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第24回原子力部会資料6 総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会(第23 回) 日時:平成 22 年 3月 29 日(月)15:30∼18:00 場所:経済産業省本館17 階 東 6∼8 第 1∼3共用会議室 ○田中部会長 それでは定刻になりましたので、ただ今から総合資源エネルギー調査会電気事業分科会第 23 回原子力部会を開催させていただきます。ご多忙中のところをご出席いただきまして、ありがと うございます。本日は約 2時間半の時間をいただくことを予定しておりますが、できるだけ効率 的に審議を進めたいと思いますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。 それでは、まず開催に当たりまして、増子副大臣よりごあいさつをお願いいたします。 ○増子副大臣 皆さん、こんにちは。大変お忙しい中、本日はこの原子力部会においでいただきまして誠にあ りがとうございます。まずもって御礼を申し上げる次第です。 本日の部会では、原子力をめぐる国際的課題についてのご意見を皆さま方からいろいろ頂戴し たいと思っております。今、オールジャパンという言葉が大変この日本の中で広まっているわけ です。ご案内のとおり、地球温暖化対策、あるいは新成長戦略、そしてエネルギー基本計画の見 直し等々を含めながら、原子力政策の推進ということを私どもはしっかりとうたっているわけで す。この中で、平和利用はもちろんであると同時に、この原子力発電所の国際的な展開を含めて、 わが国が今後やっていかなければならない課題がたくさんあるわけです。 ご案内のとおり、 先般、 UAE での原子力発電所の獲得のことにつきましても、残念ながら、わが国はそれを獲得すること ができませんでした。韓国がパッケージ型で、あらゆる部分についてオールコリアの体制で獲得 を得たということを見ても、私ども日本において何が原因であったのか、そして今後、何をしな ければいけないのか、こういうことをしっかりと考えていかなければいけないと思っているわけ です。国会の経済産業委員会をはじめとして、さまざまな委員会の中でも、この問題は今国会で 随分取り上げられております。日本は今後どういう形の中で原子力政策について、そして原発の 獲得ということについて取り組んでいくのだということです。 これについては、私どもはまさにオールジャパン体制の中で、今後しっかりと対応していきた いということをお答えをさせていただいているわけですし、 地球温暖化対策やさらに新成長戦略、 そして先ほど申し上げましたエネルギー基本計画の見直しの中でも、この問題が随分取り上げら れているわけです。どうぞ、そういう点を含めて、国際的な課題、今後わが国がどのような形で 1 取り組んでいくかということを皆さんにさらに深掘りをしていただきながら、この課題に私ども も対処していきたいと思っておりますので、どうぞ皆さま方の活発なご意見、そして建設的なご 意見を含めて、よろしくお願いを申し上げたいと思います。 今日は 2時間半という、また長い時間になりまして大変恐縮ですが、よろしくお願いを申し上 げるところです。 いつものことで申し訳ございませんが、私どもはどうしても公務が重なっておりますので、今 日、途中で失礼いたしますことをお許しいただきたいと思います。今日は本当にお忙しい中、あ りがとうございます。 ○田中部会長 どうもありがとうございました。それでは続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いい たします。 ○三又課長 確認させていただきます。本日は、座席表、議事次第の後、資料 1、原子力部会委員名簿。資 料 2 といたしまして「原子力の国際的課題への対応について」 。それから資料 3は、日本電機工業 会の資料で「国際化対応に向けた取り組みについて」 。それから資料4、日本原子力産業協会の資 料で「日本原子力産業協会における原子力の国際展開に関わる活動について」 。それから資料 5 といたしまして「原子力の国際的課題への対応(主な論点) 」 。それから資料 6は、前回の議事録 です。 それから参考といたしまして、昨年行っていただきました国際戦略検討小委員会の報告書をお 配りしています。漏れ等がございましたら事務局までお申し付けいただければと思います。 なお、本日は所用のため、五十嵐委員、植草委員、金本委員、木場委員、谷本委員、森嶌委員、 山地委員がご欠席となっております。 ○田中部会長 ありがとうございました。それでは早速ですが、議事に移りたいと思います。議題 1として「原 子力の国際的課題への対応について」を取り上げたいと思います。まず、資料 2「原子力の国際 的課題への対応について」につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。 議題 ①原子力の国際的課題への対応について ○三又課長 2 原子力政策課長の三又でございます。ご説明させていただきます。お手元の資料 2ですが、最 初の数ページは基本的な現在の国際的な枠組みについてご説明しています。スライド 2の左側に 国際原子力機関(IAEA) 、それから核兵器不拡散条約(NPT) 、それから原子力供給国グループ(NSG) のガイドラインといったものを掲げております。IAEAは原子力平和利用のための安全基準の作成 や技術支援、また、軍事転用防止のための、いわゆる査察(保障措置)といったものを実施して おります。NPT や NSGガイドラインに基づく核不拡散の枠組みについても、IAEAがこれを担保す るような役割を負っております。わが国においては、原子力発電のためのプラントや資機材、あ るいは技術を日本から海外へ輸出する場合、原則として相手国との二国間協定を前提にNSGガイ ドラインにのっとった国内法制、 外為法の輸出許可を行うというような管理が行われております。 次の 3ページは、わが国が結んでいる二国間協定の現状です。主に先進国との協定です。後で 詳しく出てきますが、途上国ではつい先ごろ、カザフスタンとの間で署名したところです。 次に 4ページ目です。原子力に関する事故の損害賠償について国際的な枠組みがございます。 幾つか条約がございますが、いずれも事業者への責任集中、一定の賠償責任額の確保といったこ とへの国内措置を求める国際ルールです。その中でも CSC(原子力損害の補完的補償に関する条 約)が現在わが国でも議論されております。ただ、現在では、米国以外の主要国は日本も含めて 未加盟、または条約そのものも未発効という状態であり、今後、原子力を導入する国が増えてい く中で、途上国も含めて参加国を広げていく必要があると思われます。 次の 5ページは、二国間の協定に至らないものも含めて、さまざまなレベルでの、例えば人材 育成や原子力導入のための基盤整備など、一般的な協力も含めた日本と各国の二国間協力を整理 したものです。 その次の 6ページは、世界の原子力産業の勢力分布について触れております。80 年代は、欧米 諸国では群雄割拠の状態でしたが、90年代の冬の時代に新規建設を継続して行った日本とフラン スが結果的に勝ち残った形になって、現在、先進国の中では日本系のメーカー、あるいはアライ アンスの三つのグループないし会社、それにフランスのアレバ社が先進国の主たるサプライヤー です。ただ、昨今、ロシア、韓国などがこれに追随して国際競争は激化する様相を呈していると いうところです。 日本の強みは、工期内、予算内でしっかりしたものを作り上げる力だと一般的にいわれており ます。他方、国際競争上の弱みとしては、前回もご議論のありました国内での設備利用率の低さ や、海外ビジネス経験の乏しさから来る価格競争力の問題などがあると考えられます。これは後 ほど、もう少し具体例に即してご説明いたします。 その次の 7ページは、以上のことを踏まえまして、昨年の 6月にこの部会でも議論していただ 3 き、この部会の下で、国際戦略検討小委員会を開いてご議論いただいた報告書のポイントです。 この時点では、右下に書かれている五つの基本戦略というものをまとめていただきましたが、そ の後、世界情勢も一段と進展しておりまして、今や戦略を実行する段階に入っていると認識して おります。 これ以下では、大きく三つの柱ということで、一つ目が原子力産業の国際展開、二つ目が、ウ ラン燃料の安定供給確保、三つ目が多国間の場で議論されている国際的枠組みです。この3点に 整理をして、より実践的な議論を進めてまいりたいと思っております。 その次の 9ページをお開きください。原子力産業の国際展開の政策的意義です。あらためて整 理をしていますが、上段にありますように、エネルギーの安定供給、あるいは温室効果ガスの排 出削減、それから安全・不拡散の徹底といった国際的な意義とともに、国内的な意義も非常に大 きいものがあると考えております。 一つは、原子力輸出は有力な成長産業分野として日本経済への寄与が期待されますし、今後、 しばらく国内の新規建設需要というものが比較的低水準になることが見込まれる中で、これまで 培ってきた技術力や人材といったものを維持・強化していく上で、海外市場は非常に重要です。 また、国内で用いられている炉型が世界で孤立化し、それによって長期的に国内の原子力発電が リスクを背負うというようなことを抑える意味もあると考えております。 続きまして 10ページは、今後の世界の原子力発電の導入拡大見通しです。これはさまざまな機 関が、さまざまな見通しを出しておりますが、ここではWNA(世界原子力協会)の2025 年の推定 の数字を掲げております。2025年には、世界の原子力発電の設備規模、設備容量は現状の2倍以 上になると見込まれております。黒い丸が現状の設備規模、黄色い大きい方の丸が2025 年の推定 値です。仮に 1GW当たりを 4000 億円というように、これは新規建設だけに着目して、そういう非 常に単純な計算をいたしますと、 ここに金額も書いてありますが、 向こう15年間で180兆円程度、 年間平均で 10兆円以上の規模に相当するわけです。もちろん新規建設だけではなく、機器のリプ レースであるとか、その他、関連するいろいろな経済効果があると考えられます。 後にございますが12 ページお開きください。今ご覧いただいたように、世界各国で拡大の機運 がありますが、市場の性質として幾つか異なるものがございます。ここでは大きく米欧の先進国 市場、それから中国・インド、新規導入国と分けて見ていきたいと思います。米欧市場の特徴は、 当面、新規建設でも最大規模の市場ですし、また、既設炉がたくさんございますので、そのリプ レース需要も大きいということ、また、ビジネス上、その他のリスクも相対的に小さいというこ とで、日本の産業から見ると、重要な市場であると。特に米国の場合、米国の二大メーカーが、 いずれも日本企業とアライアンス、あるいは日本企業の傘下に入るということで、日本産業にと 4 って非常に大きな意味があると考えられます。 次の 13ページは、アメリカは今年に入って、米国政府からも、米国内での新規建設に前向きな 動きというのがいろいろ出されていますので、それを整理したものです。 14、15ページに新規建設の具体的なプロジェクトを掲げておりますが、14ページの地図をご覧 いただくと、新規建設は約30 基の計画がございます。このうち15 ページで、日本企業が受注を 決めている、あるいはほぼ決めている案件を列挙しております。アメリカの市場が拡大すれば、 日本産業にとって確実に相当割合がビジネスとして発生してくるという関係にあって、米国政府 も支援策を講じておりますが、わが国としても、これは投資する政策的な支援が重要だと考えて おります。 16ページです。先ごろ開かれた日米原子力運営委員会という事務レベルの協力会議ですが、こ れはアメリカの国内の新規建設促進のみならず、それ以外の技術面でのさまざまな協力や、今回 は新たに第三国における原子力平和利用を日米が協力して関与を強めていくというような方向で の話し合いも行われているところです。 17ページにヨーロッパの状況を簡単に整理しております。ヨーロッパは相対的にフランスが強 いわけですが、日本の産業にとっても資機材輸出を含めて相当程度、今後期待ができる市場だと 考えております。 18ページには公的資金の活用ということをまとめております。特にこういった先進国市場では、 ファイナンス面の支援が政策ツールの中では大きな意味を持つと考えております。 米国の場合は、 特に原子力プロジェクト正否の最大の鍵がファイナンスです。アメリカで連邦政府が国内の新規 建設向けの債務保証制度を作っておりますが、それと併せて日系メーカーがかかわるプロジェク トについては、NEXI(日本貿易保険)やJ BIC(国際協力銀行)といった公的金融も活用していく ことが重要であると思われます。 続きましてインド・中国について、20、21ページです。20ページのインドについてはNPTの非 加盟国ということで、従来は西側先進国が協力を行わないというスタンスでしたが、一昨年9月 の NSG で、この方針を転換することを合意いたしました。その後、フランス、ロシア、アメリカ など、各国がプラント建設を含めて進出しようとしている状況にあります。わが国は閣僚レベル でのエネルギー対話の下で、 お互いの原子力政策について意見交換、 情報交換を行っております。 昨年 12月の日印首脳会談においても、そのことを確認しております。今後、日本からインドに対 してプラントや資機材の輸出を行うためには、原子力協定の締結が必要になると考えられます。 次に 21ページの中国市場です。中国は規模的には今後、最大の成長市場と目されますが、はっ きり国産化の路線を打ち出しております。従って、日本をはじめ、先進国から見れば、ここは徐々 5 に部材、コンポーネントの輸出が中心になっていくと思われます。 次は、本当は新規導入国の話に移らせていただくところですが、その前に日本と競合する、他 の供給国の状況について簡単に整理しました。フランスとロシアと韓国について整理しておりま す。 まず、フランスについては、23、24ページです。フランスは国内58基(世界第 2位) 、原子力 発電比率は 80%近いということで、これは世界最大です。国営のアレバ社が燃料供給から再処理 まで一元的に対応しています。また、国営の電力会社であるEDF と連携して、最新鋭機EPRの国 際展開を図ろうとしているところです。 強みと弱みが書いてありますが、強みがある一方、フィンランドでEPRの建設プロジェクトが 大幅に工期を遅延しているというような問題に直面しております。 次のページは、これまでの実績を相手国別に書いております。これは全部が建ったわけではな くて、太字で書いてあるところが実際に建設されたものです。