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一般国道113号舗装修繕におけるリフレクションクラック

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一般国道113号舗装修繕におけるリフレクションクラック
一般国道113号舗装修繕におけるリフレ
クションクラック対策の効果について
長谷川
1新潟国道事務所
崇1・高崎
新発田維持出張所 (〒957-0011
洋一1
新潟県新発田市大字島潟665)
コンクリート舗装上のアスファルトオーバーレイ層に発生する「リフレクションクラック」
についての対策手法として,応力緩和性や変形性に富む特殊改質アスファルトを用いた特殊改
質砕石マスチックアスファルト混合物(以下,「特殊改質SMA」)をオーバーレイ層に適用
することを考え,平成15年に試験施工を実施し,その追跡調査を10年間実施してきた.
本報告は,供用10年における追跡調査結果及び今後の舗装修繕工法の方針を報告するもので
ある.
キーワード
コンクリート舗装,リフレクションクラック,補修
るケースが散見されることがある.その対策として、ア
スファルトオーバーレイ層自体に応力緩和性や変形性に
富む混合物「特殊改質SMA混合物」を適用し,平成15
年に試験施工を行った.
本報告は,補修10年後の効果及び今後のコンクリート
舗装区間における舗装修繕工法の方針について報告する.
1. はじめに
一般国道113号は,新潟市を起点として終点の福島県
相馬市に至る広域的な交通需要に寄与する重要な幹線道
路である.新潟国道事務所では,新潟県村上市十文字~
山形県境までの25.9kmの区間を管理している.そのうち,
新潟県岩船郡関川村下川口~山形県境の12.0㎞において
2. 特殊改質SMAの性状
は,急勾配や急カーブなど道路線形が悪く、舗装の耐久
性向上が期待されるコンクリート舗装が昭和47~50年に
施工された.
試験施工で用いた特殊改質SMAの性状について,下
記の性状試験結果から,リフレクションクラックの発生
遅延効果に期待できると考えた.
コンクリート舗装区間
12.0km
(1) バインダ性状
特殊改質SMAに用いる特殊改質アスファルトのバイ
ンダ性状を表-1に示す.ポリマー改質アスファルトⅡ型
(以下,「改質Ⅱ型アス」の性状例と比較して,針入度
が大きいにもかかわらず,軟化点が高い.低温性状に優
れる特長を有していた.
表-1 バインダ性状例
試験項目
図-1 コンクリート舗装区間位置図
当該区間は、その後の交通量の増加及び経年劣化等に
伴うわだち掘れやひび割れが発生し,アスファルトオー
バーレイ工法による補修が主に行われてきた。
しかし,この場合,既設コンクリート舗装版の目地部
などの直上に,早期にリフレクションクラックが発生す
針入度(25℃)
軟化点
PI
フラ-ズ脆化点
60℃粘度
伸度試験(15℃)
伸度試験(4℃)
(1/10mm)
(℃)
(℃)
(Pa・s)
(cm)
(cm)
特殊改質
アスファルト
174
71.5
5.96
-28
8,620
86
69
改質Ⅱ型アス
55
61.5
1.57
-11
1,480
86
54
(2) 混合物性状
特殊改質SMAの混合物性状例として,基本性状及び
リフレクションクラック促進試験(以下,「クラック貫
通試験」),曲げ疲労試験及び静的曲げ試験の結果を,
改質Ⅱ型アスを用いたSMA(以下,「改質Ⅱ型SM
A」)と比較して示す.なお,試験を実施したSMAの
配合は最大粒径13mmの表層用SMAである.
① 基本性状
基本性状例を表-2に示す.
特殊改質SMAは,動的安定度3,000回/mm以上の
耐流動性(塑性変形抵抗性)を有することを確認
した.
表-2 基本性状例
試験項目
マーシャル安定度
(KN)
空隙率
(%)
動的安定度
(回/mm)
試験値
11.2
2.2
3,300
② クラック貫通試験
クラック貫通試験について,試験条件を表-3,試
験結果を図-1に示す.
