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会議録 - 静岡県

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会議録 - 静岡県
第1回伊豆半島生涯活躍のまちづくり検討会議
会議録
日時
場所
平成28年6月14日(火)午後3時30分から午後5時30分まで
プラサヴェルデ3階 コンベンションホールB(沼津市)
<構成員(委員)>
静岡県政策企画部長 森貴志、㈱三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター
主席研究員 松田智生、㈱スマートコミュニティ 代表取締役社長 染野正
道、㈱静岡銀行 常務執行役員 大橋弘、三島信用金庫 サポート営業部長
髙嶋正芳、NPO法人伊豆の田舎暮らし夢支援センター 理事長 土屋順一、
NPO法人伊豆未来塾 理事長 石川憲一、下田商工会議所 専務理事 石井
敏、伊豆ホーリーズ㈱/堀井農園 会長 堀井一雄、日本大学国際関係学部
学部次長 堅尾和夫、企業組合 であい村 蔵ら 代表理事 青森千枝美、静岡
県老人福祉施設協議会 会長 石川三義、(一社)賀茂医師会 会長 池田正
出席者 見、(福)梓友会 施設長 江渡隆、美しい伊豆創造センター 事務局長 鈴
職・氏名 木伸二、沼津市政策企画課広域行政推進係長 久保田吉則、熱海市企画財政課
企画室長 田中英樹、三島市総合戦略監 江ノ浦一重、伊東市市政戦略課長
佐藤文彦、下田市副市長 糸賀秀穂、伊豆市総合政策部長 和智永康弘、伊豆
の国市政策戦略課参事 森島浩、東伊豆町企画調整課企画係長 竹内理恵、河
津町副町長 齋藤公紀、南伊豆町副町長 松本恒明、松崎町副町長 指出巖、
西伊豆町副町長 八谷達男、函南町副町長 佐口則保、清水町副町長 関義弘、
長泉町副町長 池田修(30名)
<事務局>
静岡県政策企画部政策推進局長 増田仁、企画課長 京極仁志、地域計画課長
吉良光陽、賀茂振興局長 杉本隆一、東部地域政策局長 広岡健一 ほか
・会議の設置目的及び体制
・「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想の趣旨及び最近の動向
議題
・会議の進め方
・意見交換
・資料1-1:「伊豆半島生涯活躍のまちづくり検討会議」の設置
・資料1-2:「伊豆半島生涯活躍のまちづくり検討会議」の設置及び運営に関する要綱
・資料2-1:㈱三菱総合研究所主席研究員 松田智生氏 説明資料
配付資料 ・資料2-2:㈱スマートコミュニティ代表取締役社長 染野正道氏 説明資料
・資料3-1:「伊豆半島生涯活躍のまちづくりビジョン」策定スケジュール(案)
・資料3-2:伊豆半島地域における「生涯活躍のまち」構想推進のイメージ
・資料3-3:「伊豆半島生涯活躍のまちづくりビジョン」構成(素案)
1
結果概要
会議の設置目的及び体制、会議の進め方を資料1-1,1-2,3-1~3
-3に基づき事務局より説明し、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想の
趣旨及び最近の動向について、資料2-1に基づき松田智生委員より、資料2
-2に基づき染野正道委員より説明いただいた後、意見交換を実施した。
-1-
2
開会挨拶
(政策企画部長)
本日は大変お忙しい中、NPO、産業界、大学、福祉関係者をはじめとして、
伊豆半島7市8町の皆様方にお集まりいただいた。感謝申し上げる。
さて、国では、今年の4月に地域再生法の中に「生涯活躍のまち」構想を位
置づけた。昨年12月、国の日本版CCRC構想有識者会議の取りまとめた最終
報告では、主に首都圏に住む中高年齢層が地方に移り住み、多くの世代ととも
に交流しながら、健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療、介護を
受ける、そういった地域づくりを始めていくということがうたわれている。
今年1月に国が公表した人口移動報告では、本県は転出超過数が6,206人と、
全国でワースト5位になっている。これらに対応するには、本県への移住を促
進することが重要であるが、移住には、移住だけではなく、雇用促進や産業振
興を並行して行われなければならないと思っている。
この伊豆半島生涯活躍のまちづくり検討会議は、伊豆半島地域をモデルとし
て、本県内のみならず、全国の普及モデルを策定していくという意気込みでや
っていきたい。伊豆半島は、人口減少、高齢化が進行している地域である。全
国的にもそうであるが、特に県内でも伊豆半島が深刻である。ただ、一方で、
首都圏にも近く、気候も温暖、自然や温泉など、人を呼び込む場の力があると
我々は思っている。伊豆半島エリアにおいて、県と市町が連携して行っていく
ということが大きな目標ではないかと思っている。生涯活躍のまちを目指し、
地域活性化の戦略をまず立て、成果を上げ、全国にここの名をとどろかせるよ
うな地域を目指していきたいと思っている。
本日、第1回の会議では、国の日本版CCRC構想有識者会議の委員も務め
られた松田智生委員、それから、CCRCの先駆けで、千葉県でスマートコミ
ュニティ稲毛を運営されている染野正道委員から、生涯活躍のまちの可能性や
取組についてご説明をいただく。
本日お集まりの皆様には、この機会に、生涯活躍のまちは何かということを
改めてご認識いただき、それぞれのお立場から、ぜひ活発な意見を交わしてい
ただきたい。簡単ではあるが、私の挨拶とさせていただく。
-2-
3
審議内容
(1) 会議の設置目的及び体制
資料1-1,1-2に基づき事務局より説明
(2) 「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想の趣旨及び最近の動向
(松田智生委員)資料2-1に基づき説明
このテーマ、一言で言うならば、多世代が輝くコミュニティーで地域活性
化をするということ。これについて6年ぐらい前からずっと研究しており、
国で設置された「日本版CCRC構想有識者会議」の立ち上げに尽力し、そ
の委員も務めている。
今日の論点であるが、生涯活躍のまちというのは一体何だという「Wha
t」、何でそれをやるんだという「Why」、誰が担うんだ、誰を呼ぶんだと
いう「Who」といった5W1Hを考えましょうということ。そして、伊豆
半島モデルというのは一体何なのか、それが公共にとってどういうメリット
があるのか、ビジネス、福祉、健康でどんなメリットがあるのか、大学、教
育機関でどういったメリットがあるのかをお話しする。
まずはユーザー視点で考えていただきたい。ユーザー視点というのは、自
分がリタイアした後、一体どういう暮らしをしたいのか。若い方であれば、
自分のお父さんやお母さんは一体どういう暮らしをしてほしいのか。県庁職
員であれば、県民視点ということが大事。
