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再評価説明資料
平成21年7月1日
直轄地すべり対策事業 高知三波川帯地区
再評価説明資料
(平成21年度第1回:第三者委員会)
目 次
1.事業概要
(1)地区の概要 --------------------------------------------- 1
(2)主要工事計画 ------------------------------------------- 4
(3)事業の経緯 --------------------------------------------- 4
(4)地すべり被害の状況 -------------------------------------- 7
(5)地すべり防止区域及び地域外被害想定地域 ------------------ 10
2.評価項目
(1)事業の進捗状況 ----------------------------------------- 11
(2)社会情勢の変化
①人口 ----------------------------------------------- 13
②農家人口 ------------------------------------------- 15
③耕地面積 ------------------------------------------- 16
④農業産出額 ----------------------------------------- 17
⑤経済的条件について --------------------------------- 18
⑥農業活動の現状及び今後の推進の方向 ----------------- 20
(3)事業計画の重要な部分の変更の必要性の有無 --------------- 22
(4)費用対効果分析の基礎となる要因の変化 -------------------- 24
(5)事業コスト縮減の可能性 ----------------------------------- 26
3.関係団体の意向 ---------------------------------------------- 27
1.事業概要
(1)地区の概要
高知三波川帯地区は、高知県北東部の地すべり分布が極めて高い四国山地のほぼ中
央部、長岡郡大豊町(ながおかぐんおおとよちょう)にある。大豊町は、米、冷涼野
菜、ゆずのの栽培が盛んであり、吉野川の川下り(ラフティング)や梶ヶ森の山の散
策が楽しめる人口約5,200人の自然豊かな農村地域であり、自然条件では年間降雨量
3,000mm近くに及ぶ多雨地帯に位置している。
図−1 大豊町の位置図
大豊町の風景
地質は、四国を縦断する中央構造線と御荷鉾(みかぶ)構造線に挟まれた「三波川
帯」に属しており、本地区の地すべりは、この2本の構造線の影響を強く受けて地層
が脆弱化し、深部まで断層や亀裂の発達した「破砕帯」が地下水の通り道となり、地
層が深部まで著しく風化することに起因している。
図−2 四国の地質構造
1
図−3 高知三波川帯地区 位置図
本地区の「中村大王上(なかむらだいおうかみ)区域」、「桃原(ももはら)区域」は昭和36年に、「西桃
原(にしももはら)区域」は昭和53年に地すべり防止区域として指定され、その後高知県により地すべ
り防止工事が進められてきたが、調査の進捗に伴い、同3区域とも、大規模な深層地すべりが想定さ
れ地すべり防止工事の規模が著しく大であること、高度な地質の調査・解析を相互に検証しつつ、大
規模な地下水排除を行う対策工に高度な技術を必要とすることから、地すべり等防止法第10条第1
項に基づき、平成11年度から農林水産省における直轄事業として一体的に実施している。
2
3
(2)主要工事計画
地すべり対策工は大きく、①抑制工、②抑止工の2種類に分けられる。
①抑制工
地すべり活動を促す要因(地下水等)を
除去・軽減することにより、地すべり活動
を抑制するもの。
図−4 抑制工概念図
②抑止工
地すべりに対する抵抗力を付加することによ
り、地すべり活動を抑止するもの。
図−5 抑止工概念図
本地区では、深部の大規模な地すべりと、浅層の小規模な地すべりを防止する目的で、抑制
工及び抑止工を計画・実施している。
表−1 高知三波川帯地区における主要工事内容(平成20年度ベース)
地すべり防止工事
工 種
規格・構造等
箇所・路線数
承水路工
コンクリート二次製品他
2路線
排水路工
