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当院における心臓 CT への取り組み

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当院における心臓 CT への取り組み
当院における心臓 CT への取り組み
瀬戸内海病院 鈴木 幸雄
[はじめに]
当院に 2007 年 4 月より 64 列 MDCT が導入され、
心臓 CT への取り組みを始めた。当初、右も左も
わからない状態で始めたので試行錯誤の日々で
あったが、そこから学んだことを今回報告したい
と思う。
[1.スループットについて]
SSCT の頃は、造影検査のルート確保等を患者さ
んが CT 室に入室してから行っていたが、心臓 CT
を行う上で今までと同じやり方を行うと、明らか
に CT 室での滞在時間が延びてしまうため、他の
検査に支障を来すおそれがある。そこで、CT 室
以外でできることを別室で行ってもらって、少し
でも CT 室での滞在時間が短くなるよう見直しを
図った。
(Fig.1)
Fig.1 冠動脈検査の手順
[2.造影プロトコールについて]
評価の対象による造影法の違い(冠動脈 or 冠動
脈+心機能)があるが、共通する問題は、SVC か
らのアーチファクトであり、ここからのアーチフ
ァクト消すことが大前提のプロトコールを使う
必要がある。つまり、撮影開始までに心臓に造影
剤を送り込み SVC をフラッシュする必要がある。
では、心機能解析で必要となる作業は何かと考
えると、拡張期と収縮期の Phase から左心室の短
軸画像を作成し、心筋と中隔をトレースしなけれ
ばならない。ここで問題となるのが、右心室と接
する境界のトレースである。この時、右心室の
CT 値が低すぎると、中隔のトレースが困難とな
るため、ある程度 CT 値を確保する方が作業的に
楽である。すなわち、冠動脈だけの評価であれば、
造影剤+生理食塩水フラッシュ、冠動脈+心機能解
析であれば、造影剤+(造影剤+生理食塩水:混合
注入)が Better であると思われる。(Fig.2)
Fig.2 フラッシュの違いによる中隔描出の差
Fig.3 低体重患者における低濃度造影剤使用例
従って、当院では、当初、高濃度造影剤のみ使
[3.高齢者撮影について]
用。体重 1Kg あたり 1cc を 15 秒注入。その後、
高齢者撮影では、比較的安定した画像を得にくい。
混合注入を 8 秒行っていた。(23.3mgI/kg/s)
殆どの要因は、息止め関係である。そこで、今ま
しかし、300HU 以上の冠動脈 CT 値を確保でき
でに当院で経験した例を紹介する。
るが、安定しないと言う問題が生じた。検査数を
重なるにつれて、原因がある程度特定でき、心拍
その1)
出量の変化によるものと考えられた。すなわち、
撮影中、しっかり息止めできているが、お腹が動
単位時間・体重あたりのヨード量を一定としても、
いてしまい、アーチファクトが入る。対策として、
心拍出量の影響で得られる CT 値にばらつきが生
吸気時、腹式呼吸をしてお腹に力を入れるよう意
じる。では、心拍出量にあわせて、ヨード量を変
識してもらう。それでも動くようであれば、ボデ
化させればよいと考えられるが、CT 撮影時の心
ィーバンドを用いてお腹を圧迫し、動きを抑制す
拍出量を事前に知ることは不可能である。従って、
ることで、アーチファクトの軽減が行える。
心拍出量の影響を受けにくいプロトコールを用
いる必要がある。
ここで、造影剤投与における体内での変化を考
その2)
撮影中、しっかり息止めしているように見えたが、
えてみた。簡単に考えると、かなり高い CT 値の
画像を確認すると、どうも息止めが出来ていない
造影剤が、体内で血液によって希釈された状態を
ように見える。
画像として捉えているということになる。
↓
ならば、濃度を落として量を増やし、血液で希
なぜか?
釈されにくい環境を体内で作ればいいのでは?
↓
と考え、高濃度主体から、体重によって低濃度・
高齢者は息止めをしても、鼻から吸気が抜けるこ
中濃度・高濃度と使い分けを行ってみると、比較
とが多い。対策として、当院ではシンクロで使用
的安定した CT 値が得られた。実際、低体重患者
されている鼻栓を撮影時に用いている。息止め練
さんに低濃度造影剤を使用すると、心拍出量の増
習をして、鼻から脱気が確認されたら、是非使う
加に伴い CT 値の低下を認めたが、大きな変動は
ことをお勧めする。たかが鼻栓であるが、当院で
少なく、比較的安定した値が得られた。
(Fig.3)
はかなりの画質改善が見られた。息止めを必要と
従って当院では、体重によって造影剤を使い分
する検査全般において、有効な手段と思われる。
けし、単位時間・体重あたり 23.3mgI を投与して
いる。また造影剤の選択基準は、注入速度が 4ml/s
[まとめ]
以上の高速注入になるよう選択しているが、現在、
最適な画像を得るためには、患者さんの協力なく
新たなプロトコールを検討中であり、データが集
してはあり得ない。そのためには撮影者として、
まり次第、報告したいと思う。
ベストを尽くす義務があると考える。
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