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臨床Ⅱ第1部 - 長崎県病院企業団
臨 床 Ⅱ (第1部) 一 般 演 題 看 護 部 門 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ① 当院の透析患者の通院に関する意識調査 上対馬病院 透析室 ○石丸 弘枝 糸瀬 智恵 峰 孝子 原田 恵子 山田 有紀 1.はじめに 一般的に透析患者は、週 3 回の通院治療が必要です。当院においても透析患者の高齢化が進み、近 い将来に身体機能の低下や基礎疾患の増悪、介助者の喪失により通院困難になることが予測されます。 しかし、老々介護・独居世帯が増加している一方、透析患者を受け入れる施設はなく、交通手段も 限られています。そのため、社会的入院を余儀なくされた患者や、島外へ移住した患者も存在します。 今回、当院に通院している透析患者を対象に通院に関する意識調査を実施したので報告します。 2.対象と方法 当院透析患者 16 名にアンケート調査を実施し、15 名回収出来ました。 3.結果(アンケート結果) 年齢は、最年少が 58 歳、最年長が 92 歳、平均年齢が 72.9 歳でした。 透析歴は 5 年未満が 40.0%、5 年以上 10 年未満が 46.7%、15 年以上 20 年未満が 13.3%でした。 同居家族は配偶者との二人暮らしが最も多く、次が配偶者と子供、独居になります。 通院方法は自家用車が 66.7%で、バスを利用している患者が 20%でした。 歩行時間は、バスを利用している患者が 5~10 分、自家用車の患者は殆ど歩いていません。 透析を始めた頃と比べて、できなくなったことが、あるが 66.7%でした。 多かったのが、長い距離が歩けなくなった、階段や段差のあるところが歩きづらくなった、歩行中に つまずき易くなったなど下肢筋力低下についてでした。ないと答えた患者は、50 歳代と透析歴が 5 年 未満でした。 現在日常生活の中で心がけていることについては、散歩や軽い作業、栄養バランスを考えた食事、 体操を行っていると答えた患者が多く、何もしていない患者はいませんでした。現在心がけているこ とだけでは、筋力低下予防としての効果がないことが分かります。 通院中に対して、現在不安が、あると答えたのが 60%で 運転や歩くことが疲れやすくなった患者 でした。ないと答えたのは 40%で、50 歳代の患者や透析中の状態が安定している患者でした。 今後の不安については、80%とほとんどの患者がこれからの通院に不安がないと答えています。 今の通院方法が出来なくなった時の事を考えたことが、あるが 53.3%、ないが 46.7%でした。 一人で通院できなくなった時については、送り迎えをしてくれる人がいるが 73.3%。付き添いをして くれる人が、いるは 33.3%でした。多くの患者は送り迎えをしてくれる人が存在しますが、付き添い までしてくれる人がいる人は、半分以下に減ってしまいます。 今後、自宅からの通院が出来なくなった時の事を考えたことが、あるが 60.0%で、その中には考え たことがあるが分からないと答えた患者が 33.3%いました。多くの患者が先々の充分な対策を立てて いないことが分かります。しかし、全ての患者が、今後も自宅からの通院を続けたいと答えています。 今後の通院について家族と話したことが、ないが 73.3%でした。通院困難になり支援が必要になる ことが予測されるにもかかわらず、家族との今後の通院方法の共有が図れていないことが分かります。 4.考察 アンケートの結果から、 患者は身体機能の低下を感じているが今後の通院に対する不安がなく、 先々 の通院のことは考えていない事が分かります。しかし、全ての患者が今後も自宅からの通院を望んで います。 11 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ① 通院透析を続けていくためには、効果的な筋力低下予防のため、自宅や透析中に行える運動を検討 し、全身状態の維持を図る必要があります。また、患者は身体機能が低下した場合の通院方法を考え る必要があります。それに対し、福祉サービスの情報提供を行っていきたいと思います。