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特別支援教育コーディネーターガイド 平成23年12月 福岡県教育委員会

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特別支援教育コーディネーターガイド 平成23年12月 福岡県教育委員会
特別支援教育コーディネーターガイド
~高等学校等における特別支援教育充実のために~
平成23年12月
福岡県教育委員会
も
く じ
ページ
Q1 高等学校における特別支援教育の必要性と近年の法令改正等に見られ
…
る特別支援教育の動向について教えてください。
1
Q2
特別支援教育推進の考え方について教えてください。
…
〔診断の有無、テスト、評価など〕
3
Q3
校内委員会など、特別支援教育の校内体制について教えてください。
…
〔校内委員会の1年間の活動例など〕
5
Q4
特別支援教育コーディネーターの役割と必要な資質は、何ですか?
…
7
Q5
実態把握の方法や支援を行うまでの流れについて教えてください。
…
〔サポートヒントシートの活用について〕
9
Q6
個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成とその効果について教え
…
てください。
11
Q7
専門家による巡回相談の効果的な活用方法を教えてください。
…
〔校内研修の講師について〕
13
Q8
中学校等との連携について、どのような方法が考えられますか?
…
14
Q9
高等学校では、実際にどんな支援が行われていますか?
…
〔高等学校における実践、学校生活におけるユニバーサルデザイン〕
15
Q10
進路指導等の考え方や進学・就労に関する情報を教えてください。
…
〔大学等における支援の実際、就労支援関係機関、雇用制度など〕
17
Q11
理解・啓発の方法として、どのような方法が考えられますか?
…
〔保護者向け・生徒向け〕
19
Q12
保護者との連携の在り方を教えてください。
…
20
Q13
研修に活用できる参考資料等を紹介してください。
…
〔特別支援教育に関するスキルアップを図るために〕
21
資料
①
②
③
④
特別支援教育充実のための校内体制点検表
個別の教育支援計画、個別の指導計画の様式例
引き継ぎシート(ふくおか就学サポートノート)
高等学校保護者向けリーフレット
…
…
…
…
資料 1
資料 2~ 9
資料 10~25
資料 26~27
コラム①
~サブ・コーディネーター配置の勧め~
p.6
コラム②
~サポートヒントシート活用研修の勧め~
p.9
コラム③
~計画は、だれが作成するのか?~
p.11
コラム④
~校内研修の講師について~
p.13
コラム⑤
~中学校から高等学校へ円滑に引き継ぐために~
p.14
Q1 高等学校における特別支援教育の必要性と近年の法令改正等に見ら
れる特別支援教育の動向について教えてください。
1
高等学校における特別支援教育の必要性
学校教育法第81条第1項において、高等学校においても教育上特別の支援を必要と
する生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行う旨が
明記されており、新しい高等学校学習指導要領(平成21年3月告示)では、障害のあ
る生徒などの指導について、指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うことが
示されています。
また、これに先立ち、平成17年12月の中央教育審議会答申「特別支援教育を推進
するための制度の在り方について」においては、「今後、高等学校に在籍しているLD・
ADHD・高機能自閉症等の生徒に対する指導及び支援の在り方(中略)など、後期中
等教育における特別支援教育の推進に係る諸課題について、早急な検討が必要である。」
と言及され、高等学校における特別支援教育の推進、とりわけ発達障害のある生徒への
指導及び支援が課題として示されています。
発達障害等困難のある生徒の中学校卒業後の進路について
「高等学校における特別支援教育の推進について」(平成21年8月特別支援教育の推進に関する
調査研究協力者会議高等学校ワーキング・グループ報告)から(抜粋)
○ 小・中学校については、平成14年度の文部科学省の全国調査によれば、約6%程
度の割合で通常の学級に発達障害のある児童生徒が在籍している可能性が示されて
いる。
○ この調査に準じた方法で実態調査を実施した中学校について、在籍する発達障害等
困難のある生徒の一部の学校卒業後の進路状況(平成21年3月時点)を文部科学
省において分析・推計した。その結果、調査対象の中学校3年生全体のうち、発達
障害等困難のあるとされた生徒の割合は約2.9%であり、そのうち約75.7%が
高等学校に進学することとしているとのデータが得られた。これらの高等学校に進
学する発達障害等困難のあるとされた生徒の高等学校進学者全体に対する割合は約
2.2%であった。
○
課程別では、全日制課程の推計在籍率1.8%に比べ、定時制課程14.1%、通信
制課程15.7%と相対的に高い比率となっている。また、学科別にみると、普通科
が2.0%、専門学科が2.6%、総合学科が3.6%となっている。
-1-
2
近年の法令改正等に見られる特別支援教育の動向
H11.
11.7
H13.
13.1
「学習障害児の指導について」報告
「21 世紀の
世紀の特殊教育の
特殊教育の在り方について」
について」
文部科学省「特別支援教育課」に名称変更
H14.
14.12
H15.
15.3
障害の種類、程度に応じた場に
おける教育から、ニーズに応じ
る教育へ
「障害者基本計画」
「重点施策実施5か年計画策定」
「今後の
今後の特別支援教育の
特別支援教育の在り方について」
について」
「通常の
通常の学級に
学級に在籍する
在籍する特別
する特別な
特別な教育的支援を
教育的支援を必要とする
必要とする児童生徒
とする児童生徒に
児童生徒に関する全国実
する全国実
態調査」
態調査」 結果公表
6.3%…小・中学校の通常の学級に発達障害のある
児童生徒が在籍している可能性
H16.
