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SPCを利用した取引の会計と税務

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SPCを利用した取引の会計と税務
<業種に特有な会計及び税務処理シリーズ>
第8回
SPCを利用した取引の会計と税務
公認会計士・不動産鑑定士 石
渡 朋 徳
はじめに
今回テーマとして取り上げる「特別目的会
での取扱いを中心に理解を深めていきたいと
社(以下「SPC」という)を利用した取引
思います。
の会計処理と税務」は,一般的に不動産や金
融資産の流動化取引において論点となるもの
です。このため,不動産会社や金融機関にお
いて,特に議論となる論点ですが,その他の
会社においても資産の流動化を行っている会
社であれば,検討課題となる可能性があるも
のです。
なお,このSPCの取扱いについては,企
業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)
より,
「連結財務諸表における特別目的会社の
取扱い等に関する論点の整理」
(平成21年2
月6日)が公表され,引き続き検討するとさ
れたものの,出資者等の子会社に該当しない
(対象となる業種)
不動産会社や金融機関が,SPCを利
用した取引を多く行っているものと思わ
れますが,その他流動化取引を行ってい
る会社であれば,関係があるため,会社
全般に影響があるものと考えられます。
なお,不動産の流動化については,リ
スク・経済価値アプローチの考え方,金
融資産の流動化については,財務構成要
素アプローチの考え方が採用されていま
す。このことから,不動産流動化の方が,
論点は多いものと考えられます。
ものと推定するという取扱いを削除すること
なお,本稿の意見にわたる部分については,
が考えられるとされました。したがって,今
筆者個人の私見であることをお断りしておき
後の議論によっては,大きく取扱いが異なっ
ます。
てくる可能性はありますが,本稿では現時点
1 SPCとは
特別目的会社(SPC)とは,資産の流動
から生ずる収益を当該SPCが発行する証券
化に関する法律(いわゆるSPC法)第2条
の所有者に享受させることを目的として設立
第3項に規定する特定目的会社(以下「TM
されており,当該SPCの事業がその目的に
K」という)及び事業内容の変更が制限され
従って適切に遂行されているときは,当該S
ているこれと同様の事業体をいいます。そし
PCに対する出資者等から独立しているもの
て,SPCは,適正な価額で譲り受けた資産
と認め,出資者等の子会社に該当しないもの
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と推定される(財務諸表等規則第8条第7
ことに留意が必要です。あくまで,「適正な
項)とされています。そして,このような推
価額による資産の譲渡」及び「事業内容及び
定規定から,SPCは流動化取引に多用され,
その変更の制限」並びに「目的に従った事業
現在に至っています。
の遂行」の3要件を満たしたSPCのみが,
当該推定規定の対象となります。
SPCの種類
<推定の3要件>
SPCは,特定目的会社及び事業内容の変
更が制限されているこれと同様の事業体と定
義されていますが,この「事業体」は,財務
諸表等規則第8条第3項の子会社の定義に用
・ 適正な価額による資産の譲渡
・ 事業内容及びその変更の制限
・ 目的に従った事業の遂行
いられる「会社等」と同様に,会社,組合そ
これは,わが国における連結財務諸表の子
の他これらに準ずる事業体を指すものと考え
会社の範囲が,実質支配力基準により決定さ
られます。そして,「その他これらに準ずる
れることに起因します。すなわち,当該3要
事業体」としては,パートナーシップその他
件が満たされているSPCであれば,あらか
これらに準ずる事業体で営利を目的とする事
じめ定められている計画にしたがい粛々と業
業体が考えられますので,
「特定目的会社と事
務が遂行されているにすぎないため,出資者
業内容の変更が制限されているこれと同様の
等から実質的な支配を受けないものと推定さ
事業体」には,会社(株式会社,有限会社,
れるのです。
合同会社が含まれる),組合(商法上の匿名
