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第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 転入超過
第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 1 静岡市の現状 (1) 人口と女性の社会減 ①人口の推移 本市の人口は、国・県よりも 20 年早い 1990 年の 739,300 人をピークに人口減少に転じて います。2010 年には 716,197 人(1990 年比 3.1%減)となり、国立社会保障・人口問題研 究所の推計では、2040 年には 558,931 人となる見込みです。生産年齢人口も 1990 年の 519,833 人をピークに 2010 年には 447,624 人(1990 年比 13.9%減)に減少しています。 図1 静岡市の年齢階級別人口の推移と将来推計人口 単位:人 800,000 総人口 700,000 0~14歳 600,000 15~64歳 500,000 65歳以上 400,000 300,000 200,000 100,000 0 資料:総務省「国勢調査」 、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2013 年 3 月推計) 」 ②社会移動の状況 本市の社会移動を年齢別・性別に見ると、女性は 25~34 歳を除いて、64 歳まで一貫して 転出超過の状況にあります。 200 100 図2 (人) 35~39, 16 30~34, 40 -100 25~29, 82 15~19, 9 5~9, -45 10~14, -49 -200 20~24, -173 -300 40~44, 45~49, 50~54, 55~59, 0 -400 -35 -31 -38 -24 5歳階級別転入超過数 転入超過 45~49,24 5 35~39, 30~34, 39 25~29, 38 15~19, 32 5~9, -19 10~14, -26 20~24, -77 40~44, -28 -1 50~54, 55~59, -9 30~34, 1 25~29, 44 5~9, -26 10~14, -23 15~19, -23 20~24, -96 35~39, -9 40~44, -34 45~49, -35 50~54, 55~59, -10 -15 50~54, 18 25~29, 10~14, 3 5~9, -76 15~19, -55 20~24, -19 30~34, -39 35~39, -33 40~44, -33 45~49, -40 55~59, -6 女性 男女差 転出超過 -500 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 男女計 男性 資料:住民基本台帳人口移動報告(2010 年~2013 年の平均) (2) 女性の就労に関する状況 3 ①女性の有業率 本市の女性の有業率は、全国の傾向と同様に、結婚・出産・子育て期にあたる 30~40 代 において低くなる、いわゆるM字カーブを描いています。 (%) 図3-1 女性の年齢階級別有業率(H24 静岡市・静岡県・全国) 100 80 60 40 全国 静岡県 20 静岡市 0 15~ 19 20~ 24 25~ 29 30~ 34 35~ 39 40~ 44 45~ 49 50~ 54 55~ 59 60~ 64 65~ 69 70~ 74 75~ 全国 16.5 66.6 75.3 68.2 67.1 70.7 74.6 73.2 65.0 47.3 29.8 18.0 6.3 静岡県 17.6 73.5 72.9 67.3 70.1 74.7 80.1 76.7 68.9 54.6 37.8 21.0 7.7 静岡市 18.2 65.1 76.0 66.3 65.2 70.8 75.4 76.0 69.0 50.8 35.5 17.1 7.5 資料:平成 24 年度就業構造基本調査(総務省)から作成 また、平成 19 年の女性の有業率と比較すると、平成 24 年では若干低下がみられます。 (%) 図3-2 静岡市における女性の年齢階級別有業率(経年比較) 100 80 60 H19 40 H24 20 0 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~ H19 19.9 78.2 76.4 71.6 70.8 78.1 83.8 71.8 69.8 49.9 40.2 19.3 8.9 H24 18.2 65.1 76.0 66.3 65.2 70.8 75.4 76.0 69.0 50.8 35.5 17.1 7.5 資料:平成 24 年度就業構造基本調査(総務省)から作成 4 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 本市の男女の有業率を比較すると、女性は結婚・出産・子育て期の 30 代で大きく下回り、 40 代で少し上昇しますが、男性との差は開いたままです。 