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小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度

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小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 7
3
【論文】
小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度
山 本 和 人
(東京家政大学)
The relation between the regularity of the youths’greetings
exchange and their satisfaction of home life
―A survey of school children and students―
YAMAMOTO Kazuhito
(Tokyo―kasei University)
【要旨】
本稿は,埼玉県内に所在するある市における小・中学生,高校生合計6
9
7名,および,その親
合計6
4
7名を対象とする,「学校外での生活に関する調査」
(1
9
9
9年9月実施)の結果の分析であ
る。調査結果の中でも,児童・生徒と親について,家庭生活場面における児童・生徒の日常的な
「あいさつ程度」と「生活満足度」
,およびその関連,また,あいさつ程度と生活満足度を規定
する要因の分析を,林の数量化理論Ⅰ類,Ⅱ類を用いて行った。
得られた結果として,1学年が高くなると家庭内でのあいさつをする程度(頻度)が減る傾向
になる,2「おはよう」
「おやすみなさい」を言えば「あいさつ」をしていると考えている,3
家庭内での「あいさつ程度」を規定する要因は,「団欒時間」
「学年」
「家庭生活の満足度」等が
大きい,4「家庭生活の満足度」は学年が低いほど高い,5生活の満足度を規定する要因は「団
欒時間」が大きい,などが明らかとなった。
【キーワード】
小・中学生,高校生,あいさつ,家庭生活,生活の満足度,
はじめに
ものであり,すべての教育の出発点である」と
している1)。このような,家庭教育の必要性が
生涯学習審議会が答申「生活体験・自然体験
指摘されている一方で,核家族化は進み,青少
が日本の子どもの心をはぐくむ」
(平成1
1年6
年の問題が指摘されるたびに,核家族における
月)をまとめた。生活体験や自然体験が豊富な
家庭教育の難しさが改めて実感される。
子どもほど,道徳観や正義感が充実している傾
家庭におけるしつけ・社会化の一つとして,
向が見られるということを踏まえての答申であ
「あいさつ」がよく取り上げられる。それが家
り,しばらく前から学校教育でも強調されてい
族関係,人間関係の基礎であるという考えがあ
る「生きる力」をはぐくむことが重要であると
るからであり,それは常識であるとさえ言え
している。また,文部省も,
「家庭教育は,基
る。しかし,「『個食』が増えている」という指
本的な生活習慣や倫理観,自制心,自立心など
摘や,朝食をとらない生徒の増加2),あるいは,
『生きる力』の基礎的な資質や能力を育成する
「家庭内での家族とのふれあいの希薄化」の指
7
4 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
摘3)は,家庭におけるあいさつでさえ,行われ
連する設問のすべての回答について,
「不明」
ているかどうかを疑わせるものである。
「無回答」を除いたため,子ども調査,親調査
それぞれにおける有効回収データ数からかなり
本稿の目的
サンプル数を減らすことになった。1あいさつ
本稿では,上記のような問題意識から,調査
の分析では,子どもについては697票から650票
結果に基づき,1家庭においてどのようなあい
に,親については541票から497票にそれぞれサ
さつが,どの程度行われているか,また,家庭
ンプル数が減少した。また,2家庭生活におけ
においてあいさつをする子としない子を分ける
る満足度の分析では,子どもについては6
47票
要因は何かを分析することにする。次に,2家
に,親については4
74票へと,それぞれ減る事
庭における生活の満足度は,家庭における人間
になった。
関係と大きくかかわることが予想され,家庭生
活の満足度がどのような要因に左右されるかを
Ⅰ
小・中学生,高校生の家庭でのあい
さつの実態
検討することである。
既に指摘したが,「子ども調査」「親調査」の
調査およびデータについて
2つの調査では,親と子の間で回答に差が見ら
調査は1
9
99年9月2
3日∼1
0月5日に実施した
れる個所が多かった。子どもの思いと親の思い
ものである4)。子どもを対象とした「子ども調
とが必ずしも一致しないことや,見方などがす
査」と,その父母・保護者を対象とした「親調
れ違っている傾向が見られている。あいさつの
査」の,2種類の調査である。既に単純集計結
ことでも,子どもと親とでは,回答に差が見ら
5)
果など,一部,調査結果を発表してある 。今
れた。この点について検討することにする。
回はその際のデータをもとにさらに検討を加え
1
たものである。
今回の分析に使用したデータは,多変量解析
(林の数量化理論Ⅰ類,Ⅱ類)の制約から,関
1
子どもたちの回答
学年別に見たあいさつとその程度
学年別に,子どもたちがどのようなあいさつ
表1 「おはよう」というあいさつ
*学年別に見た子どもの回答(N=6
5
0)
。数値は%,
( )内は実数。以下表5まで同様。
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
4
8.
8
3
3.
3
1
4.
6
3.
3
1
0
0.
0(1
2
3)
6年
5
0.
8
2
5.
4
1
9.
8
4.
0
1
0
0.
0(1
2
6)
1年
3
8.
8
2
0.
9
2
3.
9
1
6.
4
1
0
0.
0( 6
7)
2年
3
5.
6
3
2.
2
2
5.
4
6.
8
1
0
0.
0( 5
9)
3年
3
3.
3
2
0.
3
2
7.
5
1
8.
8
1
0
0.
0( 6
9)
1年
2
7.
9
1
7.
6
3
3.
8
2
0.
6
1
0
0.
0( 6
8)
2年
2
3.
9
1
8.
3
2
6.
8
3
1.
0
1
0
0.
0( 7
1)
3年
2
9.
9
1
6.
4
2
9.
9
2
3.
9
1
0
0.
0( 6
7)
計
3
8.
5
2
4.
0
2
3.
8
1
3.
7
1
0
0.
