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(土)に北関東支部で協会設立55周年記念公開講座が開催され

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(土)に北関東支部で協会設立55周年記念公開講座が開催され
協会設立55周年記念講演
一般社団法人日本産業カウンセラー協会
会長 河野慶三
2015年12月19日(土)14時より埼玉県県民健康センターにて協会設立55周年記
念公開講座が開催されました。河野慶三会長が「これからのメンタルヘルスマネジメ
ントとは~産業カウンセラーとしての組織援助~」をテーマに講演を行いました。そ
の講演の中から、協会やこれからの産業カウンセラーの活動についての話をまとめて
掲載いたします。
組織と個人の橋渡しができる産業カウンセラー
メンタルヘルスマネジメントについては「メンタル
ヘルス・マネジメント」として大阪商工会議所が商標
登録していますが、その内容は使う人によって異なっ
ています。そこで、今日の話ではメンタルヘルスマネ
ジメントを『企業などの組織が行う職場におけるメン
タルヘルスケアのこと』と定義します。
メンタルヘルスマネジメントの目的は
1.リスク管理
2.生産性の向上
のふたつです。
その問題の背後に長時間労働があり、これが労働協約
に反しない範囲の事業主の指揮命令であった場合、労
働者は正当な理由なく拒否することはできません。産
業カウンセリングでは、個人に面接をする場面でも、
このような部分にも焦点を当てることが、非常に重要
なのです。
国家資格
公認心理師
昨年、公認心理師法が成立しました。法律の施行は
2017年度です。法実施の具体的な作業はこれからなの
で、試験の内容も含めて明らかではありませんが、資
産業カウンセラーの役割を、個人の話を聴き、問題
格を取得するまでの段階で産業分野の知見が取得でき
解決の支援を行うことだと思っている方が少なくない
るとは考えにくい状況にあります。ですからこの制度
のですが、産業カウンセラーはカウンセラーとは違い
ができても、ただちに公認心理師が産業カウンセリン
ます。産業カウンセラーは個人だけでなく組織を対象
グを担う状況になりません。
とするから『産業』がつくのです。
産業カウンセラーの有資格者が公認心理師になれる
医療機関で診療をしている医師と産業医の違いは、
かどうかはわかりません。移行措置がどうなるかが明
カウンセラーと産業カウンセラーの違いとほとんどパ
らかでないからです。公認心理師の資格を取れればそ
ラレルです。臨床の診療・治療はその患者が患ってい
れにこしたことはないのですが、それよりも、今自分
る病気を診ます。その病気の背後にある個人を超えた
たちがいる現場で組織の中で働く人の支援活動を継続
組織の問題には直接アプローチすることができません。
し、実績をつんでいくことの方が重要です。産業カウ
一方、産業医は事業者と契約をし、事業者が自己に課
ンセラーは、学歴ではなく社会人としての経験を基盤
された安全配慮義務を的確に実施することを支援しま
に据えた実務者としての力を示すことによって、公認
す。
心理師との差別化を図ることを考えたいのです。
産業カウンセラーが個人と面接して問題点を把握し、
その解決に向けた支援を行うことは当然です。しかし
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協会設立55周年記念講演
労働契約について整理しましょう
私は医師や産業カウンセラーと話をしていて、労働
契約が理解されていないのではないかと考えることが
よくあります。
キャリアコンサルタント国家資格化
さて、今日の話のポイントです。この4月からキャ
リアコンサルタントが国家資格になります。
キャリアコンサルタントが国家資格になると、公的
労働契約は元々、民法の雇用契約です。雇用契約は
機関、企業は国家資格を持った人を使うでしょう。私
事業者と労働者が平等という前提で規定されているの
は産業カウンセラーとしてキャリアコンサルタントの
ですが、歴史的にみても事業者の方が強いことは明ら
仕事ができます、といくら言っても通用しなくなりま
かです。だから労働組合法で団体交渉を認めたりする
す。だから、既に産業カウンセラーの資格を持ってい
ことによって,それを是正してきました。しかし,単
るが、キャリアの資格を持っていない人は必ず国家資
純に言ってしまえば、労働契約とは、労働者が事業者
格をとって欲しいのです。
に労働力を提供し、その見返りに事業者は労働者に賃
金を払うという約束です。
実は厚生労働省は各事業所にキャリアコンサルタン
トを置くことを考えています。今回の法改正では、そ
例えば新入社員が半年でうつ状態になる。話を聴く
れを制度化することができなかったので、まずは補助
と、「私は広報部に行きたくて入社したのに、一番し
金を使って「キャリアドック」を広めようとしていま
たくない営業にまわされた。それでうつになった」と
す。このキャリアドックを担う人材が、国家資格をも
言うのです。今の日本では職種を限定しない雇用が大
つキャリアコンサルタントだというわけです。国家資