2つ目は生きがいということ。大事なことはそこに住む方の生きがい。皆
さんも、普段の生活で生きがいを感じる瞬間がある。そんな難しい話ではな
い。生涯活躍のまちというのは、移住する人だけではなく、今の県民、ある
いは皆さんが生きがいを感じるようなまちをつくる、多世代が輝くまちをつ
くるということに尽きる。
日本の高齢化率、65歳以上の人口割合は「26%」。静岡はこれを上回る。日
本は世界で一位。雇用は60歳から65歳に延長されている。高齢化率世界一の
国が、果たして、そんなに悲惨なことか。OECDの先進国の中で、65歳以
上の就業率は日本は世界で一番。こんな元気なシニアがいる国はなく、ピン
チはチャンスに変える視点が重要である。
ただ、一方で課題もある。国が年間使っている医療費は40兆円。税収は55
-3-
兆円。税収55兆円の国が医療に40兆円使っていて、医療費は毎年1兆円上が
っている。さらに介護給付費は10兆円。これを極めて荒っぽく言うと、月収
55万円の家庭で、もし医療と介護に50万円使っていれば、その家庭は食費も、
住宅費も、光熱費も払えない。だから、借金するしかない。
今、国はそういうことを言わないし、私もピンチはチャンスにと言うが、
最大のピンチはこの55分の50問題。限られた税収の9割を医療と介護に使っ
ている。分子は毎年1兆円上がっているということは、国がいつかどこかで、
「皆保険の改定でがらりと報酬制度が変わる」「医療費がこれから5割負担
になる」という日が来てしまうかもしれない。それを解決するのが今日話す
生涯活躍のまち。どう解決するかというと、産業をつくる。
今、自治体の一番の悩みは何か。雇用だと思う。雇用がないから、若者が
高校を卒業して、出ていく。Uターン、Iターンの人が来ない。でも、生涯
活躍のまちは雇用が生まれる。健康産業が生まれるから、法人税や消費税と
いった税収が増える。
一方で、医療費、介護給付は抑制可能。本当に医療の必要な方、介護が必
要な方にはきちんと医療介護しなければいけないが、実は市町村によっては
医療費に3倍もの差がある。社会参加や予防医療、健康支援、地域包括を徹
底しているところは、医療費が安い。分母を上げて分子を下げるというのが、
生涯活躍のまち。健康なまちづくりを産業化するということ。
まだまだ誤解や先入観が多い。誤解や先入観というのは、東京の老人を連
れてきてどうするんだという「うば捨て山」。これは主語が問題だと思う。国
や創生会議の資料を見ると、東京の介護が大変だから地方移住と受けとれる。
それは静岡の人も怒るだろう、面白くないだろう。でも、主語を変え、我が
まちが輝くために首都圏のアクティブシニアと連携する。あるいは、私が輝
くために、これからどうするんだという主語が地域でなければならない。要
介護の人を呼ぶのではない。元気な人を呼ぶということ。
さらに、高齢者を呼んできたら高齢化が進むのではないかという議論であ
るが、逆転の発想が大事。つまり、アクティブシニアを呼ぶことによって雇
用が増える。雇用が増えれば、若年層の流出が減る。そして、雇用があれば、
IターンやUターンで働き世代が来る。アクティブシニアをてこにして、若
年層の流出を抑制し、働き世代の流入を促進するということが逆転の発想。
-4-
それから、移住者だけハッピーでいいのかという議論。そうではない。移
住者だけではなく、今の県民、市民、町民もメリットがあるような生涯活躍
のまちにすることが大事である。
雇用が増える、税収が増える、医療費は抑制できてコンパクト化しやすく
なる。産業も、単なるシニア住宅ではなく、予防医療や食事、生涯学習、I
T、金融、さまざまなビジネスが生まれる。学校は、これから少子高齢化で、
小、中、高、大、全部学生は減るしかない。その中でシニア学生が来る、あ
るいはキャリア教育で、シニアが活躍する。民、公、産、学の四方一両得に
なる。だから、日本版CCRCは大事な考え方である。
60代女性のストレスの1位は夫。そして、老後に過ごしたい相手であるが、
男性は夫婦でいたいが、女性は一人か友人といたいと思っている。
女性がストレスに感じる理由は、まずは家事が増えるということ。旦那が
家にいて、三度三度、御飯をつくる。それから、一戸建てであれば、子供が
出ていった後の一戸建ての掃除、庭仕事が大変。妻の家事の負担やストレス
を減らすのが集住という考え方。
アメリカには、5万人のシニアが住む町、アクティブシニアタウンがある。
契約形態はいろいろであるが、食事がついており、奥さんは食事をつくらな
くてよい。掃除もついているから、家事負担が減る。さらに、旦那は旦那で
ゴルフをやり、奥さんは奥さんでフラダンスをやるので、夫婦二人で煮詰ま
ることがない。妻のストレスという課題をまちづくりによって解決した。さ
らにこれが雇用、税収を生む。
ただ、これにも課題があり、介護になったときに、せっかく買った家を売
り払わなければならない。介護移転リスクがアメリカにもある。それは日本
も一緒。日本には「住宅すごろく」がある。持ち家に住んでいて、脳梗塞、
骨折で入院する。そうすると、回復したときに残念ながらもう自宅には帰れ
ない。これは突然来る。そうすると、シニア住宅を探し、また具合が悪くな
り、お金がなくて特養に行くなど、終末期に転々とするということがある。
アメリカも、いろいろな介護施設があるが、CCRCとは、Continuing Care
Retirement Communityの略で、継続的な介護を提供する退職者のコミュニテ
ィー。元気なときから入って介護になる看取り時まで、移転することなくず
っと住み続けられるというものである。
-5-
そして、8割が健常者ということがビジネスとして成功の鉄則。それが全
米で2,000カ所、70万人が居住し、市場規模は3兆円。これは都市のタワー型
もあれば、郊外型、リゾート型もある。契約形態はいろいろあるが、原則、
介護になっても家賃が変わらないことが共通した理念。日本のシニア住宅は
異なる。介護度が上がると、介護上乗せ費用により高くなる。今のシニアが
多額の預貯金を残して亡くなっているのは不安だからである。介護になった
ら幾らかかるかわからない。不安だから、数千万円の預貯金を残して死んで
いる。
介護になっても家賃が変わらないということは、居住者にとっては安心。
シニアには3つの安心が必要である。体とお金と心。体というのは健康のサ
ポート、介護になっても安心。お金というのは、介護になっても家賃が変わ
らない。心というのは、友達ができる、生きがいが見つかるということ。
事業者にとって、介護になっても家賃が変わらないということは経営上の
リスクではないか。ここが逆転の発想のその2である。事業者は介護でもう
けるのではなく、要介護にさせないことでもうける。介護にさせないことを
商売にする。55分の50問題を考えたときに、介護保険に依存した今の高齢者
住宅の経営モデルというのは、極めて脆弱であると言わざるを得ない。税収
