...

エネルギー産業の話題

by user

on
Category: Documents
26

views

Report

Comments

Transcript

エネルギー産業の話題
のガスの埋蔵量は2,115億㎥)、タアスユリャフ
(1,145億㎥)、ヴェルフネペレドゥイスコエ
(938億㎥)
、スレドネボツオビンスコエ(2,138
億㎥)も原料供給源になる可能性があるとい
エネルギー産業の話題
われている。その他、将来的には、チャヤン
ダとイルクーツク州の大規模ガス鉱床「コビ
◆Нефть◆Газ◆Уголь
◆Электроэнергия
クタ」を結ぶ総延長約800㎞のガスPLが敷設さ
れ、後者のガスをベロゴルスクおよび沿海地
方に供給することも検討されている。
ガスプロムとロスネフチの
極東石化プロジェクト
ガス化学工場の概要
ロシア科学アカデミーの学者たちは、①サ
ハ共和国の域外で粗ヘリウムの貯蔵場所を確
ロシアの石油ガス専門誌『石油ガス垂直統合』
保することは困難、②ガスの各成分を分離し
の最新号(2013年第11号)に極東地方におい
ないまま長距離輸送を行うとロスが大きくな
てガスプロムとロスネフチが取り組んでいる石
る危険性があるとの理由を掲げ、チャヤンダ
油ガス化学関連プロジェクトを紹介する記事が
の井戸元付近で、ガス精製、ヘリウム生産、
掲載されました。今回は、その記事をもとに、
および、粗ヘリウムの貯蔵を行うことを提案
極東地方の石油ガス化学関連プロジェクトの現
していた。また、ガス精製の結果生じるNGL
状と今後の展望を紹介します。
を専用のPLでウスチ・クトに輸送することも
提案していた。
ガス化学工場の原料供給源
しかし、ガスプロムは学者たちの意見にほ
アムール州のベロゴルスクに建設予定のガ
とんど耳を傾けることなく、チャヤンダのガ
ス化学工場、ならびに、沿海地方に建設予定
スを供給源とするガス化学工場をベロゴルス
のLNGプラントの主要な原料供給源になると
クに建設する意向を2012年秋に表明した。こ
目されているのは、サハ共和国のチャヤンダ
れは、チャヤンダで生産されたガスが井戸元
鉱床である。同鉱床は、ガスのA+B+C1の埋蔵
で精製されることなくベロゴルスクまで輸送
量が4,560億㎥、C2の埋蔵量が8,443億㎥と評価
されることを意味する。
されている巨大鉱床であるが、同鉱床のガス
また、ほぼ同時期にガスプロムは、チャヤ
にはヘリウムが豊富に含まれており、その埋
ンダの石油貯留層の開発を2014年に、ガス貯
蔵量は A+B+C1 が 18 億5,000 万㎥、 C2が 53 億
留層の開発を2017年にそれぞれ開始すること、
4,000万㎥と評価されている。同様に同鉱床の
ならびに、チャヤンダを起点にベロゴルスク、
ガスにはエタン、プロパン、ブタンも豊富に
ハバロフスク経由でウラジオストク付近に至
含まれており、A+B+C1の埋蔵量は順に2,153
る総延長約3,200㎞、輸送能力年間325億㎥のガ
万t(C2は5,058万t)
、1,067万t(2,192万t)
、
スPL(同PLをガスプロムは「シベリアの力」
538万t(1,165万t)となっている。
と称している)を建設することなどを発表し
さらに、同じサハ共和国に賦存するヴェル
フネヴィリュチャンスコエ鉱床(A+B+C1+C2
122
ている。
ベロゴルスクの工場の建設場所はまだ確定
ロシアNIS調査月報2013年8月号
エネルギー産業の話題
していないようだが、ガスプロムによれば、
レン(75万t/年)
、ポリプロピレン(81万t)、
敷地面積は約900haに達し、総工費は6,000億ル
モノエチレングリコール(70万t)
、ブタジエ
ーブルを超えるとされている。生産品目も決
ン(20万t)
、アルファオレフィン(1万3,000
定していないが、LPG、ポリプロピレン、グリ
t)、ベンゾール(4万3,000t)、分解ガソリ
コール、ポリエチレン、商品ヘリウム、メタ
ン(58万t)等の生産を2016年ごろから開始
ノール等が生産されるのではないかといわれ
することが想定されている。
ている。
ガスプロムのマルケロフ副社長によれば、
第2フェーズでは化学製品生産設備の他に
製油施設も建設され、上記の3製油所から供
「シベリアの力」のチャヤンダ~ベロゴルス
給される年間220万tのナフサとLPGの他に、
ク区間は早ければ2016年第4四半期には完成
太平洋PL経由で供給される年間700万t(一部
するとされているが、建設場所や生産品目が
には1,000万tという説もある)の原油も原料
確定していない大規模ガス化学工場がそれま
として利用し、ポリエチレン(85万t)
、ガソ
でに完成する可能性は低く、「シベリアの力」
リン(59万t)
、軽油(185万t)
、灯油(72万
経由でのチャヤンダ産のガス供給の開始時期
t)、バンカー重油(100万t)
、モノエチレン
が遅れることも考えられる。
グリコール(70万t)、パラキシレン(59万t)、
仮にガス化学工場の建設が遅れれば、その
スチロール(39万t)
、ブタジエン(20万t)
、
ことは沿海地方のLNGプラント建設プロジェ
硫黄ペレット(1万t)等が生産されること
クトのタイムスケジュールにも影響を及ぼす
になっている。
ことになるかもしれない。
東部石油化学会社の定礎式は2012年秋に実
施され、工事はすでに開始されているようだ
ロスネフチのプロジェクト
が、プロジェクトの先行きを不安視する声も
ロスネフチは2007年に太平洋PLの終点付近
出ている。たとえば、
「原料の供給源となる各
に大規模な近代的製油所を建設するという構
製油所とは距離的に離れているが(最も近い
想を発表し、2009年より準備作業を開始した
コムソモリスクでも1,300㎞、最も遠いアチン
が、環境保護上の問題があるとの指摘をロシ
スクに至っては5,500㎞)
、そのような遠方から
ア科学アカデミーの極東支部のセルギエンコ
鉄道で輸送されるナフサとLPGを原料として
氏を代表とする学者グループから受け、計画
生産される化学製品が価格競争力を持ちうる
を大幅に変更することを余儀なくされた。
のか」という意見もある。
そして、2011年になり、建設場所を沿海地
その他、
「第2フェーズが完成すれば巨大な
方のペルヴォストロイチェレイ集落付近に変
石油化学工場が出現することになるが、相応
更した上で、製油所ではなく東部石油化学会
の需要を見出すことが可能なのか」という声
社という名称の石油化学工場を建設するとい
や、「700万tもの原油の安定的確保が可能な
う新しい計画を発表した。
のか」という声も聞かれる。
プロジェクトは第1フェーズと第2フェー
ズに分けられており、第1フェーズでは、原
(坂口 泉)
料のナフサとLPGをロスネフチ傘下のコムソ
モリスク、アチンスク、アンガルスクの3製
油所から年間最大で340万t調達し、ポリエチ
ロシアNIS調査月報2013年8月号
123
Fly UP