0(6
5
0)
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
2
8
7
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 7
5
表2 「行ってきます」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
7
7.
2
1
7.
9
4.
9
―
1
0
0.
0
6年
7
4.
6
2
0.
6
4.
0
0.
8
1
0
0.
0
1年
7
6.
1
1
3.
4
7.
5
3.
0
1
0
0.
0
2年
6
4.
4
2
5.
4
6.
8
3.
4
1
0
0.
0
3年
4
7.
8
2
6.
1
1
4.
5
1
1.
6
1
0
0.
0
1年
5
0.
0
2
5.
0
1
7.
6
7.
4
1
0
0.
0
2年
4
6.
5
2
2.
5
1
5.
5
1
5.
5
1
0
0.
0
3年
5
3.
7
1
7.
9
1
7.
9
1
0.
4
1
0
0.
0
計
6
3.
7
2
0.
8
1
0.
0
5.
0
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
2
7
0
表3 「ただいま」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
6
4.
2
2
2.
0
9.
8
4.
1
1
0
0.
0
6年
6
7.
5
1
9.
0
7.
9
5.
6
1
0
0.
0
1年
6
2.
7
1
9.
4
1
3.
4
4.
5
1
0
0.
0
2年
5
4.
2
2
3.
7
1
6.
9
5.
1
1
0
0.
0
3年
4
2.
0
1
8.
8
2
0.
3
1
8.
8
1
0
0.
0
1年
4
2.
6
2
6.
5
1
9.
1
1
1.
8
1
0
0.
0
2年
4
2.
3
1
6.
9
2
1.
1
1
9.
7
1
0
0.
0
3年
4
1.
8
1
6.
4
2
8.
4
1
3.
4
1
0
0.
0
計
5
4.
5
2
0.
3
1
5.
7
9.
5
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
2
3
9
表4 「おやすみなさい」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
6
2.
6
1
7.
9
1
7.
1
2.
4
1
0
0.
0
6年
6
1.
1
2
4.
6
8.
7
5.
6
1
0
0.
0
1年
4
7.
8
2
5.
4
1
6.
4
1
0.
4
1
0
0.
0
2年
3
7.
3
3
3.
9
2
0.
3
8.
5
1
0
0.
0
3年
2
9.
0
2
4.
6
2
0.
3
2
6.
1
1
0
0.
0
1年
2
7.
9
1
7.
6
2
9.
4
2
5.
0
1
0
0.
0
2年
1
5.
5
2
2.
5
2
5.
4
3
6.
6
1
0
0.
0
3年
1
4.
9
2
3.
9
2
9.
9
3
1.
3
1
0
0.
0
計
4
1.
2
2
3.
2
1
9.
5
1
6.
0
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
4
2
3
7
6 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
表5 「ありがとう」というあいさつ
毎日する
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
4
1.
5
4
6.
3
1
0.
6
1.
6
1
0
0.
0
6年
4
7.
6
3
8.
9
1
1.
9
1.
6
1
0
0.
0
1年
3
1.
3
4
9.
3
1
6.
4
3.
0
1
0
0.
0
2年
2
5.
4
5
2.
5
1
8.
6
3.
4
1
0
0.
0
3年
2
0.
3
4
9.
3
2
3.
2
7.
2
1
0
0.
0
1年
2
2.
1
3
9.
7
2
9.
4
8.
8
1
0
0.
0
2年
2
2.
5
4
2.
3
2
1.
1
1
4.
1
1
0
0.
0
3年
1
4.
9
4
9.
3
3
2.
8
3.
0
1
0
0.
0
計
3
1.
1
4
5.
2
1
8.
9
4.
8
1
0
0.
0
スピアマンの相関係数:0.
2
7
3
表6
学年別に見た「あいさつ得点」の分布(多変量解析にかける関係でサンプル数は6
5
0)
8点
9点
点
点
1
2
点
1
3
点
1
4
点
1
5
点
1
6
点
1
7
点
1
8
点
1
9
5
―
―
―
2
―
4
―
―
4
7
1
1
1
3
1
8
2
2
2
3
3
0 1
2
6
6
―
1
―
1
1
―
2
5
3
5
6
1
9
2
0
1
4
2
0
2
9 1
2
6
1
1
1
―
1
3
1
2
1
3
7
7
6
3
7
1
0
1
4
6
7
2
―
―
2
1
1
2
―
4
2
6
9
6
3
9
4
1
0
6
1
3
4
―
2
2
3
3
1
1
2
4
3
5
4
3
1
2
5
6
6
9
1
―
4
1
2
3
4
8
7
5
4
2
6
1
7
8
6
6
8
2
5
3
3
2
4
4
5
8
4
5
3
5
5
3
5
7
7
1
3
―
2
3
4
3
8
3
6
5
―
8
3
9
6
5
2
6
7
合 計
1
0
1
1
1
1
1
5
1
8
2
6
3
1
3
3
3
0
3
7
5
1
6
2
6
2
8
0
2
0
合計
7点
1
1
点
6点
1
0
点
5点
―子どもの場合
小
中
高
6
9 1
0
4 6
5
0
スピアマンの相関係数:−0.
3
6
9
を,どの程度行っているかを示すのが,表1か
表7 「あいさつ得点」と個別の「あいさつ程度」
との相関(子どもの場合)
ら表5である。それぞれの表下の示すように,
相関係数を出した結果は,どちらかといえば学
年が上になるほど,あいさつをしなくなる。特
に,「おやすみなさい」
というあいさつの場合,
はっきりとその傾向がうかがえる。
2
子どもたちの「あいさつ(程度)得点」
子どもたちがどの程度あいさつをしているか
1
2
3
4
5
あいさつ内容
スピアマンの相関係数
おはよう
0.
