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おける市町村別マダニ - 千葉県ホームページ
千葉衛研報告 第17号 37−401993年 (短報) 千葉県における市町村別マダニ採集状況 森 啓至,藤曲 正登 The Circumstance of Collectinglxodid Ticks on Cities, Towns and Villagesin Chiba Prefacture. KeijiMORI,Masato FUJIMAGARI Ⅱ.方 法 Ⅰ.はじめに 千葉県南部の房総丘陵においては,マダニ類が大量に発生して 千葉県下80市町村で,76cmx152cmの大きさの白いフランネル いる地域があり.そこでは鹿・狸・犬などに大量の寄生がみられ, 布を草地の上にかぶせてこれを引きずりダニを付着させるフラン 住民への被害も刺呟によるもののほか,紅斑熱媒介者としての可 ネル法により植生上のマダニ採集を試みた。 能性も問題となっている。 一方,大型獣の生息が考えられないような東葛地域の住宅地帯 採集できたマダニは研究室に持ち帰り,成虫は80%アルコール で固定後実体顕微鏡下で観察し形態的に種を同定した。若虫・幼 からもマダニによる刺呟被害が当研究室に持ち込まれることがあ 虫はガムクロラール液で封入し,同様にして形態的に種の同定に るが,その実態については正確な把撞ができていない。 供した。 そこで,マダニ類の全県下の生息状況を調査しているところで あるが,各市町村において最低−ケ所以上の採集ができたので, Ⅲ.結 果 その結果について報告する。 採集を実施した地点は,図1.に示したように県下全80市町村 (355ケ所)にわたったが,マダニが採集できたのは図2.のよう に48市町村(145ケ所)であった。 ヽ・へ、 ′・し′ ■ フランネル法により 操業できた市町村 田 フランネル法では 未採集だが 人または掛物より 採集できた市町村 ロ マダニ未採集市町村 図1.フランネル法によるマダニ採集実施地点 図2.マダニが採集できた市町村 千葉県衛生研究所 (1993年11月20日受理) −37− 千葉衛研報告 第17号 37−401993年 その他 フランネル法により採集できなかったが,動物及び人 ニ〃αem叩んッsαJ∠ざ加gねor托is苦虫)・八千代市(7才児;キ 体刺校例を確認している市町村は,千葉市(犬;フタトゲチマダ チマダニ〃ノ加α♀)の2市であった。 表.市町村別マダニ採集数(1988年4月∼1993年10月) HI 総 数 野 田 市 Hf Hk Hi Hm Hc Itu Io Ita In 1 1 流 山 市 船 橋 市 10 鎌 ヶ 谷 市 28 1 佐 倉 市 成 田 市 富 里 町 l1 2 1 2 2 酒 々 井 町 ︵‖︼U 2 東 庄 町 山 田 町 1 328 小 見 川 町 3 佐 原 市 ▲リ︺ 11 1 1 1 印 旛 村 l 1 1 神 崎 町 3 2 粟 i原 町 1 市 旭 銚 子 市 八日市場市 干 潟 町 1 7 5 1 1 1 1 17 16 1 1 1 3 8 1 1 1 尾 東 武 山 町 町 町 町 3 松 成 山 芝 1 2 3 1 10 30 3 睦 沢 町 市 原 市 袖 ヶ 浦 市 3 19 7 君 津 市 267 町 151 6 29 9 1 1 6 ハバ︺ 1 4 4 3 1 1 9 2 3 6 1 492 2,394 18 39 143 16 18 39 17 15 12 1 8 6 1 5 1 5 5 98 10 28 3 6 2 3 3 19,966 11,191 3,000 5 8 858 1,157 1,653 1,841 2 15 15 ︵︼U 村 町 町 市 町 町 43 7 合 芳 山 田 山 倉 浜 6 2 富 浦 町 165 三 丸 和 館 千 白 6 143 97 9 大 多 喜 町 2,239 勝 浦 市 4,047 天津小湊町 32,467 鴨 川 市 鋸 南 町 富 山 町 1 7 2 4 9 7 4 0 7 1 5 岬 夷 隅 町 大 原 町 御 宿 町 8 45 富 津 市 102 ■■ り︶ 長 柄 町 長 南 町 一 宮 町 7 85 10 27 計 43,200 23,07117,670 1 855 732 ■603 41 166 44 ※ Hl:フタトゲチマダニ,Hr:キチマダニ,Hk:ヒゲナガチダニ,Hi:ヤスチマダニ,Hm:オオトゲチマダニ Hc:ツT)ガネチマダニ,Itu:アカコツコマダニ,Io:ヤマトマダニ.In:タネガタマダニ,Ita:タヌキマダニ −38− 16 2 千葉県における市町村別マダニ採集状況 採集されたマダニは表.