図3-3 (%) 静岡市における年齢階級別有業率(H24男女別) 100 80 60 男性 40 女性 20 0 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~ 男性 10.3 67.2 82.3 89.0 92.6 92.2 93.7 93.7 87.6 70.7 46.9 36.8 13.6 女性 18.2 65.1 76.0 66.3 65.2 70.8 75.4 76.0 69.0 50.8 35.5 17.1 7.5 資料:平成 24 年度就業構造基本調査(総務省)から作成 5 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ②就労形態と就労希望者 就業構造基本調査によると、男性は正規の職員・従業員の割合が高く、年齢が上昇するに つれ自営業主や会社などの役員の割合が高くなります。一方、女性は 20 代では正規の職員・ 従業員が多く、30 代で有業率が低下し、45 歳以上で有業率が回復しますが、以降はパート の割合が高くなります。 また、女性で働くことを希望しながら仕事についていない人は 36,000 人(男性は 10,600 人)おり、特に 25~44 歳の子育て世代の女性では 15,900 人(男性は 3,800 人)で、男性の 約4倍となっています。 有業者総数 156,600 人 アルバイト 12,300 人 自営業主 8,000 人 派遣社員 5,200 人 家族従業者 6,400 人 契約社員 5,800 人 会社などの役員 4,500 人 嘱託職員 1,800 人 3,400 人 正規の職員・従業員 56,500 人 その他 パート 52,700 人 就業希望者 36,000 人 (うち 25~44 歳女性は 15,900 人) 資料:平成 24 年度就業構造基本調査(総務省)より作成 6 (*就業希望者は無業の求職者と非求職者を含む。) 男性の年齢階級別従業上の地位、雇用形態(静岡市 ) 図4-2 100% 就業希望者 契約社員 90% 労働者派遣事業 所の派遣社員 80% その他 アルバイト 70% 嘱託 パート 60% 50% 正規の職員・従業員 40% 30% 会社などの役員 20% 自営業主 10% 0% 15 ~ 19 歳 20 ~ 24 25 ~ 29 有業者総数 自営業主 家族従業者 会社などの役員 正規の職員・従業員 パート 30 ~ 34 35 ~ 39 40 ~ 44 199,800 人 45 ~ 49 50 ~ 54 アルバイト 55 ~ 59 60 ~ 64 10,500 人 30,200 人 派遣社員 2,200 人 0人 契約社員 6,000 人 13,900 人 嘱託職員 2,700 人 その他 1,400 人 127,700 人 4,800 人 就業希望者 65歳以上 10,600 人 (うち 25~44 歳男性は 3,800 人) 資料:平成 24 年度就業構造基本調査(総務省)より作成 7 (*就業希望者は無業の求職者と非求職者を含む。) 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ③非正規雇用者の割合の推移(全国) 男女ともパート・アルバイト等の非正規雇用者の割合は上昇傾向にありますが、特に女性 はその割合が大きく上昇しており、平成 17 年には過半数を占めるに至っています。 図5 雇用者(役員を除く)の雇用形態別構成割合の推移(男女別) <女性> 0% 20% 昭和60年 26年 60% 60.9 92.6 3.7 平成7年 91.1 11.8 17年 12.3 26年 40.7 44.3 40% 昭和60年 35.5 43.3 20% 3.6 28.5 47.5 0% 80% 100% 67.9 平成7年 17年 40% <男性> 60% 80% 100% 3.3 4.1 5.2 3.7 8.6 82.3 10.5 78.2 9.1 11.3 正規の職員・従業員 パート・アルバイト その他(労働者派遣事業所の派遣社員,契約社員・嘱託,その他) 資料:平成 27 年版男女共同参画白書(内閣府) ④給与の男女格差の推移(全国) 一般労働者における所定内給与額の男女格差は、長期的に見て縮小傾向にあるものの、女 性の所定内給与額は男性の7割程度にとどまっています。 図6 男女間所定内給与格差の推移 (男性の所定内給与額=100) 74.0 80 74.8 74.4 68.7 60.2 71.372.2 72.2 60 40 男性一般労働者を100とした場合の女性一般労働者の給与水準 20 男性正社員・正職員を100とした場合の女性正社員・正職員の給与水準 0 平 成 元 5 10 15 20 25 26 27 (年) 資料:平成 28 年版男女共同参画白書(内閣府) 8 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ⑤管理的立場にある女性の状況 国勢調査の結果によると、 市内における管理的職業従事者に占める女性の割合は微増傾向 にあるものの、依然として低い状況にあります。