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研 究 報 告
一27-一 昭 和60年11月(1985年) 研 究 報 告 納 豆 製 造 過 程 に お け る成 分 変 化(第2報) 水 溶 性 タ ン パ ク質 に つ い て 一 池 田 ひ ろ*,津 野 貞 子** The Componential Changes During the Manufacturing Process of Natto (Part 2) —On the Water Soluble Proteins— Hiro 1緒 Ikeda, Sadako Tsuno 豆 および粉末大 豆使 用納豆 につ いてゲ ル ロ過 および電 言 納 豆 は 蒸 煮 大 豆 に比 べ 消 化 性 に優 れ 栄 養 価 値 の 高 い 気泳動 に よ り比 較 検討を行 った のでそ の結果 を報告す る。 食 品 で あ る 。納 豆 に使 用 す る 大 豆 に は 中 粒 と小 粒 が あ り,一 般 に は小 粒 大 豆 を 使 用 した納 豆 が好 ま れ て い る が,そ そ こで,大 豆 の 形 態 の 違 い が 発 酵 過 程 中 の 成 分 の 変 化 や 製 品 の 出来 上 り時 聞 な ど に影 響 を 与 え る ので は な い か と考 え,粉 末 大 豆 で 納 豆 を 製 造 し,短 時 間 で 栄 養 価 値 の 高 い食 品 と して 利 用 出 来 るか ど うか を 知 る た め 前 報1)に お い て 旨味,香 ア ミノ態 窒 素,ア り,栄 養 的価 値 に関 連 の 深 い ン モ ニ ァ 態 窒 素,糖,ビ タ ミ ンBz の各 成 分 につ い て 丸 大 豆 使 用 納 豆 との 比 較 検 討 を 行 っ た 。 そ の結 果,形 え,丸 II 実 験 方 法 の 理 由 は 明 らか で は な い 。 態 の 違 い が 納 豆 菌 の繁 殖 に影 響 を 与 大 豆 よ り表 面 積 の 大 き い粉 末 大 豆 にお いて は 短 時 間 で 納 豆 化 が 行 わ れ る とい う結 論 を 得 た 。 ま た,納 豆 菌 が 生 産 す る 加 水 分 解 酵 素 の う ち最 も納 1.試 料の調 製 納 豆 菌:宮 城 野 納 豆 製 造 所(仙 れ たBacillus 台 市)で 純 粋 培 養 さ nattoを 使 用 した 。 原 料:丸 大 豆 は ア メ リカ産 の もの を 使 用 し,粉 末 大 豆 はそれ を 一196。Cで 瞬 間 凍 結 粉 砕 した もの を 使 用 した 。 納 豆 の 製 造:前 で2時 2実 報D同 様 に行 い 発 酵0か ら20時 間 ま 間 ご とに と り出 し,こ れ を 試 料 と した 。 験方 法 各 試 料 を 乳 鉢 で 充 分 す りつ ぶ した の ち一 定 量 を 秤 取 し,約6倍 の4M尿 素 を 含 む0.1MNaClに 懸濁 し 豆 の発 酵 過 程 に 関 与 す る 酵 素 は タ ンパ ク質 分 解 酵 素 で 1時 間 室 温 で 撹 伴 抽 出 を 行 い,8,000×gで20分 あ り,こ の 酵 素 に よ って タ ンパ ク質 は ペ プ チ ドや ア ミ 心 分 離 後 そ の 清 澄 液 を と り,こ ノ 酸 に ま で 分 解 さ れ2・9)納 豆 の 旨味や 消 化 性 に影 響 を で1時 間 遠 心 分 離 し,こ の 清 澄 液 を 水 溶 性 タ ンパ ク質 与 え て い る と云 わ れ て い る。 抽 出 液 と した 。 