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相対標準偏差の計算
アナリティクイエナジャパン FD-08Cs100ユーザーズミーティング 2012.10 食品中の放射性物質の 試験法について 公益財団法人日本適合性認定協会 認定センター 放射能・放射線分科会事務局 森 曜子 食品中の放射性物質の新たな基準値 厚生労働省HPより抜粋 放射性セシウムの暫定規制値 ※1 放射性ストロンチウムを 含めて規制値を設定 ※1 平成24年4月1日施行 放射性セシウムの新基準値 ※2 食品群 基準値 (Bq/kg) 飲料水 10 牛乳 50 一般食品 100 乳児用食品 50 ※2 放射性ストロンチウム、プルトニウム 等を含めて基準値を設定 ◆ 厚生労働省 食安発0315第4号 (平成24年3月15日) 「食品中の放射性物質の試験法について」 (別添)「食品中の放射性セシウム検査法」 ◆ 厚生労働省 事務連絡(平成24年3月1日) 「食品中の放射性セシウムスクリーニング法の 一部改正について」 ※ 対象は「一般食品」のみ 食品衛生法の検査 分析・測定にはそれぞれ目的がある。 分析・測定 検 査 検査の目的 食品衛生法の検査は分析・測定に含まれるが、 特定の目的を持っている。 従って、検査に使用する分析法の性能要件を、 他の目的(サーベイランス、摂取量推定、学術 研究)の分析・測定法に適用する必要はない。 逆も同じであり、他の目的の分析法に必要な性 能要件であっても、必ずしも検査に用いる分析・ 測定法に適用する必要はない。 食品衛生法の規格基準に適合していない食品を流通させない。(量あるいは濃度を知 ることを目的とした測定と検査は異なる。) 検査は測定結果に基づいて、規格に適合しているかを判定する。 従って、検査結果は 規格に適合している (○) 規格に適合していない の2種類しかない。 (×) 食品中の放射性セシウムの検査の流れ 判定を伴う 食 一般食品 品 スクリーニング レベル超過 スクリーニング 検査 確定検査 スクリーニング レベル以下 基準値 以下 (9割以上) 判定 合 格 基準値を超過せず 規制なし 基準値 超過 不合格 製造、加工、使用、調理、 保存、販売の禁止 検査対象物質 ・放射性セシウム:Cs-134とCs-137の総和 他にも放射性物質(核種)は飛散しているのに なぜ、2核種のみか? ・放出量が多く、主汚染核種である ・測定が容易である 放射性セシウムによって、半減期1年以上の 核種全てを評価している 試料の前処理 試料は可食部を用いる。 「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370 号)第1食品A食品一般の成分規格5(2)検体に規定される 食品は、当該項目の第1欄の各食品について、各々第2欄の 試料の調製に従う。 製造し、又は加工した食品は、原則としてそのままの状態を測 定試料とする。 試料の洗浄は別添の食品の放射性物質に関する検査におけ る試料洗浄 (土壌除去)標準作業書に準じるものとする。 液体の試料はそのまま、個体の試料は、予めハサミ、カッター、 包丁等で細切りした後、全体を均一に混和し、設定された容量 を機器校正に用いたものと同じ測定容器に予め重量を測定し てから充填する。 測定の流れ 試料の細断 畜肉 試料調製 葉物 測定容器への充填 マリネリ容(1L) U8容器(90 mL) 落としぶた 使い捨て手袋 使い捨てのまな板 一体成形の包丁 混合して均一化 試料間の 相互汚防止 茶の試験 飲用に供する状態:荒茶又は製茶10g以上を30倍量の重量の熱 水(90℃)で60秒間浸出し、40メッシュ相当のふるい等でろ過した 浸出液を測定試料とする。 食品安全部基準審査課長通知 食品中の放射性物質の試験法の取扱いについて 飲用に供する茶の試験については、以下の①、②の場合、飲用 に供する状態で10Bq/kgを下回ることが確認できるものであるた め、試験法通知に基づく飲用に供する状態での検査を不要とする。 検査結果が①、②に示した数値を超えた場合は、飲用に供する 状態での検査を必ず行い、検査結果を確定することとする。 ①Ge検出器で 200Bq/kg以下 ②NaI検出器で 150Bq/kg以下 検査終了! 乾燥品の試験 告示で示される、乾燥きのこ類及び乾燥野菜類並びに乾燥さ せた海藻類及び乾燥させた魚介類等を測定する際には、でき るだけ飲食に供される状態と同様の状態で行う観点から、粉砕 後のサンプルに、日本食品標準成分表等の水戻しによる水分 含量の公表データ(重量変化率)を参考として、必要な水分を あらかじめ添加し行うことを原則とするが、乾燥状態で検査を 行い、日本食品標準成分表等の水戻しによる水分含量のデー タ(重量変化率)を用いて換算を行った結果を分析値としても差 し支えない。 ◆ 厚生労働省 食安発0315第4号 (平成24年3月15日) 「食品中の放射性物質の試験法について」 (別添)「食品中の放射性セシウム検査法」 測定条件の設定 ➢標準線源等を測定し、測定結果X及び測定結果に伴う計数誤 差による標準偏差σXの推定値を得る。