司法」の性
質、違憲審査制活性化の方策(p.88の「日本と諸外国の違憲審査制度」参照)、
現行憲法下における抽象的違憲審査の可否、行政訴訟の迅速な解決の必要性等
について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、裁判員制度について、①画期的
なものであるとの意見、②慎重に検討すべきとの意見、③導入までに、国民の
理解を得る努力をすべきとの意見が述べられたほか、最高裁判所を巡る問題点
を明らかにすべきこと、参議院に憲法裁判院的な役割を与えることの可能性等
について発言がなされました。
51
第2回(平成16年3月11日)
う つ の み や ふか し
○宇都宮深志参考人(東海大学政治経済学部教授)
参考人からは、まず、世界のオンブズマン制度の発
展、議会型オンブズマンが多いこと、法律による導入
の可能性、1950 年代以降に普及した理由について、説
明がなされました。また、日本における取組として、
国レベルでの検討や地方レベルでの導入について説明
がなされました。次に、オンブズマン制度の特色とし
て、①立法府の公職者であること、②公平な調査官で
あり、政治的に立法府からも独立していること、③強制的な権限は有さず、意
見表明・勧告権限等の非強制的な権限のみを有しており、調査の客観性等によ
り影響力を保持していること、④職権調査権限を有しており、これが行政統制
に有効に機能していること、⑤苦情の処理は、直接的で、迅速、かつ無料であ
ることが指摘されました。また、オンブズマンの機能としては、①行政統制・
行政監視機能、②苦情の受理と処理機能、③行政改善機能が挙げられました。
さらに、オンブズマン制度導入の必要性が現在の日本においてますます増大し
ており、その導入は憲法改正によらず、法律の制定によっても可能であり、議
会型オンブズマンと行政府型オンブズマンのいずれも可能であるが、行政監視
機能が有効に働くことから、議会型が望ましいとの見解が述べられました。ま
た、国会の有する行政監視機能を強化し、護民官的機能を有するものとしても、
議会型が適しており、請願権(16 条)を具体化するものとして、現行憲法上正
当化されるとの見解が述べられました。
これに対して、オンブズマン設置の必要性の有無、憲法で規定することのメ
リット・デメリット、任命における党派性の排除の可能性、憲法上の位置付け、
情報公開制度との関係、オンブズマンの具体像、組織のあり方等について質疑
がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、行政相談制度との関係、衆参の
行政監視に関する委員会の機能強化・オンブズマンの必要性、行政の停滞や個
人の権利・公益の間のバランスとの関係等について発言がなされました。
52
第3回(平成16年4月1日)
うす い みつあき
ひろ い よしのり
○碓井光明参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授)及び広井良典参考
人(千葉大学法経学部教授)
碓井参考人からは、まず、国民主権の一環としての国
民財政主義の実現のために、国民への財政情報の提供の
必要性及びこれまでの痛みを伴わない仕組みから国民
が痛みを実感できる仕組みへ転換する必要性が、また、
財政と憲法・法律の関係について、①財政に関する規定
は、多くを立法府の裁量に委ねてよいこと、②「健全財
政主義」は、憲法上の原則ではないために特例法さえ制
碓井参考人
定すれば赤字公債の発行が許容されるという脆弱なもの
であるが、憲法に規定することにより規制することは実際上困難であるとの見
解が述べられました。
次に、予算制度について、①健全な財政確保のため、予算単年度主義を原則
とする必要性があること、②歳出・歳入を対応させた財政統制ができなくなる
ような運用は許されないこと、③複数年度予算を付加することは許されるばか
りでなく望ましいこと、④予算の繰越しの弾力化を図ることにより、
「予算単年
度主義の弊害」を回避すべきこと、⑤使途を緩やかに特定した予備費は憲法上
問題であるとの見解が示されました。
さらに、私学助成等との関連で 89 条後段の削除等の検討の必要性(p.89の「私
学助成と憲法」参照)が述べられました。
その上で、国会以外の機関による財政統制に関連して、①行政自身による統
制としては財務省の役割が大きいこと、②会計検査院は、憲法上、国会の付属
機関とすることは想定されていないこと、③住民訴訟に相当する国レベルの「国
民訴訟」が検討に値すること等が述べられ、また、国会自身も財政統制の制度
的あり方を継続的に検討し、報告書を公表する等の努力を期待するとの意見が
述べられました。
広井参考人からは、まず、日本の社会保障の特徴として、
規模が小さく、内容的には年金の比重が大きいのに対して
福祉の比重が小さく、財源は社会保険中心だが、保険と税
が渾然一体となっているとの説明がなされた上で、社会保
障給付が“低くてすんだ”理由として、①カイシャと(核)
家族による“見えない社会保障(インフォーマルな社会保
広井参考人
障)”、②“公共事業型社会保障”が存在していたからであ
ると述べられました。加えて、国際比較を通じて、我が国社会保障制度の位置
付けについて説明がなされました。
そして、社会保障の基本理念は、憲法 13 条が保障する自己実現の機会として
の自由を制度的に保障するものであるとし、その方向として、医療・福祉が年
53
金よりリスクの予測が困難であることなどから、医療・福祉は厚く、年金は私
的なものを拡大するという「医療・福祉重点型」が妥当であり、その財源とし
て、消費税、相続税、環境税が検討されるべきであると述べられました。
さらに、「公―共―私」の役割分担のあり方や環境との調和等も視野に入れつ
つ、「持続可能な福祉国家・福祉社会」の追求が社会保障の基本的課題であると
の見解が示されました。
これに対して、複数年度予算の必要性、健全財政主義の憲法上明記すること
の必要性、社会保障に関する憲法規定のあり方、国民負担率の現状や将来許さ
れる水準、我が国が目指すべき福祉国家モデル等について質疑がなされました。
第4回(平成16年5月20日)
つじやまたかのぶ
○山幸宣参考人((財)地方自治総合研究所理事・主任研究員)
参考人からは、まず、分権一括法の効果の現状について、
地方議会の活性化や市民の条例作りへの積極的参加等の
例はあるが、依然として、通達に代わる通知・勧告や、各
省大臣による政省令・告示が地方自治体を拘束していると
の説明がなされました。次に、中央と地方の権限配分のあ
り方について、 (a)当該区域内における全権限制の原則を
含み、(b)第一義的には基礎自治体に付与され、(c)いずれ
の事務・権限を実施・執行するかの判断権を含む「自治権」を法律上及び憲法
上明確に位置付け、基礎自治体において実施・執行されないこととされた事務
は、補完性の原理*に従い、より広域的政府の事務として配分されるべきこと等
が述べられました。その上で、今日の地方自治には、法令の規律密度、行政統
制、税財政制度の問題はあるが、原則的に憲法規定の不備が地方自治の発展を
阻害しているとの認識はなく(p.90の「地方自治の本旨」参照)、あえて憲法改
正を行うとすれば、憲法 93 条に関連して、首長・議会の二元制を地方自治体の
選択制とすることや、組織構成、担任事務、課税等について、米国諸州のよう
に、地方自治体がチャーターに規定し、国会で承認する制度を導入することが
考えられること、連邦制を採用しない以上、ナショナル・ミニマム保障のため
の財源は、中央政府が調整義務を負わざるを得ないこと等が述べられました。
さらに、地方自治体の適正規模については、実現可能な自治の内容を権限、財
源、事務量との兼ね合いにおいて考えるべきであり、
「道州制」の概念も明確に
せずに、市町村合併を推進する現状には懸念を持つとの意見が述べられました。
これに対して、地方税の税率を地方自治体の裁量に委ねることの是非、連邦
制を採用するには、改正ではなく新しい憲法の制定が必要とされること、シテ
ィ・マネージャー制**導入の是非、憲法の地方自治規定の果たす役割、
「地方自
治基本法構想」の意義、道州制における道州の権能等について質疑がなされま
54
した。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、多様な地方自治体のあり方を検
討する必要性、首長の多選禁止等を検討する必要性、交通・通信手段の発達に
より都道府県を越えた生活圏が成立していること、行政を統制するためにも地
方分権が必要であること等について発言がなされました。
*
補完性の原理
事務事業を分担する場合に、まず基礎的な自治体を、次いで広域自治体を優先し、広
域自治体も担うに適していない事務のみを国が担うという考え方。
**
シティ・マネージャー制(市支配人制)
米国で実施され、一般的には議員の一人が首長になり、議会が選任したマネージャー
が行財政運営を担当するという制度。マネージャーは民間から選ぶことができ、専門知
識のある人材を登用することができるとされる。
第5回(平成16年5月27日)
もりしたのぶあき
ただ の まさひと
○説明者・森下伸昭君(会計検査院長)及び只野雅人参考人(一橋大学大学院
法学研究科助教授)
森下会計検査院長からは、①会計検査院の厳正、公平な職務遂行のためには、
独立性の確保が何よりも重要であり、その保障のために人事権の独立、規則制
定権の保持及び二重予算制度があること、②会計検査院は独立機関であるが、
検査官の任命について国会の同意が必要であること、国会が決算検査報告の提
出先となっていること、各議院又は各議院の委員会は会計検査院に対し、特定
の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができる
こと等、国会と密接な関係を有していること、③検査成果を制度、予算等に反
映させるため、検査結果の国会への報告、処置を要求した事項等の事後処置状
況の把握及び国会への報告、財務省主計局等との連絡会の開催等が行われてい
ること、④主要諸外国における会計検査院の地位等について説明がなされまし
た。
只野参考人からは、単一国家の二院制の場合、第二院
の独自性が問題になるとし、第二院の分類の方法ととも
に、世界全体では一院制採用国が多数であるが人口が一
定規模以上になると二院制が採用される傾向にあること
について説明がありました(p.85の「二院制(両院制)」
参照)。そして、日本と同様に単一国家で二院制を採用す
るフランスでは、元老院(第二院)の政党化も生じてい
只野参考人
るが、両院の構成が似通っている場合にむしろ元老院が
有益な役割を果たしているとの見解が述べられました。その上で、参議院は独
55
自性を模索してきたが、必ずしもそれは成功しておらず、その発揮のためには、
政党本位の選挙制度の改革を再検討し、国会法ではなく議院規則によって議院
の組織を定めるべきであり、参議院の役割として、多様な民意を反映し、長期
的な視野に立った調査活動を行い、行政に対するコントロール機能を持つこと
が期待されるとの見解が述べられました。さらに、衆議院―予算審議、参議院
―決算審査という役割分担は、権限の弱い参議院が有効な統制をすることがで
きるのかという懸念から好ましいものではなく、また、憲法政策的に見て、現
行の二院制は是認できるとの意見が述べられました。