16.1
「小・中学校における
中学校におけるLD(
におけるLD(学習障害
LD(学習障害)、ADHD(
学習障害)、ADHD(注意欠陥
)、ADHD(注意欠陥/
注意欠陥/多動性障害)、
多動性障害)、高機能自
)、高機能自
閉症の
閉症の児童生徒への
児童生徒への教育支援体制
への教育支援体制の
教育支援体制の整備のための
整備のためのガ
のためのガイドライン」(
イドライン」(試案
」(試案)
試案)の公表
H16.
16.3
6
12
12
「中央教育審議会(特別支援教育特別委員会)」開始
「障害者基本法」一部改正
「中央教育審議会」中間報告
「発達障害者支援法」成立
国及び地方公共団体は、発達障害児に対して
適切な教育的支援、支援体制の整備その他必
「発達障害者支援法」
発達障害者支援法」施行
要な措置を講じるものとする
H17.
17.4
12
「中央教育審議会答申」
中央教育審議会答申」
後期中等教育における特別支援教育の推進に
係る諸課題について、早急な検討が必要
H18.
18.4
「学校教育法施行規則」改正 (LD 等を通級対象、自閉症の位置付け)
H18.
18.6
「改正学校教育法」の制定・公布
高等学校等においても障害による学習上又
は生活上の困難を克服するための教育(特
別支援教育)を行うものとする
H19.
19.4
「改正学校教育法」
改正学校教育法」の施行
H19.
19.4
「特別支援教育の
特別支援教育の推進について
推進について」
について」
文部科学省初等中等教育局長通知
特別支援教育の理念、校長の責務
体制の整備及び必要な取組
H 21.3
8
「高等学校学習指導要領」
高等学校学習指導要領」告示
「高等学校ワーキング
高等学校ワーキング・
ワーキング・グループ」
グループ」報告
2.2%…高等学校進学者のうち、
発達障害等による困難があるとさ
れた生徒の割合
12
H23.
23.8
「特別支援教育の
特別支援教育の推進について
推進について」
について」
福岡県教育庁教育振興部高校教育課長通知
「障害者基本法」
障害者基本法」一部改正
附帯決議において、一貫した支援体制の整備
や発達障害児の特性・能力に応じた中等・高
等教育の整備について言及
-2-
Q2
1
特別支援教育推進の考え方について教えてください。
〔診断の有無、テスト、評価など〕
特別支援教育の理念
特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を
支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持て
る力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援
を行うものです。
特別支援学校のみならず、高等学校等に在籍する発達障害のある生徒も含めて、特別
な支援を必要とする生徒が在籍する全ての学校において実施されるものです。
2
高等学校における特別支援教育推進の考え方
○ 生徒の困難・ニーズに対応した支援(診断がなくても支援を行う)
障害のある生徒への支援に当たっては、障害種別の判断も重要ですが、当該生徒が示
す困難に、より重点を置いた対応を心がけることが必要です。
また、医師等による障害の診断がなされている場合でも、教師はその障害の特徴や対
応を固定的にとらえることのないよう注意するとともに、その生徒のニーズに合わせた
指導や支援を検討する必要があります。
参考:「特別支援教育の推進について(通知)」(平成19年4月 文部科学省初等中等教育局長)
○ わかる授業
発達障害のある生徒の学習上の困難の多くは、発達障害の認知特性が影響しています
が、各教科における学習への取組の難しい生徒の一般的なつまずきと、発達障害のある
生徒のつまずきには重なる面が多くあります。このため、発達障害のある生徒のための
支援の工夫が、同じような学習のつまずきのある他の生徒の学習内容の理解等にとって
も有効であり、わかる授業づくりにつながっていくと考えられます。
参考:「小中学校における発達障害のある子どもへの教科教育等の支援に関する研究」
(平成22年3月 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)
○ 一人一人に応じたきめ細やかなキャリア教育・職業教育
発達障害のある生徒に対してキャリア教育・職業教育を行うに当たっては、自己の抱
える学習や社会生活上の困難について総合的に適切な理解を深め、職業適性や困難さを
乗り越えるための対処方法を身につけることができるよう、適切な指導や支援を行うこ
とが必要になります。
参考:「高等学校における特別支援教育の推進について」
(平成21年8月 特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG報告)
○ 生徒指導などにおける生徒理解
発達障害のある生徒は、周囲との人間関係がうまく構築できない、学習のつまずきが
克服できないといった状況が進み、不登校に至る事例が少なくないとの指摘があります。
このように、生徒指導上の諸問題に対しては、表面に現れた現象のみにとらわれず、そ
の背景に障害が関係している可能性があるか否かなど、生徒をめぐる状況に十分留意し
つつ慎重に対応する必要があります。
参考:「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」
(平成15年4月 不登校問題に関する調査研究協力者会議)
-3-
3
テスト、評価の考え方
特別支援教育は、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要
な支援を行うものです。このため、特別支援学校においては、小・中学校、高等学校と
は異なる学習指導要領が示されており、小・中学校の特別支援学級や通級指導教室にお
いては、教育課程編成の特例があります。
高等学校においては、このような教育課程編成の特例はなく、たとえ発達障害のある