3面張水路
12路線
抑 制 工
水抜きボーリング工 φ66mm(削孔径)
152箇所
集水井工
φ3,500mm
43基
排水トンネル工
3rほろ型 2r=2.5m
4路線
φ90mm(削孔径)∼
アンカー工
52箇所
鋼管杭工
φ216.3mm∼
抑 止 工
2箇所
シャフト工
φ3,500mm
2箇所
工事数量
805m
5,342m
23,945m
43基
1,780m
1,136本
252本
2,013m
(3)事業の経緯
平成11年2月25日 地すべり防止工事基本計画書の提出
平成11年度(前半) 全体実施設計
平成11年度(後半) 事業着工
平成15年10月27日 中村大王上区域の一部追加
平成15年12月12日 中村大王上区域の一部追加に係る地すべり防止工事基本
計画書の提出
4
図−6 一般計画平面図
5
(参考)地すべりの機構解析の結果
高知三波川帯地区の地すべりは、大小いくつかの地すべりブロックにより構成されているが、
中でも、中村大王上区域には1つ、桃原区域には1つの大規模な地すべりブロックの存在が既
往調査結果により確認されている。(機構解析については、調査結果等により、定期的に、学識
経験者の意見を踏まえて、見直しを行っている。)
図−7 高知三波川帯地区の地すべりブロック図
表−2 高知三波川帯地区の地すべりブロックの概要
区 域 名
中村大王上
桃原
地すべりブロック名
B
C−1
730
幅(m)
390
700
長 さ(m)
570
最大深度(m)
70
50
地すべり体積(万m3)
400
1,490
6
西桃原
A−1
290
400
50
170
(4)地すべり被害の状況
中村大王上区域、桃原区域、西桃原区域については、古くから地すべり活動があり、幾
度となく被害が発生しているが、直轄事業着手以前(平成11年度)については、資料が
十分に残っていないため、詳細が不明のものが多い。
言い伝えとして、 桃原地区では昔、七日七夜大地がすべり、土石流が吉野川に流出
したことで、今も吉野川真ん中に島状に大きな石が残っており、それを桃原島と呼んでい
ることや、中村大王上地区では、地すべりにより吉野川支流穴内川に流出した舌部は、
昭和の初めまで水田の沈下が続き、丸太の上で表土を耕し、田植えをしたことがあると
いうそれぞれ古老の話がある。
直轄事業着手以来現在まで、大きな地すべり被害は確認されていないものの、地すべ
り活動により人家、道路等の変状が断続的に続いている。
図−8 被害状況写真の位置図
7
○地すべり被害の状況写真
①農地の変状
④家屋の変状(開口亀裂)
②家屋の変状
⑤家屋の変状(地盤沈下)
③外壁の変状
⑥道路擁壁の変状
8
○地すべり被害の状況写真
(参考)平成14年9月に本地区の近隣で発生した地すべりによる農家、農地の被災状況
9
(5)地すべり防止区域及び地域外被害想定地域
表−3 地すべり防止区域と地域外被害想定地域
区 分
基本計画
(単位:ha)
耕 地
田
畑
樹園地
地すべり防止区域
(3区域)
19.20
31.73
9.60
地域外被害想定地域
14.10
28.10
28.10
計
33.30
59.83
地すべり防止区域
(3区域)
14.11
12.14
5.33
地域外被害想定地域
19.05
24.90
計
33.16
37.04
計
60.53
林地
宅地
採草放
合計
牧地
92.47
5.00
2.40 160.40
70.30 230.70
41.80
49.60 392.40
37.70 130.83 323.17
46.80
52.00 552.80
31.58 127.19
5.00
2.40 166.17
0.39
44.34 322.08
97.26
49.60 513.28
5.72
75.92 449.27 102.26
52.00 679.45
平成11年度
今回再評価
平成21年度
地すべり防止区域及び地域外被害想定地域の変化について
平成15年10月に、中村大王上地区で地すべり防止区域5.77haの追加指定が行われたことにより、
3地区全体の地すべり防止区域面積は、160.40+5.77=166.17haとなっている。
また、今回再評価時点の最新の地すべりブロックデータに基づき地域外被害想定地域を再設定し
た結果、120.88haの増加が確認され、392.40+120.88=513.28haとなった。
(参考)地すべり地域及び地すべり防止区域
地すべり等防止法第3条第1項に定義される地すべり防止区域とは、現に地すべりの発生している
