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2.血管炎

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2.血管炎
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日皮会誌:115(5)
,724―731,2005(平17)
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2.血管炎
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川名 誠司 (日本医科大学)
要
れに内臓病変の併発例や全身性血管炎への移行例があ
旨
るので,注意が必要である.本稿では,血管炎を診断,
血管炎は,全身の血管を障害し種々の内臓病変をき
たす全身性血管炎と,皮膚に限局する皮膚限局性血管
治療するにあたって,留意すべき臨床的特徴,組織学
的所見,標準的治療法について述べた.
炎に分けられる.全身性血管炎には結節性多発動脈炎,
はじめに
顕微鏡的多発動脈炎,アレルギー性肉芽腫性血管炎,
Wegener 肉芽腫症,側頭動脈炎がある.これらの血管
血管炎は,血管そのものが標的となり炎症,変性・
炎はさまざまの頻度で皮膚に血管炎を生ずる.また,
壊死,破壊が生じる疾患群である.病理組織学的に,
アナフィラクトイド紫斑,蕁麻疹様血管炎,クリオグ
血管壁が全層性に冒され,フィブリノイド壊死,核破
ロブリン血症性紫斑,広義の過敏性血管炎は皮膚病変
砕を伴った好中球浸潤,出血を伴う炎症を認めるもの
が主体であるが,腎,肝,消化管,神経など皮膚以外
を壊死性血管炎と呼んでいる.閉塞や動脈硬化などに
の臓器障害もありえるため,全身性血管炎とみなされ
よる二次的な炎症は除外される.ただし,皮膚に生じ
る.一方,皮膚限局性血管炎には,皮膚アレルギー性
る血管炎では真皮上層の細小血管が罹患することが多
血管炎,皮膚型結節性多発動脈炎があり,全身症状は
く,このレベルの血管ではフィブリノイド壊死を認め
無いかあっても軽微で,生命予後は良い.しかし,ま
ることが少ない.そのため,好んで白血球核破砕性血
COLOR
図 1 罹患血管の大きさおよび組織学的位置と皮膚症状の関係
2.血管炎
725
表1 チャペルヒル会議により採用された血管炎の病名とその定義
1.大血管の血管炎
・巨細胞血管炎(側頭動脈炎)
・高安動脈炎
大動脈とその主要な分枝の肉芽腫性血管炎で,頸動脈の頭蓋外分枝に高頻度である.しばしば
側頭動脈に病変がみられる.通常,発症年齢は 50 歳以上でリウマチ性多発筋痛症と関連がある.
大動脈とその主要な分枝の肉芽腫性炎症.通常 50 歳以下に発症する.
2.中血管の血管炎
・多発動脈炎(古典的)
・川崎病
小動脈の壊死性炎症で,糸球体腎炎や細動脈,毛細血管,細静脈に炎症を認めない.
粘膜皮膚リンパ節の病変を伴う大,中,小動脈の炎症.冠動脈がしばしば侵される.大動脈や
静脈にも変化を伴うことがある.通常,小児の疾患である.
3.小血管の血管炎
・Wegener 肉芽腫症
・アレルギー性肉芽腫性血管炎
気道の肉芽腫性炎症と小∼中血管の壊死性炎症を認めるもの(細動脈,毛細血管,細静脈を含
む).通常,壊死性糸球体腎炎を伴う.
気道の肉芽腫性炎症で好酸球を多く含む.また,中小血管に壊死性炎症を認める.
(Churg-Strauss 症候群)
・顕微鏡的多発血管炎
気管支喘息や好酸球増多症を伴う.
壊死性血管炎で免疫複合体の沈着を認めない.細動脈,毛細血管,細静脈などの小血管に変化
をみとめる.中動脈の炎症を伴っても,伴わなくてもよい.壊死性糸球体腎炎の頻度が高く,
肺毛細血管炎もしばしば伴う.
・Henoch-Schönlein 紫斑病
(アナフィラクトイド紫斑)
・特発性クリオグロブリン血症
IgA を主体とする免疫複合体の沈着を認める小血管の血管炎.通常は皮膚,腸管,腎糸球体が
障害され,関節炎を伴う.
血清中にクリオグロブリンを認め,血管壁に免疫複合体の沈着を認める血管炎.小血管が主に
障害を受け,皮膚と腎糸球体がしばしば侵される.
