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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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自己現象からみた組織帰属意識の認知メカニズム
太, 源有
經濟論叢 (1998), 162(3): 63-84
1998-09
https://doi.org/10.14989/45238
Right
Type
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
平 成 十 年九 月. 日発 行
︹
毎 月 一日 .回緒 行 〒
論叢
第162巻
第3号
ア ジ アの成 長 目的 と為 替金 融 安 定 化 政 策
〔2)…
砂
村
日 本 ア パ レ ル ト位 企 業 の 分 析 … … … … ・… … ・… ・
・
康
環 境 規 制 と産 業 の 生 産 性 ・
… … … ・
… ・… ・… … … … 浜
本
賢1
賢
淑25
光
紹51ビ
源
有63
雁
周85
自 己 現 象 か らみ た 組 織 帰 属 意 識 の
認 知 メ カニ ズ ム… … … … ・
… … ・
… … … ・
… … … ・
太
日 韓 海 峡 経 済 圏(1)…
・・
… … … … ・… … … ・・
… ・
… 鄭
学
会
記
事
平 成10年9月
:東 郡:大 學 繧 濟 學 倉
経 済 論 叢(京
都大 学)第162巻
第3号,.1998年9月
自己 現象 か らみ た組 織 帰 属 意 識 の
認 知 メ カニ ズ ム
太
1.は
じ
め
源
有
に
これ まで の 組 織 と個 人 の 関係 は ど.ちらか とい う..と
組 織 に重 点 が あ っ て組 織 の
業 績 や 効 率 性 の 影響 要 因 と レて個 人 と組 織 の 関 係 を 扱 う傾 向 が 強 い。 ア メ リカ
¢)組織 コ ミ ッ トメ ン ト理 論 も組 織 コ ミ ッ トメ.ントを 高 め る こ とが,組 織 の成 果
にい か に 関係 す るか を重 大 な テー マ と して 発展 して い る。 こ の よ うな経 営 管 理.
的 ア プ ロー チ に は,組 織 に よ って 管 理 さ れ る し,す で にで き あが った 存 在 と し
て個 人 を扱 って お り,個 人 が 自己 と 自己 を取 りま い てい る環 境 を ど う認 知 して
い るか とい う主 体 的 な 意 味 合 い に は 関心 が 少 な い。
研 究 上 の 個 人 の 主 体 性 を奪 うよ う な研 究 に対 す る危 険 性 がGouldner[1970]
に よ っ て指 摘 され て い る。Gouldnerは
「迫 り来 る西 欧 社 会 学 の危 機」 にお い
て 社 会 科 学 者 が 素朴 に前 提 して い る 「方 法 論 的 二元 論 」 を批 判 した。 す なわ ち,
彼 は,社 会科 学 者 が,自 分 自 身 に は 自立 的 な 主体 の 地位 を,対 象 者 で あ る行 為
者 に は社 会 構 造 に よ って 規 定 され る客体 の 地位 を割 り当 て る 「二 重 帳 簿 」.をつ
け て い る こ と を批 判 した 。
現 象 学 的 社 会 学 の 創 始 者 で あ るSchutz[1967]は,彼
の 主著 『
社 会 的 世界 の.
意 味 構 成』 の 中 で,社 会 科 学 理 論 に お け る方 法 論 的 問題 を指 摘 しなが らどの よ
う な方 法 を用 い るべ きか に言 及 す る。社 会 的 世 界 に お け る生 活 者 に と って の 意
.味 構 成 の理 解 す る こ とが 社 会 学 の 義 務 で あ る し,「 社 会 的 世 界 の あ らゆ る主 題
は,主 観 的意 味 関連 一 般 ない しは特 殊 な主 観 的意 味 関 連 の 客 観 的 意 味 関 連 を構
享
毒
・
64(248)第162巻
第3号
成 す る こ と に あ る 」」}とシ ュ ッ ツ は い う 。 つ ま り,社
会 科 学 の 根 本 問 題 は,ど
の よ う に して 主 観 的 意 味 関 連 の 科 学 は 可 能 か を 明 ら か に す る こ と で あ る 。
本 稿 で は,組
め る 。Schutzに
織 帰 属 意 識 を 組 織 に 対 す る 個 人 の 主 観 的 意 味 関 連 の 理 解 か ら求
始 ま る 現 象 学 的 社 会 学 の 概 念 で あ る 自 他 分 節 を 用 い て,組
織
を 自 己 と して 認 知 す る 自 己 現 象 の 認 知 的 プ ロ セ ス に 注 目 す る 。 主 に 組 織 誘 因 と
個 人 貢 献 の 均 衡 に 基 づ く従 来 の 組 織 コ ミ ッ トメ ン ト理 論 と く ら べ て,自
モ デ ル は 環 境 の 認 知 に お け る 個 人 の 自 己 自 習 的 な(heuristics>判
因 の 認 知 方 法 と して 社 会 情 報 プ ロ セ ス,そ
11自
己 現象
断,文
化 要
し て 過 去 の 選 択 の 結 果 を 強 調 す る。
己 現 象 の構 成
組 織 帰 属 意 識 を 自 他 の 分 節 か ら な る 自 己 認 識 の プ ロ セ ス で 考 え る と,帰
属意
識 は 自 己 の 範 囲 内 に 帰 属 集 団 を 取 り組 む よ う な 自 己 が 成 立 し て い る状 態 と し て
考 え る こ とが で き るQ自
他 分 節 に お い て 自 己 の一 部 と して 意 識 さ れ る よ うな組
織 へ の 所 属 の 様 式 は,こ
れ ま で あ ま り取 り上 げ て い な い 。 会 社 と 自 己 と の 境.界
が な く な っ て,会
社 を 自己 と して考 え る 自 己現 象 を組 織 行 動 の 説 明 原 理 と して
捉 え た もの と してErez&Earley[1993]の
Erez&.Earley.は
theory)を
研 究 が あ るq
文 化 的 自 己 概 念 モ デ ル(Culturalself-representation
使 っ て,文
化 的 要 因 や 経営 実践 の 認識 に お け る 自己概 念 で 従業 員 の
組 織 行 動 を.説明 して い る 。 彼 ら の モ デ ル に 基 づ い て 組 織 帰 属 意 識 を考 え る と次
の 四 つ の 構 成 要 素 で 説 明 で き る 。1)あ
管 理,2)内
3)経
る仕 事 環 境 で 行 わ れ る経 営 実 践 や 動 機
外 的 仕 事 環 境 や 自 己 を 基 底 す る 文 化 的 価 値 や 行 動 コ ン テ ク ス ト,
営 管 理 や モ チ ベ ー シ ョ ン 管 理 を 分 析 す る し,文
己 現 象(組
織 帰 属 意 識),4)組
れ る 組 織 帰 属 行 動,で
Schwa,A.,丁
成 』1982年,311ペ
肋P加
化 に よ って 規 定 され る 自
織 を 自 己 と し て 認 知 す る 自 己 現 象 の 結 果 あ らわ
あ る(図1)。
πr川枷`」'ggン4.MeSocialWorld1967.(佐
ー ジ)G,
藤 嘉.一 訳
「
社 会 的構 造 の意 味 構
卜.
◆
〔249)65
自 己現 象 か らみ た 組 織 帰 属 意 識 の認 知 メ カニ ズ ム
図1自
己 現 象 モ デ ル.