また、付き 添いができない場合には、病院玄関から透析室までの付き添いをどうするか検討が必要になってきま す。 宍戸氏は、 「合併症や老化に伴い ADL が低下し今の生活が維持できなくなった場合を想定し、早い段 階から将来的な事を患者様・家族と話し合っていく必要がある」と言っています。現在患者家族と話 す機会が殆どありません。 今後は日頃から患者や家族と生活の様子を情報交換することで連携を図り、 通院透析の継続に繋げていきたいと思います。 【質疑応答】 ○座長 :ありがとうございます。ご質問はありませんか。 ○フロア:島原病院の木下です。貴重なご発表ありがとうございました。アンケートの中でお尋ねし たかったのが、通院の不安が現在は 60%あるんだけれども、将来は 20%だというふうなス ライドを見せていただいたんですが、島原でも結構、80 歳を過ぎても免許証の更新にずっ と行かれてて、それは通院するのに運転しないととても通院できないし、それは本人だっ たりご家族だったり連れていかないといけないということで、私たちの感覚からすると、 今よりもだんだん体がかなわなくなって、免許証の更新もできなくなると、通院がさらに 不安になるんじゃないかなぁと思ったんですけど、そこのところが逆の結果だったので、 それは何らかの、先ほど言った福祉サービスの情報を提供したりとか、そういうふうなこ とによるのか、例えば交通インフラができてきているのか、そのあたりについて教えてく ださい。 ○石丸 :ありがとうございます。その不安の、後のほうのスライドにもあったんですけど、 「今後自 宅からの通院ができなくなったときのことを考えたことがありますか?」という質問をし ているんですが、60%の人が「ある」と答えていまして、40%の方が「ない」と答えたん ですね。その 60%の「ある」と答えた中の 30%ちょっとの方も、考えているけどわから ないという感じで、先のことまで考えてなくて、自分がどうなるという予想というのもな いのかなぁというところから、不安にまでいかないのかなと、こちらの想像ではあるんで すけど。 ○フロア:将来に不安はないというのが 80%に増えたのは、何とかなるようになるだろう、というふ うなことで答えられたということですね。 ○石丸 :そういう感じがあるかなぁと。 ○フロア:はい、わかりました。 ○座長 :ほかにないでしょうか。 ○フロア:貴重な発表ありがとうございました。上五島病院の透析室の舛田と言います。私のところ も通院する患者さんのことで、導入開始になったときに、この人は何で来るんだろうとか、 自分で来れるのかなというのをすごく心配したりするんですけども、私のところはそうい う患者さんは、役場や社協などの福祉のほうを利用している人が多いんですが、今日の発 表ではその他が 13.3%ということで、福祉のほうを活用しているのは大体どれくらいなの 12 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ① かなと、その他の中に含まれているのかなということをちょっと疑問に思ったので、そち らのほうを教えてください。 ○石丸 :ありがとうございます。通院にはほとんどおうちのほうから来られてる方ばかりで、福祉 タクシーを 1 台利用されている方がおられるぐらいで、あとは自宅から自分で運転したり、 バスを利用したり、家族の方に送ってもらったりという感じで来られています。 ○フロア:ありがとうございました。 13 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ② 在宅血液透析導入への精神的サポート ~つなぐノートを作成しての試み~ 有川医療センター 看護部(透析) ○大水 理絵 立花 初代 安藤 浩子 堺 由夏 川上 千穂 1.はじめに わが国の 2014 年末における慢性透析患者数は 319,388 人で 2011 年に 30 万人を超え増加の一途を たどっている。うち長崎県の患者数は 3,912 人で町内の患者数は 59 人である。在宅血液透析(以下 HHD)患者はわずか 0.2%で 526 人と少なく、長崎県では、現在 2 人行っている。HHDを行うに は、安全に心がけ事故なく行えることが重要であり、そのためには、患者及び介助者が医療施設にお いて十分な時間をかけ、知識や技術を習得する必要がある。