・皮膚白血球破砕性血管炎
全身性血管炎や糸球腎炎を伴わない,皮膚に限局した白血球破砕性血管炎.
管炎(Leukocytoclastic vasculitis,LCV)という用語が
用いられている.
2)全身性か皮膚限局性かを判断する
血管炎を疑う皮膚症状が出現したときは,病理組織
血管炎をきたす疾患は多い.その中で,病変が全身
学的診断と同時に,以下の臨床症状,検査所見によっ
臓器の血管に及ぶもの,すなわち全身性血管炎(血管
て早期に全身性か皮膚限局性かを判断しなければなら
炎症候群とも呼ぶ)と,主として皮膚に限局する皮膚
ない.すなわち,全身性血管炎は,発熱,関節痛,筋
限局性血管炎とに分けられる.しかし,実際の診療の
肉痛,全身倦怠感,体重減少などを伴い,血液検査で
場では様々な移行型や重複型が存在するため,皮膚で
血沈亢進,CRP 上昇,白血球増多が顕著にみられるこ
血管炎が確認された場合は,速やかに全身検索するこ
とが多い.一方,皮膚限局性の場合,こうした所見は
とが必要である.
軽度にとどまる.
1.皮膚科の立場からみた血管炎の診断手順
1)血管炎の皮膚症状をとらえる
3)血管炎の確定診断
全 身 性 血 管 炎 の 診 断 は,Chappel Hill Consensus
血管炎の皮膚症状は病理組織所見と対比すると理解
Conference on the Nomenclature of Systemic Vasculi-
しやすい
(図 1)
.真皮上層の細小血管の LCV は,紫斑
tis の分類1)のほか,厚生省(現厚労省)研究班による診
(多くは浸潤を伴う)
,膨疹,浮腫,紅斑,丘疹として
断基準2)などを用いて行う
(表 1)
.しかし,実際の診療
現われる.真皮中層∼下層の LCV では紫斑は大型と
の場では,臨床症状が 2 つないし 3 つの血管炎の症状
なり,小結節,水疱潰瘍,壊死など多彩になる.組織
を重複して出現するものもあり,診断に苦慮すること
球性反応が加味される(肉芽腫性血管炎)と,上記皮
も少なくない3).
膚症状は浸潤をより強く触知するようになり,結節も
血管炎の皮膚病変は,小血管の血管炎において頻度
大きくなる.真皮深層∼脂肪組織の細小血管や小動脈
が高い.ところが,前述の分類,診断基準は,このレ
の壊死性血管炎,肉芽腫性血管炎では,皮下結節,網
ベルの血管炎の記載が不十分であり,実際の皮膚科診
状皮斑,結節,潰瘍を生じ,趾動脈の阻血により肢端
療に有用とはいえない.したがって,本稿ではこの領
壊疽となる.
域の血管炎の記述を補足した.
726
川名
R
誠司
R
図 2 結節性多発性動脈炎(左)
:下肢の網状皮斑と多発性潰瘍.
(右):小動脈の壊死
性血管炎.
2.血管炎各論
身の臓器への侵襲度を把握しなければならない.
急性期の治療は,免疫反応や好中球の活性を抑える
1)結節性多発動脈炎 polyarteritis nodosa(PN)
目的で,基本的に副腎皮質ステロイド,重症例では免
中小の筋性動脈の壊死性血管炎及びその閉塞による
疫抑制剤の併用が主体となる.急性進行例では,パル
症状で,発熱,高血圧,体重減少,関節痛,筋痛を初
発症状として,その後,全身諸臓器(腎,心血管系,
ス療法や血漿交換療法を施行する(図 3)
.
また症状を最小限に止めるために,早期より抗凝固
腸管,中枢および末梢神経系,眼など)に病変を生じ
薬や血栓溶解薬の併用が行われる.慢性期にはワー
る.腎病変としては,糸球体腎炎を伴わない血管性腎
ファリンなどの抗凝固薬,抗トロンビン剤,血管拡張
障害をきたし,多発性の腎梗塞により腎不全になる.
剤が使用される2).
血管造影では,しばしば多発性動脈瘤や梗塞がみられ
る.侵襲的な検査がしにくい場合は MR angiography
も有効である.十分な治療が行われないと予後不良で
あり,死因は心疾患,腎不全によることが多い.診断
は PN の診断基準2)に準じて行う.