したがって,SPCを利用した流動化取引
組合,民法上の任意組合が含まれる)のほか,
を行うにあたっては,この趣旨を逸脱しない
特定目的会社と同様の事業を営む海外におけ
ように,十分留意する必要があります。特に
る事業体や中間法人等が含まれるものと考え
不動産の開発を目的としたSPCについては,
られます。
開発行為という性質上,事業内容の変更の可
なお,信託についても,その二重課税の回
能性も高く,注意が必要です。
避や倒産隔離の確保からSPCとして考えら
れますが,一般的に会計上は,信託導管論に
実務対応報告第20号の取扱い
したがい,自らその信託財産を保有している
SPCの連結に当たっては,前述の要件を
ものと同様の会計処理を行うため,信託する
満たしていれば,推定規定の適用を受けられ
ことのみをもって流動化取引を行うケースは,
ますが,このほかASBJが公表した実務対
少ないものと考えられます。ただし,信託は,
応報告第20号「投資事業組合に対する支配力
それ以外の事業体と組み合わせることにより,
基準及び影響力基準の適用に関する実務上の
利用されるケースは多々見受けられます。
取扱い」(平成21年3月27日最終改訂)にも
留意が必要です。
適格SPC
この実務対応報告によると,株式会社にお
前述のとおり,SPCには,連結子会社に
ける議決権を想定した連結会計基準等を投資
該当しないとの推定規定があります。ここで,
事業組合に適用する場合には,業務執行の権
この推定規定ですが,単にSPC法上のTM
限を用いることにより支配力を判断すること
Kであることや事業内容の変更が制限されて
が適当とされています。ここで,通常,SP
いる事業体であることだけでは,出資者等の
Cでは,定められた計画を適切に運営するた
子会社に該当しないものとは,推定されない
め,アセットマネジメント(以下「AM」と
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いう)会社とAM契約を締結することが一般
のものの内容によっては,営業者SPCの業
的です。このAM契約は,通常,投資家の利
務執行権の一部又は全部を委託しているもの
益の最大化を目的としているため,管理業務
と解釈される場合もあります。したがって,
に準じたものと考えられますが,AM会社が
総合的な視点から実質的な支配力について,
SPCに同時に出資していたり,AM契約そ
検討する必要があります。
2 SPCを利用した流動化取引の会計処理
典型的な流動化スキーム
SPC等を通じて,合同会社(以下「GK」
SPC法に基づくTMKを利用して流動化
という)を設立し,これに匿名組合契約(以
取引を行うことはもちろんですが,現実には,
下「TK」という)を組み込むことにより,
手続の煩雑性やそれに伴うコスト増等の理由
スキームを組成するケースが多く見られます
により,様々なスキームにより流動化取引が
(GK−TKスキーム)
。なお,この場合,
実施されています。ここで,TMK以外の一
流動化される不動産は,通常,信託され,信
般的なスキームについて,紹介しておきます。
託受益権として流動化されることが一般的
なお,不動産の流動化については,リス
です。これは信託受益権取引が,不動産取引
ク・経済価値アプローチの考え方,金融資産
と比較し,不動産取得税や登録免許税,売買
の流動化については,財務構成要素アプロー
契約書の印紙税等の流通課税において,有利
チの考え方が採用されているため,一般的な
になることや,不動産特定共同事業法の適用
スキームも両者で大きく異なります。
を受けないなどスキーム構築が容易であるこ
① 不動産の流動化
と等が理由です。
不動産の流動化取引においては,ケイマン
SPC(合同会社)
受益権譲渡
貸付
オリジネーター
信託契約
ローン
金融機関
信託受益権
信託受託者
出資
賃貸借契約
テナント
TK出資
投資家
資本金
ケイマンSPC等
AM契約
アセットマネジメント会社
② 金融資産の流動化
られます。このため,ここでは最も単純な取
金融資産の流動化は,財務構成要素アプ
引を紹介します。
ローチによって判断されるため,商品設計に
よくある金融資産の流動化取引としては,
よっては,相当複雑な取引になることも考え
売掛金等の営業債権の流動化が挙げられます。