区域又は地すべりの発生するおそれの極めて大きい区域(地すべり区域)及びこれらに隣接する区
域のうち、地すべりを助長若しくは誘発、又はそのおそれの極めて大きい区域(隣接する区域)を合
わせた地域(地すべり地域)で公共の利害に密接な関連を有するものとして指定された地域をいう。
10
2.評価項目
(1)事業の進捗状況
事業着工以来、排水路工、水抜きボーリング工、集水井工等の地すべり防止工事を
順次進めてきており、平成20年度末の進捗状況は、事業費ベースで62.8%である。
表−4 事業の進捗状況(平成20年度ベース)
総 事 業 費 H20年度まで
13,000,000
8,169,734
進捗率
62.8%
11
H20年度 H21年度以降
600,000
4,830,266
(単位:千円)
H21年度
600,000
図−9 工事進捗状況図
12
(2)社会経済情勢の変化
本地区の関係町である大豊町における近年の社会経済情勢の変化は、以下のとおりであ
る。
①人口
大豊町は、四国山地中央部の山間地域に位置する厳しい立地条件から、都市部への労働
力の供給地域として若年層を中心とする人口の流出が続き、平成7年7,323人だった人口
が、平成17年には5,851人と大幅に減少(▲20.1%)、その結果、高齢化が進み、平成17年の
65歳以上人口の割合が49.4%に達している。
表−5 大豊町の人口の推移
人口の推移
年 次
増減数
総数
平成7年
平成12年
平成17年
7,323
6,650
5,851
(100.0)
▲ 673 (90.8)
▲ 799 (79.9)
(単位:人)
左のうち65歳以上の人口の推移
65歳以上の
増減数
総数
占める割合
2,665
(100.0)
36.4%
2,934
269 (110.1)
44.1%
2,891
▲ 43 (108.5)
49.4%
【資料:住民基本台帳】
表−6 高知県全体の人口の推移
人口の推移
年 次
増減数
総数
(単位:人)
左のうち65歳以上の人口の推移
65歳以上の
増減数
総数
占める割合
平成7年
816,704
(100.0) 167,967
(100.0)
20.6%
平成12年
813,949 ▲ 2,755 (99.7) 191,729
23,762 (114.1)
23.6%
平成17年
796,292 ▲ 17,657 (97.5) 206,375
14,646 (122.9)
25.9%
【資料:国勢調査報告】
注1) ( )は、平成7年を100とした指数
大豊町の人口の推移
平成7年
4,658人
平成12年
2,665人
3,716人
平成17年
2,934人
2,960人
0人
2,891人
7,323人
6,650人
5,851人
4,000人
8,000人
12,000人
高知県の人口の推移
平成7年
648,737人
平成12年
167,967人
622,220人
平成17年
191,729人
589,917人
0人
206,375人
400,000人
816,704人
813,949人
796,292人
800,000人
65歳未満
65歳以上
13
計
1,200,000人
(参考)
本地区の人口及び世帯数
表−6−1 事業地区の人口及び世帯数の推移
大豊町全体
中村大王地区
年 次
人 口
世帯数
人 口
世帯数
平成16年 6,005 (89.1) 2,840 (94.9) 189 (96.9) 64 (90.1)
平成17年 5,851 (86.8) 2,803 (93.6) 187 (95.9) 64 (90.1)
平成18年 5,660 (84.0) 2,753 (92.0) 177 (90.8) 62 (87.3)
平成19年 5,478 (81.3) 2,718 (90.8) 174 (89.2) 62 (87.3)
平成20年 5,311 (78.8) 2,672 (89.2) 167 (85.6) 61 (85.9)
(単位:人,戸)
桃原地区
人 口
世帯数
73 (85.9) 40 (97.6)
69 (81.2) 38 (92.7)
68 (80.0) 38 (92.7)
65 (76.5) 39 (95.1)
64 (75.3) 39 (95.1)
【資料:住民基本台帳】
注1) ( )は、平成11年を100とした指数
大豊町全体
系列2
3,000
系列1
7000
4000
人口(人)
5000
1,000
3000
0
2000
H16
H17
H18
年次
H19
中村大王地区
H20
系列2
系列1
