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プラスチック容器包装材をめぐる現状把握

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プラスチック容器包装材をめぐる現状把握
第3章
3−1
プラスチック容器包装材をめぐる現状把握
はじめに
この章では目的2についての調査および研究内容について述べる。プラスチック容器包
装産業の現状把握は、代替における背景を明確にする上で重要である。この章の構成は以
下の通りである。
3―2
プラスチック包装産業において装材の出荷量等について述べる。
3―3
環境問題におけるプラスチック容器包装の位置づけについて述べる。
3―4
本章のまとめ及び考察を行う。
3−2
プラスチック容器包装産業の現状把握
3−2−1
容器包装材の出荷状況
容器包装材の1997年の出荷量は2350万トンで、このうち、プラスチックは36
3万トンである。したがって、容器包装材全体に占めるプラスチックの構成比は15.4%
で、紙・板紙製品に次いで2位の順位である(表3―1)
。
表3―1
材料
紙・板紙製品
プラスチック製品
金属製品
ガラス製品
木製品
布綿製品
その他
容器包装材合計
表3―2
容器包装材の材料別出荷量推移1)(単位:千トン)
1994年
1995年
1996年
1997年
12302.9 12930.9 13028.5 13507.5
3316.1
3410.8
3541.3
3633.7
2830.8
2796.2
2826.9
2832.4
2439.1
2236.6
2211.1
2156.9
1189.0
1189.5
1193.0
1220.0
114.2
121.2
114.6
115.9
58.1
55.5
54.1
54.4
22250.2 22740.7 22969.5 23520.8
コンビニエンスストアの惣菜で主に用いられている容器包装材
使用材質
OPP(二軸延伸ポリプロピレン)
LDPE(低密度ポリエチレン)
PSP(発泡ポリスチレン)
主な用途
包装用フィルム
包装用フィルム
おにぎり、寿司、麺類など、主に非加熱物
の容器
麺類、箱入りサンドイッチなど、主に非加
熱物の容器
弁当類、惣菜類、麺類などのふた全般
弁当類、惣菜類など、主に加熱物の容器
サラダ類、漬け物類など非加熱物の容器
HIPS(対衝撃性ポリスチレン)
OPS(二軸延伸ポリスチレン)
PPF(フィラー混入ポリプロピレン)
A−PET
(非結晶ポリエチレンテレフタレート)
C−PET
(結晶ポリエチレンテレフタレート)
グラタン、ドリアなど一部の容器
8
表3―3
プラスチック容器包装材の出荷量推移1)(単位:千トン)
合計
フィルム・シート計
ポリエチレン(高密度)
ポリエチレン(低密度)
エチレン酢酸ビニル共重合体
ポリプロピレン
ポリ塩化ビニル(軟質)
ポリ塩化ビニル(硬質)
ポリスチレン
A−PET
C−PET
ポリエチレンテレフタレート
ポリカーボネート
中空成形容器計
ポリ塩化ビニル(硬質)
ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリエチレンテレフタレート
射出成形容器・コンテナ類計
ポリエチレン(低密度)
ポリエチレン(高密度)
エチレン酢酸ビニル共重合体
ポリプロピレン
ポリスチレン
押出成形容器計
ポリエチレン(低密度)
ラミネート軟質製品計
延伸フラットヤーン計
発泡製品計
ポリスチレンビーズ成型品
発泡ポリスチレン
ラミネート発泡ポリスチレン
高発泡ポリスチレン
1994年 1995年 1996年 1997年
3316.1
3410.8
3541.3
3633.7
1682.1
1707.6
1758.7
1783.9
549.6
560.0
571.5
564.1
252.7
244.9
262.0
261.8
51.6
56.1
297.6
303.8
313.5
321.0
125.9
124.8
91.7
87.2
239.8
244.5
256.5
275.8
35.0
44.3
0.4
0.5
36.9
40.5
0.9
1.0
411.8
428.8
469.4
506.2
23.1
20.2
172.5
198.5
209.5
197.3
40.4
37.3
38.0
40.7