これに対して、両院の選挙制度のあり方、参議院の存在意義、二院制のあり
方と民意の反映、両院の役割分担、会計検査院の国会付属機関化、会計検査院
の検査の観点、会計検査院の独立性等について質疑がなされました。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、二院制維持の必要性、憲法の規
範に照らし現状を見ることの必要性、二院制のメリットを活用する必要性等に
ついて発言がなされました。
56
3
公聴会の概要
(1)第1回公聴会(平成16年5月12日)
<午前>
公述人の意見の要旨
いのぐちくに こ
○猪口邦子君(上智大学法学部教授)
①日本は、国際安全保障分野の多国間外交の場において評価されていること、
②憲法の検討に当たっては、戦後日本の国家や社会の努力への評価と、そうし
た努力がもたらした世界における貴重な存在感についての深い認識を出発点と
すべきであること、③9 条 1 項、2 項に掲げられた考え方は国際社会で広く知ら
れ、特別の評価を獲得していること等を挙げた上で、我が国は、自国のあり方
を過小評価するのではなく、むしろ国際社会への啓発力を信じて積極的に発信
し、また日本の姿勢を肯定的に受け止める各国の多様性の受容をより積極的に
外交を通じて評価していくべきであり、今後、国民世論が憲法の修正を求める
場合に、9 条の基本を維持しつつ、平和国家として保持する自衛のための実力
組織につき簡潔に言及する可能性は研究するに値する一方、個別法で扱うべき
範囲の事柄を憲法に織り込むことや今後の国際情勢や国連の活動の方向性を予
断して複雑な修正を試みることには慎重であるべきである等の意見が述べられ
ました。
かわもとゆう こ
○川本裕子君(早稲田大学大学院教授)
経済的自由に関する制限は、これまでのところ大過なく運用されてきている
とした上で、①経済政策について憲法で事細かに規定すべきではないこと、②
憲法には「財政赤字を出さない」ではなく、
「財政赤字を隠さない」ということ
を規定すべきであること、③最終的に国民負担となるような政府活動について
の政府の情報公開義務を憲法上明記すべきこと、④大きな一票の格差があるこ
とにより、国会が公共政策決定の責任主体となる前提条件が満たされていない
等と考えられることから、議員定数の不均衡の見直しを図るべきこと等の意見
が述べられました。
い
の かわきんぞう
○井ノ川金三君(元群馬県林業改良普及協会事務局長)
「二院制の見直し」に当たっては、国会の機能を効率的に発揮させるために
どのようにすべきかを出発点にする必要があり、特に参議院のあり方が問題と
なるとした上で、①予算審議は衆議院の、また、決算審査は参議院の専権とし
て権能を分けるべきこと、②最高裁判所長官の任命手続、大赦、特赦等の手続
等の司法に関わる権限を参議院に移すべきこと、③参議院の独自性を出す方向
での見直しができないのであれば、一院制とすることもやむを得ないと考えら
れること、④道州制へ移行するような場合には、参議院を道州の代表で構成さ
57
れる新しい第二院とすることも考えられること等の意見が述べられました。
質疑の要旨
委員からは、人間の安全保障の憲法上の位置付け、健全財政に関する規定を
憲法上規定することの是非、二院制と連邦型分権国家との関係、国連の集団安
全保障と憲法との関係、政府の情報公開に対する義務や責任を憲法上規定する
ことの是非、多国間主義と米国の単独行動主義との関係、平和的生存権につい
ての見解等について質疑がなされました。
<午後>
公述人の意見の要旨
お ぐまえい じ
○小熊英二君(慶應義塾大学総合政策学部助教授)
①憲法制定に際して占領軍のイニシアティブは強かったが、当時の保守陣営
からもおおむね歓迎されたことを考えれば、「押しつけ」という評価をすべきで
はないこと、②米国は、冷戦と朝鮮戦争をきっかけに対日政策を日本の非武装
化から反共同盟国として再軍備させる方針に転換したが、この再軍備要求は、
革新側のみならず保守政界の一部からも米国の「傭兵化」という反発を招いた
こと等を紹介した上で、9 条の改正は、①米国政府の対日軍事要求をエスカレ
ートさせる可能性、②日本の軍事大国化を警戒する米国の世論及び周辺諸国の
反発を招く可能性、③アジア諸国を刺激する可能性があること、また、
「自主憲
法制定」という感情的な議論ではなく、国際社会の動向等を踏まえた慎重な憲
法論議が望まれること等の意見が述べられました。
ふなびきたけ お
○船曳建夫君(東京大学大学院教授・文化人類学者)
①9 条は、米国の利益と人類の理想主義とが合わさった産物で、その当時の独
立国家ならば当然有する「交戦権」を認めないという、特異な成り立ちを持つ
こととなったこと、また、②9 条は、日米安全保障条約と対で意味をなすように
作られており、平和憲法たる日本国憲法だけで戦争の抑止力になってきたと考
えるのは正しくはないこと、③冷戦の終結により、米国による日本の防衛が疑
うべくもない前提であった状況はなくなり、ここに至って、9 条の議論は実質を
帯びてきていること等を紹介した上で、①現在、戦争は、その戦争テクノロジ
ーの進歩により、先進国間に限っていえば、すでに実質的に不可能な国家的活
動であり、交戦権は不要であるばかりでなく、自衛以外の戦争を導きかねない
危険なものであること、②よって 9 条を改正することは、ここ 200 年ほどの「産
業文明初期の国家と戦争のあり方」と論理的整合性があるだけで、日本国の将
来的な国益とはならないこと、③これまで積み重ねてきた 9 条の議論は大きな
財産であり、それを基礎として今後も議論を積み上げることが、真に世界から
敬意を払われる国家となる道であること等の意見が述べられました。
58
やまざきまさかず
○山崎正和君(東亜大学学長)
憲法改正の議論を、例えば、戦後の民主主義か戦前の愛国心か、占領軍によ
る憲法か自主憲法かなど、イデオロギー的対立と重ね合わせてはならないと考
えているとした上で、当面の緊急課題は、①日本が自衛権を持つことを明示す
るかどうか、②世界の平和維持に貢献する用意のあることを宣明するかどうか
の 2 点であって、論議はこれに集中して実務的、具体的に行われるべきである
こと、そのために憲法改正の包括的な議論は避けるべきであること、憲法改正
を容易にする改正を行い、米国のように個別的な憲法修正条項の制定を可能に
する道を開くべきであること等の意見が述べられました。
質疑の要旨
委員からは、国会や議員選出のあり方に関する憲法上の規定ぶり、愛国心に
ついて憲法上規定することの是非、東アジア地域共同体を形成するに当たって
の課題、我が国の今後の対外政策のあり方、テロに対する国際的防衛同盟を創
設することに対する見解、多国間主義の見地から見たヨーロッパ・アジアにお
ける平和と安全保障の構築等について質疑がなされました。
(2)第2回公聴会(平成16年5月13日)
公述人の意見の要旨
よし だ けんいち
○吉田健一君(弁護士)
①米国により引き起こされたイラク戦争は、違法な戦争であること、②この
違法な戦争への協力を目的とする自衛隊のイラク派兵は、9 条及び 98 条 2 項に
違反するものであること、③政府は、海外での武力行使はしないから合憲とす
る自らの説明すら投げ捨て、戦闘行為を展開している米英軍の物資輸送や武器
を持った米兵の輸送まで行い、武力行使に加担していることが指摘されました。
そして、そのことは立憲政治の基本を無視するもので許されないものとした上
で、憲法の平和主義を活かし、軍事に頼らない平和な国際関係の実現を追求す
ることが日本の課題であり、また、憲法「改正」により環境権やプライバシー
権などの新しい人権を明記しようとする動きがあるが、現行憲法を活かし、保
障されている基本的人権の充実を図り実現していくことをまず考えるべきであ
る等の意見が述べられました。
あん ぼ かつ や
○安保克也君(日本電子専門学校専任講師)
テクノロジーの急激な進歩により、世の中は変化しており、新しい時代の憲
法を論じるときには、技術進歩に関する情報を収集した上で論じる必要がある
とした上で、憲法について、①情報の収集、分析、保全等のための法整備等と
59
合わせた 21 条の改正の必要性、②サイバー戦をも視野に入れ、「日本の主権及
び独立を保障し、領土を保全し、国民の基本的人権を擁護することを使命とす
る」軍事組織を保有するための 9 条改正の必要性、③国民の平穏の保障及び福
祉の増進、侵略戦争の放棄及び国力に応じた国際平和協力への貢献等を前文に
盛り込む必要性等の意見が述べられました。
ひ だかさやか
○日髙 明 君(元四国学院大学大学院生)
前文の掲げる理念を根付かせていくことが重要であると考えるとの立場から、
①前文に謳う「平和的生存権」は、「人間の安全保障」につながる先見性を持っ
たものであること、②前文及び 9 条の掲げる平和主義は、今日の国際社会を導
く強力な理念となりつつあり、その実現こそが政治の最大の課題であると考え
られること等の認識を示した上で、①我が国は、憲法に平和的生存権を掲げて
いるからこそ、世界の平和と安定のために積極的に寄与していくことができる
のであって、前文や 9 条の改正によっては、平和な社会を構築することはでき
ない、②むしろ、日本が世界に先駆けて戦争の放棄を鮮明にしたことの正しさ
をこそ誇るべきであって、憲法の精神を尊び、これを次代へつなげていくこと
が我々の選択すべき唯一の道であると確信する等の意見が述べられました。
質疑の要旨
委員からは、国民投票法の制定や憲法改正手続要件の緩和に対する見解、憲
法裁判所設置の是非、日米同盟と国際協調主義との関係、国際貢献について憲
法上規定することの是非、サイバー軍と通常の軍事力との関係、世界における
我が国憲法の位置付けや役割、米軍基地による公害と環境権等人権との関係、
21 世紀における我が国の国家像等について質疑がなされました。
60
4
地方公聴会の概要
(1)仙台地方公聴会(平成13年4月16日)
意見陳述者の意見の要旨
て じまのり お
○手島典男君(仙台経済同友会代表幹事)
憲法制定後の内外の状況は大きく変化しており、憲法はこれに対応していく
べきである。
か
の ふみなが
○鹿野文永君(宮城県鹿島台町長)
地方分権に根ざしたまちづくりを進めることが、憲法を守り育てていくこと
にほかならない。
し むらけんすけ
○志村憲助君(東北大学名誉教授)
環境問題については、人間中心の考え方ではなく、他の生物との共生に意を
用いるべきである。
た なかひでみち
○田中英道君(東北大学文学部教授)
我が国の伝統に根ざした見解に立って、積極的に世界の平和に尽力できるよ
うな憲法を作るべきである。
お
だ なかとし き
○小田中聰樹君(専修大学法学部教授・東北大学名誉教授)
現行憲法はその思想的・理念的構造において体系的一貫性を有し、現代的機
能を果たしている。
く
ぼ
た
ま なえ
○久保田真君(「憲法」を愛する女性ネット代表)
女性の権利を認めるとともに、国際的に高く評価されている 9 条を有する現
行憲法の理念を守るべきである。
よねたにみつまさ
○米谷光正君(東北福祉大学助教授)
社会を超越した憲法を作ってはならず、意見の言いやすい身近な憲法に変え
ていくべきである。
はま だ たけひと
○濱田武人君(弘前学院聖愛高等学校教諭)
真剣に生徒に向き合う教師にとって、9 条は夢とロマンを与えてくれる条文で
ある。
61
えんどうまさのり
○遠藤政則君(専修大学北上高等学校講師・志民学習会代表)