150
40
100
20
50
0
人口(人)
200
60
0
H16
H17
H18
年次
H19
桃原地区
H20
系列2
系列1
50
100
40
80
30
60
20
40
10
20
0
0
H16
H17
H18
年次
14
H19
H20
人口(人)
世帯数(戸)
80
世帯数(戸)
世帯数(戸)
6000
2,000
②農家人口
農業従事者の高齢化や、若年層の都市部への流出による担い手の減少により、平成7年
3,070人だった農家人口が、平成17年には2,335人と大幅に減少(▲23.9%)、平成17年の65歳
以上農家人口の割合が54.8%に達しており、農業従事者の高齢化等による農業生産の継続が
深刻な問題となっている。
表−7 大豊町の農家人口の推移
農家人口の推移
総農家
年 次
数(戸) 総数
増減数
平成7年
平成12年
平成17年
注1)
注2)
(単位:人)
左のうち65歳以上の農家人口の推移
65歳以上の
増減数
総数
占める割合
1,068 3,070
(100.0) 1,203
(100.0)
39.2%
950 2,543 ▲ 527 (82.8) 1,243
40 (103.3)
48.9%
940 2,335 ▲ 208 (76.1) 1,280
37 (106.4)
54.8%
【資料:農業センサス】
( )は、平成7年を100とした指数
平成17年の65歳以上の農家人口は、総農家の統計値が無いことから、
販売農家の65歳以上の占める割合(54.8%)により算定。
農家人口の年齢構成の推移
15歳未満
年次
平成7年
9.3
5.9
平成12年
6.5
6.8
平成17年
5.3
7.8
0%
10%
15∼29
16
50∼64
65歳以上
29.6
14.3
39.2
23.4
10.8
20%
30∼49
48.9
21.3
30%
54.8
40%
50%
60%
70%
80%
90%
注1) 平成7年、平成12年は総農家、平成17年は販売農家による。
15
100%
③経営耕地面積
立地条件的な制約から生産性が低く高齢者を中心とする零細規模農家が大半を占める条件
下で、担い手の減少による農地の荒廃により、総農家の耕地面積は平成7年の390haから平成
17年には323ha(▲17.2%)へと減少している。
表−8 大豊町の耕地面積の推移
耕 地 面 積
区分
年次
計
田
平成7年
390
(100.0)
221
(95.7)
総
農
平成12年
333 (85.4)
175 (75.8)
家
平成17年
323 (82.8)
(.0)
(単位:ha)
備 考
畑(樹園地・牧草地含む)
169 (100.0)
158 (93.5)
(.0) 内訳の記載が無く不明
【資料:農業センサス】
注) ( )は、平成7年を100とした指数
表−9 大豊町の経営耕地規模別農家数の推移
(単位:戸)
0.3ha
0.3∼
0.5∼
1.0∼
1.5∼
2.0ha 自給的
総農家数
年次
未満
0.5ha
1.0ha
1.5ha
2.0ha
以上
農家
平成7年
13
322
209
30
3
2
489
1,068 (100.0)
平成12年
950
(89.0)
19
268
189
19
2
2
451
平成17年
940
(88.0)
13
186
160
32
3
2
544
【資料:農業センサス】
注) ( )は、平成7年を100とした指数
経営耕地面積
450
390
面積(ha)
400
350
333
323
平成12年
年次
平成17年
300
250
200
平成7年
総農家
16
④農業産出額
大豊町は、米、冷涼野菜、ゆずが主要作物であり、農業産出額は平成14年の492百万円か
ら、平成18年には420百万円へと減少(▲72百万円)しているものの、平成16年から平成18年
の最近3カ年については、年々微増傾向にある。
表−10 大豊町の農業産出額の推移
(単位:百万円)
畜 産
加工
種苗・
農産
雑穀・
工芸農
いも類 野菜 果実 花き
苗木・ 養蚕
豆類
作物
物
その他
耕 種
年次
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
合計
492
504
388
410
420
計
米
474
482
350
390
400
123
133
101
120
120
3
3
1
0
0
14
23
20
20
20
175
148
88
120
130
94
108
87
60
60
41
15
9