そ こで 今 回 は こ の タ ンパ ク質 分解 酵 素 に よ る発 酵 中 の 水 溶 性 タ ンパ ク質 の水 解 過 程 を,形 態 の異 な る 丸 大 *京 都女子大学 食物 学科 調理学第1研 究 室 **日 本生活 医学研究 所 1)Sephadexに Sephadex れ を さ らに56,000×9 よ るゲ ル ロ過 G-50を 水 に よ く分散 させ24時 間 室 温 に 懸 濁 放 置 して 完 全 に 膨 潤 さ せ た の ち4M尿 0.1MNaC1溶 間遠 液 で3回 素を含む 洗 浄 した も の を直 径1.5cm, - 28- 食物学会誌・第4 0号 I I I 結果と考察 生大立 1 8 1 .6 ρhu i 1 .2 1 .0 0 . 8 2 4 ρ り ハU 日 ロ { ) 父 町 一 ヨ パ ﹁ ︿ VEll--- 1 .4 1 2 0. 4 一言、¥切ミ)ど一﹂川Tt 馬断畑、ソヘ入、11111 1 .8 0 . 2 。 o KA V e p h a d e xG-50による水溶性タンパク 図1 S 1 ) S e p h a d e xによるゲノレロ過 S e p h a d e x G-50 による水溶性タンパク質のクロマ トグラムを図 1 および図2 に示した。吸光度 280nm の 測定では,生大立,蒸煮大豆については丸大豆,粉末 ,0 . 8および1.0 付近に 3つのピーク 大豆ともに KAV0 がみられ,発酵 6時間では KAVO のピークが減少し KAV0 . 6の位置に新しいピークが現われ, KAV0 . 8の 1 0 時聞になると丸大豆では ピークは増加する。発酵後 KAVO のピークはわずかとなり 0 . 7 付近に新しいピー クが現われ, KAV0 . 8および1.0のピークは増加する。 発酵2 0時間では 280nmの吸収のほとんどが KA . 9 VO および1.0のピークの位置に観察される。 Lowry法によるタンパク質の測定では,生大豆では KA .8および1.0の位置にはごくわずかしか検出さ VO . 8および1.0 れず,また蒸煮大豆においても KA V0 の位置のタンパク質量は少ない。とのことより生大豆, 質のゲ jレロ過 蒸煮大豆における 0 . 8および1.0のピークは紫外部 吸収をもっ低分子のペプチドやアミノ酸であると推察 長さ 45cmのカラムに均一に流し込み, 4M尿素を含 される。ゲ Jレロ過でみるかぎり丸大豆と粉末大豆の違 む 0 . 1M NaCl 溶液で充分平衡化を行ったのち生大 いは明確でなく,両者ともに発酵時間の経過ととも 0,2 0 時間の各抽出液につい 豆,蒸煮大豆,発酵 6, 1 に高分子のタンパク質は納立菌により加水分解され てゲルロ過を行った。 まず,抽出液 0 .2mlをカラムに吸着させ, 4M尿 素を含む 0 . 1M NaClで溶出 ( 1 0m l j h r ) し,フラク KAVO . 8付近のタンパク質量は増加する。発酵2 0時聞 .8のピークのタンパク質量は減少す になると KAVO るが 280nmの吸収はほとんど変化しないととろから, ションコレクターで1.5m lずつ秤取して分画を行い, さらに分解されて低分子のペプチドやアミノ酸にまで 各画分の 280nm の吸光度を測定した。 分解が進んだものと推察される。 あわせて Lowry 法 l とよりタンパク質の定量を行い, 各ピーク 曲線の総面積からこれらピークのタンパク質が全体に 占める割合を算出した。 2 ) ディスク電気泳動 8M尿素を含む 1 5 9 彰ポリアクリ jレアミドゲル電気泳 動による結果を図 3 および図 4 に示した。図3 にみられ るように生大豆,蒸煮大豆,発酵 2時間および 4時間 2 ) ディスク電気泳動 ポリアクリルアミドゲル電気泳動は D a v i s 1 0 ) 方法 l とより 8M尿素を含む 1 5 9 6ゲ 、 jレを用い, らの 後の丸大豆および粉末大豆ともにゲノレの上部に 6本の トリスー 鮮明なバンドを示し,その他数本の不鮮明なバンドが みられる。生大豆ではゲ、ノレの上端部および中央部に特 グリシン緩衝液中で行った。 3 ) 分子量の測定 に濃い鮮明なバンドが 2本認められるが蒸煮大豆では b e r,Osb o r n10)らの SDSポリア 分子量の測定は We とのバンドは消失する。これは高分子のタンパク質が クリルアミドゲ、ル電気泳動法に従い, 0 . 