基準値濃度における X/σXが10以上となるように、試料容器及び測定時間を設定す る。 装置の効率から基準値相当の試料から得られる計数率を求める。 測定時間を設定して、得られる計数Nを求め、これをXとする。 σX =√X を計算する。 X/σXを計算し、10以上であることを確認する。 Cs-137のみが存在するとして上記の設定をすれば、Cs134が存在してもしなくても、 X/σXは10以上となる。 検出限界、基準値における精度で最終的な条件は決まるので、 ここでの設定は、あくまで目安である。 測定条件の設定例 1.検出器効率から基準値レベルでの計数率を予測する。 効率 0.005 cps/Bqの測定系 基準値 100 Bq/kg 測定容器に入る量 100 g 100 Bq/kg × 0.1 kg × 0.005 cps/Bq = 0.05 cps 2.測定時間を設定し、計数を予測する。 測定時間 1000 秒 0.05 cps(count/s) ×1000 s=50 count ∴ X=50 3. σX =N1/2を計算する。 σX = √50 ≒ 7.07 4. X/σXを計算し、10以上であることを確認する。 50/7.07=7.07<10 5.測定時間を変更 測定時間 3000秒 X=150 σX = 12.25 X/σX = 150/12.25=12.24>10 検出限界の確認 ➢測定容器のみのブランクを設定した条件で測定し、検 出限界値が規制値の1/5の濃度以下であることを確認する。 検出限界値は、検査結果が検出限界以下(ND) となった場合の信頼性を保証する指標である。 設定した測定条件で検出限界値が上記の基準を満 たさない場合には、測定条件を見直し再設定す る。 試料の測定 ➢予め重量を測定した測定容器に試料を充填した後に重量を 測定し、重量の差を試料重量として記録する。 ➢測定容器を検出装置に載せ、設定した測定時間で測定し、 スペクトルを得る。スペクトルを解析し、試料中の放射性セシウ ム濃度Xと測定結果に伴う計数誤差による標準偏差σXを得る。 市販されている装置では、「文部科学省編放射能測定シリー ズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロ メトリー」に記載の方法に従って、各種の補正を行い計数率か ら放射性セシウム濃度と標準偏差が計算される。 分析結果の変動 時間当たりのγ線の放出数は、放出する原子の数で決まる。しかし、時間当た りに見れば、一定の数ではなく、Poisson分布に従って分布している。期待値 がNのPoisson分布の分散もNであるので、観測結果とその標準偏差は N N で示される。 つまり分散は期待値で決まってしまうので、1回の測定でNが得られれば、繰り 返し測定しなくても、その標準偏差も推定される。 100カウントが得られた場合、伴う標準偏差は10カウント、RSD は10%であることは、自動的に決まる。 化学分析では、その系により信号と標準偏差の関係は変わり、一定ではない。 従って、測定結果の変動は繰り返し測定によって推定する必要がある。 信号(例えばピーク面積)100が得られたとしても、伴う標準偏差 は繰り返し測定しなければ分からない。 検査結果の取扱い ➢測定結果がNDであった場合には、Cs-134とCs-137の検出 限界値の和が基準値の1/5の濃度以下であることを確認す る。 ➢ Cs-134の測定結果をX134、Cs-137の測定結果をX137とす るとき、放射性セシウム濃度X=X134+X137が基準値の 75%から125%の範囲となった場合には、X134に伴う計数 誤差による標準偏差をσ134、X137に伴う計数誤差による標 準偏差をσ137としたときに X 2 134 2 137 10 であることを確認する。 基準値付近で相対標準偏差(RSD)≦10%を規定。 検査結果の取扱い ➢上記の条件が満足されない場合は、測定時間を延長して測 定し上記が満足されるようにする。 ➢検査結果は、有効数字2桁で記載する。 104 Bq/kg→100 Bq/kg 117 Bq/kg→120 Bq/kg 設定した精度では、3桁目は信頼できない。 ➢NDとなった場合には検出限界を明記し<20 Bq/kgのように 記載する。 ◆ 厚生労働省 事務連絡(平成24年3月1日) 「食品中の放射性セシウムスクリーニング 法の一部改正について」 ※ 対象は「一般食品」のみ 検査の性能 規格に適合している対象(食品)を合格とする確率が高く 規格に適合していない対象を不合格とする確率が高い検査は 性能が優れている。 OC曲線 検査性能を図示する曲線 理想の検査 120 合格率(%) 100 80 現実の検査 60 40 20 0 0 50 100 濃度 150 200 精度が劣る検査方法 120 合格率(%) 100 濃度が110でも25%が合格 濃度が80でも10%は不合格 検査法としては性能が低い 80 60 40 20 0 0 50 100 150 200 濃度 スクリーニング検査の目的 基準値より確実に低濃度の試料を判別すること。 