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放射線システムの現状と展望

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放射線システムの現状と展望
富士時報
Vol.77 No.5 2004
放射線システムの現状と展望
河野 悦雄(こうの えつお)
まえがき
図1 放射線計測器の生産高の実績と今後の予測
1895 年にドイツの科学者レントゲンが X 線を発見して
250
総合機器
放射線モニタ
放射線応用機器
その他
から 100 年以上が経過し,その間放射線は理工学分野,医
学分野において利用が進められてきた。工業において放射
線計測技術が応用されたのは,主として放射線の物質透過
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能力を利用したものであり,鉄鋼や紙・フィルムなどの製
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造ラインに組み込まれて,対象物の厚さや液面を非接触か
用されてきた。近年,鉄鋼・化学繊維などの生産の海外移
転が進んだことや海外を含めた生産量が伸びないことから
放射線応用計測器の需要は低下傾向が継続している。
一方,放射線モニタは,原子力発電所・原子力関係研究
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つ高精度で迅速に計測する厚さ計や鋳鉄レベル計として利
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生産高(億円)
特
集
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機関と大学・病院・薬品工業などラジオアイソトープ利用
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施設に納入されている。原子力発電所の建設が始まると放
射線モニタリング機器としての需要が増加し,次第に放射
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線機器市場の大部分を占めるようになってきた。病院にお
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ける放射線診断装置の導入が進んでおり,患者に投与する
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医療用放射性同位元素の使用・管理に合わせて放射性排水
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処理設備とともに放射線モニタの設置が進められている。
図1に
(社)
日本電気計測器工業会で作成した放射線計測
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’
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98 ’
99 ’
00 ’
01 ’
02 ’
03 ’
04 ’
05 ’
06 ’
07
予測
(年度)
器の生産高の実績と今後の予測を示す。放射線モニタの需
要は,原子力発電所の新規建設計画に大きく依存しており,
建設計画の延期が市場規模に影響している。
が使われている。病院における検査にラジオアイソトープ
放射線診断装置の利用が増加しており,放射性同位元素を
放射線システムの現状
体内投与された患者が環境モニタリング装置に近づいたり,
放射性元素運搬車がそばを通過するなどでモニタの指示値
放射線モニタは,環境放射線モニタリング,個人線量モ
ニタリング,表面汚染モニタリング,放出放射性物質モニ
タリング,エリアプロセスモニタリングに分類される。
の変動する機会が増えるようになってきた。最近では,低
レンジモニタにエネルギースペクトル測定機能を持たせて,
通常の測定状況下では予想されないような指示変動がある
環境放射線モニタリングの測定対象は空間γ線線量率,
場合に放射線源の特定ができるようにしている空間γ線モ
ガス状放射性物質濃度および空気中浮遊放射性物質濃度で
ニタリング機器が増えている。この機能と相まってエネル
ある。空間γ線線量率測定には,バックグラウンド線量率
ギー特性補償方式は,計数精度のよいディジタルエネル
から 10 µSv/h までの低レンジモニタと,10 µSv/h から 10
ギー荷重補正になってきている。
mSv/h まで測定する高レンジモニタがある。放射線検出
施設内外の定点連続γ線モニタリングの積算線量測定に
器は NaI(Tl)シンチレーション検出器と球形加圧電離箱
おいては,素子の加熱など測定に関係した処理が必要とな
河野 悦雄
放射線機器の開発・設計,放射線
モニタリングシステムのエンジニ
アリング業務に従事。現在,富士
電機システムズ(株)e- ソリュー
ション本部放射線システム統括部
長。電気学会会員。
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富士時報
放射線システムの現状と展望
Vol.77 No.5 2004
る熱ルミネセンス線量計などのパッシブ型線量計から線量
の時間変化が履歴として記録できる電子式線量計への移行
技術動向
が進んでいる。
個人線量モニタリングの外部被ばく線量測定では,γ
放射線モニタリング機器には高い信頼性が要求される。
線・β線・中性子が測定できる電子式線量計が実用化され
今後は,小型軽量化・低価格化・長寿命化・高信頼化を目
て線量記録用線量計として使用されるようになってきた。
指して技術開発が進められていく。
特にγ・β線量測定は近い将来,電子式線量計に置換され
放射線検出器については,ガス入り計数管などの有寿命
ていく。線量計と線量リーダとの通信は,赤外線通信から
放射線検出器やパッシブ型検出器は,小型化・軽量化が可
次第に無線通信に移行しており,近距離通信によって線量
能な半導体検出器に置き換えられていく。半導体素子の中
計を作業服などのポケットに着用した状態でのデータ通信
でもシリコン半導体は,常温で安定して動作し,かつ比較
が可能となりつつある。
的人体組織に近い成分を持っているので線量測定に適した
表面汚染モニタリングは,測定対象物に対応して,全身
表面モニタ,物品モニタ,ランドリモニタなどがある。広
素子であり,主要な放射線検出素子として今後も使用され
ていく。
い範囲を短時間で測定することから放射線検出器には,β
核燃料再処理施設や加速器施設の建設が進んでおり,こ
線検出用のプラスチックシンチレーション検出器が使われ
れらの施設では中性子線量計測が重要になってくる。特に
ている。
加速器施設では測定対象とする中性子のエネルギーが 10
エリアプロセスモニタリングに使用されるダストモニタ
MeV を超過し,高エネルギーで低下する中性子検出器の
では, 1 台の放射線検出器でβ線とα線を同時・個別に検
感度を向上させる物質を従来の減速材に加えるなどの新し
出できる放射線検出器が採用されて,ラドン・トロン娘核
い中性子検出器の開発が進められていく。
種などの天然放射性同位元素から放出される放射線の影響
を低減できるようになってきた。核燃料取扱施設では,α
あとがき
線のエネルギー分別ができる大面積の半導体検出器を使い,
プルトニウムの分離測定ができるダストモニタが導入され
ている。
富士電機としては,主として半導体放射線検出器を搭載
し,さまざまな測定条件に最適な特性を持った各種放射線
モニタリング機器の製品化を進めていく所存である。
357(51)
特
集
2
*本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する
商標または登録商標である場合があります。
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