生徒等であっても、同じ教育課程を履修する必要があります。したがって、評価や単位
修得の認定等についても、別に基準を設けることを想定しているわけではありません。
しかしながら、発達障害のある生徒等については、問題解答等に係る潜在的な力はあ
るものの、障害の状態により通常の試験方法においてはその力が十分発揮できない場合
もあり、この場合は、公平性を基本としつつ、例えば、問題用紙の拡大など、障害等の
状態に応じた必要な配慮が望まれます。
また、単位の修得が困難になる前に、日々の学校生活において環境の調整や認知特性
に応じた授業づくりの工夫を行うなど、様々な支援策を講じることが重要です。
テストにおける配慮例 ~先進校の実践から~
・事前の小テストの繰り返し実施
・テスト前の補習(小集団、個別指導)
・テスト監督の複数配置
・巡回中の丁寧な説明
・試験時間延長
・パソコン使用
・別室受験、別室に大きな机を用意、拡大試験問題
・大きな問題用紙と解答欄
・同一用紙における問題と解答欄
・鮮明な印刷、カラー印刷による見やすい問題用紙 ・問題文の行間と文字の拡大
・理数系教科等のテストにおける問題文へのふりがな
大学入試センター試験における受験特別措置(23 年度から発達障害を新設)
すべての科目において措置する事項
・ 試験時間の延長(1.3倍)
・ チェック解答
・ 拡大文字問題冊子の配布(一般問題冊子と併用)
・ 別室の設定
・ 1階又はエレベーターが利用可能な試験室で受験
・ 試験室入口までの付添者の同伴
・ 試験場への乗用車での入構
・ トイレに近い試験室での受験
・ 座席を試験室の出入口に近いところに指定
英語リスニングにおいて措置する事項
・ 試験時間の延長(1.3倍)…①連続方式 ②音止め方式
・ 試験時間延長希望者…CDプレーヤー(監督者が操作)にヘッドホンを接続
・ チェック解答希望者…ICプレーヤー(監督者が操作)にヘッドホンを接続
・ 上記以外の者…ICプレーヤーにイヤホンを接続
-4-
Q3
1
校内委員会など、特別支援教育の校内体制について教えてください。
〔校内委員会の1年間の活動例など〕
特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組
「特別支援教育の推進について(通知)」19 文科初第 125 号平成 19 年 4 月 1 日
(1) 校内委員会の設置
全校的な支援体制を確立し、発達障害を含む障害のある生徒の実態把握や支援方策
の検討等を行うために特別支援教育に関する委員会を設置します。
(2) 実態把握
在籍する生徒の実態の把握に努め、特別な支援を必要とする生徒の存在や状態を確
かめます。さらに、保護者の理解を得ることができるよう慎重に説明を行い、学校や
家庭で必要な支援や配慮について、保護者と連携して検討を進めます。
(3) 特別支援教育コーディネーターの指名
校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を「特別支援教育コ
ーディネーター」に指名し、校務分掌に明確に位置付けます。
(4) 「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」
必要に応じて、関係機関との効果的な支援を進めるための「個別の教育支援計画」、
一人一人の課題に応じるための「個別の指導計画」を作成します。
(5) 教員の専門性の向上
校内での研修を実施したり、教員を校外の研修に参加させたりすることなどにより
特別支援教育に関する専門性の向上に努めることが必要です。
-5-
2
校内委員会の役割(例)
校内委員会は、校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、発達障害を
含む障害のある生徒の実態把握や支援方策の検討等を行います。
○ 校内支援体制(推進計画・推進組織)の検討
○ 実態把握(サポートヒントシートの活用等)の計画・実施
○ 個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成支援・検討
○ 生徒や保護者等への理解啓発に関する計画・実施
○ 保護者、地域、関係機関との連携
※
3
学校の実情に応じて既存の委員会と兼ね合わせて活動するなどの工夫が大切です。
校内委員会のメンバー(例)
校長、副校長、教頭、教務主任、養護教諭、学年主任、
特別支援教育コーディネーター、生徒指導主事、進路指導主事、
スクールカウンセラー、対象生徒の担任など
※
4
別途、個別対応を行うためのチームを設置して対応している学校もあります。
校内委員会の1年間の活動(例)
・
・
特別支援教育に係る推進計画・推進組織等の確認
PTA総会等における理解啓発に向けて
・
実態把握(サポートヒントシートの活用等)の実施に向けて
↓
・
事例研究(個別事例に対する情報収集・整理)
2学期
・
・
事例研究(個別事例に対する支援の方向性の検討)
個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成・活用に向けて
・
巡回相談の活用
・
教職員研修に向けて
・
事例研究(個別事例に対する実践評価)
・
・
新入生説明会における理解啓発に向けて
次年度の推進計画・推進組織の検討
1学期
↓
3学期
※
定期的に行う以外に、個別事例について臨時に行う場合も考えられます。
※
主要メンバーによるワーキングチーム設定など、開催方法の工夫も考えられます。
コラム①
~ サブ・コーディネーター配置の勧め ~
教科担任制がとられている高等学校の場合、学年組織等の機能により、複数の教
員で生徒の困難に気付き、実態を把握することができるという強みがあります。
例えば、特別支援教育コーディネーターを複数指名し、各学年等にサブ・コーデ
ィネーターを位置付けることで、支援の機動性や具体性、組織としての継続性の面
などから、校内支援体制がより一層充実するものと考えられます。
-6-
Q4
特別支援教育コーディネーターの役割と必要な資質は、何ですか?