8
5
0
行ってきます
0.
7
3
9
ただいま
0.
7
7
4
おやすみなさい
0.
8
3
3
ありがとう
0.
6
9
2
を得点化した得点分布は表6のとおりであっ
た。ここでは,上記の5つの質問について,そ
点,とした。その上で,5問の合計点を求め,
れぞれ回答を,毎日する=4点,することが多
あいさつをする程度が多いほど得点が高くなる
い=3点,ほとんどしない=2点,しない=1
ように数値化した。
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 7
7
表6から見られるように,低学年ほどあいさ
様の操作をした。すなわち,
「子どもはどの程
度あいさつをしているのか」を,それぞれにつ
つ得点は高い。
また,あいさつの程度が多いほど高い得点に
いての親の判断を求めた結果である。
なるよう得点化し,その合計点との関連を見る
表8∼表12の下に示すように,学年とクロス
と,表7のとおり,高い相関となった。特に,
集計ではいずれもほとんど相関関係が見られな
「おはよう」
「おやすみなさい」を言っている
い。親の回答は学年による違いがない。それは
場合には全体としてもあいさつ程度が高くなる
親は子どもがいくつになっても見る目が同じと
ことがわかる。
「ありがとう」というあいさつ
いうことなのか,子どもの成長・発達を考慮し
は最も小さな値となっている。
た上で,「この年齢の子どもはこのような程度
のあいさつをするもの」といった基準ができて
2
親の回答
いるということなのか。しかし,子どもの年齢
上の1で見たように,親の回答についても同
が異なっても,回答に変化がないということは
表8 「おはよう」というあいさつ
*学年別に見た親の回答(N=4
9
7)
。数値は%,
( )内は実数。以下表1
2まで同様。
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
6
1.
0
3
0.
0
9.
0
―
1
0
0.
0(1
0
0)
6年
6
6.
1
2
3.
2
1
0.
7
―
1
0
0.
0(1
1
2)
1年
5
9.
3
3
0.
5
8.
5
1.
7
1
0
0.
0( 5
9)
2年
5
7.
1
2
4.
5
1
6.
3
2.
0
0
1
0
0.
0( 4
9)
3年
4
4.
4
3
7.
0
1
6.
7
1.
9
1
0
0.
0( 5
4)
1年
5
0.
0
2
5.
0
2
3.
1
1.
9
1
0
0.
0( 5
2)
2年
4
8.
5
1
8.
2
2
4.
2
9.
1
1
0
0.
0( 3
3)
3年
3
6.
8
3
9.
5
1
3.
2
1
0.
5
1
0
0.
0( 3
8)
計
5
5.
9
2
8.
2
1
3.
7
2.
2
1
0
0.
0(4
9
7)
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
1
8
3
表9 「行ってきます」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
8
7.
0
1
1.
0
2.
0
―
1
0
0.
0
6年
8
3.
0
1
5.
2
1.
8
―
1
0
0.
0
1年
7
4.
6
2
2.
0
1.
7
1.
7
1
0
0.
0
2年
7
3.
5
2
4.
5
2.
0
―
1
0
0.
0
3年
7
0.
4
2
5.
9
3.
7
―
1
0
0.
0
1年
6
9.
2
1
9.
2
9.
6
1.
9
1
0
0.
0
2年
5
7.
6
2
4.
2
1
2.
1
6.
1
1
0
0.
0
3年
6
5.
8
2
6.
3
7.
9
―
1
0
0.
0
計
7
6.
1
1
9.
1
4.
0
0.
8
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
2
0
4
7
8 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
表1
0 「ただいま」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
7
7.
0
1
8.
0
4.
0
1.
0
1
0
0.
0
6年
7
7.
7
1
8.
8
2.
7
0.
9
1
0
0.
0
1年
7
1.
2
2
0.
3
6.
8
1.
7
1
0
0.
0
2年
7
3.
5
2
0.
4
6.
1
―
1
0
0.
0
3年
6
8.
5
1
8.
5
1
1.
1
1.
9
1
0
0.
0
1年
6
7.
3
1
5.
4
1
5.
4
1.
9
1
0
0.
0
2年
5
1.
5
1
8.
2
1
8.
2
1
2.
1
1
0
0.
0
3年
5
7.
9
2
8.
9
1
0.
5
2.
6
1
0
0.
0
計
7
1.
0
1
9.
3
7.
6
2.
0
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
1
6
5
表1
1 「おやすみなさい」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
7
3.
0
1
7.
0
7.
0
3.
0
1
0
0.
0
6年
7
1.
4
2
1.
4
7.
1
―
1
0
0.
0
1年
6
6.
1
2
7.
1
5.
1
1.
7
1
0
0.
0
2年
5
7.
1
3
6.
7
6.
1
―
1
0
0.
0
3年
5
1.
9
2
9.
6
1
8.
5
―
1
0
0.
0
1年
3
8.
5
3
4.
6
2
5.
0
1.
9
1
0
0.
0
2年
3
3.
3
3
3.
3
2
1.
2
1
2.
1
1
0
0.
0
3年
3
4.
2
3
1.
6
2
1.
1
1
3.
2
1
0
0.
0
計
5
8.
8
2
6.
6
1
1.
9
2.
8
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
3
0
3
表1
2 「ありがとう」というあいさつ
毎日する
することが多い ほとんどしない
し な い
合
計
5年
6
2.
0
3
3.
0
5.
0
―
1
0
0.
0
6年
6
2.
5
3
5.
7
1.
8
―
1
0
0.
0
1年
5
7.
6
3
3.
9
8.
5
―
1
0
0.
0
2年
6
9.
4
2
8.
6
2.
0
―
1
0
0.
0
3年
4
4.
4
5
0.
0
5.
6
―
1
0
0.
