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炎症実習 - 横浜市立大学
炎症の概念 炎症実習 長 嶋 洋 治 横浜市立大学医学部分子病理学教室 • • • • • 発赤 腫脹 発熱 疼痛 機能障害 rubor tumor calor dolor functio laesa • 炎症の原因 – 物理的 – 化学的 – 生物学的 • 感染 • 免疫・アレルギー 白血球の種類 ころころ 炎症の現場で白血球は 血管外に出る べったり 好中球 リンパ球 血管内皮細胞 活性化 白血球活性化 にゅうっつ すぽん 好塩基球 炎症による刺激 好酸球 課題1 急性炎症と慢性炎症 • 急性炎症はうっ血、浮腫、出血が目だつ。浸 潤する炎症細胞は好中球が主体 炎1 急性虫垂炎 典型的な急性炎症 • 慢性炎症では線維化による組織の荒廃が目 だつ。浸潤する炎症細胞はリンパ球や形質 細胞(抗体を産生)が主体 炎6→炎1→炎7 白血球遊走促進 まず正常を知る 炎0A 正常虫垂 炎0A. 正常虫垂 • 粘膜(粘膜上皮、粘膜固有層、粘 膜筋板、粘膜下層) • 上皮は単層円柱上皮 • 固有筋層(内輪外縦) • 粘膜下にリンパ装置が発達 している • 漿膜 炎1. 急性蜂窩織炎性虫垂炎 • 上皮は剥脱し、び らんを起こしている • 壁には炎症細胞浸 潤,浮腫、出血が 見られる(急性炎 症の特徴) 炎1. 急性蜂窩織炎 性虫垂炎 • 浸潤している細胞の多くは 好中球(分葉球)である(急 性炎症の特徴) 炎1. 急性蜂窩織炎性虫垂炎 • 筋層にはうっ血、浮腫、急性 炎症細胞浸潤を認める。 • 浮腫のため筋線維が離解 • 下は正常虫垂の筋層(浮腫 がないため緻密) 炎6 急性カタル性虫垂炎 • 標本は縦断された虫垂 • リンパ濾胞が腫大し,粘膜を挙 上している • 一部に出血を認める • 炎症細胞浸潤はほとんど見ら れない • 筋層の変化は軽微 炎7 急性壊疽性虫垂炎 R7 気管支肺炎 • 壁は壊死に陥り層構造は不明 • 全層にわたり好中球が浸潤 R0 正常肺 E0F 正常精巣 炎3 慢性精巣炎(ムンプスウイルスによる) (慢性炎症の典型) • 精細管内では精子 が形成される • 精巣は荒廃し,線維化を示す。 • 浸潤している細胞はリンパ球 や形質細胞が主体 • 間質にはライディッヒ 細胞が見られる(男 性ホルモンを分泌) リンパ球 形質細胞,わかるかな? • 抗体を産生する • B細胞が分化 • 核は車軸状,偏在 • 細胞質は好塩基性,核周囲は やや好酸性(ゴルジ野) 形質細胞 課題2 肉芽腫性炎症ってなんだろう • 肉芽腫は組織球が集簇し結節状病変を形成したもの • 肉芽腫の形態と形成される部位から原因を特定できるので特殊性炎症とも 言われる • 代表例として結核、サルコイドーシス、梅毒、クローン病など • 結核は乾酪壊死を示す肉芽腫を形成 • 肉芽組織は創傷治癒の過程で見られる血管、炎症細胞,線維芽細胞にと んだ結合組織(かさぶたの下のやつね) 肉芽腫 肉芽(組織) 炎4 肺結核 肺結核 • 乾酪壊死を伴う肉芽腫性肺炎(肉芽腫:組織球 が集族し、形成された結節状病変)。 • 類上皮細胞、Langhans巨細胞 乾酪壊死 • サルコイドーシス:乾酪壊死無し、小型の肉芽 炎15 頚部リンパ節結核 vs 炎13A sarcoidosis デモ 結核菌 参考 compromized hostの結核 肉芽腫と肉芽組織 • 肉芽腫:組織球が集簇し結節状の局面を形成したもの • 抗酸菌染色で赤色ひも状に染色される • 肉芽組織:創傷治癒の過程で形成される血管、線維芽細胞、 リンパ球に富んだ組織 何はともあれ、まず正常 R0 正常肺 • 肺では肺胞壁でガス交 換が行われる • 細気管支(壁に軟骨をも たない;軟骨があれば気 管) • 肺胞壁(ガス交換を行う) • 肺胞腔(空気を容れる) 炎13 Sarcoidosis • • • • • 炎4 肺結核 • 結核の特徴は乾酪壊死を伴う肉芽 腫性炎症である。 • 乾酪壊死(肉眼的にチーズ状) • 肉芽腫とは組織球が集簇し形成さ れた結節状の病変 • 類上皮細胞(組織球由来) • ラングハンス巨細胞 参考 Sarcoidosis , 肺生検 原因不明の肉芽腫性疾患 全身に肉芽腫の形成 ブドウ膜、肺、肺門リンパ節など 心臓に肉芽腫形成されると、伝導障害→突然死 乾酪壊死を伴わない小型肉芽腫 • 炎13A: 肺門リンパ節(キーワード BHL; bilateral hilar lymphadenopathy) • 炎13B: 心臓 炎0B 正常リンパ節 (炎13Aと比較) • 胚中心 壊死を伴わない小型肉芽腫 炎13A. サルコイドーシス、リンパ節 • リンパ節内に壊死を伴わない 小型肉芽腫が多数見られる • 多数のリンパ球が 含まれる • ラングハンス巨細胞 • リンパ球の大きさ は10μm(いつも心 にリンパ球) • 類上皮細胞 炎0D 正常心筋(炎13Bと比較) 炎13B サルコイドーシス、心筋 • 心筋は横紋筋と平滑筋の中間的 な性格を有する • 瘢痕などで伝導障害を来す • サルコイドーシスは原因不明の 肉芽腫性疾患である。 • 肉芽腫が形成される部位によっ て予後が大きく変わる。 • 心筋内に形成されると伝導障害 を来す。 課題3 真菌感染症の特徴 炎5 カンジダ,肝膿瘍 肝内に微小膿瘍形成 • 浅在性(皮膚など)と深在性(内臓、全身)がある • 深在性は日和見感染症として発生することが多 い • 菌によって特徴的な形態を示す • カンジダ(炎5)、アスペルギルス(炎10)、ニュー モシスティス(R8, 9) 、クリプトコッカス(デモ)の形 態を覚えよう デモ標本 カンジダ,食道炎 Grocott染色 • ソーセージ状の菌糸 カンジダの菌糸が 見える 炎10 アスペルギルス,肺 • 敗血症型アスペルギルス症の肺 • 血管内に真菌を含む血栓が形成 され出血性梗塞をきたしている • 炎症細胞浸潤に乏しい デモ標本 アスペルギルス、肺 R8. ニューモシスティス肺炎 • 肺胞壁は線維化とリンパ球 浸潤を伴い肥厚 • 肺胞内に泡沫状浸出物 Grocott染色 • 分枝をしめす菌糸、分節あり R8, 9.ニューモシスティス肺炎 • 泡沫状浸出物の中 にニューモシスティ スを認める デモ標本 クリプトコッカス肺炎 結核に似た壊死を囲む 肉芽腫 類上皮細胞が壊死を囲む 中央が凹で、見る方向で円盤形 または三日月形(コンタクトレンズ状) Grocott染色 デモ標本 クリプトコッカス肺炎 グロコット染色で球形の真菌 を認める Grocott染色 課題4 ウイルス感染の特徴 • ウイルスは好んで感染する細胞をもつ (サイトメガロウイルス→肺胞上皮、副腎皮質、 唾液腺)、肝炎ウイルス→肝細胞、HIV→ヘル パーT細胞など) • 様々な細胞の異常を来す(細胞死、核内封入 体、形質転換、異常増殖→腫瘍形成) • 免疫抑制状態で好発 • ヘルペス肝炎(炎2) • サイトメガロウイルス感染(炎11A, B, C) T0D 正常肝臓組織 T0D正常肝臓 肝細胞hepatocyte 類洞sinusoid Disse腔 炎2 ヘルペス肝炎 炎11A サイトメガロウイルス肺炎 • 肺胞上皮に感染し,核内封入体 を形成 • 免疫力の低下したヒトに感染し やすい(日和見感染) • 封入体は『フクロウの眼』状 • 肝細胞の出血,壊死とfull型の封入体を認める 炎0C 正常唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌下腺の 違いを覚えていますか?) • 導管 炎11B サイトメガロウイルス唾液腺炎 • 導管上皮や腺房細胞に核内 封入体を認める • ちょっとかわいいかも♥ • 漿液腺(細胞質が好塩 基性) • 粘液腺(細胞質が染色 されにくく、核が圧排さ れる) 炎11C サイトメガロウイルス副腎炎 E0D 正常副腎 • 皮質(ステロイドホルモン分泌) • 髄質(カテコラミンを分泌) • 副腎皮質細胞にサ イトメガロウイルス が感染し、組織破 壊 皮質は3つに分けられる • 球状層(アルドステロン分泌) • 索状層(束状層)(糖質コルチコ イド分泌) • 網状層(性腺ステロイド分泌) • 封入体を形成 課題5 原虫感染(アメーバ赤痢,炎12) T3 正常大腸 • 大腸も管腔臓器 • 粘膜(上皮、固有層粘膜 筋板、粘膜下層) • 筋層 • 漿膜または外膜 • アメーバ赤痢(病名)は赤痢アメーバ(病原 体名)によって起こされる大腸疾患 • 「海外渡航帰国後,粘血便」という臨床歴 • 「免疫抑制状態」の患者 • 下掘れ潰瘍(フラスコ型潰瘍)を形成 • 組織が崩壊しつつある付近にアメーバを認 める • 肝膿瘍や脳膿瘍を生じることもある • 上皮は単層円柱上皮 • 水分の吸収を行う 炎12 アメーバ赤痢 • 大腸の粘膜は壊死に陥って いる(下掘れ潰瘍,フラスコ 型潰瘍) • 潰瘍の底部に赤痢アメーバ を認める • 赤血球を貪食している 課題6 アレルギー性炎症の特徴 • • • • うっ血、浮腫が目だつ ケミカルメディエーターが重要(ヒスタミンなど) 好酸球浸潤が目だつ 慢性副鼻腔炎(炎8)、気管支喘息、アトピー性皮 膚炎、過敏性肺臓炎など 炎8 アレルギー性副鼻腔炎 • 副鼻腔粘膜上皮 • 粘膜下に浮腫,うっ血 • 多数の好酸球を認める