Comments
Description
Transcript
絶滅危惧I類(PDF;1.8MB)
20 ヒメスギラン ヒカゲノカズラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Lycopodium chinense Christ 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,遺存性,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域に生育する北方性の小形の常緑性シダ植物。ブナ林の林床や岩上,時に樹上下部に生育する。茎 は又状に数回分枝し,頂端に芽体をつける。葉は針状披針形,基部が最大,長さ約5mm,幅1mm以下。胞子葉は茎の上部 葉腋につき,穂状にはならない。樹上着生のスギランと類似するが,地上生の場合が多く,葉は細く針状である。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)氷ノ山。 ■保護上の留意点 採取防止。ブナ帯の岩場等生育地付近 の植生保護。 スギラン ヒカゲノカズラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Lycopodium cryptomerinum Maxim. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の樹上または岩上に着生する常緑性シダ植物。茎は又状に分岐,伸長すると下垂し長さ30cmに達 する。葉は狭披針形,長さ1∼2cm,幅は中央部で最大,幅1∼2mm。胞子嚢は頂端部付近につくが穂状にならない。和名 は形態がスギの葉状であることに由来。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)氷ノ山,佐治村,三朝町,船上山。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。ブナ帯の自然林保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 21 ヒメハナワラビ ハナヤスリ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Botrychium lunaria (L.) Sw. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,分布限界,希少性。 ■生態・形態 日のよく当たる高山の草原ややや湿った岩場 に生育する小形の夏緑性シダ植物。大山山頂部の草原に分 布 す る が き わ め て 希 少。根 茎 は 短 く 匍 匐。茎 は 高 さ5∼ 15cm。葉は単羽状複葉,1枚,長さ4∼6cm,羽片は扇形,3 ∼5対。胞子葉は穂状に3回羽状,球状の胞子嚢を密生。 ■分布 北海道,本州中部以北,高山帯に希産。 (県内)大山。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。大山山頂付近の湿潤 草原の保護。 ハコネシダ ホウライシダ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Adiantum monochlamys Eat. 環境省:− ■選定理由 採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 やや乾いた岩上に生育する小形の常緑性シダ植物。葉は2∼3回羽状複葉。葉柄は細く,黒褐色,光沢があ る。小葉は扇形,頂部は不規則な鋸歯縁,側部は全縁,無毛。胞子嚢群は小葉に1個,ほぼ円形。乾燥時には葉が縮れる。 和名は最初の発見地箱根に由来。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)若桜町,三朝町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。生育地の岩場 付近の植生保護。 22 タキミシダ シシラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Antrophyum obovatum Baker 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 やや陰湿な渓流沿いの岩場に着生する小形の常緑性シダ植物。青谷町の古井戸内壁産は絶滅,県内絶滅が 懸念されていたが,西部地域で再発見された。葉身は厚革質,倒卵状長楕円形,全縁,葉脈は中肋不明瞭,網状,鋭突頭, 基部はくさび形で葉柄に流れ,通常長さ10cm以下。胞子嚢群は下面葉脈に沿い平行,線形,苞膜はない。和名は瀑滝の岩 場で発見されたことに由来。 ■分布 本州新潟県以南,四国,九州。 (県内)西部地域。県内分布図は省略。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。渓流沿いの岩 場と周辺部植生の保護。 ミヤマシシガシラ シシガシラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Struthiopteris castanea (Makino) Nakai 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,分布限界,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の渓谷沿いの陰湿な斜面に稀産する常 緑性シダ植物。葉は栄養葉と胞子葉の2型がある。シシガシラ に似ているが,栄養葉はざらつきのある暗緑色,葉柄,葉軸が 紫褐色,羽片は20∼35対で比較的少ない。オサシダにも類似す るが,根茎が匍匐しないことや葉柄の鱗片がオサシダの卵状披 針形に対して線状披針形である点で異なる。 ■分布 本州日本海側多雪地帯。 (県内)扇ノ山,高山,高鉢山。分布西限。 ■保護上の留意点 ブナ帯域谷沿いの植生保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 23 ミヤコヤブソテツ オシダ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cyrtomium fortunei J.Sm. var. intermedium Tagawa 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 照葉樹林内の陰湿地に生育するやや大形の常緑性シダ植物。葉は単羽状複葉,長さ30∼50cm。羽片は10∼ 15対,基部が最も広く,耳状突起が発達,羽片は漸突,先端近くには鋸歯がある。胞子嚢群は円形,散在,苞膜の中央部 が黒褐色,周辺部は灰白色。ヤマヤブソテツに類似するが,葉基部耳状突起,胞膜の色で区別する。和名は発見地の京都 にちなんでいる。 ■分布 本州関東以西,四国,九州。 (県内)福部村。 ■保護上の留意点 照葉樹林の保護。 ヘイケイヌワラビ メシダ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Athyrium eremicola Oka et Kurata 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の林床に生育する常緑性シダ植物。やや明るい落葉広葉樹林内であるが,谷間の山道沿いに生育 している。葉身の長さ15∼20cm,幅4∼7cm,単羽状深裂。葉柄は短く,葉身の約1/4長。胞子嚢群は羽軸に接してつく。葉 柄,羽軸とも美しい赤紫色をおびる点はタニイヌワ ラビに似ているが葉柄基部には黒褐色の鱗片が密生 する。 ■分布 本州兵庫県∼中国地方。 (県内)江府町。 ■保護上の留意点 ブナ帯域の落葉広葉樹林の保 護。 24 シマイヌワラビ メシダ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Athyrium tozanense (Hayata) Hayata 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 南方系の小形夏緑性シダ植物。県内ではブナ林域の陰湿な渓流沿いに生育。葉は叢生,2回羽状複葉,長さ 20∼35cm。葉柄の鱗片は少なく淡褐色,膜質。羽片は披針形,下方の1∼2対は下方に向く。小羽軸上面に長さ約1mmの刺 がある。胞子嚢群の苞膜は半月形,鋸歯縁。ミヤコイヌワラビ, ホソバイヌワラビに類似するが,羽片基部の小羽片が内先に出 ることが特徴。他のイヌワラビ類との自然雑種トットリイヌワ ラビ,タナカイヌワラビがある。 ■分布 本州福井県以西,四国,九州。 (県内)高鉢山。 ■保護上の留意点 ブナ帯谷沿いの自然林保護。 オオエゾデンダ ウラボシ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Polypodium vulgare L. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,遺存性,希少性。 ■生態・形態 山地林内の樹幹や岩上に生育する常緑性シダ植物。県内では日当たりのよい旧海食崖面にトウテイランと ともに生育,近年減少傾向。遺存植物。根茎は横走,鱗片密生。葉は卵状長楕円形,羽状深裂,5∼15対,ねじれがあり,乾 いた草質。葉柄はわら色,無毛。胞子嚢は円形。オシャグジデンダに似るが,葉は無毛,乾燥時でも羽片が巻き込まず, 羽片数が少なく,葉形もやや異なる。 ■分布 北海道,本州北部,隠岐島。 (県内)羽合町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。他の草本類繁 茂防止等の保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 25 サンショウソウ イラクサ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Pellionia minima Makino 環境省:− ■選定理由 希少性。 ■生態・形態 山地渓谷沿いの陰湿な岩崖地に生育する小形の多年生草本。茎は緑褐色,短毛密布,分枝して匍匐,長さ10 ∼30cm。雌雄異株。葉は互生,ゆがんだ倒卵形,やや肉質,まばらな鈍鋸歯縁,長さ1∼2cm。花は4∼6月,紫褐色,雄花 序には短柄,花被片は4個。雌花序はほとんど無柄,花被片は5個。県東部に多産するオオサンショウソウとは茎の密毛, 葉の形で区別。和名は葉がサンショウに似ることに由来。 ■分布 本州関東以西,四国,九州,沖縄。 (県内)会見町,西伯町。 ■保護上の留意点 採取防止。山地渓谷沿いの植生保護。 イブキトラノオ タデ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Bistorta major S. F. Gray var. japonica Hara 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の草原のやや湿潤地に生育する多年生草本。高さ50∼100cm。根出葉は披針形,長柄があり長さ20cm 以上。基部は翼になって柄に流れる。上部の葉は柄が無く基部は茎を抱く。花期は7∼9月,白∼淡紅色,萼が花被となり 花弁はない,茎頂に長さ3∼10cmの花穂をつける。和名は発 見地の滋賀県伊吹山にちなむ。 ■分布 北海道・本州,四国,九州。 (県内)関金町。 ■保護上の留意点 採取防止。山地草原の維持。 26 ヤナギヌカボ タデ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Persicaria foliosa (H.Lindb.) Kitagawa var. paludicola (Makino) Hara 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 湿地や水辺に生育する一年生草本。県内では山 裾のため池流入部の水辺に自生する。茎は地を這い上部で斜 上,多分枝,高さ約30cm。葉は互生,広線形,長さ6∼8cm, 鋭尖頭,基部は円形,短柄がある。葉鞘は筒状,縁毛は等長。 花は9∼11月,淡紅色,上部の葉腋に細い穂状花序を形成。類 似のヌカボタデは葉が狭披針形,基部はくさび形。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)岩美町,気高町。 ■保護上の留意点 ため池の保全管理。 エゾカワラナデシコ ナデシコ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Dianthus superbus L. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,遺存性,希少性。 ■生態・形態 県内では三徳山の乾いた凝灰岩の岩上や岩隙に小群生する夏緑性多年生 草本。保水性の高い凝灰岩が良好な生育環境を提供していると考えられる。遺存植物。 茎は這い分枝して叢生,高さ10∼30cm。葉は対生,線状披針形,粉白緑色,節は膨ら む。花は7∼9月,淡紅色,枝先に数個,苞は2対,萼は長く筒状,花弁の先端は細深裂 する。類似のカワラナデシコは苞が3対,茎葉の白色度がうすい。地元ではミトクナデ シコの名で親しまれている。 ■分布 北海道,本州中部以北。 (県内)三徳山。 ■保護上の留意点 採取防止。生育地の植生保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 27 トリガタハンショウヅル キンポウゲ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Clematis tosaensis Makino 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の日当たりのよい林縁の低木に絡まり,ときに地上や岩上に茎を伸ばして生育するつる性の多年生草 本。葉は3出複葉,小葉は狭卵形∼楕円形,鋭頭,基部はくさび形,粗鋸歯縁,長さ5∼8cm。花は4∼5月,白黄緑色,鐘 形,萼が4個の花弁状となる,反曲し外面に白長毛,花柄は長さ約2cm。類似のハンショウヅルは花が赤紫色。和名は発見 地の高知県鳥形山にちなむ。 ■分布 本州,四国。 (県内)河原町,鹿野町。 ■保護上の留意点 山地の林縁部の保全。 オキナグサ キンポウゲ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Pulsatilla cernua (Thunb.) Spreng. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい草原に生育する多年性草 本。根茎は太く,全体に長白毛が密生。根出葉は2回羽 状複葉,裂片は細長く,長葉柄がある。花茎は上部に3枚 の輪生葉。花は4∼5月,1個頂生,鐘形,外面に長白毛, 内面は暗赤紫色,萼6個が花弁状となる。花後花柄は伸 長,果実期には約30cmになる。痩果には羽毛をつけた花 柱が付随し特徴的。和名は痩果の形態を翁(老人)の白 髭に見立てたもの。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)三朝町,大山,日南町。 ■保護上の留意点 採取防止。生育草地の保全管理。 28 モミジカラマツ キンポウゲ 科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Trautvetteria japonica Sieb. et Zucc. 環境省:− ■選定理由 遺存性,希少性。 ■生態・形態 山地の沢沿いに生育するやや大形の多年生草本。県内では渓谷沿いの湿潤な急斜面に残存。遺存植物。高 さ50cm内外。葉は掌状,7∼9深裂,鋭突頭,鋭粗鋸歯∼欠刻,長幅同長,基部は心形,径約10cm。花は7∼8月,白色,無 花弁,雄しべの花糸が細い花弁状になる。和名は葉形がモ ミジに,糸状花がカラマツの葉の集まりに似ることに由来。 ■分布 北海道,本州中部以北。 (県内)若桜町,三朝町。 ■保護上の留意点 山地沢沿い付近の植生保護。 マルバノウマノスズクサ ウマノスズクサ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Aristolochia contorta Bunge 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 水田や畑などの山側斜面などの放置された藪の中に生育するつる性の 多年生草本。葉は卵状3角形,粉白色,長さ4∼10cm,先端は円頭∼鈍頭,基部は浅 い心形,芳香がある。花は7∼8月,黄緑色,ラッパ状,葉腋に数個,萼が花弁状,基 部は球状,萼筒は細長く湾曲,先端部は長く尖る。果実は卵状球形。和名は果実の形 を馬用の鈴に見立てたもの。ウマノスズクサは葉が細長く,花は葉腋ごとに1個。 ■分布 本州山形県以西∼島根県。 (県内)国府町,智頭町,鳥取市。 ■保護上の留意点 生育地の藪状態の維持。 レッドデータブックとっとり (植物) 29 ヒメカンアオイ ウマノスズクサ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Heterotropa takaoi F.Maek. 環境省:− ■選定理由 採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の谷沿いや社叢内などのやや陰湿な林床に生育する小形の常緑多年生草本。花の時期が早く,積雪の 中で開花。葉は通常2個,卵円形,円頭,基部は深心形,薄い斑紋状模様,長さ約5cm,長柄がある。花は2∼3月,広筒形, 萼が花弁状,三角状に3裂。 ■分布 本州中部以南,四国。 (県内)佐治村,日南町。 ■保護上の留意点 採取防止。山地谷沿いの森林, 社叢の保護。 コウヤミズキ マンサク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Corylopsis glabrescens Fr. et Sav. var. gotoana (Makino) Yamanaka 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地谷沿いの岩場や落葉樹林の粗悪地に生育する大形の落葉低木,高さ5mに達する。葉は広卵形,やや左 右不相称,荒い鋸歯縁,下面は粉白色,葉柄や脈状に星状毛が散生。花は早春,開葉前,黄色,穂状に7∼10個,長さ約 1cmの花が垂下。花弁は5枚,卵形,長さ約7mm,葯は帯紫色で目立つ。 ■分布 本州中部以西,四国,九州,主として太平洋 側。 (県内)溝口町,会見町。 ■保護上の留意点 採取防止。谷沿いの自然林保護。 30 オオシラヒゲソウ ユキノシタ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Parnassia foliosa Hook.fil.et Thoms. var. japonica (Nakai) Ohwi 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地渓谷沿いの常時水の滴る岩場や湿潤地に生育する多年生草本。茎は直立。葉は深心形,円頭突端,長幅 同長で約2∼6cm,根出葉は長柄,茎葉は数個で無柄,抱茎。花は8∼9月,白色,茎頂に1個,花弁は卵形,縁辺は毛状に 細裂,径約3cm。母種のシラヒゲソウに比べ全体的に大きく,茎葉数が少ない。和名は花弁縁辺の毛状を白髭に見立てた もの。 ■分布 本州日本海側。 (県内)氷ノ山,扇ノ山,高山。 ■保護上の留意点 採取防止。山地渓谷の岩場およびその周辺 の植生保護。 ザリコミ ユキノシタ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Ribes maximowiczianum Komar. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の樹林内の陰湿な岩上や岩隙に生育する落葉小低木。高さ約1m。雌雄異株。下部から多分枝。葉 は互生,短枝では対生状,掌状,3∼5裂,葉面,葉柄に腺毛がある。花期は5月,黄緑色,長枝の先端と短枝に長さ1∼3cm の総状花序を形成。液果は卵円形,赤熟して下垂,径約5mm。 ■分布 本州東北南部から中国地方,四国。 (県内)氷ノ山。 ■保護上の留意点 ブナ帯域の岩場付近の自然林保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 31 ノウゴウイチゴ バラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Fragaria iinumae Makino 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 通常は亜高山∼高山の草地に生育する多年生草本。県内では大山の稜 線部の安定岩礫地に生育する。遺存植物。匍匐枝は長く地表を這う。葉は根出,3出 複葉,小葉は倒卵形,鈍頭,粗歯牙縁,伏毛があり,下面は粉白色。花は6∼7月,白 色,8花弁。果実は赤熟,美味。和名は岐阜県能郷の地名に由来。 ■分布 北海道,本州亜高山∼高山帯。 (県内)大山。分布西限。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。大山山頂部,稜線部の岩礫地保護。 カラフトダイコンソウ バラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Geum macrophyllum Willd. var. sachalinense (Koidz.) Hara 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 山地に生育する北方系の多年生草本。県内では若桜町の渓谷沿いに群生。遺存植物。高さ約50cm。全体に 開出剛毛が密生。根出葉は羽状複葉,側小葉は小形,1∼2対,頂小葉は大きな円形,浅欠刻と不揃いの歯牙縁,茎葉は3裂 単葉。花は6∼9月,黄色,長花柄。痩果の鈎刺に腺毛 がある。ダイコンソウとは剛毛の密生,痩果鈎刺の 腺毛で区別。 ■分布 北海道,本州中部以北。 (県内)若桜町。分布西限。 ■保護上の留意点 生育地渓谷の自然植生保護。 32 イワガサ バラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Spiraea blumei G.Don 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の日当たりのよい岩場に生育する落葉小低木。県内では三徳山地域の岩場にのみ分布。多分枝し叢生 する。葉は広卵形∼倒卵形,鈍頭∼円頭,基部は広くさび形,やや厚質,上面の葉脈は窪み,下面は隆起,粉白色,上半 部は不整歯牙∼欠刻縁。花は5月ごろ,白色,5弁,枝先に円形状に密集して咲く。和名は岩場に生え,集合花の形を傘に 見立てたもの。 ■分布 本州近畿以西,四国,九州。 (県内)三朝町。 ■保護上の留意点 採取防止。生育する岩場一帯の 植生保護。 コキンバイ バラ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Waldsteinia ternata (Steph.) Fritsch 環境省:− ■選定理由 採取圧,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の日当たりのよい林縁などやや乾性地に生育する多年生草本。遺存植物。地下茎は長く這う。茎 葉ともに軟毛が密生。根出葉は長柄があり,3出複葉, 頂小葉は大きく倒卵形,3浅裂,鈍鋸歯縁,側小葉はゆ がんだ卵形,2深裂。茎葉は小形3裂披針形。花は初 夏,黄色,径約2cm,葉から突出。漢名は小金梅。 ■分布 北海道,本州亜高山帯。 (県内)氷ノ山。分布西限。 ■保護上の留意点 採取防止。チシマザサの除去等の 保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 33 タヌキマメ マメ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Crotalaria sessiliflora L. 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい野原や土手などに生育する多年生草本。葉の上面を除き全草褐色の伏毛が密生。茎は直立, 単生,高さ20∼60cm。葉は互生,広線形∼披針形,長さ4∼10cm。花は7∼9月,青紫色,穂状に密生,蝶形花。萼は大形 で2深裂,上片は2再裂,下片は3再裂,豆果を包む。萼毛は花後さらに伸び,長さ約1cm。和名は褐色長毛が密生する萼を タヌキに見立てたもの。 ■分布 本州,四国,九州,沖縄。 (県内)三朝町,岸本町。 ■保護上の留意点 採取防止。草地の保全管理。 ヒナノカンザシ ヒメハギ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Salomonia oblongifolia DC. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい湿地に生育する繊細な一年生草 本。茎は細く直立,高さ6∼30cm。葉は互生,長楕円形,長さ 3∼12mm。花期は8∼9月,淡紫色,細長い穂状花序,花は微小, 長さ約2mm。和名は繊細で長く伸びた花序をかんざしに見立 てたもの。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)米子市,西伯町。 ■保護上の留意点 生育湿地の保全管理。 34 ヨコグラノキ クロウメモドキ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Berchemia berchemiaefolia (Makino) Nakai 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,希少性。 ■生態・形態 山地の渓谷や崖に孤立的に生育する落葉小高木。樹皮は細かい縦の割 れ目が顕著。枝は帯赤褐色,皮目が目立つ。葉は互生,長楕円形,鋭突頭,基部はく さび形,上面は光沢,下面は帯粉白色,全縁,長さ約10cm。花期は6月ごろ,淡黄緑 色,花は小形,枝先と葉腋に数個。果実は長楕円状,暗赤色。和名は発見地の高知県 横倉山に由来。 ■分布 本州(宮城県,新潟県以西),四国,九州。 (県内)江府町,日野町。 ■保護上の留意点 山地の渓谷周辺の自然林保 護。 サクラスミレ スミレ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Viola hirtipes S.Moore 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 やや乾燥ぎみの粗密な草原に生育する北方系の多年生草本。植物体全体に開出毛が密生。葉は狭卵形,波 状の鈍鋸歯縁,基部は心形。花は4∼6月,淡紅紫色∼紅紫色,日本産スミレ属中最大,花弁は倒卵形,凹∼円頭,長さ約 1.5∼2cm,距は円筒形,長さ約1cm。和名は花弁の凹頭形からサクラの花を連想したもの。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)氷ノ山。 ■保護上の留意点 山地草原の保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 35 ゴゼンタチバナ ミズキ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Crotalaria sessiliflora L. 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 亜寒帯針葉樹林内に生育する小形の多年生草本。県内では三国山の尾根平坦部の林床に小群生して残存。 遺存植物。根茎は匍匐,茎は直立,高さ5∼10cm。葉は茎頂に1対,葉腋に2対対生し6枚が輪生状,倒卵形,鋭先頭,全 縁,平行状脈が顕著。花は6∼7月,白色,十字形花を茎頂に1個,苞が花弁状となる。本来の花弁は多数,雄しべ状。果実 は赤熟。和名は発見地の白山御前峰に由来。 ■分布 本州中部以北,四国。 (県内)三国山。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。チシマザサの 進入により絶滅寸前。緊急にチシマザサの除去によ る保全管理が必要。 コケモモ ツツジ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Vaccinium vitis-idaea L. 環境省:− ■選定理由 採取圧,局限・孤立,遺存性,希少性。 ■生態・形態 寒地・高山帯に生育する微小な常緑低木。県内では氷ノ山と大山地域の岩場に残存。遺存植物。茎は匍匐, 上部で分枝し直立,高さ5∼15cm。葉は互生,楕円形,厚硬質,円頭,縁辺は外曲,ツゲに似る。花は初夏,帯紅白色, 鐘形,枝先に総状花序,数個,花冠は4裂。液果は紅色球形。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)氷ノ山,大山。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。生育地の自然植生 保護。 36 サクラソウ サクラソウ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Primula sieboldii E.Morren 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 湿潤な草地に生育する小形の多年生草本。