175.8
172.8
203.4
251.7
426.1
445.7
463.5
465.4
76.1
73.2
75.1
74.9
55.0
58.7
11.5
12.3
152.2
175.5
131.3
126.0
42.3
45.3
48.1
52.4
42.3
45.3
48.1
52.4
247.7
264.9
283.2
293.3
156.8
159.3
154.6
151.3
349.3
359.2
363.8
381.2
172.8
177.3
179.7
181.9
111.3
112.8
44.2
47.9
21.2
21.2
21.1
21.8
惣菜に用いられる包装用フィルムとしては、ポリ塩化ビニル(軟質)、ポリプロピレン、
ポリエチレン(低密度)が主に使用されている。容器としては、ポリスチレン(発泡ポリ
スチレン、二軸延伸ポリスチレン、対衝撃性ポリスチレンなど)、ポリプロピレン(ポリプ
ロピレンフィラー)、ポリエチレン、A−PETなどが主に使用されているが、最近ではC
−PET製容器なども使用され始めている。なお、コンビニエンスストアの弁当・惣菜で
主に使用されている容器包装材とその用途を表3―2に示す。
なお、表3―3はプラスチック容器包装材の出荷量の推移である。
9
3−2−2
包装用フィルムの生産・出荷状況
食品の包装に使用されるラップフィルムはPO系(ポリエチレン・ポリプロピレン)、P
VC(ポリ塩化ビニル)
、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)の3種類の素材がある(家庭用
を除く)。PO系フィルムは1997年まで年率10%の増加と比較的緩いペースで移行し
ていたが、1998年に入り約2.5倍の生産量を示した。これは大手スーパー、コンビ
ニエンスストアなどが1998年をめどに代替を進めたためで、年間使用量が1000ト
ンを越えるこれら大手企業の代替がこのような好調な需要を支えている。ただ、この急激
な代替に際し、供給が需要に追いつかなかったとの声が一部企業で聞かれた。PO系フィ
ルムは1999年度も好調な売り上げを見せ、前年比20%の増加をみせた。この傾向は
今後も続くと見られ、2003年まで年率15%の増加が続くとされる。
逆にPVCフィルムは1998年度、1999年度と2年連続15%の減少をみせた。
一時は年率20%で減少していくのではないかとの見方もあったが、現段階ではPVC使
用を継続する企業があるため、今後年率はせいぜい15%程度になるものと考える。これ
は、機能・価格ではPVCフィルムがPO系フィルムを上回るからである。
なお、PVDCフィルムは主力用途が魚肉ソーセージ、チーズ等のケーシング用のため
特殊であり、現在のところ代替可能な素材がない。そのため増減は用途商品需要に左右さ
れる。ただし、PVDCフィルムは惣菜包装に用いられていない。
100%
PO系(ポリエチレ
ン・ポリプロピレ
ン)
80%
PVC(ポリ塩化ビ
ニル)
60%
40%
PVDC(ポリ塩化
ビニリデン)
20%
0%
1997
図3―1
3−3
1998
1999
2000(見込み)
2003(予測) (年)
業務用ラップフィルム市場に占める各素材の割合2)
プラスチック容器包装と環境問題
3−3−1
PVC(ポリ塩化ビニル)と環境問題
PVCは最も古いプラスチックの一つで、1991年まではポリエチレンに次いで2位
の生産量であった。1992年以後はポリプロピレンに抜かれ、生産量では3位であるが、
幅広い分野に用いられ、日常生活を基礎から支えている。しかし、環境問題への関心の高
まりと共に、PVCを中心とする塩素系プラスチックが環境に及ぼす影響が注目されてき
ている。塩素含有率が約50%のPVCは、焼却時に塩化水素を発生する可能性がある。
そのため、この問題点を理由に、1990年代初めにPVCから非塩素系プラスチックへ
10
の代替が始まった。また、他のプラスチックとの相溶性がないためリサイクルに不向きで
あるとの指摘もあるため、さらにPVC離れが加速することとなった。ただし、塩素系プ
ラスチックの使用の是非に関しては、現在でも議論が続いているため、一概に是非を言う
ことができない(表3―4)。
現在までPVCが広く使用されてきた理由には、性能が要求を満たしている、安価、加
工がしやすいなどが挙げられるが、近年、これらのファクターよりも環境に対する負荷が