を超える日が来るかもしれないのであれば、介護保険に依存したモデルを変
え、要介護にさせないことでもうける。健康を維持する。居住者の8割は健
康というモデルが、これからは有望である。
そして、それは前向きな地域活性化である。今、国の提言を見ても、「地方
消滅」「老人漂流」「介護難民」、元気の出ない四字熟語ばかりである。これは
わかっているので、どうピンチをチャンスに変えるかという逆転の発想であ
る。それを因数分解すると、箱物をつくるハードだけではなく、ソフト、そ
れを支える制度設計やファイナンスが重要である。
築40年の建物をリノベーションし、周辺にある公共施設や病院、公的機関
と連携した、歩いて暮らせる街のような事例もある。一事業者が全てのリス
クを担わず、街丸ごとCCRC化するというモデルである。
また、自然豊かなところで400人の居住者がいて、平均年齢84歳で寝たきり
は2割しかいない。近隣に大学があり、大学病院もある。そして、非正規、
正規を合わせて300人の雇用を生み出している事例もある。
-6-
今、地元に30人の雇用を生み出すことは大変である。工場の誘致は可能だ
ろうか。これからは工場誘致ではなく、アクティブシニアの誘致である。
そして、普通の高齢者住宅をつくっても、介護ヘルパーの雇用が中心であ
る。介護にさせないために、予防医療、健康支援、食事、生涯学習といった
多様な雇用が生まれる。さらに、健康のビッグデータは無限であり、その分
析。血圧、血糖値から遺伝子解析まで、今、米国で一番人気のある職種、給
与の高い職種は、データサイエンティストやデータアナリストである。統計
の専門家がますますヘルスケア業界に流れ込んでくる。だから、地元の高校
生、大学生の働き場所、あるいはUターン、Iターンで来た人の雇用の場が
ある。
もちろん介護も大事な仕事。しかし、介護離職が高いのはなぜか。キャリ
アアップに尽きると思う。今、国が給料を1万、2万上げるという話をして
いるが、頑張れば、元気高齢者向けのアクティビティのプランナーになれる、
あるいは、データサイエンティストとして活躍できるといったキャリアアッ
プが見えれば人は頑張れるが、それが今は見えない。キャリアアップを見せ
るということが、この生涯活躍のまちの大事なことである。
そして、学校と連携したモデルもある。破綻寸前だった大学が、敷地内に
CCRCをつくり、シニア大学をつくった。今は人気の施設で、それが相乗
効果で大学の経営も安定し、学生も増えてきた。入居条件が面白く、年間450
時間以上、授業を受けないと入れない。1日1限では入れない。ハードルを
上げたことが人気を呼んだ。そして、ここでは、元投資銀行で働いていた人
がファイナンスを教える、エンジニアがものづくりを教えるといったような
シニアが教える講座も人気である。キャリア教育は重要である。地域の子供
が、知見、経験、人脈豊かなシニアの話を聞くというのは、子供の教育にも
よい。シニアは教えること、学ぶことで元気になる。
日本の事例になるが、私の父は84歳。東京の公立小学校の6年生に歴史の
時間、ゲストティーチャーとしてまちの歴史を教える。東京大空襲の話をす
ると、翌週、小学生が作文を書き、4人1組で、おじいちゃんの話はこうい
うことであったということをプレゼンテーションしてくれる。こういうこと
をすると、私の父親は嬉しい。年をとって少なくなるのは、「ありがとう」や
「おかげさまで」と言われること。これは心理学でいう貢献欲求や承認欲求
-7-
というもの。
つまり、生涯活躍のまちでは、箱物をつくるのではなく、貢献欲求や承認
欲求を満たすようなソフトが大事である。それは多世代交流である。こうい
う気持ちがあれば人は衰えない。
アメリカの事例に戻ると、大学と連携したCCRCは名前が素敵である。
ノートルダム大学はホーリークロス・ビリッジ。フロリダ大学は、オークハ
ンモックと言って、フロリダ大学が持っている健康やスポーツ、栄養のノウ
ハウを徹底的に提供する。
これは大学だけではなく、高校でもいい。地域には地元の最高学府たる名
門校がある。そこを拠点にしてもよい。大学は全国で800。これから少子化で
学生は減るしかない。小学校や中学校、全国で3万校ある。もしその3万校
で10人のアクティブシニアがゲストティーチャーとして働けば、30万人の雇
用が生まれる。学校を拠点としたCCRC、生涯活躍のまちは有望である。
シニアに聞くと、住み替えや移住で気になるのは年賀状である。例えば、
「このたび移住しました。東京の介護が不安なので、有料老人ホーム、たそ
がれの里に移住しました」というのは恥ずかしいが、「このたび北海道札幌ビ
レッジに移住しました。元エンジニアだったので、今、ものづくりのアドバ
イザーとして活躍しています」「長崎グローバルビレッジに移住しました。か
つて海外に赴任していたので、留学生のホストファミリーをしています」あ
るいは「高知竜馬ビレッジに移住しました。好きな幕末の歴史を学びながら、
今、特産品の販路開拓に汗をかいています」のような、年賀状に書きたくな
る住み替えが大事である。この年賀状問題は非常に重要。特に男性。リタイ
アした後、書くことがなくなってくる。
「伊豆半島何とかビレッジに移住して、
今、こんなふうに多世代に囲まれて活躍しています」のような年賀状に書き
たくなるストーリー性が大事ということ。
リタイアした日本人が、「きょうよう」と「きょういく」だと言っていた。
今日、用があることと、今日、行くところがあること。「今日、用」があって、
「今日、行く」がある。これは結構本質であると思う。
今、全国で260もの自治体が生涯活躍のまちを推進する意向を持っている。
これからは、各市町村のアクティブシニアをめぐる誘致合戦になってくる。
そのときに、我が町の強みは何かを一言で言えることが大事になってくる。
-8-
それから、移住は、いい人に来てもらいたい。来て、クレームばかりの人
になってもらっても困る。担い手になってもらいたい。こんな人に来てもら
ったら困るという事例としては、「私は何とか物産の部長だった」「何とか商
事の部長だった」とすぐ過去自慢する人。それから、口は動くけど手が動か
ない。手は動くけど、足が動かないという、「これ、コピーとってよ」のよう
な人も困る。やはり共通の特徴があり、だめな人は、過去の自慢話ばかり、
人気のある人は、今、何かに夢中で汗をかいている、恥をかいている。つま
りアクティブシニアというのは、過去を語らず今を語ることが大事。そうい
うシニアが現実にいる。
高知に移住した方は、釣りが大好きで全国を回っていた。彼は『釣りバカ
日誌』のハマちゃんの初代編集者、小学館の編集担当で、『釣りバカ日誌』の
ハマちゃんのモデルであった。全国を回って、結局、高知に移住した。今、
高知県の移住の委員会、高知版CCRCの検討委員会も一緒であるが、彼が
考える高知版生涯活躍のまちは、「釣りバカビレッジ」、あるいは、お遍路が
