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悪い良心の話 - SUCRA

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悪い良心の話 - SUCRA
笏文化史 の窓⑧笏
隆昭
﹁悪 い 良 心 の 話 ﹂
南
(一) ﹁
。8 ω皀8 8 ﹂ は ﹁良 心 ﹂ だ が 、 ﹁げp匹 8 霧 o帥
o暮 Φ﹂ は 、
﹁悪 い良 心﹂ で は意 味 を な さ な い か ら ﹁
良 心 の苛 責 ﹂ と 訳す る 、
と
﹁学﹂ ん だ とき に ﹁なぜ 意 味 を な さ な い の﹂ と ﹁問﹂ う のが ﹁学
貴 者 、非 良 貴 也 ﹂ つま り 、自 然 で 、生 得 的 で 、 ま さ に自 分 のも の
だ と 確 認 でき る こと 。 そ し て ﹁良 ナ ル心 ﹂ は他 者 と 協 調 し て社 会
を 維 持 す る 四端 の心 と し て発 現 す る。 こ れが 良 心 の起 源 だが 、 し
か し 、人 性 は ﹁善 ﹂ な り 、と 誰 かが 言 え ば 、﹁悪 ﹂ な り 、
と言う人
でそ の人 は考 え て 、 社 会 維 持 の た め の 人 工良 心即 ち ﹁偽 ﹂ (11人
が 出 る のも 道 理 。人 性 が 悪な ら良 心 な し 、秩 序 はど う な る。 そ こ
為 ) の法 律 等 の社会 規範 に よ る教 育 を説 い た 。 (﹁
人 の善 な る は偽
な り﹂ 苟 子 ) そ う な る と良 心相 対化 説 。 し か し 、 天然 か人 工 か の
(二) 心 と は 。 と 、考 え て いる のも 心 。 私が ﹁私 ﹂ を 見 て いる 。
差 は さ て お いて 、 ﹁
良 心﹂ なく し て 成 り 立 た ぬ のが 人 の心 だ 。
﹁私﹂ は 記 憶 、 想像 、 考 量 、 主 体 的 判 断等 々を す る 機 器 だが 、そ の
いる 。 私が 、 そ の 一点 を 忘 れ て ﹁私 ﹂ を 使 お う と す る と 機 器 は 大
機 器 の中 で 全 て の機 能 や 資料 が 、 整 頓 さ れ 、 あ る 一点 に収 斂 し て
問 ﹂。 で は 学 問 を始 め よ う 。 まず は ﹁
良 心し の成 り立 ち か ら 。
苛 だ って 責 め る 恐 いも の、 そ れ が 初 め て 登 場 す る と 言 わ れ る
と 、 私 1 ﹁私 ﹂が 、 た ち ま ち ﹁私 ﹂ にな る 。 同 じ 事 を 、 知 (
ω
皀,
騒 ぎ の拒 絶 反 応 。 そ こで 私が 、 そ の 一点 に忠 実 に ﹁私 ﹂ に関 わ る
(諸 橋 轍 次 氏等 の説 ) ﹁孟 子﹂ の第 十 一巻 告 子 上 に 、 ﹁
其 所 以放 良
窪 8 ) を全 部 、あ る方 向 へと集 合 ・集 中 (O
O昌) す る 主 体 と 言 い
心 者 、 亦 猶 斧 斤 之 於 木 也 、 旦 旦 而 伐 之 、 可 以為 美 乎 ﹂。 ﹁
良 心﹂ は
美 し い山 林 の芽 生 え だ 、 決 し て 切 って は な ら な い。 更 に 、 ﹁
其日
換 え て も よ い 。ヨo邑
いる 。 ﹁出 入無 時 、莫 知其 郷 、惟 心 之 謂 与 。
﹂ も ろき か な ﹁心﹂ と
な と 熱 弁 揮 って も 、 ま だ 足 り な い ので 、師 ・孔 子 の言 葉 を 引 いて
いた いら し い。 汚 れ た 世 間 に身 を さ ら す な 、 心 せ よ禽 獣 に堕 す る
し か し こ の赤 子 、 ﹁夜 気 、 曙﹂ と 並 ぶ 天 地 の大 現象 でも あ る 、と 言