文化
組織帰属行動
自己 現 象
自己 強 化
自己.有効
自己 持 続
離職率
欠勤率
役割外活動
経営実践
*Ercz&Ear且ey[1993]の
1自
文 化 自己 表現 モ デ ル を修 正 した 。
己現 象 の動 機
一 般 的 に 自 己 現 象 に は 三 つ の 動 機 が あ る と い わ れ て い る(Gecas[1982},
Markus&Wurf[1987])。
①
白 己 に 対 し て 肯 定 的 な 認 知 や 感 情 状 態 を 探 る し維 持 し よ う とす る 自 己 強
化 動 機(self.enhancement)
②
自 ら 自分 を 有 能 で 有 効 視 す る 自 己 有 効 動 機(self-efficacy)
③
一 貫 性 を も っ て 継 続 性 を 感 じた い 自 己 継 続 動 機(self-consist.ency>
自 己 強 化,自
生,維
己 有 効,自
己持 続 性 とい う これ らの 動機 の 充足 は 自己現 象 の発
持 そ し て 変 化 を 説 明 し て くれ る 。 理 論 的 に い え ば,会
社 に所 属 す る こと
.に よ っ て こ の 三 つ の 動 機 が 満 た さ れ る と 自 己 現 象 が お こ り,組 織 帰 属 意 識 は 高
.ま る とい え る 。 特 に 自 己 に 対 し て 肯 定 的 認 知 や 感 情 状 態 を探 る し,維
持す る自
己 強 化 動 機 は 従 来.の モ チ ベ ー シ ョ ン 管 理 に お い て 一 番 重 要 視 さ れ て い る 。
Bandura[1986]は
自己 強 化 動 機 を 自 己 概 念 に お け る 決 定 的 要 素 と し て み る 。
従 来 の 欲 求 満 足 理 論 の 基 本 的 パ ラ ダ イ ム もこれ に基 づ い て い る。欲 求理 論 は
欲 求 を ど う 分 析 す る か に よ っ て 異 な る が(Maslow[194?],McClelland
[1961],Alderfer[1972]),態
度 と 行 動 を 個.人 属 性 の 観 点 か ら 予 想 す る 。 つ ま
り,入
お り,職
は 欲 求 や 動 機 を も6て
務 環 境 と相 互 作 用 す る。 そ して 職務 態 度
や 行 動 は この 二 つ の 要 因 の結 合 に よ る もので あ る。 こ こで は 従 業 員 の 態度 や 行
動 を 抹 況 要 因 よ り個 人 の 属 性 や 欲 求 を 重 要 視 す る 。 行 動 の 説 明 変 数 と し て 値 入
.:剃レ
66(2聞)第162巻
第3号
と状 況 の 相 互 作 用 よ り 個 人 属 性 の 比 較 的 重 要 性 が 議 論 さ れ る し(Sarasbn,
Smhh&Diener[1975]),行
動 に お け る 性 格 構 造 の 役 割(Hogan,DeSoto&
Solano[1977],Mist:hel[1977])が
しか し,欲
強 調 され て い る。
求 理 論 に お い て,個
義 す る こ と は,そ
れ が 個 人 属 性 に よ.って 決 定 さ れ る こ と を 意 味 し な い
馨
(Salancik&Pfeffe■[1978])。
性 も重 要 で あ る が,個
人 の 行 動 を 欲 求や 態 度 を個 人属 性 に よ って 定
実 際,個
人 と環 境 の 相 互 作 用 に お い て 個 人 の 属
人 と環 境 の 関 係 は 社 会 コ ン テ ク ス トに よ っ て 行 わ れ る し,
そ の影 響 は大 きい 。
2自
己現 象 の 環 境
経 営 実 践(managementpractices)
従 業 員 の 組 織 に 対 す る 自 己 現 象 は 人 的 資 源 管 理 と モ チ ベ ー シ ョ ン技 術 か ら 詳
明 で きる。 これ は従 来 の 産 業 心理 学 者や 経 営 学 者 の も っ と も関 心 が 高 い 部分 で
あ り,組
織 コ ミ ッ トメ ン ト理 論 も基 本 的 発 想 は こ れ に 基 づ い て い る 。
人 的 資 源 管 理 と は,企
業 経 営 に必 要 な 人 的 資 源 の 調 達,開
発,維
持およびモ
チ ベ ー シ ョ ン に 関 す る 管 理 活 動 を い デ}。 人 的 資 源 の 調 達 機 能 と は,公
接,テ
ス ト,選 考 な どか ら な る採 用 機 能 を い い,開
進,配
置 転換 な どをつ う じて人 的 資 源 め 能力 や 知 識 の向 上 を はか る機 能 を さ し
て い る 。 維 持 機 能 と は,給
シ ョ ン,提
与 管 理,福
案 制 度 な ど を 通 じ て,従
利 厚 生 施 設,安
全 衛 生,コ
育 訓 練,昇
ミュ ニ ケ ー
業 員 の 働 く良 好 な 環 境 を 維 持 す る 機 能 を さ
.して い る 。 最 後 に モ チ ベ ー シ ョ ン機 能 と は,業
参 加 的 リー ダ ー シ ッ プ,職
発 機 能 と は,教
募,面
績 主 義 の 給 与 管 理,昇
進 制 度,
務 充 実 や 自 主管 理 な ど を通 じて従 業 員 の モ チ ベ ー
シ ョ ンを高 め る機 能 を さ して い る。
経 営 実 践 と は,企
業 の経 営 目的 の効 率 的 な達 成 の た め に企 業 が 行 う人的 資 源
管理 や モ チベ ー シ ョン管理 の実 施 や そ の結 果 を さす 。
しか し,経
2)人
営 実 践 は そ の.企業 が 置 か れ て い る 状 況 や 文 化 に よ っ て 異 な る 形 式
的資源管理については,角 野[1995】229-234ペ ー ジ,占 部[1994]を
参照。
自己現 象か らみた組織帰属意識の認知 メカニ ズム.(251)67
を 取 る 。 ア.メ リ カ に お け る 典 型 的 な 人 的 資 源 管 理 は 個 人 主 義 的 競 争 文 化 が 当 て
は ま る。 す べ て の 人 的 資 源 管 理 は 従 業 員 個 人 に 向 い て 機 能 し て い る 。 例 え ば,
個 人 の 選 抜 は 個 人 の 特 性 に よ っ て 決:め ら れ る し,仕
事 も 個 人 単 位 で 与 え ら れ て,
業 績 評 価 も個 人 単 位 で 行 わ れ る 。
ア メ リ カ の 人 的 資 源 管 理 に は集 団 や 個 人 間 の 関 係 は 考 慮 され な い 。 例 え ば
チ ー ム活 動 や 対 人 関 係 の パ ター ンは こ の モ デ ル に は含 まれ て い な い 。環 境 特 性
と して 文 化 的 次 元 は 扱 わ れ て い な い し,国
際 的 側 面 にお け る人 的 資源 管理 の問
題 点 に は 真 剣 に 取 り組 ん で い な い 。
ア メ リ カ の 人 的 資 源 管 理 と違 っ て 日 本g会
依 存 と強 い 連 帯 関 係,従
社 は 家 族 的 経 営 主 義一 労 使 の 相 互
業員 の福 祉 に 関す る経 営 側 の 責 任一 に基 づ い てい る。
日本 に 海 け る 主 な 人 的 資 源 管 理 は 従 業 員 問 の 緊 密 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン,意
決 定 に お け る 集 団 の 参 加,チ
ー ム 活 動 で あ る 。 報 償 は 年 功 に 基 づ く,従
思
業員の
評 価 は 個 人 単位 で 行 われ る よ りも集 団 や 組 織 単位 で 行 わ れ る傾 向が 強 い 。
こ の よ う に 経 営 実 践 は 自 己 現 象 の 動 機 と 相 互 作 用 し な が ら 自 己 現 象 の 発 生,
維 持 し高 め る 説 明 要 因 と し て 重 要 で あ る が,実
ト
が 置 か れ て い る文 化 的価 値 や 規 範 に よ
文
際 行 わ れ る 経 営 実 践 は そ の 組 織;
っ て 異 な る。
化
文 化 に 対 し て い ろ い ろ な 定 義 が な さ れ て い る が.こ
こで は認 知 的 側面 か らみ
る こ と に す る 。 文 化 人 類 学 的 ア プ ロ ー チ を と っ たKluckhohn[1954].は