人気ということで、「お遍路ビレッジ」といったような趣味を核としたもので
ある。
あるいは、長崎に移住した方。50代で早期退職して、東京のビール会社の
役員であったが、長崎に移住した。彼は東京生まれ、東京育ちで、なぜ長崎
かというと、長崎支社長として4年9カ月赴任した。その長崎に恩返しした
いと。東京のときは出世していたが、ハッピーではなかったと。今、野球部
のコーチもやって真っ黒に日焼けしている。人生で今、一番幸せだと。地元
の大学の地域連携室長で働きながら、野球部のコーチをやっている。移住し
たときに、地元の商工会や同友会の方から、「お帰りなさい」と言われた。つ
まり、支社長を4年、5年やっている人は、地元の商工会やロータリーの方
とはみんな知り合いである。移住してきて「お帰りなさい」と言われるよう
なモデル。もちろんUターンもあるだろうが、このように転勤族、静岡に転
勤したことがあり、静岡に恩返ししたいという人が、たくさんいるのではな
いか。
あと、彼で参考になるのはハッピー別居。奥さんは残して自分だけ移住し
ている。「卒業婚」と言うようだが、何も夫婦そろって移住せずとも、奥さん
と離れて暮らし、逆に仲がよくなりましたということもある。そして、奥さ
-9-
んや子供たちが季節のいいときに来てくれる。だから、移動で消費も落ちる。
既存の高齢者住宅と生涯活躍のまちで何が違うかというと、入居動機であ
る。今までの住宅に不安だから入るのではなく、楽しみたい。具合が悪くな
ったからではなく、元気なうちに入る。そして、皆さん担い手になるという
こと。
アメリカとは何が違うのかというと、向こうは原則、塀で囲われたコミュ
ニティーであるが、日本はもっと地域に開かれた、まち丸ごと、住む人もシ
ニアだけではなく、多世代が住んでいいだろう。新しくつくるのではなく、
ストックを生かす。日本はストックの宝庫。公共施設、団地、廃校、撤退し
た大型商業施設や稼働率の悪い旅館やホテル、いっぱいあるだろう。
こんなイメージはどうか。団地をリノベーションして低層階にシニアが住
み、中高層階に若者や働き世代が住む。食事は1階でみんなでして、地域包
括ケアセンターがケアを提供し、地元の高校や大学にみんなで通う。若者は
格安の家賃で住む代わりに買い物支援をするという、多世代で助け合うよう
なモデルである。
そして、ファイナンスも大事である。資金調達において、米国ではヘルス
ケアリートというものがある。これはオフィスビルではなく、シニア住宅が
ヘルスケアリートで、平均利回りが6%で回っている。昔の高齢者は恵まれ
ていた。ビッグやヒット、ワリコー、ワリチョーといったものがあり、金利
が6%、元本保証で回っていた。だから、当時のシニアは、退職金を10年預
けたら2倍になった。今、金利は0.02%であり、お金が不安なわけである。
もし静岡ヘルスケアファンド、静岡プラチナファンドというものができて、
それが仮に金利が0.5%、0.2%であっても、人は集まると思う。
頑張っている金融機関もある。長野県の松本信用金庫では、健康診断を受
ければ金利が10倍になる。今の0.02%が0.2%になるということ。東北の金融
機関では、貸し出しの多くが県外の企業、そして、国債を買っている。そう
ではなく、これからは県内の有望産業に県民の預金が行って、そこが収益を
上げれば、利息や配当で還元されることが望ましい。
成功しているモデルを紹介すると、Share金沢は、事業主体が社会福
祉法人。キーワードは「多世代」。シニアだけではなく、学生の寮や体の不自
由な子供の施設がある。担い手となった高齢者が店舗の販売員を担当してい
-10-
る。仕掛けは、学生が格安の家賃の代わりに、ここでボランティアをしてい
る。
オークフィールド八幡平は、事業主体は民間企業であるが、社会福祉法人
のグループが専用の会社をつくった。キーワードは「地方移住」。首都圏や盛
岡から移住してきている。自然豊かな岩手山を望むところに、30室つくり、
将来は100室にしようとしている。近隣の病院、デイサービス、社会福祉法人
の施設が近くにある。農園をつくる、あるいは岩手県大と連携して出前講座
をやる。シェフは、地元の農産物でシニアがますます元気になるような食事
をつくりたいと、近くのホテルからわざわざ転職してきた。さらに、このレ
ストランは開放されており、地元の方が食べに来てもいい。
国が基本方針をつくり、自治体が基本計画をつくる。そして、事業主体は
企業、社会福祉法人、医療法人、大学でもやってもいい。
地域再生法が変わり、自治体が地域再生計画をつくる。そこに補助金、お
金、規制緩和、税制でサポートがある。交付金や規制緩和、税といった点で、
これから国はどんどんサポートしていくべき、それだけでは足りないという
ことを、ずっと私どもで国に対して申し上げている。
事業者にとって介護度が改善されると収益が悪くなるというリスクがある。
そうであれば、もし健康を維持して、自立度や介護度が改善されれば、事業
者に対して奨励金や減税があるべきだという成功報酬制度。あるいは、地域
のために50時間働いたら、その50時間は自分が介護になったときに使える。
あるいは、ポイント制にして、地域通貨として使えるといった社会活動ポイ
ント。根強い用途規制に対し、市街化調整区域や農振といったものを緩和し
ましょうという用途転換緩和などを提示している。
また、平成の逆参勤交代制度をやるべきである。江戸時代の参勤交代は地
方の力を弱めるために江戸に来た。しかし、それによって街道が整備され、
江戸に藩邸ができた。プラスの面もあった。例えば、経団連参加企業は社員
の1割を年間1カ月、地方で働かせなければならないと。そういう企業は法
人税を25%にする。もしそうすれば、伊豆半島にオフィスができて、住宅が
できる。街道整備は不要であるが、大容量のITのインフラが必要になって
くる。あるいは、電車での移住割引といったものも出てくるかもしれない。
ちょっとした強制力が必要である。支えるために、こういう制度設計が必須
-11-
になってくる。
アクティブシニアの誘致合戦になったときに、温泉とゴルフ場はどこでも
ある。我がまちが選ばれるよう綿密な準備が必要である。そして、ターゲッ
ト戦略。UターンなのかIターンなのか、単身なのか夫婦なのか。あるいは
広域連携もあるだろう。杉並区と南伊豆町の例もある。東日本と西日本の自
治体が連携し、夏は涼しい信州で、冬は暖かい伊豆半島でというような2地
域居住、3地域居住の広域連携も考えられるだろう。
さらに、シニアばかり連れてきたら医療介護費が上がるだろうと。それに
対してきちんと効果の多面的推計をすることである。今、三菱総研で約15の
自治体の基本構想を手伝っているが、どのくらいの年齢か、要介護か健常者
か、何人来ると何年後に医療介護費はどうなるかということは、モデルを持
っているので大体推計できる。一方で、経済効果も生まれる。開発、建設、