の香 を含 ん で 世 に出 る 。 要 す る に ﹁
良 心﹂ は 生 ま れ 立 て の赤 子 、
そ の人 の ヨo門
巴 8 房 9。昌8 の収 斂 点 に重 な る こと が 条 件 であ る。
曰 く 宇 宙 の根 源 ブ ラ フ マ ン、 ま た 日く 創 造 主 ヤ ー ウ ェ等 々) が 、
価 値 観 の収 斂 点 (
そ の 一点 に は、 古 来 いろ んな 名 が 付 い て い る、
あ る人 の属 す る集 団 が 、 風 土 、 経 済 、 政 治等 の状 況 の中 で培 った
持 つ 1ーヨo﹃巴﹂。し か し 、 ま だ そ れ だ け では 心 は 一人 前 では な い。
る そ の自 分 を 見 る 冷Φ阜ぴ碧 犀 ω
誘 8§ 。そ の 超 。。83 は ﹁
意 識を
の知 (ω
〇一
〇昌OO) の集 合 ・集 中 (
。§ ) と は 、集 申 し つ つ、集 申 す
な (
ヨ象 ⑦﹃
凶
巴H意 識 な き 、 の反意 語 ) 全 て
に、 人が 生 を 享 け た時 そ のま ま の自 然 な 心 は 、 馥 郁 た る ﹁良 心﹂
夜 之 所 息 、 平 旦 之 気 ﹂。 つま り 、 山 申 の夜 気 が 曙 の光 に 逢 う よ う
ル﹂ 姿 に継 承 し た い のが 孟 子 だ 。 ﹁
良 ナ ル﹂ と は 、 尽 心章 句上 十
。8 に は ﹁他 者 と 共 に﹂ の意 味 も あ る 。他 者 と 自 分 が 価 値 の収 斂
先 生 も 言 わ れ た ぞ 。 ⋮ ⋮ し て み れば 、 孔 子 の言 う ﹁心﹂ を ﹁
良ナ
五 に 、 ﹁所 不 慮 而 知 者 、其 良 知 也 ﹂、 告 子章 句上 十 七 に 、 ﹁
人 之所
一46一
の訳 語 でも あ る のは 面 白 い。) と ころ が 、 収 斂
や す ら かな αqooα 8 コω
鼠①p8 であ る 。 (因 み に ﹁道 徳 意 識 ﹂
°の
四 文 字 、 前 半 は儒 教 又 は道 教 で 後 半 は 仏 教 だ が 、 全 部 合 わ せ て
点 を 共 有 す ると 思 え る 時 の、 そ の人 の 彎o鑓一8 霧 90暮 ① が 、 心
のが 漱 石 の本 旨 であ ろ う か 。 ﹁収 斂 点 ﹂相 対 化 の 始 ま り であ る 。
が 気 息 奄 々と し つ つも 生 き て いた 人 が 明 治 と 共 に去 った 、 と 言 う
の ﹁知 り て 力 行 せ よ﹂ を 、 彼 は 文 字 通 り 死 守 し た。
一
何故なら、
知 (
悪 い C) の行 (
実 践 ) は 自 裁 であ る。 ﹁悪 い C﹂ の申 で良 心
死す る 。
﹂ と 言 った 。 明治 大 帝 に殉 じ た ﹁乃 木 大 将 の精 神 ﹂11士 学
8 霧 皀Φ口8
ヨo邑
等 も ﹁悪
け ﹁
神 を 地上 に投 げ棄 て ろ (
嘗 8 δ 92 ω
霞 冨 8冥o°
)
﹂
経 て ボ ー ド レー ル の次 の 一行 を生 ん で し ま った 。 カ イ ンよ 天 に 行
が 十 九 世 紀 西 欧 で流 行 を 見 た 。 そ の流 行 、 バ イ ロンか ら ユゴ ー を
ヤ ー ウ ェの許 を 追 わ れ て 逃 げ る 弟殺 し の下 手人 カ イ ンを 歌 う こと
ェは 、 ﹁病 気﹂ 治 癒 者 た る 収 斂 点 ・ヤ ー ウ ェに縋 る 生 を蔑 視 し た 。
﹁悪 いC ﹂ は コ 種 の病 気 (①博
昌O }
(﹃
9昌パげO圃
け
)﹂だ 、 と 言 う ニー チ
点 共 有 の自 覚 が 持 てな い時 、 私 が ﹁私﹂ に手 を 触 れ よ う と す る と 、