に示したように,2属10種43,200個体 〃.cαmβα几㍑Jα£α:朋,タネガタマダニJ.几工卯0/1e几SJs:16.タ ヌキマダニ/.乙α几比たi:2個体の順であった。 で,種類別採集数は,〃.Jo几gほOmム:23,併1,〃ノ/αUα:17,670, また,種ごとの ̄F打町村別採集状況は千草県北部でも見られた ヒゲナガナマダニ〃.た;とα0如∠:855.ヤスチマダニ〃∴αS:732, オオトゲチマダニ〃.megαSp∠乃OSα:603,アカコツコマダニ 〃./0〝gJごOr/lJs,〃./JαUα.ノ.ouαエUS,/.山「血sは【¥】3.から匝】 Jズ0(ねs と昆rd比S:166,J.ouαと比S:44,ツリガネチマダニ 6.に,その他の種類については図7.にまとめてホした。 くヽ、 、・ い・、 /・ 図3.キチマダニが採集できた市町村 −39一 千葉衛研報告 第17号 37−401993年 Ⅴ.ま と め 今回マダニ類を採集できなかった市町村の中でも,採集地や採 集時期を変えたり,また,その採集頻度を上げれば新たにマダニ 類の存在も確認できてくると思われる。 マダニ類の被害は,野 生大型獣のいる山野に入った人・動物に対してだけでなく,住宅 地内の未整理区画地など手入れされていない空地などに入る犬・ 猫及び子供などに見られるようになってきたが,実際に調査を行っ てみるとかなり様々な地域の公園・住宅地でもマダニ類の汚染が みられる辛がわかった。 今後こうした地域での調査をさらに進めるとともにマダニ防除 も考えて行かなくてはならない。 最後に本調査にご協力を頂いた勝浦保健所・鴨川保健所・館山 保健所等の各職貞(特に予防課貞)の皆様に深謝いたします。 ○ ヒゲナ方チマダニ ■■ 参考文献 ● ヤスチマダニ ロオ才トゲチマダニ T ツリ舶チマダニ 1)Yamaguti,N.,Tipton,V.J.,Keegan,H.1.&Tosh ka,S.(1971):Ticks ofJapan,Korea,and the Ryu− ◇ タネガタマダニ kyuIslands.Bringham Young Univ.Sci.bull., ◆ タヌキマダニ Bi010.Ser.15,1−226. 2)山口 昇:ダニ学の進歩,日本産マダニ上科の検索,(佐々 学,青木淳一編)451−472,北隆館,東京,1978. 図7.南房地域のみにみられたマダニ類の市町村別採集状況 3)山口 昇,北岡茂男:日本ダニ類図鑑,マダニ科,(江原昭 三編)144−161,全国農村教育協会,東京,1980. Ⅳ.考 察 4)北岡茂男(1980):マダニ科マダニ属Jェodegの未記載種につ いて,家畜衛試研究報告,80,11−20. 採集回数がそれぞれの市町村によって異なるため一概に言えな 5)北岡茂男(1985):マダニ科チマダニ属の未成熟期の検索, 家畜衛試研究報告,88,49−63. いが,多種類・多数のマダニが採集されているのは,南部の清澄 山系を中心とした地域であり,この地域には紅斑熟思者の発生も 6)高田伸弘:病原ダニ類図譜,105−148,金芳堂,京瓢1泊). 見られる。 7)佐々 学編:ダニ類−その分類・生態・防除−,101− 120,東京大学出版会,東京1965. 一方,千葉県北部及び東葛地域の住宅地域においても種類数は ■■ 少ないが,ガ.Jo花gねom烏や〃./加αなどのマダニの存在が確認 8)森 啓至,藤曲正登,林 晃史(1990):千葉県南部の鹿に みられた寄生マダニ札 千葉県衛生研究所研究報告14,亜− されており,その被害も何件かある。 47. 〃.megα箪∠れ0ぶα及びJ.ね肌払如は動物体表上からの採集数は 多いのに,フランネル法ではあまり採集できなかった。 −40−