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7-1-3 爬虫類 <概 況> 県内に分布する爬虫類は
7-1-3 <概 爬虫類 況> 県内に分布する爬虫類は、2目8科18種(亜種を含む、以下同じ)である。これは、日本に分布する 爬虫類の種数(2目14科97種)の18.6%に相当する。県産種については、海産であるウミガメ科の2 種を除き、すべて陸産または淡水産の種によって占められている。 爬虫類の生息状況については、アカウミガメを除き詳細な調査は行われておらず、今後の調査の充 実が必要である。また、近年では、生息環境の悪化に伴い個体数が減少しており、生息環境の保全も 重要な課題となっている。 (1)現 状 ①確認種数・分類群 徳島県内で確認されている爬虫類の種数は、徳島県版レッドデータブック(以下「県版RDB」と いう 。)編さんのために5ヶ年(1996~2000年)にわたり現地調査を実施されたこと(徳島県版レッ ドデータブック掲載種検討委員会編,2001)や徳島県における哺乳類、両生類および爬虫類の生息状 況(徳島県立博物館開設準備調査報告,1989)によって、次表のとおり18種が確認され、記載が行われ ている。 ただし、この中には調査がほとんど行われていない海産爬虫類のウミヘビ類は含まれていない。 表3-3-18 合 計 本県に分布する爬虫類の数(徳島県立博物館開設準備調査報告,1989 ほか ) カメ目 トカゲ目 3科 5科 6種 12種 2目 8科 18種 ②爬虫類相の特徴 県産爬虫類のうち、海産カメ類であるアカウミガメは、本県では毎年阿南市から宍喰町にかけての 砂浜に上陸・産卵する。時には、阿南市以北の徳島市内から鳴門市の海岸に産卵することもあるが、 県南部以外の海岸線では夜間でも人の活動があり上陸が阻害されている。その中で唯一 、「大浜海岸 のウミガメ及びその産卵地」は国の天然記念物に指定され、日和佐町では保護条例が制定され監視と 保護が行われている。また、長年に渡り継続して調査がなされた蒲生田海岸は 、 「蒲生田のアカウミ ガメ産卵地」として県指定の天然記念物となっている。しかし、近年になって上陸数と産卵数が次第 に減少する傾向にある。その他のウミガメでは、産卵のために上陸することはないが、アオウミガメ などが魚網に間違って捕獲されたり死骸が海岸線に打ち上げられることもある。 陸産カメ類は、低地から山地の河川、池沼、湿地、水田などに生息するが、在来種では個体数が著 しく減少している。確認されているものは、日本固有種であるイシガメや本県では最も個体数の多い クサガメ、沼地などに生息するスッポン、そして外来種であるミドリガメ類である。 県内でのカメ類の生息状況は次のとおりである。イシガメは生息地・個体数ともに少なく、東部の 山麓部にのみ生息している。クサガメは、県内に広く分布しているが、最近はミドリガメとともにみ られることが多く、次第にミドリガメに押され減少している。ミドリガメは、近年繁殖も確認されて おり、減少傾向にある陸産カメ類では増加傾向にある。スッポンは、吉野川流域をはじめとする低地 に広く生息している。養殖していたものが逃げ出していることも考えられるが、自然分布のものと区 別するのが困難である。 トカゲ類では、トカゲとカナヘビの2種類が生息する。一般に、生息する場所やエサが同じで性質 や形態(体色に違いはある)も似ていることから、混同されることが多い。県内では、広く平地から 山地の森林、林縁、草地、荒れ地など様々な環境に生息している。低地では、減少傾向がみられる。 ヤモリ類は、従来から知られているヤモリと海岸や山地の乾燥した岩場に生息するタワヤモリの生 息が確認されている。外見が両種ともほとんど同じなので、混同される場合がある。ヤモリが人家近 - 111 - くに住み夜行性なのに対し、タワヤモリは気象条件の厳しい環境にいて、気温の低い時には昼間でも 活動する。 ヘビ類は、日本固有種や固有亜種が多く、県内で生息する8種類中のうちアオダイショウ・シマヘ ビ・シロマダラ・ヒバカリ・ジムグリ・マムシの6種が該当する 。特殊な環境に生息するものもいて 、 タカチホヘビは林床の湿った落葉下や土壌中やがれ場など、シロマダラも石垣の中やがれきの間で生 活するなど変化に富む。種類によっては大きさにも幅があり、小型のタカチホヘビでは全長20cmでも 成体となるが、アオダイショウやヤマカガシのように大型のものは全長2m近くにもなるものもいる 。 近年 、大型個体の生息できる場所は少なくなり 、そのエサも限られることから次第に小型化している 。 毒を持つヘビとして人に害を及ぼすため、マムシは駆除されるが、毒の量は少なく死亡事故はまれで ある。あまり知られていないが、ヤマカガシも有毒であり、県内では過去に死亡事故の例もある。 ③絶滅のおそれのある種 県版RDBには、次の8種が記載されており、県産爬虫類の種数全体の14.4%に相当する。 