今回上五島では、HHD導入が初めてで あり、指導に携わらないスタッフは、患者、介助者、指導スタッフがそれぞれに不安や問題を抱えて いると考えた。そこで、思いを表出でき、問題の早期発見や、不安の軽減のためつなぐノートを作成 した。ここにこれまでの経過を報告する。 2.倫理的配慮 対象者には文書と口頭で研究趣旨を説明し、同意書をもって同意を得た。動画においても、同様に 了承を得た。 3.患者紹介 患者は、35 歳女性。2001年ⅠgA腎症と診断され、 2006年 3 月透析導入となる。透析歴 9 年で週 3 回 4 時間 透析を行っている。 合併症なし。 14 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ② 4.在宅血液透析導入への経過 2014 年 5 月 19 日より知識習得講義が開始され、つなぐノートを作成した。 2014 年 8 月より実技訓練開始、2015 年 3 月より自己穿刺を行っている。 2015 年 5 月より義母は介助者からはずれ、夫婦二人で継続していくことに決定した。 現在準備から終了までの一連の流れを夫婦二人で行い、最終調整を行っている。 5.実際 指導は、HHD治療計画に基づき、臨床工学技士を中心に看護師 1 名、総括看護師として副師長が 携わって行っている。指導に携わらないスタッフは、情報共有のためのノートと、交換ノートを作成 した。医療者側と患者、家族をつなぎ、みんなが一つになってHHD導入を目指すという思いを込め て、“つなぐノート”とつけた。 情報共有のためのノートでは、指導時の言動、表 情などを記録している。交換ノートでは患者・家族 の思いや不安なことを書いてもらい、アドバイスを 行い不安の軽減に努めている。 つなぐノートから、患者は、完璧にできるまで十分 に訓練を行いたいと思っていましたが、夫は早くHH Dを始めたいという思いがうかがえ、訓練を早く進み たいという焦りがみられた。事故なくHHDが行える よう、十分な時間をかけて、知識、技術を習得する必 要があり、できるようになるまで繰り返し訓練を重ね ることが大事であるということを、何度も話し合った。 15 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ② 義母が介助者からはずれた理由だが、義母は 68 歳であり 、患者・夫との理解度の差がみられ、なかなか覚えられな かった。当初は、「学ぶことが楽しくなっている自分がい る、実技の時間が苦にならない」と言っていた。しかし訓 練が進むにつれ、態度には見せなかったが、「弱音を吐い てもいいのだと思い、ペンをとりました」「二人の足手ま といになっている」「趣味を楽しむ気持ちがなくなった」 というつらい思いや、訓練に対してのストレスをつなぐノ ートで打ち明け、家族にも話すことができた。患者本人も 「お義母さんが心配」と言われ、義母への思いやりが分か った。すぐに話し合いを行い義母は介助者からはずれ、現 在、夫婦二人で訓練を行っている。 6.考察・まとめ HHDを行うためには、介助者は必須である。今回ノートを活用し、初めはあいさつ文でしかなかっ た内容が、ノートを交わすごとに、口では言えない思いや、不安を語るまでにいたったことは、つなぐ ノートが有効な手段であったと考える。そして、何度も話合いを行ったことで、不安の軽減や信頼関係 につながったのではないかと考える。 今後も「つなぐノート」を活用し、不安の軽減に努め、信頼関係を維持し、安全なHHD導入ができる ように支援していきたいと思う。 患者が穿刺している動画 最後に 9 月 17 日よりHHDが開始された。 参考文献 「図説 わが国の慢性透析治療法の現況(2013 年 12 月 31 日現在) 」 日本透析医学会 【質疑応答】 ○フロア:島原病院の木下です。貴重な経験ご発表ありがとうございました。今回、つなぐノートとい うことで、患者さんの不安、ご家族の不安を減らすというふうなことだったんですけども、 実際につなぐノートを看護師さんに渡されて、それをどなたがどういうふうに見られて、ど ういうふうに患者さんご家族にアドバイスなり、次につなげるような方法をされたのか教え てください。 ○大水 :つなぐノート、交換日記は患者、夫、義母に一冊ずつ渡しました。