消費、移動。これを計算すると、医療介護費をはるかに上回る経済波及効果
がある。厚生労働省の算定では、1人あたり年間200万消費する。これは自治
体によって前提条件が違うので、各自治体できちんとモデルを示さなければ
ならない。やはり人は、数値やデータ、エビデンスで納得するので、一体我
がまちに何人来たら、どのくらいの経済波及効果があるのか。医療介護費は
どのくらいになるのかということをしっかり予測しなければならない。
いろいろな話をしてきたが、受け取り方や反応が異なる。いい職場や会場
はアイデアが出てくるのだが、だめな職場や会場ではこういう人が多い。
できない理由ばかり言う否定語批評家。制度でできない、地域性でできな
い。もうできない理由を言わせたら天下一品の人々。これが地方創生を阻ん
でいると思う。また、すぐ「いかがなものか」と言う人。「地方創生、いかが
なものか」「CCRC、いかがなものか」と言っても何も解決しない。生涯活
躍のまちをやらなければ、私はそれで結構であるが、今の人口減少、高齢化、
雇用がない状況にどう対応するのか。対案、代案を出さなければ、それは意
味がないだろう。それから、夕張みたいに人口半減、財政破綻したのであれ
ばやるしかないが、緩やかな衰退、緩やかに減っていると、なかなか危機意
識に至らない現象や、本当はPDCAにならなければならないが、PPPP
といって、プランばかり繰り返される現象を打破すべき。酒の席では雄弁で
あるが、会議では黙ってしまい、終わった後の飲み会で、「何だよ、さっきの
-12-
話」などと言い、盛り上がってしまう居酒屋弁士。居酒屋弁士は、実はいい
ことを言っている。リラックスして、いいアイデアも出ているので、要はそ
れをやりましょうということである。
もし、市町や団体で検討するときに、一言で我がまちの強みは何かと言い
切ることが大事だと思う。温泉とゴルフ場はどこにもあると言ったときに、
我が町はこれが強みだと言い切れるかどうか。それをこれから検討していく
ことが、この会議の大事なことではないか。
この生涯活躍のまちは、民、公、産、学、四方一両得。そこの根底は逆転
の発想である。高齢者、シニアは地域のコストではなく、担い手と見なす。
そして、介護でもうけるのではなく、介護にさせないことでもうける。さら
に、シニアが流入することが結果的に若者の流出を抑制して、働き世代が流
入してくる。大事なのはユーザー視点のストーリー性であり、年賀状に書き
たくなるような住み替えがあるかどうかということである。
綿密な準備も必要である。医療介護費は一体どうなるのか。一方で、経済
波及効果はどうなのか。さらに、移住者だけがハッピーでは困る。地元住民
は在宅のまま、そこで食事がとれる、健康プログラムに参加できるといった
ように、地元住民にもメリットがなければならない。例えば、北海道の浦河
町では、市民が移住お助け隊をつくり、移住者のためにいろいろなお手伝い
をする。それが生きがいや健康につながっている。
CCRCは目的ではなく、手段である。箱物をつくるのではなく、それを
きっかけにまちのあり方、これからの生き方、働き方を見直すということで
ある。さらに、一歩を踏み出す勇気である。その一歩は、一自治体、一事業
者が踏み出しても小さな一歩にしか過ぎないが、今日、ここに集まった多く
の志のある人々が一歩踏み出せば、それは伊豆半島にとって大きな一歩にな
ると思う。
私の話したことが、皆さんの新しい気づきや一歩踏み出すきっかけになれ
ば、講演者としてこれほど嬉しいことはない。
(染野正道委員)資料2-2に基づき説明
千葉県の千葉市において、シニア向けの住宅を、元気な人が元気なまま、
ずっと健康なまま暮らそうというコンセプトで、2010年からビジネスをスタ
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ートし、今、700人弱の方にお住まいいただいている。
日本の老後事情、皆さんが思い浮かべる高齢者対策は、何となく日本だと
介護施設からというイメージを持たれている人が多いと思う。お客さんやい
ろいろな方に事業の説明をするときに「こういう施設で、リタイアしたらす
ぐに来てください」と話すと、「まだ早い」と言われる。それで「何で早いの
ですか」と聞くと、「まだ全然元気だし」と言う。今までの日本の高齢者対応
が、そういうコンセプトで、介護保険制度も非常に充実しているので、そこ
までは何もしなくていいのではないかという発想、考え方に凝り固まってし
まっていると思う。
私たちが考える高齢者対応は、介護が必要になってからすることではなく、
元気なうちから始めることであり、それが日本のためになるというコンセプ
トで事業をしている。それは、アメリカのCCRCが参考になっている。
高齢者が持つ3つの不安、お金の不安、心の不安、体の不安という、この
3つを同時に解決するためには、元気なうちに入って元気に暮らしていく。
それから、生活費は年金の範囲内でというものを提案している。それが結果
的には介護を進めない、国から見れば、介護費用や医療費の削減につながっ
ていくのではないか。
どんなところかというと、分譲マンションの方式をとっており、分譲マン
ションを買っていただき、スマートコミュニティの会員になってもらうとい
う仕組みである。分譲マンションは今、1,300万から2,000万円台、3,000万円
位までの物件が多く、富裕層向けではない。サラリーマンの人で現役時代に
取得した家を売り、転居してくる方がほとんどであり、一般のサラリーマン
のリタイア族がメインターゲット。それからコミュニティ会員であるが、月
額約9万円を払っていただくと、朝晩2食がつき、クラブハウスで様々なア
クティビティなどのサービスが受けられる。
どういうまちかというと、今、7棟目が建とうとしており、全部合わせる
と、この夏に1,000戸になるところである。クラブハウスは、もともと売り場
面積が1万坪の閉館したイトーヨーカ堂をリノベーションして使っている。
月額費用の9万円は、主に厚生年金を受給している方が年金の範囲内でず
っと暮らせるという価格設定であり、長生きリスクがない、長く生きてもこ
の範囲内で暮らしていけるというため、定額制にしている。
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実際に普通の老人ホームと異なるのは、クラブハウスにパジャマで来る方
はおらず、外に行く格好、レストランに行くような感じで来られる。
ダイニングもできるだけおいしいものを提供するということで、また、い
ろいろ選べるように、洋食、和食、海鮮のお店、鍋、焼き肉のお店などが中
にあり、アルコールまで売っているカフェ、ゴルフレンジやビリヤードも入
っているプールバーもある。こういうものをチープにつくると、移住の動機
にならないので、できるだけこういう設備については、おしゃれにつくって
