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高エネルギー密度ファイバーレーザ加工機
【日本機械工業連合会会長賞】 高エネルギー密度ファイバーレーザ加工機 (薄板加工用KFLシリーズ) コマツ産機株式会社 石川県金沢市 1. 機器の概要 近年、レーザ加工機市場では炭酸ガスレーザ加工機に代わって、発振効率の高 いファイバーレーザ加工機が普及し始めている。レーザ加工機ではレーザ出力が 生産性、切断能力に大きく影響を与えるとして、高出力を最重視した開発・商品 化が行われてきた。その結果、比較的薄板を加工する場合でも、高出力レーザを 使っての加工が行われ、消費電力の増大が課題となっていた。 我々は発振器の高出力化に依らず、出力のダウンサイジング化による省エネを めざし、しかも薄板板金加工の生産性を確保したファイバーレーザ加工機「KFL シリーズ」を開発した。 図1 高エネルギー密度ファイバーレーザ加工機KFL2051 薄板の加工速度は、材料に照射するレーザのエネルギー密度に比例する。その ため、発振したビームの品質を劣化させることなく加工点まで導くことが重要で — 54 — あり、KFLでは光学的なカプラーを用いることなく、高品質ビームをダイレク トに加工点まで導く方法を開発した。 この結果、出力2kW で従来型ファイバー4kW と同等の生産性を確保しながら、 発振器出力のダウンサイズにより、発振器電気代の 50%低減(従来型ファイバー 4kW 比較)を達成した。また、空気中の窒素ガスを濃縮して切断ガスに使用する ことによって、薄板切断時のランニングコストを低減した。 2. 2.1 機器の技術的特徴および効果 技術的特徴 (1) 高品質ビームモードによる高速切断 一般的なファイバーレーザ加工機では、ファイバーレーザ発振器で発振した レーザビームは、光学系を用いた空間結合方式を用いて、プロセスファイバー に結合されて、加工点(加工ヘッド)まで導かれる。ビームエネルギーは空間 結合部分でロスを生じ、ビーム品質が劣化していた。図2に一般的なファイバ ーレーザ加工機の構成を示す。 プロセスファイバー ファーバーレーザ 発振器 光学的な結合(カプラー) 発振器とプロセスファイバー の結合 加工ヘッド 加工機内部 図2 一般的なファイバーレーザ加工機の構成(光学的な結合) 本機では空間的に結合する方式ではなく、ダイレクトに発振器とプロセスフ ァイバーを結合する方式を開発し、結合部分でのエネルギーロス及びビーム品 質の劣化を防止した。その結果、加工点(加工ヘッド)でレーザビームを小さ く絞ることができ、小出力であっても高速での加工が可能となった。その結果、 — 55 — 出力が2kW であっても、一般的な4kW ファイバーと同等の切断速度での加工が 可能である(図3) 。 図3 一般的なファイバーレーザとの切断速度比較 (2) 特殊ガス(SG、Special Gas)による低コスト切断 レーザ加工機で軟鋼を切断する場合、アシストガスに酸素ガスを使うことが 一般的である。しかし、アシストガスに酸素ガスを使うと①酸化反応速度に律 速されて、高速で切断できない。②切断面が酸化して、後工程(溶接工程、塗 装工程など)に問題が生ずることの課題があった。この課題を解決するために、 アシストガスに窒素ガスを使う方法も運用されているが、大量の窒素ガスを使 うためにアシストガス代が高くなる問題が発生している。 KFLでは空気中の窒素ガスを取り出して、増圧する装置を開発し、そのガ ス(特殊ガス、SG)をアシストガスとして使用している。 大量の窒素ガスを購入することなく、コンプレッサの電気代のみで酸化皮膜 レスの切断が低コストで可能となった。 2.2 効果 効果の確認は精密板金ユーザで使用されている板厚 3.2mm 以下の軟鋼、ステン レス材料の切断で、一般的な4kW 炭酸ガスレーザと比較して行った。 — 56 — (1) 省エネ性 発振器の効率向上によって発振器の消費電力は 88%低減できた(図4)。ま た、炭酸ガスレーザと同一生産量の場合、生産時間が 49%短縮した(図5)。 生産時間の短縮によって、発振器以外の加工機の電気代についても大幅な低減 ができた。 図4 発振器の消費電力 図5 同一生産量の生産時間 (2) 経済性 本機KFLでは集光したレーザ ビームの径が小さいために、ノズ ル径も小さくでき、窒素を使用し た場合でも、アシストガス代の 43%低減は可能であるが、SG切 断によって 72%の低減が可能で ある(図6) 。 図6 アシストガス代 3. 用途 レーザ加工機は板金加工工程の材料切断工程で広く使われている。今後、炭酸 ガスレーザ加工機に代わって、ファイバーレーザ加工機が板金市場で主流となる と考える。 その中で、当社KFLシリーズは薄板切断におけるダントツの低コスト・高速 切断性能を保有しており、薄板精密板金市場で多くの需要が見込まれる。 — 57 —