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002 だんぶり長者は

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002 だんぶり長者は
だんぶり長者になろう!
.04.01 成長と貢献と新たな価値の創造をめざす
2013
2013.04.01
コミュニティ・デザイナー 佐 藤 友 信
002 だんぶり長者は、
人生の達人?
ゴッホ:アルルの跳ね橋
八幡平小学校に赴任したとき、子どもたちが「だんぶり長者」の伝説をほとんど知らないことに驚き、何をおい
てもまず、この伝説を子どもたちに伝えなければと思いました。世に伝説は数あれど、スケールの大きさと教え
の深さにおいて「だんぶり長者」に比肩する伝説はないと思ったからです。
鹿角市内の小学校には『陸中の国鹿角のむかしっこ』と『陸中の国鹿角の伝説』という本が備えられていま
す。これは平成3年と4年に「郷土学習教材編集委員会」という数名の先生方の編集で鹿角市が発行したもの
ですが、ひとクラスの子どもが一斉に読めるだけの冊数があり、鹿角の子ども達に地域に伝わる豊かな物語に
触れさせたいという願いと配慮を感じることができます。
これらの本が発行された当時は、各学校で子どもたちが地域の民話や伝説を劇化したり、影絵や紙芝居で
表現する活動などが盛んに行われていたのを記憶しています。当時は国のゆとり教育と秋田県のふるさと教
育の方針に従って、昔話や伝説に限らず、学校周辺の地域の歴史や伝統文化、風習、人々の暮らしなどから
学ぼうとする雰囲気が色濃くあったような気がします。
今日の新しい学習指導要領では、ゆとり教育が見直され、再び詰め込み教育に戻されていますが、幸い秋
田県は「ふるさと教育」に長年力を入れてきましたので、地域の伝統行事は次第に失われつつあるとはいえ、
子どもたちはまだ、ふるさと・地域と強く結びついています。これが秋田県の子どもの学びの力になっていること
に疑いはありません。自分や家族、そして自分が依って立つふるさとを知り、理解することなしに、子どもは健
やかに育つことは難しいのだと思います。
八幡平小学校には、上記の本のほかに『大日堂舞楽』という大冊の本があり、この中に八幡峡花という人が
まとめた「だんぶり長者物語」というたいへん詳しい話が載っています。これはまさにだんぶり長者夫婦、吉祥
姫、五の宮皇子の三代にわたる波瀾万丈の物語で、どんなふうに子どもに読み聞かせ、語り聞かせようかと
考えながら読むと、本当にワクワクしてくるものでした。これほどスケールが大きく、ワンダーに満ち、奥深いメッ
セージをもつ伝説はそうあるものではありません。考えてみれば1300年の伝統をもつ「大日堂舞楽」の基にな
っている伝説ですから当然とも言えますが、私は圧倒されながら、この価値を子ども達に伝えることを自分の
Mission にしようと思いました。
「だんぶり長者物語」で私が最も共感した部分は、真っ正直で、親孝行者で、人一倍働き者であるにもかかわ
らず、若者夫婦には極貧生活が続くというところです。それでも決して不平不満をもらすことなく、唯一もらした
嘆きと言えば、自分たちの貧しさよりも「神様にお供えするものがなく申し訳ない」ということでした。こんな人た
ちなら、神様でなくたって愛したくなるでしょう。
霊泉を授かる場面だけでなく、一つ一つのエピソードに神と人との不思議で深い交わりを読み取ることができ
ます。子どもたちには、若者夫婦の貧乏生活を「神様のテスト」などと話しました。困難や苦しみはすべて「神様
のテスト」であり、これをどう読み解き解決していくかが人生なのだ、と。
この「だんぶり長者になろう」という連続エッセイは、子どもたちの将来へのメッセージとして企画しました。もち
ろん、昔の子どもたちにもです。「だんぶり長者」の道徳観は古いものかもしれませんが、現代人が見失ってい
る人間性の源泉が、ここには豊かにわき出しているように思います。
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