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第1回堺市文化芸術振興条例懇話会議事録(PDF:479KB)

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第1回堺市文化芸術振興条例懇話会議事録(PDF:479KB)
第1回 堺市文化芸術振興条例懇話会 議事録(要旨)
1.日時
平成 26 年 4 月 21 日(月)10:00~正午
2.場所
堺市役所本館地下1階 大会議室・東側
3.出席者(50 音順・敬称略)
赤穂正秀(一般社団法人大阪交響楽団事務局長)
岡村筍(オカムラデザインプロ代表者)
亀岡典子(産経新聞大阪本社編集局文化部)
越田英喜(株式会社コシダアート代表取締役)
小灘一紀(堺美術協会会長)
坂口茉里(堺シティオペラ一般社団法人専務理事)
芝本安雄(公募市民)
砂田和道(相愛大学音楽学部准教授)
中川幾郎(帝塚山大学法学部名誉教授)
野間康子(野間バレエ団団長)
原久子(大阪電気通信大学総合情報学部教授)
細川維(堺市文化団体連絡協議会会長)
松本京子(有限会社おふぃすベガ取締役)
4.議事録要旨
(1)開会
(2)堺市あいさつ(堺市副市長)
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(3)委員紹介・座長選出など
事務局から委員紹介(略)
●事務局
座長の選出についてですが、お配りしています資料1堺市文化振興条例懇話会要綱
第4の第1号の規定により、座長は互選により選出することになっています。
どなたか、ご推薦いただける方は、いらっしゃいますでしょうか。
○砂田委員
ご経験が豊富な中川先生にお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
●事務局
砂田委員から中川委員のご推薦がありましたが、皆様いかがでしょうか。
(異議なしの声)
●事務局
それでは、中川委員、座長席にお座りください。
次に、本懇話会要綱第4の第3号に基づきまして、座長代理の方を座長からご指名
いただきたいと思います。
中川座長、どなたかご指名いただけますでしょうか。
◎中川座長
座長代理は砂田委員を指名したいと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なしの声)
◎中川座長
それでは、座長代理は、砂田委員ということでよろしくお願いします。
(4)事務局説明(これまでの取り組みと今後の予定)
◎中川座長
それでは、議事を進行いたします。
本日の次第4「これまでの取り組みと今後の予定」について、事務局から説明をお
願いします。
(事務局から資料4に基づき説明)
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◎中川座長
事務局から堺市の文化芸術に関する現状・課題・今後の取り組みについて説明いた
だきました。
文化芸術振興に関する計画があるので、それを支える条例を後追いで制定すること
になると思います。この関係性についてはご理解いただけましたでしょうか。
○越田委員
既に堺市文化振興ビジョン、第2次堺市文化芸術推進プランを策定していますが、
条例はこれらに比べてどれぐらい執行力があるのでしょうか。
●事務局
ビジョンやプランは、行政が策定したものです。条例は、議会の議決により制定さ
れるので、総体的に市として、これまでよりも強く、文化芸術振興に取り組むことが
できます。
(5)議題
条例の方向性について
◎中川座長
それでは、「議題 条例の方向性」について、事務局から説明をお願いします。
(事務局から資料4に基づき説明)
◎中川座長
推進計画を審議会の意見を求めて策定するということですが、現在策定しているプ
ランはどうなるのでしょうか。
●事務局
第2次堺市文化芸術推進プランの計画期間は平成25年度から平成30年度です
ので、その間は、審議会の意見を踏まえながら、条例で定める推進計画として取扱い
ます。
◎中川座長
条例というのは、議会が制定に同意し、団体としての堺市の意思を表すことになり
ます。つまり、市民もそれに従うことになります。それに対して、これまでの計画も
しくはビジョン、プラン等は、行政の行動計画です。議会は意見を言う程度で、団体
意思のうち行政意思を表すという意味で、非常に安定性がありません。文化施策に条
