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卵細胞質内精子注入法( l CSI ) の実技

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卵細胞質内精子注入法( l CSI ) の実技
卵細胞質内精子注入法( l
CS I
) の実技
青野展也
吉田レディースクリニック
ICSI の流れ
採卵
→
前培養
→
ヒアルロニダーゼ処理
I CSI 開始
←
→
I CSI ディッシュ準備
マイクロマニピュレーター準備
卵子の裸化( ヒアルロニダーゼ処理)
ヒアルロニダーゼは調整済みの市販品または、
自施設で作製する方法がある。しかし、ヒアル
ロニダーゼは通常ウシなどの動物由来製品であ
り、その使用を避けたい場合は Medi Cul t 社よ
りリコンビナント製品が市販されているのでお
勧めする 。
自施設で作製の際は
Si gma社の TypeV I n を用いて濃縮スト ック液を
作製・凍結保存し、使用時に m- HT F 等 の 操 作
培地で 80や40I Uj ml ! こ希釈調整を行うと便利で
ある。 4 wel l テ。イッシュなどに調整後のヒアル
ロニダーゼと洗浄用の操作培地を準備する 。 事
前に作成した卵子の直径よりもやや太めの径の
パスツ ールピ ペッ トを用い卵子を裸化する。細胞毒性を考慮し、処理時間を 30秒程度とし、
同一ディッシュ内の操作培地に移してから残っている卵丘細胞の除去と洗浄行う。卵丘細胞
は、極体放出の有無確認や I CSI 時の卵のホ ールディングやインジェクションの際に邪魔にな
らない程度であれば、完全に除去されなくても差し支えない。
ICSI 用ディッシュの作製
60mmのプラスチックディッシュのふたを使用する。ディッシュ内には精子浮遊用 7 %P V P
のドロップと、精子不動化用の 7 %P V P ドロップ、ホ ールディングピペットセッティング用
のm- HT F ( 血清加)
ドロ ップ、 I CSI 操作時卵子用の m- HT F ( 血清加)
ドロップを作製し、
ミネラルオイルで、覆う。 PVPi 濃度は卵子への影響を考え、その施設で使用するインジェクター
やインジェクションピペットにより、細かい動きのコントロールが可能であれば、出来るだ
け低い濃度で設定するのが好ましい。
- 63-
また、卵子数が多数の場
合や操作に時間がかかる恐
れのある人はディッシュを
ここに精子懸濁液を滴下
数枚作製し施行する。
I CSI の始める少し前に精
精子不動化用および
子 浮 遊 用 7 %P V P の L 字型
イ
ン
シ
.ェ
ク
シ
ョ
ン
ヒ。
ヘ。
ト
ツ
ドロップの左側に回収した
セツテインゲ用 7 %P V P
精子懸濁液を滴下する。運
動性の良好な精子は自力で
ホー j レディンゲピペット
I CSI 時卵子用 m- HT F
P V P の辺縁を泳ぎ出し、
セッティング用 m- HT F
ディ ッシ ュの中央側までた
どり 着くの で、運動良好精
子 を 選別しやすい 。 非常に運動能が悪いときはこのドロッフ。
の P V P濃度を低くするか、 P V P
の代わりに m- HT F等の操作培地に 替えて対処する。
ピペットのセッティング
スム ーズに I CSI を施行するためにピペッ トのセッティングが重要になる。当院ではインジェ
クションピペット側とホ ールデイ ングピペット側の両インジェクターのシリンジ内とチュ ー
ブライン内はミネラルオイルを充填している 。 イン ジェクタ
のシリンジ内のミネラルオイ
ル 量 が 十 分 で あ る こ と を 確 認 後 に 、 各 ピ ペ ッ ト を 差 し込む。 各 ピペットのセッティング方は
下図に示した。
ホールディングピペットはディッシュ面に対して平行になるようにセッティングし、 al r の
層を残し準備したディッシュのホ ールデ ィングピペットセッティング用のドロップから m- HT
F を吸引する 。
インジェクションピ ペッ トは精子の不動化がしやすいようにディッシュ面に対して平行よ
りやや下向きになるようにセッティングする。 mr の層を残し準備したディッシュのド ロ ップ
を覆っているミネラルオイルを吸引し、次にインジェクションピペットセッテイング用ドロッ