1 9 6SDSを含 加熱 i とより水解または変性凝固したためと考えられる。 む1 2 . 5 9 6ゲノレを用い O.lM リン酸塩緩衝液 ( 0 . 1形 蒸煮大豆と発酵 2時間および 4時間後の試料では大き SDSを含む, pH7 .2 )中で行った。 な変化は認められないが発酵 6時聞になると急速に水 SDS測定用には各抽出液の最終濃度が 1 9 6SDS,1 9 6 2 -メ jレカプトエタノーノレ, O.OlM リン酸塩緩衝液 (pH7 .0 )になるように調製したのち 6 0C3 0 分間還元 0 させたものを使用した。 " " ' ' 5 解が進み泳動バンドは中央より先端部に移動し, 4 本の成分が認められる。粉末大豆は発酵 6時間後にか なり低分子化した泳動ノインドを与え,丸大豆よりも加 水分解速度が速い乙とを示している。図 4の発酵 1 0 " " ' ' 2 0時間の各泳動図にみられるように発酵時間の経過と ともにバンドの数は減少し,粉末大豆では 1 4 時間で先 昭和 6 0 年1 1月(19 8 5年) ~ h大 , i . 29- 1 りふん , i . I I !1~主主、 K1J. 3 6 ; W 2 1 2 " 1 1 2 1 2 Eロ()話以一一副ぎ一Illl 1 2 2 1 j o内初 1、' i : 1 1 1 1 1 2 0. 4 0 . 2 2 1 0 . 8 1 - 2 4 j o内ねり 1: , i ' 1 1 1 1 1 2 。 j o内f20l 1 : S I 1 1 0 . 1 0 . 2 0 . 5 自 民 1 .0 吉野叫)逗刊一一将官、ご入以 11111 2 1 1 o I 伴G I I . ' i : 1 1 1 1 。 。 KAV 、 0 . 5 KAV 副 1 .0 。 e p h a d e xG-50による水溶性タンパク質のゲソレロ過 図2 S 端部に 1本の鮮明なバンドの他にいくつかの不鮮明な る 。 バンドがみられるが,発酵 20時間では先端部の 1本の 3 ) 分子量の推定 みとなる口丸大豆ではバンドの消失は徐々に進行し, SDS ポリアクリルアミドゲ、ル電気泳動による標準 発酵 20時間で中央部と先端部に 2本のバンドがみられ タンパク質の分子量と泳動速度の関係を図 5に示した口 る 。 この関係に基づいて泳動距離を分子量に変換し,発酵 この結果より,プロテアーゼによって粉末大豆では 過程における分子量の経時的変化を示すデンシトメト 約1 4時間でタンパク質の大部分が低分子のペプチドや リーによるパターン(図 6および図 7 )を作成した。図 アミノ酸にまで分解されるが,丸大豆が同程度まで分 6 'とみられるように生大豆では分子量分布は 100,0 0 0 " ' ' 解されるためには発酵 20時間が必要であると推察され 000の広範囲にわたっており,分子量 100, 000近く 1 0, 円 ο n u 食物学会誌・第 4 0号 九大豆 粉末大 I A l 4A ・ J今 1 i {酔 2 1 1 寺1 1 1 1 'etUH - ; I : < . _ r , . 大以 品川上手 j l F ' 1 : 大U 1 i { 時 G l h f ' l l 1 l 図 3 製造過程中の水溶性タンパク質の変化 (8M 尿素 1 5 9 6ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動) 泥酔 8 1 1年IIIJ - 31- 昭和60 年1 1月(1985年) 九大豆 粉末大tJ. 発酔 1 0 1 1 年 ! 日l ? C骨 子 発酵 発酵 1 2 1 1 . ' i = 1 I1 1 4 1 1 キ │ 間 1 6 1 1年1 1 1 1 発 両 手 1 8 1 1キ1 1 1 1 図 4 製造過程中の水溶性タンパク質の変化 (8M尿素 15%ポリアクリノレアミドゲルによる電気泳動) 発酵 2 0 1 1 年1 1 1 1 食物学会誌・第40号 - 3 2- l ホスホリラーゼ (MW:9Ax1 (1) 4 一2 アルブミン (MW:G.7x1(1) 骨一一・ 1 オボアルブミン (MW> 1 .3 :x1 (1) 骨 一 一 lカーボニックアンヒド、ラーゼ (MW::3.0XI01) . . 