文化 は
思 考 の 規 定 さ れ た パ タ ー ン と し て み る 。 同 じ よ う にShweder&LeVine
[1984].は 共 有 す る 意 味 シ ス テ ム の セ ッ ト と し て 定 義 す る 。Hofstede[1980]は
あ る コ ン テ ク ス ト.にお い て 個 人 の 反 応 を 統 制 す る 先 進 的 プ ロ グ ラ ム の セ ッ ト と
.し て 文 化 を 定 義 す る 。 以.ヒの 定 義 か らみ る と文 化 は刺 激 に対 す る個 人 の 反 応 の
多様 性 を決 め る共 有 され た知 識 と して見 る こ とが 出 来 る。
自 己 の 構 造 的 ダ イ ナ ミ ッ ク な 動 機 が 普 遍 的 に み ら れ て も 自他 の 区 分 は 文 化 に
よ っ て こ と な る 。 同 じ文 化 環 境 に 住 ん で い る 人 は 同 じ価 値 や 認 知 構 造 を 持 っ て
い る 。 そ し て あ る種 の 行 動 の 評 価 に も 同 じ基 準 で 行 わ れ る(Triandis[1989])。
銘(252)...第162巻
第3号
欧 米 文 化 は個 人主 義 価 値 を持 って い る。 普 通 重 要視 され る の は他 人 と の区 別
で あ る し,自
己 依 拠 や 自分 の 特 徴 的 属 性 を 重 要 視 す る 。 欧 米 文 化 は,行
分 自 身 の 内.在 的 思 考 や 感 情 に よ っ て 構 成 さ れ る し 意 味 を 持 つ
(independentself)」
一 方,極
動 は自
「独 立 ・
自 己
を 構 成 す る(Markus&Kitayama[1991})。
東 ア ジ ア の 支 配 的 文 化 は 集 団 主 義 で 集 団 中 心,調
和,順
応,服
従,
そ して 関係 重 視 で あ る。 これ らの文 化 で は単 一 的 で 特 に 外 部 集 団 か らの脅 威 や
競 争 が あ っ た 時 共 同 の 運 命 や 相 互 関 連 に よ る 集 団 性 を よ り 強 め る(Triandis
[1989})。
集 団 室 義 の 文 化 で は 人 は 集 団 との 一 体 感 を 強 め るた め に集 団 の構 成
員 との類 似 性 を強 調 す る。 集 団 主義 文 化 で は対 人 関 係 を重 要 視 して
自 己(interdependenceself)」
実 証 の 結 果,東
「
相 互 関連
を 作 り出 す(Markロs&Kitayama[1991])。
ア ジ ア の 人 は 欧 米 人 よ り集 団 的 相 互 依 存 自 己 の 傾 向 が あ る こ
と が 支 持 さ.れ る(Bond&Cheung[1983],Trafimow,Triandis&Goto
[1991])。BondとCheung[1983]は,ア
メ1Jカ の 大 学 に 在 掌 中 の 学 生 た ち の
自己 認 識 の 比 較 を行 って い る。 欧 米 文 化 か ら きた 学 生 は東 洋 文 化 か らの 学 生 よ
り他 の 人 と 類 似 性 を あ ま り感 じ な い 。 こ れ ら の 結 果 は 欧 米 文 化 か.ら の 学 生 は 他
人 よ り 自 分 自 身 に対 し て も っ と正 確 な は っ き り した 概.念 を 持 つ 反 面,東
洋の学
生 は 自 分 よ り他 人 に た い す る 明 確 な 概 念 と 知 識 を持 っ て い る こ とが 分 か る 。
しか.し,こ
れ まで 職務 態 度 や経 営 実 践 に お け る文 化 的 要 因 は所 与 の存 在 と し
て 議 論 さ れ.;(い る 傾 向 が あ る 。 あ る 地 域 や 共 同 体 に所 属 して い る だ け で 個 人 は
文 化 的 制 約 に 置 か れ る こ と に な る こ と も事 実 で あ る 。 と こ ろ が,個
ど う認 知 す る か と い う 文 化 の 認 知 プ ロ セ ス に は 言 及 は な く,こ
人が 文 化 を
の 点 は 自明で は
な い 。 同 じ文 化 や 価 値 の 支 配 に住 む 人 で も そ の 文 化 規 範 の 認 知 に は 偏 差 が あ り
う る 。 従 来 の 文 化 認 識 で は こ の よ う な 文 化 認 知 の 個 人 偏 差 を 無 視 し,平 均 値 で
そ の 全 体 を 簡 単 に 一 般 化 し た 傾 向 が 強 い 。 さ ら に,そ
の分 析 枠 組 み も西 欧 の個
人 主 義 と東 ア ジ ア の集 団 主 義 と大 き く二つ の次 元 で 単純 化 してい る。 集 団 主 義
や 個 人 主 義 の 枠 組 み に 入 ら な い 地 域,そ.し
て,同
な 文 化 認 識 が あ り得 る こ と を 配 慮 し て い な い 。
じ文 化 の111で も個 人 的 に 多 様
蜘
自己現象か らみた組織帰 属意識 の認知 メカニ ズム1〔253)69
以 上 の よ う に,組
織 に 対 す る 個 人 の 帰 属 意 識 を,Erez&E肛ley[1993]の
自 己 概 念 モ.デル に 基 づ い て 自 己 現 象 の 動 機 と経 営 実 践 の 相 互 作 用 そ し て 文 化 コ
.ン テ ク ス トの 制 約 を 中 心 と し て 述 べ て き た 。
しか し,自
己現 象 の構 成 的観 点 はた だ 構 成概 念 の用 語 を 自己 に替 えた こ とを
除 け ば 既 存 の 組 織 コ ミ ッ ト メ ン ト理 論 とあ ま り変 わ りが な い 。 自己 強 化,自
有 効 そ し て 自 己 維 持 と い う動 機 要 因 は,組
致,貢
献意欲
己
織 コ.ミ ッ ト メ ン トの 目標 や 価 値 の 一
そ し て 残 留 意 欲 と そ れ ぞ れ 対 応 して い る 。 自 己 現 象 の 環 境 要 因
と し て 経 営 実 践 も組 織 コ ミ ッ ト メ ン ト理 論 で は 役 割 関 連 特 性,構
扱 っ て い る(Mowday,P・rter&Steers[1982])。
造 特 性 と し て.
既 存 の 組 織 コ ミ ッ ト.メン ト
と違 っ て い る こ と は 文 化 コ ン テ ク ス トの 変 数 を 考 え る こ とで あ ろ う。 しか し,
経 営 実 践 や モ テ ィ ベ ー シ ョ ン 管 理 に お い て 文 化 的 差 異 を 考 慮 し て い る が,実
際
そ れ を 受 け 入 れ る 個 人 の 認 知 的 プ ロ セ.スま で に は 及 ん で い な い 。
本 稿 の 目 的 は 最 初 の 問 題 提 起 で 叙 述 し た よ う に 個 木 の 主 体 的 意 味 関 連 か ら組
織 帰 属 意 識 の 分 析 を 試 み る こ と で あ るp
経 営 側 が 行 っ た 経 営 実 践 や モ チ ベ ー シ.ヨン 管 理 が 経 営 側 の 思 い 通 り に 従 業 員
に認 知.され 伝 わ って くるか,文 化 的要 因 は実 際 どの よ う存 方 法 で個 人 の 自 己現.
象 に 影 響 す る か に つ い て の 議 論 は,ま
以 下 で は,自
だ な され て い ない 。
己 現 象 の ダ イナ ミ ックな認 知 的 プ ロ セ ス を考 え る。
III自
己現 象 の 認知 的 プ ロ セ ス
自 己 現 象 の 経 験 は 環 境 に お け る 機 会 に よ っ て 影 響 さ れ る し,そ
分 析,そ
の 機 会 を 収 集,
して 解 釈 す る.認知 的 自 己 評 価 プ ロ セ ス に よ っ て 影 響 を う け る 。
認 知.(cognition)と
は,心
理 学 的 に は,「 生 体 み ず か ら の 生 得 的 ま た は 経 験
的 に獲 得 して い る既 存 の情 報 に も とづ い て,外 界 の事 物 に 関す る情報 を 選択 的
に 取 り入 れ,そ
れ に よ っ て 事 物 の 相 互 関 係,一
い 情 報 を 生 体 内 に 生 成 ・蓄 積 し た り,外
貫 性,真
実 性 な ど に 関 す る 新 し.