書いてこられたら、中心 となる看護師がいたので、看護師 3 人ぐらいで書いて、情報共有のためにもう一つの情報共 有ノートを作っていたので、それに書いて、そのことに関してはみんなで情報を共有して知 ってまた返すという形にしています。 16 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ② ○フロア:患者さんご家族の反応みたいなのが、それをもらうことによって、その都度、例えばそれで 安心したとか、まだわからないとか、そのあたりまで含めて担当の方がやっていたんですか。 ○大水 :担当を中心にはやっていました。 ○フロア:あと共有されてるということですね。 ○大水 :みんなで共有しました。 17 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ③ 中途失明患者との関わりから学ぶ ~A氏への看護を振り返って~ 壱岐病院 看護部(2 階病棟) ○吉井 美喜子 中嶋 可織 村部 てるみ 1.はじめに 現在の社会背景に伴い医療制度の改革が進められ、施設や病院ではなく住み慣れた自宅で治療を継 続できる体制づくりが求められている。その為、入院時から退院後の生活を考慮した継続看護の介入 が必要とされている。今回成人期における中途失明患者に対して、患者を主体とした看護にスタッフ 全員で取り組み、継続看護につながる関わりができたため、報告する。 2.対象と方法 多発外傷により、身体的機能障害・中途失明した A 氏(45 歳男性)の事例研究 入院カルテ記録,情報共有ノートの記録、カンファレンス・他職種カンファレンスの記録(看護師・PT・ OT・ソーシャルワーカー)、病棟看護師の意見・学びから看護師の関わりを振り返る。 3.看護の実際 A 氏の情報提供書をもとに事前にスタッフカンファレンス、妻との面談・病棟学習会を行い受け入 れ体制を整えた。入院後情報追加により、全体像の把握・今後の治療方針の確認、スタッフ間で処置・ 看護の統一を図るための「情報共有ノート」を作成した。他職種との 1 回/週のカンファレンスを行い、 看護を展開した。ADL は徐々に拡大し、視力障害と機能障害のため、一部介助は必要であったが、杖 歩行・食事自己摂取レベルまで改善した。精神面においては、精神科受診・臨床心理士によるカウン セリングにてサポートを行った。患者より視力回復のために別途治療の希望があり、中途退院の運び となった。 <歩行・排泄に関して> ・PTと情報共有しながら、 細かい声掛け、援助方法を統一した。 (三角巾や装具の固定方法) <食事に関して> ・栄養士・OTと看護師も介入し、 食種・形態・食器の工夫を行った。 ・食事のセッティング方法を統一 4.考察 A氏は自立心の強い成人患者であり、最初は多くのスタッフが関わるよりも、受け持ち看護師を数 名固定して継続して関わった方が良いのではないかと考えていた。しかしA氏の前向きで社交的な性 18 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ③ 格や壱岐に帰ってきた事での安心感も影響し、スタッフも日々交替で関わるため、全スタッフで関わ る方法に切り替えた。退院支援の中で、継続看護の重要性が増してきており、長江らは、1)継続看護 の実践の構成要素には「生活安定のための病状管理」、「患者が生活者として主体的に生活できるよう に支援」 、 「家族のセルフケア能力を高める支援」、 「患者中心のケアを実現するためのチームアプロー チ」がある。と述べている。日々のカンファレンスや他職種カンファレンスで情報交換を行うことで、 看護師だけでなく全スタッフで目標の統一を図り、チームとして同じ方向性をもった関わりができた。 更にカンファレンスでの情報交換だけでなく、 「情報共有ノート」を活用する事で、統一した看護の提 供・リハビリを取り入れながら日常生活援助に努める事で、患者のモチベーションを下げることなく、 リハビリを続けるサポートにつながったのではないかと考える。A氏との関わりの中で、 「夜眠ってい ても、起きていても真っ暗なので昼夜の区別がつかない。視力に関して聞かれたり、言われたりする ことが辛い。寝ている方が楽です。 」という発言が聞かれた。