例上の担保がないので、首長が替わった途端に方針がかわってしまうことがあり得ま
す。堺市におかれては、団体意思としての条例を制定して、その支えのもとに行動計
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画を策定し、確固たる文化施策を推進していきたいと思っていると理解しています。
次に、条例が対象とする「文化芸術」をどの範囲とするかという議論になった時に、
「そもそも文化というのは…」と言い出しますと、収集がつかなくなってしまいます。
そのため、どれだけの範囲をターゲットとするのかを決断しなければなりません。な
んでも文化芸術となってしまう可能性があります。混乱を避けるために、ここまでを
堺市の文化施策として扱う範囲としますと決断しなければなりません。資料3の20
ページは、文化芸術の定義というところを説明していると思います。国の定義に従う
必要はありません。さいたま市のように「盆栽」を挙げている事例もありますし、堺
市だったら、
「将棋」を入れてもいいのではないかという意見があるかもしれません。
また、文化財保護は除くことにしています。これまで言い出すと、文化財保護行政は、
文化庁でも所管が違いますし、文化財保護審議会が別にありますから、所管をまたが
ってしまうことになるので、それを分けることになります。しかし、文化財を活用し
たまちづくりはあるということです。それから、生活文化・国民娯楽は、なんでもあ
りになってしまう危険性があるので、定義が難しい。あえて、芸術的要素を含むもの
を対象とするという括りではいかがという考えだと思う。私はここに書いている定義
だけでも広い範囲だと思う。そのあたりも皆様のご意見を伺いたいです。
次に、基本理念の明示ですが、文化芸術振興の基本理念や姿勢を明確にするという
のは、文化芸術の範囲をどうするかということにも関連しますが、あれもします・こ
れもしますというわけにはいきません。予算制約・資源制約・時間制約、さまざまな
制約を考えたうえで、堺としての個性を伸ばすもしくは弱点を補強していくためには
何らかの強弱をつける必要があります。その強弱をつけるときに、「こういう価値を
優先します」や「こういうよさを大事にします」ということをあえて出すということ
です。極端に言えば、みんな平等・豊かにということができれば何の問題もないわけ
ですが、現実の施策ではそれは不可能ですので、どのような強弱をつけるのかの決断
が必要です。
次の推進計画の策定ですが、条例に基づき決められた文化芸術の範囲で基本理念に
基づく施策の全体像を示し、それを年次的に5年や10年の期間で計画を実施してい
くことになります。条例制定後は、推進計画が条例に担保された計画になります。
次に、審議会の設置ですが、実効性のある条例にしようということだと思います。
条例によって担保された推進計画を策定する、または変更するにあたっては、市民参
加の審議会に必ず意見を求めて、勝手に変更することはありません。つまり、推進計
画にかなり縛りがかかることになります。審議会は、推進計画に基づく文化施策の進
捗状況についての評価をするということと計画変更に関して、意見を述べることがで
きるような力強い審議会になる可能性があります。
次に、堺らしさの創出ですが、条例の内容に堺の独自性を出すというのは、地方自
治体ですから当然のことです。地方自治体は、国の下請け機関ではありません。自治
法上も国と地方自治体とは対等な関係であると宣言されており、自主的かつ主体的に
文化施策を実施するということを要請されているので、当然に堺らしさを出すという
のは、許されています。自治体らしさを追求するためには2つの方法があって、1つ
目の方法は、すべての住民がこれだけは均等に享受できるというのを保障したうえで、
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地方自治体独自でこういうことを特別に実施します、あるいは、こういうことを他の
地方自治体に先駆けて実施しますという方法です。2つ目の方法は、中小の町・村な
どでは、あれもします・これもしますというのはとても無理なので、ある部分は、諦
めて、これだけ実施しますというのもあります。2通りの方法があるということをご
理解いただければと思います。
○赤穂委員