国民を本当の主権者とするために、速やかに憲法の改正手続を整備すべきで
ある。
さいとうたか こ
○齋藤孝子君(みやぎ生協平和活動委員会委員長)
今やるべきことは、憲法を変えることではなく、憲法を誠実に守ることである。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、憲法の定める公務員の憲法尊重擁護義務と改正条項の関係、
9 条、環境権、情報公開、首相公選制、憲法裁判所制度等に関する意見陳述者の
見解について、質疑がなされました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、「憲法調査会の議事をもっと国民に対して
公開すべき」との意見及び「国の基本的な問題について国民と直接に議論する
このような機会をもっと設けるべき」との意見が述べられました。
(2)神戸地方公聴会(平成13年6月4日)
意見陳述者の意見の要旨
かいはらとしたみ
○貝原俊民君(兵庫県知事)
21 世紀において、我が国は、医療、福祉、防災等に関する「平和の技術」を
提供して国際貢献を図り、また、地方分権を進めていくべきである。
しば お すすむ
○柴生 進 君(川西市長)
地方行政においては憲法の具体的な実践が重要であり、子どもの人権保護及
び国際社会に連帯した平和と人権への取組みがなされるべきである。
ささやまかずとし
○笹山幸俊君(神戸市長)
阪神・淡路大震災の教訓として、災害時における市町村長への十分な権限の
付与及び憲法の生存権を踏まえた被災者支援が重要である。
おおまえしげ お
○大前繁雄君(学校法人大前学園理事長)
世界から評価されている日本人の良さを見直し、立憲君主国家であることの
明示、義務規定の創設等の点につき、憲法の見直しを行うべきである。
うら べ のり ほ
○浦部法穂君(神戸大学副学長・大学院法学研究科教授)
「人間の安全保障」の観点に立ち、軍備に巨額を投じるのはやめ、大規模災
62
害、食料・エネルギー問題等への取組みで世界をリードすべきである。
なかきたりゅう た ろう
○中北 龍 太郎君(弁護士)
20 世紀の戦争の過ちを克服し、非核神戸方式の法制化、日米安保条約の友好
条約への転換等平和憲法を守り活かす政策を実施すべきである。
はしもとあき お
○橋本章男君(兵庫県医師会会長)
憲法に、大規模災害に対する国の責務に関する規定を設けるとともに、生存
権の保障を充実させ、国民の「健康権」の保障を憲法に明示すべきである。
こ
く
ぼ まさ お
○小久保正雄君(兵庫県北淡町長)
憲法は時代に応じて変えていくべきものであり、天皇が元首であること、自
衛のための交戦権、自衛目的の軍事力の保持等を明記すべきである。
つかもとひで き
○塚本英樹君(会社経営)
社会情勢の変化を踏まえ、「すぐに変更すべき項目」、「追加すべき項目」、
「今後も議論していく項目」に分け、憲法改正に着手すべきである。
なか た なりしげ
○中田作成君(大阪工業大学助教授)
憲法は住民運動の基礎でもあり、憲法改正が軽率に議論されてはならず、ま
た、政府は憲法を軽視せず、現実を憲法の理念に近づけるべきである。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、首相公選制、地方自治のあり方、災害に関する規定を憲法
上明記する必要性、災害時の国と自治体の権限分担、天皇を元首とする規定を
設けることの可否、憲法の観点から見た被災者に対する公的支援の問題、日米
安保体制の強化の憲法適合性等に関する意見陳述者の見解について、質疑がな
されました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、自然災害時の法制度の不備と憲法との関
係、歴史や伝統を踏まえた憲法の制定、地方公聴会の運営方法等についての意
見が述べられました。
(3)名古屋地方公聴会(平成13年11月26日)
意見陳述者の意見の要旨
た ぐち ふ
く
じ
○田口富久治君(名古屋大学名誉教授)
憲法は軍事的な国際貢献は想定しておらず、我が国は、今後も、国連難民高
63
等弁務官事務所やユニセフ等を通じた非軍事的な国際貢献をなすべきである。
にしひで こ
○西英子君(主婦)
日本は、平和的生存権の保障など憲法前文の理念に従って国際社会における
役割を果たすべきであり、途上国への経済援助に際しては、貧困層の人々まで
手の届くものとし、伝統的な生活様式や自然環境を破壊しない配慮が必要であ
る。
の はらきよ し
○野原清嗣君(岐阜県立高等学校教諭)
大人が子どもに対し、ルールやマナーを教えていないことを示すデータにか
んがみて、自国の安全を他人任せにする憲法前文と 9 条に問題があり、普通の
国が持つ自衛権を憲法上明記し、前文も日本人の顔が見える格調あるものとす
べきである。
かわばたひろあき
○川畑博昭君(名古屋大学大学院法学研究科博士課程後期課程)
ペルーの日本国大使館に勤務した際に、爆破テロに遭遇した経験を踏まえて、
テロに対しては、暴力によってではなく、対話により解決を図るべきである。
こ
い
ど やす お
○古井戸康雄君(弁護士)
日本は国際社会における「評価」ではなく、「国益」の観点でその役割を考え
るべきであり、資金援助中心の国際貢献だけでなく、人による国際貢献にも重
点を置き、そのために人材育成を行う必要がある。
か とうまさのり
○加藤征憲君(大学生)
日本は国連の安全保障理事会常任理事国入りを果たし、核廃絶にリーダーシ
ップを発揮すべきであり、そのためには、強いリーダーシップを持った首相を
選ぶことが期待できる首相公選制を導入すべきである。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、我が国のテロ下における具体的対処法、環境に関する権利
及び義務を憲法に明記することの是非、国連の警察的活動に自衛隊を参加させ
ることの是非、テロ問題解決のための国連の役割、テロ対策特別措置法と憲法
との関係、教育の現場における憲法についての教育の実情について質疑が行わ
れました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、「平和憲法を具体的に生かすことが必要」
との意見、「中学校、高校において憲法をもっと教えるべき」との意見、「制定
経緯にかんがみ、日本人が議論して憲法を作り直すべき」との意見、「女性の
意見陳述者をもっと採用すべき」との意見等が述べられました。
64
(4)沖縄地方公聴会(平成14年4月22日)
意見陳述者の意見の要旨
やまうちとくしん
○山内徳信君(平和憲法・地方自治問題研究所主宰)
憲法 9 条は国民の命そのものであるから、政治家は憲法を尊重擁護し、また、
我が国は平和国家のモデルとして、9 条の精神を世界に広めるべきである。
あらかきつとむ
○新垣 勉 君(弁護士)
さきの沖縄戦の教訓は、軍事力で国民の生命は守れないということであり、
個人の尊厳の観点からも、非武装平和主義を体現する憲法 9 条を守るべきであ
る。
めぐみりゅう の すけ
○ 恵 隆 之介君(ビジネススクール校長)
交戦権は国の当然の権利であり、また、武力の裏づけなくしては国家の独立
と平和は維持できないので、憲法 9 条を改正すべきである。
かきのはなほうじゅん
○ 垣 花 豊 順 君(沖縄国際大学法学部教授)
憲法、教育基本法の基本理念である個人の尊厳が普及徹底するよう、国会議
員、教員等は、憲法の個人の尊厳を尊重擁護すべきである。
いなふく え
り
か
○稲福絵梨香君(大学生)
学ぶことは義務ではなく権利であるので、奉仕活動の義務化は行うべきでは
なく、ボランティア活動では、地域に支えられて地域とともに生きる関係が重
要である。
あ
し とみおさむ
○安次富 修 君(沖縄県議会議員)
戦争放棄の理想は保持しつつ、必要最小限の自衛力の行使及びその際の国民
による直接的コントロールを憲法に明記し、また、立法権と行政権の完全な分
立、地方自治の充実を憲法に明記すべきである。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、我が国の安全保障体制、自衛隊、日米安全保障条約の合憲
性、9 条以外の条項に関する改正の是非、災害時の自衛隊の役割、国家による国
民の安全保護のあり方、非軍事面での国際貢献、日米地位協定の見直し、有事
法制の問題点、教育問題等に関する意見陳述者の見解について質疑が行われました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、平和憲法の重要性、国家主権の確立の必
要性、沖縄で憲法が十分に守られてこなかったこと、有事法制の問題点等につ
いての意見が述べられました。
65
(5)札幌地方公聴会(平成 14年6月24日)
意見陳述者の意見の要旨
いな つ さだとし
○稲津定俊君(大東亜商事株式会社代表取締役)
日本の伝統、文化を踏まえた普遍的価値を基本理念とする新憲法を制定し、
21 世紀初頭の世界秩序の維持に積極的に貢献するべきである。
いしづかおさむ
○石塚 修 君(農業)
日本は、憲法前文及び 9 条の徹底した平和主義の理念を貫いて、政治的にも
経済的にも自立した国になるべきである。
た なかひろし
○田中 宏 君(北海道弁護士会連合会理事長)
憲法 9 条の改正や有事法制を検討するよりも、アイヌ民族に対し、反省とよ
り温かい目をもって民族政策を展開するべきである。
さ とうさと み
○佐藤聖美君(大学生)
憲法 14 条に保障された男女の平等を実現させるためには、女性に正当な権利
が保障されるように、今後一層の法整備や意識改革が必要である。
ゆう き よういちろう
○結城洋一郎君(小樽商科大学教授)
憲法 9 条は、我が国が世界に誇りを持って提示し得る手本というべきもので
あり、これは堅持すべきであるが、国民投票制度の導入、憲法裁判所の設置、
大統領制の導入など、現行憲法には改善すべき余地もある。
ま すぎえいいち
○馬杉榮一君(弁護士)
21 世紀にこそ日本国憲法の平和主義の理念が発揮されるべきものであり、ま
た、憲法を守り、人権を守るためには司法制度改革が不可欠である。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、北海道における国際化の問題、憲法 9 条と自衛隊、日本に
おける国際貢献のあり方、日本の非核政策、司法制度改革、女性の社会進出、
教育改革、農業政策等について質疑が行われました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、憲法 9 条の意義、有事法制の問題点、地
方公聴会の開催が憲法改正につながる危惧等についての意見が述べられまし
た。
66
(6)福岡地方公聴会(平成 14年12月9日)
意見陳述者の意見の要旨
く さ か べ やすひさ
○日下部恭久君(地方公務員)
自治体職員としての経験を踏まえ、生存権や労働権等の人権規定を有する憲
法を暮らしの中で活かすべきであり、また、9 条の理念を宝として大切にしたい。
ご とうよしなり
○後藤好成君(弁護士)
国民の「裁判を受ける権利」を実現するために、裁判官の大幅な増員による
裁判の迅速化や裁判費用の法律扶助制度の大幅な拡充が必要である。
にし ざ せい き
○西座聖樹君(会社員)
国民の生命・財産を守るために自衛隊を国を守る防衛軍に改めること、道徳