特殊改質SMAはクラックが表層を貫通するまで
の時間(クラック貫通時間)が改質Ⅱ型SMAと
比較して1.5倍程度長いこと確認した.
図-3 曲げ疲労試験結果【破壊回数】(回)
④ 静的曲げ試験
静的曲げ試験について,試験条件を表-5,試験結
果の曲げ強度を図-3,曲げひずみを図-4に示す.
曲げ強度については特殊改質SMAの脆化温度は
-10℃程度であり,改質Ⅱ型SMAの脆化温度より
15℃程度マイナス側にシフトしていた.
曲げひずみについては特殊改質SMAは改質Ⅱ
型SMAと比較して2~5倍程度大きく,低温脆性や
たわみ性に優れている混合物であることを確認し
た.
表-5 静的曲げ試験条件
載荷方法
供試体寸法
ひずみ速度
2点支持中央載荷
50×50×300mm(スパン長200mm)
6.25×10 -3(1/s)
表-3 クラック貫通試験条件
オーバーレイ混合物
試験温度
トラッキング速度
荷重
ゴム板
幅80×長さ300×厚さ20(mm)
25℃
42回/min
110kg
30(JIS硬度) 厚さ50mm
図-3 静的曲げ試験結果(曲げ強度)
図-2 クラック貫通時間(min)
③ 曲げ疲労試験
曲げ疲労試験について,試験条件を表-4,試験結
果を図-2に示す.
特殊改質SMAの破壊回数は改質Ⅱ型SMAと比
較して10倍以上大きくなり,疲労抵抗性が高い混合
物であることを確認した.
表-4 曲げ疲労試験条件
載荷方法
供試体寸法
試験温度
載荷条件
ひずみ
両端固定2点載荷
40×40×400mm(スパン長300mm)
5℃
ひずみ制御 周波数5Hz
700μ
図-4 静的曲げ試験結果(曲げひずみ)
4. 試験施工
(1) 概要
平成15年に新潟県岩船郡関川村において,特殊改質S
MAの試験施工を実施した.新潟県と山形県を結ぶ物流
の重要路線となる国道113号において,褥層工法を適用
したコンクリート舗装上のアスファルトオーバーレイ修
繕工事「関川舗装修繕工事」の一部区間で行った.表-6
に工事概要を,図-5に舗装構造を示す.
表-6 工事概要
工事名
路線名
工事場所
施工年月
計画交通量
工事内容
関川舗装修繕工事
一般国道113号
新潟県岩船郡関川村
平成15年8月
N6
既設アスファルト舗装の撤去およびオーバーレイ工事
(一部区間で3種断面の試験施工を実施)
表-7 アスファルト量および骨材粒度
混合物
アス量
の種類
(%)
19mm
13.2mm
4.75mm
2.36mm
0.3mm
0.075mm
特殊改質
SMA(13)
6.0
100.0
97.6
39.6
27.2
13.3
8.7
改質Ⅱ型
SMA(13)
6.2
100
97.6
40.6
28.9
14.6
9.6
改質Ⅱ型
SMA(5)
7.9
100
100
94.2
41.7
15.5
10.3
図-5 舗装構造
図-5に示すように,第1工区と第5工区は,設計断面
(一般部)として,褥層(加熱型高ゴム化アスファルト
+砕石の3層構造)を厚さ3cmで施工し,表層に改質Ⅱ
型密粒(13FH)(以下,「密粒(13FH)」)を施工し
たものである.その間の第2工区~第4工区においてが試
験施工区間となる.
第2工区~第4工区の試験施工区間では,表層下部に改
質Ⅱ型SMA(最大粒径5mm,厚さ2cm)を設け,表層
上部の厚さを4cmとして,第2工区は特殊改質SMA
(13),第3工区は改質Ⅱ型SMA(13),第4工区は一
般部の表層と同じ密粒(13FH)を施工し,特殊改質S
MA(13)と一般部との比較のほか,表層の違いによる
効果の検証を行った.