特別支援教育コーディネーターは、保護者や関係機関に対する学校の窓口として、また、
学校内の関係者や福祉、医療等の外部の関係機関との連絡調整の役割を担います。
1
特別支援教育コーディネーターの役割
〔校内における役割〕
○ 校内委員会のための情報の収集・準備
○ 担任への支援、相談窓口
○ 校内研修の企画・運営
○ 実態把握の企画・運営
〔外部の関係機関との連絡調整などの役割〕
○ 関係機関の情報収集・整理
○ 専門機関等への相談をする際の連絡調整
○ 専門家や巡回相談員との連絡
〔保護者に対する相談窓口〕
2
特別支援教育コーディネーターに求められるもの
コーディネーターの役割
活動と必要な力(資質や知識・技能)
校内における担任への 教員の心配なことに耳を傾け、その状況を把握し、支援につな
支援、相談窓口
がる次のステップへ導くための力
・ 障害のある生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識
・ カウンセリングマインド
・ アセスメントの技能
教育的支援の充実
校内支援体制の整備、理解啓発、支援・指導の研究・研修等の
推進、地域への啓発や支援を推進する力
・ 障害のある生徒の教育に関する一般的な知識(関係法令・
教育課程・指導方法)
・ 個別の指導計画の作成・実施・評価及び個別の教育支援計
画に関すること
校内外の関係者との連 校内外の関係者から情報を集め、支援のための知恵や力を引き
絡・調整
出し、関係者間をつなぎ、チームワーク(ネットワーク)を形
成する力
・ 協力関係を推進するための情報収集、情報共有の技能
・ 交渉力や人間関係調整力
・ ファシリテーション技能
保護者に対する相談窓 保護者の心配なことに耳を傾け、その状況を把握し、支援につ
口
ながる次のステップへ導くための力
・ 障害のある生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識
・ カウンセリングマインド
・ アセスメントの技能
-7-
3
特別支援教育コーディネーターに必要な資質・技能について
① カウンセリングマインド
~本人や保護者からの相談を共感的に理解する~
○ 傾聴:相談者の語るところを「じっくりと聴く」こと。
○ 共感的理解:相談者の不安や苦しみを、あたかも自分が感じているかのように「共
に感じる」こと。
○ 受動的・中立的態度:「相談者の価値観や人生観を尊重して」これまでのがんば
りを肯定的に認めること。
② アセスメント
~対象生徒の状況を適切に見極め、支援の方向性を探る~
○ 生徒の状態像を多面的に捉え、適切な支援につながるように導くこと。
・ 気になる行動や学習の背景に発達障害が疑われる場合
⇒
校内委員会で検討し、必要に応じて専門機関につなぐ。
・ 不登校や対人恐怖傾向、不定愁訴、心身症的な訴えなどがみられる場合
⇒ 教職員の共通理解を図り、養護教諭やスクールカウンセラー等につなぐ。
・ 極端な被害妄想や幻覚、幻聴、幻視などの訴えや症状がみられる場合
⇒
神経科・精神科のある医療機関につなぐ。
・ より深いアセスメントを行う必要がある場合
⇒
専門家による個別の心理検査等の実施や行動観察につなぐ。
③ コーディネーション ・ ファシリテーション
~人的資源をつなぎ、目標達成に向けた支援を円滑に進める~
【コーディネーション】
○ 学校教育の中に分散されている既存の教育的資源と地域に散在する関連領域の支
援資源を引き出し、それらを組み合せて、生徒への支援に結びつけていくこと。
【ファシリテーション】
○ 校内委員会などの話し合いの場面で、異なる意見や立場の違いを乗り越え、共通
の目的に向けて、それぞれの力を最大限に引き出し、合意形成に導くこと。
・ 情緒に流されず、合理的で民主的な議論をすること。
・ 人の意見をよく聞き、異なる意見を大切にすること。
・ 全員が納得するアイデアを粘り強く考えること。
-8-
Q5
1
実態把握の方法や支援を行うまでの流れについて教えてください。
〔サポートヒントシートの活用について〕
実態把握について
(1) 特別な支援を必要とする生徒の存在を把握する。
発達障害は、一見しただけでは分かりにくい障害です。そこで、発達障害等のある
特別な支援を必要とする生徒について、職員の共通理解を深めながら、その存在に気
付くことが大切です。
(2) 特別な支援を必要とする生徒の状態を把握する。
対象となる生徒に対する実態把握は、校内委員会において支援方針を決定する際の
最も重要な最初のステップになります。サポートヒントシートの活用例2・3に従い、
シート②「行動理解シート」から活用する方法も有効です。
2
実態把握の方法
サポートヒントシートを活用する際は、より適切な実態把握をするために、必ず複数
の教員で活用することが大切です。また、家庭や学習の状況などを把握するとともに、
対象生徒の長所や強みにも着目することが必要です。場合によっては、さらに詳細なア
セスメントとしての個別の心理検査等を必要とする場合もありますが、その際は、保護
者や生徒本人の同意に基づいて、専門機関と連携しながら実施します。
様々な実態把握の方法 ~先進校の実践から~
・ チェックシート、教員向けアンケートなどの実施
・ 保護者や生徒本人に対するアンケート調査
・ 全職員による「気付きメモ」の活用
・ 中学校からの情報収集
・ 各種心理検査(集団型、個別型)の実施
・ 欠席等日数や事件・事故等に関するデータの分析
・ 全生徒を対象とした個人面接の実施
・ 気になる生徒に関する情報交換の場の設定
コラム② ~ サポートヒントシート活用研修の勧め ~
サポートヒントシートは、複数の教員によって話し合いながら活用するようにで
きています。したがって、各教員に配布して活用を促すだけでは不十分です。