性等の人間性を育むために地域の歴史、文化に合った独自の教育を行うこと、
さらに、九州全体としてまちづくりへ取り組むことが必要である。
はやしちから
○ 林 力 君(元九州産業大学教授)
平和が人権保障の前提であることから 9 条改正には反対であり、また、現行
憲法下で起きた部落差別やハンセン病患者への差別といった事実を踏まえ、人
権保障に対する国や国民の努力が十分でなかったことに対する国民的な論議を
期待したい。
みやざきゆう こ
○宮崎優子君(主婦)
憲法調査会の中間報告は、何が議論されているのかが分かるので是非読んで
ほしいが、国民が、より理解しやすい内容とすべきではなかったか。また、地
方公聴会という国民の声を直接聴く機会を活かし、一般の人々の思いに寄り添
った政治を行うべきである。
いしむらぜん じ
○石村善治君(福岡大学名誉教授・元長崎県立大学学長)
平和主義の理念を掲げる前文及び 9 条は改正すべきでない。他方、13 条の「個
人の尊重」はその対象として「国民」と規定するが、これを「すべて人は」と
改正し、「知る権利」を憲法上明文化し、さらに、第 1 章を「国民主権」とすべ
きである。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、我が国の安全保障等のあり方、ハンセン病患者への差別等
の人権侵害を繰り返さないための方策、違憲審査権行使のあり方、地方分権改
革の方向性、米国の対イラク戦争への我が国の支援と憲法との関係、新しい人
67
権を憲法上の権利として規定することの是非等について質疑が行われました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、北朝鮮による拉致問題にかんがみた前文
及び 9 条の改正の必要性、憲法の平和理念の重要性、憲法を現実に合わせる
ような改正への危惧等についての意見が述べられました。
(7)金沢地方公聴会(平成15年5月12日)
意見陳述者の意見の要旨
やまもととし お
○山本利男君
憲法を改正すべきであるとの立場から、①前文における不自然な文言につい
ては削除し、②愛国心、郷土愛及び「利他の心」を明記し、③憲法改正手続を
他の項目に優先して改正すべきである。
しま だ よういち
○島田洋一君(福井県立大学教授)
北朝鮮による邦人拉致は重大な人権問題であり、この問題の解決のためには、
最終的には武力行使をも辞さないとの強い態度で臨むべきであって、そのため
にも、前文及び 9 条を削除すべきである。
いわぶちまさあき
○岩淵正明君(弁護士)
今求められているのは、日本と世界の現実の中で憲法の理念を確認して活か
すことであり、北朝鮮問題についても、憲法の求める武力によらない平和的解
決の手段を模索すべきである。また、9 条の改正は、歯止めなき軍事拡大路線へ
と進む可能性が大きく、断じて認められない。
まつ だ とも み
○松田智美君(弁護士)
13 条が規定する幸福追求権により「新しい人権」を保障することは可能であ
り、同条で保障された人権を具体的に立法化することによってその目的は達成
できる。また、現在、国会で審議されている個人情報保護法案については、真
に国民のプライバシー権を保護できるか否かという観点から、再検討すべきで
ある。
かも の ゆき お
○鴨野幸雄君(大学教授)
地方自治は、住民の自己決定権という人権保障の原理及び国民主権の原理に
由来するものであって、地方自治体には、国と対等、並立の関係に立って国民
のために協働する権限がある。また、現行法制で不十分な点については、実定
法による補充が必要である。
68
はすいけ
○蓮池ハツイ君(意見陳述応募の際に寄せられた意見の要旨)
*当日欠席
自分の息子が北朝鮮によって拉致され、24 年間もその帰りを待ち続けた経験
から、北朝鮮による邦人拉致は基本的人権侵害の極みであり、国家主権の侵害
である。また、到底許すことのできない凶悪犯罪であり、国家テロであって、
基本的人権を保障するのが国家の役割だというのであるならば、日本国憲法な
ど、この国では遵守されていないといっても過言ではない。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、教育のあり方、北朝鮮による邦人拉致や核開発の問題につ
いての解決策のあり方、北東アジア地域における平和構築のための方策、地方
分権改革のあり方、市町村合併のあり方、「新しい人権」の保障のあり方や憲法
への明記の是非等について質疑が行われました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、憲法の条文中には問題があるものが多い
との認識からの憲法改正の必要性、憲法の掲げる平和主義の立場からの拉致
問題解決の必要性、国際的な人権侵害については武力ではなく国際法によっ
て対処することの必要性、過去の戦争に対する反省をもとに憲法の理念を発
展させていく必要性等について意見が述べられました。
(8)高松地方公聴会(平成15年6月9日)
意見陳述者の意見の要旨
くさなぎじゅんいち
○草薙 順 一君(弁護士)
平和の維持には、秩序ある、力を伴う「法の支配」が必要であり、日本の安
全保障は将来創設される国連軍により保障されることを目標としつつ、それに
至る過程として、北東アジアの地域的安全保障体制を構築すべきである。また、
9 条改正には反対である。
ね もとひろとし
○根本博愛君(四国学院大学教授)
「新しい人権」の保障に必要なことは、憲法上に規定することよりも立法化
による具体化である。人権を制限するよりも人権を最大限尊重することを通し
て生まれる公共の福祉が大切である。また、国内における人権保障の充実が積
極的な国際貢献につながる。
たか ぎ けんいち
○高木健一君(学生)
戦後の日本の平和は、9 条によるものではなく、日米安保条約の恩恵によるも
のであるが、在日米軍は 9 条との整合性において問題があるので憲法を改正す
69
べきである。また、9 条改正により、自衛隊を正式に軍隊として明示すべきであ
る。
にしはらかずいえ
○西原一宇君(元中学校社会科教師)
教育権は、平等権の保障の前提となるほか、主権者としての権利行使の前提
として大切であるが、現実には、不登校、低学力の問題など憲法や教育基本法
の軽視に起因する弊害が生じており、憲法を改正するよりは、憲法を活かすよ
う努力すべきである。
さかがみ は
つ
こ
○坂上ハツ子君(主婦)
日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化する中で、憲法と現実の矛盾が深
まっていることを踏まえ、安全保障の分野など見直しを急ぐべき分野は、当面、
解釈変更で対応し、その後、世論等を踏まえて憲法改正を考えるべきである。
か
ご しまひとし
○鹿子嶋 仁 君(香川大学法学部助教授)
合併による地方自治体の規模拡大は、財政問題等から必要な場合があるとし
ても、「住民自治」の実質化の観点から、その具体的仕組みや、地方自治は直接
民主制を基本とすることを憲法に規定すべきであり、また、基礎自治体の強化
の観点から、法律と条例との関係や課税自主権を憲法に規定し、一定の行政組
織権限が地方自治体に認められるようにすべきである。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、今後の社会保障のあり方、「地方自治の本旨」の意味、我が
国の今後のあり方、「新しい人権」を憲法に明記することの是非、教育問題が生
じている原因、憲法の平和主義を踏まえたイラク問題への対処のあり方、武力
攻撃事態法に規定されている首相のいわゆる「代執行」権限と地方自治との関
係、教育の現状と勤労観の関係などについて質疑がありました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、憲法を踏まえた主体的な外交の必要性、
軍事力ではなく外交や信頼醸成による自衛の必要性、米国追随的な行動によ
り国益を見失うことへの懸念、憲法に基づき政治を行うことと世界の共有財
産として日本国憲法を大事にすることの必要性等について意見が述べられま
した。
70
(9)広島地方公聴会(平成16年3月15日)
意見陳述者の意見の要旨
さ とうしゅういち
○佐藤 周 一君(公務員)
現在、失業問題が深刻である等、27 条や 25 条に反する状況にあり、これら
の規定を実現するための諸施策により景気回復が図られる。憲法改正を議論す
る前に政府に憲法を遵守させ、人権を侵害させないようにすることが国会の役
目である。戦争が最大の人権侵害であり、人権保障のために 9 条は絶対に変え
てはならない。
ひでみちひろ
○秀道広君(広島大学大学院教授・医師)
国家主権の侵害に対処するための備えをし、また、我が国の歴史、伝統、文
化等の国家としてのアイデンティティを明確化すべきである。積極的な平和活
動を実施すべきことを踏まえ、前文の全面改正や 9 条 2 項の削除等の憲法改正
をすべきである。
たかはしあきひろ
○高橋昭博君(元広島平和記念資料館館長)
自分が被爆の苦しみを乗り越えることができたのは平和主義を謳った憲法が
あったからである。我が国は、9 条を堅持し、平和外交を基調とする全方位外交
を果敢に展開しなければならないのであり、憲法の見直し、とりわけ、9 条の見
直しには断固反対である。
ひら た
か
な
こ
○平田香奈子君(団体職員)
憲法は、日本が半世紀以上前、アジア諸国を侵略し、大きな戦争を引き起こ
したことに対する反省と二度と戦争をしないという誓いの下に生まれたもので
あるが、自衛隊のイラク派兵等はそれをないがしろにするものである。悲惨な
戦争の体験、人類の自由を求める闘いの到達点が書き込まれている憲法は、ま
ったく変える必要がない。
おか だ たかひろ
○岡田孝裕君(社会福祉法人みどりの町理事長)
地方自治の課題として、地方の自主自立の精神と自己責任を確立する必要性、
国と地方の業務分担の見直しと地方財政の再構築の必要性、地方行政の重層構
造等の簡素化の必要性が指摘できる。憲法の地方自治の規定をより具体的に規
定し直す必要があり、また、道州制ひいては連邦制の導入も検討されるべきで
ある。
お
だ はる と
○小田春人君(岡山県議会議員)
憲法は、制定過程に問題があること、施行後 60 年近い時が経過したことの 2
71
点から改正が必要である。特に、統治機構については、議員の選出方法が酷似
する二院制の見直し、形骸化している最高裁判事の国民審査の廃止、「地方自治
の本旨」の具体化が必要である。
派遣委員の質疑の要旨
派遣委員からは、教育のあり方、国と地方の役割分担、道州制と二院制の関
係、核抑止論を乗り越えるための理論構成、憲法の平和主義への思い、日本の
アイデンティティと 9 条との関係などについて質疑がありました。
※派遣委員の質疑の後、傍聴者から、軍隊や個別的・集団的自衛権の憲法上の
明記の必要性、労働と教育の条件整備により憲法を活かすことの必要性、有
事の際に家族や周りの人が命にかかわる状況に陥ることへの危惧等について
意見が述べられました。
72
5
海外調査の概要
(1)衆議院欧州各国憲法調査議員団(平成12年9月)
各国での訪問先と主な質疑事項
○ドイツ
ドイツでは、連邦憲法裁判所と連邦議会を訪問し、①憲法(基本法)の主
要な改正の概要と背景や憲法の運用実態、②ドイツにおける憲法裁判制度、
③憲法裁判所裁判官の政治的中立性の確保の問題、④連邦軍の NATO 域外へ