春植物。根茎は短く匍匐。県内では沢沿いの落葉樹林内に残存。 葉は根出,卵状広楕円形,長さ4∼10cm,浅欠刻状重鋸歯縁,基部は浅心形,葉脈凹入顕著。花は4∼5月,淡紅色,散形 花序,花柄は長く突出。花冠は基部が細長筒状で花弁は5分裂,径2∼3cm。和名は花をサクラに見立てたもの。花粉の媒 介には特定の昆虫の飛来が必要。 ■分布 北海道,本州,九州。 (県内)江府町,日南町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。緊急に樹木の間伐等 の保全管理が必要。 スズサイコ ガガイモ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cynanchum paniculatum (Bunge) Kitagawa 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい草原に生育する多年生草本。高さ約60cm,葉は細く一見イネ科状。葉は対生,線形∼披針 形,長さ5∼10cm,節間は長くまばらにつく。花は夏期,淡黄緑色,花冠は細く5裂,星状形。袋果は細長く下垂し特徴的, 長さ5∼8cm。和名はつぼみの丸い形態を鈴に見立てたもの。草原の放置により減少顕著。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)岩美町,郡家町,智頭町,三朝町,溝口町。 ■保護上の留意点 草原の維持管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 37 アオイゴケ ヒルガオ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Dichondra repens Forst. 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,希少性。 ■生態・形態 歩道や公園など多少人が立ち入る場所に群生する暖帯性の小形の多年生草本。細長い茎を長く伸ばし, マット状に群生。葉は腎円形∼円心形,長さ5∼10mm,基部は深心形,下面と葉柄には長白毛が密生,葉柄は茎の節から 伸び長さ2∼8cm。花は4∼8月,淡黄色,小形,径約3mm。和名は葉の形がフタバアオイに類似しコケのように小さいこと を意味している。 ■分布 本州西南部,四国,九州,沖縄。 (県内)鳥取市。分布北限。 ■保護上の留意点 生育地の保全管理。雑草除去時 に要注意。 ミカエリソウ シソ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Leucosceptrum stellipilum (Miq.) Kitam. et Murata 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の谷沿いのやや陰湿な林内に群生する大形の多年生草本,半低木。高さ40cm∼100cm。葉は対生, 楕円形,鋭尖頭,基部は円形,鈍鋸歯縁,下面に星状毛が密生。花は9∼10月,淡紅色,唇形,穂状花序に多数,雌雄蕊は 濃紅紫色,花外に突出,苞は扁円形,鱗状に花序を覆う。和名は花が見返りたくなるほど美しいとの意味。テンニンソウ は葉下面無毛,基部はくさび形,花は淡黄色。 ■分布 本州福井県以西。 (県内)若桜町,智頭町,船岡町。 ■保護上の留意点 ブナ帯域谷沿いの自然林の保護。 38 マルバノサワトウガラシ ゴマノハグサ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Deinostema adenocaulon (Maxim.) Yamaz. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,希少性。 ■生態・形態 水田や湿潤地などに生育する微小な一年草。稲刈り跡地で観察可能。高さ2∼5cm。葉は対生,卵円形,全 縁,長さ約5mm,無柄,数本の脈がある。花期は8∼10月,淡紫色,唇形花,有柄(1∼2cm)の正常花とほとんど無柄の 閉鎖花があり,萼は線状披針形,花冠は萼より長い。中部と西部地域の分布地は不明,調査が必要。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)若桜町,佐治村,国府町,気高町。 ■保護上の留意点 水田および水田跡地の維持,保 全管理。 スズメハコベ ゴマノハグサ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Microcarpaea minima (Koenig) Merr. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,希少性。 ■生態・形態 水田や水湿地に生育する匍匐性の小さな一年生草本。湿潤な稲刈り跡地などで観察可能。多分枝して匍匐, 小班状。葉は対生,広線形,長さ数mm。花は7∼10月,白色∼淡紅色,筒状唇形,長さ2mm,葉腋ごとに単生,無柄,萼 は筒形,5裂して毛状縁,花冠より目立つ。類似のミゾハコベはやや葉の幅が広く,花とくに萼の形態が異なる。中・西部 地域の分布地は不明,調査が必要。 ■分布 本州関東以西,四国,九州。 (県内)鳥取市,気高町。 ■保護上の留意点 水田および水田跡地の維持,保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 39 オオバミゾホオズキ ゴマノハグサ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Mimulus sessilifolius Maxim. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 山地渓流沿いの常時水が滴る岩壁などに地下茎を伸ばして小群生する多年生草本。茎は分枝せず直立,高 さ10数cm。遺存植物。葉は対生,無柄,広卵形で長さ3∼4cm,平行状脈が顕著,鋭突鋸歯縁。花は6∼7月,黄色,上部の 葉腋に単生,萼は大形。ミゾホオズキに類似するが,無分枝,無葉柄,葉形の違いで容易に見分けられる。 ■分布 北海道,本州中部以北,日本海側。 (県内)扇ノ山,若桜町,河原町。分布西限。 ■保護上の留意点 採取防止。山地渓谷の自然林の保護。 シシンラン イワタバコ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Lysionotus pauciflorus Maxim. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,希少性。 ■生態・形態 山地渓谷沿いの落葉樹老木に着生する微小な常緑性木本植物。茎は樹上を這い,枝の高さ5∼20cm。葉は2 ∼4個が輪生,上部では節間短く密輪生状,厚質,広披針形,鈍頭,基部は鋭形,まばらな鋸歯縁。花は6∼7月,淡紅色, 枝の上部葉腋ごとに単生し数個。花冠はラッパ状唇形,5裂,花筒は帯紅白色,横向きに咲く。 ■分布 本州静岡県以西,四国,九州,沖縄。 (県内)三朝町。 ■保護上の留意点 厳重な採取禁止。山地渓谷の自然林の 保護。 40 イワギリソウ イワタバコ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Ophithandra primuloides (Miq.) B.L.Burtt 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 減少顕著,採取圧,希少性。 ■生態・形態 山地の湿潤な崖壁に生育する小形の多年生草本。北面壁に多く直射日光を避ける傾向が見られる。葉は根 出,卵円形∼卵状楕円形,やや肉厚,円頭,基部はやや心形,全体に軟毛が密生。花は5∼6月,紅紫色,唇形,長さ約2cm, 花茎は葉腋から伸び,長さ10∼20cm,散形状に数個。 和名は葉がキリの葉を小さくした形態であることに由 来。 ■分布 本州近畿以西,四国,九州。 (県内)河原町,佐治村,青谷町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。山地の岩場一帯 の自然植生保護。 キヨスミウツボ ハマウツボ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Phacellanthus tubiflorus Sieb. et Zucc. 環境省:− ■選定理由 希少性。 ■生態・形態 山地の林床に生育する寄生草本植物。茎は高さ5∼10cm,肉質,黄白色。鱗片葉は互生,卵形,鈍頭∼円頭, 縁辺膜質,多数が密着。花期は5∼7月,白色,唇形,長さ1∼2cm,茎頂に5∼10個穂状につく。和名は発見地の千葉県清 澄山にちなみ,花がウツボグサに似ていることによる。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)大山。 ■保護上の留意点 大山の自然林の保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 41 フクシマシャジン キキョウ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Adenophora divaricata Fr. et Sav. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の草地や林縁に生育する多年生草本。高 さ60∼100cm,開出白毛が多い。葉は3∼5個輪生,上葉は対 生∼互生,卵状楕円形,無柄,長さ5∼10cm,鋭頭,鋸歯縁。 花は夏,白紫色,鐘形,長さ15∼20mm,まばらな円錐花序, 下向き。ツリガネニンジンに似るが花冠はやや開き,萼は 広披針形,花の色,葉柄の有無などで区別できる。 ■分布 本州。 (県内)日南町。 ■保護上の留意点 採取防止。山地草地の保全管理および 周辺森林の保護。 