皮膚症状は 5∼10% に生じ,下肢を中心に網状皮斑,
紫斑,結節,潰瘍,壊疽などが認められる.病理組織
像は真皮・脂肪組織境界部の小動脈の壊死性血管炎で
ある(図 2)
.
病因は不明であり,過去に欧米では HBV との関連
性(III 型アレルギー)が取り上げられた4)が,最近は減
少し,しかも本邦ではもともと HBV 陽性例の報告は
少ない.
治療を開始するにあたって,生命予後を決定する臓
器に不可逆的な変化が生じてからの対応は困難で予後
不良となるので,早急に入院,安静の上,速やかに全
図 3 結節性多発性動脈炎の標準的免疫療法
2.血管炎
727
R
R
図 4 アレルギー性肉芽腫性血管炎(写真は浅井俊弥博士より供与された).
(左):手
指の小結節(右)
:真皮下層の壊死性,肉芽腫性血管炎と顕著な好酸球浸潤.
2)顕微鏡的多発動脈炎 microscopic polyangiitis
(MPA)
関連血管炎として包括する1).
P-ANCA…顕微鏡的多発血管炎(陽性率 45∼55%)
PN と同様に全身の臓器が冒されるが,主に細動脈,
アレルギー性肉芽腫性血管炎(陽性率
細静脈,毛細血管レベルの,より小さな血管の壊死性
60∼70%)
血管炎である1).そのため,肺,
腎病変を高率に合併し,
C-ANCA…Wegener 肉芽腫症(陽性率 80%)
半月体形成性の急速進行性糸球体腎炎や肺出血,間質
ANCA は好中球,血管内皮細胞に作用して種々のサ
性肺炎を引き起こしやすい.また,消化管出血,多発
イトカイン,接着分子の産生を誘導し,血管炎の進展
性単神経炎,眼症状,脳出血,脳梗塞など多彩な症状
を も た ら す と 考 え ら れ て い る(ANCA-cytokine se-
をきたす.
quence theory5)6))
.
皮膚では細小血管の LCV を反映し,紫斑,浮腫,紅
斑,小結節,潰瘍などの症状を示し,アレルギー性肉
3)アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulo-
芽腫性血管炎,アナフィラクトイド紫斑,皮膚アレル
matous angiitis,AGA)
,Churg-Strauss Syndrome
ギー性血管炎との鑑別が必要である.
治療は PN に準ずるが,とくに急速に進行する腎不
全の治療に重点が置かれる2).
*ANCA 関連血管炎
抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic an-
先行する気管支喘息,好酸球増多を特徴とし,心,
肝,脾,消化管,腎に肉芽腫性血管炎による症状を示
す.また,多発性単神経炎の頻度が高く,ほぼ必発で
ある.
皮膚症状は約 50% の症例に認められ,紫斑,膨疹,
tibody,ANCA)
は,1982 年 Davies らにより報告され,
紅斑,丘疹,水疱,潰瘍,網状皮斑と多彩である.皮
全身性血管炎に特異性の高 い マ ー カ ー と さ れ て い
膚の病理組織所見は,真皮の細小血管の壊死性血管炎
る1)5).ただし,病勢のよい指標とはなり得るが,生検,
に加えて組織球浸潤を伴い(肉芽腫性血管炎,血管外
血管造影などによる診断を上回る診断価値をもつもの
ではない.perinuclear ANCA(P-ANCA)
,cytoplas-
肉芽腫)
,さらにその部位に顕著な好酸球浸潤を認める
(図 4)
.
mic ANCA(C-ANCA)があり,それぞれ主要対応抗原
検査では,末梢血好酸球増多,IgE 高値を認める.
はミエロペルオキシダーゼ(MPO)
,プロテイナーゼ
P-ANCA は診断および疾患活動性の目安となるが,特
3(PR3)である.陽性率の高い下記の疾患を,ANCA
異的なものでない.
728
川名
誠司
治療は PN に準ずるが,ステロイドに対する反応は
より良好である2).先行する気管支喘息の治療を同時
に行い,さらに多発単神経炎のリハビリにも留意する.
