...

日本経済ウォッチ<2005 年7月号>

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

日本経済ウォッチ<2005 年7月号>
調査レポート05/37
2005 年 7 月 5 日
日本経済ウォッチ<2005 年7月号>
【目次】
1.今月の図表
p.1
∼ 三つの消費者物価 ∼
2.景気概況
p.2
∼ 日銀短観だけではわからない景気の先行き ∼
3.今月のトピックス
∼ 最近の貸出・借入動向 ∼
p.3∼13
お問合せ先 調査部(東京)国内経済班
E-mail: [email protected]
※本レポートに掲載された意見・予測等は資料作成時点の判断であり、今後予告なしに変更されることがあります。
1.今月のグラフ:三つの消費者物価
5月は全国消費者物価指数(除く生鮮食品)が前年比ゼロになったが、消費者物価(C
PI)に含まれる品目を変えるとその動きも異なってくる(図表1)。CPI①は天候や作
柄により変動の大きい生鮮食品を除いたベースで、物価の基調を測るために通常用いられ
る指標であり、量的緩和政策解除の基準にもなっている。CPI②は生鮮食品に加えて価
格変動の大きいエネルギー関連の財・サービス価格を除いたベースである。さらに、CP
I③は米など生鮮以外の食品も市況変動の影響を受けることを考慮して、食料品全体を差
し引いたベースであり、米国基準の消費者物価(コア)に相当するものである。米国方式の
CPI③を用いると、5月は前年比マイナス 0.4%であり、CPI①の前年比ゼロ%とは
イメージが異なる。
各CPIの動きの差に注目すると(図表2)、CPI②−CPI③の差は生鮮以外の食品
の価格変動によって生じている。この差は、04 年秋にかけて米価の高騰により拡大したが、
足元では米価の落ち着きとともに縮小している。一方、CPI①−CPI②の差はエネル
ギー関連の価格変動に起因する。この差は、足元でエネルギー価格が大幅に上昇している
ため、拡大してきている。
変動の大きい要因を除いたCPI③でみると、まだ前年比低下が続いているが、それで
もマイナス幅は縮小している。その要因として、被服履物がプラスに転じたこと、保健医
療や教養娯楽のマイナス幅が縮小したことが挙げられる。被服履物の価格上昇は、海外生
産などによる価格下落が一巡し、足元では原材料高の影響も出てきているとみられ、これ
からも続く可能性がある。一方、保健医療では医薬品や医療器具を中心にデフレ圧力が残
り易いと考えられ、教養娯楽については大型連休の影響からホテル宿泊費が高止まりした
といった一時的要因が影響しているとみられる。CPI③が前年比上昇に転じるにはまだ
時間がかかりそうである。
図表1.消費者物価の動向
図表2.各CPIの前年比の格差
生鮮食品を除く総合(CPI①)
(前年比、%)
(%ポイント)
生鮮食品・エネルギーを除く総合(CPI②)
0.8
食品・エネルギーを除く総合(CPI③)
0.2
0.0
0.7
CPI①−CPI②
0.6
CPI②−CPI③
0.5
CPI①−CPI③
0.4
-0.2
0.3
-0.4
0.2
0.1
-0.6
0.0
-0.8
-0.1
-0.2
-1.0
-0.3
03
-1.2
99
00
01
02
03
04
05
(年、月次)
04
05
(年、月次)
(資料)総務省「消費者物価指数月報」
(資料)総務省「消費者物価指数月報」
1
2.景気概況
∼日銀短観だけではわからない景気の先行き∼
日本銀行が年4回発表する全国企業短期経済観測調査(短観)はいつも市場の関心を集
めている。全国1万社以上の企業に対する調査で、回答率もきわめて高く、足元の企業マ
インドを知る上で有用なアンケート調査であることは間違いない。今月1日に発表された
6月調査の日銀短観では、企業マインドを示す業況判断DI(「良いと答えた企業の割合」
−「悪いと答えた企業の割合」)が大企業製造業をはじめとして全般的に予想以上の改善を
示し、踊り場脱却に向けて一歩前進との見方もされている。しかし、短観の結果をもう少
し詳しく見てみると、次のようなことが言える。
① 業況判断DIは改善しているが、「良い」と答えた企業の割合はあまり増えていない。
しかも、製造業の中堅企業、中小企業ではその割合が低下しており、企業マインドが
はっきり改善しているというわけではない。
② 今年度の売上高計画は増加が見込まれており、特に下期は輸出の拡大による増収が計
画されている。国内および海外での製商品需給は先行きの引き締まりが見込まれてお