また、リハビリを継続する中で、肩・肘 関節の痛みによるADL拡大の停滞や夜間の睡眠がとれない時期もあり、患者にとって「全盲」とい う障害の壁は大きく、常に恐怖や不安を抱えながら生活していた。看護としてA氏の話や思いを傾聴 し、ADLの改善に向けて「A氏に出来る事」に視点を置き、体調に応じた援助に努めた。精神面に 関しては精神科受診や臨床心理士によるカウンセリングを導入することで、サポートの強化を図った。 日々の患者を思いやる関わりが信頼関係を構築し、患者の精神的サポートにつながるのではないかと 考える。島内では、視覚障害看護に関する情報も少なく、実際にA氏に関わる中で、視覚障害患者へ の接し方、歩行や食事の援助について学んだ点も多かった。A氏から「自分と同じ全盲の人と会って 話してみたい。どうやって目が見えない事に対して苦痛を乗り越えてきたのか聞いてみたい。」という 要望があった。実践はできなかったが、同じ境遇にある患者との交流・情報交換、患者の苦悩や思い を理解してくれる環境があれば、A氏にとって更にセルフケア能力の向上や今後生活していく上での 生きがいの習得にもつながった可能性があり、支援の学習が必要であると感じた。今回A氏は、視力 回復のために別途治療を希望され中途退院となったため、障害の受容や環境を整えたうえでの自宅退 院までつなげることはできなかった。しかし、看護師だけでなくメディカルスタッフが同じ目標に向 かって、患者の支援に取り組めたことは、今後患者が地域の中で生きていくために有効であり、今後 の看護実践のなかでも患者に継続看護が実践できるように、入院中から患者・家族を中心に目標に向 かってチーム全体で支援に努める事が、患者の「生きる」につながると考える。 5.まとめ ①看護師だけでなく、メディカルスタッフと共にチームアプローチする事で、患者・家族が安心して 入院生活・リハビリに取り組むサポートができた。 ②「情報共有ノート」を活用する事で、統一した看護の提供・リハビリを取り入れながら日常生活援 助に努めることで、患者との信頼関係の構築・ADLの拡大につながった。 ③病棟看護師は、患者・家族と向き合う第一線の看護師であり、退院調整の際にはリーダーシップを 図り、他職種と連携して取り組む役割がある。 ④看護師は患者・家族を主体とし、病院だけでなく地域の中で生活していくことができるよう継続看 護が提供できる体制づくりの支援を行う必要がある。 【質疑応答】 ○座長 :私のほうから一つお願いします。 関わった期間は、入院していた期間はどのくらいだったのかということと、いろんな職種 の人で関わっていたと思うんですけど、そんな中で看護師の一番の役割はどんなものと感 じたのかというのをお願いします。 ○吉井 :質問ありがとうございます。 患者と関わった期間は、2015 年の 3 月から 5 月の中途退院までの約 2 カ月間関わりまし 19 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ③ た。今回の研究で、病棟看護師は患者家族と向き合う第一線の看護師であり、身体面、精 神面の支援、退院調整の際にもリーダーシップを図りながら、情報を他職種へ伝え、個別 性を考慮した支援をする役割があると学びました。 ○座長 :ありがとうございます。 20 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ④ 活力ある病院づくりに貢献するための 5S 活動 島原病院 医療安全管理室 ○小松 美佳 木下 明敏 1.はじめに 医療安全管理において、5S 活動を開始して 2 年目を迎える。医療安全推進担当者のモチベーション を高めるために開始した5S 活動は、医療安全推進担当者のマネジメント能力の向上、組織の活性化 および業務改善による医療安全の質向上に繋がっている。A 病院の取り組みの経過を報告する。 2.方法 A 病院は、医療安全管理委員会の下部組織として医療安全管理部会を組織している。医療安全管理 部会は、各部署に配置された医療安全推進担当者 16 名と各部署の師長、臨床工学技士で構成してい る。 各部署の医療安全推進担当者は、5 月に部署の問題点を明らかにし、改善を期待する目標を定め5S 活動に取り組んだ。2 月の成果発表では、ポスターを作成し外来ホールに 2 週間展示した。