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信託受益権
信託譲渡
売却
SPC・投資家
優先受益権
オリジネーター
回収業務委託
現債権
引き続き保有
劣後受益権
オリジネーター
この場合,当該営業債権を信託受益権化し,
べてが他に移転した場合に当該資産の消滅を
優先劣後構造に分解した上で,優先部分をS
認識する方法です。この流動化実務指針では,
PCや投資家に譲渡する方法が一般的です。
第13項において,その具体的な判断基準を,
流動化する不動産の譲渡時の適正な時価に対
流動化取引の会計処理
するリスク負担の金額の割合がおおむね5%
前述のとおり,不動産の流動化取引と金融
の範囲内であれば,リスクと経済価値のほと
資産の流動化では,考え方が大きく異なるた
んどすべてが他の者に移転しているものとし
め,それぞれに分けて解説したいと思います。
て取扱うとされています(いわゆる5%ルー
なお,流動化に用いられるSPCは,財務諸
ル)。
表等規則第8条第7項の推定規定を満たすも
なお,このリスクと経済価値の移転につい
のとします。
て,流動化実務指針では,①譲渡した不動産
① 不動産の流動化
の管理業務,②買戻し条件付きでの譲渡,③
不動産の流動化取引については,会計制度
S P C が 売 戻 し の 権 利 を 保 有,④ キ ャ ッ
委員会報告第15号「特別目的会社を活用した
シュ・フローや残存価額を実質的に保証,⑤
不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関
SPCの発行する証券の保有,⑥譲渡不動産
する実務指針」
(以下「流動化実務指針」と
の開発,⑦セール・アンド・リースバック取
いう)(平成12年7月31日,日本公認会計士
引が,継続的関与として例示され,十分検討
協会)に留意する必要があります。これは,
する必要があるとされています。このため,
不動産を譲渡したにもかかわらず,地価下落
不動産の流動化取引にあたっては,これらの
その他の当該流動化した不動産に係るリスク
例示を含むスキーム全体の構成内容等を踏ま
が依然として譲渡人に存在していると認めら
えて,リスク負担割合の実質的な判断を行う
れるケースまで,売却取引と扱うことが適当
必要があります。
でないことから定められた指針です。
不動産の流動化取引について,2①の
ここで,不動産の流動化取引は,リスク・
ケースを想定し,
5%ルールを満たした場合と
経済価値アプローチの考え方が採用されてい
満たさない場合について,それぞれ仕訳例を
ます。このリスク・経済価値アプローチとは,
示すと次のようになります。
資産の有するリスクと経済価値のほとんどす
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不動産の流動化の仕訳例(上記2①の
ケース)
(不動産の時価を100,簿価を80,継続的
関与は匿名組合出資のみを行っているも
のと想定)
【5%ルールを満たした場合(TK出資
が5の場合)】
た金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻
す権利及び義務を実質的に有していないこと。
の三要件とされています。なお,金融資産の
消滅の認識とSPCの連結については,直接
的な関係は乏しいですが,通常,SPCへの
譲渡が金融資産の消滅要件を満たしていれば,
譲渡人の子会社にも該当しません。
金融資産の流動化取引について,上記条件
(譲渡時)
(借)現 金 預 金 100
(時価)
(貸)土 地 建 物 80
(簿価)
譲 渡 益 20
(差額)
を満たしたものとして,2②のケースの場
合を想定すると,仕訳例を示すと次のように
なります。なお,金融資産については,様々
なケースが想定されますので,本例示は,あ
(出資時)
(借)有 価 証 券 5
(貸)現 金 預 金 5
(リスクと経済価値のほとんどすべてが
移転していると認められるため,譲渡・
出資それぞれ別取引として処理すること
になります。)
【5%ルールを満たさない場合(TK出
資が10の場合)】
くまで最も単純なケースとご理解ください。
金融資産の流動化の仕訳例(上記2②
のケース)
(信託譲渡時)
仕訳なし(信託譲渡しただけでは何も
しない)