私は、堺に生まれ育ったので、堺に思い入れがあります。日本全国や世界に堺を発
信できるものがこれから10年、20年の中でつくっていきたいと思いながら、文化
芸術に関する仕事をしています。
資料を見ると、文化芸術都市創造というところまで言及した条例があります。市民
会館は建替えられますが、点ではなく面で開発していかないと、文化芸術というのは
広がりをつくれないと思っています。まちをつくるイコール文化芸術も育っていくと
いうところをこの条例に盛り込んでいただければと思います。文化芸術を振興するこ
とだけを重視するということではなく、都市創造ができるところまで民間を活用でき
るような形で進めていただければと思います。
○岡村委員
文化芸術の創造は、人間しかできない行為で、一番人間らしい行為です。文化芸術
に携わる若い人を育てていくためには、若い人を取り上げる場をつくらないといけな
いと思います。若い人を取り上げると、経歴が薄いので、なぜこの人を取り上げるの
だという話が出てきます。文化芸術に携わる人が集まる機会を作って、そこで話し合
いをするという習慣をつくると、若い人が出てくるのではないでしょうか。
○亀岡委員
最近感じているのですが、文化芸術の意義がかわってきています。昔は、文化芸術
というのは、興味を持っている人が享受するものだったと思います。しかし、最近は、
社会で文化芸術の果たす役割が増えてきています。東日本大震災のときに思ったので
すが、被災した方々に演劇や音楽を鑑賞していただくことで、精神的に助けられるな
ど、社会の中での文化芸術の役割というのが最近増えてきているように思います。
堺市において、文化的環境を満足するために何が必要かという問いに「子どもたち
が文化芸術に親しむ機会の充実」というところが非常に大きな数字となっています。
子どもたちが自然に文化芸術に親しむ環境を作るということ、それから、ご年配の方
がどのように文化芸術に身近に接することができるか、普段文化芸術に接することが
できない社会的弱者と言われる方々がどのように文化芸術を親しんで、生活を豊かに
することができるかということを条例に盛り込んでいけるようになればいいのでは
ないかと感じています。
○越田委員
文化芸術というのは、純粋なもので、経済価値を考えないことが多いが、文化芸術
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は文化資本であり、文化産業につながるという考え方があります。経済価値があるも
のであれば、文化芸術が持続していくという可能性がありますが、経済価値を考えな
い場合は、予算的に施策を実施することが無理だということがあります。文化芸術を
資本としてとらえて、文化産業をつくるということを条例に盛り込むと、都市再生化
計画に組み込めるのではないでしょうか。
子どもに文化芸術をしっかり教えるというのは、非常に豊かな都市ができることに
なります。音楽を聞かせたり、バレエを見せることは刺激を与えることになります。
日本では、このような教育は遅れているので、条例に盛り込んでいただきたいです。
堺らしさというのが一番問題です。地域として独自で仕組みをつくるという自治都
市が、堺では独自性が強いと思います。行政が、文化芸術を市民に提供する仕組みを
独自性のあるものにしてもらいたいです。美しい花を提供するのではなく、どのよう
に咲かせるのかという仕組みをつくってほしいです。
○小灘委員
芸術というのは、人間の魂であり、痕跡を残すものだと思います。仁徳御陵という
のも古代人がつくった人間の魂で、堺の文化芸術に影響を与えています。そういうも
のが失われていくと、人間の荒廃がはじまっていくと思いますので、歴史という考え
方をしっかりと身に付けていく施策を第一に考える必要があると思います。
特に芸術というのは、もともとは宗教心と結びついていたので、優れたものが出て
きていましたが、それがなくなって経済と結びつくようになりました。そのことが原
因で、芸術性が失われていきました。宗教心は、どこに行ったかというと、芸術の中
に潜んでいます。
堺にあるアルフォンス・ミュシャの作品を見ますと、大変綺麗な作品を描いていま
す。ミュシャは、チェコを独立させるために、神話の絵画を描きました。それが堺に
あるというのが、芸術を理解するには意味があると思います。芸術がどれだけ大事な
ものかということの意味を問うような施設をつくり、教育を大切にしていく考え方を