部 に 伝 達 し た り.あ
情 報 を 用 い て 適 切 な 行 為 選 択 を.行っ た り,機
るいはこのような
能 を行使 す るた め の生 態 の能 動 的
70(254)
第162巻
図2自
第3号
己現 象 の 認 知 的 プ ロセ ス
文化
〈 一一一一
社
会
情
報
経営実践
行 動 コ ミットメ ント
一一一 〉
:
:
:
自己現 象
人的 資 源 管 理
モチベ「 ション
管理
:
i
組織帰属行動
所懸命
自己 強 化
自 己有 効
自 己持 続
一牛懸命
1
自己 自習 的 判 断
[=コ
構成要素
. (=)認
知 プロセス
な情報 収 集 ・処 理 活 動 を総 称 して い う言 葉 」 と解 釈 され てい る3}。
図2に 示 さ れ て い る よ うに,自 己 現 象 は 三 つ の認 知 的 プ ロ セ ス を通 じて 起 こ
る。 第1は,経
営 実 践 か らな る職 務 や仕 事 の 誘 因 要素 に対 す る個 人 の認 知 と判
断 で あ る。 第2は,適
3は,行
切 な態 度 に対 す る文 化 か らの社 会情 報 の影 響 で あ る。 第
動 の帰 属 過 程 や 過 去 の行 動 の 理 由 か ら調 整 さ れ る個 人 の 自己 現 象 で.あ
る。
1経
営 実 践 の認 識 に お け る 自 己 自習 的(heuristics)判
断
自 己 強 化 や 自 己 有 効 そ し て 自 己 持 続 動 機 を 充 足 す る 経 営 誘 因 や モ テ ィベ ー
シ ョ ン 管 理 は個 人 の 自 己 現 象 を 強 め る 。 しか し,組 織 を 自 己 の 領 域 と し て 考 え
る 自 己 現 象 は,組
織 が 行 う経 営 実 践 を 個 人 が ど う 認 知 す るか に よ っ て 異 な る 。
伝 統 的 経 営 管 理 で は個 人 に対 す る高 い 報酬 や物 理 的誘 因 の提 供 が 組 織 コ ミッ
トメ ン トを 高 め る と 主 張 し た 。 従 業 員 の 態 度 と行 動 は 経 済 的 誘 因 に 対 す る 合 理
的 自 己 判 断 に 基 づ い て 議 論 し た 。 しか し,こ
こ で は 個 人 に お け る.合理 的 自 己 判.
断 が ど こ まで 可 能 で あ るか につ い て は問 題 と しない 。
3)佐
伯絆 「
認知」 「
新版 心理学辞典」平 凡社,1981年 。
』
自己現象か らみた組織 帰属意識 の認知 メカニズム.(255)71
人 間 行 動 に お け る 合 理 性 や 効 用 最 適 化 の 仮 定 は 経 済 学 の 特 徴 で あ る 。 そ して
これ は 組織 行 動 の理 論 や 研 究 者 の 間 に遍 在 す る。 合 理 性仮 定 は ミクロ水 準 の組
織 行 動 論 の 基 礎 に な っ て お り,期
待 理 論(Lawler[1971])や
の パ ス ・ ゴ ー ル モ デ ル(House[19711)の
リー ダ ー シ ッ プ
特 徴 に な っ て い る。 さ ら に 行 動 科
学 者 達(Watsl.m[1913],Skinner[1974])は
個 人 の 経 験 的 実 際 に依 拠 せ ず に
これ らの 合 理性 理 論 を受 け入 れ て きた 。
経 済 合 理 性 の規 範 は長 い 間意 思 決 定 理 論 の基 礎 で あ っ た。 個 人 は 自分 の利 益
に よ っ て 行 動 す る し,自
しか し,合
己 利 益 の 最 適 化 に よ る 選 択 を 行 う。
理 的認 識 や それ に よ る行 動 は個 人 の 実 際 の 選択 や 意 思 決 定 を説 明
す る の に は あ ま り 有 南 で 億 な い 。 実 際 の 行 為 者 達 は 経 済.モデ ル と 異 な り,パ
レ ー トの 効 率 で は な い 決 定 を 行 う(Bazeman[1994])。
経 済 的 な 観 点 か らみ
れ ば,.こ れ ら の 現 象 は 無 関 心 や 適 格 な 動 機 づ け,隠
れ た 好 み の せ い で あ る と見
られ る 。
しか し,こ
め 問 題 を考 慮 す 良 き シス テ ム変 数 と して 重 要 視 した こ とは最 近 で
は な い 。Edwards[1954ユ
は 行 動 科 学 者 達 に 経 済 学 的,統
計 学 的 研 究 以 外 に,
哲 学 者 に よ る 意 思 決 定 の 研 究 を 紹 介 し た 。Simon[1957]は
心 理 的,要
経 済 学・
者 に 認 知 的,
因 に 関 心 を 向 くべ き で あ る と主 張 し な が ら 制 限 さ れ た 合 理 性 を 主 張
した 。
Simonに
異 は,①
よ る と,経
済 学 者 の 公 式 見 解 とサ イ モ ンの 制 限 さ れ た 合 理 性 の差
決 定 に 対 す る 選 択 肢 を 同 時 に 処 理 で き な い こ と,②
択 で き な い の で,代
最 適 の選 択 肢 を選
わ り に 満 足 した ト分 条 件 を 選 好 す る こ と,③
意 思 決 定 にお
け る認 知 的 要 求 を少 な くさせ るた め に規 則 や 自己 自習 的 な もの に よ る判 断 の簡
単 化,に
Simonの
あ る とさ れ て い る。
制 限 的 合 理 性 の概 念 は 規 範 的 モ デ ル と実 際 行 わ れ る こ と との 差 異
に 焦 点 が あ る 。 こ れ ら の 概 念 を 実 証 を 通 じて さ ら に 具 体 的 に 究 明 し た も の が,
行 動 決 定 理 論(BehavioralDecisionTheory)0で
る と,行
動 決 定 理 論 の お も な 焦 点 は 標 準 的,記
あ る 。Belletal.[1988]に
よ
述 的 ア 慣 例 的 見 込 み を 囲 んで い
72(256>.第162巻
る が,後
は,規
第3号
者 の 二 つ の 変 数 に も っ と焦 点 を お い て い る 。 す な わ ち,行
範 的 モ デ ル よ り記 述 モ デ ル の 経 験 的 妥 当 性,慣
動決定理論
例 的 モ デ ル の実 用 的価 値
に もっ と関 心 を お い て い る 。
Kahneman&Tversky[1979]は
判 断 に 影 響 す る 具 体 的 シ ス テ マ テ ィ ク ・バ
イ ア ス に 対 す る 重 要 な 情 報 を 提 示 した 。 意 思 決 定 す る 時,人
間 は 多 くの簡 単 化
し た 戦 略,あ
わ ゆ る 自 己 自習 的
(heuristics)な
る い は 経 験 的 に ま ず 勘 違 い の 無 い や り 方,い
もの に 依 存 す る 。 これ は 判 断 や 認 知 に お け る現 代 人 の 実 状 を 理
解 す る仕 事 で あ った 。
Tversky&Kahneman[1974]は
具体 的 に 三 う の 自己 自習 的 な もの を記 述 し
て い る(表1>。
第1は,利
用 し 易 さ(availability)の
の 生 起 す る 確 率 を 推 定 す る と き,過
事 例,あ
成)し
仮 説 で あ る。 これ は人 々が 特 定 の 事 象
去 に お け る そ の 事 象,あ
る い は そ の事 象 の
る い は そ の 事 象 に 類 似 した 事 象 の い ず れ か の 記 憶 を 想 起
て,そ
〔ま た は 構
の 「想 起 の し易 さ 」 で 確 率 を 判 断 す る と い う もの で あ る 。 一 般 的
に 人 々 は 曖 昧 で 判 断 し に くい 問 題 が 出 た と き,.そ の 時 想 起 す る 過 去 の 事 象 や 事
例 を 利 用 し判 断 を 下 す 。
第2は,人
間 が 代 表 性(representativeness)と
い う概 念 に 基 づ く 判 断 を す
る と い う仮 説 で あ る 。 人 間 は 確 率 的 な 事 象 の サ ン プ ル を 観 測 す る と.き,そ の サ
ン プル は も との母 集 団の
「縮 図 」 で あ り,た
と え 少 な い サ ン プ ル で あ っ て も,
そ.こ に は.母集 団 の 重 要 な 特 性 が す べ て 反 映 さ れ て い る は ず だ と い う 期 待 感 を
も って判 断 す る とい う仮 説 で あ る。
第3は,投
錨 と 調 整(anchoringandadjustment)と
断 の 仮 説 で あ る 。 こ れ は,人
が 不 確 実 な 問 題 に つ い て 判 断 す る と き,初
お ざ つ ぱ な 予 測 値.を設 定 し て,そ
4)行
名 づ け た 戦 略 に よ る判
の あ と次 々 と調 整 を 行 うが,そ
の 際,最
め にお
終 的
動 決 定 理 論 は,組 織 行 動 に お け る 人 間 の 認知 を重 要 視 す る理 論 で あ る。 と くに 人.間の意 志 決
定 の不 完 全 性 を 理解 し,そ の 実 証 を 通 じ て認 知 モ デ ル を提 示 して い る(Tversky&K"hnem皿
〔1979],Bazerman「1994]).