0
1年
5
7.
7
3
8.
5
3.
8
―
1
0
0.
0
2年
6
3.
6
2
7.
3
9.
1
―
1
0
0.
0
3年
3
4.
2
6
0.
5
5.
3
―
1
0
0.
0
計
5
7.
9
3
7.
4
4.
6
―
1
0
0.
0
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
0
9
9
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 7
9
表1
3 「あいさつ得点」と個別の「あいさつ程度」
との相関(親の場合)
1
2
3
4
5
あいさつ内容
生活の満足度,を取り上げた。今回このように
多くの要因を取り上げたのは,要因探索を狙っ
スピアマンの相関係数
てのことである。
1
子どもの場合の分析
おはよう
0.
7
8
2
行ってきます
0.
6
5
7
ただいま
0.
7
1
2
おやすみなさい
0.
7
7
5
今 回 の 探 索 で は,重 相 関 係 数 の 二 乗 値 が
ありがとう
0.
5
9
5
0.
3897であり,必ずしも十分な説明力をもって
林の数量化理論Ⅰ類による解析の結果は表
14,表15に示すとおりである。
いるとはいえない。まず,表15のレンジの大き
指摘できる。
さの順位から見ると,家での家族の団欒時間,
表は省略するが,あいさつ得点と学年との相
学年,家庭生活の満足度,家での手伝い時間,
関係数は−0.
26
2であり,子どもの場合と同じ
共働きかどうか,といった要因が大きいことが
く,学年が高くなるにつれて得点が低くなる傾
わかる。
向が見られる。しかし,
「子どもは親ほどにあ
また,表14のカテゴリー数量から,団欒時間
いさつをしているとは思っていない」し,「親
は多いほど,学年は低いほど,また,家庭生活
は子どもが自覚している以上にあいさつをして
への満足度が高いほど,子どもたちがあいさつ
いる」と思っていることが分かる。
をする得点は高くなる。逆に,団欒時間が少な
また,上記表1
3のとおり,
「おはよう」「おや
く,学年が高くなり,家庭生活への不満が高い
すみなさい」と子どもがあいさつを行っている
ほど,あいさつが少なくなる。
場合に,得点が高くなる。
「ありがとう」とい
親から見た場合の分析
うあいさつは,子どもの場合と同様,あまり行
われていないことを示している。
2
子どもの場合と同じく,
「あいさつ得点」を
求め,規定要因して取り上げたのは,表16に示
すとおりである。要因の数は,子どもの場合と
3
あいさつを「する子」と「しない子」の環
異なり,「親の性別」を加えた。また,「家で過
境の違い―規定要因の分析
ごす時間」のカテゴリでは,
「1時間未満」と
では,
「あいさつをする子」と「あいさつを
いう選択肢に親の回答がなかったため,カテゴ
しない子」の生活環境等の違いはどこにあるの
であろうか。これまで分析した「あいさつ得点」
リから除いてある。
表16,表17から分かるとおり,数値,順位は
を手がかりに,今回は,林の数量化理論Ⅰ類に
異なるものの,子どもの場合と同じようなアイ
よって分析することとした。
テム(規定要因)が,並んでいる。レンジの大
分析の際の操作はまず,
「あいさつ得点」を
きな要因から示せば,家での手伝い時間,家族
外的基準(従属変数)とし,説明変数(独立変
の団欒時間,
(親自身の)家庭生活の満足度,
数)=規定要因としては,表1
4に示すとおり,
学年,などである。
学年,性別,祖父母の有無,共働きかどうか,
また,「あいさつ得点」が高くなるのは,親
言葉遣いに対する注意の程度,朝起こしてもら
の判断として,家での手伝いをする時間が長
うかどうか,家で過ごす時間,家での手伝い時
く,家族の団欒時間は長く,親自身の家庭生活
間,家族の団欒の時間,家族旅行の有無,子ど
の満足度が高く,子どもは低学年で,子どもが
もの趣味の有無,自分だけの部屋の有無,家庭
趣味をもっているという場合である。
8
0 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
表1
4 規定要因として選択したアイテム,カテゴリ,カテゴリ数量
アイテム
学
性
カテゴリ
カテゴリ数量 アイテム
カテゴリ
カテゴリ数量 アイテム
小学校5年
1.
1
6
3
1
0
8
小学校6年
0.
6
3
9
1
4
9
中学校1年
家で過ご
2時間以上3時間未満 −0.
3
0
4
4
7
0.
4
4
9
2
1
9 す時間
中学校2年
0.
3
8
5
9
6
9
中学校3年
−0.
7
0
4
2
カテゴリ
1時間未満
−0.
0
6
5
3
7 自分だけ ある
の部屋の
1時間以上2時間未満 0.
2
5
7
9
7
1 有無
ない
たいへん満足
高等学校1年
−1.
1
5
1
2
6
ほとんどない
−0.
5
5
1
4
6
高等学校2年
−1.
0
0
2
4
5
3
0分以内
0.
2
8
0
5
3
2定 数 項
高等学校3年
家での手
−1.
1
7
0
3
8 伝い時間 1時間以内
0.
7
5
8
2
2
1
男
−0.
4
7
3
6
6
−0.
1
2
3
6
8
女
0.
4
2
1
3
4
2時間以内
たいへん不満
−0.
3
1
6
7
1
その他
2時間を越える
1.
4
5
5
6
8
ほとんどない
−2.
1
6
7
7
0.
4
9
7
6
3
9
3
0分以内
家族の団
−1.
2
5
0
9
7 欒時間
1時間以内
よくしかる
−0.
3
0
9
9
4
言葉遣い
1
4
0
5
8
1
への注意 ときどきしかる 0.
0.
2
2
0
3
2
4
0.