5 トリプシンインヒビター (MW:2.01X1 (1) 埠 一 一 Gα ラクトアルブミン (MW:1 . 4 4X1 (1) +一一 4 . 7 P 4 . G (切。︻) 4 . 5 耐 廿 4. 4 , ' 、 , ' " 4 . 3 4 . 2 4. 1 4 . 0 0 . 2 0 . 5 υ に 0 . 1 ハ υ 。 0 . 7 0 . 8 0 . 9 1 .0 村I ~.J 移 動 l i 図 5 SDS ポリアクリルアミドゲ、ル電気泳動による標準タンパク質の移動度 ク質の熱変牲が著しいためと考えられる。しかし発 に大きなピークがある。蒸煮大豆では加熱 l とより水解 ノf されて分子量 1 0 0, 0 0 0近くのタンパク質は減少し, 酵 6時間になると急速にプロテアーゼによる加水分解 60, 000. . _ ,4 0, 000のタンパク質が増加する。発酵 2時間 0, 000以上のものは減少し 30, 000. . _ , が進み,分子量 4 および 4時間では蒸煮大豆に比べ著しい差はみられな 1 5, 000のものが増加する D 発酵 8. . _ ,1 2時間では徐々に 0, 0 0 0 以上のものは いが,発酵 6時間になると分子量 4 0,000のポリペプチドは減少し 加水分解が進み分子量 3 0, 0 0 0. . _ ,1 8, 000の範囲に多く分布し, 著しく減少して 3 20, 000 前後のものが増加する。発酵 1 4時間になるとほ 発酵 4時間まで存在していた分子量 1 5, 0 0 0 " " ' _ _ ' 1 0, 000の 0, 0 0 0. . _ ,1 0, 0 0 0の聞に分布し,丸大豆の 20時 とんどが 2 ものは減少している。これらのタンパク質は納豆菌の 間発酵のものとほぼ同程度の分布状態であった。その フ。ロテアーゼによって色素と結合できない程度に低分 0, 000 近くのポリペプ 後も徐々に分解は進み,分子量 2 子化されたものと考えられる。その後発酵 8. . _ ,2 0時間 チドはさらに減少し, 1 0,000に近いものが増加する。 では時間経過に伴って徐々に分子量3 0, 000 前後のもの 丸大豆,粉末大豆ともに発酵過程中にみられる分子 0, 000. . _ ,1 0, 000のポリペプチドが増加する。 が減少し, 2 0, 0 0 0. . _ ,1 0, 000のポリペプチドの増加は高分子のタ 量2 図 7に示すように粉末大豆は丸大豆とほぼ同様な傾 ンパク質の減少度より小さいが,これはこれらのタン 0 0, 000近くのタンパ 向を示すが,蒸煮大豆の分子量 1 パク質のほとんどがさらに低分子のペプチドやアミノ ク質の減少は丸大立ほど顕著ではない。これは粉末大 酸にまで分解されたためと考えられる。 豆の方が表面積が大きいため加熱の影響が大きくタン e p h a d e x G-10を用い 6M 塩酸グアニジ そこで S - 33- 昭和6 0 年1 1月(1 9 8 5年) 生大医 発酵1 4時間 発酵6時間 発酵 8時間 発 酵 16時間 発酵 211,~:mj 発酵 1 0時間 発酵1 8時間 発酵4 1 時間 発酵 1 2時間 発 酵2 0 時 ! 日j 来系:大 ' J . 出制町一主宰 噌(︺同×一[ 噌()︻× N 噌(︺同×噌 噌()-[×。 噌()同×∞ 畦{)同×。-[ N 噌()円×円 噌{)同× 守(}︻×噌 噌{)同×。 噌()同×。同 噌()︻×∞ 日(}円×戸 千()同× N ザ()-[×噌 噌()同×匂 申()同×∞ 申()同×。同 1 1 分 量 図 6 SDS ポリアクリルアミドゲノレ電気泳動によるデンシトメトリー図〈丸大豆) 波長:AEx 5 5 3nm; スリット: o .2X3mm; モード:透過リニアスキャンニング法; スキャンニング速度: 50mm/min; チャート速度: 50mm/min - 34ー 食物学会誌・第4 0号 発酵6時間 発酵 1 4時 n I J 蒸煮大豆 時間 発酵8 発酵1 6時 間 発酵 1 0時間l 発酵 1 8 1 1 王 子 ! 