』
﹁﹁
目
レ.
自己現象か らみた組織帰属意識 の認知 メカニ ズム
表1三
.1>利
(257)73
つ の 自 己 自習 的 認 識
用 し 易 さ(availabilityheuristics)
卜.
記 憶 に お い て 思 い 出 しや す い も の を 使 用 す る 。 曖 昧 で 覚 え 出 し に く い も の よ り,
目 に見 え る もの で具 体 的 な もの を利 用 す る。
3)代
表 性(representativenピssheuri5丘cs)
人 は 決 定 を ドす と き,自
分 自 身 の ス テ レ オ タ イ プ 化 し た 事 件 と比 べ て 分 析 す る 。
生 物 学 者 は 植 物 の 種 の 分 流 に お い て,新
と の 類 似 性 に よ っ て,そ
し い 種 を 作 る よ り,既
れ を 配 属 さ せ る 。 こ の と き,知
存 の 固 定 化 した 種
られ て な い植 物 が 既 存 の
植 物 に どの く らい似 てい るか ど うか の 代 表性 情 報 が 決 め手 に な る。
3)投
錨 と調 整(anchoringandadjustment>
人 は 最 初 の 価 値 の 基 準 に よ っ て 最 終 的 決 定 を 調 整 す る 。 例 え ば,管
理 者 は給 料 の
策 定 に お い て 従 業.員 の 過 去 の 給 料 を 基 準 に 調 整 す る ゲ ド凡 で つ ま ら な い 要 素 で あ
る が,そ
れ が 決 定 の 最 初 の 基 準 に な る と き に は,決
注:Raze㎜an[1994]を
定 に大 き な影 響 を及 ぼ す 。
参 考 。
な 予 測 値 は 最 初 に 設 定 す る 予 測 値 に 引 き.ずら れ て,..卜 分 な 調 整 が で き な い と い
う 仮 説 で あ る 。 こ の よ う な 自 己 自 習 的 な 簡 便 法(heuristics)仮
&Kahneman[1974]の
説 は,Tversky
多 数 の 実 験 結 果 で そ の 妥 当 性 が 認 め ら れ て い るQ
自学 自習 的 判 断 は 最高 の 選択 を除 外 す る こ とに よ って 最 適 な決 定 が で きない
こ と が あ る が,い
く.つか の 利 点 が あ る 。 自 己 自 習 的 判 断 に よ る 節 約 さ.れた 時 間
は 全 て の 変 数 の探 索 に よ る暫 定 的損 失 を上 回 る。 さ らに複 雑 な世 界 に対 す る簡
単 な 方 法 を 提 示 す る こ と に よ?て,全
体 を 考 え て す る 判 断 よ り部 分 的 正 確 さ を
提 示する。
この よ うな 自 己 自習 的 認 識 や 判 断 は 自己現 象 に お け る経 営 実 践 の 認 識 にお い
て も行 わ れ て い る と 考 え て よ い 。
自 己 強.化動 機 は,肯
定 的 な 自己概 念 を 維持 す る ため に選 択 的 認 識 や偏 見 を通
じ て 充 足 さ れ る(Gecas[1982])。
こ の 時,記
憶 の 中 で 思 い 出 しや す い も の を
使 用 す る 。 数 多 くの 研 究 は 自 己 関 連 情 報 が 他 の 情 報 に 比 べ て よ り多 く回 想 さ れ
る こ と を 見 せ て い る(Kihlstrometal.[1988])。
これ は私 た ちの 認 知 的 ネ ッ ト
ワ ー ク に おい て 自己概 念 の 重 要性 を表 してい る。
ピ.
自 弓 有 効 の 認 識 に お い て も 自 己 自 習 的 も の に よ る と こ ろ が 多 い 。Erez&
襲.
74(258).第162巻
釣才 娃
Earley[1993]に
第1は,実
第3号
よ る と 三つ の 自 己 自 習 的 要 素 が 自 己 有 効 の 認 知 を 調 整 す る 。
質 的 な 成 功 経 験 か ら規 定 さ れ た パ フ ォー マ ン ス で あ る 。 成 功 は 自己
有 効 の 認 知 を 強 化 す る し,反 復 さ れ た 失 敗 は そ れ を 低 下 さ せ る 。 一 段,強
い自
己有 効 認 識 が 成 立 す れ ぼ 失 敗 の 影響 は 減少 す る。 自己 有 効 の 肯定 的認 知 を維 持
す る た め に 人 々 は 失 敗 を 状 況 的 要 因 の せ い と し て み る 傾 向 が あ る 。 第2に
代理
経 験 は 自己 有 効 に影 響 を あ た え る 。有 効 的 に仕 事 をす る他 人 をみ る こ とは 自己
有 効 の 水 準 に 影 響 を 与 え る 。 人 は 以 前 に 経 験 が な か っ た こ と と 出 合 う と き,他
叢 叢霧
人 の 経 験 に 依 存 す る 。 他 人 が う ま く仕 事 を 成 功 さ せ る 時,自
に そ の 仕 事 を 遂 行 す る と 思 う 。 第3の
要 因 は,生
分 は も っ と効 果 的
理 的 状 態 で,入
の 能 力 の評 価
の 基 礎 に な る 。 疲 労 と ス ト レス そ し て 不 安 め 症 候 は 自 己 有 効 の 認 知 を 軽 減 さ せ
る。
自 己 持 続 性 も過 去 の 経 験 に 沿 っ て 選 択 的 認 知 や 記 憶 を 引 き 出 す 傾 向 が 多 い 。.