3
8
7
7
4
4
2時間以内
0.
4
1
3
4
8
2時間を越える 1.
1
6
6
4
6
6
あまりしからない −0.
0
3
5
1
4 家族旅行 ある
の有無
いつも起こしてもらう −0.
0
4
6
0
1
ない
0.
1
8
9
0
2
8
−0.
4
7
5
1
2
朝起こし
1
0
2
5
2 趣味の有 ある
てもらう ときどき起こしてもらう −0.
無
起こしてもらうことはない 0.
2
5
9
8
8
5
ない
0.
2
1
1
3
1
2
−0.
6
7
4
8
3
表1
5 アイテム,レンジ,単相関,偏相関
ア イ テ ム
0.
1
5
7
8
3
8
0.
8
9
4
2
7
8
レンジの順位
レ ン ジ
単 相 関
偏 相 関
学年
2
2.
3
3
3
4
8
6
0.
3
9
3
2
0.
2
3
8
1
性別
6
0.
8
9
5
0
0
4
0.
1
6
7
3
0.
1
3
7
3
共働き
5
1.
7
4
8
6
1
0.
1
5
0
8
0.
1
3
9
8
言葉遣いへの注意
1
0
0.
4
5
0
5
1
9
0.
0
7
9
1
0.
0
5
1
4
朝起こしてもらう
1
1
0.
3
6
2
4
0
3
0.
0
0
0
1
0.
0
4
5
7
家で過ごす時間
9
0.
5
6
2
4
4
3
0.
0
4
1
0
0.
0
3
7
0
家での手伝い時間
4
2.
0
0
7
1
4
3
0.
3
2
0
4
0.
1
5
2
2
家族の団欒時間
1
3.
3
3
4
1
6
1
0.
4
3
2
7
0.
2
8
5
4
家族旅行の有無
8
0.
6
6
4
1
5
1
0.
2
5
0
0
0.
0
8
9
8
趣味の有無
7
0.
8
8
6
1
4
6
0.
1
8
4
0
0.
1
1
8
5
自分だけの部屋の有無
1
2
0.
2
6
5
1
0
2
0.
1
4
7
9
0.
0
3
9
6
家庭生活の満足度
3
2.
1
7
3
9
5
9
0.
3
6
5
7
0.
1
9
8
6
重相関係数:0.
6
2
4
3 重相関係数の二乗:0.
3
8
97
−1.
2
7
9
6
8
1
5.
4
1
8
4
6
別
共 働 き どちらか片方
−0.
1
0
7
2
6
3時間以上5時間未満 0.
0
1
2
4
5
8 家庭生活 どちらかといえば満足 −0.
3
6
1
0
8
の満足度
どちらかといえば不満 −0.
6
8
5
9
6
5時間以上
0.
0
3
1
9
2
5
年
共働き
カテゴリ数量
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 8
1
表1
6 規定要因として選択したアイテム,カテゴリ,カテゴリ数量
アイテム
学
カ テ ゴ リ
カテゴリ数量
小学校5年
0.
3
6
2
4
7
6
ほとんどない
−0.
1
0
1
小学校6年
0.
5
0
9
2
5
5
3
0分以内
中学校1年
0.
5
1
0
6
6
5 家での手伝い時間 1時間以内
0.
4
5
1
2
0
9
中学校2年
−0.
0
0
8
5
8
2時間以内
4.
4
9
6
0
9
7
中学校3年
−0.
2
9
4
1
4
2時間を越える
1.
7
3
2
1
9
9
高等学校1年
−0.
4
6
4
3
8
ほとんどない
−1.
4
1
5
5
6
高等学校2年
−1.
4
1
6
0
2
3
0分以内
−0.
7
3
2
9
6
0.
0
2
0
0
7
6
年
子どもの性別
高等学校3年
−0.
9
5
3
5 家族との団欒時間 1時間以内
0.
1
5
7
8
7
2
男子
0.
1
0
4
9
2
9
2時間以内
0.
3
3
9
4
3
7
女子
−0.
1
1
0
3
5
2時間を越える
0.
7
6
1
8
7
8
両方
0.
0
5
5
4
7
7
あり
0.
1
4
1
1
0
5
なし
−0.
6
1
2
9
7
あり
子どもの趣味の有
−0.
0
3
6
1
6無
なし
0.
0
7
7
1
1
3
家族旅行の有無
男
−0.
2
0
1
5
4
女
0.
0
1
2
0
3
2
親の性別
共働き
共 働 き
どちらか片方
その他
よくしかる
言葉遣いへの注意 ときどきしかる
あまりしからない
いつも起こしてもらう
朝起こしてもらう ときどき起こしてもらう
家で過ごす時間
0.
0
6
5
0
4
わからない
−0.
6
0
7
1
9 子どもだけの部屋 あり
の有無
−0.
2
3
5
8
3
なし
たいへん満足
0.
1
0
9
9
8
4
0.
5
0
0
6
3
8
−0.
5
8
1
4
3
−0.
2
3
7
1
4
0.
2
7
9
7
8
4
0.
5
3
5
8
5
7
−0.
1
4
1
4
6 親の家庭生活の満 どちらかといえば満足
足度
−0.
1
9
8
0
2
どちらかといえば不満
−1.
4
7
5
2
1
0.
1
5
7
9
6
2
−0.
7
9
4
6
7
たいへん不満
起こしてもらうことはない
0.
2
4
1
1
7
1定 数 項
1時間以上2時間未満
−0.
4
8
1
6
5
2時間以上3時間未満
0.
1
5
2
2
6
3時間以上5時間未満
0.
1
6
2
9
0
6
5時間以上
−0.
1
9
2
8
3
1時間以上2時間未満
0.
1
6
8
9
1
6
0.
