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- 46 - 顕微鏡標本のつくり方、染色法、組織学研究法

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- 46 - 顕微鏡標本のつくり方、染色法、組織学研究法
顕微鏡標本のつくり方、染色法、組織学研究法
Ⅰ
顕微鏡標本作製のおおまかなステップ
固定→脱水→包埋→薄切→染色→封入→観察
電顕も光顕も基本的には同じである
固定とは、組織を死後変化から守って、観察したい状態に「固定」すること
固定剤の種類:架橋性と凝固性 … つまりタンパク質の変性
ホルマリンは 40%formaldehyde 溶液のことである。
他にアルデヒド系(架橋性)、酸やアルコール類(凝固性)など
一般には 混剤で使うことが多い。
包埋剤:光顕-パラフィン(ろう)、電顕-エポン(樹脂)、が多く用いられる。
薄切の道具:
ミクロトーム microtome(電顕-ウルトラミクロトーム)
組織を包埋せず凍らせて薄切する特殊な装置:
Ⅱ
クリオスタット
顕微鏡のいろいろ
光線(可視光)顕微鏡と電子顕微鏡、透過型と表面観察型または落射型や走査型、
正立型と倒立型、などに分類される。 具体的には:
一般光学 (光線)顕微鏡、 実体顕微鏡、
(ディスカッション顕微鏡)、
位相差(または微分干渉)顕微鏡、 偏光顕微鏡
透過型蛍光顕微鏡、 落射型蛍光顕微鏡、
透過型電子顕微鏡、 走査型電子顕微鏡
- 46 -
Ⅲ
一般染色
Staining
光線顕微鏡用標本に用いる染色液の大部分は水溶性である。そこで、染色に先立って疎水
性の包埋剤(パラフィンなど)を除去しなくてはならない。
(パラフィンの場合の操作とし
ては、キシレンでパラフィンを溶かし、アルコールでキシレンを除去し、水洗することに
より親水化する)
○ 色素について
色素を水溶液とした場合、その有する基により、負または正に荷電する。
その荷電状態により酸および塩基性色素に分ける。負が酸性、正が塩基性。
酸性色素:細胞質の染色に適す。
OH, COOH, NO2, SO2OH 等の基を有する。
例えば、エオジン、オレンジG、酸性フクシン、など
塩基性色素:核、粘膜、神経要素、特殊分泌顆粒の染色に用いる。
NH2, NHCH3, NH 等の基を有する。
例えば、ヘマトキシリン、メチレン青、トルイジン青、チオニン、
塩基性フクシン、メチル緑、など
直接染料のトリパン青、油溶性色素の sudan 系などは上記分類に当てはまらない
色素、染色液、染色法のちがい …… 例えば「ヘマトキシリン」と言った場合は?
○ 一般染色法の例
1)HE(hematoxylin - eosin)染色
ヘマトキシリン:青(核)
エオジン
:薄赤~ピンク色(細胞質)
2)Azan 染色
アゾカルミン :赤(核、赤血球)
オレンジG
:黄赤(分泌顆粒、コロイド)
アニリン青
:青(膠原線維、粘液)
3)Sudan 染色
ズダンⅢ or Ⅳ:橙~赤(脂肪滴)
ズダン黒
:黒(脂肪滴)
4)PAS(periodic acid schiff)染色
塩基性フクシンを含む schiff 液:紫紅~赤紅(多糖類)
過ヨウ素酸で糖をアルデヒドにし、schiff 試薬をつける
5)アルデヒドフクシンまたはアルデヒドチオニン染色
アルデヒドフクシン:濃紫色、
アルデヒドチオニン:深青色
下垂体前葉・膵ランゲルハンス島のβ細胞、神経分泌物、弾性線維)
-SS-基や -SH-基を有する物質に色素をつける
6)クロム反応(染色)
クロム酸カリや 重クロム酸カリ(固定液に加える):
黄褐色~暗褐色
(副腎髄質、消化管クロム親性細胞)
7)鍍銀法(Golgi 法、Cajal 法、細網線維鍍銀法)
硝酸銀(写真の現像と同じ理論で発色):褐色~黒褐色
(神経細胞、神経線維、細網線維、好銀細胞、親銀細胞)
8)ギムザ染色
血球塗抹標本などのための重染色用
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Ⅳ
組織化学法 Histochemistry … 組織標本中で特定の化学分子の局在を明らかにする方法
1
免疫組織化学 immunohistochemistry
求める物質に対する抗体をあらかじめ作成し、それを切片に反応させたのち標識物質によ
り可視化する。標本作製操作中に抗原性を失活させない、また抗原を露出させるなどの工
夫を必要とする。
(a) 抗体の種類
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、カクテル抗体、
この3種は右のものほど特異性も感度も高い。
カクテル抗体とは同一物質の異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体の