4)Wegener 肉芽腫症 Wegener’
s granulomatosis
(WG)
鼻,咽頭,上気道,肺,眼,腎などを中心に肉芽腫
R
性炎症や組織壊死を起こす疾患で,鼻出血,鼻中隔穿
孔,鞍鼻,血痰,咳嗽,呼吸困難を初発症状とし,腎
症(蛋白尿,血尿,急性進行性腎不全)を種々の程度
に生じる.
皮膚病変は約半数にみられ,前述の AGA の皮疹に
類似するが,組織学的に AGA ほど好酸球浸潤は目立
たない(図 5)
.
検査では C-ANCA が約 80% に陽性で,疾患特異性
が高い.
治療は PN に準ずる.同時に上気道,肺の細菌感染対
図 5 Wegener 肉芽腫症(写真は浅井俊弥博士より
供与された)肘関節部の結節.
策を行う2).
5)側頭動脈炎 Temporal arteritis(TA)巨細胞性
動脈炎 Giant cell arteritis
60 歳以上の高齢者に多く,主に浅側頭動脈に発症す
る肉芽腫性血管炎で巨細胞を伴うことが多い.側頭動
する(図 6).まれに側頭部に潰瘍が形成されることも
ある.リウマチ性多発筋痛症(近位筋のこわばりと疼
痛,非特異的炎症所見)がしばしば合併する.
治療はステロイド投与が有効である2).
脈および周囲の動脈が索条に硬く腫脹し,拍動を触れ
る.局所の発赤腫脹,疼痛,頭痛,視力障害を主訴と
R
R
図 6 側頭動脈炎(左)
:側頭部の索状硬結(右):側頭動脈の肉芽腫性血管炎
胞を散見する
巨細
2.血管炎
729
R
R
図 7 アナフィラクトイド紫斑(左)
:下肢に多発する浸潤ある紫斑.
(右):真皮上層
の細小血管の LCV.
6)アナフィ ラ ク ト イ ド 紫 斑 Anaphylactoid purpura(AP)Henoch-Schönlein 紫斑病
は,腎生検が必要となる.また,消化管検査として便
潜血検査は必ず行い,腹部症状の強い例では腹部超音
細菌感染とくに溶連菌感染,ウイルス感染,薬剤服
用などを契機に,両下肢,ときに上肢,体幹に,紫斑,
波検査や内視鏡検査を行う10).
治療に際しては,初期の安静が腎病変の発生と増悪
膨疹,浮腫が左右対称性に多発する7)
(図 7)
.幼・小児
を防ぐのに重要との意見もあり,可能なかぎり入院の
に好発するが,成人にも稀ではない.関節痛,腹痛,
上,安静を保つ.一般的に血管強化剤や止血剤として,
下血を伴い,高率に腎病変を合併する.組織学的に真
アドナ!,トランサミン!,ビタミン C などの投与を
皮上∼中層の細小血管の LCV を示し,血管壁に IgA,
行う.難治再発例にはミノサイクリン,diaminodiphen-
補体の沈着をしばしばみることから,IgA 免疫複合体
ylsulfone(DDS)を加え,重篤な腎障害や腹部症状を
6)
8)
9)
の関与した III 型アレルギーと考えられている
.
起こしたものには,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬
一般に予後良好であるが,腎障害の進展が予後を悪化
の併用が必要である.XIII 因子補充療法は XIII 因子の
させる.とくに成人や高齢者では,ネフローゼ症候群
低下した症例の,腹部症状および腎症状の改善に有用
などの重篤な腎障害に至る症例もしばしば経験する.
とされる11).その他,溶連菌などの細菌感染を契機と
また,稀ではあるが,腸管の大量出血,腸重積など外
する場合は,抗生物質を投与する.薬剤が原因として
6)
科的治療を必要とする場合がある .
検査では,末梢白血球増多,血小板増多,CRP 陽性,
考えられる場合は投与を中止する.
基本的に self-limited な予後のよい疾患であるが,な
赤沈亢進のほか,血清 IgA 低値,免疫複合体,補体価
かには再燃を繰り返す例もある.長期予後は腎症状に
の上昇をみることが多い.原因検索として,咽頭細菌
よる.一般に小児よりも成人の方が腎障害をきたしや
培養,ASLO,ASK,各種ウイルス抗体価測定などを施
すく,重症化しやすい.顕微鏡的血尿単独あるいは軽
行する.尿検査は必須であり,経時的に尿潜血,蛋白
度の蛋白尿を伴う程度なら,長期予後は良好である.