また、他の政令指定都市や全国の平均と比 較しても低く、さらに伸び率も平均を下回っています。 図7 (%) 管理的職業従事者総数に占める女性割合 18.9 20 17.717.6 18 16.3 16 16.316.3 15.515.215.1 15.5 15.1 14.714.7 16 14.0 14.4 14.4 14 13.6 13.3 13 13 12.7 12.7 12.1 12.912.512.512.1 14 12.5 12.4 11.9 11.811.711.711.2 11.5 12 10.3 10.8 10.1 9.9 10.3 9.7 9.1 10 8 H17 6 H22 4 2 0 全 熊 大 京 北 福 広 岡 仙 名 神 札 堺 静 横 川 相 新 浜 千 さ 政 国 本 阪 都 九 岡 島 山 台 古 戸 幌 市 岡 浜 崎 模 潟 松 葉 い 令 市 市 市 州 市 市 市 市 屋 市 市 市 市 市 原 市 市 市 た 市 市 市 市 ま 平 市 均 資料:国勢調査より作成 ⑥管理職への昇進希望 管理職への昇進希望については、 「思う」女性が 7.2%で、男性の 35.0%より、大きく下 回っています。また、 「現在管理職である」女性も、男性の 21.9%を大きく下回り、男女で 差があります。 図8 全体(N=735) 18.0 男性(N=274) 女性(N=432) 管理職への昇進希望 68.2 35.0 11.7 2.2 40.9 7.2 21.9 5.3 2.1 85.4 0% 20% 思う 40% 思わない 60% 現在管理職である 資料:平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査 9 2.2 80% 100% 無回答 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ⑦女性が管理職への昇進を希望しない理由 管理職への昇進を希望しない理由としては、男女とも多いものは「管理職としての能力に 不安があるため」 、 「管理職になると責任が重いため」ですが、女性は「家庭との両立」、男 性は「価値観や人生感」を高順位に理由として挙げており、希望しない理由は男女で違いが あります。 図9 管理職への昇進を希望しない理由 38.4 管理職としての能力に不安があるため 20.5 仕事が忙しくなり家庭生活と両立が難しいため 34.1 自分の価値観や人生観とあわないため 23.2 9.5 ずっと一線で働きたいため 20.5 6.5 10.7 その他 10.3 0 無回答 0.8 0 女性(N=369) 40.1 28.6 管理職になると責任が重いため 男性(N=112) 45.3 20 40 60 (%) 資料:平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査 ⑧起業者の女性割合 有業者のうち自営業主及び現在の事業を自ら起こした会社役員を起業者とした場合、静岡 市の起業者総数に占める女性の割合は 17.1%であり、全国・静岡県の 17.9%と比較すると 若干下回っています。 (%) 20 15 10 5 0 図10 起業者における女性割合の比較 17.9 17.9 17.1 全国 静岡県 静岡市 資料:平成 24 年度就業構造基本調査 10 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ⑨女性が職業を持つことへの考え 女性が職業を持つことについての考えを全国と静岡市で比較すると、全国では「ずっと職 業を続けるほうがいい」と考える人の割合が最も高かったのに対し、本市では「子どもがで きたら辞め、大きくなったら再び職業をもつほうがよい」と考える人の割合が高くなってい ます。この傾向は静岡県においても同様です。 図11 (%) 50 女性が職業をもつことについての考え 男性(静岡市) 45 41 女性(静岡市) 40 男性(静岡県) 35 35.3 33 31.3 30 女性(静岡県) 25 男性(全国) 20 女性(全国) 15 10 1.7 0.8 5 0 3.5 3.5 8.5 8.3 6.2 4.4 7.5 6.4 5.4 3.3 女性は職 業をもた ないほう がよい 結婚する まで職業 をもつほ うがよい 子どもが できるま では、職 業をもつ ほうがよ い 子どもが できたら 辞め、大 きくなっ たら再び 職業をも つほうが よい 男性(静岡市) 1.7 3.5 6.2 35.3 33 8.5 6.4 5.4 女性(静岡市) 0.8 3.5 4.4 41 31.3 8.3 7.5 3.3 男性(静岡県) 2.2 3.1 6.5 38 38.5 4.3 4.6 2.9 5.2 ずっと職 業を続け るほうが