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極右ドミノがまたひとつ ~オーストリアで極右出身の大統領が誕生する恐れ

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極右ドミノがまたひとつ ~オーストリアで極右出身の大統領が誕生する恐れ
EU Trends
極右ドミノがまたひとつ
発表日:2016年4月25日(月)
~オーストリアで極右出身の大統領が誕生する恐れ~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ オーストリアの大統領選挙は、長年大統領職を占めてきた二大政党の候補が決選投票に進めず、極右
政党出身候補と緑の党出身の独立候補が5月22日の決選投票に臨む。大統領は首相や閣僚の任命権や
議会の解散権を有するが、議会の意向に反して権限を行使することはなく、儀礼的な存在とされる。
ただ、各種の世論調査で最多支持を獲得する極右政党出身の大統領が誕生すれば、議会の解散権を政
治カードに利用する恐れもある。難民危機の深刻化以降、各国で極右やEU懐疑政党の躍進が目立つ。
24日に行われたオーストリアの大統領選挙は、極右ナショナリスト政党「自由党(FPO)」のホッフ
ァー候補が37%余りの最多票を獲得し、20%余りの次点票を獲得した環境政党「緑の党」の元党首で独立
候補のファン・デア・ベレン氏とともに5月22日に行なわれる決選投票に進んだ。今回の選挙は現職のフ
ィッシャー大統領の任期満了と三選禁止により行なわれたもの。初回投票で何れの候補も過半数を獲得で
きなかったため、上位2名による決選投票で次期大統領が選出される。同国では第二次大戦後の1951年に
大統領の直接公選制が始まって以来、中道左派の「社会民主党(SPO)」と中道右派の「国民党(OV
P)」の二大政党の候補が交替で大統領職に就いてきた。両党の候補は何れも11%余りの獲得票にとどま
り(第4位と第5位)、初めて決選投票に進めなかった。次点のファン・デア・ベレン候補はかつて社会
民主党にも席を置いた穏健派とされ、二大政党の票が流れることも考えられる。ただ、初回投票でのホッ
ファー候補のリードの大きさを考えれば、オーストリアに極右政党出身の大統領が誕生する可能性もある。
任期6年の連邦大統領はオーストリアの国家元首で、連邦首相、閣僚、最高裁判所判事、軍司令官など
の任命権を持ち、国民議会(下院)の解散権が認められている。だが、連邦首相や閣僚の任命にあたって、
大統領は国民議会の勢力図を反映することが求められ、内閣総辞職や閣僚罷免に当たっては国民議会での
不信任決議を待って行なうのが通例で、実際には儀礼的な存在とされている。
2013年に行なわれた前回の国民議会選挙では、社会民主党が26.8%の最多票を獲得し、国民党がそれに
次ぐ24.0%、自由党が20.5%で続いた。社会民主党のファイマン党首が連邦首相に就任し、国民党との間
で連立政権を率いている。各種の世論調査によれば、難民危機が深刻化した以降、移民排斥を訴える自由
党が支持を伸ばしている。同国はトルコからバルカン半島を北上した難民がドイツなどを目指す主要通過
国の1つで、大量の難民流入への国民の不安が高まっている。昨年秋以降、自由党の支持率は一貫して
30%を超え、ともに20%台前半の国民党と自由党を引き離している。二大政党の合計支持率は過半数を割
り込んでおり、2018年に予定される次期総選挙後の政権運営の行方が不安視される。これまでは大統領の
出身母体と議会の主流派政党が一致していたため、大統領が議会の意向に反して権限を行使することはな
かったが、極右政党出身の大統領が誕生した場合、議会の解散権を政治カードに利用する恐れも出てくる。
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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