日j 発酵 1 2時 ! 日i 時間 発 酵2 0 1 出鰐友田特 生大豆 発酵2時間 発酵 4 1 1 寺 陪j 守()-×円 申()-× N 申{)-×噌 噌()同×。 ×円 守()同×∞ {)H 噌()︻×。一[ 守 守()円× N ×∞ -マ()円×噌 Y ( )︻ 司 噌(}同×。 守()同×。-[ N 守()︻×円 司()同× ︻×市 Y() 司 噌()同×。 申()同×∞ 噌()︻×。︻ 子 分 量 図 7 SDS ポリアクリ Jレアミドゲノレ電気泳動によるデンシトメトリー図(粉末大立) 波長 :λEx 553nm;スリット :0.2X3mm; モード:透過リニアスキャンニング法;ス キャンニング速度: 50mmjmin; チャート速度: 50mmjmin 昭和 60 年1 1月(1 9 8 5 年) - 35ー 4 . 0 3 . 8 [ 。 3.6 1:ミオグロビン (MW:17, 2 0 1 ) 切 ~." 2:ミオグロビン I十 I I(MW:14, 6 3 2 ) :~ :ミオグロビン 1(MW:8, 2 3 5 ) 、-『 、 . ‘ ん ご ヘ 3 . 4 1:ミオグロビン I I(MW:6, 3 8 3 ) 5 :ミオグロビン I I I(MW:2, 5 5 6 ) ( i :ミオグロビン 1 -}11(MW:1, 6 9 5 ) 3 . 2 3 . 0 。 0 . 2 0 . 4 0 . 6 0 . 8 1 .0 K < ¥ v 図 8 Sephadex G-lO による 6M 塩酸グアニジン存在下でのポリペプチドの標準曲線 ンを溶媒とし,生大豆および丸大豆の蒸煮大豆,発酵 ( 2 )および ( 3 )のピークが増加し,分子量 3, 600のピーク 6時間, 20時間の各抽出液を塩酸グアニジン 6 M お ( 5 )が新たに溶出される。発酵20 時聞になると著しく水 よび2 -メ Jレカプトエタノール 1労の濃度になるよう調 解が進み, ( 1 )( 2 )のピークは減少し, ( 3 )のピークは著 製したのち 60C,30分間で還元させた溶液についてゲ 5 )のピークは著しく増加し,新たに分子 しく減少, ( ルロ過を行い,ポリペプチドの標準曲線により分子量 量3,100( 6 ),3, 000( 7 ),2, 300( 8 ),1 ,600( 9 )のピークが の測定を行い,その結果を図 8および図 9に示した。 とみられるように発酵 20時間に 溶出される。この結果 l 図 9にみられるように生大立では分子量 17, 000( 1 ) , なると大部分のタンパク質が分子量 4, 000以下のペプ 8, 100(2~ 5, 3 0 0 ( 3 )の 3つのピークが溶出されるが,蒸 チドにまで分解されているととが裏付けられる。 0 煮大豆では加熱によってピーク ( 1 )のタンパク質および 以上の結果より大豆中の水溶性タンパク質の発酵中 ピーク ( 2 )のペプチドが減少するがピーク ( 3 )が増加し, のフ。ロテアーゼによる水解は発酵 4時間以後急速に進 新たに分子量 4, 200のピーク ( 4 )が溶出される。発酵 6 み,納豆になると一部のタンパク質は残存するが大部 時聞になるとプロテアーゼによってタンパク質やペプ 分のものは分子量 20, 0 0 0 1 0, 000のポリペプチドおよ チドは水解されて,さらに(1)のピークは減少し代りに び低分子のペプチドやアミノ酸にまで水解される。ま 。 円 。 円 食物学会誌・第4 0 号 I ' t 併G I I S : I日 ! と 1 :大 ' . i _ . ) 0 . 5 ECSN J 対 と 一 ハ {I ~t 併 2011 ,)":1 1\1 方'~!!:k.ì}. " , 0 > ( へ 0 . 5 0 . 2 0. 4 0 . 6 0 . 8 0 . 2 1 .0 0. 4 0 . 