EU域内以外に南ア、中国、韓国と いったところで建設実績がございます。 次に 25、26ページはロシアについてまとめております。ロシアは原子力の歴史は古いですが、 現在は 31基ですが、さらに 26 基を向こう 15年間に建設する予定です。原子力比率も現行の16% から 2 倍近くに引き上げます。強みは、右のグラフにありますように、ウランの濃縮設備容量は 世界の約半分を占めており、原子力建設のみならず、核燃料供給から廃棄物処理まで、フルパッ ケージで対応が可能な、ほぼ世界で唯一に近い国だと言えるかと思います。こちらも国営企業の ロスアトムがそういったことを全部見ております。 他方、弱みのところに書いてありますように、製造能力がネックではないかとよくいわれてお ります。最新鋭機VVER の 1基当たりの建設期間は平均で約7.5 年、生産ラインの容量というのは 年間 1 基造れる程度ではないかといわれております。 実績を見ますと、旧ソ連諸国以外にも旧東欧圏を中心に、かなり数多くのところで建設実績が ございますが、最近はそんなに建設が進んでいないという数字もございまして、生産能力のとこ ろが一つのネックではないかと目されます。 次に韓国です。27、28ページです。韓国も国内で現在20基を運転中ですが、これをさらに19 基を新規建設する予定がございます。2030 年までに原子力発電比率を4割以上に拡大する計画で す。輸出については、これまではまだ海外での実績はゼロでしたが、ご案内のように2009年末に アラブ首長国連邦で 4基の建設を受注したというところで、韓国政府としては原子力発電所を新 輸出産業と位置付けて、2030 年までに 80 基の輸出を目標にしていくという非常に高い目標を掲 げております。 6 強み、弱みのところで、弱みについては技術自立率というものがまだ十分ではないということ で、実際に南ア等の入札で除外されたようなことがございます。そういう意味では、欧米への進 出はまだまだ課題であると考えます。そういう意味で、ロシア、韓国はいずれも、これからご説 明する新規導入国では実際に受注し始めているわけですが、欧米先進国市場では、まだ課題があ るというところではないかと思われます。28ページは飛ばします。 29ページに今、申し上げたフランス、ロシア、韓国の共通点として、いずれも国営の会社がこ ういった海外マーケットの受注の中心になるということがございます。フランスの EDF、アレバ はご説明したとおりですし、ロシアはロスアトム、韓国は UAE で、韓国電力公社という国営の電 力会社がヘッドになった形で受注いたしました。 この下に重工メーカーなどが入るという形です。 日米はご覧のように、発電、プラント建設、燃料供給をそれぞれ複数の民間企業が純粋なビジネ スとしてやっているという体制の違いがございます。 31ページは、新規導入国市場の現状と課題についてです。文章のところで書いてありますよう に、日米仏メーカーに加えて、韓国、ロシアも参入してきております。新規導入国の特徴は、プ ラント単体の輸出だけではなくて、運転保守支援や人材育成、さらには制度整備といった多面的 な二国間協力が必要になるということで、いわゆる単体の輸出ではないシステム型の輸出、パッ ケージ型の輸出というものが必要になってくるということで、体制としても、それに見合ったも のが必要であろうということです。原子力安全、核不拡散、核セキュリティという3S の確保の観 点からも原子力協定の締結が重要であり、下の表にございますとおり、現状では他の供給国と比 較して、日本は途上国との原子力協定の締結はまだ遅れている状況にございます。 32ページは、今、新規導入国で割と先頭を切っている三つの国の例を掲げております。UAEは 2017 年の運転開始予定で、韓国電力公社が4基を受注しております。それからベトナムは、南部 のニントゥアン省で、 二つのサイトで 2基ずつ、 計 4基が最初のプロジェクトとしてございます。 2020 年に初号機を運転開始予定です。2サイトのうち、最初の第 1サイトについては、正式決定 はなされておりませんが、ロシアが受注する公算が大きいというような報道がされております。 ヨルダンは、やはり2017年の運転開始予定で、アカバ湾南側の紅海側で立地することを計画し ております。それ以外にもポーランドやカザフ、タイやインドネシアといったような国が新規導 入国として想定されているところです。 次のページは、原子力の国際展開についての人材育成のプログラムです。これはわが国がこれ までやってきたものを簡単に整理しておりますが、法制度整備や人材育成、基盤整備といったよ うなことについて、二国間協力を展開しておりまして、ここに掲げてございますような国々につ いて、研修生の受け入れ、あるいは政府関係者の受け入れ、また、現地でのセミナー、ワークシ 7 ョップの開催、あるいは規制当局間での意見交換等々、必要に応じて行っているところです。 それから、その次の 34ページは、公的金融の支援についてです。これは先ほどの欧米のところ でもご紹介いたしましたが、特に新規導入国は大体途上国で、そこではNEXI もJBIC も両方とも フルに活用できます。この金融支援というのは、多くの国においては非常に鍵を握ると思われま す。下の方にありますように、さはさりながら、いろいろな輸出金融、あるいは国際金融の中で は、原子力というのがやや例外的に排除されたり、劣後するようなものもございます。ODA は一 般に人道支援を除いて原子力は対象にできないとか、それから、その償還期間の問題などもござ いますし、世銀や欧州復興銀行などでも原子力に対する支援は行っておりません。以上が政策面 です。 35、36 ページに UAEのプロジェクトの教訓をまとめております。大きく二つ言えることがある と思っております。UAE の場合、一つは受注をした韓国電力は、国営の電力会社をリーダーとし た受注体制をとって、長期に及ぶ運転保守支援も約束して、総合的な支援を提示しました。日米 はメーカー中心の受注体制です。フランスも途中まではそういう体制で、最後でEDF に変更した といわれておりますが、結局受注はできませんでした。 それから第 2の点は次のページです。価格リスクテイクと書かせていただいておりますが、価 格は比較のベースがそろっていない可能性もあるので、単純に比較はできませんが、日米やフラ ンスに比べて、韓国は 2割程度安かった、あるいはそれ以上安かったのではないかといわれてお ります。 もう一つは、想定外のコスト増や工期遅延損害など、民間企業では普通にはなかなか取りがた いようなリスクも、韓国は全部アクセプトしたといわれております。他方、日本が強みとする原 子炉の運転実績といったことについては、なかなか重要な評価ポイントとされなかったような面 がございます。 下に書いてありますように、これは先進国でもありますが、途上国の場合は特にさまざまなリ スクが想定され、このようなものを右の方にありますように、既存の日本の貿易保険の制度で、 一定の条件で一定のカバーはできますが、例えば発注側の責任で生じるリスクなどについて十分 なカバレッジがないという問題もございまして、政策的な対応が必要かと思われます。 37ページは、若干繰り返しになりますが、今申し上げた点を含めて整理したものです。わが国 の課題として、まず一つは受注体制、特に電力会社中心の一元的な体制構築というものが必要で はないか。すべての新規導入国についてこれが当てはまるというわけではありませんが、そうい うものが必要な局面が多くなってくるだろうということで、現在、これについては電力会社を中 心に、新規導入国での新たな受注活動を行う中核会社を設立する方向で検討を進めております。 8 そこに、電力会社を中心に、国も一定の関与をする会社の設立を検討中です。 2 番目は価格・リスクテイク能力ですが、ここは先ほど申し上げたように、民間で従来の制度 の中でリスクテイクできる範囲に限界があるということで、公的なリスクテイク範囲について検 討・見直しが必要ではないかと。 それから 3番目のところは、新規導入国の人材をわが国がもっと積極的に育成していくことが 必要ではないかと。併せて原子力協定の締結、それから CSCの検討も重要だということです。 最後に原子力を超えた、さまざまな分野でのインフラ提供や新技術の提供など、相手国のニー ズに応じたパッケージ提案ができるような体制構築も必要ではないかということです。以上、長 くなりましたが、1点目の原子力産業の国際的展開についてでした。 次に、ウラン燃料の安定供給の確保につきまして、ご説明いたします。39ページに図がござい ます。フロントエンドについては、例えばウラン鉱山、転換のところの機能は、わが国は基本的 にゼロですし、濃縮も非常にわずかです。このようなところで必然的に国際連携が必要になって きます。ここに掲げている各工程は、燃料の成形加工という最後のプロセスは国内でほぼ需要を 満たせますが、それ以外の工程、それから、その工程と工程を結ぶ輸送のところも非常に脆弱な 面がございます。このようなところを国際連携を通じながら強化していくことが不可欠です。そ れは国内のみならず、先ほどご説明した海外展開をしていく上でも、こういう燃料供給をパッケ ージで提案できることは非常にクリティカルです。 そういった意味で、鉱山の権益の確保や、特に供給プレーヤーが限られている濃縮のところに ついての戦略的な連携といったようなもの、あるいはこのサイクルの全体を通して、途絶リスク などに対応するために、国内で備蓄をするとかストックパイルを行うというようなことが政策的 に重要でもあると考えられます。 以下、幾つか資料がございますが、40 ページはウラン資源の需給見通しということで、短期的 には 2006∼2007年ごろの急騰に対応して、各国がかなり手厚く在庫を持ちましたので、市況は下 がっておりますが、今後、中長期的にはロシアの解体核兵器からの濃縮ウラン供給の見通しがど うなるか分からないことも含めて、中長期的には需給がひっ迫してくる可能性は十分高いと考え る必要があります。 41ページで、ウラン資源の確保については、カザフ、オーストラリア、モンゴル、その他いろ いろな国との取り組みをしておりまして、リスクマネー供給についても、JOGMEC、JBIC、NEXIな どを活用した取り組みを行っております。 42ページは濃縮ですが、日本国内での濃縮能力は現時点で、世界全体の中の0.3%ということ で、国内でも 3%の自給能力です。この能力を上げる努力をすることと併せまして、右側の円グ 9 ラフにある世界の四大メジャーとの連携を強めていくことが必要だと考えております。 43ページの、先ほど申し上げた輸送ルートについても、ルートの複線化、短縮化といったこと が必要ではないかと。現時点では、日本が権益を確保して、これから生産が本格化するカザフス タン、あるいはロシアのシベリアの濃縮能力などを活用した場合でも、輸送ルートとしては、サ ンクトペテルブルグ経由の西回り(喜望峰周り)のルートしかないのが実情です。そのようなこ とも踏まえた対応が必要になってくると思います。 また、濃縮ウランの備蓄についても先ほど申し上げたとおりですが、これは昨年の小委員会で も濃縮ウランの国内備蓄について、ウラン燃料の国内の需給ひっ迫対策に加えて、国際的な核燃 料供給保証の議論に対応するという意味からも、こういうことは重要だというご提言いただいて おりますが、これについても今、国内備蓄について関係メーカーなどとも検討を始めているとこ ろです。 最後に、3番目の大きな柱として、多国間の場における議論です。これは 45ページに全体を整 理しております。これから新規導入国が広がってくる中で、これまでの国際的な枠組みというの は、多くの国、途上国が参加すること、原子力発電を導入することを必ずしも想定していない形 で、 先進国グループでできてきている側面もあります。 もう 1回そういうところを見直していく、 新規導入国の拡大に伴う対応が必要ではないかということで、四つ整理をしておりますが、一つ 目は、原子力発電に関心を示す国々に対する支援を行っていく。基盤整備やキャパシティビルデ ィングを原子力先進国が協力して行っていくというような側面です。2 番目は、原子力安全の国 際水準の維持のための活動が今後、あらためて必要になってくるのではないかということです。3 番目は、国際的な核不拡散への貢献、それから、先ほども申し上げたように燃料供給対体制はわ が国の弱点でもあるので、そこを補強していくということを国際的な枠組みを活用してやってい くという側面です。4 番目は、それ以外の側面をまとめております。こういったことについて、 そこにそれぞれ白丸で書いてあるようなフォーラムは、これまで既に議論が行われているもので すが、例えば②の安全のところについては、本来 IAEAの重要な役割として安全もありますが、そ この機能をもうちょっと強化していく必要があるのではないかということが言えるかと思ってお ります。 以下は、今申し上げたそれぞれのフォーラムについての参考資料ですので、逐一のご説明は省 略させていただきますが、簡単に紹介だけさせていただきます。46 ページは IAEA の基盤整備の 取り組みについて、日本国政府としてどんなかかわりをしているか。資金面、人材面、あるいは ワークショップ等への参加ということです。 47ページは、先ごろフランス主催で行われました、原子力発電の導入国拡大を踏まえた国際会 10 議の概要です。わが国を代表して、松下経済産業副大臣が出席しまして、3 点述べております。 政府による長期的で強いコミットメントが必要である。新規導入国に対して原子力先進国の知 見・経験を提供することが重要ということ、それから 3番目に、供給国と同入国が一堂に会する 国際的な枠組み等を議論するプラットフォームが必要ではないかということを提言しております。 右側に、サルコジ大統領の七つの不可欠なポイントというものを整理してございます。この 7 項目は、新規導入国に対して、どういうことが必要かということを議論するときに、必ずしもこ れはサルコジ大統領のオリジナルというわけではなくて、大体このような項目になるのかなとい うことですが、今後もよくリファーされることになるだろうと思われます。 48ページの GNEP(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)は、アメリカがブッシュ政権下 で始めた国際的な取り組みで、その中に幾つかの要素がありますが、基盤整備であるとか、燃料 供給のところは特にワーキンググループを作ってやっております。さらにオバマ政権になって、 「ゆりかごから墓場まで(Cradle to Grave) 」の核燃料サービスということで、バックエンドも 含めた形での議論がポストGNEPの中で進んでいくことが想定されます。 