(2) 施工
試験施工で用いたSMA混合物のアスファルト量及び
骨材粒度は表-7に示す.
第2工区~第4工区の試験施工区間は,敷ならしにはM
APによる表層上下部の同時施工を行い,転圧は水平振
動ローラおよび振動タイヤローラを用いた.
施工状況を写真-1に示す.
骨材合成粒度(重量%)
写真-1 施工状況
5. 追跡調査
(1) 目視観察の結果
目視により,リフレクションクラックの発生状況を確
認した.変化状況を表-8に示す.
褥層を適用した第1工区と第5工区は,供用後早々に多
数のリフレクションクラックが発生したのに対し,その
他の工区は,リフレクションクラックの発生およびその
後の増加・成長が遅いことが確認できた.
特に、特殊改質SMAを表層に適用した第2工区は,
リフレクションクラックの発生が一番遅く,その後の増
加・成長の速度は他工区と比較すると一番遅いことが確
認できた.
写真-2に示すように,供用10年目においても特殊改質
SMAの第2工区は,舗装補修を施す必要が今のところ
感じられない.他の工区では写真-3~6に示すように,
損傷が激しく亀甲状へ成長している箇所や剥離している
箇所も多く見受けられ,リフレクションクラック部を再
補修している.特に褥層で施工されている第1工区・第5
工区の損傷が激しい.特殊改質SMAがリフレクション
クラックに対して有効であることが見てとれる.
表-8 目視観察結果
舗装構造
上部
目視観察結果
下部
供用6ヶ月
特殊改質
SMA(13)
改質Ⅱ型
SMA(13)
供用4年
供用6年
供用10年
変状なし
一部に微少な
クラックが発生
クラックが
若干数増加
クラックが
若干数増加
クラックが
若干数増加
クラックが
増加・成長
変状なし
改質Ⅱ型
SMA(5)
改質Ⅱ型
密粒(13FH)
改質Ⅱ型
密粒(13FH)
供用2年
一部に微少な
クラックが発生
多数の
クラック発生
褥 層
一部に微少な
クラックが発生
クラックが増加
クラックが
増加・成長
クラックが増加・
亀甲状への成長
クラックが増加・
亀甲状への成長
写真-2 特殊改質SMA区間 供用10年目の状況(第2工区)
写真-3
改質Ⅱ型密粒(13FH)【褥層】区間 供用10年目の状況(第1工区)
写真-4
改質Ⅱ型SMA(13)区間 供用10年目の状況(第3工区)
クラック箇所の
部分補修
写真-5
写真-6
改質Ⅱ型密粒(13FH)区間 供用10年目の状況(第4工区)
改質Ⅱ型密粒(13FH)【褥層】区間 供用10年目の状況(第5工区)
(2) 路面性状の測定結果
路面性状の測定結果を表-9 に示す.
断 面
上部
クラック率(%)
下部
特殊改質
SMA(13)
改質Ⅱ型
SMA(13)
改質Ⅱ型
SMA(5)
改質Ⅱ型
密粒(13FH)
改質Ⅱ型
密粒(13FH)
褥 層
わだち堀れ量(mm)
平たん性(mm)
供用2年
供用6年
供用10年
供用2年
供用6年
供用10年
供用2年
供用6年
供用10年
0.1
0.2
0.9
5.8
5.9
9.4
1.14
1.35
2.08
0.3
7.8
11.0
3.7
4.6
6.1
1.18
1.42
1.49
0.6
11.9
18.3
4.3
5.1
5.9
1.10
1.34
1.54
2.8
12.4
18.1
5.0
9.5
12.9
1.14
1.77
2.65
特殊改質SMAの工区は,供用10 年目でクラック率は
0.9%と極めて低く,また供用10 年におけるわだち掘れ
量と平坦性は9.4mmと2.08mmであり,褥層を適用した一
般工区の12.9mmと2.65mmと比較して小さい等の特長があ
り,リフレクションクラック発生頻度が低く、舗装の長
寿命化に期待できる
.