5S の「問 題点に対する取り組み方」 「実施計画の作成と周知」 「創意工夫」 「活動の成果」 「取り組みへの全員参 加」の 5 項目からなる評価表に基づいて 5 段階で採点し、16 名の採点の合計点数が高い部署から表彰 した。また、全職員も投票に参加し、最もよいと考えた部署に 1 票を投じて投票の高い部署も表彰し た。H26 年度は、来院者からの投票も受けた。活動終了後、5S 活動が部署の活性化にどのように影 響しているか知るために医療安全推進担当者に質問紙調査を行った。評価表の 5 項目に「取り組みの 表示」 「メンバーの積極的な参加」 「進捗状況」 「他への影響」の 9 項目を調査した。また 5S 活動によ る自分自身や部署の変化、工夫や要望などについても自由記載してもらった。 3.結果 医療安全推進担当者 16 名の平均点が最も高い項目は「問題点に対する取り組み方」と「活動の成 果」の 4.1 点だった。低い項目は「実施計画の作成と周知」 「メンバーの積極的参加」 「取り組みへの 全員参加」の 3.4 点であった。平成 26 年度と平成 25 年度を比較すると 9 項目すべてにおいて同数か 0.1~0.4 点上昇した。5S 活動後による変化では、14 名が活動はプラスとなったと答え、 「整理整頓の 意識が高まり常時できるようになった」 「スタッフにも浸透した」 「病棟編成にあたり気持ちの整理が できた」など 5S 活動に対する医療安全推進担当者の意識・行動に変化が認められた。工夫や要望と しては、プレゼンテーションにおける発表時間の厳守や活動費に対する意見があった。 21 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ④ 5S成果を外来エントランスホールに掲示 発表会 3分間のプレゼン テーション 医療安全管理室長 の講評 70名の参加 金賞:医事 金賞 医事係 銀賞:総務財務 銀賞 総務・財務係 人気賞:3東47票 銅賞:連携室 特別賞:栄養班 投票用紙配布数487枚(参加率63.7%) 投票数 院内310 院外34 銅賞 地域医療支援 センター 人気賞 3東病棟 特別賞 栄養班 4.考察 医療安全推進担当者のアンケート結果によりすべての項目において平成 25 年度と比較して平成 26 年度は、点数が同数か上昇したことは、5S 活動に対するスタッフの理解が進んだということだと考え る。高原は「5S 活動を展開することにより、管理監督者のマネジメント力向上と組織の活性化につな げることが重要なポイントである」¹⁾と述べている。医療安全推進担当者の意見からも 5S 活動が前 向きな気持ちの変化に影響を与えるということが分かった。 5.まとめ 5S 活動は、医療安全推進担当者の意識・行動に変化を及ぼし、医療安全の質向上と病院の活性化に 繋がることが示唆された。今後はスタッフへの影響なども調査し、5S 活動を広げていきたい。 引用文献 1) 高原昭男 「ミス・事故をなくす医療現場の 5S」 株式会社 JIPM ソリューション P39 2011 参考文献 1)仁科利文「医療安全型 5S 活動」病院安全教育 2015 年 6・7 月号 P10-14 日総研 【質疑応答】 ○フロア:島原病院の木下です。追加発言ということになりますけど、この 5S活動も職員のモチベ ーション向上ということが、要するに、病院の医療の質の向上につながるということでや っています。今回、病院機能評価を先日島原病院が受けまして、この医療安全のほうで 5 S活動であったりとか、あとは医療安全の管理部会、患者さんに対していろんな医療安全 に関するパンフレットを作成しまして、そういうふうなところが機能評価で言うところの SABCの 4 段階のSということで高い評価を受けたので、そういうふうなことでみんな でやっていくということが評価されていますので、5S活動を今後も続けていきたいと思 っています。 22 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ④ ○座長 :何かご質問ありませんか。 ○フロア:上五島病院の白濵と言います。発表ご苦労さまでした。