49ページは、核燃料供給保証について、GNEP以外に各国からいろいろな提案が出て、そのうち ロシア提案というものが一応IAEAの理事会において承認され、今後、具体的にロシアのサポート を受けたいという国が出てくれば、動きだすという段階になっております。ほかの提案もそれぞ れ具体化していく可能性があると思っております。 最後の 50 ページは、それ以外の国際会合です。2010 年は NPT の見直しのタイミングになって おりまして、本年 5月にニューヨークで行われます。ここでも核不拡散等々の議題が上がってお り、今ご説明させていただいた中の燃料供給保証といった議論については、ここでも関係してく ると思われます。非常に駆け足ですが、説明は以上とさせていただきます。 ○田中部会長 ありがとうございました。続きまして、資料 3につきまして、日本電機工業会の澤原子力政策 委員会副委員長からご説明をお願いいたします。 ○澤副委員長 それではメーカーの立場といたしまして、 「国際化対応に向けた取り組みについて」 、JEMAの 原子力政策委員会として澤の方から、ご説明申し上げます。 まず 1枚目は「原子力メーカーにとっての国際化対応意義」という点で整理しております。ま ず、企業の成長戦略としての意義という意味で、事業拡大、あるいは人材、技術の維持・発展に 貢献するということです。これは決して一メーカーだけではなくて、わが国の原子力産業に関す るサプライチェーン全体として、とらまえていただきたいと思います。 11 また、世界最高水準の技術による貢献を、わが国としてやっていけると思っております。原子 力建設を通じた温室効果ガス排出量の削減への貢献、あるいは、わが国の信頼できる技術によっ て、安全で持続的な原子力平和利用への貢献といったことが、国際的対応の意義としてあるので はないかと思っております。 次に 2ページです。 相手国ニーズに応じた原子力の国際化対応という標題を書いておりますが、 まず、わが国メーカーは、当初原子力機器、コンポーネントの輸出をなりわいとしておりました。 そしてその後、現在進行中ですが、欧米等の先進国向けの原子力プラント輸出と、さらには先ほ ど三又課長からの包括的なご説明の中にもありましたように、新興国向けということで、システ ム輸出をやっていくというステージに差し掛かっているのではないかと思っております。ここで 申しますシステムとは、相手国の法整備、規制システム、人材育成、設備提供、運転支援等を、 含んだものです。そういった環境下において、政府間の協力、政府支援をより必要とする形態に、 現在移行しつつあるのではないかと思っております。 メーカーからの要望事項を何点かまとめております。まず一つは、政府主導による二国間協力 合意および国際的協力関係の構築を促進していただきたいということです。具体的には二国間の 原子力協力協定の締結促進、あるいは先ほどもお話がございましたように、CSC などの必要な国 際条約への加盟、あるいは相手国の国内法整備等への協力をお願いしたい。また、CDM への原子 力組み入れにつき、ご検討願いたい。さらに、IAEAでは核燃料バンク構想等々、いろいろ検討中 ですが、このようなIAEA 等の国際機関との連携強化をお願いしたい。 次に、政府間合意に基づく幅広い協力表明と政府首脳によるトップセールスをお願いしたいと いうことです。法規制や人材育成等の基盤整備への支援表明をいただく。具体的には長期の燃料 供給保証、使用済燃料取り扱いへの協力、あるいは ODA、輸出金融等の財政支援、原子力以外の 社会インフラ支援、教育、文化事業貢献等、包括的な協力のご提案をお願いしたい。 さらに許認可・建設・運転保守全体の一貫した支援体制の構築をお願いできないかということ です。具体的には新興国向けシステム輸出に対応できる仕組みづくり、NEXI貿易保険等の見直し によるリスク引き受け機能強化、規制の国際化の促進をお願いしたい。 以上、簡単ではございますが、メーカーの立場からまとめさせていただきました。 ○田中部会長 ありがとうございました。続きまして、資料 4につきまして原子力産業協会の服部理事長から ご説明をお願いいたします。 ○服部委員 ありがとうございます。それでは資料4に基づいて、 「日本原子力産業協会における原子力の国 12 際展開に関わる活動について」ご説明したいと思います。今しがた説明がありました資料 2、あ るいは資料 3とダブるところがありますが、最初の数ページだけをご説明させていただきたいと 思います。 めくっていただきまして原産協会の役割というものが最初に出ております。原産協会はいろい ろな活動をしておりますが、その中で国際協力というものを大きな柱にしているところです。原 産協会は、約 480の会員(電力、重電メーカー、機器メーカー、ゼネコン、商社、地方自治体、 一部の大学など)からなる社団法人です。国、民間企業等との協力によって、以下に示すような 途上国協力を実施しています。 一つ目は、民間協力の窓口機能ということで、人的交流、情報交換をやっておりますが、日韓、 日台、日中というようなところをやっております。それから、ビジネス・ステージ以前における 人材養成、PA支援、法整備支援等の基盤整備支援をやっております。一番代表的なものは日越協 力です。これは後の方の資料を見ていただければ詳細が書いてございますが、2000 年以降、先方 と覚え書きを結んで、さまざまな協力をしてきています。3 番目は「ビジネス・シーズ発掘」と 書いてありますが、原子力協力協定が未締結の国、例えばインド、あるいはロシア、その他諸国 で原子力に関心のあるような国々と、さまざまな協力や調査を行ったりしています。これも後の 方に資料が出ていますので、ご参照いただければと思います。4 番目は、次に述べます原子力国 際協力センター(JICC) 、JICC というのは原産協会の外にありますが、そこと連携しながら協力 をしております。5 番目は、後で申し上げますが、海外展開にかかわる政策課題への提言、ある いは検討を行って提言をしようとしています。 次のページに行きまして、 「原子力国際協力センター(JICC)との連携」と書いてありますが、 その下にありますように、JICC というのは、電力、メーカー、それから国からの支援も得まして、 2009年 3月に設立したもので、 原子力発電の新規導入国等に関する基盤整備の中核的な機関です。 これまでさまざまな機関が同じようなことをやっていましたが、それを一つにまとめて、ワンス トップサービスでこれをやっていくというのが目玉です。 絵にありますように、真ん中にJICCがありますが、右にある国際原子力協力協議会という経産 省、 関係省庁の下に関連の12団体が協議会を構成しております。 そことの連携をよく取りながら、 一番左にある外国政府からのいろいろな要請に JICC がここで一元的に窓口機能を持って活動を していくというものです。 次のページにいきますと、具体的にどんなことをやっているかということを書いております。 原子力発電の導入・拡大を検討、あるいは予定している国を対象にしております。これは国が何 らかの覚え書き、MOC、MOU、あるいは具体的な協力協定を結んでいる国々が対象ですが、そうい 13 う国々に対して人材の育成、あるいは知識の普及、あるいは法制度整備などを支援しています。 先ほど申し上げましたように、いろいろな活動を、より効率的、効果的に行うためにワンストッ プサービスで対応するということを目指しています。 具体的な協力内容は、専門家の派遣や研修員の受け入れ、現地でのセミナーやワークショップ の開催、それから展示会の開催等です。人材の育成、あるいは知識の普及に資する活動をやって います。 5 ページですが、原子力産業海外展開検討会というものをこの数カ月やってきました。この内 容は検討会の概要のところに書いてあります。UAE、あるいはベトナムの事例、経験というか、反 省を基に、われわれとして、日本国として何をすべきかということについて議論し、海外展開の 意義、先ほど来、意義が述べられておりますが、それらの意義を整理した上で、国への提言を取 りまとめたものです。そこにある柳井元駐米大使を委員長といたしまして専門家らで構成し、昨 年 10 月以来、検討を開始したところですが、昨年末に新成長戦略ということが打ち出されて、6 月ごろに取りまとめ予定ということになりましたので、そこに反映すべく、取りまとめのスピー ドアップをして、ほぼ取りまとめが終わって、近日中に提言を公開の予定です。官邸あるいは関 係大臣にこれを提出することを考えております。 内容的には、次のページにありますように、先ほど三又課長から説明があったこととほとんど 重複しておりますが、海外展開の意義を世界への貢献と国内的意義の二つの観点から整理し、国 への提言ということで、近日中に公表ということなので、ここでは一部頭出しをしているところ ですが、首脳レベルによる外交的な働きかけ、二国間の協力協定の締結を急いでもらいたい、輸 出許可発行の迅速化をしてもらいたい、原子力損害賠償等のリスクへの制度的措置をする必要が ある、導入国への金融支援というようなことです。このほか、幾つかの項目がありますが、今日 の段階ではこのぐらいにさせていただきたいと思っております。 以下、7 ページ以降はベトナムとの協力ほか、これまでやってきている活動を簡単に整理した ものです。私からは以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。それでは、これまでのご説明を踏まえた主な論点について、事務局 から資料 5についてご説明をお願いいたします。 ○三又課長 お手元の資料 5 の主な論点です。2 枚紙です。簡単におさらい的に読み上げさせていただきま す。1 点目の「原子力産業の国際展開」につきましては、第 1 に、わが国の原子力産業にとって 米欧(特に米国)市場は引き続き重要であり、わが国としても米国新規建設に対する公的金融支 14 援等の積極的な実行が必要ではないかと。その後、新規導入国を念頭に置いた点が幾つか掲げて ございます。1点目は、受注体制として国の一定の関与の下に、電力会社を中心として関係企業 も一体となった新しい体制の構築が必要ではないかと。 それから 2点目に、事業間でのリスク分担、公的機関によるリスクテイク範囲について検討・ 見直しを行い、公的機関の機能を強化することが必要ではないかと。 3 点目といたしまして、相手国の環境整備として、人材育成、国際展開に対応し得る国内の人 材育成といったものが必要ではないかと。また、制度整備の支援などを含めて、キャパシティビ ルディングについての取り組みの強化が必要ではないかと。 それから、ここからは原子力関連の貿易投資一般ですが、輸出信用の上限の見直しや、ODA や 世銀の活用といったもの、また、これは気候変動の枠組みの中で、現在、京都議定書の下では、 いわゆる CDMの対象から原子力は外されておりますが、海外での原子力プロジェクト参画から温 室効果ガス排出クレジットを取得できるような、マルチ以外の二国間なども含めて、そういうシ ステムの導入の議論が尽くされるべきではないかと。 それから、原子力産業の国際展開を図る上で、これは国内の問題ですが、事業者の価格競争力 を高めていくことが必要ではないか。 また、 部材製造などのすそ野産業の支援も必要ではないか。 それから、最後のところですが、原子力協定の締結が急務ではないか。また、原子力損害の補 完的補償に関する条約(CSC)への参加と、それにのっとった原子力損害賠償の国際的枠組み構築 というものが必要ではないかという点です。多岐にわたりますが、こういった点を掲げておりま す。 それから 2ページ目の「2.ウラン燃料の安定供給確保」につきましては、中長期的にウラン需 要がひっ迫する可能性に鑑みて、政府として引き続き、わが国企業による探鉱や開発・生産を積 極的に支援していくべきではないか。 また、海外の企業との戦略的提携も含めた濃縮・再転換能力の強化、それから国内での備蓄、 輸送ルートの複線化などについて官民で検討を進めるべきではないか。 また、これらを含めまして燃料サイクル分野での国際連携を強化すべきではないか。 それから、3 点目の「多国間の場における議論」ですが、原子力導入国が拡大していく中で、 平等な競争条件の確保といったものがあらためて必要ではないかということ、 それから核不拡散、 原子力安全、核セキュリティという、いわゆる3Sというものを犠牲にした形で価格競争が行われ ることを防ぐ必要がある。そのための環境づくりについて、国際的な場での取り組みを強化する ことが必要ではないかと。 それから、 今の 3Sの中でも安全については原子力利用国が最低限満たすべき安全上の要請とい 15 うものを国際的な共通基準として示すなど、安全面での IAEAの機能を強化すべきではないか。 最後に、原子力平和利用と核不拡散の両立のために、IAEA、GNEP 等の場で議論が行われている 核燃料供給保証の仕組みについて、その具現化を急ぐこと。それから使用済燃料の取り扱いにつ いても国際的枠組みづくりの議論を進めていくということについては、国として能動的・戦略的 に対応すべきではないかというようなことを問い掛け形式で書かせていただきました。 以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。それでは、ただ今の事務局および日本電機工業会、日本原子力産業 協会からのご説明につきまして、委員の皆さまからご質問、ご意見などをいただきたいと思いま す。 本日も大変多くの委員の方がご出席ですので、 ご発言は 3分以内でお願いしたいと思います。 また、ご発言の際にはいつもどおりですが、ネームプレートを立てていただけたらと思います。 よろしくお願いいたします。では長見委員、お願いします。 ○長見委員 資料 2 の 31ページですが、 主要国による二国間原子力協定の状況というところにかかわってく ると思います。全体的には、なぜこんなに日本が遅れてしまったのかというのはいろいろありま すが、 特にこの二国間の原子力協定の状況が新規導入国に対して非常に後れを取っておりますが、 どうしてこういうことになったのかということと、それから現状はどの程度進んでいるのか。交 渉中というものもありませんので、論点の中には出てきていましたが、締結が急務ではないかと いうような、のんびりした形になっているので、急務だったら何をやっているのでしょうかとい うようなことを教えていただきたいと思います。 ○三又課長 ありがとうございました。質問は後ほどまとめてでよろしいですか。では寺島委員、お願いし ます。 ○寺島委員 すみません。中座しますので先に発言させていただきます。産業としての原子力のシステム輸 出の方に論点が向かっているという状況は非常によく分かるのですが、例えば原子力政策の外交 エネルギー安全保障も含めた体系的なシナリオというか、その定見、覚悟のようなものがしっか りしない限り、他の国に原子力産業を輸出しようとしても甚だ限界があるのではないかと。 