0
2
6
1
4
4
1
7.
6
2
1
7
3
なお,逆に,どのような場合にあいさつ得点
今回の分析では,子どもの場合ほど重相関係
が低くなるかといえば,家での手伝い時間が短
数の二乗値が高くはなかった。したがって,別
く,家族の団欒時間が少なく,親自身も家庭生
な要因を考える事が必要となろう。それに対す
活に対する満足度が低く,子どもは高学年(高
る検討は今後の課題である。
校生)になり,何も趣味を持っていないような
子どもであるとみなしている場合であり,親の
判断として,
「あいさつをしない」と考えるこ
とになると見られる。
Ⅱ
家庭生活に対する満足度の親と子で
の違い
次に,家庭での生活を子どもや親はどの程度
8
2 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
表1
7 アイテム,レンジ,単相関,偏相関
ア イ テ ム
レンジの順位
レ ン ジ
単 相 関
偏 相 関
学年
4
1.
9
2
6
6
8
5
0.
2
9
0
3
0.
2
3
0
4
子どもの性別
1
1
0.
2
1
5
2
7
9
−0.
0
0
3
6
0.
0
4
3
7
親の性別
1
2
0.
2
1
3
5
7
4
0.
0
4
3
9
0.
0
2
1
1
共働き
7
0.
6
7
2
2
3
3
0.
0
2
0
4
0.
0
4
3
1
言葉遣いへの注意
1
0
0.
3
4
5
8
1
1
0.
0
1
9
9
0.
0
5
9
8
朝起こしてもらう
9
0.
4
3
9
1
9
5
0.
0
7
1
0
0.
0
8
3
1
家で過ごす時間
8
0.
6
5
0
5
7
0.
0
6
9
7
0.
0
7
6
9
家での手伝い時間
1
4.
5
9
7
0
9
7
0.
1
0
6
9
0.
1
0
9
6
家族の団欒時間
2
2.
1
7
7
4
3
6
0.
2
8
5
0
0.
2
2
5
7
家族旅行の有無
6
0.
7
5
4
0
7
5
0.
2
2
8
1
0.
1
2
0
5
趣味の有無
5
1.
0
8
2
0
6
7
0.
1
2
1
8
0.
1
3
7
9
自分だけの部屋の有無
8
0.
5
1
6
9
2
5
0.
1
3
9
8
0.
1
0
5
1
親の家庭生活の満足度
3
2.
0
1
1
0
6
6
0.
2
6
5
8
0.
2
2
7
4
重相関係数:0.
5
0
6
5 重相関係数の二乗:0.
2
5
66
できる。
満足しているかを検討することにする。
核家族化や少子化は,子どもたちにだけでな
く,少なからず家族全員にストレスを与えるも
のでもある。先に見たように,あいさつの程度
も,家庭生活意の満足度と無関係ではない。子
1
子どもの回答と親の回答
学年ごとに家庭生活の満足度が表18(子ども
の場合),表19(親の場合)である。
どもたちの家庭での満足度が,家庭教育の場面
子ども調査の結果では,緩やかではあるが学
でさまざまな影響を与えるであろうことは想像
年との相関があり,この場合,学年が高くなる
表1
8 子どもの「家庭生活に対する満足度」 数値は%,( )内は実数。
たいへん満足して どちらかといえば どちらかといえば たいへん不満であ
いる
満足している
不満である
る
合
計
5年
5
1.
2
4
1.
6
6.
4
0.
8
1
0
0.
0(1
2
5)
6年
5
6.
3
3
8.
9
4.
0
0.
8
1
0
0.
0(1
2
6)
1年
4
1.
5
4
1.
5
1
5.
4
1.
5
1
0
0.
0( 6
5)
2年
2
9.
0
5
0.
0
1
1.
3
9.
7
1
0
0.
0( 6
2)
3年
1
9.
4
4
6.
3
2
8.
4
6.
0
1
0
0.
0( 6
7)
1年
1
9.
1
5
2.
9
2
2.
1
5.
9
1
0
0.
0( 6
8)
2年
1
6.
7
5
6.
1
1
9.
7
7.
6
1
0
0.
0( 6
6)
3年
2
3.
5
5
1.
5
1
6.
2
8.
8
1
0
0.
0( 6
8)
計
3
6.
0
4
6.
1
1
3.
6
4.
3
1
0
0.
0(6
4
7)
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
**
スピアマンの相関係数:0.
3
2
5 χ二乗値:9
7.
47
7
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 8
3
表1
9 親の「家庭生活に対する満足度」 数値は%,( )内は実数。
たいへん満足して どちらかといえば どちらかといえば たいへん不満であ
いる
満足している
不満である
る
合
計
5年
3
2.
7
5
4.
1
1
1.
2
2.
0
1
0
0.
0( 9
8)
6年
2
4.
3
6
1.
7
1
3.
1
0.
9
1
0
0.
0(1
0
7)
1年
2
0.
0
6
5.
5
1
2.
7
1.
8
1
0
0.
0( 5
5)
2年
4
4.
4
4
6.
7
8.
9
―
1
0
0.
0( 4
5)
3年
2
4.
1
6
6.
7
9.
3
―
1
0
0.
0( 5
4)
1年
2
2.
4
7
1.
4
6.
1
―
1
0
0.
0( 4
9)
2年
1
9.
4
6
7.
7
9.
7
3.
2
1
0
0.
0( 3
1)
3年
2
0.
0
6
8.
6
8.
6
2.
9
1
0
0.
0( 3
5)
計
2
6.
6
6
1.
6
1
0.
5
1.
3
1
0
0.
0(4
7
4)
小 学 校
中 学 校
高等学校
合
スピアマンの相関係数:0.
02
8 χ二乗値:2
0.