尿,円柱上皮の出現の有無を確認し,皮疹軽快後少な
ネフローゼとなったり半月体形成が高度の場合,腎不
くとも半年間は定期的に尿検査が必要である.尿検査
全へ進展する場合も多く,透析導入や腎移植が必要と
に異常があれば,腎機能検査,超音波検査などを実施
なる12)13).
する.また,紫斑病性腎炎からネフローゼ症候群,急
速進行性糸球体腎炎等へ進展するおそれのある症例で
730
川名
R
図 8 蕁麻疹様血管炎
認める.
誠司
R
蕁麻疹様紅斑の辺縁に紫斑を
図 9 皮膚アレルギー性血管炎 下肢に紫斑丘疹,血
疱が混在して多発.
7)蕁麻疹様血管炎 Urticarial vasculitis(UV)
AP,UV,薬疹の他 MPA,AGA などに診断されるべ
非定型的な蕁麻疹様発疹(数日間持続する,紫斑を
きものが多数含まれている.したがって,現在,この
混じる,局所の灼熱感を自覚する,色素斑を残すなど)
が出現し,病理組織学的に真皮上層の LCV を認める
ものをいう14)
(図 8).膠原病(SLE,シェーグレン症候
群,RA など)
,ウイルス感染症,薬疹などを基盤とす
15)
診断名を用いる機会は少ない.
9)皮 膚 ア レ ル ギ ー 性 血 管 炎 vasculitis allergica
cutis(Ruiter)
成人の下肢に,紫斑,紅斑,丘疹,小結節,水疱,
る場合と,特発性の場合がある .いずれも III 型アレ
血疱,潰瘍,などの多彩な皮膚症状が混在する
(図 9)
.
ルギーが想定されている.低補体血症を認める場合は,
ときに発熱,関節痛,消化器症状,全身倦怠感などの
腎,肺,肝障害が合併する頻度が高く,全身性血管炎
前駆症状を伴うことから,感染症が契機ともされてい
14)
として扱う .
治療は,原疾患の治療と同時に臓器障害の程度に応
じてステロイド投与が必要である.
るが,多くは原因不明である.近年,発症頻度が著し
く低下した.真皮乳頭層∼網状層,あるいは脂肪組織
小葉間の細小血管の壊死性血管炎で,血管壁には IgM
や IgG,補体が沈着する.通常,皮膚限局性で内臓病変
8)ク リ オ グ ロ ブ リ ン 血 症 性 紫 斑 cryoglobulinemic purpura
混合型クリオグロブリン血症では,斑状や点状紫斑,
血疱,潰瘍が下肢に出現し,しばしば全身倦怠感,多
は伴わないが,まれに末梢神経症状,腹部症状,IgA
腎症18)の報告がある.
治療は下肢の安静と,非ステロイド系抗炎症薬,
DDS,ステロイド等の薬物療法を行う.
関節痛,多発単神経炎,糸球体腎炎を伴う.病理組織
学的に細小血管の LCV を認める16).
*過敏性血管炎 Hypersensitivity angiitis
10)皮膚 型 結 節 性 多 発 動 脈 炎 cutaneous polyarteritis nodosa(PNC)
過敏性血管炎は,歴史的に薬剤アレルギー(狭義の
PN と同様の壊死性血管炎を認めるも,病変は皮膚
過敏性血管炎17))
,血清病,膠原病,感染症,悪性腫瘍
に限局し他臓器障害を伴わないものをいう.皮膚症状
などを契機に,皮膚および全身の細小血管に LCV と
は下肢の網状皮斑,皮下結節,潰瘍を主とする.発熱,
して発症する血管炎としてとらえられてきた.しかし,
関節痛,末梢神経症状等の全身症状を伴う場合もある
その性格はあいまいで,現在の診断基準に照らして,
が,軽症である.全身性 PN と異なり生命予後は良好で
2.血管炎
あるが,皮疹の経過が遷延したり,反復するものがあ
731
要である.
る.また,当初 PNC と思われても経渦中に全身性 PN
へ移行する症例も稀にあり19),注意深い経過観察が必
文
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