また、韓国ですが、盛んにトップダウン外交や、UAE での成功がいろいろな分析をなされ始め ていますが、私の視点からすれば、韓国は大統領府に未来構想委員会というものを置いて、韓国 は今、20 基ですが、ほぼ倍増に近い 19 基の国内での新設、この資料にも 6 基建設中となってい ますが、自らの国のエネルギー戦略上のベストミックスの中での原子力の位置付けということを 16 明確にしているわけです。そういう中で、日本自身のエネルギー基本計画における原子力の位置 付けというものがものすごく重要だと思いますし、未来構想委員会をベースに、原子力を新しい 輸出産業にという流れがUAEの成功につながってきていると見るわけです。日本国に置き換える ならば、内閣、政府一体となった原子力政策の体系性というものに対する明確な方向性がない限 り、 原子力産業だけを成功裏に輸出させようなどということは、 うまくいかないのではないかと。 とりわけ私のところに、例えばイランの大使などがやって来て、話を聞いていると、IAEAにお ける日本の役割が非常に重要になっております。イラン、北朝鮮の核をにらんだ文脈での日本の 核不拡散や原子力安全管理の問題に関する戦略性というものが、ものすごく問われております。 このあたりと燃料需要確保、ウラン鉱石といった、外交、エネルギー安全保障にかかわるところ での踏み込んだ識見というものが、ものすごく問われているわけです。ここなくして、産業とし ての原子力輸出を海外にうまく展開しようなどということは、うまくいかないのではないかとい うことを、やはりわれわれ自身がしっかり、バランス良く考えなければいけない中にあるという ことだけ発言させていただきます。 ○三又課長 ありがとうございました。秋元委員はいかがでしょうか。 ○秋元委員 今、寺島委員のお話になられたことに、まさにもろ手を挙げて賛成です。やはり日本として、 どちらの方向へ行くのかという明確な位置付けといいますか、ロードマップやビジョンがはっき り示されないまま国際展開をむやみにやろうとしても、これはとても無理だと思います。特に韓 国、フランス、あるいはロシアなど、今、国際展開に成功しているところは、ほとんど一領域が 一企業、 あるいは一団体で、 国と民間との境もはっきりしないというような一体性の高い国です。 日本はそれとは全く違う形をとっているわけで、それはそれで日本としていい面もたくさんあり ますし、それを生かしてこれからやっていかなければいけないわけです。こういう国々に太刀打 ちするためには、日本の中でよほどの求心力が働かないと、成功はおぼつかないのだろうと思う のです。 日本のお役所は、官僚の方たちも本当に一生懸命やっておられますが、やはり行政が部分適合 というか、おのおのの省庁の中での適合というところでストップしてしまって、国益としての全 体適合に行きつく道筋がはっきりしていないというところがあります。本来はそれを政治が束ね なければいけないのでしょうが、束ねる政治のビジョンもくるくる変り、しかも腰が引けている というようなところが問題なのだろうと思います。 例えば二国間の原子力協定の結ばれ方にしましても、31ページにも出てきておりましたが、よ 17 その国との実績の差はまさに歴然としています。日本の場合には相手の国との間で具体的な案件 が進み、協定を結ばないとどうにもならないというぎりぎりのところまでいかないと、外務省は 動きださないというところがあります。その段階からはじめたのでは、結局よその国に何年も遅 れてしまうということになるわけです。やはり国が方向性を打ち出して、その政策に基づいて原 子力協定などについても前広に、あるいは前向きに進めていくというような姿勢が必要ではない かと思います。 この会でも文科省の方や内閣府の方が出てきておられますが、 国際問題を取り扱うのだったら、 外務省の方にも出てきていただいて、これだけの立ち遅れを一体どうしたら回復できるのか。国 のシステムを、どのように構築していったらいいのかというようなことについて、もう少しきち んと議論していく必要があるのではないかという気がいたします。 それからもう一つ問題だと感じるのは、日本はどちらかというと原子力を個々の技術や物とい う形でとらえてしまう傾向があって、トータルシステムとしてとらえようとする志向性がありま せん。そのため、なかなか総合戦略がまとまらないというようなところがあります。今のような やり方でも、軽水炉の設備や機械を売る、あるいは下請け工事を受注するというレベルで満足す るのであればいいかもしれませんが、日本ならではのシステムにまとめ上げる力を築き上げない 限り、なかなか国際商戦に勝てないのではないかという感じがします。今日は最初に原子炉の問 題がずっと提起され、そのあとで、ウランの資源の問題と別個に取り上げられて来ましたが、実 は資源問題と原子炉開発とは有機的に関連がある。 日本のような無資源国もほかの列強と互して、 国際管理、燃料の供給保証というような分野でもきちんと貢献して、いろいろな国から評価して もらわねば、日本の受注につながらない。だから今から出遅れを、取り戻そうということで、海 外ウラン資源の獲得競争に一生懸命励むというのも結構かも知れませんが、私はやはり日本の本 来は、サイクルの技術をきちんと確立して、技術によって国産の資源をきちんと確保出来るかど うかにかかっている、 と考えます。 ようやくプルサーマルで国産資源が少し出てくるわけですが、 海外から買ってくるウランは国産資源ではないわけです。それをサイクルに回してはじめて国産 資源となるのです。更に高速炉サイクルまでいけば、世界には160 万トンというような劣化ウラ ンがたくさん余っているのですから、ウラン資源を掘り出す必要はなくなってきます。余りもの を資源に出来れば、無資源国のハンディはなくなります。無資源国で非核兵器国の日本はこうい うところでリードをしていかなければいけないのだろうと思うのです。 次回には燃料サイクルの問題など取り上げていただけるのかもしれませんが、私としては、こ ういう国際戦略の中にも、一体性を持って燃料サイクルの問題を組み込んでいただきたいと思い ます。 「もんじゅ」が動きだしますが、JAEA(日本原子力研究開発機構)では FaCT 計画が始まり 18 ます。東芝や三菱重工など、いろいろな会社でも、それぞれに新しい次世代の高速原子炉のアイ デアなどもが新聞をにぎわしているわけですが、こういうものが一つの方針のもとにロードマッ プというような格好に仕上がって来ないのです。そういう意味では原子力委員会も主導的役割を 発揮しておられるとはなかなか言えないのだろうと思います。 経産省も文科省も内閣府も一体となって、原子力全体のビジョン、ロードマップを策定してい く、それを着実に進めていくというような問題意識で、解決を図っていただければ大変ありがた いと思います。 ○田中部会長 ありがとうございました。内藤委員、お願いします。 ○内藤委員 ありがとうございます。今、秋元委員、寺島委員がおっしゃったことと同じようなことを思っ ておりましたので、その点を簡単に申し上げさせていただきます。日本の外交基本スタンスとし て、核不拡散、核廃絶ということはぶれない形で、一貫して堅持することが必要だと思いますが、 併せて平和利用と軍事利用を峻別して、平和利用の部分についてはビジネス展開の現実を踏まえ て、新規導入国のニーズに応じて、少なくとも米欧等と同水準のプラクティカルな行動を取って ほしいということです。 こんなことを申しますのは、原子力委員会の専門部会で昨年議論しましたときに、インドはNPT 非加盟国だからということで、必ずしも外交的、一体的な議論にならないのが見えました。従っ て、国内での基本方針を閣僚ベースで政府が一体となって合意し、実行すべきだということを、 繰り返しになりますが、お願いしたいと思います。 3Sの実行のためのシステムの透明化と、 IAEA 監査のレビューの徹底について優れた運用実績を もつ日本の制度、体制、技術というものを、国際モデルとして世界にもっと意欲的に提示して、 平和利用の国際的規範として新規導入国に求めるということを前向きにおっしゃっていただけな いかと思います。また、キャパシティビルディングについての支援を行うことも重要です。 二国間原子力協定等についても、いろいろな国が資料に出ておりますが、そのニーズの強度を 精査して、プライオリティを付けて迅速に交渉を進めるということを考えてほしい。例えば後で 申しますように、サウジアラビアは既に原子力新設のFS について、われわれ(エネ研)に依頼を してきているわけです。現実にそういうことをしてきているというところがあるということで、 ニーズのプライオリティを把握してほしいということです。 2 点目は、国際事業推進のための体制整備と国の支援強化ということですが、これは先ほどお 話のあった原子力部会国際戦略検討小委員会の昨年の議論、あるいは先ほど来の澤副委員長、服 19 部委員長のお話で、議題はほぼ明示されていると思いますが、お願いは、今やアクションの時期 であり、実行に移してほしいということです。 追加的に何点か申し上げますと、国際的なビジネス展開に当たっては、原子力発電設備と核燃 料をセット供給するということが一般的になっているということを踏まえて、国は核燃料サイク ル確立のための体制整備にさらに力を入れてほしい。それから、国内の備蓄のほかに、先ほど来、 話のあった IAEAとロシアの核燃料バンクの活用等も検討すべきですが、それと並行的に、日本と の地理的条件から見て協力余地のあるロシアとも濃縮ウラン備蓄、使用済燃料の貯蔵・処分等を 中心に議論を深め、互恵的な協力体制の構築を行うというような外交戦略もぜひお願いしたいと 思っております。 日本の技術の持続的発展の強みを国際的に力強く表明するためにも、日本の原子力建設の目標 は意欲的なものを示すべきではないかと思います。 前回も私は11∼12基必要だと申し上げました が、これは既に 2018 年度までに計画されている 8 基に加えて、2020 年度までの計画ある 3 基を 含む11 基が必要だと思います。 少なくとも2020年までに確実性のある9基にしていただきたい。 しかし先日提示されたエネルギー基本計画の目標でも、まだ20 年 8基といっております。これで は韓国に非常に劣後するということがあまりにも見えすぎるということで、基本計画の原案も含 めて意欲ある目標を設定していただきたいということです。 民間サイドでも、先ほど来の体制整備という点で、プラントメーカーの持つ生産力と、電気事 業者の持つ設計、建設、運転のノウハウを一体としたプレーヤーの形成が必要だということを皆 さんおっしゃっております。これについては、政府主導でアライアンスを作りましたというご説 明ですが、それは新体制の一歩にすぎません。これを国際的に存在感のある、かつ実態のあるプ レーヤーに発展させるという産業体制問題に本質的に手を入れてほしいと思います。 その場合に、 PWR と BWR の双方に対応できるということもして欲しい。また、そのプレーヤーの組織文化を見 ても、日本は電力会社さんの内部でも戦略策定組織と現場の間でどうも温度差があるように思い ますので、本当に国を挙げての一体化というのであれば、組織内の文化の一体化ということもお 願いしたいと思っております。また原子力のすそ野産業ということで、200 社以上ある関連中小 企業についても有機的な一体化をお願いしたい。 国際展開を導入国のニーズに応じて、スピーディに対応に当たる体制を作るべきだということ で、技術の点から申し上げますと、これまでとはさらに違う発展があると考えております。日本 では 150万ないし 180 万 kWの大規模電源に目が向いておりますが、新興導入国の多くは最長100 年間、燃料交換も不要な50 万 kW以下の小型炉のニーズが強いのではないかと思います。先日、 新聞に取り上げられた東芝・ゲイツの共同開発のほかに、私自身も直接、そこの経営者といろい 20 ろ議論しておりますGeneral Atomicsの TWR の開発等、既に一層の具体的進展をして特許等を取 っているものもあります。日本もこのような分野にもっと目を向けて努力するべきではないかと 思っております。 それから、先ほど申し上げましたように、新規導入国でロードマップ、キャパシティビルディ ング等の事前のプランの策定とサイトの選択を含むFSをやってくれという要請が、 最近諸外国か ら複数、エネ研のところにも来ております。原子力導入は大規模プロジェクトであるため、FSと 受注を分離するというのが一般的な慣行になりつつありますので、日本でも FS段階から関与し、 国内での情報共有が進むような役割分担も深めていただきたいと思います。以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。続きまして八木委員、お願いします。その後、西澤委員、河野委員、 山名委員と続きます。よろしくお願いします。 ○八木委員 ありがとうございます。関西電力の八木です。電気事業者として、原子力発電の国際展開につ いて意見を述べさせていただきたいと思います。まず、国際展開の意義は、先ほど、ご説明があ ったとおりで、われわれ電気事業者としても日本の原子力産業界が国際展開することは、世界的 なエネルギーの安定供給の確保や地球温暖化対策、ならびに、特に東アジア地域の経済発展の貢 献などにもつながって、大変意義深いものと考えております。 また、 国内の原子力産業が活性化し、 それによってメーカー等の経営基盤が安定化することで、 技術力の維持や優秀な人材の確保にもつながります。ひいては国内プラントの建設や保全の充実 にもつながるということで、大変意義深いものと考えております。 私ども電気事業者といたしましては、これまでの取り組みといたしまして、主として人材育成 という観点から、原子力の新規導入国や導入拡大国に対して、これまで培ってきた経験やノウハ ウを生かして、さまざまな形で協力をしてきたところです。具体的にはベトナムや中国などから の研修生の受け入れや相手国への講師派遣などを行ってきました。これは今後も引き続き、国、 関係機関と連携を取って協力を行っていきたいと考えております。 現在は、日本によるベトナムでの原子力発電プロジェクトの受注に向けまして、日本原子力発 電株式会社を実施主体とした原子力発電導入の可能性調査、いわゆるフィージビリティスタディ を受注すべく取り組んでいるところです。電気事業者といたしましては、ベトナム等のプロジェ クトの受注に向けまして、官民一体となって、相手国のニーズに応じた形で、日本の経験やノウ ハウを生かして、できる限りの貢献をしていきたいと考えているところです。 