私も医療安全のほうの活動をして いるんですけれども、この発表の中で栄養価の部門のことを言っていたんですが、他部門 でどんな問題があげられていたのか、どのような目標を立てていたのか、参考に聞かせて いただきたいんですけれども、よろしくお願いします。 ○小松 :ご質問ありがとうございます。他部門のところですね、私もはっきり記憶がありませんが、 やはり整理整頓に関するものが多いので、部署がかなり清潔になりました。検査科であっ たり、リハであったりとか、5S活動を始めて見違えるようにきれいになったなぁと思いま すし、スタッフにやはりだんだん浸透してきていますので、ここは 5Sに取り組みますと いう言葉もスタッフの中からも聞かれるようになりました。 ○フロア:ありがとうございます。 23 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ⑤ 予約診療の待ち時間短縮に向けた業務改善と患者の意識調査 上対馬病院 看護部(外来) ○原 美智子 佐護 みどり 坂本 敦子 1.はじめに 病院で発生する診療待ち時間は、患者にとり一番のストレスであり不満足の大きな要因となっている。 平成 26 年 2 月の電子カルテ導入に伴い予約時間に沿った診療が徹底されるようになり、患者の来院時 間によっては診療待ち時間が長く診察順番に対する不満の声が聞かれるようになった為、待ち時間短縮 に向けた業務改善を実施した。 2.対象と方法 定期的に血液検査を受けている内科予約患者 100 名を対象に業務改善の前後での受付~予診・診察 時間までの待ち時間を電子カルテにより調査。さらに、診療待ち時間に関する意識調査を実施し 評価を行った。 3.結果 予約時間より平均 50 分前に来院していた患者が業務 改善後 30 分前に来院するようになった。受付から予診ま での時間は 15 分で変化はないが、38%の患者は短くなっ たと回答受付から診察までの時間は 100 分から 10 分短 縮できたが、待ち時間が短くなったが 17%、長くなった が 25%の回答。意識調査では早く来院している患者のう ち、60 分以上前が 30%を占めている。患者にとって待ち 時間の限界は 60 分未満が 60%を占めていた。 4.考察 業務改善により予約時間に合わせ分散し受診するようになり時間短縮が可能になった。しかし、長く なったという意見や待ち時間の限界などを考慮すると満足の得られる結果ではなかったと考える。富 永・山本らは「待ち時間の限界は 60 分である」田代らは「60 分以内であれば、長いと感じる人は少な 24 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第1部) ⑤ い」下野らは「待ち時間が短いと感じるか、長いと感じるかは医療従事者の対応で決まる」と述べてい る。今後は患者の待ち時間に関する負担軽減の為、医療従事者としての対応を検討する必要があると 考える。 【質疑応答】 ○フロア:発表お疲れさまでした。上五島病院外来看護師の村田です。予約待ち時間は、確かに患者さ んにとっては苦になることだと思うんですけども、その中で上対馬病院の予約の患者さんの 数を教えてほしいことと、待っている間の看護師の関わりというか、お待ちいただいている 間の関わりと、ハード面での何か工夫があれば教えてください。 ○原 :今現在、内科予約の患者さんは、医者 1 人に対して 30 人前後が予約になっております。外 来での待ち時間に何をしたらいいかということで、アンケートを一回とったことがあるんで すけども、別にないがほとんどでしたので、私たちも今後、今、糖尿病とかが入ったので、 指導をいろいろしてたんですけども、フットケアを外来では待ち時間の間に糖尿病患者様に してたんですが、今は外来の勤務の都合上できていないのが実情です。また、今後も外来ス タッフと相談した上でいろいろ取り組んでいこうかなとは思っております。 ○フロア:あと、ハード面での何か工夫などがあれば教えてほしいなと思うんですが、環境の面で。 ○原 :外来の坂本師長、お願いします。 ○坂本 :一緒に研究した仲間なんですけども、ハードのほうではテレビを利用して流そうとしたりす るんですけども、まだできていません。ハードの部分に関してはほとんどしてなくて、ただ、 ソフトのほうで「今、何番目ですよ」という感じでスタッフが接触をしているぐらいです。 25