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5月の校長講話 読書週間に寄せて「『イソップ物語』

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5月の校長講話 読書週間に寄せて「『イソップ物語』
りんご花咲く
5月の校長講話
……浅川小学校 校長室だより……
読書週間に寄せて「
『イソップ物語』
2016/05/18(水)
みなさんは『ウサギとカメ』のお話は知っていますよね。ある時、ウサギとカメがかけっこ
の競走をすることになりました。足の早いウサギはどんどん先に行き、カメをすぐに引き離し
てしまいました。ウサギは足の遅いカメをバカにして居眠りを始めますが、その間にもカメは
一歩一歩確実に進み、ついにカメがウサギに勝ってしまうというお話です。「もしもしカメよ、
カメさんよ……」という歌があるくら い有名なお話です。私は子どもの頃、このお話は日本の
古い昔話だと思っていました。ところが、違ったのです。このお話を作ったのは、今から26
00年程も昔、ギリシャの国にいたアイソーポスという人です。アイソーポスというのはギリ
シャ語の読み方で、英語で読むとイソップとなります。日本人にはイソップという名前の方が
おなじみですね。
図書館の村松先生に伺うと、図書館にはイソップのお話の
本が5冊あることが分かりました 。特に3冊ある『イソップ
どうわ』は低学年の皆さんにも読める、分かりやすい本です。
読んでみてくださいね。
今日は、
『イソップ物語』のお話です。私が手に持っている
この『イソップ物語』は、 私が小学校1年生の時、もう53
年も前に父に買ってもらった本です。私は小学校低学年の頃、
この本が好きでよく読みました。
『イソップ物語』には有名な
お話がたくさん載っています。
『アリとキリギリス(蟻と蝉)』
の お 話 と か 、『 オ オ カ ミ と 少 年 』『 金 の 斧 、 銀 の 斧 、 鉄 の 斧 』
『金の卵をうむニワトリ』
『 いなかのネズミと町のねずみ』
『牛
と蛙』
『蟻と鳩』など、多くの人々が知っている有名なお話で
す。
さて、それではまず、アイソーポス、つまりイソップとはどんな 人だったのか、お話ししま
す。イソップは、先ほども言いましたが、今から2600年程昔にギリシャの国にいた人です。
『奴隷』という身分で、人間なのに値段をつけられて売り買いされたり、まるで馬や牛のよう
に働かされたりする、苦しい生活をしていた人です。しかし、とてもお話が上手で人々に喜ば
れたために、人間らしい生活を許され、ギリシャ各地をまわって王様や世の中の人々にお話を
してまわったそうです。
イソップにはこんな伝説が残っています。まだ奴隷だった頃、ご主人様の旅行の荷物持ちを
させられたイソップは、重くて大きくてだれも が嫌がる、旅行中の食べ物の荷物を自分から進
んで持ったのだそうです。なぜでしょうか。食べ物の荷物は、旅行中にみんなが食事をするた
びにどんどんなくなっていき、最後にはすっかり軽くなってしまいました。イソップはその軽
い荷物を、口笛を吹きながら楽々と運んだそうです。先のことを考えられる、知恵のはたらく
人だったのですね。
日本では、
『イソップ物語』はずいぶん昔から人気で、多くの人々 に読まれてきました。最初
に日本の人々に読まれたのは、今から450年以上も前、豊臣秀吉が生きていた時代です。
『伊
曾保物語』という題名の本が出ました。当時のヨーロッパから伝わってきた『イソップ物語』
を日本語に訳した本です。その中には、今の時代の人々が『イソップ物語』として知っている
有名なお話がたくさん載っています。 日本人はずっと長い間『イソップ物語』に親しんできま
した。ですから、
『イソップ物語』は日本に古くからある昔話のように身近に 感じられるのかも
しれません。
今は、
『イソップ物語』は子ども向きの本ですが、イソッ
プが生きていた頃はイソップのお話は子ども向きの話では
ありませんでした。
「イソップ童話」とも言いますが「イソ
ップ寓話」とも言います。
「寓話」というのは簡単に言うと
「例え話」です。イソップのお話には動物などがよく出て
きますが、その動物の行動や言葉に例えて、人間が大切に
しなくてはいけない事や、 逆にしてはいけない事を教えて
いるのです。ですから、最初に紹介した『ウサギとカメ』
のお話は、ウサギとカメの行動や言葉を例えにして、
「自分
が得意だと思っていい気になって油断していると、苦手で
もこつこつと努力する人には最後に負けてしまいますよ。」
ということを人々に教えている「例え話」なのです。こ の
ように、イソップのお話の裏側には、人間として忘れては
いけない大切な教えが隠されています。
では、『イソップ物語』の中から、有名な『北風と太陽』
のお話を読みます。この『北風と太陽』の裏側にも、人間
として大切なイソップの教えが隠されています。それはど
んなことでしょうか。考えながらお話を聞いてください。
(『北風と太陽』のお話を読む。あらすじ →ある時、北風
と太陽はどちらの力が強いか争い、道を歩いている人間の
上着を脱がせた方が勝ちだと決めました。最初に北風が激
しく吹き付けると、人間は吹き飛ばされないように上 着を
しっかり押さえ続けたので、北風は疲れ果ててしましまし
た。次に太陽は人間を温かく照らし、その光を更に強めま
した。人間はすっかり暑くなって自分から上着を脱ぎました。こうして太陽は北風に勝ちまし
た。)
さて、このお話は北風と太陽の力比べお話ですが、こ
のお話の裏側に隠された、イソップの大切な教えは何だ
か分かりますか? 何か分かった人、気がついた人は、ま
た私に話してくださいね。終わります。
日本人なら誰でも知っている『イソップ童話』ですが、
最近はこういう『古典的』な読み物は小学生に人気がな
く、あまり読まれていないようです。しかし、長い間日
本人が大切にしてきた文化を知ってほしいいと思い、話
してみました。
(文責
浅川小学校長
大久保 英幸)
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