シデシャジン キキョウ 科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Phyreuma japonicum Miq. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の明るい林縁など草地に生育する多年生草本。高 さ50∼100cm,全体に粗毛を散生。葉は互生,卵形∼狭卵形,不揃い鋸 歯縁。花は7月∼9月,青紫色,総状花序に多数,花冠は5深裂,裂片 は線形,反曲,長さ約1cm,花柱は突出。和名のシデは神前の紙の垂 れ飾り(四手)に見立てたもの,シャジンはツリガネニンジン類を意 味する。 ■分布 本州,九州。 (県内)日南町。 ■保護上の留意点 林縁沿いの草地の適正な保全管理。 42 ウラギク キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Aster tripolium L. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 海岸の湿地に生育する越年生草本。茎は直立,高さ約50cm。葉は互生,被針形,無毛,肉質,全縁,長さ5 ∼10cm,やや茎を抱く。花は8∼11月,青紫色,頭状花,総苞は筒状,散房状に多数,径約2cm。痩果は狭長楕円形,冠毛 は花時では約5mm,花後伸長し約15mmになる。和名のウラは浦の意味で 海岸生であることを意味する。別名:ハマシオン。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。主として太平洋岸。 (県内)中海沿岸。 ■保護上の留意点 海岸沿い湿地の保全管理。自然植生保護。 テリハアザミ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cirsium lucens Kitam. 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 川岸の湿潤地に生育する大形の多年生草本。茎は蜘蛛毛があり,高さ1∼1.5m。根出葉は大形楕円形,長さ 約50cm,羽状中裂,裂片は4∼7対,粗歯牙縁,太い刺針,やや薄質,上面光沢,基部は有翼で柄に沿下,花期に生存。上 葉は小形,やや茎を抱く。頭状花は9∼10月,淡紅色,単生。和名は光沢のある葉の状態を示す。 ■分布 本州中国地方,四国,九州。 (県内)若桜町。 ■保護上の留意点 河川の自然な水辺環境の保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 43 サンベサワアザミ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cirsium tenuisquamatum Kitam. 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 河川周辺部の湿潤地に生育する大形の多年生 草本。農業用水路や農道わきに10数個体が残存。茎は蜘蛛 毛があり高さ50∼100cm。根出葉は大形,狭楕円形,帯粉白 色,やや薄質,長さ25∼50cm,羽状中裂,裂片は約5対,粗 鋸歯縁,刺針は少なく,花時に生存,茎葉はやや茎を抱く。 花は10∼11月,淡紅紫色,茎頂に単生,偏球形,蜘蛛毛。和 名は発見地の島根県三瓶山に由来。 ■分布 本州島根県,広島県。 (県内)江府町。 ■保護上の留意点 湿地環境の保全管理。 イワギク キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Dendranthema zawadskii (Herbich) Tzvelev. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,採取圧,局限・孤立,遺存性,希少性。 ■生態・形態 山地の明るい岩棚や岩隙などに生育する小形の多年生草本。県内では船上山にのみ分布。遺存植物。根茎 は匍匐,木化。根出葉と下部葉は長柄があり,広卵形,2 ∼3回羽状全裂∼深裂,上面はほとんど無毛,下面に腺点 がある。長さ1∼4cm。花は7∼10月,白色,頭状花,茎頂 に単生,径3∼6cm。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)船上山。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。船上山一帯の岩崖 周辺の自然植生の保護。 44 ヒゴタイ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Echinops setifer Iljin 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,遺存性, 希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい草地に生育する大形の多年 生草本。県内では浦富海岸の海食崖上草地および遊歩道 沿いに生育。朝鮮半島と陸続き時代の遺存植物。高さ60 ∼80cm,全体に白毛が多い。葉は大形,アザミ状羽状深 裂,下面は白綿毛が密生,葉縁に鋭い刺がある。花は8∼ 10月,青紫色,球形,頭状花は筒状花のみ,径3∼5cm。 ■分布 本州岐阜,愛知県以西,九州。 (県内)岩美町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。生育地海食崖の保 全管理。遊歩道沿いの個体群に対しては厳重な保護およ び樹木の間伐等の保全管理が必要。 フジバカマ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Eupatorium japonicum Thunb. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,希少性。 ■生態・形態 河川敷の草地に生育する多年生草本。地下茎は横走。茎は多く集まって直立し高さ1∼1.5m,下部は無毛。 葉は通常3深裂,鋭頭,やや硬質,上面はやや光沢,腺点はない,長さ8∼13cm,無柄。花は8∼9月,淡紅紫色,散房花序 に密,頭状花は5個の筒状花のみ,総苞は長さ7∼8mm。類似のサワヒヨドリは湿原に生育し,葉に腺点があり,鈍頭で凸 端である。 ■分布 本州関東以西,四国,九州。 (県内)河原町。 ■保護上の留意点 河川敷の自然草地の保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 45 メタカラコウ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Ligularia stenocephala (Maxim.) Matsum.et Koidz. 環境省:− ■選定理由 採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 深山の渓谷沿いの湿潤な露岩地や急傾斜地な どに生育する多年生草本。根茎は太く,高さ30∼70cm。根 出葉は三角状心形,鋭突頭,基部の耳状片は鋭尖,粗歯牙 縁。花は6∼9月,黄色,総状に頭状花を多数。近縁のオタカ ラコウは全体壮大,葉は腎心形,先端部と耳状部は鋭突しな い。和名のタカラコウは竜脳香を意味し,オタカラコウに 比して小形であることによる。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)若桜町,三朝町。 ■保護上の留意点 採取防止。渓谷沿い自然植生の保護。 フクオウソウ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Prenanthes acerifolia (Maxim.) Matsum. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の谷壁沿いに生育する多年生草本。地下 茎は匍匐し,高さ30∼80cm,全体に開出腺毛が多い。根出葉は互 生,広卵形,掌状羽裂,欠刻は3∼7個,基部は心形,葉柄には翼 があり,基部は茎を抱く。葉の下面,花序,総苞ともに腺質の長 毛。花は8∼9月,青白色,頭状花,径約1.5cm,約10個の舌状花が 下向きに咲く。和名は三重県福王山にちなむ。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)氷ノ山。 ■保護上の留意点 山地渓谷の自然林の保護。 46 オオダイトウヒレン キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Saussurea nipponica Miq. 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,遺存性,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の落葉樹林内に生育する多年生草本。 高さ50∼100cm。遺存植物。根出葉は花時残存,広卵形,鋭突 頭,低歯牙縁,基部は心形,上面に粉状細毛,長柄がある。花 は8∼10月,帯紅紫色,頭状花,筒状,長さ約1.5cm,総包片は 反曲,褐軟毛が密生,散形状に多数,長花柄。和名は発見地の 大台にちなんでいる。 ■分布 本州近畿,四国,九州。 (県内)氷ノ山。 ■保護上の留意点 採取防止。氷ノ山一帯の自然林の植生保 護。 ヒメヒゴタイ キク科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Saussurea pulchella Fisch.ex DC. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい草原に生育する大形の越年生 草本。高さ約120cmに達する。葉は互生,広被針形,羽状深裂 ∼全縁(小形の個体では全縁葉が多い) ,長さ約15cm,上部葉 は全縁,両面に細毛がある。花は8∼10月,紅紫色,散房状に 多数の頭状花,総苞は広鐘形,幅約1cm,総苞片の先端に紅紫 色の付属体がある。