り、デジタル関連重要の回復や世界景気の加速が企業の収益計画達成の鍵となる。
③ 一方、原油など一次産品価格急騰の影響が懸念される。今年度の経常利益は増益計画
だが、上期の利益計画は軒並み下方修正されており、原材料や燃料コストの増加が利
益を圧迫していることがうかがえる。特に、中小製造業では、コストを示す仕入れ価
格について上昇との判断が強まる一方で、販売価格は加工業種を中心に下落との判断
が強まっており、大企業よりも収益圧迫が懸念される。
④ 計画では下期の利益は急速な回復が見込まれているが、これは前述②の需要回復に期
待すると同時に、一次産品価格が落ち着いてくることも前提となっている。その前提
が違ってくると、下期の収益計画は過大なものとなってしまう。設備投資計画は堅調
な増加が見込まれているが、収益の下振れが設備投資に影響してくる可能性もある。
このように、日銀短観の結果は踊り場脱却を示唆する内容とまでは言えない。もっとも、
企業のマインド調査や収益計画から実体経済の動向を把握するには限界がある。そこで実
体経済の指標に目を向けてみると、5月の鉱工業生産は、輸送機械、情報通信機械、電子
部品・デバイスなどを中心に前月比−2.3%と再び減少した。前年同月比では+0.9%と、
この1年間ほとんど増加していないことがわかる。製造工業予測調査をみても、6月(前
月比+1.7%)、7月(同−1.2%)と一進一退が見込まれており、踊り場脱却とは言えない。
これに対して、雇用・所得環境の指標に明るさが出ている。5月の就業者数(季調済)
は前月比+42 万人と2ヶ月連続で大幅に増加している。また、4月、5月と所定内給与(一
人あたり)が小幅ながらも前年より増加し、現金給与総額でみても2ヶ月連続で上昇して
いる。先月の本欄でも述べたように、景気の先行きを考える上でこれまであまり期待して
いなかった個人消費が意外な底堅さを発揮するかもしれない。
2
3.今月のトピックス∼最近の貸出・借入動向
銀行の貸出の減少が続いているが、最近、減少のペースが鈍化するなど、変化の兆しも
見えてきている。企業の側からみても、設備投資が底固く推移するなど、資金需要は持ち
直してきているように思える。そこで今月は、最近の銀行の貸出、企業の借入動向につい
て探ってみた。
(1)下げ止まりの兆しがみられる貸出動向
①最近の銀行貸出動向
銀行の貸出残高を見るうえで最も一般的な貸出資金吸収動向(日本銀行作成、発表)の
数字をみると、2005 年4月まで 89 ヶ月連続で前年比マイナスとなっている。ただし、マ
イナス幅は緩やかながらも縮小傾向にあり(図表1)、他の貸出指標で見ても同様に減少ペ
ースは緩やかになりつつある(図表2)。
図表1.銀行の貸出金推移
(前年比、%)
3
銀行貸出(貸出資金吸収動向)
特殊要因調整後
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
-8
95
96
97
98
99
00
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
(前年比、%)
0
01
02
03
04
05
(年、月次)
図表2.各指標で見た貸出金推移
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
貸出先別貸出金
資金循環表(除く中央政府)
貸出資金吸収動向
-8
-9
-10
99
00
01
02
(注)いずれも金融を除く
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
3
03
04
05
(年、四半期)
銀行の貸出先の内訳を見ると、家計、地方公共団体向けの貸出が増加基調にあることに
加え、企業向けの貸出の落ち込み幅が縮小しつつあることが、全体の落ち込み幅を小さく
させている原因であることがわかる(図表3)。
図表3.貸出先の内訳
(前年差、兆円)
10
0
-10
-20
地方公共団体
家計
企業
その他
貸出合計
-30
-40
-50
-60
99
00
01
02
03
04
05
(年、四半期)
(注1)金融機関、中央政府を除く
(注2)その他は海外、対家計民間非営利団体、公的非金融法人向けの合計
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
ところで、最も代表的な貸出統計である貸出資金吸収動向では(図表1)、政府部門へ