12
6
41
17
9
20
2
35
11
7
14
24
40
x
x
20
0
40
10
20
10
0
【資料:高知農林水産統計年報】
注) 平成17年、18年は統計値の金額単位が千万円に変更となったため、
計及び合計値と集計値は整合しない。
600
農業粗生産額(百万円)
500
400
300
200
100
0
平成14年
平成15年
耕種
平成16年
年次
畜産
17
加工農産物
平成17年
平成18年
⑤経済的条件について
平成17年度における就業者数は2,324人で、その内訳は第1次産業586人(25.2%)、第2次産
業660人(28.4%)、第3次産業1,077人(46.3%)である。
それに対し、平成17年度における産業別総生産額は、第1次産業1,197百万円(7.6%)、第2次
産業5,170百万円(32.9%)、第3次産業10,073百万円(64.0%)である。
この結果から、1人当たりの生産額を見ると、第1次産業204万円、第2次産業783万円、第3
次産業935万円となり産業間で大きな格差が生じている。特に、第1次産業において生産額が
極端に低いことは、高齢者を中心とする零細規模農家が大半を占めることが要因となってい
る。
第1次産業の生産額は低いものの、第1次産業における就業者数の割合が約1/4を占めてお
り、第1次産業は基幹産業として重要な位置であることから、第1次産業の活性化が大豊町に
とって重要となっている。
表−11 大豊町の産業別就業者数
(単位:人)
第1次産業
年次
第2次産業
第3次産業
鉱業 建設業 製造業
卸売小
電気ガ 運輸通
金融保 不動産 サービ
売業飲
公務
ス
信業
険業
業
ス業
食店
総数
農業
林業
803 80
884
694 63
757
546 39
586
平成7年 3,551
平成12年 3,106
平成17年 2,324
漁業
1
(24.9%)
0
(24.4%)
1
(25.2%)
0 751 485
(34.8%)
1,236
0 700 356
1,056
(34.0%)
0 352 308
660
(28.4%)
9 167 447
1,431
7 156 405
1,293
1 87 323
1,077
43
1 596 168
(40.3%)
22
2 551 150
(41.6%)
20
1 543 102
(46.3%)
分類
不能
の
産業
0
0
1
【資料:国勢調査報告】
注) ( )は、各産業別就業者の全体に占める割合
4,000
3,500
就業者数(人)
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
平成7年
平成12年
年次
第1次産業
18
第2次産業
平成17年
第3次産業
表−12 大豊町の産業別総生産額
(単位:百万円)
第1次産業
第2次産業
第3次産業
その他
年次
合計
総生産額 割合 総生産額 割合 総生産額 割合 総生産額 割合
平成7年
2,315 10.8%
9,005 41.9%
10,604 49.3%
-433 -2.0%
21,491
平成12年
845 3.6%
12,837 54.2%
10,671 45.1%
-668 -2.8%
23,685
平成17年
1,197 7.6%
5,170 32.9%
10,073 64.0%
-704 -4.5%
15,736
【資料:市町村経済統計報告】
注) その他は控除額で、輸入品に課される税・関税、総資本形成に係る消費税、
及び帰属利子。
表−13 1人当たりの産業別総生産額
(単位:万円/人)
第1次産業
第2次産業
第3次産業
年次
平成7年
262
729
741
平成12年
1,216
825
112
平成17年
204
783
935
注) 計算式 各産業別総生産額÷産業別就業者数
19
⑥農業活動の現状及び今後の推進の方向
ア 農業活動の現状
大豊町では、高齢者等が生産する農産物をアンテナショップ等で販売することにより、生活
のゆとりとして楽しむ高齢者の生きがい作りと農作業の受委託の推進による優良農地の保全
を目指した「ゆとり農業」の確立を図ってきた。
平成8年には、第3セクター「㈱大豊ゆとりファーム」を設立し、JA等及び農家との連携によ
る新たな地域農業システムを確立するとともに、「ゆとり農業」を推進し、併せて農地を守るこ
とが環境保全並びに定住環境を育むとの視点に立った施策を展開してきた。
さらに、平成16年には、構造改革特別区域法の特例措置の適用により更なる地域農業の