の派兵の合憲性に関する判決の問題等について質疑応答を行いました。
また、養護施設を訪問し、兵役を拒否しその代替役務として障害者の介護
等に従事している青年達や養護施設の所長と、兵役義務及び良心的兵役拒否
制度の実態等について懇談を行いました。
○スイス
スイスでは、連邦議会と憲法改正草案を作成した連邦司法警察省を訪問し
ました。スイス憲法は 1874 年制定以来、140 回もの部分改正を経た後、2000
年 1 月から旧憲法を全面改正した新憲法が施行されており、①その背景と経
緯、②国民投票制度の意義と問題点、③科学技術の進展の中で人間の尊厳を
いかにして確保していくかといった 21 世紀的観点から生命倫理に関する詳細
な規定が設けられている点等について質疑応答を行いました。
○イタリア
イタリアでは、憲法裁判所と衆議院(下院)憲法問題委員会を訪問し、①
イタリアにおける憲法裁判制度、②憲法裁判所への提訴権者や違憲判断の基
準、③憲法裁判所裁判官の政治的中立性の確保の問題、④祖国防衛義務に関
する国民の意識、⑤最近の憲法改正の動向、⑥地方自治の保障と地方自治体
に対する中央政府の監督権、⑦EU 統合がもたらす影響等について質疑応答を
行いました。
○フランス
フランスでは、国民議会と憲法院を訪問し、①大統領任期縮減等の憲法改
正の動向、②人権と社会公共の義務の調和の問題、③大統領と首相とに行政
権が二元的に帰属していて保革共存政権(コアビタシオン)を招きやすいこ
と、④憲法院の合憲性審査が法律施行前の事前審査に限られていること等に
ついて質疑応答を行いました。
○フィンランド
フィンランドでは、憲法とみなされていた四つの基本法を一つに体系化し
た新憲法が 2000 年 3 月から施行されており、①その背景と経緯、②国会の権
73
限強化と大統領権限の制限、③情報アクセス権の規定や非常事態に関する規
定等について質疑応答を行いました。
○塩野七生さんとの懇談
塩野さんからは、古代のローマ人は法をどのように考えていたか、塩野さ
んは日本国憲法をどのように考えているかといった点に関するお話を聞いた
後、①ローマ帝国における統治の実態や、②日本国憲法の改正は、まず、改
正手続を定めた 96 条から行うべきという塩野さんの改正提言の是非等につい
て意見交換を行いました。
(2)衆議院ロシア等欧州各国及びイスラエル憲法調査議員団(平成13年8
月∼9月)
各国での訪問先と主な質疑事項
○ロシア
ロシアでは、国家院(下院)、法務省、連邦憲法裁判所を訪問し、①ソ連邦
崩壊後に全面改正されたロシア憲法の制定経緯、②新憲法の国民への浸透の
実態、③新憲法の規定する強力な「大統領中心主義」の下で、強大な大統領
の権限を議会がいかに抑制すべきか、④「家族」の憲法上の位置付けに象徴
される個人と社会の関係、⑤変転する社会の中で維持すべき「伝統」の重要
性、⑥新憲法下での外国人参政権の取扱い、⑦ロシアにおける司法改革の現
状、⑧憲法裁判所の審理の実態等について質疑応答を行いました。
○ハンガリー
ハンガリーでは、ハンガリー、ポーランド、チェッコ、ルーマニアの東
欧 4 カ国の憲法に関して、それぞれの大使館から招致した書記官から説明
を聴取した後、ソ連邦崩壊後の一連の民主的改革に伴う新憲法の制定・改
正の経緯やその特徴等について質疑応答を行いました。
○オランダ
オランダでは、第一院(上院)議長、女王官房府、内務省を訪問し、①ナ
ポレオン失脚後から現在に至るまでのオランダ王制の変遷、②女王の地位と
役割の実態、③オランダ憲法の特徴、④議会における立法手続、⑤オランダ
における上院と下院の関係、⑥地方の自主財源その他地方分権の問題等につ
いて質疑応答を行いました。
また、王室制度を有するスウェーデン、デンマーク、ベルギーの憲法に関
して、それぞれの大使館から招致した書記官等から説明を聴取した後、国王
の権限と地位その他憲法における王室制度の位置付けとその運用実態等につ
74
いて質疑応答を行いました。
○イスラエル
イスラエルでは、ペレス副首相兼外相、司法相、議会の基本法(憲法)委
員会委員長、学識経験者を訪問し、1996 年に導入され 2001 年 3 月に廃止さ
れた首相公選制に関し、①導入及び廃止の経緯、②首相公選制の導入以前の
旧制度、導入時の制度及び廃止後の新しい制度の内容、③首相公選制に対す
る評価、④首相公選制の失敗と選挙制度改革の必要性、⑤首相公選制と大統
領制、元首との関係等のほか、⑥今後のアジア・中東地域の平和構築につい
ての見通し等について質疑応答を行いました。
○スペイン
スペインでは、国務院(政府の諮問機関として法律の合憲性の審査等に関
与)と下院憲法委員会を訪問し、1978 年に制定された現行のスペイン憲法に
関し、①フランコ政権崩壊後、各政党が協議して合意形成を図りながら作ら
れた現行憲法の制定過程、②「議会君主制」の採用・定着に当たり現在のフ
ァン・カルロス国王が果たした役割、③「新しい権利」を含む権利規定の充
実ぶり、④自治州制度の問題点等について質疑応答を行いました。
(3)衆議院英国及びアジア各国憲法調査議員団(平成14年9月∼10月)
各国での訪問先と主な質疑事項
○イギリス
イギリスでは、副首相府のニック・レインズフォールド閣外大臣(デボリ
ューション担当)、ロンドン大学教授等を訪問し、また、在イギリス日本国大
使館において、上院改革に関する両院合同委員会担当クラーク、政府の上院
改革チーム等から説明を聴取し質疑応答を行いました。その中で、①1998 年
の「人権法」制定の経緯及び人権保障をめぐる課題、②スコットランド、ウ
ェールズ、北アイルランドに続く今後のイングランドへのデボリューション
(権限移譲)及びその他のブレア労働党政権の地方政策、③世襲貴族議員廃
止等の上院改革の経緯及び今後の見通し、④政官関係等に関する説明がなさ
れました。
○タイ
タイでは、憲法裁判所スチット判事、ラーマ 7 世研究所事務局長(教授)、
マルット・ブンナーク元下院議長を訪問し、その中で、①政治家の資産報告
に関する審査等の憲法裁判所の活動状況、②我が国の制度も参考とした選挙
制度の運用状況、③政治腐敗の実態及び防止措置の運用状況、③幾多のクー
75
デターを経たタイの憲政史等に関する説明がなされました。
○シンガポール
シンガポールでは、司法長官庁、ジャヤクマール法務大臣兼外務大臣を訪
問し、また、在シンガポール日本国大使館において、シンガポール国立大学
助教授から説明を聴取し質疑応答を行いました。その中で、①少数民族が必
ず国会に議席を持てるように配慮したシンガポール特有の「グループ選挙制
度」の趣旨及び内容、②国民が政府を信頼するといった「アジア的価値観」
の意義、③シンガポールの国防体制等に関する説明がなされました。
また、在シンガポール日本国大使公邸において、フィリピン、マレーシア
及びインドネシアの憲法に関して、それぞれの大使館から招致した公使等か
ら説明を聴取し質疑応答を行いました。その中で、アジアにおける民主化の
状況等に関する説明がなされました。
○中国
中国では、中国人民大学法学院教授、全人代常務委員会法制工作委員会を
訪問し、また、中央党校教授から説明を聴取し質疑応答を行いました。その
中で、①「社会主義市場経済」の概念、②中国における憲法改正の動向、③
中国の憲政史等に関する説明がなされました。なお、法制工作委員会張春生
副主任との間では、①日本国憲法 9 条の意義、②我が国の国際平和協力のあ
り方等に関して意見交換が行われました。
○韓国
韓国では、朴寛用国会議長、国会法制室、憲法裁判所及び国家人権委員会
を訪問し、その中で、①韓国における議員立法の状況、②内外から評価され
ている憲法裁判所の活動状況、③2001 年に新設された人権委員会の活動状況
等について説明がなされました。なお、朴寛用国会議長との間では、我が国
の国際平和協力のあり方等に関して意見交換が行われました。
(4)衆議院米国、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団(平成15年8月∼9月)
各国での訪問先と主な質疑事項
○アメリカ
◇カリフォルニア州
カリフォルニア州では、まず、州都サクラメントにおいてバリー・キー
ン元州上院議員・元州総務庁長官らと、①カリフォルニア州の政治状況、
②住民発案の規定を有するカリフォルニア州憲法の意義と課題について、
意見交換を行いました。次いで、UC バークレイ校を訪問し、中山団長によ
76
る「衆議院憲法調査会の活動と 21 世紀の『日本の憲法』」と題する講演及び
会場参加者との間での質疑応答、さらに、同校の政治学者及び憲法学者と
①日米関係のあり方、②カリフォルニア州憲法の意義と課題等について、
意見交換を行いました。
◇ワシントン DC
ワシントン DC では、会計検査院(GAO)、議会予算局(CBO)、連邦議
会下院、アーミテイジ国務副長官及び連邦最高裁判所を訪問し、その中で、
①議会補佐機関が果たしている機能、②アメリカの政治状況、③連邦議会
における合衆国憲法改正の動向、④議員の活動を支える秘書制度等の実情、
⑤違憲審査制度の実情等について説明がなされました。なお、アーミテイ
ジ国務副長官との間では、我が国の安全保障のあり方等に関して意見交換
が行われました。
○カナダ
カナダでは、連邦最高裁判所、国防省、連邦議会下院及び枢密院事務局を
訪問し、その中で、①連邦最高裁判所の「参照意見制度(連邦政府からの諮
問・照会に対して意見を表明する制度)
」、②カナダの PKO 政策等の実情、③
人権擁護のためのオンブズマン(プライバシー・コミッショナー)制度、④
議院内閣制の運用の実情、⑤地方分権の現状及び課題等について説明がなさ
れました。
○メキシコ
メキシコでは、国立自治大学、連邦最高裁判所、ブルゴア国立自治大学名
誉教授及びソラーナ元外務大臣を訪問し、その中で、①メキシコの安全保障
政策等の実情、②個人の権利保護とともに憲法保障を図る「保護請求裁判制
度」、③連邦最高裁判所が有する法令審査権等について説明がなされました。
なお、ソラーナ元外務大臣との間では、FTA 等による我が国とメキシコとの
関係の重要性について意見交換が行われました。
(5)衆議院EU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団(平成1
6年9月)
各国での訪問先と主な質疑事項
○スウェーデン
スウェーデンでは、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)、国会 EU 諮
問委員会、ヴェステルベリ国会第一副議長、ペンレヴ元国会オンブズマン、
ケンベリ元保健・社会保障大臣、ボードストローム法務大臣を訪問し、その
77
中で、①最近の安全保障に関する諸問題、②スウェーデンから見た EU 拡大・
EU 憲法条約の意義と問題点、③二院制から一院制に移行した背景とその影響、
④国会オンブズマンの権限と機能、⑤スウェーデンの社会保障制度(特に年
金制度)及び移民政策の概要、⑥女性の王位継承問題を巡る議論等について
説明を聴取するとともに、意見交換を行いました。
○フィンランド
フィンランドでは、国会行政委員会、国会雇用・男女平等委員会、国会憲法
委員会、キルユネン コンベンション・フィンランド国会代表を訪問し、①フ
ィンランドにおける情報公開・個人情報の保護に絡む諸問題、②男女共同参
画社会の実情、③憲法委員会の役割、④フィンランドから見た EU 拡大・EU