低いことが重要視されてきた。PVCは、最近ではダイオキシンの発生源とまでされたた
め、使用抑制を求める声が後を絶たない。包装用フィルムにおいても、耐熱性、密着性な
どの性能が良く、コストが低いため幅広く使用されてきたが、こういった傾向を受けて使
用は減少する方向にある。
表3―4
ダイオキシン
や塩化水素に
ついて
環境ホルモン
について
リサイクルに
ついて
資源について
その他
塩素系プラスチック使用の是非に関する主な主張について
使用賛成派の主張
都市ゴミ中のPVC混入量とダイ
オキシン類の発生量の間には相関
関係はない。食塩をはじめとする
都市ゴミ中の様々な塩素源から発
生する。したがって、適切な焼却
管理が最も重要である。
厚生省の報告などにより、PVC
の可塑剤が人間に影響を与えると
いう事実はない。また、WHOは、
代表的な可塑剤DEHP(フタル
酸エステル)について発ガン性は
ないとの見解を示している。
PVCは使用済みプラスチックの
マテリアルリサイクルにおいて、
プラスチックの中で最も進んでい
る。
使用反対派の主張
PVCは低い温度で塩化水素を発
生させるため、ダイオキシンの発
生原因として大きい。また、大阪
大学の研究により、ダイオキシン
生成について、食塩の寄与率は
1%にも満たない。
グリーンピースレポートなどでは
PVC製のおもちゃからDEHP
などの環境ホルモンと疑われる物
質が溶出するとしている。
多種類のプラスチックをマテリア
ルリサイクルする際、PVCは融
解温度が違うため、うまく溶け合
わず、障害となる。また、油化に
おいても、脱塩素の工程が必要な
ため、一工程増え、ネックとなる。
PVCの組成は約60%が地球に 岩塩から電気分解する際の電力消
無尽蔵にある食塩であり、石油に 費量は、化学工業全体の18%に
100%依存している他のプラス あたり、省資源とはいえない。
チックに比べて、石油を節約して
いる。
燃焼処理工程において二酸化炭素
発生量が少なく、ポリエチレンや
ポリスチレンの半分である。
11
3−3−2
プラスチックと添加剤
PVCは、塩化水素やダイオキシンを発生する可能性があるなどの理由で使用が難しく
なっているが、問題は他にもある。
通常、PVCを含むプラスチックの加工には、樹脂の種類、加工品の用途に応じて様々
な添加剤が配合される。ポリオレフィン系の樹脂には酸化防止剤が不可欠であり、PVC
の加工には安定剤が必要である。PVCには特に可塑剤、安定剤が大量に配合される。可
塑剤は生産量の約80%が軟質PVC製品に使用されているといわれており、これら軟質
PVC製品の使用樹脂量の半分は可塑剤となっている3)。しかし、これら添加剤の発ガン性
を疑う報告があったり、内分泌攪乱作用を有するとの報告がある。
この可塑剤の中で最も一般的に使用されるのがDEHP(フタル酸ジ2−エチルヘキシ
ル)である。可塑剤の生産量に占めるDEHPの割合は55%であり、様々な用途に用い
られている。しかし、このDEHPは「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」と
されており、「環境ホルモン戦略計画SPEED‘98(2000度5月版)」ではさらに
「優先してリスク評価に取り組むべき化学物質」とされている4)。また、2000年6月に
は、市販弁当からDEHPが検出されたとして、その主たる原因であるPVC製手袋の使
用を避けるよう厚生省から通達がなされている5)。
このように、PVCを使用する際には添加剤の問題が大きくなってくる。PVCは可塑
剤を大量に使用する上に、DEHPを含む5種類のフタル酸エステル類5)が「内分泌攪乱
作用を有すると疑われる化学物質」とされているため、今後環境ホルモン問題の動向によ
っては、可塑剤の使用不可によりPVC製品そのものが市場から消える可能性もある。
しかし、これら添加剤の問題はPVCに限ったことではない。先ほども述べた通り、添
加剤はプラスチックの加工に必要なものであり、添加剤の問題はプラスチック全体に影響
を与える。ただ、現時点では、添加剤の問題は塩素系プラスチックに集中している。PV
DC(ポリ塩化ビニリデン)はその家庭用ラップフィルム用途において添加剤が環境ホル
モンではないかとの疑いを受けたため、その添加剤名を開示する状況に陥った6)。これはP