活性化や農村地域の個性ある発展を目指してきた。
(「㈱大豊ゆとりファーム」は、平成15年度農政功績者表彰を受賞(中国四国農政局主催)
した。)
高知市内にある大豊ゆとりファームのアンテナショップ。新鮮な野菜等が身近に手に入るの
で、多くの買い物客に利用されている。
大豊ゆとりファームによる田植え(農作業受託)の様子。地域の過疎・高齢化が進む中で、
担い手の確保や遊休農地の解消等に向けて取り組んでおり、地域の農家からも期待されて
いる。
今後、更に過疎・高齢化の進行に伴う担い手の不足、労働力の低下が進む中で、どのよう
な対策を実施し、地域活性化に繋げていくかが今後の大きな課題となっている。
20
イ 今後の推進の方向
「㈱大豊ゆとりファーム」は、将来にわたり大豊町の地域農業を支えていく重要な役割を担っ
ている。このため更なる経営安定化に向け、水稲の農作業受託以外に、地域の特産であるゆ
ずの収穫代行や碁石茶の製造に取り組んでいる。
また、栽培された米、新鮮な野菜や特産品を販売する直販市「お山の市場」を平成20年10
月から毎月1回開催しており、町内のみならず周辺地域の買い物客からも好評を得ている。
直販市「お山の市場」の様子
「大豊の碁石茶」全国流通開始の報告会(県庁) 尾
知事から高知県地場産業賞の賞状が授与
大豊特産の碁石茶は、近年の健康ブームによりマスコミ等にも取り上げられ、注目を集めて
いる。
平成18年に、伝統製法を受け継いでいる碁石茶生産組合が(財)食品産業センターによる
地域ブランド表示基準制度で「本場の本物」に認定。
平成20年に、東京の販売会社と販売契約を締結し、全国の有名ドラッグストアや百貨店等
に販売が開始され全国展開が実現。
平成21年に、地場産業の振興の貢献度や販売実績を上げた製品として認められ、(財)高
知県産業振興センターから高知県地場産業賞を受賞。
21
(3)事業計画の重要な部分の変更の必要性の有無
これまで実施してきた排水トンネル工等の効果により、地すべりの安定が図られたブロックもあるこ
とから、シャフト工の取りやめ等、工事の見直しについて検討しているところである。
シャフト工は基本計画の主要計画に位置づけられた工種であるとともに、基本計画事業費(14,500
百万円)の約2割(35億円)を占めることから、シャフト工の取りやめ等を行った場合には基本計画の
変更に該当する。
最終的には、これまでに実施した対策工の効果の検証と地すべり対策技術検討委員会の意見・助
言を踏まえたうえで地すべりの概成を判断することとなるが、平成22年度に地すべり等防止法に基
づく基本計画の変更手続きを行う方向である。
(参考)
農地保全に係る地すべり等防止事業実施要綱
第3の2 都道府県知事は、前項の規定により提出した地すべり防止工事基本計画の内容につ
いて、次の各号のいずれかに該当する変更をしようとする場合には、ただちに当該変更に係る地
すべり防止工事基本計画書を地方農政局長を経由して、農林水産大臣に提出するものとする。
(1)主要な地すべり防止工事又は地すべり防止施設の種類位置又は規模の著しい変更。
(2)地すべり防止工事に要する費用の概算額の増減が20パーセント以上に及ぶ変更。ただし、労
賃又は物価の変動による場合を除く。
①主要工事計画の変更
これまで実施してきた排水トンネル工等による地すべり抑制効果により、基本計画の主要計画
に位置づけられたシャフト工の取りやめを予定している。
表−14−1 現基本計画における主要工事内容
地すべり防止工事
工 種
承水路工
排水路工
抑 制 工
水抜きボーリング工
集水井工
排水トンネル工
アンカー工
抑 止 工
鋼管杭工
シャフト工
規格・構造等
箇所・路線数 工事数量
363m
コンクリート二次製品他
2路線
3面張水路
3,947m
9路線
φ66mm(削孔径)
24,540m
70箇所
φ3,500mm
9基
9基
3rほろ型 2r=2.5m
1,720m
4路線
φ90mm(削孔径)∼
3,382本
34箇所
φ216.3mm∼
38本
1箇所
φ3,500mm
2,278m
2箇所
表−14−2 平成21年度時点における主要工事内容
地すべり防止工事
工 種
規格・構造等
箇所・路線数 工事数量
承水路工
コンクリート二次製品他
805m
2路線
排水路工
3面張水路
5,342m
12路線
抑 制 工
水抜きボーリング工
φ66mm(削孔径)
23,945m
152箇所
集水井工
φ3,500mm
43基
43基
排水トンネル工
3rほろ型 2r=2.5m