の貸出先として地方公共団体や公共法人は含まれているが中央政府
1
は含まれておらず、
金融部門への貸出は全く含まれていない(図表4)。しかし、金融部門のうちノンバンクな
どの一部の機関は、銀行から資金を調達したうえで家計や企業部門に貸出を行っている。
家計や企業部門の資金需要の動向を見るためには、貸出統計の数字を資金需要に合わせて
整理してやる必要があろう。
図表4.「貸出資金吸収動向」で把握できる貸出先
銀 行
貸出
貸出資金吸収動向
で把握できる貸出
の範囲
企
業
部
門
家
計
部
門
海
外
部
門
貸出
1
一般会計、特別会計向けの貸出
4
政
府
部
門
金
融
部
門
う
ち
中
央
政
府
う
ち
ノ
ン
バ
ン
ク
②家計向けの貸出
家計向けの銀行貸出は、住宅ローン貸付と住宅目的以外の消費者信用に分けることがで
きる。家計向け貸出全体の金額は増加が続いているが、これは住宅ローン残高が増加して
いるためであり、消費者信用は減少している(図表5)。
図表5.銀行の家計向け貸出の内訳
(兆円)
140
120
住宅貸付
消費者信用
100
80
60
40
20
0
80
85
90
95
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
00
(年度末)
図表6.住宅ローンの内訳
(前年比、%)
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
うち住宅金融公庫
うち国内銀行・信用金庫
住宅ローン全体
-3
-4
-5
99
00
01
02
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
03
04
05
(年、四半期)
もっとも、銀行の住宅ローン残高の増加は、住宅金融公庫が新規貸出業務を縮小させる
中で振替の動きが出ているためであり、住宅ローン市場全体はこのところほぼ前年並みで
の推移が続いている(図表6)。
③金融向けの貸出
ノンバンクは銀行などから資金を調達し、それをもとに家計や企業部門へ貸出を行って
いる。このため金融部門のうちノンバンクへの貸出は、間接的な家計や企業部門への貸出
5
と考えることもできる。まず、ノンバンクの家計向けの貸出を見ると、2000 年以降に急増
した後、現在でも高水準が続いている。家計向けの貸し手となるノンバンクとは、主に消
費者金融会社やカード会社である。
(兆円)
30
図表7.ノンバンクの家計向け貸出
29
28
27
26
25
24
23
22
21
20
98
99
00
01
02
03
04
05
(注)ノンバンクには消費者金融会社など貸金業者、カード会社 (年、四半期)
などが含まれる
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
次に、家計の借入である消費者信用 2 の残高を見ると、90 年代半ばにかけて増加した後
は販売信用を中心に減少傾向に転じていることがわかる(図表8)。そこで、消費者ローン
の内訳を貸し手別に見てみると、減少しているのは銀行の貸出と、同じく銀行が貸し手の
定期預金担保貸付であり、ノンバンクの信用残高は順調に拡大していることがわかる(図
表9)。
図表8.消費者信用の残高推移
(兆円)
80
70
販売信用
消費者金融
消費者信用残高合計
60
50
40
30
20
10
0
75
80
85
90
00
(年末)
(出所)(社)日本クレジット産業協会「日本の消費者信用統計」
2
95
消費者信用は販売信用と消費者金融に大別される。前者は商品やサービスの購入の際、分割払いなど
によって生じる信販会社、カード会社などによる信用供与である。後者は銀行や消費者金融会社などの
ノンバンクが行う消費者への金銭の貸付けであり、住宅ローン貸付け、販売信用と異なり資金使途が特
定されていない。後者は、狭義ではノンバンクによる消費者向けの無担保貸付をさすこともある。
6
図表9.消費者金融の内訳
(兆円)
70
定期預金担保貸付
銀行等民間金融機関
消費者金融会社
カード会社
消費者金融
60
50
40
30
20
10
0
75
80
85
90
95
(出所)(社)日本クレジット産業協会「日本の消費者信用統計」
00
(年末)
次にノンバンクの企業向け貸出を見ると、不良債権処理の影響もあって 2001 年にかけ
て減少が続いた後、2001 年半ば以降は緩やかながら増加に転じている(図表 10)。これは