条例に盛り込んだらいいのではないでしょうか。
日本という国が永遠に続くとは限りません。滅びる場合もあるかもしれません。日
本という国があったという痕跡が残ることが、大事なことです。
芸術というのは、本物を伝えることが大事で、施設を充実させて、鑑賞・理解して
もらうことが必要です。
○坂口委員
文化芸術と趣味の線引きが難しいと思います。堺に住んでいる人や子どもが堺を好
きになり、誇りに思うまちになってほしい。それを実現させるために、オペラや音楽
を通じて人の心に響かせたいと思っています。しかし、いろいろな制約があって子ど
もたちになかなか伝わらない現状にあります。メディアにとりあげられないものはな
かなか浸透しません。堺にはこんな歴史や文化芸術があるのだという条例ができれば
いいと思っています。
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○芝本委員
堺らしい条例を制定するために、百舌鳥古墳群をうまく取り入れることができない
でしょうか。博覧会を開催することで、百舌鳥古墳群が堺にあることを全国にアピー
ルすることができます。百舌鳥古墳群を堺らしさにつなげてはどうかと思います。
ほかには、伝承文化を通じて、高齢者と若者が交流して、新しいものを作り出して
いってほしい。
審議会を通じた計画の変更というのがありますが、困難な作業になると思います。
○砂田委員
堺には多くの歴史文化資源があると思います。それをどのように活用していくかと
いうことが問題になります。多くの文化振興条例が理念に留まって、先に進んでいま
せん。市民がどのように文化芸術を担う主体となっていくのかという仕組みが必要だ
と思います。
文化芸術の社会的な位置づけが問われていて、社会のためになるような文化芸術活
動という考え方が出てきました。20世紀までは、自己のための文化芸術という考え
方でしたが、21世紀になると、他者のため・社会のための文化芸術という考え方で
文化芸術の有効性が考えられています。
市民が主体となって活動できるような仕組みづくりをすると、文化芸術の活動をす
る方も文化芸術に触れる方も活動しやすく、接しやすくなります。創造的な市民を創
るという考え方が必要なのではないでしょうか。
○野間委員
世界に誇る歴史を持つ堺ですが、文化芸術の面で、もっといきいきと活用できるも
のがたくさんあると思います。舞台芸術に携わる者として、力になりたいと思ってい
ますが、子どもが文化芸術に親しむ機会がとても大切だと思います。文化芸術を育て
ていき、文化芸術活動が活発で魅力ある堺になるように強く願っています。
市民会館の建替えということで、他府県に劣らない芸術ホールをつくっていただき、
そこで魅力的な催しを開催して、堺に行こうと思ってもらえるような魅力的な事業を
発信していくことが大事だと思います。
子どもの時から文化芸術に親しむというのが、時間はかかりますが、大きな効果を
生みます。それにはいろいろな方法があります。
○原委員
条例というのは、抽象的なものが多くて、形骸化していくものが多くなっています。
推進計画の策定や審議会の設置で、より具体性をもって今後のことをやっていこうと
いくことが大切です。
特に文化芸術の拠点づくりとして、ハコをつくるという考え方よりも文化芸術に関
わる機会をどのように増やしていくかということや演じ手を育成すると同時にホー
ルを利用する人たちをどのように育てていくかということも大切です。演じ手や創り
手がたくさんいても、事業として成り立たない部分があるので、受け手をどのように
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して育てていくかを検討する必要があります。
○松本委員
私は制作の現場で裏方をしているので、公演中は舞台袖や楽屋にいます。演じる人
とお客様だけでは、文化芸術は発展しません。演じ手と受け手をつなぐ、繋ぎ手の育
成がとても大切だと思います。東京オリンピックがあるので、それに向けて文化庁が
文化芸術に関するプランを実施していくことについての社説が掲載されていました。
そこにも、プランを実施していくためには、繋ぎ手を育てることがすごく重要だと書
いていました。
条例を制定するにあたって、触れる機会をつくりましょう・若い人を育てていきま
しょう・お客様を増やしましょうということだけではなく、その間をつなぐ繋ぎ手を