いる。
私どもが提供しているアクティビティのメニューは、文化系から運動系ま
で50種類位あり、初心者向けのものが多い。友達をつくるためのきっかけづ
くりというイメージである。その後、ここでできた友達同士がさらに意気投
合し、サークルをつくり、それが今、40種類位動いており、両方合わせると
90種類位になる。
例えば、テニスサークル、音楽バンドがあって、実際には、私たちにとっ
て懐かしい、キャンパスライフのようなものがこの中で実現されている。さ
らに、発表会なども含めて、いろいろな出し物をしたり、企画をすることで、
それに向かっていろいろな練習をしたりということがある。
さらに、食事やアクティビティの中で、いろいろなことが起こる。それは、
楽しいことも起これば、けんかも起こる。大体、大学で起こったような事件
がこの中で必ず起こっていて、私たちはそれをうまく静めていくというよう
な秩序の維持を日ごろスタッフと共に取り組んでいる。
安心安全、食事や活気ある生活のサポートを重視しており、コンシェルジ
ュやいろいろな見守りサービスなどは一般的施設同様に提供しているので、
割愛させていただく。
私たちは9万円の中で朝晩2食の食事が含まれており、昼はオプションに
なっているが、食事を提供するということの意義が高いと思っている。高齢
者は結構節約する。家でじっとしていると動かないので、さらに食事の量も
質も落ちていく。すると健康も落ちていくという悪循環に陥る。会費の中に
食事が含まれているので、皆さん一生懸命食べよう、クラブハウスもたくさ
ん利用して、もっと元気に生きようというモチベーションの高さに繋がって
いる。食事は当然味にも非常に力を入れている。それに加えおいしさの決め
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手はにぎわいで、笑顔に囲まれておしゃべりしながら食べるということも非
常に健康につながっていると思う。
入居条件であるが、50歳以上で基本は健常なこと、もしくは同居の方の簡
単なサポートで日常の生活が送れることであり、要介護の認定を受けている
方も何人かいらっしゃるが、もし、その後、介護等が必要になったとしても、
医療も含めて、近隣の業者と提携をしており、地域連携で全部こなしていけ
るようになっている。
今、会員の中で要介護を受けられている方は20人位である。実際、要介護
2で来られて、介護レベルが下がった方もいらっしゃる。もともと杖をつい
ていたが、1週間位で杖が要らなくなったというケースもあり、やはり気持
ちが大きく作用すると感じている。
そういう方たちは積極的に運動しているかというと、特にそういうことも
なく、朝起きて着がえて、クラブハウスに食事を食べに来て、おしゃべりを
して、スタッフと話をして帰っていく。人によってはラジオ体操をしたり、
趣味をやったりという感じで、アクティビティにも緩やかに参加している位
であるが、この程度でも健康には大変プラスになっていて、介護度がどんど
ん進んでいく傾向は見られない。日本全体の介護度の進行レベルよりも非常
に小さい数字になっていることは、今後、1つのデータとして皆さんにご説
明できると思う。
私たちから生まれる経済効果について簡単にご説明すると、今、会員数約
700名に対して、1日4時間で、朝食の準備をする人、掃除をしに来る近所の
主婦の方というパートタイムの方も含め、スタッフが190人弱位いる。これだ
けの地元雇用がつくられている。
それから、会員様1人あたり年間当社に100万円ちょっと支払い、それ以外
にいろいろな消費を含めて合計200万円位使うとすると、1,000人の場合、年
間20億円位が、この地域に落ちるということになる。
資産還流でいえば、都心で働いて得た年金の収入が地方に来て、そこで消
費されるということがあるかと思う。世代間の資産の入れ替えという意味で
は、例えば、都心のマンションを売って郊外に住み替えると、売った家を若
者が取得してというようなことで、資産の回転が起こると思う。それから、
マンション建築で原価が1戸2,000万円とすると、今、1,000戸あるので、そ
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れだけで地元の建築会社に200億円位支払われているということが言える。
もちろん、人が集まることによって、人、物が集まってくる。医療や介護
に対する新たな事業者の参入もあるのではないか。
逆に、高齢者が集まるから行政の負担が増えるのではないかという意味で
は、私たちの現状を見ていると、介護になる方が極めて少ないので、介護の
負担は非常に少ないという実態がある。医療に関しては、健康を気にしてい
る方はある程度お医者さんに行くので、どこまで下がるかというデータはま
だないが、高度医療を必要とする人がどんどん増えていくという状況ではな
い。
人が集まるので、例えば、中でいろいろなイベントごとをやると、そこの
中で事業をしたいという方が増える。デパートが特設コーナーをつくりに来
たり、2カ月に1回位、お買い物ツアーを催してくれたり、近所のソフトバ
ンクのお店が来てスマホ講座を開催する、飲料メーカーが骨密度を測定する
イベントをしながら乳製品を販売するなど、そういう持ちつ持たれつのよう
なことがたくさんあり、いろいろな業者の方が来るので、それを会員さんも
楽しみにしているというような状況がある。
私どもがサステーナブルであるためにどうあるべきかと思っていることを
簡単にお話しするが、私たちのような業者がどうやって生きていくのかとい
う意味では、全体で補助金に頼らない、産業として成り立つビジネスモデル
にしなければならないと考えている。私どもで言うと、マンションを販売す
るという事業と、毎月約9万円をいただいているコミュニティ事業の2つの
事業がある。今、700人いらっしゃるので月間7,000万円位の収入がある。加
えて、マンションが1戸売れれば、2,000~3,000万円の売り上げになるので、
それが私たちの収入になっているが、事業の採算性を確保するためには、で
きるだけローコストで運営することも必要であるし、全ての業務を自社内で
やることはできないので、地域連携でやることで地域にも恩恵があるのでは
ないか。
資金回収しなければならないという意味で、私たちは分譲型を取り入れて
いる。建てた建物を入居者が購入すればすぐ回収できるというメリットがあ
る。また、終身利用権の場合、1代で権利がなくなってしまうが、分譲方式
は資産となり住む方もわかりやすい。賃貸モデルをつくると回収が遅いので
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粗製乱造の恐れがあると思っている。
採算を確保するために大人数が必要であるが、一定以上の規模が、コミュ
ニティの魅力をつくる。50人、100人の場合、楽しい趣味などで友達同士合致