憲法条約の意義と課題等について説明を聴取するとともに、意見交換を行い
ました。
○EU
◇ブリュッセル(ベルギー)
ブリュッセルでは、EU 理事会、欧州委員会、デハーネ コンベンション
副議長を訪問し、①EU 憲法条約の憲法的・政治的意味、②EU 統合の将来
像、③EU 憲法条約草案を作成した手法、④いま EU 憲法条約を制定する理
由等について説明を聴取するとともに、意見交換を行いました。
◇ストラスブール(フランス)
ストラスブールでは、欧州人権裁判所、ヴィトリーノ司法・内務問題担
当欧州委員会委員、欧州議会、欧州オンブズマンを訪問し、①EU 司法裁判
所と欧州人権裁判所との関係、②EU 憲法条約の憲法的・政治的意味、③EU
統合の将来像、④EU 憲法条約の批准に向けての課題、⑤欧州オンブズマン
の活動状況等について説明を聴取するとともに、意見交換を行いました
78
7.主な憲法関連用語の解説あ
※
ここでは、憲法に関連する基本的な用語のうち、調査会の議論で頻繁に
取り上げられたものを、憲法のそれぞれの章からピックアップしました。
解説に当たっては、その用語についての一般的な説明を記載するととも
に、異なる立場からの主張がある部分については、可能な限り、それぞれ
の立場について触れるようにしました。
総
論
第1章「天皇」
第2章「戦争の放棄」
第3章「国民の権利及び義務」
○ 憲法とは何か
○ 日本国憲法の基本原則
○ 象徴天皇制
○ 憲法9条に関する政府見解
○ 新しい人権
第4章「国会」
○ 二院制(両院制)
第5章「内閣」
○ 首相公選制
第6章「司法」
○ 日本と諸外国の違憲審査制度
第7章「財政」
○ 私学助成と憲法
第8章「地方自治」
○ 地方自治の本旨
第9章「改正」
○ 日本国憲法の改正手続
79
○ 憲 法 と は 何 か
憲法とは、歴史の中で発達してきた観念であると言われていま
す。もともと、憲法は、「国の基本的なシステムや根本的な秩序
を定めるルール全般を意味するもの」とされていました。しかし、
市民革命を経て個人の尊厳が重視されるようになると、人権を守
るために憲法により国の権力を制限すべきであり、また、国民が
憲法制定権力(憲法を作り、国の機関に権限を与える権力)を持
つべきであるという立憲主義に基づく考え方が強く意識される
ようになりました。そして、多くの国において、人権規範や国民
主権といった内容を含んだルールが憲法典として文章化される
ようになってきました。このように、近代以降の憲法は、国の権
力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とするものであ
り、今日では、この立憲的意味の憲法こそが「憲法」と称するに
ふさわしいものであると一般に考えられています。
それでは、このような立憲的意味の憲法には、普通の法令と比
較して、どのような特質があるのでしょうか。一般的には、①自
由の基礎法であり、自由を裏付ける人権規範を支えるものである
こと、②国の権力に制限を加えるものであること、③普通の法令
に優位する効力を有している最高法規であり、これを頂点とし
て、その下に法律→命令→処分という順序で国内法秩序の段階構
造(下図参照)が構築されていること等が挙げられています。
図:日本国の国内法秩序の段階構造
(件数は、平成 16年8月31日現在)
憲
法
法 律
(1,812件)
命 令
(政令(1,808件)
、府庁省令(3,184件)
)
処
分
※このほか、「法律の範囲内」で定める条例や規則とい
う法形式(自治立法)もあります(94 条)。
80
○ 日 本 国 憲 法 の 基 本 原 則
日本国憲法は、一般的に、国民主権、基本的人権の尊重、平和
主義の三つを基本原則としているとされており、これらの原則は
憲法前文に示され、各条項で具体化されています(なお、上記の
三つの原則のほか、議会制民主主義、地方自治を含めた五つを基
本原則とする立場もあります。
)。
【国民主権】日本国憲法は、明治憲法のように天皇に主権がある
とするのではなく、国民が国家の意思を最終的に決定する権力を
有し、また、国家の権力行使を正当づける究極的な権威は国民に
存するという国民主権を基本原則としています(前文、1 条)
。
【基本的人権の尊重】基本的人権とは、「人間の尊厳性」に由来
し、人間がただ人間であるというだけで当然に持っている権利で
あり、これは憲法によって初めて認められたのではなく、憲法以
前に成立していると考えられています。日本国憲法は、基本的人
権を「侵すことのできない永久の権利」として保障しています(11
条、97 条)
。
【平和主義】日本国憲法は、第二次世界大戦の悲惨な経験を踏ま
え、戦争に対する反省と再び戦争をくりかえすまいという決意か
ら、憲法前文で平和主義の理念を掲げ、9 条の「戦争の放棄」の
規定でそれを具体化しており、その徹底した戦争否定の態度は日
本国憲法の大きな特色であるとされています。
81
○ 象 徴 天 皇 制
日本国憲法は、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象
徴」
(1 条)と定めています。天皇の地位を、このような「象徴」
と定めたことは、一般に、明治憲法下において、「統治権の総攬
者」であった天皇の地位を否定し、天皇は、非政治的な「象徴」
としての地位に立つに過ぎなくなったことを明らかにしたもの
と解されています。日本国憲法は、象徴としての天皇の地位にか
んがみ、天皇は、国政に関する実質的決定権を含まない、形式的、
儀礼的な行為のみを、内閣の「助言と承認」
(4 条、7 条)のも
とに行うことができると規定しています。
このような天皇の地位を明治憲法下の天皇の地位との関係でど
う考えるかについて、二つの考え方があります。一つの考えは、
明治憲法の下では、天皇は、政治的な権能を有するとともに、象
徴としての役割も果たしていたものが、日本国憲法により、政治
的な権能を剥奪され、象徴としての役割のみが残されたとする考
え方です。この考え方によれば、天皇制自体は、基本的に明治憲
法と日本国憲法において連続していることになります。これに対
して、日本国憲法は、新たな象徴としての天皇制を創出したとす
る考え方があります。この考え方によれば、明治憲法下の天皇制
と日本国憲法の下の天皇制は基本的に断絶していることになりま
す。
いずれの考え方によるとしても、現在の象徴天皇制は、広く国
民の間に受け入れられていると言われています。
○ 憲 法 9 条 に 関 す る 政 府 見 解
いわゆる「9 条論議」は、その論点が多岐にわたり、また、そ
れぞれの論点について様々な考え方が存在しています。そこで、
以下では、9 条の解釈に関する政府見解を紹介します。
まず、9 条の解釈について、政府見解(昭 55.12.5 の政府答弁
書)では、以下のように述べられています。
「① 憲法第 9 条第 1 項は、独立国家に固有の自衛権までも否定
する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力
を行使することは認められているところであると解してい
る。政府としては、このような見解を従来から一貫して採っ
てきているところである。
82
②
憲法第 9 条第 2 項の「前項の目的を達するため」という言葉
は、同条第 1 項全体の趣旨、すなわち、同項では国際紛争を
解決する手段としての戦争、武力による威嚇、武力の行使を放
棄しているが、自衛権は否定されておらず、自衛のための必要
最小限度の武力の行使は認められているということを受けて
いると解している。したがって、同条第 2 項は「戦力」の保
持を禁止しているが、このことは、自衛のための必要最小限度
の実力を保持することまで禁止する趣旨のものではなく、これ
を超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであると
解している。
③
憲法第 9 条第 2 項の「交戦権」とは、戦いを交える権利とい
う意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称を
意味するもので、このような意味の交戦権が同項によって否認
されていると解している。他方、我が国は、自衛権の行使に当
たっては、我が国を防衛するため必要最小限度の武力を行使す
ることが当然に認められているのであって、その行使は、交戦
権の行使とは別のものである。
④
我が国が自衛のための必要最小限度の実力を保持すること
は、憲法第 9 条の禁止するところではない。自衛隊は、我が
国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるから憲法
に違反するものではないことはいうまでもない。」
次に、集団的自衛権と 9 条について、政府見解(昭 56.5.29 の
政府答弁書)では、以下のように述べられています。
「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関
係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていな
いにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているも
のとされている。
我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有している
ことは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第 9 条の
下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛する
ため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解して
おり、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるもの
であって、憲法上許されないと考えている。
」
上記のような政府見解に対しては、①世界各国の軍隊と比較し
ても十分な装備を備えた自衛隊は「戦力」に該当するのではない
か、②集団的自衛権について、有しているのに行使できない権利
というのは、権利としての実体を欠いているのではないか等の
様々な批判が呈せられています。
83
○ 新 し い 人 権
「新しい人権」とは、憲法に明文の規定はないけれども、憲法
上の「人権」として保障を受けるべき内容を備えた権利・利益の
ことです。
日本国憲法では、保障を受ける基本的人権が列挙して規定され
ています。では、憲法に列挙されていない権利・利益は、憲法上
の「人権」として保障を受けないのでしょうか。
情報化社会の進展により個人情報が悪用されるおそれが生じ
たり、産業の発達により環境破壊が進行したりするなどの社会の
変化に応じて、人間らしく生きるために守られるべき権利・利益
の内容も変化してきます。そもそも、基本的人権とは「人間の尊
厳」に由来するものなのですから、憲法制定当時に想定されず、
規定が設けられなかった種類の権利・利益であっても、社会の変
化の中で「人間らしく生きるために不可欠の権利・利益」として
の内容を備えるに至ったものについては、
「新しい人権」として、
憲法上の保障を受けるべきであると考えられています。
