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- 1 - 妹が教えてくれたこと 福井県鯖江市中央中学校 3学年 田邊 涼 今
妹が教えてくれたこと 福井県鯖江市中央中学校 田邊 3学年 涼 今でも,世界中には戦争や災害,病気や交通事故などの被害で沢山の命が失われていま す。その中でも日本では自殺で自ら命を絶つ人が年々増えています。その数は年間約3万 人で,どんな紛争地でもこんなに多くの人は亡くなっていないのだそうです。 私は,この主張を通してより多くの人に,自分や家族,周りのみんなの一人一人の命が どれほど大切なものかを感じてほしいです。 私が自分の大切さを考えるきっかけになったのは,私が小学3年の時に,一番下の妹が 誕生したことでした。私は母から 「お母さんのお腹には赤ちゃんがいるんだよ。」 と聞いてから 「早く産まれないかなあ。早く会いたいなあ。どんな顔かなあ。」 と,毎日家族で楽しみに話していました。 母は病院ではなく,助産所という施設で赤ちゃんを産みました。毎月ある検診にはいつ も一緒に行って,助産師さんから出産や赤ちゃんについてのお話を沢山聞かせてもらった り,超音波で,お腹の中の赤ちゃんの様子を見せてもらいました。その時 ,まだ産まれる 前の赤ちゃんでも,心臓がとてもしっかり動いている映像を見て,すごく驚きました。そ れから,産まれる2,3ヶ月前くらいになると,顔がはっきりと映るようになり,性別も 女の子とわかりました。母のお腹はどんどん大きくなり,赤ちゃんが育っているのを感じ ました。赤ちゃんが足を伸ばすと母のお腹がボコッと飛び出るのを見て,お腹の中にいる 時から命が懸命に生きていると感じました。父と母,私と上の妹と弟で,赤ちゃんの名前 を考え,産まれる日を待ちました。 産まれる日の早朝のことでした。母が慌てて寝ていた私達を起こしに来ました。私は慌 てて起き,ドキドキしながら父の運転で助産所に向かいました。最初は平気そうな顔だっ た母も,だんだんと苦しそうになっていき,ただ事ではない様子に心配になっていきまし た 。母 は 父 と 私 の 手 を 痛 い く ら い に 握 り し め ,す ご く す ご く 痛 が り な が ら 妹 を 産 み ま し た 。 産まれたての妹の顔や体はとてもつやつやとして輝いているように見えました。そして , 私が妹のへその緒を切りました。へその緒は,10ヶ月もの間,お母さんとお腹にいる赤 ちゃんの命をつないでいた大切なひもです。だから,へその緒を切るときは,とても緊張 しました。その後,私が家族で一番最初に産まれたての妹を抱っこさせてもらいました。 とても小さくて,温かくて,大切に思いました。 あの頃はまだ理解できていなかったけれど,人は産まれる前からもう命は始まっていま す。お母さんの栄養を吸収して,赤ちゃんは,毎日成長を続け,お腹の中を動き,手足を 伸ばし,家族の声を聞いています。 妹が母のお腹にいた10ヶ月間も,産まれる時も,助産所の皆さんがいつも支えて下さ -1- いました。産まれた後は,両方の祖母が妹のお世話や家事の手伝いなどをしに来てくれま した。父は仕事を早く終わらせて急いで帰って来ました。赤ちゃんを囲む人は,みんな笑 顔でした。自分もこんなに沢山の人の協力や喜びの中で誕生したのだと感じました。 私のこの命は自分だけのものではなく,今まで支えてくれた家族や先生方,友達,そし てこれから未来で出会っていく人達と共有していくのだと感じました。 産 ま れ る 前 か ら 始 ま っ て い る 私 達 の こ の 命 ,周 り の 沢 山 の 人 達 の 笑 顔 と 喜 び の 結 晶 で す 。 今,こうして生きている事に感謝して,自分らしく一日一日を一生懸命に生きていきたい です。 -2-