類似種のミヤコアザミは葉の側裂片に鋸 歯が多く,頭状花は小,総苞は筒状,総苞片の先端に付属体が ない。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)船上山。 ■保護上の留意点 船上山一帯の高茎草原の維持,保全管理。 レッドデータブックとっとり (植物) 47 ミズオオバコ トチカガミ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Ottelia japonica Miq. 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 水田周辺や池沼などの水中に生育する一年生水生草本。葉は根出,披針形∼広卵形,基部はくさび形∼心 形,縁辺は波状,平行状脈が顕著,長さ10∼25cm。葉身長は水 深に応じて変化する。花は8∼10月,白色∼淡紅色,3弁花,水面 上で開花,花弁は円形,長さ約2cm。花茎は長く伸長し,苞鞘は 紡錘状,長さ約2cm,ちじれた縦条が顕著。和名は葉がオオバコ に似ることによる。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)岩美町,会見町。 ■保護上の留意点 水田沿いの溝,ため池など生育湿地環境の 保全管理。 ツツイトモ ヒルムシロ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Potamogeton panormitanus Biv. 環境省:絶滅危惧ⅠA類 (CR) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,希少性。 ■生態・形態 汽水域に多いが,湖沼,河川などにも生育する繊細な沈水植物。葉は線形,長さ2∼5cm,葉脈は明瞭,托 葉は筒状,柔らかく形状が崩れやすい。花穂は上下2段に分かれてつく,花茎の長さは1.5∼2cm。ただし,県内産のツツイ トモでは開花が未確認。和名は托葉の筒状形態に由来。イトモとは托葉で区別するが,形が残っている開葉前に確認する ことが必要。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)米子水鳥公園。 ■保護上の留意点 汽水域の自然な水辺の保全と再 生。水質汚濁の防止。 48 リュウノヒゲモ ヒルムシロ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Potamogeton pectinatus L. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 海岸付近の汽水域に多いが,湖沼や河川にも生育する多年生沈水植物。 水中茎は上部で多分枝する。葉は針状,長さ10∼15cm,基部は托葉と合着,葉鞘とな り茎を抱く,全縁。花は5月∼9月,花穂は伸びて水面に横たわる。種子は花穂に10∼ 20個。7月頃より塊茎が地下茎の先端に形成され,水鳥の餌となり繁殖手段となる。 塊茎は類似の沈水植物からの識別に有効。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)米子水鳥公園。 ■保護上の留意点 海岸付近の河川や湖沼の自然な水辺の保全と再生。水質汚濁の防 止。 カワツルモ ヒルムシロ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Ruppia rostellata Koch 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 汽水域の止水環境を生育地とする多年生沈水植物。塩分濃度適応範囲は広く海岸近くの海痕湖や水溜りに 多いが,干拓承水路にも見られる。植物体は繊細。葉は互生,花序のつく節では対生,針状,長さ5∼10cm,幅1mm以下, 葉先端部に鋸歯がある。花期は長く5∼10月,散形花序,花柄は長く花は小さい。種子は突起のある黒色卵球形,1花穂に 4∼10個。リュウノヒゲモに類似するが葉先端部に鋸歯があることで 区別。ネジリカワツルモは花茎がコイル状となる。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)青谷町,米子水鳥公園。 ■保護上の留意点 汽水域の自然な水辺の保全と再生。水質汚濁の 防止。 レッドデータブックとっとり (植物) 49 イトクズモ ヒルムシロ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Zannichellia palustris L. var. indica (Cham. ex Morong) Graebn. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 汽水性の繊細な沈水植物。海岸沿いの湖沼や干拓地の入り江などに生育する。地下茎から水中茎が伸びる。 葉は対生∼輪生,線形,長さ3∼7cm,鋸歯はない。花は単性花,雄花と雌花は同一の葉腋 に並んでつく。果実は両端に突起のある三日月状,背面に歯牙,長さ約5mm,ほとんど無 柄。果実はきわめて特徴的。 ■分布 北海道,本州東北∼関東地方,中国地方,沖縄。 (県内)米子水鳥公園。 ■保護上の留意点 汽水域の自然な水辺の保全と再生。水質汚濁の防止。 ヒメイバラモ イバラモ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Najas tenuicaulis Miki 環境省:絶滅危惧ⅠA類 (CR) ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 湖沼などに生育する繊細な一年生沈水植物。茎は分枝し,ときにわずかの刺をつける。葉はきわめて少数 で2∼4個,長さ約2cm,幅1mm,粗歯牙がある,鞘は半円形,全縁。花期は7∼10月,柱頭は3個。果実は楕円形,長さ4∼ 5mm。イバラモに類似するが,葉が細く,歯牙が少数,茎の皮下細胞が1層(イバラモは2層)であることで区別。 ■分布 鳥取県東部の一部のみ(過去には本州に点在分布していたが,現在不明) 。 県内の分布および分布図は省略。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。池の清掃や水草採取の際,ヒメイバラモも除去される可能性大のため,専門家の立 ち会いが必要。水質の保全。 50 ギョウジャニンニク ユリ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Allium victorialis L. var. platyphyllum (Hulten) Makino 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 深山の林内に生育する夏緑性多年生草 本。県内では渓谷沿いの岩角地の土壌堆積地に生育す る。遺存植物。鱗茎は細長く,古い葉鞘がシュロ状に なって残る。ネギ臭が強い。葉は茎の下部に2∼3枚, 長楕円形,大形,長さ20∼30cm,幅3∼10cm,鈍頭, 基部はくさび形,葉鞘は長く茎を抱く。花は6∼7月, 白色,茎頂に1個の散形花序,花は多数,花茎の長さは 40∼70cm。和名は行者が食用にしていたことに由来。 ■分布 北海道,本州近畿以北。 (県内)若桜町。分布西限 ■保護上の留意点 山地渓谷の自然林の植生保護。 ツバメオモト ユリ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Clintonia udensis Trautv.et Mey 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 通常は亜高山帯針葉樹林内に生育する多年生草本。県内では氷ノ山にのみ分布。遺存植物。葉は根出葉の み,倒卵状長楕円形,やや肉厚,長さ15∼30cm,鈍頭∼急鋭頭,中肋の凹入が顕著。花は5∼6月,白色,短総状花序に数 個,花被は長さ約1cm,花茎は20∼30cm。果実は濃藍色,球形,径約1cm。花茎は花後2倍長に伸長。和名は果実の色をツ バメの頭の色に見立てたもの。 ■分布 北海道,本州近畿以北。 (県内)氷ノ山。分布西限。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。氷ノ山一帯の 自然林の保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 51 タケシマラン ユリ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Streptopus streptopoides (Ledeb.) Frye et Rigg var. japonicus (Maxim.) Fassett 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,分布限界,遺存性,希少性。 ■生態・形態 通常亜高山帯に生育する多年生草本。県内で は扇ノ山にのみ分布。遺存植物。地下茎は横走。茎は高さ 20∼60cm,中上部で1∼2分枝する。葉は互生して羽状複葉 状,長卵形,鋭突頭,基部は円形∼くさび形,無柄,長さ5 ∼10cm。花は6月頃,淡紅褐色,葉腋に1花,花被は披針形で 反曲,細長い花柄があり下垂する。液果は赤熟,球形。ナル コユリ類に葉形は類似するが,花が異なる。 ■分布 本州中北部,四国剣山。 (県内)扇ノ山。分布西限。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。扇ノ山一帯の自然林 等の植生保護。 ハナゼキショウ ユリ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Tofieldia nuda Maxim. 環境省:− ■選定理由 減少顕著,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の湿潤な岩場に生育する小形の常緑多年生草本。