不良債権処理が一段落したことに加え、ノンバンクの企業向け貸出の中には、消費者金融
などの貸金業者のほか、銀行が貸出債権を流動化する目的のために設立したSPCも含ま
れており、こうしたSPC向けの貸出が増加してきたことも一因であろう。
図表 10.ノンバンクの企業向け貸出
(兆円)
55
50
45
40
35
30
25
20
98
99
00
01
02
03
(注)ノンバンクには消費者金融会社など貸金業者、金銭債権
の流動化目的のSPCなどが含まれる
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
04
05
(年、四半期)
④民間部門の資金需要動向
家計および企業部門の資金需要(借入)動向を考える場合、銀行からノンバンクを通し
た消費者金融や企業向け貸出として、資金需要が満たされていることを勘案する必要があ
7
ろう。一方、銀行の貸出のうち地方公共団体や公共法人への貸出、海外向け貸出
3
は国内
の景気動向を反映した資金需要とはいえない。そこで、銀行貸出から地方公共団体や公共
法人への貸出、海外向け貸出を除き、ノンバンクの貸出
4
を加えて調整してみると、通常
の貸出統計に較べてマイナス幅が小さくなる(図表 11、12)。
図表 11.調整後の銀行貸出の推移
(前年比、%)
2
貸出残高(調整前=除く金融・中央政府)
民間企業+家計
民間企業+家計+ノンバンク
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
-8
-9
99
00
01
02
03
04
05
(年、四半期)
(注1)資金循環統計を利用。ノンバンクはノンバンクの貸出額を使用
(注2)民間企業+家計には海外、政府、金融、対家計民間非営利団体を含まない
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
図表 12.整理後の銀行貸出の内訳
(前年差、兆円)
10
0
-10
-20
-30
-40
ノンバンク
家計
貸出合計(整理前)
-50
企業
貸出合計(整理後)
-60
99
00
01
02
03
04
05
(年、四半期)
(注)貸出合計(整理前)には海外、対家計民間非営利団体、地方公共団体を含み、
金融を含まない。
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
3 90 年代後半以降、銀行の海外向け貸出は急減したが、これは外貨の調達コスト上昇に伴う外貨建て資
産の圧縮や海外業務の縮小という貸手サイドの事情によるところが大きい
4 ノンバンクが銀行の貸出を肩代わりしていると考え、銀行のノンバンク向け貸出ではなく、ノンバン
クの貸出を加えた
8
(2)減少が続く企業向け貸出
銀行貸出のうち家計向けはすでに増加に転じており、銀行の貸出全体がいつ増加に転じ
るかは、企業向け貸出の動向がポイントとなる。そこで、銀行の企業向け貸出について検
討していくこととする。
①持ち直しの動きが出始めている企業の資金需要
企業部門のISバランスを見ると、2004 年度末まで7年連続で貯蓄超過(資金余剰)の
状態が続いている(図表 13)。ただし、2004 年度末については、資金余剰額が縮小すると
ともに、負債が前年度末と較べて増加に転じている。
図表 13.企業部門のISバランス
(兆円)
120
資金過不足
金融負債
金融資産
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04
(年度末)
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
企業部門の負債の増加は資金需要が増加していることを示しているが、その調達方法の
内訳を見ると、株式や企業間信用などの増加で対応している(図表 14)。また、借入につ
いても、減少はしているが、そのペースは緩やかになっている。
図表 14.増加に転じた企業の金融負債
(兆円)
80
借入
株式
その他
60
40
債券
企業間信用
金融負債合計
20
0
-20
-40
90
91
92
93
94
95
96
97
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
9
98
99
00
01
02
03
04
(年度末)
このように、企業の資金需要が回復しつつある中で、貸出統計だけではその動向を十分