上の図の方法は精度が良くないが、 濃度が50の時には、必ず<100の結果を与える。 ⇒50以下のものを100%合格とする性能がある。 スクリーニング検査法 スクリーニング法/性能要件 バックグラウンド値 下記の測定下限値(25 Bq/kg)を担保できる値であること。 バックグラウンド値は試料と同じ容器に同量の水をいれたものと する。ただし、遮蔽が十分な場合はブランク状態の測定値をバッ クグラウンドとしてもよい。 測定下限値 25 Bq/kg(基準値の1/4)以下であること。 真度(校正) 適切な標準線源を用いて校正されていること。 スクリーニングレベル 規制値(100 Bq/kg)の1/2以上 スクリーニング法/性能要件 1.測定下限値の確認 ns 25 nb N s 25 N b ns 25 nb 3 3 2 2 tb ts tb ts Ns25:25 Bq/kgの計数値 Nb:バックグラウンドの計数値 ns25: 25 Bq/kgの計数率 cps nb:バックグラウンドの計数率 cps ts, tb:試料およびバックグラウンドの計数時間 s それぞれの値を代入し、不等式が成立すれば、測定下限値が 25 Bq/kg以下であることが確認される。 スクリーニング法/性能要件 2.スクリーニングレベルの確認(繰り返し測定による方法) スクリーニングレベルにおける測定をくり返し、測定値の平均と 標準偏差から以下の式により99%上限を求める。測定は実際 の試料測定と同じ条件で、測定の変動に影響する要因をできる かぎり含めて行う。くり返し数は5以上とする。測定値の分布の 99%上限が基準値で得られる測定値未満であることを確認する。 測定値の分布の99%上限 m tk 1,0.01 s m 測定値の平均値 s 測定値の標準偏差 k 測定数 t k-1,0.01 自由度k-1、片側危険率1%のt 値 (t 分布表より) 計数率から放射能濃度への換算 正味計数率(測定試料とバックグラウンドの計数率の差)、機器 換算係数、試料重量から計算する。 ( n s nb ) K C W nb:バックグラウンドの計数率 cps ns:試料の計数率 cps K:機器換算係数 Bq /cps (Ge半導体検出器のピーク効率に対応) W:試料の重量 kg C:放射性セシウムの濃度 Bq/kg スクリーニング法の流れ-1 3.1 エネルギー範囲の設定 Cs-137のγ線は662 keV1本であり、Cs-134の605、 796 keVの間に位置するため、Cs-134を用いてエネル ギー範囲を設定する。エネルギー範囲を広くとれば放 射性Csに由来するカウントは多くなる一方、バックグラ ウンド由来のカウントも増加する。正味計数に伴う誤差 の標準偏差の正味計数に対する比は、540~830 keV 付近のエネルギー範囲としたときに極小となるので、こ の付近のエネルギー範囲を設定することが望ましい。 エネルギー範囲 Cs-137 50 40 count Ge半導体検出器で 得られるスペクトル Cs-134 Cs-134 30 20 10 0 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 keV Cs-137 30 Cs-134 20 count NaI(Tl)結晶検出器で 得られるスペクトル Cs-134 10 0 200 300 400 500 600 keV 700 800 900 1000 スクリーニング法の流れ-2 3.2 機器換算係数の決定 Cs-137標準線源を用いて、設定したエネルギー範囲で の機器換算係数を決定する。機器換算係数は、測定 容器、ジオメトリに依存するので、これらを変更した場 合には、再度決定する必要がある。 スクリーニング法で想定している測定手順 測定 1.エネルギー校正を実施する。 2.計数効率が変化していないことを確認する。 3.設定した測定時間で540~830 keVのバックグラウンド計数 率を測定する。 4.測定下限が満たされていることを確認する。 5.試料を測定容器に充填し、 充填した量を測定する。 6.試料の540~830 keVの計数率を測定する。 7.試料の計数率からバックグラウンド計数率を引き、測定容器中 の試料に含まれる放射性セシウム量(Bq)を求める。 8.7で得られた結果を試料量で割り、試料中の放射性セシウム濃 度(Bq/kg)を求める。 性能評価の留意事項 バックグラウンドが高いと測定下限値に悪影響を与えるため、 分析機器は環境からの影響が小さい場所に設置する。また、 機器に十分な遮蔽を施す。 Cs134+137混合線源を使用して性能評価を実施した場 合は、測定時期におけるCs134と137の比率に注意し、放 射性セシウム量を過小評価しないようにする。 スクリーニング法が適用可能な充填率の範囲を把握しておく。 測定環境(ジオメトリ、測定容器等)を変更した場合は、性能 評価を新たに実施する。 ご清聴ありがとうございました。 公益財団法人 日本適合性認定協会 食品試験・放射能試験プログラムマネジャー 森 曜子