よい わからな い その他 無回答 女性(静岡県) 0.8 2.9 4.8 37.2 35.4 9.4 4.2 男性(全国) 2.6 6.2 11.7 30.4 43.5 3 2.6 女性(全国) 1.9 5.6 11.6 32.4 45.8 1.1 1.6 資料:平成 26 年度男女共同参画に関する市民意識調査(静岡市)、平成 27 年度静岡県の男女共同参画に関 する県民意識調査(静岡県) 、平成 26 年度男女共同参画社会に関する世論調査(内閣府) 11 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 (3) 市内事業所の状況 ①事業所の規模 平成 24 年度の経済センサスによると、市内には 36,579 の事業所がありますが、従業者 99 人以下の事業所が 36,064 あり、全体の 99%を占めています。 図12 30~99人, 1,533事業所, 4.2% 従業者規模別事業所数 100~299人 293事業所 0.8% 300人以上, 71事業所 0.2% 1~4人 10~29人, 5,513事業所, 15.1% 5~9人 10~29人 1~4人, 21,797事業所, 59.8% 5~9人, 7,221事業所, 19.8% 30~99人 100~299人 300人以上 資料:平成 24 年経済センサス-活動調査(総務省、経済産業省) ②女性の能力発揮促進のための企業の取組 企業が取り組んでいる女性活躍に関する積極的取組(ポジティブアクション)の中で比較 的多い事例としては、 人事考課基準の設定や仕事と家庭の両立のための制度整備などが挙げ られます。 図13 (%) 企業が積極的取組(ポジティブアクション)について 取り組んでいること 40 34.1 32.6 30.3 30 20 9.8 10.6 12.1 14.4 14.4 10 0 6.8 6.1 る 、 担 当 の者 推・ 進責 体任 制者 をを 整選 備任 すす るる 等 、 企 業 内 女 性 の 能 力 発 揮 に 関 す る 担 当 部 局 を 定 め て の 問 題 点 の 調 査 ・ 分 析 を 行 う 女 性 の 能 力 発 揮 の 状 況 や 能 力 発 揮 に 当 た っ 女 性 の 能 力 発 揮 の た め の 計 画 を 策 定 す る 欲 と 能 力 の あ る 女 性 を 積 極 的 に 採 用 す る 女 性 が い な い 又 は 少 な い 職 務 に つ い て 、 意 欲 と 能 力 の あ る 女 性 を 積 極 的 に 登 用 す る 女 性 が い な い 又 は 少 な い 職 務 に つ い て 、 意 能 力 発 揮 の 重 要 性 に つ い て の 啓 発 を 行 う 中 間 管 理 職 男 性 や 同 僚 男 性 に 対 し 、 女 性 の 資料:平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査 12 性 別 に よ り 評 課価 基す 準る をこ 定と めが るな い よ う 人 事 考 置 す る 等 、 働 き や す い 職 場 環 境 を 整 備 す る 体 力 面 で の 個 人 差 を 補 う 器 具 、 設 備 等 を 設 6.1 仕 事 と 家 制庭 度の の両 活立 用の をた 促め 進の す制 る度 を 整 備 し 、 そ の 他 6.1 取 り 組 ん で い る も の は な い 無 回 答 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 (4) ワーク・ライフ・バランスの状況 ①ワーク・ライフ・バランスの認知度 仕事や生活に対する意識やニーズの多様化により、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生 活の調和)の重要性が叫ばれています。しかし、 「言葉と意味を両方知っている」と「言葉 だけ知っている」を合わせて 44.5%いる一方、「知らない」との回答が半数を占めており、 また、男性より女性の認知度が低くなっています。 図14 全体(N=735) ワーク・ライフ・バランスの認知度 21.2 男性(N=274) 23.3 28.1 女性(N=432) 24.5 17.4 0% 54.8 46.7 22.5 20% 言葉と意味と両方を知っている 0.7 0.7 60.0 40% 60% 言葉だけ知っている 0.2 80% 知らない 100% 無回答 資料:平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査 ②長時間労働の状況 週に 60 時間以上就業している男性の割合は、平成 19 年から 24 年にかけて減少している ものの、依然として 1 割以上は週 60 時間以上就業している状況にあります。女性の長時間 労働者は全国と比較して大きく減少していますが、依然として 3.6%いるのが現状です。 