0
2
0(有意差なし)
表2
0 規定要因として選択したアイテム,カテゴリ,カテゴリ数量
アイテム
学
カテゴリ
アイテム
小学校5年
0.
4
9
0
1
小学校6年
0.
4
5
4
8 夕
中学校1年
0.
0
9
2
6
中学校2年
−0.
1
5
8
2
カテゴリ
毎日食べている
第1軸
アイテム
カテゴリ
第1軸
0.
0
0
0
0
1時間以内
0.
4
9
3
7
食 よく食べている −0.
0
5
6
4
2時間以内
0.
2
4
4
3
2時間を越える
0.
5
7
5
7
あり
0.
0
9
6
0
なし
−0.
2
4
9
1
あまり食べない
1時間未満
0.
2
7
5
6
−1.
2
8
0
0
家族旅行
年
1時間以上2時間未満 −0.
5
0
6
9
中学校3年
−0.
7
6
8
7
高等学校1年
−0.
5
1
2
8 過ごす時 2時間以上3時間未満
0.
1
7
9
5
0
高等学校2年
−0.
1
9
0
9
3時間以上5時間未満
0.
0
2
1
6
3
0分以内
5時間以上
おしゃべ
0.
0
3
3
5 り時間
1時間以内
0.
0
4
8
8
ほとんどない
0.
0
3
8
2
2時間以内
0.
2
7
5
2
3
0分以内
0.
0
0
2
8
2時間を越える −0.
1
2
5
3
高等学校3年
性
第1軸
−0.
2
3
2
5
男
0.
1
7
3
6
女
−0.
1
5
1
1
0.
1
0
0
8
−0.
2
9
7
6
別
とも働き
0.
1
1
8
5 手 伝 い 1時間以内
−0.
0
3
9
2
あり
0.
0
6
2
0
ない
−0.
0
8
9
4
自分の部
共 働 き どちらか片方
その他
よくしかる
帰宅時間 ときどきしかる
−0.
2
4
5
5
2時間以内
1.
3
8
8
7
2時間を越える −1.
2
1
8
2
−0.
5
6
9
4
ほとんどない
0.
1
5
8
1
0.
0
7
1
9
ほとんどしからない
3
0分以内
趣味活動
0.
0
4
6
9 時間
1時間以内
−0.
1
4
0
4
毎日食べている
0.
1
3
8
3
−0.
0
5
5
1
2時間以内
よく食べている −0.
3
3
9
6
朝
0.
2
6
6
5
2時間を越える
0.
0
3
5
6
0.
1
1
1
5
食
あまり食べない −0.
5
1
1
1
団
食べない
0.
0
6
4
2
ほとんどない
−1.
0
8
2
9
3
0分以内
−0.
2
1
1
6
欒
8
4 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
2
と不満に思う子どもが多くなる。
「たいへん満
家庭生活の満足度を規定する要因(数量化
足している」という子どもは,小学校では50%
Ⅱ類による結果)―子どもの場合
を超えるが,中学生では学年とともに激減し,
家庭生活の満足度の規定要因を探るため,こ
こではまず,満足しているグループと不満に
高校2年生では1
6.
7%しかいない。
親調査の結果では,「たいへん満足している」
思っているグループとに分けた。その判定に際
という比率は,子どもに比べて全体として10%
しては,設問の回答をもとに,満足度が高いグ
ほど少なくなっているし,
「どちらかといえば
ループ(「たいへん満足している」あるいは「ど
満足している」という回答は子どもよりも親の
ちらかといえば満足している」と回答したグ
ほうが1
5%ほど多い。「たいへん満足している」
ループ)と低いグループ(
「どちらかといえば
という回答で見る限り,親は子どもたちほどに
不満である」あるいは「どちらかといえば不満
は満足していない。数値にはかなりギャップが
である」と回答したグループ)との2群に分け
あるといえる。
た。
この操作をする中で,最終的に分析にかける
また,
「どちらかといえば不満である」とい
ことができたデータ数は647となった。
う回答は,小学生をもつ親の場合に多い。この
表20,表2
1は,「満足群」「不満足群」を分け
ことを考え合わせると,
「親の方が家庭生活に
る要因とその重みを示している。
不満をもっている」ということになるのであろ
表21に示すように,アイテム・レンジは,家
うか。ここでは理由は明確ではないが,この点
族の団欒があるか,共働きかどうか,家で手伝
はさらに検討する必要がある。
いをどのくらいするか,家で過ごす時間の多
さ,学年,といった変数が大きい。すなわち,
表2
1 アイテム,レンジ,単相関係数,偏相関係数
第1軸
アイテム
レンジ レンジ順位
単 相 関 係 数
学年
1.
2
5
8
9
5
学年
性別
0.
3
2
4
7
1
1
子の性別
共働き
1.
6
3
4
2
2
帰宅時間
0.
7
2
7
4
朝食
偏 相 関 係 数
0.
2
6
6
7 学年
0.
2
1
3
5
−0.
0
0
0
3 子の性別
0.
0
8
3
8
共働き
0.
0
4
6
1 共働き
0.
1
4
6
3
6
帰宅時間
0.
1
0
9
8 帰宅時間
0.
1
2
6
3
0.
6
4
9
4
7
朝食
0.
1
7
1
2 朝食
0.
1
2
4
9
夕食
0.
3
3
2
0
1
0
夕食
−0.
0
0
2
4 夕食
0.
0
2
3
9
過ごす時
1.
4
5
9
6
4
過ごす時
0.
1
2
3
3 過ごす時
0.
1
0
2
6
手伝い
1.
4
8
4
8
3
手伝い
0.
0
6
5
0 手伝い
0.
0
8
0
9
趣味時間
0.
2
5
2
0
1
2
趣味
−0.