6 1 .0 図9 S e p h a d e xG-10による 6M塩酸グアニジン存在下でのゲ、 jレロ過 :1 .7X1 04; 2 :8 . 1X1 03; 3 :5 . 3X1 03; 4 :4 . 2X1 03; 5 :3 . 6X1 03; 分子量: 1 3 6 : 3.1X103; 7 :3 .OX103; 8 :2 .3X103; 9 :1 .6X10 た分子量推定やディスク電気泳動により丸大豆の発酵 方が各成分の変化が速く,今回の水溶性タンパク質の 2 0時間のものと粉末大豆の発酵 1 4時間のものの水解程 水解過程と一致した。さらに今後旨味と関係するアミ 度はほぼ同じであると考えられる。 ノ酸組成の変化についての検討が必要である。 前報においてもほとんどの成分は発酵 4時間までの 変化は少く,またエネルギー源である糖を添加して納 I V要 約 豆製造を行った場合にも粘質物の生成は発酵 4時間ま 納豆製造過程中の水溶性タンパク質の水解過程をゲ でほとんどおこらないと乙ろから,納豆菌の発芽や増 Jレロ過法,ポリアクリノレアミド電気泳動法を用いて明 殖のためには温度 4 0C,湿度8 0形で最低 4時間が必要 らかにし,また大豆の形態の違いがタンパク質の水解 であると推察される。 過程にどのような影響を与えるかを知るため丸大豆と 0 また前報でのアミノ態窒素,アンモニア態窒素, 粉末大豆を使用して検討を行った結果は次のとうりで pH,ビタミン B2,糖の各成分の増減は丸大豆の発酵 ある。 2 0 時間と粉末大豆の発酵 1 4時間の植がほぼ等しく,形 ( 1 ) 態の違いにより丸大豆より表面積の大きい粉末大豆の 経過とともに KAVOに溶出されたタンパク質の大部分 S e p h a d e x G-50 によるゲルロ過では発酵時間の - 37ー 昭和 60 年1 1月(1 985 年) は水解され, KAVO.8付近に溶出されたタンパク質が 増加する。また一部のタンパク質は 280nmの紫外部 吸収をもっ低分子のペプチドやアミノ酸にまで分解さ れた。しかしゲルロ過では丸大豆と粉末大豆の違いを 明らかにする乙とは出来なかった。 ( 2 ) 蒸煮大豆,発酵 2および 4時間の水溶性タンパク 質は分子量 100, 0 0 0 ' " ' ' 1 0, 0 0 0の広い範囲に分布し,発 0 0 0 ' " ' ' 1 0, 000の範囲に分布する。発酵 酵 6時間では 40, 0 0 0 近くのものは減少し, 時間の経過とともに分子量40, 20, 0 0 0 ' " ' ' 1 0, 000の範囲のポリペプチドが増加した。ま た丸大豆の発酵20時間と粉末大豆の発酵 1 4 時間のポリ ペプチドの分子量分布はほぼ同じであった。 以上の結果より,大立の形態の違いが納豆菌の繁殖 に影響を与え,表面積の大きい粉末大豆においてフ。ロ テアーゼ、の活性も盛んとなってタンパク質の水解が速 くすすみ,発酵 14時間で納豆になることが明らかとな っf こ 。 終りに試料大豆を御提供いただいた大阪ガス株式会 社に深く感謝致します。 参考文献 1 ) 池田ひろ,津野貞子:本誌, 3 9,1 9,( 1 9 8 4 ) 2 ) 渡辺篤二,中山修:農芸化学会誌, 3 6,8 9 0, ( 1 9 6 2 ) 3,2 9 7, 3 ) 越山育則,福島男児:栄養と食糧, 2 ( 19 7 1 ) 4 )大塚一止,武恒子:新潟大学教育学部紀要, 1 8, 37 ,(1966) 5 )斎尾恭子,若林昭,渡辺篤二:農芸化学会誌, 4 2,2,90, ( 1 9 6 8 ) 6 )浅野三夫,宮本義広,大久保一良,紫崎一雄:日 本食品工誌, 2 1,2 6 2, ( 1 9 7 4 ) 7 ) 伊藤清技:栄養と食糧, 23,1 9 6,( 1 9 7 1 ) 8 )平宏和,姥名春枝,杉村敬一郎,桜井芳人:栄 養と食糧, 1 1,3 5 1, ( 1 9 5 8 ) 9 ) 平春枝,平宏和,桜井芳人:栄養と食糧, 1 7, 219,( 19 6 4 ) 1 0 ) 電気泳動学会編:電気泳動実験法,文光堂(19 7 8 )