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幸せとは命の長さではない

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幸せとは命の長さではない
優秀賞
幸せとは命の長さではない
茨木市立東雲中学校 2年
山元 佳保(やまもと かほ)
「もし、産まれてくる我が子がダウン症だと分かったら、あなたはその子を産
みますか、それとも産みませんか。」
これは、授業で障がい者について学んだ時のアンケートである。私は、どちら
に丸をつけるか迷いました。しかし、そこであるドラマを思い出したのです。
そのドラマは、「たったひとつのたからもの」という題名で、産まれてきた我
が子がダウン症と診断された夫婦の六年二ヵ月にわたる戦いを描いた壮絶な愛の
ドラマです。
そもそも、ダウン症とは何か。ダウン症は二十三組あるうちの二十一組目の染
色体が一本多いことによってさまざまな症状がでます。
その症状の一つとして、ダウン症の人の顔は同じような顔をしています。パッと
見ただけでダウン症と分かるような顔をしています。
このドラマの中で登場する、ダウン症の男の子、「秋雪くん」は、心臓の先天
的な欠陥とそれによる肺の疾患の合併症のため、生まれてすぐに、「余命一年し
かありません。」と宣告されました。この言葉は、とても重いと思います。私は
今、十三歳ですが、一年しか命がないと考えると、全く想像がつきません。
しかし、秋雪くんは六年二ヵ月も生きることができたのです。私は、秋雪くん
が必死に生きようとする姿に、心を打たれました。
秋雪くんが六年二ヵ月も生きることができたのは、父と母の懸命な努力のおか
げでもあったと思います。母は、最初息子がダウン症であることを受け入れられ
ませんでしたが、我が子を守ると決めた以上、夫婦で大切に育てていくことを決
意しました。風邪をひかせてはいけない等、多くの事に細心の注意が必要だった
秋雪くんが宣告された余命一年よりも長く生きることができたのは、やはり、父
や母、周りの人達のおかげであったのではないのかと思います。
私が今でも心に残っているシーンが、秋雪くんが亡くなってしまうところです。
秋雪くんは、寝たまま息をひきとってしまいました。自分が親の立場になって考
えると、悲しみからどうしても涙が止まりませんでした。辛い時や、苦しかった
時のことを思うと、今はもう、そんな苦しみなどから解放されて、天国で元気に
暮らしているのだろうなあと、ふと心の中で思いました。
そんな感動的なドラマを通して、私は四つのことに気付くことができました。
一つ目は、「幸せ」の本当の意味が分かったということ。普段、何気なく過ご
す一日の間にも、振り返ってみれば、たくさんの幸せがつまっていることが分か
りました。今まで、何でもないように思っていたこと、全く気にも留めなかった
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優秀賞
ことまで、「幸せ」であることに気付かされたのです。
二つ目は、人は多くの人に支えられて生きているということ。秋雪くんは、本
当に色々な方に支えられて生きてこれたのだと感じることができました。もちろ
ん、私に置き換えてもそうだと思います。私も家族や友達、先生方などたくさん
の人に支えられて、今を生きていられるのだと思いました。
三つ目は、命の重みは皆同じであるということ。障がいの有無に関係なく、一
つの命を受けてこの地球に産まれてきたことには変わりないので、命の重みはど
の人も同じであるということにも気づきました。
そして、最後に四つ目。それは、幸せとは命の長さではないということです。
これは、秋雪くんが証明してくれました。わずか、六年二ヵ月という短い人生で
幕を閉じた秋雪くんだったけど、たくさんの愛に包まれ、毎日幸せな日々を送っ
ていました。毎日死と隣り合わせで生を見つめ、必死に生きたことにより、一日
一日を生きることの重みが誰よりも分かっていたのだと思います。私達は、何歳
まで生きられるか分からないけど、一日一日を大切に精一杯生きていれば、それ
がきっと幸せにつながってくるのだと思いました。幸せとは、今を生きる喜びの
ことなので、命の長さなど関係ないのです。
こうして、私は、「産む」の方に丸をつけました。
子どもが幸せに暮らせないからと、最近は産む前にダウン症だと分かると、薬
を使って流産してしまう人がいます。でも、私は、そうしてせっかく授かった命
を流産させてしまうことの方が、子どもを不幸にしているのではないのかと思っ
ています。子どもが本当に願っているのは、たとえ障がいがあっても、両親の愛
をたくさんうけて生きていくことだと思います。
私は、これから一日一日を精一杯、悔いのないように生きていきたいと心に決
めました。
そして、この言葉を今、胸に刻みたいです。「幸せとは命の長さではないので
す。」と…。
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