0
1
7
6 趣味
0.
0
5
2
0
団欒時間
1.
6
5
8
6
1
団欒
0.
3
4
0
6 団欒
0.
2
7
1
7
家族旅行
0.
3
4
5
1
9
家族旅行
0.
1
7
7
4 家族旅行
0.
0
7
9
4
おしゃべり時間 0.
5
7
2
7
8
おしゃべり時間
0.
1
7
3
5 おしゃべり時間
0.
0
9
8
2
自分の部
1
3
自分の部
相関比:0.
2
2
8
7
0.
1
5
1
5
−0.
0
5
3
4 自分の部
軸の重心:第1軸;0.
22
34,第2軸;−1.
0
2
25
0.
0
3
9
0
山本:小・中学生,高校生の家庭でのあいさつと生活の満足度 8
5
子どもたちの家庭生活の満足度は,家族の会話
生活の満足度,4家での手伝い時間,5親
や団欒時間が多く,共働きではなく,手伝い時
が共働きかどうか,等である。親では,そ
間や家にいる時間もほどほどに,という場合に
の要因は,1家での手伝い時間,2家庭で
高くなることになる。
の団欒時間,3(親自身の)家庭生活の満
Ⅲ
足度,4学年,5子どもの趣味の有無,等
分析とまとめ
今回の調査はパイロット・サーベイとして,
5
である。
家庭生活の満足度は,子どもの場合,学
地域や学校抽出のサンプリング等の面では限定
年が低いほど高い,という結果であった。
して実施したものであり,本稿はその結果の分
親の場合,学年との関連は薄く,全体とし
析であった。残された課題もある。しかし,今
て満足度は子どもより低い。特に,小学校
回のテストデータの中で明らかになったことが
児童の親の場合,「たいへん満足している」
らを,いくつか仮説的に指摘する。
という回答は,児童のそれのおよそ半分で
ある。(家庭生活に満足していない親との
まずこのような調査の意義であるが,家庭教
育場面における親子のかかわりを考える際に,
最も基本となると考えられる家族間(親子間)
6
関係はたいへん気になるところである。)
林の数量化理論Ⅱ類による,生活満足度
における「あいさつ」が,家庭においてどの程
の高低を左右する要因の分析では,子ども
度,どのようなあいさつが行われているかを調
の場合,1家庭での団欒時間,2共働きか
べることは,家庭が教育力を持ちうるかどうか
どうか,3家での手伝いの程度,5家で過
を知ることにつながるのではないかというとこ
ごす時間,5学年,などが大きな要因であ
ろにある。
る。
実際,親子間の感情や考え方・見方にずれが
あった。「子どもがわからない」という言葉を
注
よく耳にするが,親子の思いに違いがあること
1)文部省編,
『平成1
1年度 わが国の文教施策 進む
2
6
「教育改革」
』
,1
9
9
9年1
2月7日,pp.23
1―3
2)足立己幸・NHK「子どもたちの食卓」プロジェク
ト著,
『NHKスペシャル 知っていますか子どもた
ちの食卓―食生活からからだと心がみえる』
,NHK
出版,2
0
0
0年2月2
5日,
3)池本 要,
「子どもの体験活動の実態と課題―自
然・人・地域とのふれあい調査を通して―」
,
『日本
生涯教育学会論集』
,1
9(1
9
9
8年度)
,日本生涯教育
学会,1
9
9
8年7月3
1日,pp.4
9―5
6
4)埼玉県狭山市内に所在する,小学校(2校,各学
年1クラス)
,中学校(1校,各学年1クラス)
,高
等学校(1校,各学年1クラス)
,および,その生徒
の父母・保護者(各学校,学年,クラスは同様)に
対して実施した。抽出した学校はそれぞれ市内の代
表すると思われる学校を選んだ。有効回収数は以下
の通り。生徒は,I小学校5年生6
3,6年生6
0,M
小学校5年生7
3,6年生7
4,I中学校1年生7
1,2
年生6
5,3年生7
3,S高等学校1年生7
3,2年生7
4,
3年 生7
1,合 計6
9
7。親 は そ れ ぞ れ,5
3,4
7,5
5,
7
3,6
2,5
5,6
1,5
5,3
6,4
4,の合計5
4
1。有効回収
が見て取れる。今回の結果から言えば,子ども
はあいさつをしていないと思っていても,親は
そこそこの挨拶をしていると考えている。
結果から仮説的に言えることは,次のような
ことであろう。
1
学年が上になるほど,家庭内でのあいさ
つ程度は低くなる。
2
あいさつをするかどうかの判断は,
「お
はよう」
「おやすみなさい」
と相関がある。
3 「ありがとう」というあいさつをする程
4
度は学年が高くなると減ってくる。
林の数量化理論Ⅰ類による分析では,
「あいさつ(程度)得点」の高低を左右す
る要因は,子ども本人の場合,大きい順か
ら,1家庭での団欒時間,2学年,3家庭
8
6 国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要,創刊号,2
0
0
1年
率は,生徒の総計で9
1.
1%,父母・保護者の合計で
7
0.
8%であった。
5)次の2点がそれである。1山本和人・彦根 忍・
加藤優子・山下康吉・栗原梅次,
「青少年の学校外で
の生活を支える社会教育,家庭教育の役割」
,埼玉県
狭山市立教育センター,
『狭山市教育センター研究紀
要第9号 2
1世紀を見据え生きる力を育てる教育の
9,2
0
0
0年3月。2山本和人,
「児
創造Ⅱ』
,pp. 7
0―7
童・生徒の地域および家庭での生活を支える社会教
育」
,創価大学社会教育主事課程,
『創価大学社会教
育主事課程年報№3』
,pp.1
5―2
8,2
0
0
0年4月2日。
Fly UP