こ れ は 最.初 に 行 わ れ た 基 準 に よ っ て 最 終 的 に 決 定 を 調 整 す る と い うTversky
&Kahnemanの
第3の
自己 自習 的 判 断 に あ た る 。 これ に つ い て は 後 の行 動 的
コ ミ ッ ト メ ン トで 詳 し く述 べ る 。
2文
化 の認 識 にお け る社 会 情 報
個.人 の 行 動 に お け る 文 化 的 要 因 の.重要 性 は 多 く論 じ ら れ 本 論 文 で は,そ
の実
証 に つ い て も言 及 した 。
しか し,文
化 は そ の 説 明 力 は か な り認 定 さ れ て い る が,な
な い こ とが あ っ て,産
か なか 変 数 化 で き
業 心 理 学 に お い て は 除 外 さ れ る こ とが 多 い..と
科 学 者 た ち(Watson[1913],Skinner[1974])は,文
くに行動
化 及 び価 値 概 念 は行 動
の 説 明 に お い て は 占 め る べ き何 ら の 場 も持 っ て い な い こ と を 長 い 問 主 張 して き
た。
Parsons&Shills[1951]は
を 用 い る5}.し か し,パ
価 値 や 文 化 概 念 を 比 較 す る た め に パ ター ン変 数
ー ソ ン ズ の パ タ ー ン 変 数 は,社
続 の た め の 機 能 分 析 を 目的 と して お り,そ
会 シ ス テ ム の 維 持 ・存
の 意 味 で は個 々 の個 人 が 分 析 の対 象
』
自己現象か らみた組織帰 属意識 の認知 メカニズ ム.〔259).75
で は な く,文
化 の 中 に 埋 没 し た 個 人 を 想 定 して,社
して い る(日
置[1989])。
会 シ ス テ ム を分 析 の対 象 と
文 化 は 行 動 の 結 果 あ ら わ れ る 結 果 変 数 で あ り,そ
の 行 動g説
明変 数 と して挙
げ る の に は か な りの 工 夫 が 必 要 で あ る こ と も 事 実 で あ る 。Salancik&Pfeff【#
.[1978]は
ら,個
こ れ ら の 問 題 を 構 え な が ら,文
化 概 念 を 既 存 の 構 造 パ 〒 タ ン変 数 か
人 の 認 知 情 報 レベ ル で 議 論 し た 。.彼 ら は 文 化 の 認 知 方 法 と し て 社 会 情 報
プ ロ セ ス(SocialInformationProcess)を
社 会 情 報 プ ロ セ ス は,職
提 示 した 。
務 や 仕 事 の 特 徴,例
え ば 監 督 の タ イ プ,職
場 の 状況
は 与 え る も の で は な く構 築 す る も の と し て み る 。 重 要 な こ と は 個 人 が 自 分 の 職
務 環 境 を ど う認 知 す る か に あ る 。
環 境 が 社 会 プ ロ セ ス や 個 人 を 通 じて 創 造 さ れ る も の と して み た こ と は,す
で
に 多 く議 論 さ れ て い る(Berger&Luck・nann[1967],Schutz[1967],Weick
[1969])。.Schutz[1967]は,あ
ら ゆ る 知 識 と 意 味 は,内
省 した り過 去 を顧 み
る こ と か ら 生 じ る と い い な が ら 「意 味 あ る 経 験 」 が 個 人 の 態 度 や 行 動 の 理 解 に
重 要 で あ る と.主張 し た 。Schutzの
現 象 学 的 社 会 学 に 影 響 さ れ たWeick[1969]
は,「 実 現 さ れ た 環 境(enactedenviro㎜ent〕
為 者 に.よっ て 実 現 さ れ て お り,主
め し て い る 。March&Simon[1958]も
」 を 提 唱 し,環
境 は組織 内の行
観 的意 味 に おい て 選 び と られ て い る こ とを し
ま た,組
織 に お け る個 人 の判 断 や 行 動
に お い て 環 境 か ら く る 情 報 の 重 要 性 を 指 摘 して い る 。
.と
5)パ ー ソンズ らは,価 値の次 元と して以下 の五つ の次元を設定 し,こ の次元で社 会や文化 を位置
づ けよ うとす る。田 感情惟一感情 中.蹉
性.あ る行為 者が価 値態度 を決定する場合に,情 緒 的な
要 素 と壽知的な要素 のどちら によ り輩挺 してい るか を区分す る次元 と して設定 されてい る。〔2:】
自己志向.一集合体志向。行為者が個 人的に持 って いる欲求や動機が態度決定の場面で優先 され る
か,あ るいはその行為者が所属する集合体 の存続が よ り優先順位が高いかの区分がなされる話3〕
普遍主義一個別主義.行 為者が態度決定の場面で,そ の評価の対象 とな る客体 との関係 が評価 の
差異 に考慮 され るよ うな価値意識を個別主義 と呼ぶ,こ れ に対 して.評 価の対象が 白骨と特 別の
関係 にある場 合で も評価の基準が変化 しない ような態 度が 普遍主義 とされ る。〔4}所属本位一 業
績 本位,評 価 の場面 で,評 価対象者が どの ような社会 階層や集団 に所属 し、 どのよ うな肩書 を
持 っているか によって評価す るか,そ れ とも彼が どのよ うな業績 を ヒげたか を基準に判断す るか
い う区分に関 する次元。㈲ 限定惟一 無限定性。 評価 の対 象 に対 して,そ の性 格 ・能力 ・態
度 ・役割 などに関 してその..一
部分のみに限定 して評価す るか,そ の全体 を評価の対象 とす るか と
.うい う区分の次元で ある。
76(260)..第162巻
第3号
Salancik&Pfeffer[1978]は
社 会 情 報 が何 人 の態 度 や欲 求 に直 接,間 接 的 に
影 響 す る プ ロセ ス と して 四 つ の過 程 を.ヒげて い る。
第1に,同
僚 の 明 白 な 陳 述 は行 動 に 直接 影 響 を与 え る。 た とえ ば,同 僚 が い
まや って い る仕 事 を 些 末 で つ ま らな い もの と して 継 続 的 に語 る と き,個 人 は 自
分 の 判 断 を保 留 し同 僚 の 判 断 に 同調 す る。 従 業 員が 社 会 コ ンテ クス トの 認知 に
おい て他 人 の 評 価 に敏 感 に な る 理 由 は二 つ あ る。 一 つ は,職 務 は実 際 は 複雑 な
刺 激 を もって お り,従 業 員 は これ らの 多次 元 的職 務 内容 に ど う反 応 す るか わ か
らな い。 も う一 つ は,言 語 的 に 従 業 員 は 同僚 に 同意 す る一 般 的 傾 向 が あ って,
繰 わ返 した言 語 的 同意 は最 終 的 には 従 業 員 自身 を確 信 づ け る こ と に な る。
第2に,社
会 情 報 は個 人 の環 境 に 対 す る 注 意過 程 を コ ン ト[}一 ル を統 制 す る。
端境 の あ る側 面 を言 及 した り,あ る次 元1と対 す る 繰 り返 した対 話 は個 人 の注 意
をあ る特 定 の もの に制 限 し,そ の 次 元 を 重 要 視 す る 。 そ して こ の重 要視 され た
次 元 は個 人 の 態度 に影 響 す る。 例 えば,あ
る作 業 の認 知 に お い て 同 じ もの を繰
り返 して い る こ とにだ け注 目す る と,を の 作 業 は ルー チ ンでつ ま らな い もの と
され るが,そ の 製 品 の社 会 的重 要 性 に注 目す る とそ の 作 業 は重 要 な もの と認 知
され る。
第3に,注
意 コ ン トロー ル以 外 に,社 会 情 報 はあ る事 件 に対 す る構造 化 した
意 味 を提 供 す る。 会社 の経 営 に お い て従 業 員 中心 の 管 理 と経 営 成 果 中心 の 管理
,が あ る。 ど ち らが 有効 で あ るか は社 会 的 に きま る。 日本 企 業 で は 従 業 員 に対 す
る配 慮 が 不 足 してい る管 理 者 は,た
とえ そ の業 績 が 高 くて もあ ま り評価 さ れ な
い こ と もあ るが,ア.メ リカの 企 業で は,会 社 の成 功 につ よい 関 心 を も って い る.