図15 (%) 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 週間就業時間60時間以上の割合 18.5 17.9 15.9 15.8 平成19年 6.3 5.9 5.3 平成24年 3.6 全国(男性) 全国(女性) 静岡市(男性) 静岡市(女性) 資料:就業構造基本調査(総務省)より作成(役員を除く雇用者における割合。年間就業日数 200 日未満 の不規則的就業・季節的就業を除く) 13 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ③育児休業取得者の割合 静岡県全体における男性の育児休業取得者の割合は、 緩やかには増加を続けているものの、 全国と比較して低水準にあります。 女性については、平成 20 年に静岡県の割合が全国の割合を下回ってから、差は縮小しつ つも下回ったままです。 図16 育児休業取得者の割合 平成12年 平成16年 平成20年 平成23年 静岡県(男性) 0.3 0.5 1.2 1.8 静岡県(女性) 75.7 87.3 77.1 83.7 全国(男性) 0.6 1.2 2.6 全国(女性) 70.6 90.6 87.8 (%) 100 80 60 40 20 0 資料:厚生労働省「雇用均等基本調査」 、 「女性雇用管理基本調査」 、平成 26 年度静岡県男女共同参画白書 (静岡県)より作成 14 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ④男性が育児休暇・介護休暇を取得することへの考え方 男性の育児休暇・介護休暇の取得について、 「賛成」が 64.1%、 「反対」が 2.0%で賛成が 多数を占めています。 男女別では、女性の「賛成」の割合が 68.5%と高くなっています。 図17-1 男性の育児休暇・介護休暇取得(男女別) 男性(n=518) 58.9 女性(n=664) 2.3 33.0 68.5 全体(n=1225) 1.7 64.1 0% 賛成する 20% 26.5 2.0 40% 反対する 5.8 60% 3.3 29.4 4.5 80% 100% どちらともいえない 無回答 資料:平成 26 年度男女共同参画に関する市民意識調査(静岡市) 平成 20 年からの経年変化で見ると、 「賛成」の割合は 7.8 ポイント低下しており、一方で 「どちらともいえない」が 6.7 ポイント増加しています。 図17-2 男性の育児休暇・介護休暇取得(経年比較) 平成20年度(n=2703) 73.1 平成26年度(n=1114) 65.3 0% 賛成する 2.7 20% 2.1 40% 反対する 60% 22.6 29.3 80% どちらともいえない 資料:平成 26 年度男女共同参画に関する市民意識調査(静岡市) 15 *20 代以上で集計 1.6 3.4 100% 無回答 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ⑤従業員が感じる勤務先の「働き方の見直し」への取組の状況 従業員に尋ねた勤務先の「働き方の見直し」に関する取組状況では、「従業員の意見等を 取り入れ、積極的に取り組んでいる」、 「従業員の意見等は取り入れていないが、積極的に取 り組んでいる」勤務先が合せても約2割程度であり、まだ十分とは言えない状況です。 図18 勤務先が「働き方の見直し」について取り組んでいる状況 無回答 1.9% どちらともいえな い 22.4% 従業員の意見等を 取り入れ、多少は 取り組んでいる 30.5% 従業員の意見等は 取り入れていない が、積極的に取り 組んでいる 5.3% 従業員の意見等は 取り入れていない が、多少は取り組 んでいる 11.3% 従業員の意見等を 取り入れ、積極的 に取り組んでいる 15.5% 全く取り組んでい ない 13.1% 資料:平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査 16 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ⑥従業員が勤務先に望む制度 従業員が勤務先に望む制度としては、 「年次有給休暇の取得促進」 「 、長期休暇制度の導入」、 「フレックスタイム制度の導入」などが多く見られます。 