(優先劣後分解時)
仕訳なし(優先劣後とも保有していれ
(譲渡時)
(借)現 金 預 金 100
(貸)預り金又は借入金 100
(リスクと経済価値のほとんどすべてが
移転しているとは認められないため,金
融取引処理となります。)
ば何もしない)
(劣後部分譲渡時)
(借)現 預 金 ×××
(貸)売 掛 金 等*1 ×××
譲 渡 損 益*2 ×××
*1 売掛金等の譲渡原価は,
② 金融資産の流動化
金融資産の流動化取引は,財務構成要素ア
プローチで判断されます。この財務構成要素
譲渡部分の時価
譲渡資産×
の簿価
譲渡部分+残存部分
の時価 の時価 *2 差額
アプローチとは,資産を構成する財務的要素
に対する支配が他に移転した場合に当該移転
注 記 事 項
した財務構成要素の消滅を認識し,留保され
近年,SPCを利用した取引が急拡大する
る財務構成要素の存続を認識する方法です。
とともに複雑化・多様化しています。このこ
そして,金融資産の消滅の具体的な要件は,
とから,財務諸表等規則第8条第7項の推定
①譲渡された金融資産に対する譲受人の契約
規定は,企業集団の状況に関する利害関係者
上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に
の判断を誤らせるおそれがあるのではないか
独立していること。②譲受人が譲渡された金
との指摘があります。
融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常
そこで,ASBJは,企業会計基準適用指
の方法で享受できること。③譲受人が譲渡し
針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に
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関する適用指針」
(最終改正平成2
0年6月2
0
開示対象特別目的会社を利用した取引の概要
日)を公表しました。これにより,出資者等
並びに開示対象特別目的会社との取引金額等
の子会社に該当しない者と推定されたSPC
が,注記情報として開示されることとなりま
について,開示対象特別目的会社の概要及び
した。
3 SPCを利用した流動化取引にあたっての税務上の留意点
SPCを利用した流動化取引について,税
額10億円の不動産について,5億円の減損損
務上,明文化されたものはありません。した
失を計上した場合を想定してみます。そして
がって,流動化取引そのものについては,会
減損損失以外の損益が,6億円の利益だった
計上の取扱いが税務上の取扱いと一致するも
と仮定すると,会計上の利益は,1億円です
のと考えられます。
が,税務上の所得は,減損損失について損金
しかし,SPCそのものは,通常,二重課
計上ができないため,6億円となります。こ
税の回避が求められています。そして,SP
こで,通常,会計上の利益で配当等がされる
Cは通常,TMKスキームやGK−TKス
ことから,配当金は1億円となります。この
キームであれ,二重課税の回避が図られてい
配当金が損金算入されるとなると,最終的な
ます。たとえばTMKについては,租税特別
課税所得は5億円となり,これに対して税が
措置法第67条の14を満たす必要はありますが,
課されることとなります(わかりやすくする
利益配当の額を損金に算入できます。またT
ため,単純計算にしてあります。実際は税引
Kについては,法人税基本通達14−1−3に
後利益で配当を行うため,循環計算も行いま
より,匿名組合員に分配した利益を損金に算
すので,異なった数字になります)。
入できます。
このように会計上の利益と税務上の所得が
このように制度上,二重課税の回避が手当
不一致になった場合,二重課税の回避措置は,
てされているSPCですが,TMKであれT
機能しません。特に減損会計のように影響額
Kであれ,
「配当又は分配利益を損金に算入
の大きな会計・税務の不一致は,場合によっ
できること」に留意が必要です。単純に言え
てはスキームそのものを破綻させることにも
ば,「会計上の利益=税務上の所得」を満た
なりかねません。したがって,SPCの責任
した場合のみ,二重課税の回避が図られてい
者(通常はアセットマネージャー)は,財務
る,ということです。
状況を常に注視し,スキームに影響がないよ
