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鉄道より「エコ」な次世代パーソナルモビリティの実証

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鉄道より「エコ」な次世代パーソナルモビリティの実証
【平成 21 年度(第 8 回)助成団体の活動概況報告①】
鉄道より「エコ」な次世代パーソナルモビリティの実証
ソーラーカーチーム
プロミネンス
1.団体の概要
ソーラーカーチーム プロミネンスは、競技用ソーラーカー等の製作と、各種大会への参加に
よる自身の技術レベルの客観的評価および研究開発結果の社会還元を目的として1995年よ
り活動している有志の会です。これまで、「うまい・はやい・やすい」をコンセプトに秋田・鈴
鹿両大会向けソーラーカー、浜松大会向けソーラーバイク、四国大会向け競技用電気自動車等を
ゼロから製作して競技会に参加し、自身の技術レベル向上と新エネルギーモビリティ普及啓発活
動へのお手伝いをしてまいりました。
2.活動の目的
近年、地球温暖化対策とエネルギーセキュリティの両面から自家用自動車を初めとするパーソ
ナルモビリティに対する社会の目が厳しくなってきました。この課題に対する回答のひとつとし
てモーダルシフトがありますが、地方の鉄道路線が軒並み赤字営業であることからもわかるとお
り、利便性の面から現時点では決定打とはいえない状況にあります。
こうした状況に鑑み、ソーラーカー等の極めて小さなエネルギで走行できる車両の開発経験か
ら、社会での実使用時において、単位走行距離あたりの温室効果ガス排出量が国内旅客鉄道同等
以下となる見通しを得ていたことから、道路運送車両として公道走行が可能で、鉄道より低炭素
な車両を実機証明して、モーダルシフトに代わる問題解決案として広く社会に提案することを目
的に活動を行っています。
3.開発コンセプト
鉄道より低炭素なモビリティを実現するには、極めて高いエネルギ効率を実現し、走行に要する
エネルギを小さくすることが有効です。本開発では軽量化と空気抵抗の削減を最重要課題として捉
え活動を推進しています。通常、この目的を達成するには新規に専用設計した部品を用いますが、
今回は我々が実現する環境性能を第三者が再現しやすいよう、性能に直接影響を与える基幹部品に
はだれもが1つから購入可能な市販品を使用することを基本コンセプトとして企画・設計を行いま
した。
4.試作車両概要
今回の活動で試作した車両の外観を図1、主要緒元を表1に示します。
表1
項 目
車体寸法
車両重量
主要緒元
仕 様
L×W×H =2490×720×1100[mm]
124kg
備 考
Cd=0.12
GFRP製ゲルコート仕上げ
Wt=15kg
Cr-Mo鋼管製バックボーンフレーム
Wt=19kg
F:ワイヤ駆動機械式ディスク
ブレーキ
R:カンチ式Vブレーキ+KERS
F:マクファーソンストラット
サスペンション
R:トレーリングアーム
ステアリング
アッカーマンジオメトリ・サイドスティック式
F:16×1.5
低μr品
タイヤサイズ
R:20×1.75
原動機種類
永久磁石式同期電動機
ハブ内蔵・ダイレクトドライブ
定格出力
0.5kW
1時間定格
バッテリ種類
制御弁式鉛酸蓄電池
Wt=48kg
バッテリ容量
1.6kWh
航続距離
90km以上
市街地~郊外実用
最高速度
75km/h
WTW-GHG原単位
16.6g-CO2/km・人
市街地~郊外実用
ボディ
シャシ
図1
試作車両外観
本車両は、車体にオーストラリアの人力車レース向けに市販されているガラス繊維強化プラスチ
ック製ボディを採用、これにリカンベントトライクと呼ばれる自転車の一種を組み込み、カナダで
市販されている電動自転車用電気モータを組み合わせ、UPS 等に使用される制御弁式鉛蓄電池を48
kg搭載して電気自動車の構成としています。道路運送車両法で規定される原付3・4輪車、いわ
ゆる「原付ミニカー」に適合するよう各部仕様を検討しており、番号標の交付を受け一般道の走行
が可能です。
5.試験結果
表2に試験条件、表3に試験結果を示します。
表2
項 目
コース
運転者
車載計測器
交流電力量計
内 容
長野研~長野市卸売団地間往復
長野研
Cycle Analyst CA-HC-LS
ワットチェッカー 2000MS1
表3
項 目
平均速度
最高速度
エネルギ効率(直流端)
〃 (交流端)
WTW-GHG排出量
(環境省電力原単位ベース)
試験条件
備考
距離:10.0km
Wt=66kg
Grin Technologies製
(株)計測技術研究所製
試験結果
結 果
36.4km/h
60km/h以上
17.8Wh/km
29.9Wh/km
16.6g-CO2/km・人 備考
電力原単位
555g-CO2/kWh
一般道において他車の流れに沿ったごく普通の運転条件で、資源採掘からエネルギ消費までの過
程で発生する温室効果ガス排出量は 16.6g-CO2/人キロと、国内旅客鉄道のそれ(19g-CO2/人キロ:
2008 年実績・国土交通省)を下回り、当初目標に掲げた「鉄道より低炭素」なモビリティを実機
証明しました。動力性能は原付バイク同等以上であり、実用上問題ないレベルであると認識してい
ます。
6.今後の展開
各部耐久性の確認およびデモンストレーションを目的に、各地でチームメンバーが日常生活で実際
に使用する実証実験を推進する予定です。今後の活動により、同様の環境性能を持つ車両を商品化
する企業が現れることを期待しています。
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