育てるという視点を入れてはどうでしょうか。
○細川委員
今回、条例を制定するということは文化芸術にとって、大変意義があることだと思
います。ただ、条例を制定しても、それをどうやって進めていくか大切です。
堺市にゆかりのある方が亡くなりましたが、ゆかりの品を集めた施設が他市につく
られました。堺市では、ゆかりの人を偲ぶことができるような仕組みが全く考えられ
ていません。また、堺市でずっと活動していた有名な演奏家が亡くなりましたが、そ
ういうことに対してのアンテナが堺市に張られていません。
条例を制定することで、アンテナを張って、それを産業につなげていくためにどの
ようにすればいいかを考えるようになったらいいと思います。
◎中川座長
第2次堺市文化芸術推進プランの13ページをご覧ください。「文化芸術の担い手
を育成する」「堺らしい文化を創造・発信する」とあります。皆様の意見はおおよそ
この2つの柱に沿った意見となっています。
赤穂委員には、世界に発信できる文化芸術をつくり、文化芸術をまちづくりにつな
げていこうというご意見をいただきましたが、「堺らしい文化を創造・発信する」と
いう都市文化にあてはまります。自由都市・堺のパワーを外に出していくことです。
「文化の担い手を育成する」は、皆様の意見を集約すると、この表現ではおさまりき
っていません。岡村委員からご意見をいただいた、若い人を育てるとか取り上げる機
会を具体的につくるということにつながりますし、文化芸術の担い手というのは、演
じ手と受け手と繋ぎ手が混在するので、もっと的確な表現にしたほうがいいと思いま
す。
亀岡委員のご意見は、障がいがある方、低所得者、高齢者、乳幼児などの社会的弱
者に文化芸術に携わる機会を提供して、文化芸術へのアクセス権を保障するというこ
とでした。また、アーティストとして生計をたてられるようなチャンスを与えるとい
うような仕組みを作る必要があるのではないかということだと思います。
。
越田委員からは、文化芸術を明確に資本としてとらえて、文化産業をつくっていく
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ために、投資・再生産などの戦略化が必要なのではなかいというご意見をいただきま
した。また、文化芸術の基盤づくりが必要というご意見もいただきました。
小灘委員からは、芸術の根源的な位置づけについてご意見をいただきました。芸術
というのは、宗教から発生しています。例えば、劇は宗教劇に由来しています。ルネ
サンスや産業革命を経て、個人が自立し、芸術は個人のものになってきました。芸術
の根源に何があるかというと、祈りとか叫びとかということだと思います。表現の自
由というのは憲法で保障されているものですし、芸術を市民に開くべきではないかと
いうことだと思います。市民文化の根底に個人を救済していくという視点が重要だと
いうご意見だと思います。
坂口委員からは、文化芸術と趣味の線引きが難しいとご意見をいただきました。こ
れは、大事な視点で、市民ひとりひとりを大切にした文化施策というのは、生涯学習
としてさまざまな教室があるように、趣味に近くても施策として実施することがある
かもしれません。しかし、堺が世界に発信していく文化芸術をアマチュアに実施して
もらうことはできず、選別が必要となります。そうしないと、都市文化として認定で
きなくなってしまいます。文化庁もその姿勢をもっています。育成の視点と発信の視
点を峻別する必要があると思います。
芝本委員からは、堺の都市文化をどう打ち出していくかというご意見をいただきま
した。堺が持っている歴史文化資源はたくさんありますが、あれもこれもではなく、
場合によってはうまく組み合わせられないかを企画してみてはどうかという戦略と
選択の議論だと思います。
砂田委員からは、社会に対してインパクトを与える文化芸術と個人を救済する文化
芸術を峻別べきというご意見をいただきました。20世紀は個人のための文化芸術に
価値はありましたが、21世紀になると、社会的にインパクトがある文化芸術の効能
が注目されています。条例を制定するにあたっては、その視点をもつべきではないか
ということです。
野間委員からは、子どもが芸術に親しむ機会を拡充することが重要になるというこ
とと、市民会館の建替えに関しては、堺の誇りになるぐらいの市民会館を期待すると