「サポ
ートヒントシート活用研修」などを設定し、全体会や分科会など作業時間を確保す
る必要があります。県内の高等学校、小・中学校等の中には、巡回相談等で講師を
招聘して、実施している学校もあります
全職員がサポートヒントシートを活用することで、特別支援教育の考え方や対象
となる生徒の見方についての共通理解を図る機会になり、特別支援教育を推進する
上で大変効果的であると考えます。
-9-
3
支援の流れ(気付き~計画~実践~評価~修正の流れ)
気付き
気付き ・相談する
相談 する
気付いた人(担任
や保護者、本人な
ど)が、特別支援
教育コーディネ
ーターなどに相
談します。
情報収集する
校内委員会など
で、組織的に多面
的な情報収集を
行います。
方向性 をさ ぐる
校内委員会など
で、組織的に分析
を行い、支援の方
向性を探ります。
実践・
実践 ・ 評価する
評価 する
様々な“気づき”
学習上の課題
対人関係、不登校
問題行動など
・ サポートヒントシート活用
・ 本人からの聞き取り
・ 保護者からの聞き取り
・ 関係職員からの聞き取り
・ 出身中学校からの情報入手
・ 収集した情報の整理
※ 個別の教育支援計画への記載
・ 情報(特性)の分析
・ 支援やその役割分担の検討
・ 個別の教育支援計画の作成
・ 個別の指導計画の作成
・ 保護者との共通理解
・ 職員間での共通理解
※ 専門家の活用
実践の記録を残
し、手だての検証 ・ ケース会議の開催
(手だての有効性の検証)
や指導計画等の
(指導計画等の書き換え)
書き換えに活用
※ 専門家の活用
します。
- 10 -
留意点
本人や保護者に接するとき
は、相手の心情に配慮した言動
が必要です。
「生活上の改善のた
め」「学力の向上のため」など、
常に本人の利益につながる視点
をもち、そのことを相手に伝え
ることが大切です。
留意点
個別検査等を実施する場合
は、必ず本人や保護者の同意が
必要です。
また、指導計画等は、個人情
報そのものですから、その取扱
いには十分注意する必要があり
ます。本人や保護者の意向を取
り入れたものであることはもち
ろんのこと、作成及び実施の同
意を得ることが大切です。
・ 家庭と連携した指導
・ 関係機関と連携した指導
・ 実践の記録
・ 保護者への経過説明
Q6
個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成とその効果について教え
てください。
1
高等学校学習指導要領による位置付け
【高等学校学習指導要領
第1章総則(平成21年3月)】
障害のある生徒などについては、各教科・科目等の選択、その内容の取扱いな
どについて必要な配慮を行うとともに、特別支援学校等の助言又は援助を活用し
つつ、例えば指導
指導についての
指導についての計画
についての計画又は家庭や医療、福祉等の業務を行う関係機関
計画
と連携した支援
支援のための
のための計画
計画を個別に作成することなどにより、個々の生徒の障
支援
のための
計画
害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと。
(解説)「指導についての計画」
「支援のための計画」
2
… 個別の指導計画
… 個別の教育支援計画
個別の教育支援計画※について
(1)個別の教育支援計画とは
※様式例は、巻末資料参照
障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に
対応していくという考えの下、福祉、医療、労働等の関係機関との連携を図りつつ、
乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点に立って、一貫して的確な教育的支援
を行うために、障害のある幼児児童生徒一人一人について作成した計画。
(2)個別の教育支援計画の作成・活用
① 計画に含まれるべき内容
・ 特別な教育的ニーズの内容(実態把握)
・ 適切な教育的支援の目標と基本的内容
・ 支援を行う関係者や関係機関の名称とその役割分担
など
② 期待される効果
・ 関係者、関係機関の連携による組織的な支援に役立てることができる。
・ 乳幼児期から学校卒業後までの一貫した教育的支援に役立てることができる。
・ 関係機関と相互に情報共有することができれば、本人や保護者が、関係機関ごと
に何度も情報を提供する必要が少なくなる。
コラム③ ~ 計画は、だれが作成するのか?
~
個別の指導計画や個別の教育支援計画について、作成者の指定は特にありません。
生徒の状況を一番把握している教員を中心に校内委員会などで作成・検討します。
なお、作成に当たっては、生徒本人の強み(特技や長所、興味関心など)を生か
す視点が大切です。「これならできる!『個別の教育支援計画』『個別の指導計画』
作成ハンドブック」(福岡県教育センター)を活用すると作成方法が分かります。
- 11 -
3
個別の指導計画※について
※様式例は、巻末資料参照
(1)個別の指導計画とは
幼児児童生徒一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導が行えるよう、学
校における教育課程や指導計画、当該幼児児童生徒の個別の教育支援計画等を踏ま
えて、より具体的に幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や
指導内容・方法等を盛り込んだ計画。
(2)個別の指導計画の作成
① 計画に含まれるべき内容
・ 具体的な目標設定(1 年間程度の長期目標・1学期間程度の短期目標)
・ 指導内容と指導方法
・ 評価
など
② 期待される効果
・ 職員間の共通理解と一貫した指導が行いやすくなる。
・ 保護者との指導の連携が図られる。