6.その他の区間の補修状況
平成15年の試験施工以外の区間において、「密粒度ア
スファルト混合物(新20FH)5㎝」及び「SMA(20)改質
Ⅱ型5㎝+SMA(5)改質Ⅱ型3㎝」の2種類アスファルト
オーバーレイ工法による舗装修繕を実施しているが、そ
の後の状況について、目視観察結果を写真-7~8に示す.
写真-7の密粒As新20FH(5㎝)の施工箇所は、目地注入
及びクラック防止シートを施工しても供用2年後にはク
ラックが発生している.
写真-8のSMA(20)改質Ⅱ型5㎝+SMA(5)改質Ⅱ型3㎝は施
工後5年経過しているが、クラックの発生状況が少なく,
損傷具合が軽度である.
SMAの舗装が長寿命化に寄与している一例である.
写真-7
写真-8
密粒As新20FH(5㎝)区間 供用2年目の状況
SMA(20)改質Ⅱ型5㎝+SMA(5)改質Ⅱ型3㎝区間 供用5年目の状況
7. まとめ
特殊改質SMAの供用10 年目の追跡調査結果よ
り得られた,リフレクションクラックの発生遅延効
果に関するまとめを以下に示す.
1)供用10 年目においてもリフレクションクラッ
クの発生頻度は他工区と比較して非常に低く,
今のところ補修の必要性がない.他工区はクラ
ックの発生頻度も多く,再補修されている.
2)路面性状のわだち掘れ量と平坦性は,褥層を
適用した一般工区と比べて良好な性状を示して
いる.
3)特殊改質SMAは確かに,リフレクションク
ラックの発生遅延効果はあるが,施工費は改
質Ⅱ型SMAや,改質Ⅱ型密粒(13FH)と比較
した場合、高額となるため,適用に関しては
現場条件等を考慮する必要がある.
4)既に供用から相当年数が経っておりCo舗装版
自体にばたつきが発生している箇所では、いく
ら特殊改質SMAが優れているとはいえどAsオ
ーバーレイ工法では、根本の解決にはならない
ため,Co舗装版の部分打換え、Co舗装版モルタ
ル裏込注入(ばたつき防止)、目地補修、クラ
ック(目地)注入、クラック防止シシート等の
対策工が別途必要となる.コンクリート舗装は、
耐久性に優れた面はあるが、更新時に再度コン
クリート舗装による打換え工法を採用する場合
は、経済性や長期にわたる終日片側交互通行規
制の社会的影響が大きく、考慮しなければなら
ない。
一般国道113号のコンクリート舗装は、舗設から
39~42年が経過し、Co舗装版の表面の劣化は激しい
が、構造的な破壊に至っている箇所は限定的である。
このことから、経済性も考慮し、これまではアスフ
ァルトオーバーレイによる補修が行われてきた。
ただ、近年の損傷をみると、リフレクションクラ
ックからの雨水の浸透により、ばたつきが助長され、
舗装版自体の損傷に繋がっている事象も見受けられ
る。
今後の舗装修繕工法としては、コンクリート舗装
版のばたつき防止対策を実施したうえで、塑性変形
抵抗性,たわみ追従性,防水・水密性,摩耗抵抗性
に優れる砕石マスチックアスファルト舗装によるオ
ーバーレイ工法が妥当と考える。
8. おわりに
今回の追跡調査において,特殊改質SMAの高い
リフレクションクラックの発生遅延効果と供用性が
確認できた.今後もその持続性を検証していき,コ
ンクリート舗装の長寿命化に資する的確な維持管理
手法の策定に寄与していく次第である.
謝辞:本報告のとりまとめに際し、ご協力いただい
た関係各位に感謝申し上げます。
参考文献
1) 建設図書:舗装 平成26年5月号
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