1,780m
4路線
アンカー工
φ90mm(削孔径)∼
1,136本
52箇所
抑 止 工
鋼管杭工
φ216.3mm∼
252本
2箇所
シャフト工
φ3,500mm
2,013m
2箇所
22
表−14−3 基本計画見直し(案)における主要工事内容
地すべり防止工事
工 種
規格・構造等
箇所・路線数 工事数量
承水路工
コンクリート二次製品他
1,100m
5路線
排水路工
3面張水路
5,000m
12路線
抑 制 工
水抜きボーリング工
φ66mm(削孔径)
21,000m
129箇所
集水井工
φ3,500mm
35基
35基
排水トンネル工
3rほろ型 2r=2.5m
912m
2路線
アンカー工
φ90mm(削孔径)∼
800本
25箇所
抑 止 工
鋼管杭工
φ216.3mm∼
97本
3箇所
③事業費の増減
平成21年度における国営総事業費は13,000百万円であり、現計画の14,500百万円から物価の
変動、工法変更等の要因により1,500百万円の減となっているが、基本計画の変更要件には達し
ていない。
表−15−1 平成21年度時点の事業費の増減
(単位:百万円)
事 業 費
増 減 の 内 訳
現基本計画
今回再評価
(平成11年度)
(平成21年度)
14,500
13,000
増 減
▲ 1,500
物価変動
事業量
工法変更
その他
▲ 1,210
0
▲ 290
(事業量変更+工法変更その他)/現計画の総事業費×100
=290百万円/14,500百万円×100=▲2.0%
シャフト工の取りやめ等を行えば、概算額の増減が20パーセント以上に及ぶ変更となり基本計画の
変更に該当する。
表−15−2 平成22年度見込みの事業費の増減
(単位:百万円)
事 業 費
増 減 の 内 訳
現基本計画
基本計画見直し(案)
(平成11年度)
(平成22年度)
14,500
概算
9,400
増 減
▲ 5,100
物価変動
事業量
工法変更
その他
▲ 1,210
0
▲ 3,890
(事業量変更+工法変更その他)/現計画の総事業費×100
=3,890百万円/14,500百万円×100=▲26.8%>▲20%
23
(4)費用対効果分析の基礎となる要因の変化
地すべり防止区域及び地域外被害想定区域内において、農地面積は、平成11年の130.83haから平
成21年の75.92haへと減少(▲54.91ha)、農家については地域外被害想定地域の拡大に伴い平成11年
の204戸から平成21年の419戸へと増加(+215戸)した。
① 農地、農業用施設の変化
表−16 農地、農業用施設の変化
(単位:ha)
耕 地
区 分
田
畑
樹園地
計
林地
宅地
採草
放牧
地
主 な 農 業 施 設
合計 排水路 承水路 農道
基本計画
地すべり防止
区域(3区域)
19.20 31.73
平成11年度
地域外被害想
定地域
14.10 28.10 28.10 70.30 230.70 41.80 49.60 392.40
①
計
今回再評価
地すべり防止
区域(3区域)
14.11 12.14
5.33 31.58 127.19
平成21年度
地域外被害想
定地域
19.05 24.90
0.39 44.34 322.08 97.26 49.60 513.28
②
計
33.16 37.04
増 減
②−①
9.60 60.53 92.47
5.00
(m)
(m)
(m)
(m)
(戸)
25
39
-
105
165
33.30 59.83 37.70 130.83 323.17 46.80 52.00 552.80 4,841 4,258 10,520
130
204
-
40
1,645
-
379
5.72 75.92 449.27 102.26 52.00 679.45 6,929 3,529 3,029
-
419
- 126.65 2,088 ▲729 ▲7,491 ▲130
215
5.00
▲0.14 ▲22.79 ▲31.98 ▲54.91 126.10 55.46
2.40 160.40 4,841 4,258 10,520
農道 農家数
(橋梁)
-
2.40 166.17 6,808 3,529 1,384
121
※1 再評価の農地面積及び農家数は、図測・積上げ(H20)による。
※2 農地面積の増減分は、林地面積で処理している。
24
-
-
② 被害軽減額の算定
高知三波川帯地区で大規模な地すべりが発生すると、地すべり区域及び隣接する地域、地