プ の 7 %P V P を 吸 引
する。 al r の層と P V P
先端をやや下向きにセツティング
の層の間にミネラルオ
4
イルを入れてあるのは
P V P が直接 mr に 触 れ
ると、時間の経過とと
もに動きがロックされ
やすくなる場合があり、
それを防 ぐ為であ る。
ミネラルオイル
PVP
m- Hf F
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精子の不動化処理
精子浮遊用 PVP ドロップのディッシュの中央側まで
たどり着いた運動性と形態の良好な精子を選別し I CSI
に供する。
選別された精子はインジェクションピペットに吸引
し、精子不動化用 PVP ドロップのディッシュ底面に精
子が縦になるように排出する。ただちに精子尾部にイ
ンジェクションピペットが上からク ロスするようにディッ
シュ底面に押さえつける。次にインジェクションピペッ
トを上から押さえつけたまま右に引くと尾部が折れ曲
がり、不動化されたことを確認する。不動化の際、精
子頭部にインジェクションピペットがあたり、直接ダ
メージが加わらないように注意する。精子不動化が完
了したら、精子を尾部から吸引し、ピペット内で吸排
圧による精子の動きが停止したのを確認し、次に卵の
ホールド操作に進む。
ICSI の実施
精子不動化後は速やかに I CSI を実施しなければならなし、。 ホールディングピペットを卵子
用のドロップに移動し、卵子を極体の位置が
6 時または 12時になるように固定する。次に卵
子の辺縁にインジェクションピペットのスパイク先端を合わせ軽く透明帯に押しつけ、精子
を先端まで移動する 。続いてインジェクションピペットを少し奥まで押し付け、先に透明帯
だけを貫通させるようにする。透明帯が貫通したと同時にピペットをやや右に戻し、インジェ
クターでほんのわずかだけ吸引圧をかけ、卵子の中央より奥まで刺し入れる。ピペットを刺
し入れた部分の卵細胞質膜の号│ っ張られ方を見て、卵細胞膜が破れたのを確認する。この時
点で破れなかった場合、さらにインジェクションピペットを奥まで進め、卵細胞膜の破れを
確認する 。
それでも破れないときは位置を替えて再度施行を繰り返す。 再度刺し直す際は、インジェ
クションピペットはすべて抜き去る必要はなく、先端が囲卵腔まで抜けている状態で、新し
い箇所の卵細胞質膜から刺し入れる。破れたのを確認したら精子を注入し、ピペットをゆっ
くりと抜き去る。
重要なことは確実に卵細胞質膜を破り、精子を細胞質内に注入することである。
Fhu
pnv
破れている
破れていない
↓
ピペットをさらに進める
ICSI 成功のポイント
A R T操作全般で重要なことは、いかに早く確実にインキュベータ一外での操作を行うかで
あり 、妊娠率にも影響してくる 。 そのため I CSI においても、どれだけスム ーズに確実に進行
できるかが成功のカギとなり、事前のセッテイングが重要になる 。 マイクロマニピュレ ー ター
の可動範囲の確認、インジェクタ ー内のオイル残量、チュ ー ブライン内の気泡などは必ず先
に確認してから行わないと、実際の手技の最中にトラブルにつながりかねない。
また I CSI I 手技で重要なのは、精子を不動化した後は出来るだけ早く卵子内に注入 しなけれ
ばならない 。その ためインジェクションピペット内での精子のスム ーズなコント ロー ルは 、
素早く確実に ICSI を実施するのに必須となる 。 しかし使用するインジェクタ一 、 インジェク
タ一内の媒体、選択したインジェクションピペットの径、 PVPi 濃度などの様々な組み合わせ
によりそのコントロールの度合いが大きく異なる 。そ れらを細かく検討し 、 よりスム ーズに
コントロ ール出来るセ ッテインクーを見つけだすことが、 I CSI 手技の成功の秘訣である。
連絡先吉田レディースクリニック
干 981- 1105
仙台市太白区西中田 2 - 23- 5
T E L : 022- 741- 8851 F A X : 022- 741- 3475
E- mai l : aono@yoshi da-lc. j p
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