そこで、事業者としての国へのお願いですが、先ほど来のご説明の中にもありましたように、 21 特に新規導入国に原子力発電を輸出する場合には、二国間の原子力協定の締結、あるいは安全規 制の整備とともに、民間では負い切れないカントリーリスク等への備えが大変重要であると考え ておりますので、ぜひこれらに関する国の積極的な対応、またはご支援をお願いしたいと思いま す。 また、韓国やロシア、フランスの戦略を見ておりますと、他の民生分野やエネルギー全般にわ たる支援とも併せた、二国間の長期にわたる関係の構築が大変有効と考えられますので、これら の点につきましても政府一体となったご検討をよろしくお願いしたいと思います。 電気事業者といたしましては、世界の原子力発電の維持・拡大に貢献していくためには、まず は何よりも国内の原子力発電所が安定した運転実績を積み重ね、国際的に信頼が得られるという ことが重要であると考えております。その実現に向けて日々努力してまいりたいと考えておりま す。私からは以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。それでは西澤委員、お願いします。 ○西澤委員 私からは 3 点申し上げたいと思います。1 点目は、相手のニーズに応じた柔軟な体制、取り組 みが必要ではないかと思っております。特に新興国の原子力の導入に関しましては、国ごとにニ ーズが違っていると思っております。EPC といわれるエンジニアリング、調達、建設で十分とい うところもあれば、プラス、オペレーション、いわゆる運転等の操作等も含めて、EPC プラス O (Operation)も望むというところもあります。従って、受注活動については、その相手国のニー ズに併せて、先ほどプライオリティを付けるというお話もありましたが、そこをよく調べて、柔 軟に対応できる仕組み、取り組みをしていくことが良いのではないかと思っています。 一方、電力には国内の関連企業を束ねるという機能が期待されていることは重々承知しており ます。新興国への原子力導入に関しましては、特にプラス O、すなわち運転を求めるプロジェク トに対しては、電力の強みを生かして、メーカーさんと一緒になって対応していきたいと思って います。 2 番目はリスクの限定ということです。民間事業者の国際事業にはリスクがつきものです。国 際入札に当たっては、プロジェクトリスクを事業の収益に見合ったものに抑え込んでいくという ことが重要です。収益を度外視してリスクをテイクするということは、民間としてはあり得ない というのが基本です。原子力発電所を既に持っている国での原子力プロジェクトは、日本のメー カーも進出しておりますし、知見もございます。規制などの予見可能性が高いため、いわゆる経 済合理性に基づき判断できる、ビジネスとして戦える環境にあると思っています。 22 他方、原子力新興国、新規の導入国につきましては、政治や制度、規制や金融など、いろいろ な面からプロジェクトリスクが高いということが言えます。リスク対策はコストを押し上げ、入 札価格が上がることとなります。価格競争力が勝負の入札におきましては、民間が取ることが難 しいリスク対策などについて政府の支援が不可欠であると考えております。 最後に規制の国際協調性、調和性というものについてコメントさせていただきます。先ほど基 数の話もありましたが、稼働率や点検日数が国際的にいろいろ評価されるということも十分あり ます。事業者自身の取り組みが大事であるということに加えまして、安全規制などにつきまして も、科学的・合理的で、国際的に調和のあるものになるよう、再起動の基準やオンラインメンテ ナンスについての検討も進めていただきたいと思います。また、導入が検討されているプラント の安全評価の手法についても、国際的尺度をそろえていくことも重要かと思っております。 新規導入国に対する支援におきましては、法整備や規制システムをセットにした国際展開を可 能とするためにも、国内の安全規制を国際的に調和のあるものにしていくことが有用である、大 事であると考えております。IAEAは、国際ルールづくりも行っておりまして、いろいろな振興支 援策も重要テーマとして取り組んでおります。国別、地域別の技術協力プロジェクトや、インフ ラの段階的整備の支援等、いろいろ行っております。これまで国の方で、IAEAの積極的関与を進 めておりますので、今後とも国のこのような関与は極めて重要であると思いますので、よろしく お願いしたいと思います。 ○田中部会長 ありがとうございました。では河野委員、お願いします。 ○河野委員 八木さんと西澤さんの発言で、ようやく本日の部会の焦点に当たるところに議論が集中してき ました。総論とは違っているから、本日のテーマはこの 1点だから。事務当局が用意した論点の 中で、アメリカやヨーロッパは別ですが、新興国に導入を進めていく場合に、 「国の一定の関与」 という言葉があります。一定の国の関与の下に電力会社を中心として、電力というのは関電と東 電ですよね。一体となってこうこうということが書いてあります。 八木さんは随分包括的なことをおっしゃって、あれはあれで論旨は当然ですが、西澤さんは珍 しく、もっと踏み込んだ議論をやりました。それはそれで、 「なるほど、そういうことか」という、 問題提起としては理解可能な話です。 要するに一言で言えば、先ほど副大臣が言ったように、オールジャパン体制で内閣の方針とし て、インフラ関係の事業をまとめて輸出すると。その中の一つは原子力だよ、成長戦略の一環と してやろうという意識がありますよと言っているのです。しかし、あの中にいろいろ書いてあり 23 ますが、原子力輸出ぐらいリスクの大きな、いろいろな問題をはらんだものはないのです。これ はほかとは比較にならないのです。だからこそ、ここで今もうちょっと突っ込んだ議論をやろう かということになっているのでしょう。 伝えられるところによれば、関係者は全部分かっている話なので、いろいろな方が随分とあい まいを意図して話していらっしゃることがよく分かります。 要するに議論はなかなか進みません。 国はどれだけリスクを取るのか、どういう形をとるのか。関電、東電は一体どこまでリスクを負 えるのか。総体として進めるためには、金融の話から保険の話から全部含めて、そこのところの 議論が尽くされていません。 ベトナム相手が取りあえずで、 後にタイやインドネシアが続くので、 1 年間ゆっくりやりましょうという話ではなさそうです。どう考えても、暑くなるシーズンぐら いには関係者が話を鋭意詰めてもらわなければ、絵に描いたもちになります。そういう時間的な 制約もあります。官と民の間の意見のすり合わせは明らかにまだできていない。現在、進行中だ からです。しかし、造らなければいけないことは明らかです。難しいからどうだこうだと注文を 付けるのはいとも簡単ですが、やらなければならないことはやらなければならないのです。内閣 の首班が変わるとか、そんなことは関係ない。 そういうことを含めて、田中部会長にお願いしておきたいのですが、具体的なリスクをどのよ うに分け合って、みんなが納得していけるかという1点で議論を集約しなければ、総論をいくら やっても意味がありません。 今回はですよ。 そのように議論がだんだんそこに集中しているので、 いよいよウェルカムな状況になりつつあります。せっかくそこまで来たのだから、これから発言 する人も、それについてしっかり議論をやってもらえればありがたい。今は忙しいので、また、 総論に戻って広範な知識を披露されるのは、ほかのところでやってもらいたいと思う。今は忙し いのだから。ということを申し上げておきたい。 ○田中部会長 ありがとうございます。リスクのところは一番重要でして、今のことに関連して、順番を変え て先に発言したいというような方がおられましたら、 お願いしたいと思いますが、 いかがですか。 では内山委員、お願いします。 ○内山委員 実は私も河野委員と同じような考え方で、それに関連したことを述べさせていただこうと思っ ていました。今回の報告は国際的な視点から調査されていますが、まとめ方はかなり内向きに感 じます。これはリスクを回避したいという考えが基本的にあるのだと思います。特に資料5の主 な論点を読むと内向きの対策のみで、いかにリスクを避けるかが述べられているような文章なの です。大事なのは、やはり相手国の立場を考えた対応策で、それが本来、市場を取るためには一 24 番大事なのに、それが抜けている。そこが基本的な問題ではないかと思います。 これは日本が技術立国として国際貿易で成り立っている以上は、リスクというのは常につきも のであって、現に今、アジアに進出している多くの企業の一番成長しているところはリスクを抱 えながら進出しているわけです。そういう姿勢が原子力の産業の中にない限り、多分市場は取れ ないのではないかという気がするのです。 資料 3のメーカーの方の提言ですが、見てみると、国への依頼がほとんどです。メーカーの協 力体制というのは一体どうなるのだろうと。日本の特徴ある原子力技術というのはどのようにな っていくのだろうと。韓国が成功したというのは、やはり韓国型の原子炉をきちんと造って、こ れは自分の国のオリジナルな技術ですよという売り込みがはっきりしていたのです。そういうも のが国際社会では評価される面があるのかなと思います。フランスもEPRで、そういう政策をと っていると。それに対して、日本の原子力技術というのは何かというところが、やや明確でない ような気がしています。 最後、資料 2の最初の方です。これは私の提案で、核不拡散の問題ですが、思い切って国内に 国際核不拡散機関、あるいはセンターを作ったらどうかというのを提案したいと思っています。 日本は原子力の保証措置や物的防護技術というものは非常に優れたものを持っています。 しかし、 それがなかなか海外で生かされない。あるいは、せっかくあるいいものが世界に貢献できない。 それはいろいろなところで議論になっているように、国際的な標準化を図る面で弱い面がありま す。あるいは人材育成も個別でやっていますが、体系的になされていないということが考えられ ます。そのためにも、新しい機関を作って、あるいはセンターを作って、そういった標準化、あ るいは人材育成を集中的に日本で貢献していくというようなことをすれば、日本のステータスは 非常に高くなっていくのではないかと思います。以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。多分山名先生の発言も、これに関係するかと思いますので、よろし くお願いします。 ○山名委員 何か指定されてしまったようで。では、河野委員が非常に重要なところをおっしゃるので、そ れについて一つ申し上げたいと思います。私は、この問題は単なる国際的な産業展開の話ではな くて、ある種の日本の技術セキュリティ問題というようなとらえ方をしています。なぜならば、 わが国の原子力技術が海外に広がるということは、共通の技術の母体が広がっていく。いわゆる 大フリート化という形で、一種の国際標準というものの中心にわれわれがいることを確保できる わけです。これはものすごいメリットであって、それは異常に対する対応が早いとか、あるいは 25 異常に備えることができるとか、あるいは新たな展開を導くことができるといったいうような意 味で、そういう一種の技術アライアンスを広げるということが、わが国の技術セキュリティ戦略 としては非常に重要だと思っています。 先ほど韓国に負けたという議論をしましたが、実は韓国の原子力技術というのは、まだそんな に成熟していないのではないかと思っています。先ほど技術自給率の話が出ましたが、かなりの 部品は海外から入れているし、韓国は多分ある種のビジネス戦略として、かなり無理に出ていっ ているということは間違いありません。やはり最後は技術の信頼性が物を言うわけです。例えば 燃料の照射データを持っているかとか、機械の故障率のデータを持っているかとか、高品質のも のを造れるかというところに最後はかかってくるわけです。これをわが国が死守するという姿勢 がものすごく大事なのです。そうしてみますと、技術セキュリティであれば、これは単なる経済 産業省だけの話ではなくて、科学技術戦略なので、文部科学省も当然かかわってきます。それか ら、当然この条件として外交が入ってくるのならば、外務省も入ってきます。 ということで、原子力技術が本来どうあるべきか。当然、先端技術のような高速増殖炉なども かかわってきます。わが国がしっかりとした高速炉を持っているとか、核燃料サイクルをやって いるということが、ものすごい大きな話として関係してくるはずです。ですから、単なる物の輸 出ではなくて、日本の原子力がどうあるのかということを政府一体で考えるというのが河野委員 のご指摘で、まさにそのとおりだと思います。 そうであれば、恐らく具体論としては、政府の中にそのように本来、原子力、あるいは原子力 技術戦略にかかわる部署が一堂に会して、中核的戦略室(Strategy Center)のようなものをつく って、これからの戦略を考えるぐらいの取り組みをしていかないと、結局ばらばらになって、単 なるビジネスになったり、単なる環境交渉になったりするということが一番懸念されます。 ですから、やはりここで政府が恐らくリーダーシップを持つと思いますが、横断的に、包括的 に、そういった全原子力ストラテジーとして、この問題をとらえる中核的組織を持つぐらいのこ とを求めるということが、僭越ですが、やはり要るのではないかと私は考えます。 それから、 もう一つ付加的に申し上げたいことがあります。 資料2の10ページを見てください。 ここに今後の原子力発電の拡大見通しの絵があって、丸が書いてあって、非常に分かりやすいで す。ちょっと注意していただきたいのは、この中の大きな丸の大半は核兵器保有国で、核燃料サ イクルの、ある種のサービスの能力を持っている国です。この中で、核燃料サイクルのサービス を持たない国は、中近東の小さい丸と、東南アジアの小さい丸と、南アフリカと南米になります。 こういった国のフロントエンドはウランのやりとりのビジネスなので、何とかなりますが、バッ クエンドがどうなっていくかということが、ものすごく重要な話になってきます。わが国は「で 26 は引き取って処理します」なんてできるわけもなく、結局ある程度、その国での中間貯蔵まで技 術的に協力していくとか、あるいは、いわゆる国際使用済核燃料管理構想をもっと積極的に、わ が国がリーダーシップを取って進めて、国際連携でしか、ここのバックエンドはカバーできない のです。わが国の実力だけでは、今はちょっと無理です。 そうであれば、国際核燃料管理構想というものを、わが国がもっともっと積極的に主張してい くということが本来あってもいいだろうと思います。 これはIAEA の中でのわが国のステータスと も関係してくる非常に重要な課題ですので、先のことはさておいてというビジネスではなくて、 先ほど言ったように、包括的原子力戦略として、国際核燃料管理も含めた取り組みが日本で必要 だろうと思っております。以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。