葉は根出,線形,やや湾曲して左右に扁平,長鋭突 頭,全縁,長さ5∼20cm。花は7∼8月,白色,総状に多数,花茎は長く突出,小形葉を2枚つける。類似のヒメイワショウ ブは葉縁に微細突起がある。 ■分布 本州関東以西,九州。 (県内)用瀬町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。山地の湿潤な岩場およびその周 辺一帯の自然植生の保護。 52 タマガワホトトギス ユリ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Tricyrtis latifolia Maxim. 環境省:− ■選定理由 採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の渓谷沿いの湿潤な岩隙や急斜面に生育する多年生草本。 茎は斜上,高さ30∼100cm。葉は互生して羽状に配列,卵形∼広楕円形,急鋭突頭, 基部は深心形,茎を抱く,長さ5∼10cm。花は7∼9月,黄色,紫褐色の細斑点があ る,散房花序,葉腋につく。和名は花の色からヤマブキを連想し,ヤマブキの名所 京都の玉川にちなむ。ヤマジノホトトギスに類似するが,花序,花の色,葉形など で区別は容易。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)氷ノ山。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。氷ノ山一帯の 渓谷沿いの自然植生の保護。 ヒメナベワリ ビャクブ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Croomia japonica Miq. 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の林床に生育する暖帯性の多年生草本。茎は上部で斜上,高さ30∼60cm。葉は互生し羽状配列,長楕 円状心形,5∼9個,やや光沢,平行脈が顕著。花は4∼5月,黄緑色,葉腋に各1∼2個,長花柄があり下垂,花被片は長楕 円形,4個同大,反曲。類似のナベワリは花被片が大きく広卵形,かつ1個が超大,反曲しない。 ■分布 本州中国地方,四国,九州,奄美諸島。 (県内)日南町。 ■保護上の留意点 採取防止。生育地周辺自然植 生の保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 53 ナンゴクウラシマソウ サトイモ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Arisaema thunbergii Blume 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 低山地の森林内に生育する暖帯性の多年生草本。地下茎は扁球形,子球をつける。葉は鳥足状複葉,1個, 小葉は10数枚。花期は4∼5月,仏炎苞は長さ10∼15cm,筒部は白色で紫褐色斑があり,上にかぶさる舷部は暗紫褐色,肉 穂花序の付属体はつり糸状に長く伸び,その基部は淡黄白色でしわがある。亜種のウラシマソウの付属体は暗紫褐色で平 滑。 ■分布 本州兵庫県以西,四国,九州。 (県内)淀江町。 ■保護上の留意点 採取防止。生育山地の森林保護。 ヒメザゼンソウ サトイモ科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Symplocarpus nipponicus Makino 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地の湿原に群生する多年生草本。葉は早春に根出,大形 卵状長楕円形,鈍頭,基部は円形∼やや心形,肉厚,全縁,長さ20∼40cm, 長柄がある。花は6月頃,暗赤褐色,仏炎苞花,小形,肉穂花序は黄色。果 実は翌年に熟す。近縁のザゼンソウとは葉の形態,花の時期や大きさな どの差異で区別は容易。 ■分布 北海道,本州の日本海側。 (県内)関金町,日南町。 ■保護上の留意点 山地湿原の保護管理。 54 ヒナラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Amitostigma gracile (Blume) Schltr. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 減少顕著,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 樹林下のやや乾いた崖壁の岩棚などに生育する小形のラン科草本。斜傾する茎は細く,高さ約10cm。葉は 茎の基部に1個,狭長楕円形,長さ約5cm,幅1∼2cm,ときに中部に小形葉がつく。花は7月ごろ,淡紅紫色,総状に数 個,小形,長さ約1cm。 ■分布 本州関東以西,四国,九州。 (県内)佐治村。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。山地の岩場およびその 周辺一帯の自然植生の維持。 ムギラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Bulbophyllum inconspicuum Maxim. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 内陸部のやや明るい照葉樹林内の老木や岩場(主に花崗岩)に着生する小形の多年生ラン科草本。茎は横走 し,卵形の偽球をつける。葉は偽球の先に1枚,長楕円形,円頭∼凹頭,肉厚,光沢,中肋は凹入,長さ1∼3cm。花は6∼ 7月,帯黄白色,偽球に側生,数個。和名は偽球の形がムギの種子に似ていることによる。 ■分布 本州関東以西,四国,九州。 (県内)用瀬町,三朝町,会見町。 ■保護上の留意点 採取防止。照葉樹林の保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 55 キエビネ ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Calanthe sieboldii Decne. 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 採取圧,局限・孤立,分布限界,希少性。 ■生態・形態 暖帯域山地の樹林内に生育する常緑性の多年 生ラン科草本。県内では主要分布地域から隔離的に東部地 域の人工林内で数個体を確認。植物体はエビネに比べ全体 に大形。花は円錐状に約20個,萼,花弁とも鮮黄色,唇弁中 央部付近と隆起線は赤紫色,華麗。エビネに類似するが植 物体が大きく,花は黄色である。 ■分布 本州島根県以西,紀伊半島,四国,九州。 (県内)船岡町。日本海側東限。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。種子は微小で,発芽 にはラン菌の存在が必要。乱獲が絶滅をまねく(ラン科植物 に共通)。生育地植生の保全管理。 ユウシュンラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume var. subaphylla Ohwi 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 落葉樹林下の腐植土層の厚い陰湿地に生育する 多年生ラン科草本。ギンランの変種であるが,葉は鞘状に退化 して緑葉がほとんどなく菌根依存性が高い。茎は高さ10∼ 15cm,根茎も地下10数cmに位置する。葉は上部の1∼2枚が緑 色を帯び膜質,長さ約3cm。花は5∼6月,白色,半開状,茎頂 に数個,萼片は披針形で長さ1cm,側萼片は少し長くゆがみが ある。和名は分類学者の工藤祐舜にちなむ。 ■分布 北海道,本州,九州。 (県内)西伯町。 ■保護上の留意点 採取防止。生育地の森林環境の保護。 56 ササバギンラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cephalanthera longibracteata Blume 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 山地のやや乾いた,明るい林内や林縁沿いに生育する多年生ラン科草本。茎は単一,高さ30∼50cm。葉は 狭楕円形∼披針形,葉脈が顕著,鋭突頭,基部は細まり茎を抱く,長さ5∼15cm,下面には短毛状突起がある。花は5∼6月, 白色,花被は半開,苞は線形,花序より長い。ギンランに類 似するが,葉が大,細長い,苞が長い,葉下面や花序などに 毛状突起があることで区別できる。和名はギンランに似て 細長い葉を笹の葉に見立てたもの。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)日南町。 ■保護上の留意点 採取防止。生育地の森林環境の保護。 トケンラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cremastra unguiculata (Finet) Finet 環境省:絶滅危惧ⅠB類 (EN) ■選定理由 生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の林床に生育する常緑ラン科草 本。地下茎は細く,卵円形の偽球茎がつながる。葉は根 出,長楕円形,2個,長さ10∼15cm,鋭頭,短葉柄,しば しば紫斑点がある。花は5∼6月,白色,暗紫色斑点,唇弁 は3裂,外曲,萼と側花弁は黄褐色,花は数個,花茎は高 さ30∼40cm。和名は花の斑点を鳥のホトトギスの羽に見 立てたもの。 ■分布 北海道,本州,四国。 (県内)大山。 ■保護上の留意点 採取防止。