することは結構難しいのではないか。ある程度の人数、300戸位あれば最低限
のいいものができるのではないかと思っており、私たちは東京を中心とした
郊外でやっているが、地方であれば、300戸から500戸位を目指していければ、
1つ成り立つところができるのではないか。
私どもが開業した当初は、県からも市からも支援はなかったが、やはり私
たちが苦労していることは、まとまった土地を調達することや、クラブハウ
スのような共有施設をできるだけ安くするためにどうするかということであ
り、行政からこういうものを、定期借地も含めて安く提供していただける方
法があるとよい。それから、雇用や税務などの面も何かしら検討ができるか
もしれない。ただ、あまり継続的に補助金を注入することは逆にマイナスで
あると考えている。
それから、住民を集める提案として、住み替え促進策や健康増進インセン
ティブ、CCRCの啓蒙活動を一緒にやってもらえれば、日本全体に、移住
をして楽しく健康に暮らすという環境が整うのではないかと思う。
実際に、行政の方に協力していただき、日本中にこういうものが広がり、
100万人、200万人がこういうところに住むようになれば、日本全体にも大き
な影響があり、認識が進むことで「まだ早い」と言わなくなるのではないか。
(3) 会議の進め方
資料3-1~3-3に基づき事務局より説明
(4) 意見交換
<主要意見>
(堀井一雄委員)
スマートコミュニティにおいて、住民が地域に出ていき、産業の手助けをし
たり、農家の手助けをしたりということはあるか。
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(染野正道委員)
労働に対する取り組みは、実はできていない。逆に地域のシニアの人材セン
ターから雇用している側になっている。働く場の提供について、いろいろなと
ころと相談をしているが、働き口がないという状況があり、それは行政と一緒
に対応したいと考えている。
(指出巖委員)
三菱総研が提示する第二義務教育制度について、少し詳しく説明してもらい
たい。
(松田智生委員)
最初の義務教育は小学校、6歳からであるが、第二義務教育制度は、例えば、
我がまちは50歳になったらもう一度学校に行かなければならないという制度で
ある。
公民館でも社会参加でも、出席する人は大体決まっている。男性よりも女性
のほうが多い。自治体にとって出てきてもらいたい人、将来このまま引きこも
りや独居老人になってもらっては困るような方が最大のリスクであると思う。
日本人はアメリカ人と違い、ボランティアや社会参加をしましょうといっても
なかなか一歩を踏み出せない。であれば、我がまちはもう一回学校に行かなけ
ればならないと義務にする。
そこでまちの課題、財政状況、観光などをもう一回学ぶ。学校に行けば、給
食の時間があるので、独居老人は大助かりである。また、体育の時間では骨粗
鬆症の予防運動や転倒防止運動を学ぶというような、もう一回、社会参加をす
るための後押しをするアイデアである。
(池田正見委員)
伊豆半島といっても非常に広く、賀茂地域、下田市を含めた1市5町は、イ
ンフラ整備がなされていない、交通機関もない、光ファイバーも通っていない
ようなところである。そんな中で、先ほどのスマートコミュニティ稲毛の例の
ようなことが果たしてできるだろうか。
地方の老人は、ただ企業がないだけではなく、守らなければいけない土地と
家がある。その土地と家を守るために自分の持ち家に年寄りが住んで、若い方々
は雇用の場所がないので、沼津辺りまで出てきて、そこに居ついてしまい、な
かなか戻ってこない。それで段々家も土地もなくなっていくような状況が伊豆
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半島の特徴である。そういった中で、CCRCをどのように進めていくかとい
うことで、いろいろな部落、小さい単位で考えていかないと、なかなか具体的
なことはできないのではないか。
また、医療に関して、沼津の辺りは総合病院がかなりあるが、伊豆半島の南
のほうに行くと、二次救急をできる病院がない。1.5次ぐらいまでしかできない。
医療と介護、救急も含め、あるいは、災害医療もやっていかなければいけない。
伊豆半島の南のほうは、地震など、いろいろな問題を抱えた地域である。
(青森千枝美委員)
私は松崎町で、平均年齢72歳で「蔵ら」というお店をやっている。みんなで
少しずつ出資し、25人で立ち上げた。一番若い人が59歳、一番上が私で80歳で
ある。お店を経営しているが、まちづくりに関して、1軒流行るお店ができる
とどんどん町が活性していく。
もう10年目だが、最初に始めたのがものづくり介護であった。ものづくりで
みんなを元気にしようということで始めた。医療費を少なくしようということ
も目的に入っている。今では、ものづくりをする人が100人近くおり、一生懸命
つくって、ホテルからおみやげ品にしてもらいたいというオファーもあった。
これからも、もっともっと松崎町の高齢者を元気にしていきたい。
(松田智生委員)
キーワードの1つとして、
「交流人口」がある。まず松崎に行き、蔵らでおい
しい料理を食べてファンになってもらう。交流人口を増やすことがファンを増
やす。住まうありきよりも集うありきである。それはDMOと言われている観
光と重なると思う。単なる高齢者政策ではなく、観光政策とも重なる。こうい
った蔵らのような拠点を中心として、交流人口が増えて、地域を好きになり、
将来住んでくれる、あるいは住まなくても、2地域居住で担い手になってくれ
る人が来ればいいなと思う。
(石川三義委員)
南伊豆町で杉並区が特養をつくるという話し合いを県としたときに、特養だ
けをつくるのではなくて、まず最初に100~300戸のシニアハウス、あるいは、
サービス付き高齢者向け住宅やケアハウスをつくれば、そこに杉並区の方が来
て定住し、その特養も生きるということをお話しし、その考えを杉並区にも話
してくださいということを言った。
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介護現場では、介護人材が集まらないということが極めて喫緊の課題である。
南伊豆町の特養建設・運営は梓友会が受けてくれたが、介護人材を集めること
が大変である。浜松、静岡、沼津においても、介護人材を集めることが極めて
難しい。そういう中で、南伊豆でつくった場合、あるいは、伊豆半島でそうい
うものをつくった場合に、東京から年金生活者に来ていただき、その人たちを
雇用しないと、まず雇用の確保ができないと思う。東京で生活をされている人
たちが、まず年金を持って伊豆半島に来て働いていただくということが1つの
戦略ではないかと思う。
伊豆市の天城地区に認定こども園、お年寄りのデイサービスセンター、障害
