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希少野生動植物の生息地等保護区の指定について
希少野生動植物の生息地等保護区の指定について 1 生息地等保護区について (1)保護区の指定について 県では希少種の保護を図るため、希少野生動植物保護条例に基づいて保護すべき種を指定 するとともに、重要な生息地を保護区として指定することができる。 (2) 根拠条例 長野県希少野生動植物保護条例(平成 15 年長野県条例第 32 号) 第 23 条 知事は、指定希少野生動植物の保護のため必要があると認めるときは、その生息 地又は生育地及びこれらと一体となった生態系としてその保護を図る必要がある 区域であって、その個体の分布状況及び生体その他その個体の生息又は生息状況を 勘案してその指定希少野生動植物の保護のため重要と認めるものを、生息地等保護 区として指定することができる。 (3) 県内における過去の保護区等の指定状況 平成 15 年の条例制定以降、保護区等は指定していないため、今回諮問する生息地が指定と なれば県下で初の指定事例となる。 2 指定箇所の概要 (1) 指定箇所 木曽郡 木曽町 開田高原 (2) 名 称 案 開田高原末川保護区 (3) 土地利用 水田に隣接する斜面(傾斜約 25 度)、家畜用の採草地として利用 (4) 所有区分 個人有地 (5) 区域面積 約 0.5ha(150m×30m) (6) 現地で確認されている希少種 現地確認されている種 根 拠 等 県版レッド ランク チャマダラセセリ(無脊椎動物) オキナグサ(植物) 希少野生動植物保護条例 指定希少野生動植物 絶滅危惧ⅠA類(CR) 絶滅危惧ⅠB類(EN) キキョウ(植物) ユウスゲ(植物) エゾアカヤマアリ(無脊椎動物) 長野県版レッドリスト 植物編(2014) 動物編(2015) 準絶滅危惧(NT) (7) 指定の背景 ・生息環境の悪化に伴い開田高原の一部に生息が限定されているチャマダラセセリについて、 生息地に産卵された食草が一部の心ない愛好家により踏み荒らされ、チャマダラセセリの 種の存続を図る上で大きな支障となっている。 ・本生息地の情報はインターネット等により愛好家の間で生息情報が共有され、公然の秘密 となっている状況を考慮すると、保全のための立入規制を検討すべき段階を迎えた。 ・生息地は家畜用の採草地として個人所有者が活用しているが、一部の愛好家が所有者に 無断で立ち入るケースがあることから、所有者は何らかの立入規制を求めている一方で、 希少種保護に対する深い理解のもと保護活動の協力を得ている。 -1- (8) 保護活動等の取組・経過 ・希少野生動植物保護条例に基づくチャマダラセセリ保護回復事業計画の策定(H26 年度) ・長野県希少野生動植物保護監視員による生息地の状況確認や違法採取のパトロール。 ・地元区による採草地環境整備のための火入れ、飼料採取のための草刈(畜産業の一環) ・信州大学…チャマダラセセリの生息状況調査(成虫・産卵) 神戸大学…里草地・採草地における生物多様性の維持機構の解明 ・所有者、町、県との協働作業により緊急に立入禁止区域(所有権)を設定(H26 年 7 月) (9) 生息地保全のための課題と今後の取組 ・地域、大学、企業、行政など多様な主体の有機的な連携による保全体制の構築と、総合的 な保全対策の推進。 ・ 「人と生きもの パートナーシップ推進事業」 (平成 27 年度 県の新規事業)により、地域の 保全体制の構築を支援するほか、保護に必要な看板等を配備します。 