絶滅危惧Ⅰ類 絶滅危惧Ⅱ類 準絶滅危惧 アカウミガメ イシガメ、スッポン、タワヤモリ タカチホヘビ、シロマダラ、ジムグリ、ヒバカリ 県版RDBに記載されているもので、絶滅危惧Ⅰ類のアカウミガメは、環境庁編(2000)の「改訂・ 日本の絶滅のおそれのある野生生物(爬虫類・両生類 )」 (以下 、 「環境省版レッドリスト」という 。) で絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。絶滅危惧Ⅱ類にスッポンがあるが、環境省版レッドリストでは情 報不足となっている。 ④外来種の状況 県内では、ミドリガメ類(ミシシッピアカミミガメ、コロンビアクジャクガメ、キバラガメなどを 含み、中でもミシシッピアカミミガメがよく知られている)のうち、ミシシッピアカミミガメの繁殖 が確認されている。 減少傾向にある陸産カメ類では唯一増加傾向にあり、同様の生息域を持つ在来 種の餌や生息環境を奪うといった弊害がみられる。このため、在来種では競合により生態的地位を喪 失することが懸念されている。 ミドリガメについては、ペットとして飼育されたものが大きくなり、河川に放流されたものが繁殖 し定着してきているのが主な原因である。ペットの野生化については、イヌやネコと同様に保健所や 役場において捕獲・駆除するとともに、ペット業者にも責任を持って回収するといった法的な手段の 必要性も出てきている。 スッポンについては、その分布が自然繁殖によるもののほかに、養殖していたものが逃げ繁殖して いる可能性がある。国内産以外の外国種のものも見られ、遺伝的汚染が心配されている。 近年では、輸入されたペットの放流や飼料・資材に混入した爬虫類(大型のカメ・トカゲなど)が 見つかって騒ぎになるなど、飼育や輸入する者の管理が問題になるケースも増加している。 (2)今後の課題 ①現状把握の強化 県内における爬虫類の実態は、アカウミガメを除いて、ほとんどの種で詳細な調査が行われていな い状況である。アカウミガメについては、全国的な調査のためのネットワークが確立されてきている ものの、調査は民間の個人に依存しているのが実態である。また、県内における調査や保全の範囲も 一部の海岸に限られ、広範囲の海岸線をカバーするものではない。そのため、近年県内においてウミ ガメ調査のネットワーク作りの取り組みが行われ始めた。 その他の種類についても、今後の調査と保護等の充実が望まれる。 ②生息環境の保全 護岸工事や河川敷の公園化などに伴う産卵に適した陸環境の改変 、水質汚濁 、水田の乾田化などが 、 爬虫類の生息数に甚大な影響を及ぼしており、河川や池沼、草地や森林などの生息環境の安定的な確 保と保全が必要である。崖や岩場が繁殖・冬眠を含めた全生活史を支える生息場所となっているタワ ヤモリなどでは岩礁海岸の保全が特に重要であるように、生息環境が特殊であったり、限定される種 - 112 - については、特に配慮する必要がある。 また、開発等の際においては、壁面や護岸の全面コンクリート化を回避し、産卵場所となる土手や 畦では砂地や草地を確保するなど可能な限り自然環境を残すよう最大限に配慮する必要がある。自然 環境を残すことが困難な場合には、代償措置として、緩傾斜護岸や自然石等による護岸など生物が生 息可能な環境を整備するとともに、道路や側溝の設置の際には移動を妨げないような配慮が必要であ る。 さらに、陸産カメ類のように、水質による影響を受けやすい種については、水質の保全も重要な課 題である。 ③生物多様性への配慮 地域の生物相を考える上で、地域の種の多様性とともに、遺伝的な多様性の保全が今後の重要な課 題である。陸産カメ類では、養殖によるものや家庭で飼育していたものが逃げたり放流されて、遺伝 的汚染(クサガメとイシガメの交雑や、国内産スッポンと外国産スッポンとの交雑 )、生態的地位の 喪失(ミシシッピアカミミガメの移入によるクサガメなど在来種との競合)のおそれが指摘されるな ど、外来種や他地域の同種個体などの安易な導入や放棄は、地域の生物遺伝的な環境を汚染する危険 性を有している。 特に、近年のペットブームに伴い、外来種等の安易な放棄例が増加しており、今後啓蒙を図ってい く必要がある。 <引用・参考文献> ・阿部近一ほか.1989.徳島県における哺乳類、両生類および爬虫類の生息状況.徳島県立博物館開設 準備調査報告,No.4. ・環境庁自然保護局野生生物課編.2000.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブッ ク(爬虫類・両生類 ).(財)自然環境研究センター. ・徳島県版レッドデータブック掲載種検討委員会編.2001.徳島県の絶滅のおそれのある野生生物 徳 島県版レッドデータブック. ・徳島県編.1978.第2回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書(両生類・は虫類 ) .徳島県. - 113 -