と評 価 され る傾 向 は強 い.。
第4に;社
会 情 報 は個 人 が 自分 の動 機 や 欲 求 を解 釈 す る方 法 を与 え る。 例 え
ば,こ の仕 事 は個 人 に考 え る機 会 を 与 えて い な い とい うコ メ ン トはそ の 仕 事 に
お い て個 人 の動 機 や 欲 求 を暗 示 す る。つ まb個 人 の思 考 に よ る創 造 的 欲 求 の 解
消 が そ の仕 事 に重 要 な次 元 に な って い る こ とを章 味 す る。
以 上 か らみ る と,文 化 の 認知 的 プ ロ セス と して社 会情 報 は主 に 同僚 や 監 督 者,
b
自己現象か らみた組織帰属意識の認知 メカ.ニズム..(261)77
或 い は 他 人 と の 対 話 や 置 ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン か ら な る 。Festinger[1954]は
彼の
社 会比 較 の理 論 で 社 会情 報 プ ロセ ス に 関 す る鋭 い通 察 を行 っ てい る。 自分 と世
界 に 対 す る 判 断 は 難 しい も の で あ る 。 物 理 的 情 報 が 得 ら れ な い し,判
実 な 時,人
々 は 他 人 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ.ンを 求 め る 。 そ の 時,人
を 同 僚 の 人 と 比 較 す る こ と に よ っ て 評 価 す るb特
断 が 不確
は情 報 の源 泉
に 自分 と類 似 点 が多 い人 か ら
の 情 報 で あ る ほ ど 自分 自 身 の 謬 知 に と っ て 参 考 に な る 。 例 え ば,職
場で新入社
員 は 行 動 の 規 範 や 情 報 を 管 理 者 よ り 同 僚 か ら 得 る 。 特 に 職 務 内 容 が 曖 昧 な と き,
同 じ仕 事 を して い る 同僚 の態 度 や 行 動 は職 務 遂行 に 影響 が 大 きい。
従 来,文
化 の 議 論 に お い て,同
で あ っ た 。 し か し,文
じ地 域 や 歴 史 背 景 が も っ と も重 要 な 参 考 対 象
化 の 認 知 に お い て 社 会 情 報 プ ロ セ ス は,地
域や歴史環境
よ りそ の 構 成 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン プ ロ セ ス を よ り重 要 視 す る 。 同 じ地 域 や
歴 史 環 境 に 住 ん で も お 互 い の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが 行 わ れ て い な い と き に は そ
の 文化 の影 響 力 は衰 え る。
従 っ て,個
人 が 構 築 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 広 さ と強 度 に よ っ て 文 化 の 影
響 力 は 異 な る 。 同 僚 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが 気 に な っ て 積 極 的 に社 会 情 報 の
形 成 に 参加 す る個 人 と そ うで はな い個 人 で は文 化 の影 響 は随 分 異 な る。
こ の 議 論 は 文 化 の 形 成 に お い て も 示 唆 す る と こ ろ が 大 きい 。 従 来 の 文 化 概 念
は 既 に 存 在 す る も の と さ れ,個
人 は そ れ に 従 属 さ れ,な
に もで き な い 受 け 身 型
の 個 人 を 想 定 し て い た 。 こ こ で は 同 じ 地 域 や 歴 史 環 境 とい う構 成 的 概 念 が 文 化
受 容 を 決 め る お も な 要 素 で あ っ た 。 し か し,主
ず,か
体 が そ の.文化 情 報 を 深 刻 に考 え
え っ て無 視 す る と その 文 化 は 個 人 の行 動 や 態 度 の説 明 に全 然 意 味 を持 た
な く な る 。 そ れ を 意 味 あ る 制 約 や 規 範 と し て 認 知 す る と き,そ
持 つ こ と に な る 。 こ れ が い わ ゆ るSchutzが
の 文 化 は意味 を
い う意 味 あ る 経 験 で あ る し,こ
れ
を 理 解 す る の が 真 の 組 織 行 動 の 理 解 に つ な が る と思 え る 。
3行
動 的 コ ミ ッ トメ ン ト
組 織 帰 属 意 識 は 既 に 帰 属 し て い る と い う状 況 に よ っ て 影 響 さ れ,再
強 化 され
78(262)..・
第162巻
る 。Bem[1972]は,彼
第3号
の 自 己 認 識 の 理 論 で,遂
行 され た 行 動 は態 度 を構 築 す
る 情 報 資 源 で あ る こ と を 指 摘 す る 。 行 動 に よ り組 織 帰 属 意 識 の 関 係 はSalan・
cik[1977]に
よ っ て 行 動 的 コ ミ ッ トメ ン ト と し て 説 明 さ れ て い る 。 彼 に よ る と,
コ ミ ッ ト メ ン トは,行
動 に よ っ て,値
入 が組 織 で の活 動 と関 与 の 維 持 とい った
信.念 を もつ よ う に な る 状 態 で あ る と 考 え た 。 ま た,行
動 的 コ ミ ッ トメ ン トは,
行 為 が 自 由 意 志 に よ っ て 引 き 出 さ れ た と い う 認 知(Volition),行
の 可 能 性 の 認 知(Revocability>,重
(Publicness}に
為 の逆戻 り
要 な 他 者 が 注 目 し て い る と い う認 知
よ っ て 規 定 さ れ る と した 。.
Wortman[1975]は,自
己意 思 に よ る決 定 の重 要性 を実 証 して い る。 大 学 生
を 対 象 に 抽 選 に よ る 賞 品 を 与 え る 実 験 で,実
験 者 に よ る くじ引 き よ り直接 く じ
を引 いた 大 学 生 が そ の 結 果 も らえ る 賞 品 に対 して 肯定 的 反 応 を み せ た 。 た とえ
望 ま な い 賞 品 が 当 た っ て も 自分 自 身 が く じ を 引 い た 学 生 は,実
験 者 に よ る代 理
く じ引 き を お こ な っ た 学 生 よ り そ の 賞 品 に 満 足 度 が 高 か っ た 。
こ の よ う な 一 度 コ ミ ッ ト し た 行 動 と一 致 す る 態 度 を 維 持 し よ う と す る 行 動 的.
コ ミ ッ トメ ン トは 他 の 実 証 に よ っ て 検 証 さ れ て い る(Kiester[1971],Salancik
.[1977],Kline&Peters[1991])。Salancik[1977]は,.行
ness)の
影 響 と し て,友
動 の 公 表 性(public-
達 に 自 分 が 歩 く キ ャ リ ア の 道 を 公 言 し て い た 場 合,特
に そ の 相 手 が 自 分 自 身 と 親 し い 関 係 に あ る 人 で あ る ほ ど,そ
の 道 を続 け て い く
行 動 的 コ ミ ッ トメ ン トは 高 く な る と し て い る 。
一一方
,組
織 行 動 に よ る 態 度 の 再 強 化 過 程 の 説 明 と し て コ ミ ッ ト メ ン トの 手 ス
カ レ ー シ ョ ン議 論 が あ る 。 一 度,組
け に な っ て,ま
織 に コ ミ ッ.トす る と,そ
す ま す コ ミ ッ.トメ ン トす る よ う に な る 現 象 は し ば し ぼ み られ る 。
Brockner&Rubin[1985]は,エ
ス カ レ ー シ ョ ンg例
一 度 きめ た 専 攻 を 変 え られ な い学 生
状 況,長
れ が 一 つ の き っ か.
引 く ス トラ イ キ,働
,長
と し て,転
職 の 難 し さ,.