2~3種を混ぜたもの。
モノクローナル抗体はエピトープ特異性は高いが、物質特異性と感度ともに低い。
(b) 可視化標識
酵素:酵素抗体法ともいう。 標識 peroxidase を酵素組織化学の系で発色する
他の酵素として、alkaline phosphatase, glucose oxidase, -galactosidase など
蛍光物質:蛍光抗体法ともいう。 蛍光顕微鏡で観察する。
FITC、ローダミン、テキサスレッドなど
金属:おもに電顕的免疫組織化学用
金、銀、フェリチンなど
アイソトープ:特殊な用法
(c) 直接法と間接法
求める物質に対する抗体そのもの(第一抗体)に標識する:直接法
反応系を2~3段階にし、第二以降の反応液に可視化の標識をする:間接法
PAP (peroxidase-antiperoxidase)法、ABC (avidin-biotin-peroxidase complex)
法は、酵素抗体間接法の一種でよく使用される手技である。
2
酵素組織化学 enzyme-histochemistry
組織中の酵素の検出には、その酵素に対する抗体を用いた免疫組織化学法も適用できるが、
酵素活性を利用して基質に発色性をもたせた(発色基質という)酵素組織化学を行うこと
ができる。固定操作中に酵素活性を失活させないようにする。
蛍光組織化学 fluorescent histochemistry
3
カテコールアミンのように簡単な反応系で蛍光物質に変わるものを蛍光顕微鏡で観察する。
もちろん intracellular dye marker として投与されたものや、他の組織化学の標識に用いた
蛍光物質を観察する場合もこれに含める。 蛍光とは、ある物質に光線があたった時、そ
の波長が長くなる現象であり、その波長差を利用して観察する。 蛍光顕微鏡には落射型
のものと透過型のものがある。
4
レクチン組織化学
植物種子から抽出された各種のレクチンタンパク質が、それぞれ特定の糖残基と結合する
ことを利用した、糖のための組織化学法。
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オートラジオグラフィー auto-radiography
5
ラジオアイソトープを用いた組織化学法。ラジオアイソトープを in vivo に投与する場合に
は、14C-デオキシグルコースをエネルギー源として摂取させ functional organization をトレー
3
スする方法、細胞内マーカーとして投与する方法、 H-チミジンや、活性物質とその前駆
物質の摂取の有無を追求する方法がある。 in vitro の場合としては、切片にたいして反応さ
せ、アイソトープ標識の生理活性物質のリセプターとの結合を調べるほか、他の組織化学
法の標識物質として用いることもある。 いずれにしても、暗条件下で写真用感光乳剤を
切片に塗布し、数日~数十日後に現像して黒化した銀粒子を観察する。電顕応用も簡単で
ある。
6
In situ hybridization 法
核酸が相補的に結合することを利用した組織化学。 あらかじめ目的とする核酸(DNA や
RNA、特に mRNA の場合が多い)に相補的なプローブ(cDNA や合成オリゴヌクレオチド)
を準備し、それにアイソトープなどで標識し、切片と反応させておこなう。
Ⅴ
機能形態学実験法
… 静的な画像をあつかう純形態学の手技や発想法を用いながら、
物質や組織の作用・役割という動的な側面を明らかにする実験法
1 臓器摘除
2 薬物投与
3
4
5
6
7
脱落機能をみる。
ホルモンとそのアゴニスト・アンタゴンスト、
または、合成・代謝促進(阻害)剤等の投与実験
培養法
特定の種類の細胞または組織だけを扱う。
移植法
付加機能をみる(1の逆)
。他個体を利用した一種の培養法。
個体発生や系統発生を追究する。
モデル動物
・実験に適した動物を見つける。
(例:スナネズミ)
・変異動物をさがす。または作成(遺伝子改変動物)する。
・ジーン・ターゲッティングによるノックアウトマウスを作成する。
… この変異動物は、特定のタンパク質(ホルモンやその受容体)だけを合成で
きないので分子レベルで脱落機能を追うことができる。
組織化学法の工夫
組織化学法を組み合わせる。(例:mRNA とタンパク質の共存→「合成」の証明)
物質のある状態だけ(例:タンパク質のリン酸化)を認識する抗体を用いる。
特定の状態の細胞に出現する物質を追究する。
(PCNA, c-fos, c-jun など)
特定の状態の細胞での物質の特徴を利用する。
(3H-チミジンのオートラジオグラフィーや、
アポトーシスを求める TUNEL 染色、など)
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