図19 勤務先に望む制度(複数回答) 全体(N=735) (%) 29.7 年次有給休暇の取得促進 20.4 長期休暇制度の導入 16.6 フレックスタイム制度の導入 12.4 週休2日制 従業員が子育てサービスを利用する際に要する 費用の全部(一部)の援助・貸付制度 11.6 ノー残業デーの設定 11.0 子どもの看護のための特別休暇取得制度 10.9 10.2 育児・介護中の従業員の勤務時間の短縮措置 出産・育児・介護による退職者についての再雇 用制度 9.8 在宅勤務(テレワーク)等、場所・時間にとら われない働き方の導入 9.5 育児・介護休暇制度の利用促進 9.1 事業所内託児施設の設置 8.7 育児・介護中の従業員に対する社宅への入居に 対する配慮 0.8 1.4 その他 18.5 特にない 3.4 無回答 0.0 資料:平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査 17 10.0 20.0 30.0 40.0 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 (5) 仕事と家庭の両立支援(子育て支援)に関するニーズ ①子どものいる世帯の世帯構成の推移 子どものいる世帯の構成をみると、核家族世帯の割合が増え、祖父母・両親・子どもで 構成される3世代等の核家族以外の世帯の割合が減少しています。 図20 子どものいる一般世帯の世帯構成の割合(経年比較) 平成2年 62.6 6.1 31.3 平成7年 62.0 6.0 32.0 平成12年 62.6 平成17年 7.1 64.2 平成22年 8.4 67.1 0% 資料:国勢調査より作成 27.4 9.2 20% 両親と子どもの世帯 30.3 40% 23.7 60% ひとり親と子どもの世帯 80% 100% 核家族以外の子どものいる世帯 (注)子どもは 18 歳未満、また施設等世帯は除く ②出産前後の退職について 平成 25 年度の出産後の退職の有無についてみると、「退職した」が 36.1%と最も多く、 次いで「出産1年前にすでに働いていなかった」が 31.3%となっています。 平成 20 年度と比較すると、 「継続的に働いていた」が平成 25 年度では 11.1 ポイント増加 しています。また、 「出産1年前にすでに働いていなかった」が 3.8 ポイント減少していま す。 図21 出産前後の退職の有無(経年比較) 平成20年度(N=1427) 37.4 平成25年度(N=2831) 36.1 0% 退職した 20% 継続的に働いていた 16.5 27.6 40% 11.0 35.1 60% 31.3 5.1 80% 100% 出産1年前にすでに働いていなかった 資料:平成 25 年度子ども・子育て支援に関するニーズ調査 18 不明・無回答 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ③退職した場合、どのような保育サービスや環境が整っていたら仕事を続けていたか 平成 25 年度は、 「いずれにしてもやめていた」が 40.3%で最も高く、次いで「職場にお いて育児休業制度等の仕事と家庭の両立支援制度が整い、働き続けやすい環境が整っていれ ば、継続して働いていた」が 26.0%となっています。 平成 20 年度と比較すると、 「いずれにしてもやめていた」が平成 25 年度では 7.6 ポイン ト減少しており、 「職場において育児休業制度等の仕事と家庭の両立支援制度が整い、働き 続けやすい環境が整っていれば、継続して働いていた」は 7.1 ポイント増加しています。 図22 退職した場合、どのような保育サービスや環境が 整っていたら仕事を続けていたか(経年比較) 平成20年度(N=504) 4.3 平成25年度(N=1021) 4.9 14.4 3.6 18.9 26.0 0% 15.2 20% 40% 47.9 3.9 10.1 8.4 1.4 40.3 60% 7.0 80% 100% 保育サービスが確実に利用できる見込みがあれば、継続して働いていた 職場において育児休業制度等の仕事と家庭の両立支援制度が整い、働き続けやすい環境が 整っていれば、継続して働いていた 保育サービスと職場の両立支援環境がどちらも整っていれば、継続して働いていた 家族や親族の理解・協力が得られれば、仕事を続けていた いずれにしてもやめていた その他 不明・無回答 資料:平成 25 年度子ども・子育て支援に関するニーズ調査 19 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ④子育て支援の効果が高いと考えられる施策や充実を期待する施策 「児童館や公園などの子どもの遊び場の拡充」 、 「保育所や幼稚園等の費用負担の軽減」、 「子育てのための経済的支援の拡充」などへの期待が高くなっています。 図23 効果が高いと考えられる施策や充実を期待する施策(上位10位) 児童手当及び子ども医療費助成の対象拡大や支 給額の増額等、子育てのための経済的支援の拡 充 44.2 57.9 42.5 47.1 児童館や公園などの子どもの遊び場の拡充 23.5 保育所を増やす 13.5 残業の縮減や育児・介護休暇等の取得促進、短 時間勤務制度・フレックスタイム制度の実施 等、男性を含めた働き方の見直し 21.5 22.7 子どもの居場所づくり対策としての放課後児童 クラブの整備 20.2 17.1 安心して子どもが医療機関を受診できる体制の 整備 18.1 29 17.4 12.5 親子で参加できる各種イベントの開催を増やす 15.6 10.8 出産や不妊治療に対する経済的支援の充実 10.3 12.1 子育て支援施策に関する情報提供の拡充 0 就学前児童 20 就学児童 資料:平成 25 年度子ども・子育て支援に関するニーズ調査 20 40 60 80 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 2 課題 「1 静岡市の現状」からみえてきた課題をまとめると、大きく5つに集約することが できます。 (1) 女性の活躍推進に向けた各種の支援 本市では女性の力が潜在化しているため、女性の「育児や介護を抱えていても働きたい」、 「ステップアップして活躍したい」という思いを実現するための施策が必要です。 ①M字カーブ解消と再就職の促進 本市の女性の有業率は第一子出産後に退職率が6割に達することにより、全国同様、30 代に一時的に下がるいわゆるM字カーブを描いています。また、本市の傾向として子どもが 大きくなったら再び就職を希望する割合が大きいことから、45 歳以降に有業率が高くなる ため、全国よりM字カーブの谷が深くなっています。 M字カーブの解消のためには、妊娠・出産・育児などのライフイベントを抱えながらも、 就労を希望している女性が、仕事と家庭を両立し、個性と能力を発揮して活躍できる職場環 境を整備する必要があります。 出産、子育て後の有業率の回復は、パートの増加によるものであることから、本市の女性 は再度働きたいと思っても正規で働くことは難しい状況にあると考えられます。平成 25 年 度静岡市女性の労働実態調査では、パートタイマーや非正規従業員として働く女性の 29.3%が「正規従業員として働きたかったが、他に適当な仕事がなかったため」を、パート タイマーや非正規従業員として働く理由として回答しており、不本意非正規雇用労働者が相 当数存在していると考えられます。非正規雇用には正規雇用と比べ、雇用が不安定で、賃金 が低く、能力開発の機会が少ないという問題があります。 正社員の再雇用制度や正規雇用のためには、正規雇用への転換制度、職務、勤務地、勤務 時間を限定した「多様な正社員」制度やテレワークなど多様な働き方の普及や企業への導入 を促進する必要があります。 再就職を希望する女性に対しては、再チャレンジを支援するために、企業とのマッチング や再就職の情報提供、職業能力開発の支援を行うことが必要です。 また、就労が中断することなく、女性が安心して働くための職場づくりのためには、育児・ 介護休業制度の整備・普及や取得の促進、不利な取扱いが解消されるよう国・県と連携しな がら、企業に対して啓発していく必要があります。 21 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 ②管理職等への女性の登用 本市の管理的職業従事者に占める女性の割合は、 平成 22 年度国勢調査によると 12.9%で、 全国平均 14%、政令市平均 14.4%を下回っており、管理職への女性の登用が遅れていると 言えます。 女性管理職が少ない理由としては、 補助的な業務を担う一般職等の採用形態が多いことや 能力開発の機会が男性より少なかったことが原因と考えられます。また、長時間労働による 仕事と家庭との両立の難しさ、根強い固定的性別役割分担意識、管理職で活躍する女性(ロ ールモデル) が身近にいないことにより女性自身がキャリアを描きづらいことが昇進意識を 持ちにくいことの要因となっていると考えられます。 管理職として活躍する女性の割合を高めるには、企業において、男女の均等な機会と待遇 の確保を推進するとともに、 女性が能力を発揮して活躍できるよう人材育成に配慮すること が必要です。 また、女性自身もキャリア形成を目指して研修等に参加したり、社内外での交流を通じて 視野を広げたりすることや、 管理職登用の機会に積極的に応じるなどの意識改革が必要です。 ③起業支援 開業率が廃業率を下回り事業所数が減少する中、地域が持続的に成長し、活力を維持して いくために、起業・創業を支援する重要性が高まってきています。本市の起業者に占める女性 の割合は 17.1%で、全国や静岡県の 17.9%を若干下回っています。女性の起業は地域の活 力を維持し、多様な働き方を推進するためにも重要であることから、起業を考える女性への 支援を行い、 女性の起業や創業を促進する必要があります。起業するためのノウハウの提供、 資金調達の情報提供、活躍している先輩女性起業者との異業種交流など、女性にとって起業 しやすい環境を整えることが求められています。 ④農林漁業、商工業、サービス業などの自営業で働く女性の労働環境整備と参画促進 農林漁業、 商工業、 サービス業などの自営業においては、 仕事と生活の区別がつけにくく、 性別や世代による固定的性別役割分担意識に基づく慣習・慣行が根強く残っています。女性 が能力を発揮し経営方針決定の場に参画するためにも、女性の技術・能力の向上を支援する ほか、適正に評価されるよう労働環境の整備促進が必要です。 ⑤建設分野等への女性の参画促進と労働環境整備 建設産業は、建設投資の減少等により競争が激化し、地域社会を支えてきた建設企業が疲 弊するとともに、就労環境の悪化等により若年入職者が減少するなど、厳しい状況に直面し ています。