・ 具体的に評価できるようになり、指導の改善を図ることができる。
※ 「個別の指導計画」は、学校の教育課程や指導計画、当該生徒の「個別の教育支援
計画」等を踏まえて、より具体的に生徒の一人一人の特別な教育的ニーズに対応し
て指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだ指導レベルの計画です。
個別の指導計画、個別の教育支援計画のメリット ~ 先進校の実践から ~
・ 学年進行に伴う教職員間の円滑な引き継ぎが行われ、指導の継続性が確保できた。
・ ケース会議の内容を継続的に記録して保護者にも伝えることで、保護者支援にも
役立った。
4
個別の教育支援計画と個別の指導計画の取扱いに関する注意事項
(1)様式については、CD「通常の学級における特別支援教育充実のため
に」
(平成22年
福岡県教育委員会)に様式例を収録しているが、生
徒の実態や学校等の実情に応じて、形式を作り変えて活用できること。
(2)作成及び活用に当たっては、保護者(本人)の参画が大切であること。
(3)取扱いは、十分注意する必要があること。特に管理は厳重に行い、外
部電子媒体等への保存は絶対にしないこと。
個別の教育支援計画・個別の指導計画は、教育指導上必要な情報を整理
した個人情報です。効果的な支援を行うためには、保護者(本人)が作
成・活用に参画し、連携して支援することが大切です。また、情報漏え
いを防ぐための厳重な管理が必要であり、他の機関に情報提供する場合
は、保護者の同意が必要です。
- 12 -
Q7
1
専門家による巡回相談の効果的な活用方法を教えてください。
〔校内研修の講師について〕
専門家による巡回相談の活用方法
巡回相談の効果的な活用方法として、下表のような相談タイプが考えられます。
相談タイプ
Aタイプ
(講 話)
Bタイプ
(支援体制)
具体的な相談内容
○ 学校等内における特別支援教育に関する理解・啓発
(例1)職員の共通理解を図るための研修における講話
○ 学校等内における推進体制整備に関する助言
(例2)校内委員会やコーディネーターを対象とした助言
○ 学校等内における個別事例に対応した相談
(例3)行動観察(授業、休み時間等)や心理検査の実施、結果説明
Cタイプ
(例4)学級担任や保護者を交えた相談
(個別相談)
(例5)ケース会議(事例検討会)における助言
(例6)個別の指導計画等の作成に関する支援
○ 学校等間連携における支援
Dタイプ
(例7)保幼小連絡会や中高連絡会における助言
(連携支援) (例8)合同授業研究会における助言
(例9)中学校区合同研修会における講話や助言
ABタイプ ○ AタイプとBタイプの混合
(混合型)
(例 10)公開授業(行動観察)+ 職員研修会
※ Cタイプを実施した場合は、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成を確実に
行うものとする。
<巡回相談実施の手順(申請)>
③ 事前調査
事前調査シート
シート(
シート(別紙様式)
別紙様式)(Cタイプ)
タイプ)
※ サポートヒントシート
サポートヒントシートを
シートを含む。
依頼
調整
巡回相談員
② 決定通知
教育事務所
県立学校
※
① 申請書(様式1)
※実施1
実施1か月前まで
月前まで
記入した「事前調査シート、サポートヒントシート」は、FAX
FAX送信厳禁
FAX送信厳禁
コラム④
~校内研修の講師について~
各教育事務所に設置している巡回相談チームには、大学教授や医師、臨床心理士、
特別支援学校の特別支援教育コーディネーター、指導主事等が相談員として登録され
ています。したがって、特別支援教育に関する校内研修を実施する際には、巡回相談
Aタイプ(講話型)として、講師を招聘することができます。
- 13 -
Q8
中学校等との連携について、どのような方法が考えられますか?
発達障害を含む障害のある生徒が充実した学校生活を送るためには、学校間の十分な連
携・協力の工夫が大切です。
〔取組例〕
入
入
試 前
○
配慮を必要とする生徒に関する相談の受け入れ・情報収集
○
対象生徒の学校見学や体験入学の受け入れ・情報収集
学 前
○
入学予定者説明会における「高等学校保護者向けリーフレット」※の配布
○
入学予定者説明会における個別相談時間の設定
(面談による本人や保護者からの情報収集)
○
支援内容等の中学校からの情報収集
・ 生徒の特性や中学校における支援内容や方法
・ 「引き継ぎシート」(ふくおか就学サポートノート)※の活用
※巻末資料参照
○
入
校内委員会における情報整理、支援方針検討
・ 必要に応じて中学校関係者や専門家(巡回相談)の参加要請
学 後
○
中学校への情報提供・意見交換会
注)入学希望者・入学予定者からの情報収集等については、入学者選考の公平
性や情報管理の観点から十分注意すること。
コラム⑤ ~ 中学校から高等学校へ円滑に引き継ぐために ~
対象生徒の保護者や中学校の先生方によっては、高等学校が義務教育ではないことか
ら、高校入試や入学後の進級において不利になることを懸念し、発達障害等の障害のあ
ちゅうちょ
ることを高等学校に伝えることを 躊 躇 する場合があります。
入試及び入学後においてどのような配慮や支援が行われるかについては、入学を希望
する生徒や保護者に十分に周知されていない場合もあることから、高等学校において
は、特別支援教育の取組状況や入学者の高校生活の状況など、中学校に向けた情報発信
や中学校との情報交換等を積極的に行うことを通して、中学校・高等学校互いの取組を
理解し、対象生徒本人のために円滑な引き継ぎができるようにすることが大切です。
- 14 -
Q9
高等学校では、実際にどんな支援が行われていますか?