そして、そのための理論構成としては、13 条の「幸福追求権」
が個人の尊厳の原理に基づき、人間らしく生きるために不可欠の
権利・利益を包括的に保障する規定であると考えられていること
から、「新しい人権」も 13 条によって保障を受けるものと一般
に考えられています。たとえば、プライバシー権(私生活をみだ
りに公開されない権利、自己に関する情報をコントロールする権
利等)、環境権(良好な環境を享受し、支配する権利等:ただし、
25 条の生存権も根拠となると考えられています。
)等がその例と
して挙げられており、また、いわゆる「知る権利(自己が欲する
情報を公権力等から入手する権利等)
」のように、21 条の表現の
自由に含まれると考えられているものもあります。
このように、
「新しい人権」は 13 条、21 条、25 条等の規定で
読み取ることができると一般的に考えられていますが、憲法上の
「人権」であることを明確にするため、これを憲法に明記すべき
であるとの主張もあります。
「新しい人権」を現行憲法の解釈で導くにせよ、憲法に明記す
るにせよ、「新しい人権」の具体的内容、すなわち、どの範囲ま
でが「人間らしく生きるために不可欠な権利・利益」として憲法
上の保障を受けるのかということが重要であると言われていま
す。
84
○ 二 院 制 ( 両 院 制 )
日本における国会のように、議会が、二つの合議体で構成され
ている制度を二院制と言います。通常、二院制を採用する議会は、
民主的選挙で選出された議員で構成される下院(日本の場合は衆
議院)と、上院(日本の場合は参議院)で構成されています。上
院の構成については、①貴族院型(選挙によらない議員で構成さ
れるもの
例:イギリス)、②連邦型(連邦制の国における各邦
の代表で構成されるもの
例:ドイツ)、③民主的第二院型(下
院同様に選挙で選出されるもの)に大別されます。我が国の参議
院は③の型に属します。
一般的に、下院のほかに第二院(上院)を設ける長所としては、
下院の行きすぎた行動を抑制できることや、上院において国民の
さまざまな意見を代表させることができることなどが挙げられ
ています。これに対して、短所としては、両院が常に同一の意見
であれば上院の存在は無意味であることや、両院が対立すること
により円滑な議会の活動が阻害されることなどが挙げられてい
ます。
諸外国においては、二院制はアメリカ、イギリス、ドイツ、フ
ランスなどの国々で採用されています。また、両院の関係は各国
で異なっており、両院が対等の権限を持つ国や、一方の院の大幅
な優越が認められる国などさまざまです。
我が国の二院制では、衆議院と参議院は互いに独立し、各々
の議員の任期や定数が異なっています。また、衆議院には内閣
不信任決議や解散の制度が定められており、予算の議決や内閣
総理大臣の指名等においては衆議院の優越が定められていま
す。このように、両院にはいくつかの違いがあるものの、共に
直接選挙された議員で構成されており、また、参議院の政党化
が進んだため、両者は基本的に類似した性格の機関となってい
ます。そのため、参議院の存在意義について多くの議論がなさ
れており、両院の明確な役割分担を求める主張も多く見られま
す。
85
○ 首 相 公 選 制
1.意
義
現行憲法では、内閣総理大臣(首相)は、国会議員の中から国
会の議決によって指名されることとなっていますが、そうではな
く、首相を国民の選挙で選任することとする制度を、首相公選制
といいます。
2.首相公選制と大統領制・議院内閣制との関係
政府の長を国民の選挙で選ぶという点では、首相公選制は大統
領制に類似しています。たとえば、中曽根康弘衆議院議員は、昭
和 30 年代に内閣に設置されていた憲法調査会において、国民の
選挙で選ばれた首相を天皇が任命するという点を除いて、議会と
政府が完全に分離されている米国の大統領制にならった首相公
選制を提唱しました。
一方で、国民の選挙で選ばれた首相を長として構成される政府
が、議会の信任にその存立の基礎を置くことになれば、首相公選
制とはいえ、議院内閣制的な性格を強く有することになります。
たとえば、最近まで世界で唯一首相公選制を実施していたイスラ
エルでは、議会は国民の選挙で選ばれた首相を不信任することが
でき、逆に首相は議会を解散することができるものとされていま
した。
このように、一口に首相公選制と言っても、議会と政府の関係
をどう考えるかによって、さまざまなパターンが考えられますか
ら、論者によっては全く異なるシステムを考えている可能性があ
ることに注意しなければなりません。なお、我が国の場合には、
国民の選挙で選ばれた首相と天皇との関係をどう考えるかとい
うことも、首相公選制を導入する上で大きなポイントとなりま
す。
3.首相公選制をめぐる議論
最近、憲法を改正して首相公選制を導入すべきとの主張があり
ます。その理由としては、①社会が混迷の度を極めている今こそ、
政治の強力なリーダーシップが必要であること、②公選という手
続的正統性を備えることにより、政権の安定が期待されること、
③国政の担当者として、首相は地域や業界の特殊な利益を代表す
るのではなく、全国民の利益を代表するべきであること、などが
挙げられています。
86
しかし、我が国において首相公選制を導入するには、先に説明
しましたように、①公選される首相と国会との関係をどう考える
か、たとえば不信任や解散といった制度を設けるかどうか、②公
選によって国政に関する国民の信託を一身に受けた者は一般に元
首と目されることから、首相公選制と天皇制とをどう調和させる
か、などの困難な問題があります。また、首相公選制の導入に消
極的な立場から、③安易な首相公選制の導入は軽率な衆愚政治を
生み、ひいては独裁制に堕する危険性がある、との疑問を投げか
ける論者もかなりいます。
ちなみに、イスラエルでは、首相が公選されることによって議会
が国政全体を方向付ける動機を失い、比例代表制の下で議会内政党
が特殊利益の追求に専念して小党に分立し、かえって政権が不安定
になったため、首相公選制は廃止されました。
<首相公選制導入に伴う主な関連憲法条文>
首相の指名・任命に関する条文
67 条 1 項 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。(後略)
6 条 1 項 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
⇒改正が必要
※首相選挙への立候補の要件、首相の任期やリコール制度の導入等に関しては、要検討
内閣の組織・権能に関する
条文
65 条 行政権は、内閣に属
する。
68 条 1 項 内閣総理大臣
は、国務大臣を任命する。
但し、その過半数は、国
会議員の中から選ばれな
ければならない。
⇒改正を必要とするか要
検討
首 相
公選制
導 入
天皇の地位に関する条文
1 条 天皇は、日本国の象徴で
あり日本国民統合の象徴で
あつて、この地位は、主権
の存する日本国民の総意に
基く。
⇒天皇が日本国の元首であ
る旨の改正を必要とするか
要検討
国会・議院内閣制に関連する条文
41 条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
66 条 3 項 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
69 条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10
日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
7 条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。(中
略)
三 衆議院を解散すること。 ⇒改正を必要とするか要検討
87
○ 日 本 と 諸 外 国 の 違 憲 審 査 制 度
憲法は国の最高法規ですから、すべて国政は憲法にのっとって
行われなければなりませんし(立憲主義)
、また、憲法は多数者の
意思によっても侵すことは許されません。そこで多数派の横暴か
ら少数者の人権を守るための憲法保障(憲法が守られるようにす
ること)のための制度として、多くの国では、法律や、行政府の
行為等が憲法に違反していないかを審査する権限を裁判所に与え
ています(違憲審査権)
。
日本では、このような違憲審査権は、最高裁判所及び最高裁判
所の下にある下級裁判所が行使します。そして、通常の訴訟の過
程、すなわち、国民個人の何らかの具体的な利益の侵害があった
場合の争いに関する審理の中で、その争いの解決に必要な限度
で、それに付随する形でのみ違憲審査権は行使されます(付随的
審査制)。日本のこのような制度は、基本的にアメリカの制度を
ならってできたものであり、立憲主義を守るために、従来の裁判
所の役割の枠内で憲法保障の機能を裁判所に託した制度と言え
ます。
他方、ドイツ、イタリア等の諸外国では、通常の訴訟を担当す
る裁判所とは別に、憲法に関する裁判を専門に扱う「憲法裁判所」
が設けられています。この「憲法裁判所」では、個人の利益に関
わる具体的な事件がなくても、一定の要件を満たせば、法律等が
憲法に違反していることを訴え出ることが認められているのが
通常です(抽象的審査制)。これらの国でこのような制度がとら
れているのは、多数者の意思によって憲法が容易に踏みにじられ
る危険性があるという歴史の経験を踏まえて、立憲主義を守るた
めには、憲法保障のための特別の機関を設ける必要があるという
考えに立っているためと思われます。
日本でも、憲法保障を充実させるため、
「憲法裁判所」を創設し
て裁判所が積極的に憲法に関する判断を示すことができるように
すべきであるという主張もあります。他方、裁判所による憲法保障
を充実させるには、現在の最高裁判所を中心とした司法制度の枠内
で運用を工夫することによっても十分可能であるという主張もあ
ります。
88
○ 私 学 助 成 と 憲 法
日本国憲法は、26 条で教育の機会均等と義務教育を受けさせ
る義務及び義務教育の無償を定めています。これは、25 条が規
定する生存権の文化的側面から、国民の「ひとしく教育を受ける
権利」を保障したもので、国はこの権利を実質的に保障するため
に努めなければなりません。
したがって、国はみずから学校教育の事業を行い、そのための
十分な財政措置を講ずべきであるばかりでなく、我が国の公教育
の一環として重要な機能を果たしている私立学校に対しても可
能な限りの助成を図る責務があります。
ここで問題となるのが、89 条の「公金」を「公の支配に属し
ない慈善、教育若しくは博愛の事業」に支出してはならないとい
う規定と私学助成との関係です。一般に、私立学校は「公の支配
に属しない」と考えられるからです。
多くの見解は、この「公の支配」の概念を、国の私立学校に対
する業務や会計等について報告を徴する程度の監督権をもって
私立学校は公の支配下にあると、広く緩やかに解することに加
え、前述の 26 条や 25 条との総合的な解釈を行うことで、私学助
成を合憲と解釈しています。
なお、「公の支配」を狭く厳格に捉える立場から、国は私立学
校の自主性を奪うほどの強力な監督権限は有しておらず、このま
までは私立学校に対する国の助成措置は違憲の疑いがあるので、
89 条を改正して疑義を生じないようにすべきであるとの見解も
あります。
89
○ 地 方 自 治 の 本 旨
1.