VDCが塩素系プラスチックであるためにPVCと同様に大量の可塑剤を使用していると
考えられたためだと思われる。このように添加剤の使用において、塩素系プラスチックは
注意を要する事態になっている。
3−3−3
内分泌攪乱化学物質問題
3−3−2でも少し触れたが、可塑剤のDEHPを含む5種類のフタル酸エステル類が
「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」とされている。ただ、プラスチック容器
包装においては、内分泌攪乱化学物質問題は可塑剤だけに留まるものではない。
1998年3月5日、カップ麺容器から内分泌攪乱化学物質が溶出するとして、東京都
は独自に溶出検査を行うと発表した。カップ麺の容器はPSP(発泡ポリスチレン)でで
きており、この容器から内分泌攪乱化学物質であると疑われるスチレンダイマーおよびス
12
チレントリマーが溶出するとのことだった。PS(ポリスチレン)といえば、加工が容易
なことから食品用トレー、弁当パックなどの包装用、電気製品、おもちゃなどに利用され
ており、PSPは緩衝剤や建材、食品容器などとして利用されている。このPSの中にス
チレンダイマー及びスチレントリマーは含まれているが、これらが本当に内分泌攪乱作用
があるのか、そしてどれだけ溶出するのかは究明されていない。しかしながら、この問題
により、カップ麺の売り上げは減少し、同時に紙容器への代替をせまられることとなった。
カップ麺の容器は、熱湯を注ぐため溶出しやすいとの判断がされていたため、問題の矢
面に立たされることとなった。現在、スチレンダイマーおよびスチレントリマーは内分泌
攪乱化学物質のリストから削除されているため、この問題は収束している4)。しかし、コン
ビニエンスストアの中にはPSの代替を行っている企業がある。コンビニエンスストアで
用いられる弁当・惣菜の容器にはPSP、HIPS(対衝撃性ポリスチレン)、およびOP
S(二軸延伸ポリスチレン)製品が多い。通常、PSPおよびHIPSは非加熱物の容器
として、OPSはふた全般として用いられている。しかし、カップ麺の容器と同じくPS
製のため、公的な溶出検査の対象となってもおかしくはないが、現時点まではそのような
動きはない。ただ、すでに一部のコンビニエンスストアではPS製容器の使用を危ぶむ意
見がある。そのため、そのような企業では、これらPS製容器からPP(ポリプロピレン)
やA−PET(非結晶ポリエチレンテレフタレート)、C―PET(結晶ポリエチレンテレ
フタレート)製容器への代替が行われている。
3−4
容器包装材としてプラスチックを使用することの問題点
今までは“塩素系プラスチック=悪、非塩素系プラスチック=善”という図式が成り立
っていた。そのため、様々な用途で塩素系プラスチックから非塩素系プラスチックに代替
が起こった。1998年におけるラップフィルムの急激な代替に見られるように、各企業
は一斉に非塩素系プラスチックの使用へと走った。
しかし、現段階では塩素系プラスチックの使用の是非は議論され続けているため、代替
が必要なのかどうかは分からない。同時に、非塩素系プラスチックの使用が良いわけでも
ない。一部の企業がPSからPPなどへ代替しているのは、非塩素系プラスチックの中で
もより良い素材を選択しようということである。ただ、代替できるまでは加熱・非加熱用
途に応じて容器包装材を変えて対応するしかない。したがって問題は、明日にもその容器
包装材が環境問題の悪玉に祭り上げられるかもしれないということである。容器包装材を
代替したから大丈夫というものではなく、常に容器包装材の長所、短所を把握し、目を光
らせておく必要がある。
13
<参考文献>
1)株式会社東洋紡パッケージングプランサービス:環境問題と容器包装材料の対応動向,
下巻,105-107,1999
2)株式会社富士キメラ総研:2000年プラスチックフィルム・シートの現状と将来展
望,92-128,1999
3)東レリサーチセンター:ポリ塩化ビニル(PVC)と環境,116-125,1994
4)環境省:http://www.env.go.jp/
5)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/
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