このため、担い手不足と女性の職域を拡大する観点から、女性の参画が進んでい ない建設分野等への就業促進が求められています。 女性が働きやすい職場環境となるよう女性用トイレ、更衣室などの設備面の整備を図る企 業の取組を支援する必要があります。 22 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 (2) 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を図るための取組 ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、やりがいや充実感を感じながら働き、仕事 上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活等においても、ライフステージに応じて多様な 働き方・生き方が選択・実現できることが不可欠です。 企業によるワーク・ライフ・バランスの推進は、従業員にとって仕事の充実感が向上し、 心身の健康の保持や家庭や地域等への参画が可能となるだけでなく、 企業にとっても生産性 の向上や優秀な人材の確保、人材の定着度を高めることができます。また、女性が能力を発 揮して働き続けるために必要です。具体的な取組としては、長時間労働などの男性中心型労 働慣行の是正や、仕事と家庭の両立支援制度の充実など職場の環境整備が挙げられます。 近年、 「イクメン」と言われる、子育てに関わる男性が増加しているものの、長時間労働 や職場で育児・介護の両立支援制度を利用しづらいという理由により、家庭への参画や地域 活動への参画が進まないとの指摘があります。年次有給休暇の取得、企業におけるワーク・ ライフ・バランスの理解の促進、育児休業や介護休業を取得しやすい職場風土づくりへの支 援が必要です。 (3)子どもと子育て家庭、介護への支援 本市の子どものいる世帯は、核家族世帯が増え、祖父母・両親・子どもで構成される3世 代等の核家族以外の世帯が減少し、かつ共働き世帯が増加しています。 祖父母等によるサポートが受けられず、 地域の人間関係の希薄化等により子育て家庭が孤 立しやすくなっていることから、地域で子育てを支えあう支援体制の充実が必要です。 また、子育て家庭のニーズに応じた支援が提供できるよう、保育の場を増やして保育を受 けられない子ども(待機児童)をなくすための受け皿の拡大や、共働き家庭の子どもの安全 な居場所づくりとして放課後子ども対策の充実に取り組む必要があります。 高齢化を背景に、企業の中核を担う40~50代の介護離職や晩婚化・高齢出産に伴い子 育てと介護を行うダブルケアによる離職が増えつつあるため、介護支援や生活支援等のサー ビスの充実を図り、介護者の負担軽減を図っていくことで、介護と仕事等を両立しやすい環 境を整備することが必要です。 23 第2章 女性活躍に関する静岡市の現状と課題 (4) 企業の取組を加速化するための支援 平成 25 年度静岡市女性の労働実態調査によると、市内企業において女性の活躍推進に取 り組む企業は1割、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業は3割にとどまり、多くの企業に 広がっているとは言い難い状況にあります。 また、市内の企業は中小企業が多く、女性活躍推進法や次世代育成支援法の一般事業主行 動計画の策定を義務付けられている企業が少ないため、 行政による企業に働きかけが必要で す。 具体的には、女性の雇用や登用等の女性の活躍推進、ワーク・ライフ・バランス推進のメ リットを経営者層に伝え、トップのリーダーシップの発揮を促すとともに、自主的に取り組 む企業に対しインセンティブを付与するなど、企業の取組を後押しする必要があります。 取組が進んでいない企業に向けては、 女性の積極的活用や働き方の見直しに関するノウハ ウの提供、好事例を情報発信し、取組を促す必要があります。 さらに、今後の労働力不足やニーズの多様化、グローバル化に対応するためには、女性に 限らず、外国人や障がい者など多様な人材を活用していくダイバーシティ・マネジメントの 視点が不可欠です。企業に対し、女性の活躍推進と働き方の多様性が新たな価値の創造と生 産性の向上を促し、 競争力を高めるための戦略であることを理解してもらうことが必要です。 (5) 多様な主体と連携した取組 女性の活躍推進とワーク・ライフ・バランスを実現するための働き方の見直しは、男女共 同参画部局だけでなく、経済担当部局、企業や労働団体にまたがる複合的な課題であり、市 や企業が単独で解決できるものではありません。 官民連携や庁内連携など多様な主体が緊密 に連携し、課題を共有して、課題解決に取り組むことが必要です。 特に、企業の労働環境づくりが重要であるため、官民連携会議等を通じて、企業や労働者 への働きかけや、企業の取組への支援を進めることが必要です。 24