「地方自治の本旨」の意義
92 条では、地方公共団体の組織及び運営に関する事項について
の立法の原則として、
「地方自治の本旨」という言葉を使っていま
す。この言葉は、地方自治の本質的な理念という意味や、地方自
治のあるべき姿という意味と同じであると考えられますが、その
具体的内容は、その文言上、定かでありません。ただ、西欧諸国
で発達してきた地方自治の歴史を見ると、地方自治の根底には、
「住民自治」と「団体自治」という二つの要素があることが分か
ります。
「住民自治」は、民主政治が国の政治で実現される以前から地
方住民による自治が発達していたイギリスの歴史的所産であると
され、地方の政治や行政がその地方の住民の意思に基づいて行わ
れることを意味します。つまり、地方の住民自らが、地方におけ
る政治や行政の方針を決定したり、代表者を選んで権限を委託し
たりするシステムは、「住民自治」の具体化ということができま
す。
また、
「団体自治」は、国との関係で自治を考えてきたドイツや
フランスの歴史的所産であるとされ、国から独立した地方団体が
その意思と責任の下にその地方の政治や行政を処理することを意
味します。つまり、国から独立した地方団体が、自らの責任で、
自らの仕事を、自らの機関で処理することをいいます。
このように、
「住民自治」も「団体自治」も歴史的に形成・発展
されてきたものであり、
「地方自治の本旨」も、この二つの要素を
意味し、両者が有機的に結び合って地方自治を完成させていると
一般に考えられています。
2.
憲法における第 8 章(地方自治)の構造
我が国では、明治憲法に地方自治に関する規定はありませんで
したが、権力集中の排除、民主主義の強化、地域の実情に応じた
行政の確保、人権の保障等の観点から、日本国憲法に第 8 章を設
けて地方自治を保障しています。そして、第 8 章は、地方自治に
関する総則を定める 92 条、「住民自治」の具体化を図る 93 条、
「団体自治」の具体化を図る 94 条、その他の特殊な事情を定める
95 条から構成されています(次ページの図参照)
。
93 条では、地方議会の設置と住民による直接選挙が定められて
いるに過ぎませんが、住民の意思を地方の政治や行政に直接反映
させようという「住民自治」の趣旨にかんがみ、条例の制定・改
廃に関する直接請求、リコール制等が地方自治法や条例により制
90
度化されています。また、94 条では、
「団体自治」の趣旨にかんが
み、自治財産管理権、自治行政権、自治立法権が定められ、地方公
共団体が権力的・統治的作用を担うことが明らかにされています。
なお、95 条では、地方自治特別法の制定という特殊な事情が生じた
場合において、住民投票を行う旨が定められています。
3.
地方分権の推進
憲法上保障された地方自治制度ですが、これまでの我が国の行政
システムは全国的な統一性や公平性を重視したものであったため、
「地方自治の本旨」が十分に実現されているとは言えない実情があ
りました。しかし、近年、国民の価値観の多様化や国内外の変化に
対応するため、住民に身近な行政はできる限り地方に委ね、また、
地方の自主性と自立性が十分に発揮できるような国と地方との新
しい行政システムを構築することが強く求められるようになり、地
方分権に向けた計画の策定や法律の制定を契機に、総合的かつ計画
的な地方分権を推進し、21 世紀に相応しい行政システムを構築しよ
うとする動きが生じています。今後は、財政面での制度改正や、地
方の意思決定に対する住民の主体的な参加の確保をはじめとする
「住民自治」の充実などが、「地方自治の本旨」を実現するに当た
っての残された課題であると考えられます。
4.
道州制の導入
なお、地方分権をよりいっそう推進すべきとの立場から、道州制
の導入を図るべきであるとの主張があります。これは、現在の都道
府県は経済・社会や交通・通信の発展に照らして狭くなってきてい
るとして、全国を 7 から 9 のブロックに分け、広域行政を推進しよ
うとするものです。ただ、道州制を現行憲法の枠内で導入できるか
どうかについて、①憲法上、都道府県―市町村という二段階制の地
方自治制度が保障されているかどうか、②二段階制の地方自治制度
が保障されているとした場合、都道府県及び市町村という固定した
制度を保障しているのかどうか等の点において、見解が分かれてい
ます。
【憲法第 8 章の構造】
93 条(住民自治)
92 条(総則的規定)
94 条(団体自治)
95 条(特別立法に係る住民投票)
91
○ 日 本 国 憲 法 の 改 正 手 続
憲法改正の手続は 96 条で定められています。改正のためには、
①各議院の総議員の 3 分の 2 以上の賛成による国会の発議、②国
民投票で過半数の賛成による承認、③天皇の公布といった三つの
手続を経ることが必要です。このように、法律の改正よりも厳格
な改正手続を必要とする憲法を「硬性憲法」といいます。
日本国憲法の改正手続は、諸外国の憲法と比較しても厳格なも
のだとされています。例えば、改正のための要件としては、ドイ
ツでは、両議院での 3 分の 2 以上の賛成が必要とされており、フ
ランスでは、両議院での過半数の賛成の後、国民投票による承認
か両院合同会議での 5 分の 3 以上の賛成が必要とされています。
他方、アメリカのように、①修正案が両議院の 3 分の 2 以上の賛
成により発議されるか、全州の 3 分の 2 以上の議会の要求を受け
て連邦議会が各州に憲法会議を招集するかした後、②修正案が全
州の 4 分の 3 以上の議会か 4 分の 3 以上の憲法会議で承認されて
はじめて成立するといった極めて厳しい改正手続を定めている国
もあります。
なお、上記のように、日本国憲法の改正には、国会の発議、国
民投票による承認、天皇の公布が必要ですが、その手続を具体的
に定めた法律は存在していません。そのため、まず、そのような
法律を制定すべきだという主張もなされており、その際に検討を
要する主な事項としては、以下のものが考えられます。
1.国会法の改正等による発議手続の整備
国会による憲法改正案の発議には、改正案の発案−審議−議
決という手続が必要となりますが、国会法には、通常の法律案
と違って憲法改正案に関してはこのような手続を具体的に定め
た規定はありません。
そこで、①内閣にも改正案の発案権があるか、②議員が発案
する際の賛成者の人数はどのくらいとすべきか、③改正案を審
議する委員会をどこにすべきか等について、国会法の改正等に
よる発議手続の整備が必要となると考えられています。
92
2.国民投票法案
国民投票を実施するために、その具体的手続を定める法律を制
定する必要があります。その主な内容としては、次のようなもの
が考えられます。
ア.国民投票の実施に関する事項
①
投票期日
憲法改正が提案された日からどのような期間内に投票を
行うか。
② 投票権者
投票権者の範囲をいかに定めるか。
③ 投票における意思表示の方式
複数の改正点ごとに賛否を問えるのか、全体を一体として
賛否を問うのか。
④ 投票に係る運動の規制
公職選挙法のような幅広い規制を行うのか。
⑤ 国民投票の周知
改正案の周知についていかなる手段をとるのか。
イ.投票の効果の確定に関する事項
国民投票の無効の訴えが提起された場合に、投票の効果は投
票の終了により一旦確定したものと扱うのか、あるいは、裁判
の判決が出るまで確定しないのか。
【日本国憲法の改正手続の概略図】
審
議
議
決
改正案の発案
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天 皇 の 公 布
国 民 投 票
国 会 の 発 議
8.憲法調査会のことを知るにはあ
◇衆議院憲法調査会ホームページ
衆議院のホームページには、憲法調査会の独自のサイトを設けております。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kenpou.htm
こちらでは、以下の情報が入手できます。
1.衆議院憲法調査会の委員名簿
2.衆議院憲法調査会設置の経緯及び概要
3.衆議院憲法調査会の会議日誌
4.憲法調査会に出席した参考人の配付資料等
5.衆議院憲法調査会の今後の開会予定
6.傍聴のご案内
7.「ひろば」と「ニュース」
(1) 意見窓口「憲法のひろば」
①意見の送付方法と宛先
②先月までの意見の受付概況
(2) メールマガジン「衆議院憲法調査会ニュース」
①配信を希望する場合の申込先
②ハードコピー版のバックナンバー
8.参考資料
(1) 衆議院憲法調査会中間報告書
(2) 衆憲資(衆議院憲法調査会資料)
(3) 地方公聴会等で配付した衆議院憲法調査会のパンフレット
(4) 海外派遣の調査報告書
(5) 平成 12 年の憲法記念日に合わせて一般から公募した論文のうち、優秀な論文として
選定されたもの(19 件)
(6) 参照条文
①日本国憲法
②衆議院憲法調査会規程
③国会法
④旧憲法調査会法
(7) 日本国憲法制定時の衆議院の関係会議録(本会議、委員会、小委員会)
参考:日本国憲法制定経過年表
9.リンク集
(1) 衆議院憲法調査会英文サイト
(2) 参議院憲法調査会ホームページ
(3) 国立国会図書館電子展示会「日本国憲法の誕生」
(4) 各国憲法の英語版(スイスのベルン大学が設けている“ICL”というサイトです。)
◇衆議院憲法調査会ニュース
衆議院憲法調査会事務局が発行しているニュースです。
ニュースは、「メールマガジン」方式で配信しております。配信を希望される方は、お名
前、メールアドレス、ご住所及び電話番号を明記の上、下記のアドレスへお申し込み下さい。
[email protected]
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配信は、衆議院憲法調査会が開会された翌日を原則とし、
①憲法調査会での参考人の発言及びそれに対する質疑の概要
②今後の憲法調査会の開会予定
③意見窓口「憲法のひろば」に寄せられた意見の概況
などを掲載しています。
また、憲法調査会の活動概要をまとめたハードコピー版のニュースも発行しております。
これは、メールマガジンに PDF ファイル形式で添付しておりますので、メールマガジンの
受信とともに受け取ることができます。
なお、ハードコピー版のバックナンバーは、ホームページから入手することができます。
◇憲法調査会の会議録&審議中継
1.会議録は、衆議院及び国立国会図書館がインターネット上で公開しております。
≪衆 議 院 会 議 録 議 事 情 報≫
http://www.shugiin.go.jp/ index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
≪国 立 国 会 図 書 館≫
http://kokkai.ndl.go.jp/
2.印刷された会議録については、各都道府県の議会図書館で閲覧が可能です。
また、購読を希望される場合には、
「衆栄会」において予約販売しております。
【問合せ先】衆栄会(衆議院第二別館2階)
〒100−0014 東京都千代田区永田町 1−6−3
TEL 03(3581)5111 内線 2682
FAX 03(3580)4889
3.憲法調査会の審議は、インターネット中継を利用することによって、生中継のほか、録
画による過去1年分の中継も視聴が可能です。
http://www.shugiintv.go.jp/
◇意見窓口 「憲法のひろば」
憲法調査会は、平成 12 年 2 月より、憲法について広く国民の声を聴くための意見窓口「憲
法のひろば」を設けております。
【意見窓口「憲法のひろば」の宛先】
FAX
03(3581)5875
E-mail [email protected]
郵 便 〒100−8960 千代田区永田町 1−7−1
衆議院憲法調査会「憲法のひろば」係
いずれのご意見も、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記して下さい。
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