のご意見をいただきました。堺に行こうと思われるぐらいのまちになってほしいとい
うのは、都市文化に対する期待だと思います。
松本委員からは、繋ぎ手を育成するべきですというご意見をいただきました。言葉
であらわすと、コーディネーターとなりますが、この言葉で進めると、議論が宙に浮
いてしまう可能性がある。併せてプロデューサーという概念も必要になってくると思
います。
○松本委員
自治体によっては、文化芸術プロデューサーという役職があります。
◎中川座長
条例でそこまで記載するかはわかりませんが、議論するべき論点だと思います。プ
ロデューサーという概念は、私が委員を務める大阪府市文化振興会議でも論点になっ
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ています。
細川委員からは、堺市に誇れる人物がたくさんいるが、そのことを戦略的に使うと
いう意思がなかったのではないかというご意見をいただきました。これも都市文化と
いうことで考えると、理解できる話です。しかし、市民文化で考えると、ひとりひと
りは平等ですから、なぜあの人だけ特別に扱うのかという聞かれたら、どう抗弁する
かという問題が出てきます。都市文化だから特別扱いするのだという切り分けが必要
となります。
公平平等論でいけば、都市文化施策は推進できません。都市文化施策を推進するに
あたっては、取捨選択の問題が出てきますので、混線しないように基準があればいい
なと思いました。
○越田委員
第2次堺市文化芸術推進プランを見ていると、文化施設のさらなる活用が課題であ
るということが記載されています。市民会館の建替えがありますが、中途半端なホー
ルでは運営や継続が難しいと思います。ホールの利用者が市全体に循環する仕組み作
りをする必要があると思います。
条例に盛り込むかどうかは別にして、グローバル化という問題を考える必要があり
ます。我々は携帯電話を持っていて、その中にさまざまな文化芸術を持っています。
この文化芸術はネットワークを通じて、世界とつながっているのです。それに対して、
堺がどのように関わっていくかという問題があります。
文化資本という話をしましたが、文化芸術というのは、経済に落とし込むのはよく
ないと言われています。バレエやクラシックは芸術性に重きを置きますが、ダンスは、
大衆性が強く、商業的な要素と関わるものです。こういうものが文化芸術の応用とし
て流行している中で、堺市がどのようにキャッチアップするかを考えないと、若い人
に対して魅力がある文化施策とならないと思います。
デザインという言葉は文化芸術に含まれているので、条例の中に盛り込むべきだと
思います。
繋ぎ手というのは、違う文化芸術を創り出します。百舌鳥古墳群を取り入れすぎる
と、排他的になってしまうので、違うものも取り入れてコーディネートするというよ
うな仕組みがあればいいと思います。
文化芸術振興について、大切なことは継続可能性です。予算がなければやめてしま
う、首長がかわればやめてしまうということでは、文化芸術は根付かないと思います。
文化施策をいかに継続可能性があるものにするかを考えることができるような視点
を条例に盛り込むべきです。
◎中川座長
ここで、整理するべき論点が出てきました。マーケットで十分供給されている文化
芸術に、行政がどう関わるかということです。十分供給できているので、行政は関わ
らないとするべきなのか、堺の誇りをつくるために民間企業とであっても連携するの
かを誰が判断するかということです。
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都市文化であるならば、行政と民間企業が手を組むのもいいと思います。市民文化
の場合は、民間企業はほとんど手を出していないと思います。さまざまな形で文化芸
術が供給されているので、マーケットを分析したうえで、施策を実施するべきだと思
います。
○越田委員
文化芸術はジレンマを抱えているので、社会的イノベーションが必要になると思い
ます。どこまで踏み込めるかが問題になります。下手に踏み込むと混乱してしまうの
で、きちんと切り分けて考える必要があります。
◎中川座長
都市戦略を実行する場合には、思い切ったことをやらないとできません。一方、公
平平等論で、さまざま階層の人にさまざまな文化芸術享受の機会を与える場合は、選
択ではなく、広がりとバランスが重要になります。この二つのスタンスは全く違うと