〔高等学校における実践、学校生活におけるユニバーサルデザイン〕
各学校において、特別支援教育に関する具体的な支援が始まっています。学校によって
生徒や教職員の実態が異なるので、各学校の実情に応じた工夫が大切です。
教科指導における工夫
~先進校の実践から~
○ 板書の工夫
・文字を大きく、色チョークの使い分け、ふりがな
・板書量を減らす、板書スピード考慮
・ノートやプリントにそのまま記録できる板書の構造化
・黒板周辺の整理、連絡事項はホワイトボード使用
○ 授業中のICT機器の使用や録音の許可
○ 学習プリントの工夫
○ 学期始めに、授業のルールを明示
○ 座席指定しないことで、個々の特性に配慮
○ タイマーの使用
授業や指導方法等の改善
~県内高等学校の実践から~
○ 指示の仕方の改善(具体的に、はっきりと)
○ 生徒への連絡方法の改善
・一人一人にメモを渡して確認
・授業の変更を小黒板に書いて連絡
○ 説明の文章化
・口頭指導を極力減らし、説明の文章化を徹底
・文章の単純化
○ ノート量に応じた、学習プリントの活用
○ 単位認定に係るレポートについて
・項立てを一つ一つ書き出したチェック表を作成
・個別指導による書き方の指導
○ 放課後の個別指導における学生ボランティア活用
・授業のノートや課題の完成をサポート
・授業で理解できなかった部分の補足
・学生によるカウンセリング
- 15 -
「学校生活におけるユニバーサルデザイン」
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
⑲
⑳
項
目
掲示物は、シンプルにしている。特に教室前面や
前面黒板には、余分な掲示をしていない。
教室の棚など、学習用具などの整理整頓に努めて
いる。また、所定の場所が決められている。
教室内は、常にきれいである。ゴミや個人の道具
などが、床に落ちたままの状態はない。
黒板は、常にきれいである(黒板が白く汚れて、
文字のコントラストが弱まることはない)。
身の回りの物音や声等が、少なくなるような配慮
をしている。
学年(学校)で共通した学習のルールなどを作成
し、掲示するなどして活用している。
生徒の実態に応じて、座席の位置を配慮してい
る。
板書は、文字の大きさの他、配色や文字の量にも
気を配っている。
1時間の授業の見通しをもたせる工夫をしてい
る。
作業や活動を取り入れた授業を行うように心が
けている。
拡大文字やふりがななど、生徒の実態に応じた学
習プリント等の工夫を行っている。
TTや少人数指導等、指導形態の工夫を積極的に
行っている。
指示や説明などのとき、分かりやすい言葉遣いや
注目させる工夫を行っている。
指示や説明などのとき、視覚的な方法(写真や絵
図の利用)もあわせて用いている。
タイマーなどによる終わりの見通しや一度に行
う問題数の配慮などを心がけている。
自己選択・自己決定の機会や役割分担など、生徒
自身の行動に責任を持たせる工夫をしている。
一人一人の生徒が認められる場を意図的に設定
している。
生徒がエネルギーを発散させる場を意図的に作
っている。
具体的な例をあげながら生徒を褒めるようにし
ている。
生徒の様子(よさや課題)を保護者に伝える方法
を工夫し、家庭と連携した指導に努めている。
- 16 -
評
価
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
1 - 2 - 3 - 4
Q10 進路指導の考え方や進学・就労に関する情報を教えてください。
〔大学等における支援の実際、就労支援関係機関、雇用制度など〕
1
発達障害のある生徒等に関する進路指導
発達障害のある生徒の場合、将来の自立や社会参加に向けて、自己の抱える学習や社
会生活上の困難について総合的に適切な理解を深め、職業適性や困難を乗り越えるため
の対処方法を身につけることが必要です。
進路指導や自己理解を促す取組
~先進校の実践から~
○ 早期からのキャリア教育を充実させることにより、職業生活の準備を行うことが重
要である。
○ 就業体験活動を実施することにより、職業適性の発見や自己理解の促進、一人一人
に応じた支援や援助の在り方、実習授業等の成果測定や指導法の検証等、次のステ
ップに向けた課題を多数見出すことができた。
○ 従来からの進路指導の要素を生かしたSST(ソーシャルスキルトレーニング)を
行い、一定の成果を挙げた。
○ 進路実現を目指す支援の在り方を研究する中で、卒業後の進路を見据え、社会に出
た際に不可欠となる「コミュニケーション能力」を高める取組に加えて、就業体験
を行ったことは、生徒の進路意識の高揚と進路先の決定につながった。
○ 高校生である彼らの気持ちを最優先にして取り組んだことで、当事者自身が「自分
の特性を客観的に知る機会になった」「良いところ・優れたところを確認でき、自
信が持てるようになった」「不得手なところを知り、生活の中で注意することが確
認できた」等と述べている。
2
大学等における支援の実際
「教職員のための障害学生支援ガイド」(平成21年10月独立行政法人日本学生支
援機構)など、大学等における具体的な支援方法の提案がなされており、大学等におい
ても特別支援教育の充実が図られています。
大学等における発達障害のある学生に対する支援の実際
~障害学生修学支援事例集(H21.3 日本学生支援機構)から~
<受験前・入学前の支援事例>
○ 大学の授業について、体験受講を実施(本人が修学の可否を判断)
○ 高校との協議の場を設定。また、本人、保護者、カウンセラーによる面談実施
※ 入学後も継続して実施し、問題や不安を解消
<入学後の支援事例>
○ 履修登録時に、必要単位数や科目を職員が一緒に確認し、時間割作成
○ 受講科目を記載した教室配置図を提供
○ 講義の録音、デジカメで板書撮影、電子手帳、PC読み上げソフトの活用
- 17 -
3
就労支援に係る関係機関とその役割
就職に向けた準備支援
職場適応支援
職業生活支援
求職活動支援
発達障害者支援センター
「ゆう・
ゆう・もあ」
もあ」
「あおぞら」
あおぞら」
「つばさ」
つばさ」
「ゆうゆうセンター
ゆうゆうセンター」
センター」
発達障害のある方やその家族、関係機関へのサービスを
提供
・ 相談支援
・発達支援
・ 就労支援(就労前後の支援やストレスマネジメント)
福岡障害者職業センター
職業相談や職業相談(若年者を対象とした相談も実施)
などのサービスを行う国の機関
・ 雇用制度の活用など
職
ハローワーク
就
ハローワークと協力して、継続的なサービスを提供
・ 職業指導、職業評価、職業準備支援
・ ジョブコーチによる支援
・ 職場適応指導
企業
障害者就業・生活支援センター
就業及び日常生活・社会生活上の支援、相談などの
サービスを提供
・ 就職準備支援(基礎訓練、職場実習等)
・ 求職活動
・ 職場定着支援(ジョブコーチによる支援)
・ その他、生活面の支援
4
雇用に関する制度
(1)発達障害者雇用開発助成金
〔実施主体:国・窓口:ハローワーク〕
ハローワーク等の紹介により発達障害者を雇用する事業主に対し、賃金の一部に
相当する額を助成する。
(2)トライアル雇用
〔実施主体:国・窓口:ハローワーク〕
障害者を一定期間雇用することにより、求職者及び求人者の相互理解を促進する
こと等を通じて、早期就職の実現や雇用機会の創出を図る。
(3)職場適応援助者(ジョブコーチ)支援
〔実施主体:高齢・障害者雇用支援機構・窓口:障害者職業センター〕
事業所にジョブコーチを派遣し、障害者及び事業主に対して、雇用の前後を通じ
て障害特性を踏まえた直接的、専門的な援助を行う。
- 18 -
Q11 理解・啓発の方法として、どのような方法が考えられますか?