部分ですから、事業者に命じられれば自分の希望と違っ
格のない人は、その役割が担えません。
ていてもしなくてはいけない。労働力の提供を賃金と
協会では話を聴けるキャリアコンサルタントの養成
引き換えにすると約束しているわけですから、労働が
をこの4月から始めます。キャリアコンサルタントと
できなくなったらその契約は当然なくなります。ただ、
して実際に役にたつのは話が聴ける人だからです。今
就業規則には病気休暇の規定があります。多くの場合、
仕事がないと言っている方も資格を取ると幅が広がっ
病気は療養によって回復するので、事業者は就業規則
て仕事が見つけやすくなるということです。
で定める期間は労働契約を維持し、就業を免除してい
るのです。これは安全配慮義務の履行にあたります。
その期間療養に専念しても回復しなければ、就業規則
に従って退職する。この原則に当てはまらないのが、
労働基準監督署が労働災害と認めた場合です。業務に
起因する健康障害は、その扱いが違います。
労働契約上はそのとおりなのですが、ここで紹介し
た事例のような場合は、病状が回復して職場復帰させ
ても、また病状が再燃することが少なくありません。
この問題に対してはキャリアの視点からのアプローチ
が必要です。これは適性に見合う適正配置の問題です。
メンタルヘルスマネジメントの目的は、リスク管理
と生産性の向上のふたつであることはすでにお話しし
ましたが、こうした事例への対処が適切でないと生産
性を低下させます。職場復帰にはメンタルヘルスの視
点から産業医が関わりますが、一般に、産業医にはキャ
リアの視点が不足しています。
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協会設立55周年記念講演
ズバリ
産業カウンセラーに求められる能力
メンタルヘルスケアは、全労働者を対象とする活動
とメンタルヘルス不調者を対象とする活動のふたつに
分けられます。産業カウンセラーが行うメンタルヘル
スの基本対応は相談です。そして教育、快適な職場づ
くり、この3つが全労働者を対象とした日常的活動の
中身です。そのために欠かせない能力が6つあります。
1.心身の健康、組織の心理、関連する法制度につ
いて概括的な知識をもっている
2.傾聴のスキルをもっている
3.個人の抱える問題を本人が認識し解決していく
プロセスを支援することができる
4.職場環境を的確に評価し、その改善を目指した
ここに挙げた3つの問題のうち2つは明らかな健康問
題ですが、健康の視点のみでは的確に対応することが
できません。キャリアの視点で考えることが必要です。
メンタルヘルス不調者も、がん患者も本来は元の職場
に復帰させることが原則です。しかし、この原則にこ
だわり過ぎるとメンタルヘルス不調が生じやすいとい
う現実があるのです。介護は、仕事と両立させようと
すると、たいていは睡眠時間の不足をまねきます。こ
こから健康問題が生じます。介護がいつまで続くかは
誰も予測できません。一定期間、キャリアの変更を行
うことが余儀なくされます。
こういう状況下にある労働者に、産業カウンセラー
がキャリアコンサルタントとしてコミットしていく。
これは組織への介入をしないと進みません。
組織への働きかけを行うことができる
5.キャリアカウンセリングができる
6.1~5に関連した教育活動ができる
みなさんが、1から6までのどれができてどれができ
ないのか自己点検をしてください。そうすれば自分が
ストレスチェック
1)関連施策の中での位置づけ
労働安全衛生法が定めるメンタルヘルス関連施策は
持っている力の位置づけができます。足りないものが
4つありました。
あれば、それを身に付ければいいのです。しかし、机
①健康診断と事後措置
上の学習のみでは身に付きません。今自分たちがいる
②健康教育(第69条)
現場にある問題を一つひとつ解決していくなかでさま
③過重労働にかかる医師による面接指導
ざまな実務経験を積むことによって培われていく力な
④快適な職場環境の形成(第71条の2)
のだと思うのです。
法にもとづく制度としてこれまでこれだけやってきま
した。やってきたけれどもメンタルヘルス不調者は減
最近注目の職場の健康関連問題
現在多くの職場ではメンタルヘルス不調者の職場復
らない。そこでストレスチェック制度が新たにつくら
れたのです。
帰の問題が大きなテーマになっています。具体的な問
題として挙げられるのは、復帰に要する期間が長くなっ
2)制度を活かすために
ている、復帰してもすぐに不調が再燃し休む、勤怠上
ストレスチェックをすると10%くらいの受検者が面
の問題は生じないがパーフォーマンスがなかなか上が
接の対象者になるというのが一般的な設定です。です
らないなどです。
から100人のうち10人。では10人のうち何人が事業者
また、がんの治療を受けて復帰した労働者、働きな
に申し出るでしょうか。もし、申し出がなければ、ス
がらがんの治療を受けている労働者の健康管理の問題
トレスチェックの結果はその人止まりで活用されない
がありますね。彼らは病前と同じようには仕事ができ
ことになります。それでは健康診断のやりっぱなしと