いうことは確認しておく必要があると思います。そうしないと話が混線してしまいま
す。
○小灘委員
芸術には高貴性を求めるのが大事です。高貴性を失うと、美術は成り立たなくなり
ます。高貴性があると、いつまでも受け継がれるものになります。ミュシャの美術館
は住宅棟の中にあるので、環境が悪い。百舌鳥古墳群の話が出ましたが、歴史を大事
にしない民族は滅びてしまいます。博物館に美術館をつくればいいと思う。
また、文化館にはギャラリーはありますが、立派な作品を展示する場がありません。
博物館を改装する際に、美術館とギャラリーをつくっていただき、百舌鳥古墳群が世
界文化遺産に登録される際に、文化的環境をよくすることも大事なことではないでし
ょうか。ミュシャを大事にするということは、外国がつくった文化芸術も日本は大事
にするということをアピールすることができます。グローバルになればなるほど、品
格というものを求めなければ、世界に認められないのではないでしょうか。
○砂田委員
条例にいろいろなことを盛り込んで混在していると、結局、さまざまなことが推進
できないことになります。文化芸術に関する会議を開催すると、文化芸術関係者が多
く集まってしまい、文化芸術の周縁に広がらないことになります。
各地の条例を見ても、文化芸術関係のことしか述べられておらず、産業・観光・子
育て・福祉など横断的につながっていくようなビジョンが描かれていません。文化芸
術を愛好する人、関心がある人というのはほんのわずかな市民です。その外側の人た
ちを巻き込んで、主体的に活動していただいて、文化芸術が活性化していくような仕
組みをつくるには、芸術面を高めていくという考えと社会で活用をするという考えを
分ける必要があります。そうすることで、双方が深まっていくことになります。
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◎中川座長
これまでの地方公共団体の文化施策は文化ホールを中心とした施策でした。ここで
の文化施策は、図書館、公民館、美術館、博物館なども含まれています。図書館には
図書館法、公民館には社会教育法、美術館・博物館には博物館法があります。地方自
治体は、法律に準拠して事務を進めるのが仕事だと思っていました。高いところから
文化施策を供給して、全体に行き渡せるのが国の仕事だという下請け型の考え方をし
ていました。
しかし、平成12年4月に地方自治法が改正され、国がやるべき仕事と地方公共団
体がやるべき仕事に峻別されました。その結果、文化ホールを中心とした施策は地方
自治体が自らの考えで事務を行う自治事務となりました。しかし、文化芸術の供給に
関しては自治事務という考えが浸透していないので、何かあったらすぐに都道府県や
国に確認する習性が身についており、地方自治体としての政策的主体性が確立されて
いませんでした。そこで主体性を確立させるために、劇場法(劇場,音楽堂等の活性
化に関する法律)という法律が成立しました。ただし、方向性を示しているだけで、
それほど拘束力が強い法律ではありません。
また、劇場法が成立する以前に、文化芸術振興基本法を平成13年に制定し、地方
自治体は自主的・主体的に文化施策を進める必要が生じました。そこから各地で文化
振興条例の制定がはじまりました。ところが、義務を課して罰したり、権利を与えた
りしない条例ですので、条例つくらなくても各自治体は特に影響がないという状態が
続きました。
しかし、首長がかわったり、議会の構成がかわるたびに文化芸術に関する予算が増
えたり減ったりするのはまずいということで、条例をつくるという動きが盛んになっ
てきました。
いただいたご意見をパラグラフに落とし込んで、条例に反映していけば、ある程度
の骨子はできていると思います。資料4をご覧いただいて、条例のイメージを持って
ください。他都市の条例でいいものがあれば、それを取り入れればいいと思います。
この場で条例の原案をつくることは困難ですので、事務局が作成した素案に対して
意見を述べて、修正作業をしていきたいと思います。
今回の懇話会は以上で終了します。
(6)次回の開催予定について
●事務局
次回の懇話会は7月に開催予定です。日程が決まり次第、委員の皆様にお知らせい
たします。
(6)閉会
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