くつ き 合 っ て い る相 手 と別 れ られ な い
き の 悪 い 従 業 員 を 解 雇 で き な い 状 況,泥
沼 の戦 争
に 没 入 して し ま っ た 国 家 な ど を あ げ て い る 。
Brockner&Rubin[1955]は,組
織 に お け る人 々 の行 動 と関連 して二 つ の エ
自己現象か らみた組織帰 属意識 の認知 メカニズム(263)79
.ス カ レ ー シ ョ ン を 指 摘 し て い る 。 一 つ は,現
な っ て い る に も か か わ らず,そ
る た め に,組
在 の仕 事 や 職 場 に満 足 で き な く
れ まで に組 織 に涯 ぎ込 ん で きた投 資 を正 当化 す
織 に と ど ま り続 け る と い う もの で あ る 。 他 の 一 つ は,他
移 る こ と を 考 え て い る場 合 に 生 じ る 。 た と え ば,転
職 先 を探 して き た 人 が,あ
念 した 職 場 が,ど
の組 織 に
職 の 意 志 を もっ て新 しい転
る職 場 を実 際 に決 め る暗 い ま ま で考 慮 して きたが 断
う し て も そ の 後 の 考 慮 の な か に 人 っ て く る 。 従 っ て,移
もい い と 思 わ れ る職 場 の 要 求 水 準 が ど ん ど ん 高 くな り,限
って
り な く完 壁 な もの を
求 め る よ う に な っ て し ま う。 結 果 と して 職 場 を 移 る こ と が で き な く な る 。
石 田[1997]は,組
織 コ ミ ッ トメ ン ト と エ.スカ レ ー シ ョ ン の 関 係 を 取 り..ヒ
げ
な が ら 日 本 の 会 社 組 織 に お け る エ ス カ レー シ ョ ン に つ い て 言 及 し て い る 。 彼 は,
こ れ ま で に 実 施 さ れ て きた 組 織 コ ミ ッ トメ ン トの 国 陳 比 較 結 果 で,日
織 コ ミ ッ トメ ン トが..ア
本人の組
メ リ カ 人 よ り も必 ず し も 高 くな い こ と は エ ス カ レ ー
シ ョ ン の 結 果 で あ る 可 能 性 を 指 摘 した 。 日 本 的 経 営 の 終 身 雇 用 と 年 功 賃 金 が,
エ ス カ レ ー シ ョ ン を 生 じや す い 性 質 を 備 え て お り,そ
の た め,心
か ら満 足 して
い な い に もか か わ らず,.組 織 に 留 ま り続 け て い る 人 が 多 い 。 こ の 議 論 は ま だ 実
証 が な くて そ の ま ま 受 け 入 れ に くい 面 が あ る が,日
本 入 の組 織 帰 属 意 識 が エ ス
カ レ ー シ ョ ン の 結 果 で あ る 可 能 性 を 提 示 し た こ とで 意 味 が あ る と 思 う 。
こ の よ う に 自 己 現 象 に は,.一 度 参 加 し た 組 織 行 動 に よ る 行 動 的 コ ミ ッ ト メ ン
トの 影 響 を 無 視 で き な い 。 特 に 日 本 人 の 組 織 帰 属 意 識 は 一 度 入 っ た ら取 り返 し
が で き な い 状 況 が もた ら す エ ス カ レ ー シ ョ ン現 象 が あ る こ と は 納 得 が で き る 説
明で あ る。
. V結
び
本 稿 で は,組 織 帰 属 意 識 を従 来 の組 織 コ ミ ッ トメ ン ト理 論 と離 れ て,組 織 を
自己 の延 長 と して 認 知 す る 自己現 象 と して の分 析 を試 み た 。組 織 帰 属意 識 を 自
他 の分 節 か ら な る 自己 現 象 プ 四 七.スで 考 え る と,組 織 帰 属 意 識 は 四つ の構 成 要
素 で 構 成 され て い る。1.)あ る仕事 環境 で行 わ れ る経 営 実 践 や 動 機 管 理,2>内.
80〔264)..第162巻
筆3号
外 的 仕 事 環 境 や 自 己 を 規 定 す る 文 化 的 価 値 や 行 動 コ ン テ ク ス ト,3)経
や モ チ ベ ー シ ョ ン管 理 を 分 析 す る し,文
帰 属 意 識),4)組
営管理
化 に よ っ て 規 定 さ れ る 自 己 現 象(組
織
織 を 自 己 認 知 す る 自 己 現 象 の 結 果 現 れ る 組 織 帰 属 行 動,で
あ
る。
しか し,こ
の よ うな 自己 現 象 の構 成 的観 点 だ けで はた だ 概 念 を 自己 現 象 に 移
しか え た こ と を 除 け ば 既 存 の 組 織 コ ミ ソ トメ ン ト理 論 と あ ま り変 わ りが な い 。
本 稿 の 目 的 は 個 人 の 主 体 的 意 味 関 連 か ら組 織 帰 属 意 識 を 分 析 す る こ と に あ る 。
経 営 側 が 行 った 経 営 実 践 や モ チ ベ ー シ ョ ン管理 が 経 営 側 の思 い 通 りに従 業 員 に
認 知 さ れ 伝 わ っ て く る か,文
化 的 要 因 は実 際 ど の よ うな方 法 で 自 己現 象 に 影響
す るか に関 す る議 論 は 少 な い 。
こ こで,自
己 現 象 の ダ イナ ミ ックな認 知 的 プ ロ セ ス を考 え てみ る 姐
自己現
象 は 三 つ の 認 知 的 プ ロ セ ス を 通 じ て 起 こ る 。1)経
営 実践 か ら な る職 務 や 仕 事
の 誘 因 要 素 の 認 知 に お け る 自 己 自 習 的 判 断,2)適
切 な 態 度 に対 す る文 化 か ら
の 社 会 情 報,3)コ
ミ ッ ト し た 行 動 や 過 去 行 動 の 理 由 か ら調 整 さ れ る 自 己 現 象
で あ る 。 従 来 の 組 織 コ ミ ッ トメ ン.トで は,従
業 員 の行 動 と態 度 は経 済 的 誘 因 に
対 す る 合 理 的 自 己 判 断 に 基 づ い て い る 。 し か し,合
理 的.認識 や そ れ に よ る 行 動
は個 人 の実 際 の選 択 や 意 思 決 定 を 説 明 す る の に は あ ま りに も非 現 実 的 で あ る。
行 動 決 定 す る と き,人
い が な い や り方,い
&Kahnemanの
間 は 多 くの 簡 単 化 し た 戦 略,あ
る い は経 験 的 に まず 勘 違
わ ゆ る 自 己 自 習 的 な 判 断 に 依 存 す る 。 こ こ で は,Tversky
三 つ の 代 表 的 自 己 自 習 的 概 念 を 用 い て,経
営実践 の認知 にお
け る 自 己 自習 的 な 認 知 プ ロ セ ス を 分 析 し た 。
さ ら に,自
己 現 象 に お け る.文化 の 影 響.を,Salancik&Pfeffer[1978]の
社会
情 報 プ ロ セ ス に よ る 個 人 の 認 知 情 報 レ ベ ル で 論 じ た 。 既 存 の 文 化 概 念 は社 会 シ
ス テ ム の 維 持 ・存 続 の た め の 機 能 分 析 を 日 的 と し て お り,個
象 で は な く,文
化 の 中 に 埋 没 した 個 人 を 想 定 し,社
社 会 情 報 プ ロ セ ス は,個
々 の個 人 が 分 析 対
会 シ ス テ ム を 分 析 して い る 。
人の 行 動 に影 響 さ れ る とい われ る文 化 要 因 をあ た え る
も の で は な く構 築 す る もの と して み る 。 こ こ で は 個 人 が 構 築 す る コ ミュ ニ ケ ー
』
自己現象か らみた組織帰属意識 の認知 メカニ ズム
〔265〕81
シ ョ ン の 広 さ と量 が 重 要 な 役 割 を 果 た す 。.
最 後 に,組
織 に 所 属 す る こ と に よ る 自 己 現 象 の 再 強 化 過 程 と し てSalancik
の 行 動 的 コ ミ ッ トメ ン トが あ る 。 一 度,帰
属 す る と,そ
れ が き っ か け に な っ て,
ま す ま す 組 織 に 帰 属 す る よ う に な る 自 己 現 象 の エ ス カ レ ー シ ョ ン効 果 は,心
ら満 足 し て い な い に もか か わ ら ず,組
か
織 に帰 属 してい る 人 々の 組 織 帰 属 意識 を
よ く代 弁 して く る 。
以 上 の よ う に 本 稿 で は,シ
ュ ッツ の現 象 学 的社 会 学 の 概 念 を 自己 現象 に お け
る主 観 的 意 味 関 連 の 中 で組 織 帰 属 意 識 へ の適 用 を試 み た 。 既存 の組 織 行 動 論 が
求 め た 構 造 機 能 主 義 が,人
と 批 判 さ れ る 時,こ
特 に,ア
間 の 社 会 を 生 き る リ ア リ テ ィ を う ま く摘 出 で き な い.
の よ う な 意 味 解 析 方 法 は 示 唆 す る と こ ろ が 多 い と思 わ れ る 。
メ リ カ の 組 織 コ ミ ッ トメ ン トで は う ま く 説 明 出 来 な か っ た 日本 人 の 組
織 帰 属 意識 及 び行 動 を 自 己現 象 の認 知 的 プ ロセ ス で はか な りの部 分 が 解 析 可 能
で あ る。
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