たとえば,減損会計の適用を受け,帳簿価
うに管理しておく必要があります。
4 連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する
論点整理と国際動向
「連結財務諸表における特別目的会社の取扱
国際的な会計基準における取扱い
及びその動向
い等に関する論点の整理」が公表されました。
国際財務報告基準(IFRS)では,解釈
ここで,国際的な動向を踏まえ,今後の方向
指針委員会(SIC)第12号で,SPCにつ
性が整理されています。
いて規定されており,SPCの行動の事前決
前述のとおり,今年2月にASBJより
定も含め,企業とSPCとの間の関係の実質
により,SPCが企業によって支配されてい
るとされると示された場合には,当該SPC
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は連結されなければならないとしていました。
のように,企業と一体となって単一の組織体
そして,現在,国際会計基準審議会(IA
とみなせる支配従属関係とは異なる。③必要
SB)では,SIC第12号と連結の基準であ
な要件や解釈を見直すことが適当である。④
るIAS第27号とを見直す方向で動いていま
消滅の認識要件とともに検討すべき。といっ
す。この中では,他の企業に対する支配を
た論点が挙げられています。
「ある企業が自らのためにリターンを生み出
以上を踏まえ,この論点整理では,国際的
すように,他の企業の活動を左右するパワー
な会計基準の動向も考慮すべきとの意見も紹
を有していること」という考え方が示されて
介し,SPCの推定規定については,削除す
います。
ることが考えられるが,引き続き検討するこ
また米国会計基準(以下「FAS」という)
ととするとされました。このため,SPCを
では,SPCについては,「変動持分事業体
利用した取引については,今後の動向に注視
(以下「VIE」という)の連結」として,
する必要があります。
改訂FIN第46号により,VIEの期待損失
又は期待残余利益の過半を負担又は享受する
変動持分の保有者が,VIEを連結するとさ
れています。ただし,FAS第1
40号に規定
する適格特別目的事業体(以下「QSPE」
という)については,適用対象外とされてい
ました。
そして,米国財務会計基準審議会(FAS
B)もFAS第166号を公表し,FAS第140
号のQSPEの規定を削除することとしてい
(注)
こ の た め,会 社 形 態 で な い も の は,S P C
(Spec
i
a
l Purpose Company)ではなく,Ent
i
ty や Veh
i
c
l
e として,SPEやSPVといわれる
こともあります。
信託受益権とは,信託契約に基づいて行われ
る信託財産(債権や不動産など)の運用結果を
享受できる権利を言います。信託受益権は,基
本的に権利として譲渡することが可能で,かつ,
分割することもできますので,投資商品として
広く活用されています。
ます。
【執筆者紹介】
今後の方向性
この国際的な動きを受けて,我が国におい
石 渡 朋 徳(いしわた とものり)
公認会計士・不動産鑑定士。
ても,SPCの推定規定を削除するかの議論
1997年横浜国立大学経営学部会計・情報学科卒
がされています。
業。不動産鑑定事務所を経て,現在,新日本有
まず,SPCの推定規定に否定的な意見と
限責任監査法人金融部不動産ファイナンスグ
しては,①SPCの資産及び負債情報が適切
ループ,マネージャー。
に反映されない。②SPCとの取引が消去さ
れない。③SPCの取扱いについて幅のある
解釈が行われている。という論点が挙げられ
J−REITやSPCの組成アドバイザリーや
監査に多数関与。
社団法人日本不動産鑑定協会 証券化鑑定評価
委員会委員。
ています。
【主要著書】
一方,肯定的な意見としては,①ノンリ
・ 『CRE戦略 企業不動産を活かす経営』
コース債務の場合,SPCを連結の範囲に含
めることにより,過大な資産及び負債が計上
されてしまう。②SPCは,一般的な子会社
264
(日本経済新聞出版社,共著)
・ 『不動産取引の会計・税務Q&A』(中央経
済社,共著)
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