〔保護者向け・生徒向け〕
1
保護者に向けた理解・啓発
(1)PTA総会等における理解・啓発
PTA総会等において、学校としての特別支援教育の考え方や進め方、相談窓口と
しての特別支援教育コーディネーターなどを紹介することが考えられます。
(2)学校説明会や個人面談におけるリーフレットを活用した理解・啓発
学校説明会や個人面談の際に、高等学校保護者向けリーフレット「実は、こんなこ
とで困っていませんか」(平成21年12月
福岡県教育委員会)※を配布して、特
別支援教育や発達障害に関する理解・啓発を行うことが考えられます。
※巻末資料参照
(3)学校便り等を活用した理解・啓発
学校便り等の中で、特別支援教育に関する情報を紹介したり、校内委員会や特別支
援教育コーディネーターの役割についてお知らせしたりすることも考えられます。
2
生徒に向けた理解・啓発
○ 大前提として、生徒同士が多様な学び方や特性を互いに認め合い支え合うような人間
関係づくりが必要です。
○ 障害名に対するイメージは多様で、なかには誤解や偏見もあるので、障害の説明より、
具体的場面をとらえ本人が抱える困難を説明し、どう関われば良いかを教えていく方
が効果的な場合もあります。
- 19 -
Q12 保護者との連携の在り方を教えてください。
○ 保護者・本人からの相談がなく、発達障害に起因すると考えられる生徒の学習面や行動
面等の問題に気付いたときは、発達障害についての十分な認識を持つことができるよう
な情報提供や教育相談を行うことが必要です。
○ その際、本人や保護者の心情に配慮した言動が必要であり、できないことや問題行動で
困っていることのみを述べるのではなく、「卒業後の進学・就労に向けて、学習上・生
活上で本人が困っていること(将来、困るであろうと考えられること)を、学校の指導
の工夫で改善したい」という姿勢で連携を取ることが大切です。
○ また、同時に、生徒本人が自己認知を深めるような指導・支援も効果的です。
○ 本人や保護者にどのように伝えたらよいか難しい場合については、巡回相談等を活用し
て、医療や心理等の専門家からのアドバイスを受けるようにすることも考えられます。
○ 保護者から相談があった場合は、生徒の実態をもとにした学校としての取組の見通しを
示し、協力を求めるようにしましょう。
- 20 -
Q13 研修に活用できる参考資料等を紹介してください。
〔特別支援教育に関するスキルアップを図るために〕
1
通知
○ 「発達障害者支援法の施行について(通知)」(平成17年4月 文部科学省)
○ 「『発達障害』の用語の使用について」(平成19年3月 文部科学省)
○ 「特別支援教育の推進について(通知)」
(平成19年4月 文部科学省初等中等教育局長)
○ 「特別支援教育の推進について(通知)」
(平成21年12月11日 福岡県教育庁教育振興部高校教育課長)
2
答申・報告書、資料等
○
「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」
(平成 15 年 4 月 不登校問題に関する調査研究協力者会議)
○
「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自
閉症の幼児児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」
(平成16年1月 文部科学省)
「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」
○
(平成15年3月 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議)
○
「特別支援教育の制度の在り方について(答申)」
(平成17年12月 中央教育審議会)
○
「高等学校における特別支援教育の推進について」
(平成21年8月 特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG報告)
○
「生徒指導提要」(平成22年3月 文部科学省)
○
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「発達障害教育情報センター」HP
・ 研修に役立つ教員向け講義の配信
・ 教材教具や支援機器に関する情報
・ 発達障害の定義・関係法令等の情報や理解・支援・指導に関連する情報
・ 発達障害についての調査研究に関する情報
3
など
福岡県教育委員会発行の資料等
○
教職員向けリーフレット「高等学校においても特別支援教育が進んでいます」
(平成 21 年 5 月)
○
高等学校保護者向けリーフレット「実は、こんなことで困っていませんか」
(平成 21 年 12 月)
- 21 -
○
サポートヒントシート(気になる生徒を特別支援教育の視点から理解し、支援の
ヒントを得るためのシート)(平成 22 年 3 月)
○
CD「通常の学級における特別支援教育充実のために(サポートヒントシート、
個別の教育支援計画等の様式例)」(平成 22 年 3 月)
○
福岡県教育センター研究紀要
研究紀要 150
はじめて特別支援教育に携わる先生のための手引
研究紀要 138
はじめよう学習障害(LD)児への支援
研究紀要 143
はじめようADHDの子どもへの支援
研究紀要 156
はじめよう!自閉症の子どもへの支援
研究紀要 163
すすめよう!自閉症の子どもへの支援
研究紀要 181
これならできる!「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」作成ハンドブック
【引用・参考文献等】
○ 高等学校における特別支援教育の推進について
(特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校ワーキング・グループ報告)
○ 小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の
児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
(文部科学省)
○ 特別支援教育コーディネーター実践ガイド(独立行政法人国立特殊教育総合研究所)
○ 小中学校における発達障害のある子どもへの教科教育等の支援に関する研究
(独立行政法人国立特殊教育総合研究所)
○ 福岡県障害者福祉情報ハンドブック2010
(社会福祉法人福岡県社会福祉協議会
○ 特別支援教育コーディネーターハンドブック
- 22 -
福岡県障害者福祉情報センター)
(宮崎県教育委員会)
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