3 保護区の規制と指定効果 (1) 保護区の指定区分 指定区分 保護区内の位置付け 規 制 概 要 規制地区 保護すべき区域 保護のために土地の形質変更等を制限(許可制) 立入制限地区 保護区域内の核心部 特に保護を図るため立入を制限 監視地区 規制地区の緩衝地帯 一定の行為について制限(届出制) 保護区イメージ図 規制地区 立入制限地区 -2- 監視地区 (2) 保護区の規制と指定効果 指定に伴う規制内容 指 定 効 果 土地の形質変更行為は許可が必要 生息地の改変行為をコントロール 農林業など認めた者以外の立入を規制 生息地の踏み荒らしを軽減 普通種の動植物採取も届出が必要 全種の捕獲制限により違法捕獲防止に効果 (3) 保護区指定に係る規制の適用除外事項 ・農林業の行為(農林業の一環で行う火入れも含む) ・通常の管理行為又は軽易な行為で、規則で定めるもの、またはそのための立入 ・非常災害に対する応急措置(事後届出)、またはそのための立入 (4) 指定において検討をすべき事項 ・指定箇所周辺の土地利用状況(農林業)を考慮した保護区域の設定 例) 隣接する水田、 生息地上方の雑木林(現状はヤブ、森林に移行しつつある状況) ・保全対策に資する行為を行うための立入制限の適用除外の検討 例) 地元の保全体制構築や普及啓発につながる行為(小中学校、保全団体の学習会) 当該生息地を保全するための学術研究等を実施する大学等(信州大学、神戸大学) -3- 【参考】生息地等保護区の規制内容 ・規制地区内において次に掲げる行為を行う場合は知事の許可が必要となります。 (条例第 24 条第4項) (1) 建築物その他の工作物を新築し、改築し、又は増築すること。 (2) 宅地を造成し、土地を開墾し、その他土地(水底を含む。)の形質を変更すること。 (3) 鉱物を採掘し、又は土石を採取すること。 (4) 水面を埋め立て、又は干拓すること。 (5) 河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。 (6) 木竹を伐採すること。 (7) 特別指定希少野生動植物以外の規制地区に係る指定希少野生動植物の個体の捕獲等を すること。 (8) 規制地区に係る指定希少野生動植物の個体の生息又は生育に必要なものとして知事が 指定する野生動植物の個体その他の物の捕獲等をすること。 (9) 規制地区の区域内の湖沼若しくは湿原であって知事が指定するもの又はこれらに流入 する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。 (10) 道路、広場、田、畑、牧場及び宅地の区域以外の知事が指定する区域内において、車馬 若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。 (11) 第8号の規定により知事が指定した野生動植物の個体その他の物以外の野生動植物の 個体その他の物の捕獲等をすること。 (12) 規制地区に係る指定希少野生動植物の個体の生息又は生育に支障を及ぼすおそれの ある動植物として知事が指定するものの個体を放ち、又は植栽し、若しくはその種子を まくこと。 (13) 規制地区に係る指定希少野生動植物の個体の生息又は生育に支障を及ぼすおそれの あるものとして知事が指定する物質を散布すること。 (14) 火入れ又はたき火をすること。(農林業の一環で行うものは除く) (15) 規制地区に係る指定希少野生動植物の個体の生息又は生育に支障を及ぼすおそれの ある方法として知事が定める方法によりその個体を観察すること。 ・立入制限地区においては、次の場合を除いて誰も立ち入ることができません。 やむを得ない理由により区域内に立ち入る場合は知事の許可が必要となります。 (条例 25 条第4項) (1) 非常災害に対する必要な応急措置としての行為をするために立ち入る場合 (2) 通常の管理行為又は軽易な行為で規則で定めるものをするために立ち入る場合 (3) 前2号に掲げるもののほか、知事がやむを得ない事由があると認めて許可をした場合 ・監視地区において次に掲げる行為を行う場合は知事への届出が必要となります。 (第 26 条第1項) (1) 建築物その他の工作物を新築し、改築し、又は増築すること。 (2) 宅地を造成し、土地を開墾し、その他土地(水底を含む。)の形質を変更すること。 (3) 鉱物を採掘し、又は土石を採取すること。 (4) 水面を埋め立て、又は干拓すること。 (5) 河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。 -4-