ブナ帯域の自然林の保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 57 クマガイソウ ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Cypripedium japonicum Thunb. 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域のやや明るい樹林内に群生する大形の多年生ラン科草本。 地下茎は横走,茎には粗毛,高さ20∼ 40cm。葉は2個,大形の扇形,茎頂に対生,長さ約20cm,放射状の葉脈が顕著なひだとなり,下面は微白毛が密生,波状 歯縁。花は6∼7月,1個,淡白黄緑色,紅紫色脈,大形の袋状唇弁が特徴的,横向きにぶら下がるように咲く。和名は袋状 唇弁の形態を熊谷直実がまとった母衣(ほろ)に見立てたもの。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)若桜町,智頭町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。やや明るい 林内環境の保全 が必要。他のラン類と同様,ラン 科植物は実生での繁殖は自然の中でもきわめて困 難,多量の個体群を残す必要がある。 イチヨウラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Dactylostalix ringens Reichb. fil. 環境省:− ■選定理由 採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 県東部の陰湿なスギ林内に孤立的に生育する数個体を数地点で確認。葉は根出,1個,広卵形,長さ約5cm, やや堅い肉質。花期は5∼6月,茎頂に1個,白色,褐色斑点,萼片と側花弁は細長く黄緑色,花茎は直立,高さ約15cm。和 名は葉が1枚であることによる。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)智頭町,河原町,佐治村。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。生育地の森林の保護。 58 セッコク ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Dendrobium moniliforme (L.) Sw. 環境省:− ■選定理由 減少顕著,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 乾いた明るい崖壁の岩棚や岩隙に生育する常緑性のラン科草本。茎は膨らみのある円柱形,斜上,叢生す る。葉は互生,披針形,節ごとに数個つく。花は5∼6月,白色∼淡紅色,旧年生の茎の上部に数個つける。芳香がある。漢 名は石斛,岩場に生育することを意味している。 ■分布 本州岩手県以南,四国,九州,沖縄。 (県内)佐治村,三朝町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。岩崖地およびその周辺の植生保護。 ツリシュスラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Goodyera pendula Maxim. 環境省:− ■選定理由 生育環境悪化,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯域の渓谷沿いの樹木または岩場に着生する小形のラン科草本。県内ではトチノキに着生を確認。茎 の基部は短く匍匐し上部は下垂,長さは10cm以下。葉は互生,広披針形∼狭卵形,鋭頭,葉柄はやや広く,鞘状に茎を抱 く,長さ2∼3cm。花は夏期,帯褐白色,半開状,茎頂に穂状花序,Uターンして上に向く,花は一方向に向き多数。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)佐治村。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。渓谷沿い自然林の保 護。 レッドデータブックとっとり (植物) 59 ノビネチドリ ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Gymnadenia camtschatica (Cham.) Miyabe et Kudo 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 ブナ帯∼亜高山帯域に生育する多年生ラン科草本。県内では大山の稜線部付近の草原内や低木林縁などに 希産。根は肥厚して紡錘形。茎は直立,やや太く,約30cm。葉は楕円形∼長楕円形,やや肉厚で幅広く,長さ5∼15cm, 縁辺は縮れたように波打つ。花は5∼6月,淡紅色,穂状に多数, 距は短く湾曲,苞は花より長い。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)大山。 ■保護上の留意点 採取防止。山頂,稜線付近の自然植生の保 護。 サギソウ ラン科 Habenaria radiata (Thunb.) Spreng. 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,希少性。 ■生態・形態 山地の日当たりのよい湿原に生育する多年生ラン科植物。減少著しく数株が残存。地下に走出枝を伸ばし て球茎をつくる。茎は直立,15∼40cm。葉は互生,広線形∼狭披針形,茎基部に数枚。花は7∼8月,純白,茎の先端に数 個,花冠は花弁が3個,上部の2個は小さく,直立,かぶと状,下部の唇弁は扇状に開いて3裂,細深裂,中裂片は線状,距 は細長く下垂。和名は優雅な花を白鷺の飛翔する姿 に見立てたもの。 ■分布 本州岩手県以南,四国,九州。 (県内)岩美町,米子市。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。山地湿地の適 正な保全管理。 60 ヨウラクラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Oberonia japonica (Maxim.) Makino 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,希少性。 ■生態・形態 渓谷沿いの樹木の幹や枝に下垂して着生する小形の常緑ラン科草本。渓谷に沿うやや明るい尾根状岩角地 の樹木に多く着生する傾向がある。細い気根を基部から伸ばし,数個の茎を叢生,長さ2∼5cm。葉は互生,線状長楕円形, 明緑色,肉厚,鎌状に外曲,左右に扁平に10枚程度つく。花は4∼6月,緑黄色,微小,約1mm,茎頂に長い穂状花序が伸 び多数つく。和名は長く下垂する穂状花序を仏教上の垂れ飾り「瓔落(よう らく)」に見立てたもの。 ■分布 本州関東以西,四国,九州。 (県内)鳥取市,佐治村,三朝町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。渓谷沿いの自然林の保護。周辺の植生 保護。 ウチョウラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Orchis graminifolia (Reichb.fil.) Tang et Wang 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 (VU) ■選定理由 減少顕著,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 明るい崖の岩隙に希に生育する多年生草本。県内の生育地ではイワヒバが近くに生育している。茎は斜上, 高さ7∼20cm。葉は広線形,数枚,基部はやや円形,鞘となる。花は6∼8月,紅紫色,総状に5∼10個の花が1方向に向く。 唇弁は深く3裂,約1cm,距はやや長く彎曲し先端は前方に向く。和名は花を蝶に見立てたもので,漢名は羽蝶蘭。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)若桜町。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。岩崖地および その周辺の自然植生保護。 レッドデータブックとっとり (植物) 61 ヤマトキソウ ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Pogonia minor (Makino) Makino 環境省:− ■選定理由 局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 日当たりのよい草地に生育する多年生ラン科草本。高さ10∼25cm,葉は1枚,倒披針形∼狭長楕円形,長さ 3∼7cm。花は6∼7月,淡紅紫色を帯びる白色,平開しない。萼は狭倒披針形,唇弁は長楕円形,3裂,側裂片は小形。類 似のトキソウは湿原に生育し,花は平開する。 ■分布 北海道,本州,四国,九州。 (県内)日南町。 ■保護上の留意点 採取防止。山地草原の保全管理。 カヤラン ラン科 鳥取県:絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) Sarcochilus japonicus (Reichb.fil.) Miq. 環境省:− ■選定理由 減少顕著,生育環境悪化,採取圧,局限・孤立,希少性。 ■生態・形態 低山域の樹木に着生する小形の常緑ラン科草本。県内では渓流沿いの岩尾根を立地とし樹木の枝に下垂し て着生,明るく乾燥しているが空中湿度には恵まれている。茎は長さ約5cm,気根は多数。葉は互生,水平状に開平,10 ∼20個,やや密,汚暗緑色,披針形,硬質,長さ約3cm。花は5月,淡黄色,小形,花柄は長く葉腋から出る。果実は円柱 状,長さ約5cm。和名は葉の状態がカヤの葉に似ることによる。 ■分布 本州,四国,九州。 (県内)鳥取市,佐治村。 ■保護上の留意点 厳重な採取防止。谷沿いの自然林の保 護。