ないことが少なくなく、がんの再発などの不安をもっ
同じです。健康診断の結果が出てもすぐ捨てちゃう。
て生活をしています。こうした労働者にどうかかわっ
どうして捨てたかと聞くとアスタリスクがついていな
ていくのか、それも解決を必要とする問題です。
かったから問題ないと思ったとか、ついていたけど去
さらに、高齢化した親の介護の問題があります。本
年と同じだから捨てたと言います。これでは、生活習
人は健康で働く意欲もあるのですが、介護に時間をと
慣が数字にどのように反映しているかを理解し、健康
られるという、その人がおかれた状況が仕事の妨げと
の保持増進に活用するという健康診断の大切な部分が
なる。企業側からみると生産性は低下しています。
実行できません。
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協会設立55周年記念講演
最近の調査によると50人以上100人未満の企業で産
業です。この作業は、本来はストレスチェック実施者
業医を選任している事業場は90%でした。以前は50%
が行うものですが、それは現実には難しいので、スト
といわれていたので、産業医の選任率はよくなってい
レスチェック実施者の指示にもとづいて産業カウンセ
るようです。しかし、活動の実態をみると、月に1回、
ラーが面接をし、ストレスチェック実施者が、その報
2~3時間程度となっています。これでは、ストレス
告を加味して要面接者を決めます。場合によっては、
チェックにきちんと対応することは困難でしょう。実
質問票の得点が極めて低い受検者を対象とした面接も
際,産業医からはストレスチェックにかかわるのなら、
ありえます。
産業医をやめるといった話も出ています。
三つめは、ストレスチェックの結果を受け取った後
ストレスチェック制度を生かすには、こうした産業
の労働者への支援です。「あなたは高ストレス者に該
医を誰かが支援することが必要なのです。後でお話し
当します。医師の面接を受けてください」という結果
するように、その役割は産業カウンセラーが担うこと
報告をもらったら、みなさんはどう考え行動しますか。
ができます。
どうしようかなと1人で考えて、結論が出ないまま時
間切れで結局受けないという事態は考えられませんか。
3)ストレスチェックの結果を見るときには
ストレスチェックの結果の評価は質問票の得点分布
また、「私は該当しないと言われたのだけど、すごく
ストレスを感じています」という人もいるでしょう。
にもとづいて行うことは皆さんご存知のとおりです。
この人たちの相談を産業カウンセラーが受ける仕組み
ストレス要因(職場、家族の支援を含む)とストレス
を作るのです.
反応、のそれぞれの得点を組み合わせて高ストレス者
さらに、複数回にわたる面接にかかわる産業医への
を選びます。ここでぜひみなさんに注意してほしいの
支援です。産業医による高ストレス者の面接指導が1
はストレス反応のところです。
回で終わると考えることは現実的ではありません。例
厚生労働省が推奨している「職業性ストレス簡易調
えば就業上の措置として、3カ月間夜勤禁止になった
査票」では、ストレス反応の項目はすべて過去1か月
とします。そうすると3カ月以内に再度の面接が必要
間の頻度をきく形になっています。「ほとんどなかっ
になります。月1回か2回しか事業所に来ない嘱託の
た」「ときどきあった」「しばしばあった」「ほとん
産業医には大きな負担です。そこで、産業カウンセラー
どいつもあった」の4段階です。これではストレス反
がきちんと面接した結果を産業医に報告し、それを踏
応の大きさの程度は把握できません。軽い頭痛が毎日
まえて産業医が意見書を書く。そういう仕組みを作れ
ある人と月に1~2回だが仕事にさしつかえる頭痛が
ばよいのです。
ある人の例を考えればわかるとおり、得点が多いから
高ストレスとは限らないのです。これは、質問紙調査
5)ちょっと待て!組織診断
に共通する問題点で、こうしたことがあるから、質問
組織診断については、あまり急いでやらない方がよ
紙調査の結果は面接で確認することが常識になってい
いと考えています。今の多くの産業カウンセラーには、
るわけです。ストレスチェックの結果の確認をどうす
組織診断をするための基礎的な知識が乏しいと考えて
るか、現場では必ず対応しなければならない課題です。
いるのが第一の理由です。
4)産業カウンセラーが活動できる3つの領域
るかも大きな問題です。受検者の偏りの問題もあり
また、受検労働者が対象者のどの程度の割合にな
ストレスチェック制度の中に3ヶ所、産業カウンセ
ラーが活動できる領域があります。
まず一つめは、ストレスチェック体制整備への支援
です。これはコンサルタント的な役割です。
ます。
第一回のストレスチェックの結果をよくみて、組
織診断を的確に実施するノウハウを蓄積することが
望まれます。
二つめは、ストレレスチェック結果の評価のところ
で、ストレスチェック実施者が行う、医師による面接
指導の必要な労働者の決定の部分です。質問票の結果
が高ストレスであった受検者に面接をして確認する作
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