者の就労支援施設、コミュニティーカフェという地域の人たちが交流できる場
所、要するに多機能型福祉施設をつくった。田舎の方では、施設がばらばらに
なると、機能的に大変悪く、職員の確保が難しい。さまざまな福祉の機能を持
ったものを総合的につくっていくことが、雇用の確保や機能的に大変有効にな
るのではないか。
(松田智生委員)
高齢者施設だけではなく、体の不自由な方の就労施設もセットにするという
点で言うと、Share金沢が、まさにそういうモデルである。高齢者のサー
ビス付き高齢者向け住宅と体の不自由な子供の児童入所施設、さらに彼らが就
労できるレストランなど働く場もある。高齢者住宅自身は、事業としてはおそ
らく少し厳しいけれども、障害児童の雇用に補助金があるということで、これ
が経営を安定させている。
事業をやる上で大変だったことを聞くと、県や市にこの話をしに行くと、高
齢者施設はこちらの課、児童福祉施設はこちらの課ということで延々とたらい
回しにされると。あるいは、廊下や道路の整備について、それぞれ何メートル
必要ということで、結局は倍必要になってしまい、何とかしてほしいと。この
ような多機能施設をつくるときは役所のワンストップ窓口が必要だということ
を事業者の方は力説されていた。
(政策企画部長)
まちづくりをするときや全体的な計画を立てるときに、それぞれの部局に行
かなければならない場合があり、課題である。ワンストップ窓口として一旦全
部受け入れ、その中から差配するという方針を我々もとろうと思っている。
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このCCRCにおいても、実際にその要求があれば、速やかにそういった窓
口をつくりたいと考えている。
(松田智生委員)
これからのポイントは事業主体に尽きる。自治体が基本構想をつくるが、開
発や運営を担うのは事業主体であり、民間企業、あるいは社会福祉法人や社会
福祉法人から派生した新会社が担うということがあるが、課題はやはりリスク
である。
やりたいのだが、100~200室を超えるものは数十億のお金がかかるので、一
歩踏み出せないというところも少なくない。
どうしているかというと、一歩踏み出しているところもあるが、一方で、地
元の社会福祉法人、企業、東京の大手介護オペレーターによる3団体で新会社
をつくるというもの、あるいは新会社ではなく有限事業責任組合のようなもの
をつくろうと。今、国に地域経済活性化支援機構(REVIC)というファン
ドがあり、公的資金でそれをサポートしましょうという仕組みもある。一事業
者がやるモデルと共同会社でやるモデルがある。
感覚的に3人集まれば文殊の知恵であるが、4人集まると無責任になる傾向
があり、やる気のあるところが少人数でやる方がいいのか、本当に腹をくくっ
た事業者が頑張るのか。事業主体がこれから非常に重要になってくる。
今回、国が出した指針を見ると、事業主体に課せられた責務は非常に大きい。
地域交流拠点をつくらなければならない、地域コーディネーターを設置しなけ
ればならないということで、やることは極めて多い。一方で、その見返りはあ
まり見られない。
自立度や介護度が改善された場合、事業者に奨励金を出すことや法人税の減
税があってもいいのではないか。あるいは共有部、コミュニティースペース、
食堂、地域交流拠点をつくれといっても、それは事業者にとってはコストにし
かならないので、そういった共有部については国がお金を出してほしい。健康
を維持した人については、医療費や健康保険料を安くしてもいいのではないか。
静岡健康特区のようなものをやってはどうかなど、政府の有識者会議でもいろ
いろ言ったが、国はそう簡単にはうんと言わない。事業者にとってのインセン
ティブは、減税でも規制緩和でも補助金でもいいが、事業者がやる気になるよ
うなものを出さなければ、事業は動かない。
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(染野正道委員)
私どもも開業したときは、介護保険の住所地特例もなかったので、市なり県
も静観していた。マンションを7棟も建てれば、年間1億以上の固定資産税も
入るようになり、すごい消費もされて、それはよかったが、移り住んでくる人
から見ると、私どもは上場しているわけでもないし、得体の知れない業者であ
る。行政のバックアップや一緒にやっているという安心感があれば、移住しや
すいのではないか。そういう提携、アライアンスが行政とはなかなかうまくで
きなかった。
新しいエリアで事業を始めるときには、行政がもっとバックアップして、一
緒にやっているということがあれば、移り住む人もすごく安心できるのではな
いか。一民間事業者がやっているというよりは、一緒に地域でやっているとい
うことが大事で、地域、ファンド、国など、いろいろなアライアンスでやると
いう考えは非常に良いのではないか、安心感のある仕組みに見えるのではない
かと思った。
(青森千枝美委員)
私たちもほんとうに小さなお店であり、収入もそれほどではない。私たちは
高齢者でも税金を払うぐらいの仕事がしたいというのが最初であったが、今月、
法人税、町民税、消費税、商工会、企業組合の経費を引いたら、ほとんどお給
料がない。何か高齢者に、今おっしゃったような特区のようなものがあって、
規制緩和がもう少しあれば、高齢者の小さなお店も増えていくのではないか。
(江ノ浦一重委員代理)
ビジョンにおいて、これから新しい事業をやっていくことについて、県から
支援してもらえるものがあるのか、ないのかというところまで踏み込んで検討
してもらえれば、市もそれに上乗せするような形もでき、より事業のインセン
ティブになっていくのではないか。
4
閉会挨拶
(政策企画部長)
長時間にわたり、熱心なご意見、感謝申し上げる。
今日、皆様方からいただいたご意見、それから、後ほどいただけるご意見が
あれば、
「伊豆半島生涯活躍のまちづくりビジョン」の中に反映させていきたい。
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今後は、分野別検討会や市町連絡会を開き、ビジョンの内容をさらに深めてま
いりたいので、引き続き、皆様方のご支援をお願いしたい。
この生涯活躍のまちづくりという考え方については、まだ一般的なものにな
っていない。それは我々もやっていて感じるところがあるので、今後、県民の
皆様や伊豆半島地域の皆様方をお招きした、シンポジウムがいいかわからない
が、シンポジウムのようなものも開催し、さまざまな意見をそこで頂戴し、本
年秋を目途に生涯活躍のまちづくりビジョン案を策定したいと思っている。
改めて、長時間にわたるご意見をいただき、感謝申し上げる。これで会議を
閉会させていただく。
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