大学の先生が続きますが、大橋先生、また別の観点から、よろしく お願いします。 ○大橋委員 ありがとうございます。もう資料とか先生方の意見でいいと思いますが、2∼3気付いたことを。 この会のまとめとしては、資料5の主な論点というものの「ではないか」というのを取れば、全 部それでいいと思いますが、全般に何か悲壮感が漂っていて、別に死ぬわけではないというよう な心得も少し必要な気がします。もう少し柔軟性や戦略性というものを持たないと、中学生がや るサッカーのように、ボールのところへ集まっていってボールに触れず、またボールが行ったと ころに走っていくというようなことがあり得るかなという感じがします。 2 点目は、内山先生の核不拡散センターというのは私も大賛成で、広島、長崎みたいなところ へということも感じますが、もう一つ、国際標準という話がありました。これが日本人は遺伝子 的に極めて苦手で、必要だという話は学会など、いろいろなところで出ますが、よほど思い切っ て、国が関与するような機関や行政のリーダーシップでやっていかないと、なかなか世界のリー ダーシップは取れないような気がします。 そこで大事なのは、安全の話はいつも出てきますが、どうしても欧米流の安全、要は性悪説に 基づいて、 契約ベースでということでアジアや中近東がどこまでいけるか、 日本も含めてですが、 そこがちょっと心配です。新しい安全の枠組みをアジアに提案していくというようなことを考え てもいいような気がします。 最後に、先生方のご意見で、日本の国内のロードマップがはっきりしないのに、国際展開を考 えてもというのは、私も全く賛成ですが、ちょっとこれを逆説的に見ると、国内がなかなか動い ていないところを、国際展開をするのでわが国をというように・・・。これは何を申し上げたい 27 かというと、日本人というのは国際ということに明治以来弱くて、例えばワールド・ベースボー ル・クラシックやフィギュアの国際大会になると、日本人は日本人をということで、割と統一感 が生まれるようなところを逆に利用して、国際へ出ていくために国内の、例えば現実的には雇用 の創出や人材の育成ということもかかわってきますので、国際と国内を両方相対しながら、利用 という言葉に悪意はありませんが、共に利用していくような協調性を考えていくといいのかなと いう感じはしました。ありがとうございました。 ○田中部会長 ありがとうございます。では、先ほどのリスク、あるいは企業展開、外部展開といったあたり のご専門かと思いますが、佐々木委員、次に末次委員、末永委員からご意見をいただきたいと思 います。まず、佐々木委員からお願いします。 ○佐々木委員 ありがとうございます。今日の資料のご説明の中では、私は資料 2の 35∼37ページの幾つかの 教訓があって、わが国の課題が37 ページに書いてあります。その辺のところを資料5で、かなり うまくまとめられていると拝見しましたが、一つだけ申し上げたいことがあります。それは何か というと、資料 2の 37ページのところにも書いてありますが、いわゆる日本の原子力にかかわる 技術などをいろいろ売り込むという場合、相手国のニーズというのは、37ページの一番下の 4の ところに書いてありますように、非常に多様だと思うのです。これは先ほどの事務局のご説明に あったように、単に原子力を超えているという点も出てくる可能性が十分あると思います。その ときに日本の体制は、ここでは原子力部会ですから、電気というか、エネルギーの話が中心です が、それ以外にも日本はいろいろ強みを持っていると思います。つまり、上水道の技術、下水道 の技術、それから海水の淡水化から始まって、新幹線等々、公共交通の技術もあるし、環境関連 もあります。農業や緑化など、いろいろあります。そういうことに原子力部会だからといって触 れないというのはどうなのかと思います。相手国のニーズに合わせてわれわれがといった場合に は、やはりそういうような、いろいろなニーズにも応えられるような体制を持って整えていくと いうことが必要なのではないでしょうか。それがパッケージ型の提案能力や体制づくりというこ とになるのではないかと思います。 そうすると、資料 2 の 37ページの一番上の 1の受注体制、あるいは資料 5の 1 ページの、幾つ か丸がございますが、上から2番目の丸のところにも同じようなことを書いています。電力会社 を中心にする一元的な体制というか、新しい会社というものだけでいいのかなと思うのです。で すから、もしかしたら水の話も出るかもしれないし、公共交通の話も出るかもしれません。そう すると、もちろん原子力を売ろうというのですから、電力会社が中心になるのはいいですが、電 28 力以外、あるいはエネルギー以外、いろいろな多様なニーズにも応えられるような体制を作って いく。それこそがパッケージ型というか、包括的というか、そういうものではないでしょうか。 そうすると、日本を考えると、いろいろな官庁をまたいでいますから、韓国の場合は大統領府 の中に国際展開を担当する部署を作っているという話を聞きますが、日本も同じように、いろい ろな省庁を超える、それを束ねることができるようなオーガナイザー的な組織というか、機構が 要るのではないかと思います。以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。それでは末次委員、お願いします。 ○末次委員 ありがとうございます。河野委員が集約的におっしゃった点が確かに一番大事だと思います。 現実に大変新しい提案が事務局から行われているので、そのことについて一体どう考えるかとい うことが一番大事だろうと思います。やはり委員としては三つ考えてみなければいけないと。一 つは、いろいろな国のニーズに対応し、それを乗り越える受注ということを現実に市場で確立す るために、それに対処する産業体制と公と民のかかわり合いについて新基軸が必要だとおっしゃ っております。かなり具体的にフレームワークも出ております。そのことについてどう考えるの かという点です。いわゆるオールジャパン、国の関与を前提として考えて、いろいろなタイプの 国の原発プロジェクトを受注するために、受注というのはオペレーターか、メインコントラクタ ーなのか、その辺の定義も、もうちょっとやっていただいた方がいいと思いますが、何をターゲ ットに市場の競争で勝ちを取りにいくのかというターゲットについて、もうちょっと具体的に書 き込んでいただいた方がいいと思います。そのための方法論として、電力会社を表に立てて、メ ーカーや商社など、いろいろあるのでしょうか、幅広いすそ野産業が一緒になってやっていくと いう、電力会社の一種のコーディネーター機能を表に打ち出していこうということです。 そうすると、今までのケースとしてあり得ると思うのは、アブダビ戦争におけるフランスの最 初の形です。スエズという民間電力会社と、アレバという、国営ですが、日本にない形のメーカ ーが比較的少数で組んで対処しました。しかし、それがうまくいかないというので、最終的には 日本にはない形の国営電力会社が表に出たという格好です。この形は、現段階においては一つの レッスンケースになりますが、これはどういうことだったのかということは、フランスは変えた わけですから、成功しなかった、負けたケースでしょうが、それを日本は取ろうとしているのか ということについて答えを出さなければいけません。 それから、韓国型というのは日本の場合、在りようがありません。そうすると、日本型の問題 点というのはソウルオペレーターというか、ソウルコーディネーターにする電力会社というもの 29 の国際経営戦略というのが、社の内外において、どのぐらいはっきりしているのかということを 相当議論しないと、期待したプレーヤーが期待どおりに動かないということがあります。また、 電力会社といっても、対国際大メンジョンで多様ですよね。この多様性というのをどう考えるの か。それから P型に特化しているところもあるし、B型に特化しているところもある。それから、 複数で電力メーカーがコーディネーターをやるといった場合、それぞれの電力会社の関係が非常 に複雑ですよね。フランチャイズ制から来る複雑性など、いろいろないきさつ、広域運営上の関 係など、その辺を一体どう考えるのかということを議論しないと、結構それはイニシャルな問題 だと思います。その辺の構造問題があるので、この体制が本当に成功し得るケースとして、われ われが推奨できるのかどうかという点については、できるだけ早く、もう少し突っ込んで実際に 世論形成を行った方がいいのではないかという感じがします。 それから、何といっても今みんなが分かるのは、海外展開についての公的なリスク対策を相当 強化しなければいけないだろうということは、フランスのケースを見ても、アメリカ、韓国のケ ースを見ても言えると。そうすると、ここでは36ページか37 ページの、佐々木委員も今ご指摘 されたところについて、具体的にわれわれは評価する必要があるのではないでしょうか。これで 全部が大体カバーできているのかどうか。主要なものがリスクヘッジ対策としてメニューアップ されているかどうかという点について、やらなければいけない。 1 点、分からないから気になるのですが、仮に電力会社をソウルオペレーターとしたときに、 このリスクヘッジのメニューで、 電力会社は10 年間にわたる対某国参与経営計画というものは立 てられますか。そこが非常に問題だと思います。というのは、その話は10 年がかかります。先ほ ど澤委員がおっしゃったように、最初からシステム輸出ということが問われる体制になっている わけです。単機ではなく、システムです。そうすると、O&M などは電力会社が得意かもしれませ んが、最初のどの段階かというのは、言ってみれば商社的な機能が相当あるはずです。しかし、 残念ながら日本の商社は相対の競争が非常に激しくて、オールジャパンやナショナルに対して、 複数で協力しながら、自分のノウハウを全部出しながらやるということが得意ではない。メーカ ーもしかりです。ですから結局、形としては非常に少数の電力会社が一つのグループをして、世 界で生き残った三つのメーカーのうち、どこかと組むと。そして、それぞれのニーズの違いに応 じて、それぞれのグループがやっていくという形を考えないと、なかなかコンセンサスが得られ ないのではないかという感じがします。以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。続きまして、末永委員。 ○末永委員 30 ありがとうございます。今日は原子力の国際的課題、国際展開ということですが、この辺は本 当によく分からないので、後で若干申し上げます。最初に、前回の22 回のときに、地球温暖化対 策基本法のスケルトンを見て、原子力の「げ」の字も出てこないではないかと文句を言いました が、その後、かなりきちっと出てきたということは非常に評価したいと思います。 今日の原子力の国際展開は、三又課長からご説明のあったとおりだと思いますが、特に、最初 にご発言された方も私と同じような感覚を持ったのだと思いますが、 資料 5で、 「必要ではないか」 とありますが、これは簡単に言うと全部必要なのです。これらをどうするかだと私は思います。 内藤委員がおっしゃったように、まさにこういうものを、それぞれがアクションを起こすべきだ と。つまり、いつ誰がどのようにやるかです。いつというのは、早急にやっていかなければなら ない問題も非常にありますので、この辺はきちっとしたタイムテーブルを作ってやっていかなけ ればいけないだろうし、あるいは誰がというのは、若干批判的におっしゃった方もいますが、国 内のメーカー等から、国に対しても、こういう要望が上がってきているということを見ても、か つて原子力立国計画に三すくみは解決しなければいけないとなったわけですから、まさに国と電 力業界とメーカーが本当に一体となってやっていくような条件、 環境を整備しなければいけない。 どのように行うかということになりますと、まさにそういったものを、そういう状況を作った 中において、早急にそれぞれの課題に対して対応していくというようなことをやるべきだろうと 思うのです。 先ほど副大臣がおっしゃいましたが、UAE においてなぜ敗北したのか、何が原因か、何をなす べきか。これはもうだいぶ明らかなのです。ですから、原因が明らかで何をなすべきかというこ とが分かっていれば、次の課題というのは主な論点の「必要ではないか」というのを「必要であ る」という形においてやっていくべきだと、正直なところ、思います。 その場合に今、末次委員、あるいは佐々木委員もおっしゃいましたが、対象国となるところを 大きく三つのグループに分けて、それぞれどういう状況なのかということをいろいろ分析されて おります。ただ、この場合、確かにわれわれの方からの分析であって、それぞれの国々、特にこ れから新規に導入する国々がどういったニーズを持っているかというあたりの分析はやや甘いの ではないかと。この辺は、それこそ資源エネルギー庁だけではなくて、外務省等々も含めて、き ちっとやるべきだろうと思うのです。 特に新規の導入国というのは、 原子炉の型も違うだろうし、 大きさも違うだろうし、また、どういうふうな形において設置していくかということもいろいろ 違うと思います。その辺も綿密に分析した中において、こちらの強みということで、強みという のは先ほどから言われているようにシステムとして売り込む、あるいはパックとして売り込むな ど、いろいろありますが、それのどれがいいのか。あるいはほかのものをどのような形において 31 付けていくのか、その辺のことを総合的に勘案しながらやっていくべきだろうと。いずれにして もアクションの時代だと思います。 もう一つ、そういうアクションということで言えば、主な論点の 2枚目になりますが、ウラン 燃料の安定供給確保の三つ目の丸です。 「以上も含め、燃料サイクル分野の国際連携を強化するべ きではないか」と。まさにそのとおりです。ただ、国際連携を強化すべきではないかという以前 に、やはりわが国の濃縮事業、あるいは再処理事業が国際的に認められるようなレベルにまでき ちっと確立していかなければいけません。つまり、最終的には技術的にも経済的にも国際的な競 争力を持つぐらいにまで高めていく必要があるだろうと思うのです。 その点においては、この次の議論になるかもしれませんが、六ヶ所村の再処理事業というもの をどのような形に置いてくるか。あるいは六ヶ所村にはウラン濃縮もあります。今、新型に切り 替え中だと思いますが、その辺もどのような形において位置付けて、国として、あるいは電力業 界として、 あるいはメーカーとしてやっていくか、 やはり明確化していくべきだろうと思います。 最後に、先ほど寺島委員がおっしゃったことは全くそのとおりで、日本のいわゆる成長戦略、 そして、その中におけるエネルギー政策、そして、その中における原子力政策を明確にして、わ が国において展開することによって、同時に国際展開をしていく。