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各府省庁からの平成 28 年度税制改正要望 平成 27 年9 月 28 日 No.512
平成 27 年 9 月 28 日 各府省庁からの平成 28 年度税制改正要望 No.512 各府省庁より平成 28 年度税制改正要望が公表されています。これらは、税制調査会において調査や審議が行われ、通常 は 12 月中旬に税制改正案として税制改正大綱が発表されます。今回は、そのうち、所得税、相続税及び贈与税に関する税 制改正要望についてご説明します。なお、これらの要望は、そのとおり税制改正に反映されるとは限りませんので、ご留意 下さい。 1.子育て支援に要する費用に掛かる税制措置の創設(所得税、新設)<内閣府> (1)要望の内容 所得税において、給与所得に係る特定支出控除の対象にベビーシッター等の子育て支援に要する費用を追加 (2)要望を必要とする理由 認可外保育施設やベビーシッター等に要する費用の一部について、税制上の所要の措置を講ずることにより、希望 する保育サービス等を利用できない子育て家庭の負担軽減を図り、特に若い世代が安心して結婚し子育てをしやすい 環境や女性が働きやすい環境を整備するため。 2.空き家の発生を抑制するための特例措置の創設(所得税、新設)<国土交通省> (1)要望の内容 旧耐震基準の下で建築された居住用家屋(被相続人のみが居住し、相続発生後に空き家になった場合に限る)を平 成 28 年 4 月 1 日以降に相続し、相続後一定期間内に上記家屋の耐震リフォーム又は除却を行った場合に、標準工 事費(上限 250 万円)の 10%を所得税額から控除 (2)要望を必要とする理由 空き家の発生を抑制し、居住用家屋の適切な管理や利用を促進し、地域における安全な居住環境を確保するため。 3.上場株式等の相続税評価の見直し(相続税・贈与税、新設)<金融庁> (1)要望の内容 投資家の資産選択を歪めることがないようにするため (2)要望を必要とする理由 上場株式や公募投資信託等は、不動産等と比較して価格変動リスクが高い金融商品であるが、相続税の評価上は、 原則として相続時点での時価で行われ、相続時から納付期限(10 か月間)の価格変動リスクは考慮されておらず、 価格変動リスクが小さい資産と比較して、相続税評価上の扱いが割高となり不利になっているため。 4.取引相場のない株式の評価方式に関する見直し等(相続税・贈与税、新設)<経済産業省> (1)要望の内容 取引相場のない株式の評価方法の一要素である株価の上昇による中小企業の税負担の増大を踏まえた税制措置等の 見直しを検討 (2)要望を必要とする理由 上場企業の株価上昇に伴い、中小企業の中には業績に大きな変化のない状況下であっても、想定外に株価が高く評 価されることにより、円滑な事業承継に影響を及ぼす可能性が生じている。また、平成 27 年 1 月 1 日より相続税 課税強化により、更に負担が重くなっているケースも見られるため、日本の経済基盤を形成している中小企業の事業 や事業承継に支障を来さないようにするため。 5.死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ(相続税、拡充)<金融庁> (1)要望の内容 死亡保険金の非課税限度額について、現行限度額(法定相続人の数×500 万円)に下記を加算すること 配偶者分×500 万円+未成年の被扶養法定相続人の数×500 万円 (2)要望を必要とする理由 生命保険金は、被相続人(被保険者)の死亡によって生じる遺族の経済的負担に対する備えであり、遺族の生活資 金を目的としている。平成 27 年 1 月 1 日より相続税の課税強化が行われ、相続税の課税対象となる者は増加する ものと考えられ、相続税納付後の遺族の生活資金の確保のためにも配慮が必要であるといえる。 まとめ 平成 27 年 1 月 1 日以降相続税の課税強化が行われていることに配慮した税制改正要望が挙げられています。特に中 小企業の事業承継については、中小企業の経営者の平均年齢の上昇に伴い、円滑な経営者交代が行われておらず、事業承 継を希望していても対策を行っていない経営者が多いことが現状問題になっているようです(中小企業庁の HP より) 。 中小企業は会社の所有と経営が分離されていないことが多く、後継者の選定だけでなく経営者が所有する株式移転の対 策を講じる必要があります。その場合に関係するのが上記 3 や 4 となりますので、対策を講じる際には上記の要望の動 (担当:本岡 聖子) 向にご留意下さい。