﹁痛 い っ﹂と 跳 び 上が る 。こ れ は 病 気 だ 。。o諺 99 8 が 円 滑 に でき
8 昜 。罰
窪 6ρ ω
。冪 。露 。ω o①註 ωω
自
な い病 気 。﹁
oo蔘 90昌ooが 、 お 悪 い﹂ の で病 名 は び9αoo昌ω
99 8
(以 下 、 ヨ震 く9奮
い C﹂ と 略 記 )次 に 二 、 三 の症 例 を 記 し て お こ う 。
(三 ) 友 人 K の自 殺 の原 因 は お 前 だ 、 と 言 わ れ た か と思 って
(四 ) 目本 国憲 法第 十 九 条 ﹁思 想 及 び良 心 の自 由 は 、 こ れ を侵
﹁
良 心﹂ が ﹁ち く ちく 痛 み﹂ 世 間 か ら は遠 ざ か り 、 やが て 、
胸 に沸
し て は な ら な いしは 、﹁西 欧 思 想 と し て の良 心 の自 由 ﹂だ 、
とす る学
口 を揃 え て言 う 。我 が 筑 摩 ﹁明治 文 学 全 集 ﹂ 全 百巻 中 に ﹁
良心 の
き 上 が る ﹁黒 い影 ﹂ に怯 え た のは 、 小説 ﹃こ こ ろ﹄ の 主入 公 。作
自 由 ﹂ は 二例 、 いず れ も キ リ スト者 の信 仰 告 白 。 し か し信 教 の自
者 ・漱 石が 用 い た ﹁
良 心 ﹂ の語 、 こ の 一例 の み 。次 は ト マ ス ・マ
(
ω
oま
由 な ら 第 二十 条 にあ る。 第 十 九 条 は ﹁思 想 及び 良 心 ﹂ の自 由 を保
説 が あ る 。。○磊 90篝 ① の自 由 は信 仰 の自 由 だ と 、英 独仏 の辞 書 、
ω
窪 )﹂ を持 てな い、 生 来 の芸 術 家 の ﹁傷 つき 易 く (
一
①8窪 くΦユΦ?
ンの ﹃ト ニオ ・ク ンー ゲ ル﹄。 ﹁
確 か に 基 礎 づ けら れ た 自 己 感 情
斗 oず)﹂噸神 か らも 世 間 か らも ﹁断 絶 し て い ると いう 感 情 (
○①惣三
は自 由 にし て平 等 、 か つ ﹁理 性 (
同
〇一
ω
O昌) と 8 塁 9魯 。o﹂を 享 受
証 す る のだ 。 そ の趣 旨 は ﹁世 界 人 権 宣 言 ﹂ 第 一条 、 人 (
ずo§B⑦)
σq①
σ
q急 巳 。8 ω9ぴωけ
αq・蒙三 )﹂ H ﹁良 い C (
αq暮 ①ω O⑦乏団
ω
・
い る。 幼 児 誘 拐 殺 人 の犯 人 が 、 死刑 執 行 の直 前 に、 自 分 を 自 白 に
自⑦
の 盡娼-
(みな み
今 後 の世 界 の並旦遍的 な 60口の
o凶
Φ溢oo を 。
た かあ き ・西 洋 思 想 史 )
す る、 に呼 応 し て い る。 カ イ ンも 我等 も みな ﹁入 ﹂、 こ こ に こそ
鮎奠 ωΦ冨 鎚紳
団
8 )﹂が 引 き 起 こす 苦 悩 を 主 人 公 は め ん めん と 訴 え て
(
需 詳霞 げ簿 同
§
追 い込 んだ 刑 事 に 感 謝 の言 葉 を 遺 し たと いう 実 話 も あ る 。﹁悪 い
C﹂ は 、個 我 と 社 会 我 の ﹁関 係 の混 迷
勹o詳ω﹂ (ベ ルク ソ ン)。 つま り 心 が 引 き 裂 か れ て 8 富 9窪 8 が で
もののふ
き な い。 死な せ て貰 って感 謝 し た の は死 ぬよ り 辛 か った から だ 。
﹁良 心 の苛 責 ﹂ に耐 え かね 、 武 士 の廉 恥 を 知 ってな ら 、 自 白 を せ
ず に自 刃 を 選 ぶだ ろう 。 ﹃こ こ ろ﹄ の主 人 公 は ﹁明 治 の精 神 に殉
一47一
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