すべり土塊の堆積する区域の人家や道路、農地・農業施設等に被害を与える。地すべり土塊
の堆積する区域には、病院、学校、国道32号線、JR土讃線があり、それらが被災した場合、
住民のみではなく、大豊町・高知県にとっても大きな打撃となる。
よって、便益については、次の事項を算出した。
ア 地すべり区域内の土砂被害軽減効果
イ 隣接する区域の土砂被害軽減効果
ウ 地すべり土塊の堆積域における土砂被害軽減効果
エ 吉野川、穴内川(あなないがわ)を堰き止める地すべり土塊による浸水被害の軽減効果
なお、便益の算定手法は、治水経済調査マニュアル(国土交通省河川局)等に準じて算出し
た。
図−10 被害状況のイメージ図
25
(5)事業コスト縮減
コスト縮減については、これまで建設発生土の有効利用を図るなどしてコスト縮減対策を積極
的に行ってきている。
また、集水井工について、坑口の埋戻形状を現地地盤に合わせることにより、ブロック積等の
擁壁を施工しなくて済み、コスト縮減となった。さらに、集水井設置後による現地盤への影響も
最小限となり、地域環境に配慮した構造物となった。
表−17 コスト縮減に向けた取り組みの実績 (単位:千円)
全体工事費
縮減額
縮減率
年次
主 な 内 容
a
b
b/(a+b)
482,879
7,595
15
1.5% ○建設発生土の有効利用
791,687
13,596
16
1.7% ○ねじ式鋼管杭継手の採用他
882,080
71,295
17
7.5% ○ねじ式鋼管杭継手の採用他
2,323
238,533
18
1.0% ○集水ボーリングの施工方法の変更他
680,872
125,996
19
15.6% ○集水井の坑口形状の変更他
※集水井について、坑口形状の見直しを行いコストを削減
[従来方式]
[新 方 式]
26
3.関係団体の意向
高知県
高知三波川帯地区の農業・農村の安全と民生の安定のため、地すべりによる
不安を取り除き、安全と安心を確保すると共に、今後も県民の理解と協力を得
られるよう、より一層のコストの縮減、効率的な事業効果をあげるように努め
てください。
引き続き、地すべり機構の解明により対策を講じることが必要であり、事業
の継続を要望します。
大豊町
本町は、県下でも有数の地すべり多発地帯であり、54地区もの法律指定の
地すべり区域を有するなど、町内ほぼ全域が地すべり、急傾斜、土石流など何
らかの指定を受けており、急傾斜地に集落が点在する本町にとっては、梅雨時
の集中豪雨や台風シーズンにおける地域住民の不安は計り知れないものがあり
ます。
本町における直轄地すべり対策事業につきましては、平成11年に高知三波
川帯地区として事業着工以来、地すべりによる被害を防止し、又は軽減するた
め様々な抑制・抑止工法により、地域の安全度向上、更には国土保全にも大き
く寄与しており、平成16年には過去最多の台風上陸を記録した際において
も、これまでに地すべり対策工事が施された区域においては、多大な効果が実
証されております。地域住民はもとより、関係者一同その効果を完全なものと
するためにも、本事業の完全実施を強く望んでおります。
また、近年は様々な要因によって水源が枯渇する状況が発生しております
が、排水トンネルや集水井、排水ボーリングなどによって排出された水を有効
活用できるなど、地域にとって多大なご貢献をいただいております。
本町においては、過疎高齢化が進行する中において、集落を将来に渡って維
持していくためには優良農地の確保が必要不可欠であることから、平成8年に
は農作業の受託組織として第3セクターによる「株式会社大豊ゆとりファー
ム」を設立し、新たな農業の担い手としての活動を続けてきております。これ
までは、遊休農地を借り受けて水稲を中心に耕作を続けてきており、近年には
柚子の収穫や日本で唯一の完全発酵茶である碁石茶の製造に取り組むなど、遊
休農地の拡大防止を図るとともに、平成19年度からはこの第3セクター会社
の取り組みに共感し応援を頂ける方々を「大豊ふるさと応援団」として募集す
るなど、地域再生に向けて様々な取り組みにチャレンジしております。
中山間地域を取り巻く環境には厳しいものがありますが、近い将来に発生が
予想されている南海地震対策や地域の防災対策を推進する上においても当事業
は必要不可欠なものであり、この美しい農村環境を将来へ引き継ぐためにも、
直轄地すべり対策事業に対する地元関係者の期待は極めて大きいものがありま
す。
27
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