三又課長からありましたよう に、日本としての意義、先ほど成長うんぬんというようなこともおっしゃいましたが、まさにそ のとおりだと思いますので、その辺をきちっと明確にしていくべき必要性があるだろうと強く思 ったところです。以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。あと何人かから貴重なご意見をいただきたいと思いますが、岡崎委 員から、先ほどの技術セキュリティや核セキュリティなどがありましたので、その辺も含めて。 ○岡﨑委員 ありがとうございます。私からは 2点申し上げたいと思いますが、基本的な問題意識は、先 ほど山名委員がおっしゃった、 いわゆる技術セキュリティであるとか、 あるいは将来の国際標準、 確保すべき国際標準は本当に何なのかという観点の共通した項目です。これは前の政権であった かもしれませんが、GNEPを構想されたとか、あるいは今月、フランスが国際会議を開かれました が、まさにそういう問題意識から、ああいう提案をなされたのではないかと思っています。 2 点と申し上げた第 1 点は、新興国に対するわが国の国際展開の問題です。これは何人かの委 員の方が共通でおっしゃったように、それぞれの国のニーズは極めて多様であるし、国の実情は それぞれが違います。そういった実情に即して、決してわれわれサプライサイドではなくて、本 当にディマンドサイドで何を日本がなすべきなのかという、今、極めて大事な時期にあることだ 32 けは間違いないのだろうと思うのです。 そういう点で、 今日、 資料 2でアジアや中近東などの国を総括しておまとめいただきましたが、 もう一つ、将来、割合近い時期に、アフリカ諸国というのもわれわれにとって大変大事な、視野 に入れるべき国であると。そうなると、ますますその国の実情は多様化してくるわけです。その 国が本当に技術インフラを欲しがっているのか、人材育成が大事なのか、あるいはそれぞれの国 が地元の産業を発展させるということに重きを置くのか、単に発電所の建設、運転を期待するの かということで大幅に変わってくるのだろうと思います。そういう点で一つだけ、具体的に提案 申し上げたいのは、 長見委員や末永委員からもご指摘があった31 ページの原子力協定の問題につ いてです。31ページの図表は、ある面で実情を反映していないけれども、ある面で非常に実情を 反映している。反映していないというのは、恐らく日本では残念ながら、丸が一つしか出てきま せんが、ほかの国の丸も、この中で説明してある協力文書の合意という、いわゆる行政取り決め のような協定というのは結構あるはずなのです。日本の場合は非常に厳格に、国会承認を必要と するような、燃料や機材を移転する場合に必要なものを原子力協定だと言うように、相当限定的 に考えておられるということで、私は今のこういう状況になれば、ぜひ初期段階から原子力協定 を結ぶのだと。それは行政取り決めの場合でも、進展して本当に物や燃料を輸出するときには、 国会承認のような正式な国際取り決めに発展していくというように、この原子力協定というもの を段階的に生かしていくと。そうすることによって、外務省も含めて日本国全体がこういう国際 展開について、日本国が一体となって取り組んでいくという姿勢が明らかに出てきます。 すなわち、それぞれの国に置かれている大使館もフルに活用して、それぞれの国の実情をしっ かりととらえていくという体制を築いていくということが、日本の国の統一した政策を作る上に 当たっても極めて大事なことではないかと思います。 このページに関連して一言、3S の確保の問題が指摘されております。確かに 3S を日本が主導 して提案したわけですが、往々にして 3Sが、これからの新興国に、日本からある程度の義務を、 大きな課題を課すのではないか、いわゆる締め付けを強化するのではないかという受け止め方を されているという状況もあります。従って、これから3S を広げていくときには、それぞれの新興 国の発展の段階に応じて、それぞれの国の実情に合った形で理解を求めていくという地道な活動 をしっかりとやっていくということが、3Sの確保にとっては非常に大事な視点ではないかという 気がいたします。すなわち、それぞれの国の原子力発展に即して、この 3Sをきちっと確保してい くという視点なくしては世界の共感が得られないのではないかという気がしております。 第 2 点目は、原子力機構の業務に非常に密接に関連する、高速増殖炉開発の点です。昨年 12 月に、18年ぶりに IAEA主催の国際会議を京都と敦賀で開かせていただきました。20 カ国以上の 33 国、1000人以上の方々の参加を得られましたが、その結果として、この10年ほどの期間の間に、 実は大きく進展いたしました。すなわち、ロシア、インド、中国といった国を中心に、2030年代 には商用段階に入るがごとく、 彼らは大変意欲的な計画を進めているという状況にあるわけです。 それに対して日本、 あるいはわれわれと今手を組んでおりますフランスも 2040∼2050 年代の商用 化を目指しているということからすれば、かなり後れを取ってしまう恐れが出てきているという のが正直な私の印象です。将来の高速増殖炉開発は、当然プルトニウムや再処理など、多くの困 難な課題を解決していかなければなりません。 そのためにも、 何と言っても日本のこの分野での、 いわゆる先進性というものをきちっと確保していく。すなわち、日本の高速増殖炉の商業化戦略 も、もう少し加速して取り組まなければ、世界の動きからはかなり後れを取ってしまうのではな いかということで、これはいつかぜひ議論をしていただきたいという提案を申し上げたいと思い ます。以上です。ありがとうございます。 ○田中部会長 ありがとうございました。随分待っていただきましたが、神津委員、お願いいたします。 ○神津委員 お隣が河野委員なので、 こういうことを言うと論点が違うと怒られてしまうかもしれませんが、 私は違う切り口からしか物が言えないので、最初に謝っておきます。すみません。 先ほど大橋委員がフィギュアスケートのことをおっしゃったので。オリンピックのときに私は 海外にいたのですが、ニュースを見たら、キム・ヨナが 1位、浅田真央が 2位で、どこを探して も 3 位の人の名前がないのです。3位は誰だ、安藤は何位、鈴木は何位で出てきますが、3位の人 の名前がなかなか探せなかった。今度、世界選手権のときも、1位が浅田真央、2位がキム・ヨナ で、また 3位がありません。絶対に日本人ではないことは確かです。日本人なら出ているはずで すが、いつも 3位が消えるという状態を見ていて、私はここに日本人の特性があると。自分と戦 う相手しか目に見えなくなってしまって、周りのことが見えない。客観的に物を把握するという ところが、特殊な問題ではありますが、ちょっとそういう側面を見たような気がして、日本が国 際的に、国際戦略を考えたときに、ここはマイナスになるのではないかという印象を得ました。 本日、新聞にあった記事なので、お読みになった方もいらっしゃると思いますが、日本の森林 を中国などが買収しようとしている動きがあると書かれていました。これはヒノキなどの良質で 高級な木材を手に入れるためということと、CO2 の吸収源である森林そのものを確保しようという こと、それから大量の水を必要としている中国が水源として日本の山を確保しようとしていると いうような、主に三つぐらいの理由が挙げられていました。取引として成立したものはまだない ようですが、林野庁が調査に乗り出すというようなことがありました。 34 私はこれを読んだときに、国際展開やグローバル化というのは、こういうことも含むのだなと 非常に実感しました。今、グローバル化といっていると、資本など、そういうことばかりにいき ますが、 「そうか、水や森など、そういうものもグローバル化の対象、国際戦略の対象になってい るのだ」ということを思い知らされた気がしました。これはエネルギー問題と直接関係ないし、 私は殊更に脅威論を展開するつもりはありませんが、水や食料や海洋資源、エネルギー資源など のセキュリティに関連して、日本は一体どのぐらいの危機感を持ってとらえているのだろうかと いうことにちょっと怖さを感じました。 私は戦略という言葉をこういうところで使うのはあまり好みませんが、国際化やオールジャパ ンという言葉は声高に叫ばれますが、こういう状況、つまり、水や森などということも国際戦略 の対象になっているということも見えていないような状況で、本当に原子力のみ国際戦略を立て られるのかどうかということは、私は非常に疑問に思いました。 もちろん国際展開や国際協調、国際連携というものは言うまでもなく、これから重要ですし、 私はそれに反対する気持ちは毛頭ありません。手術は成功したけれども、患者は死んだというよ うな皮肉な言い方がよくされますが、地球環境は良くなったけれども、人類は絶滅したとか、オ ールジャパンは勝利したけれども日本はなくなっていたなど、そのようにならないために日本の 現状というものに対する意識をもうちょっときちっと持たなければいけないのではないかと私は 最近、しみじみ思っています。 原子力に関しても、国際展開と同時にというか、その課題と対応策の一つとして、問題山積の 日本の原子力の現状整備、現状整備というのは稼働率や安全規制ということだけでなく、例えば 上関で今どういうことが起こっているかとか、六ヶ所がどうなのか、未定の最終処分地の問題は これからいろいろなことが出てくるだろうに、そこをどうするのかというような問題山積の日本 の原子力の現状というものを、ぜひ整備するということも、国際展開の中の課題の一つ、対応策 の一つとしてきちんと認識していただきたいと思っております。 ○田中部会長 ありがとうございました。大変重要なご指摘かと思います。次に種岡委員、お願いいたします。 ○種岡委員 電力総連の種岡です。2点の意見と、1点は私どもの活動の紹介をさせていただきます。意見の 一つ目ですが、今日の論点ポイントに記載いただいている原子力産業の国際展開の丸の二つ目で すが、国の一定の関与の下に新しい体制の構築が必要ではないかというように記載いただいてお りますが、ぜひ一定の関与と言わずに、しっかりとした国の役割を担っていただきたいというこ とをお願い申し上げたいと思います。主な理由は四つございます。一つは、原子力の国際展開は 35 何といっても、原子力の平和利用を担保するということ、それから原子力の平和利用の促進が前 提になるということです。それから、理由の二つ目ですが、冒頭に増子副大臣もごあいさつされ ておりましたが、国の政策である地球温暖化対策、さらには新成長戦略の中で、原子力は極めて 重要な位置付けであるということです。地球温暖化対策では排出クレジットの問題なども出てく るのではないかと思います。 それから理由の三つ目ですが、 新規導入国に対応するに当たっては、 規制や許認可の仕組みもパッケージで提供していくということが必要だと思います。理由の四つ 目は、今日、これは何点か議論になっておりましたが、その丸のもう一つ下の三つ目に書いてあ るリスクの問題です。新規導入国に対する展開というのは、やはりリスクを伴うということです から、そんな中で電力中心ということになると、正直申し上げまして、そこで働いている者にと っても心配があるということです。ぜひ、国のしっかりとした役割を担うということをお願い申 し上げておきたいと思います。 それから、意見の二つ目ですが、これは前回のこの部会でも申し上げましたが、海外展開に当 たっては、人材の育成ということが重要だということを重ねてお願い申し上げておきたいと思い ます。海外展開に伴いまして、国内の原子力の建設、運転、保守などに人材不足をもたらすとい うことになってはいけないということですし、さらには新規導入国の人材育成、あるいは技術・ 技能をしっかりと伝えていくための人材確保も必要だと思います。前回の部会での発言の繰り返 しになりますが、そのためには何といっても、原子力に携わっている者の雇用と労働条件の安定 ということがしっかりと裏打ちされていることが重要なのではないかと思います。 さらには、新規導入国の人材育成に当たりましては、高い安全意識、あるいは安全文化の伝承、 醸成ということも重要だということを申し上げておきたいと思います。3 点目は、日本の原子力 の平和利用に関する、国際的な理解活動に関して労働組合も取り組んでいるということをご紹介 させていただきたいと思います。具体的に申し上げますと、ICEM という国際化学エネルギー鉱山 労働組合協議会という組織がございます。これに私ども電力総連も加盟いたしまして、国際的な 交流などを通じて、日本の原子力の平和利用について、これまでも理解活動に取り組んでおりま すし、今後も取り組んでまいりたいということを1点ご紹介申し上げておきたいと思います。以 上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。神田委員、お願いします。 ○神田委員 ばらばらの意見を幾つか申し上げます。一つは、 「もんじゅ」があと一歩まで来たというのは本 当に良かったと思います。おめでとうございます。われわれの部会にも影響があると思いますの 36 で、次にぜひ詳しくご説明をお願いします。 それから前回、韓国のことでネガティブキャンペーンの資料があるといったら、三又さんは手 に入れたという話ですから、それをいつかご紹介いただけると、ついでにその対策もやっていた だきたいと思いました。 それから、いろいろなことを言いますが、三つ目に、4月 12、13 日にワシントンで開かれる核 セキュリティサミットというものがあります。外務省ばかり張り切っていますが、三又さんもぜ ひ張り切って、国際展開に関係がありそうな議題が挙がっていますので、関心を持って、14日は フリーに参加できるそうですから、経産省からも参加していただきたいと思いました。 いろいろなことを言います。東芝とビル・ゲイツのことです。理由を四つほど言っていますが、 一つ訳の分からないことを言っているので、ぜひ四つの原因が分かるようにしていただきたいと 思います。 それから、 この間ロシアで服部委員がキリエンコなどの前でものすごくいいスピーチをされた、 核不拡散の原稿をぜひ今日の資料の中にも入れてもらいたいと思いましたので、あの原稿を服部 さんは三又さんに差し上げてください。 それからもう一つ、CSC のことが今日は話に出て大変うれしかったです。2 年前にアメリカで CSC のことをだいぶ言われたときは全然ちんぷんかんぷんでしたが、三又さんがこれだけちゃん と理解しておられるということは、そこに行けば議論できるということが分かりましたので、ぜ ひよろしくお願いします。ばらばらですが、以上です。 ○田中部会長 ありがとうございました。木元委員、お願いします。 ○木元委員 皆さまがいろいろおっしゃったので、同じ繰り返しはいたしませんが、原子力を国際的に展開 していこう、日本のものを輸出していこうという話が新聞紙上などに出回りだしたときに、国内 で、広聴広報の関係で私があちこちへ行きますと、どうして日本はこんな危険なものを輸出する のだという声が、まだ底辺に若干あります。ですから、まず、国際的にこうして自分たちが前に 出ていき、そして地球に寄与するべく原子力をちゃんと発展させるのだという国民へのメッセー ジを作っていただく必要があるのではないかという御願いです。 すべてのことを皆さんがおっしゃっていると思いますが、日本が外へ出ていくときに、私はあ まり悲観的には思っていないのです。というのは、私は原子力委員を9年間させていただきまし たが、海外対応の実績はあります。今、服部委員もおっしゃいましたが、原産協会でもかなりの 年数をかけ、 特に東南アジアなどとは交流があるわけです。 服部委員がお書きになっている中に、 37 インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムとありますが、インドネシアもかなり 前から、民間のレベルですが、いろいろと交流があります。関西電力さんは出張所を持っていら したぐらいですから、たくさんあります。 それから、タイもインドネシアと同じで、現在ちょっと不穏ですが、やはり実績はあります。 また、ベトナムも、今日は文科省の方がお見えになっていますが、FNCA(アジア原子力協力フ ォーラム)を通じて毎年とか、1 年置きぐらいに、それなりの交流をしていると思います。それ でどういうことが見えるかというと、技術的な人材の育成などという立場での交流だけではなく て、政策的な交流をそこでしているはずです。友達、ある意味では仲良しパーティーみたいなも のもありますし、ファミリア的な交流もあります。こうして民間が積み立ててきた実績をきちん と見ていただきたいと思います。 私は中国の秦山発電所を見せていただきましたが、ここが問題だと思いましたのは、これは韓 国でもみんなそうですが、 ゲートのところに協力各国をはじめ、 日本の国旗も立っているのです。 ところが、どういう協力をしたかということは、日本にはあまり伝わってきません。秦山Ⅲだっ たと思いますが、日本の日の丸が立っていて、玄関に入るとプレートのところに協力の国々の名 前が出ています。 「Japan」とありました。何を協力したかというと、メーカーの名前もあり、何 がどこに入っているとある。 「もう日本はすでに協力しているではないか」と、話がやっとそこで 見えてくるのです。 ですから、協力体制というのは民間レベル、あるいはメーカーレベルですが、やっているので、 それもきちんと把握してやっていただきたいと思います。土台はもうできているのだと私は解釈 しています。そのときには、文科省をはじめとして、外務省、それから内閣府もそういうチーム を持っていると思いますから、それも組み入れていただきたいと思います。 それから、もう一つは、いろいろお話が出た中で、こちらがプロモートしたり、お話し合いを して、現実にそれが設立できるような段階で、前回も申し上げましたが、安全文化が違います。 そこで、各国の安全に対する考え方、文化を把握した上で、多様な展開をしていただく必要があ るのではないかと思います。 また各国のニーズという言葉も出ましたが、UAE のドバイで取材の際に話が出たのは、日本で もやっておりますが、海水の淡水化をやりたいと。そこでドバイは原子力発電で淡水化をとりた いということです。ですから、そういう事案も全部把握していただくのが、安全文化につながっ ていくのではないかという気がしています。 その上で、一元化して、国が前面に立つということは当然だと思います。そのときに国がどう いう役割を持っているかということをはっきりさせていただきたい。 電力が主体になるけれども、 38 国はこういう役割を持つ。そのことの明記です。地層処分の話でもそうですが、国がなかなか見 えなかったときに、法が変わって国が前面に出て顔が見えるようになってきたと。そこで安心す るのです。 古い話になりますが、新潟の巻町に原子力発電所の設置を企画したときに駄目にはなりました が、そのときも最後に叫んだ民間の方が、 「私は賛成はするけれども、国の顔が何も見えない。国 が出てこない事業なんてやっぱり不安だ」ということを言っていました。何かあったときには、 国が全面的に責任を持つのだと。親方日の丸になってしまうかもしれませんが、そういう日の丸 が見える形をぜひ作っていただきたいという思いがあります。それをいつ、どこで、誰が中心に なってやるのか。まとめるのは誰かということをいち早く明確にしていただきたい。そして、着 実に、 ご説明も含めて国内向けの展開をしていただきたいと思います。 ありがとうございました。 ○田中部会長 ありがとうございました。いつも最後の方になりますが、井川委員。 ○井川委員 いつも最後にお時間を取らせてすみません。メディアの立場から言うので、憎まれ役になって しまいますが、ちょっと気掛かりな発言がありました。韓国の技術は成熟していないとか、日本 人は遺伝的にちょっと駄目などと、ご専門の方からありましたが、技術は成熟していないといっ ても、ほかの観点は図抜けて、そんなに差があるのかと。売れるほど差があるのかということか ら見ると、韓国もこれだけの基数をこれだけ安定して、しかも自分で造って運転しているわけで すから、少なくとも為替の差を超えられるだけの技術力の差があるとはちょっと、僕が買う側だ と思ってしまいます。 それから遺伝的には、 むしろ韓国の方とわれわれは非常に近いのではないかという気がします。 近いので、 そんなに遺伝的にどうのこうのというのも、 いささか本当なのかという感じがします。 むしろ日本が駄目か、これから苦戦している現状を冷静に考えなければいけないなと思うわけで す。買う側から考えると、価格の問題と、運転をちゃんと継続してできるのかということと、安 全性という 3点がアピールするのかということです。お配りいただいた資料でも、価格の問題と 効率性の問題については言及されているので、問題は安全性について、安全性のアピールという 意味ですが、そこについて全然言及がなくて、メーカーさんと電気事業者の方から、規制の国際 化みたいなことのお話がありましたが、もちろんルールの国際化も大事なのでしょうが、規制体 系の国際化とか、説明の仕方が国際化されているのかというと、本当に大丈夫なのですかという 感じがします。 メディアの立場から見ていても、多分一般の方もそうなのでしょうが、日本の安全規制体制と 39 いうのを説明するのが、結構特殊なところがありますし、それから用語も、僕らも時々聞いてい て、保守と保全と保安などというものが出てきて、以前、保安院長が「いや、僕でもこれは混乱 することがあるのですよ」と言っているぐらいですから、用語も体系も極めて特殊な感じがしま す。 先日、規制関係者に聞きますと、韓国が今回、輸出に成功したときにUAEに対して、安全をア ピールするようなドキュメントを英語で、つまりアメリカやヨーロッパの国際標準にしたかった ものを求められると、すかすかと出せたと。では韓国は技術力がないのかというと、韓国の原子 力の規制当庁には、アメリカの規制当局、あるいはアメリカの専門的な機関で、ちゃんと博士号 まで取ったような、国際標準でドキュメントを出せるような能力のある方がたくさいて、相当ア ピーリングなことができたと聞きました。 その意味からいうと、日本は大いに落差があります。これは別に日本の規制をしている人の能 力がないと言っているわけではなくて、説明をするときに非常に分かりにくくて、非常にアピー ルしないよねということがあると、先ほど申し上げたとおり、買う側から言うと 3点とも、どう もアピールしないよねと。 そういう意味で、勇ましいのは結構ですが、冷静に自分の現状を見つめ直して課題を直してい くというのは、ひいては国内で新設するとき、これから原子力を継続して使っていくときに、そ のうちクリティカルな問題になっていくのではないかと思います。ここは多分、第二次世界大戦 に突入する前の日本の状態に突入しないように、ぜひ冷静にわが姿を見てみようということを提 案させていただきたいと思います。 ○田中部会長 ありがとうございました。 いろいろとご意見をいただきました。 時間もなくなってきましたが、 特に事務局から何か答えるところはありますか。 ○三又課長 ご意見を本当にありがとうございます。すべてのご意見にきちんとお答えする時間はとてもな いのですが、代表的なというか、複数の方がおっしゃったことを中心に簡単にコメントさせてい ただきます。 まず、昨年、小委員会をやっていただいて、今回は実践段階だということを私も申し上げまし たし、いろいろな委員の皆さんからいただきました。実践段階となると、話が生々しくなってき て、UAE については一応結果が出て、正式に発表されております。そうはいっても、韓国の手の 内というのは正式には何も発表されていなくて、われわれがUAE に聞いても、ちゃんとは答えて くれません。ある程度推定なども踏まえて分析しておりますが、どうしても河野委員からご指摘 40 もあった、新しい体制をどうするか、リスクテイクをどうするか、官と民、特に官はどうするの だというところについては、今いろいろ検討しているところでして、オープンな場で、今日、歯 切れのいいお答えができる状況にはございませんが、その辺をご理解いただければと思います。 そういった意味で、同じような話になりますが、原子力の二国間協定が遅れていることは、事 実としてはそうですが、なぜ外務省が来ていないのだというお話もございましたが、外務省さん にもお声はお掛けしていて、今日はたまたまだと思います。国際的な話題に及ぶときには、大体 ご出席いただいているのが通例だと思います。もちろんちゃんと伝えますし、われわれ原子力部 会は外務省さんとも情報を完全にシェアしてやっております。 協定については、一つ言えることは、まさにベトナムについては、丸の数が一つしかない、少 ないというところについては、従来、いわゆるIAEAの追加議定書を批准までしている国としか交 渉しないということを、これは別に法律などの明文のルールがあるわけではないのですが、唯一 の被爆国としての最もコンサバティブな運用ということで、そういう運用を従来原則としてきま した。そこについては、交渉を行うことはもっと早めてというようなご意見も今日はいただきま したが、そちらの方向でやっていくということで外務省ともだいぶ強力にそういう話をしており ます。 例えばベトナムに対しては、ベトナムはまだ追加議定書の批准をしていませんが、交渉を始め ようではないかということも言っております。そういう方向にできるだけ引っ張っていきたいと 思っています。と同時に、国が非常にたくさんありまして、プライオリティ付けというお話もあ りましたが、ここは体制強化も一義的には外務省さん、われわれも協力して二国間協定の交渉を やりますが、体制の強化もしていこうという話をしております。 もう一つは、国内がしっかりしていないのに、国際うんぬんかというお話、それからむしろ国 内をちゃんとやって、それが国際的にもアピールするのではないかというご指摘は、全くそのと おりだと思います。ここは前回、設備利用率の向上や新増設の話を中心に取り上げて、ご意見を たくさんいただきました。時間がなくて何もお答えしていませんが、次回、そこのところにもう 1 回フォーカスを当てて、核燃料サイクルの話とともにやりたいと思います。その中には、今日、 幾つかご意見があったFBR についても。国際的な視点も含めて触れさせていただきたいと思って おります。エネルギー基本計画との関係は、内藤委員からも基数について具体的なご指摘があり ましたが、そういったことも今後の原子力部会、あるいはエネルギー基本計画の策定にも十分踏 まえてまいりたいと思っております。 併せまして、これも日本国内との関係で、本来、日本が技術の強みや不拡散体制が模範的だと いったことをもっと強くアピールせよと。アピールについては全くおっしゃるとおりで、まだま 41 だ努力不足かもしれませんが、しっかりやっていきたいと思います。また、核不拡散センターを とか、いろいろな面での国際標準化をもっとしっかりやれとか、山名先生からは技術セキュリテ ィ戦略というお話もありました。この辺の具体的なご提案については大変貴重なご意見をいただ いたと思っておりまして、よく検討させていただきたいと思います。 もう 1点は、多くの委員の方からご指摘のあった相手国のニーズに応じてというところで、こ れは全くそのとおりですが、取りあえず現段階では、先ほど申し上げたように、具体的な経験と してあったのは UAEの案件ですので、主として UAEの経験を踏まえつつ、資料の37 ページのとこ ろにまとめたものは、確かにこのようにまとめてしまうと、相手国のニーズというよりも、日本 の都合みたいな感じに受け取られたかもしれませんが、まずは相手国のニーズが大事で、それは 個々の国ごとに違う面も多々ありますので、そこはちゃんとそれで対応していかなければいけま せん。ただ、共通的に新規導入国について言えそうなこととして、受注体制やリスクテイク能力 といったことが UAEの教訓から導き出されるというのがわれわれの今の認識です。当然、国ごと のニーズにも対応しながら、こういう点について対応してまいりたいと考えています。私からは 以上です。 ○田中部会長 どうもありがとうございました。いろいろとご意見をいただきましたので、そういうものを整 理して、今後の議論に反映させたいと思います。私自身も昨年の参考資料がありますが、昨年 6 月に国際戦略検討小委員会報告書もあり、また、推進強化策でも国際展開の重要性を書き、原子 力委員会の国際専門部会でも、ちょっと違った観点からいろいろ議論があるというところで、い ろいろな議論が十分に行われました。 今日もまた重要な点についてご指摘があったところですが、 本当に冷静に課題を見つめると同時に、戦略的にスピード感を持って原子力部会としてやってい かなければいけないということかと思います。 また同じようなまとめと報告書にならないように、 委員の方からもご注意をいただいていますので、その辺のところを事務局とも相談しながら、し っかりしたものを作っていきたいと思います。 それでは今後のスケジュールについてお願いいたします。 ②その他 ○三又課長 長時間のご審議をありがとうございました。次回日程は現在調整中でして、事務的にご連絡が 行き始めていると思いますが、間が詰まりますが、できれば 4月の中旬のどこかで開催させてい 42 ただければと思っております。詳細は、またご連絡いたします。 ○田中部会長 ありがとうございました。それでは、これをもちまして第23 回原子力部会を閉会いたします。 どうもありがとうございました。 ―― 了 ―― 43