に把握できない可能性がある。これは間接金融の割合が縮小し、直接金融の割合が拡大し
ていることが背景にある。金融機関からの借入を間接金融、社債・株式の発行、企業間信
用の合計を直接金融とし、80 年以降の両者の累積額を較べると 5 、間接金融が 90 年代半ば
以降減少に転じているのに対し、直接金融は 90 年代を通じてほぼ横ばいで推移している
(図表 15)。
図表 15.拡大する直接金融の割合
(兆円)
400
350
300
250
200
150
直接金融
間接金融
100
50
0
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
(注1)間接金融は金融機関借入、直接金融は社債・株式発行、
企業間信用の合計
(注2)80年度以降のフローの累積額
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
02
04
(年度末)
②設備資金の動向
次に企業部門への銀行貸出を、設備資金、運転資金という目的別に分けて考えていく。
まず製造業向けの銀行貸出を見ると、減少は続いているが、特に設備資金において減少
幅が縮小してきていることがわかる(図表 16)。
(前年比、%)
図表 16.製造業向け貸出動向
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
合計
運転資金
-15.0
設備資金
-20.0
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
(注)92年度以前は当座貸越を含まず、93年度以降は含む。
このため93年度の前年比は26.5%と急増した
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
5
00
02
04
(年、四半期)
資金循環統計のストックでは社債、株式などが時価評価され、企業の調達した資金額とは異なってく
るため、ここでは時価評価の影響を受けないフローの累積額で直接、間接金融の動きを示すこととした
10
そこで設備資金について新規借入・返済の内訳を見てみると、新規の借入額はほぼ下げ
止まりつつあり、設備資金の需要については減少に歯止めがかかってきている可能性があ
る(図表 17)。返済額の方が大きいため残高は減少しているものの、新規借入と返済の格
差は縮小しつつあり、残高の減少ペースも鈍化してきている。
(兆円)
2.0
図表 17.設備資金の新規借入・返済内訳(製造業)(兆円)
純借入額(右目盛)
新規借入金(左目盛)
期中返済額(左目盛)
1.8
1.6
1.4
1.2
1
1.4
0.8
1.2
0.6
1.0
0.4
0.8
0.2
0.6
0
0.4
-0.2
0.2
-0.4
0.0
80
82
84
86
88
90
92
94
(注)4四半期移動平均
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
96
98
00
-0.6
02
04
(年、四半期)
さらに製造業の設備資金を業種別に見た場合、一般機械や電気機械のようにすでに残高
が前年比で増加に転じている業種もある(図表 18)。
図表 18.業種別の設備資金借入残高(製造業)
(前年比、%)
20
10
製造業
化学
鉄鋼
一般機械
電気機械
輸送用機械
0
-10
-20
-30
-40
99
01
03
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
05
(年、四半期)
次に非製造業向け(金融を除く)の銀行貸出を見ると、製造業と同様、減少幅が縮小し
てきていることがわかる(図表 19)。
11
図表 19.非製造業(除く金融)向け貸出動向
(前年比、%)
25.0
20.0
合計
運転資金
設備資金
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04
(注)92年度以前は当座貸越を含まず、93年度以降は含む。 (年、四半期)
このため93年度の前年比は18.2%と急増した
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
設備資金の新規借入・返済の内訳においては、最近では新規借入額がやや持ち直してき
ており(図表 20)、非製造業については設備資金の需要はすでに下げ止まっている可能性
が指摘できる。また、業種別に設備資金の残高を見ると、不動産などの一部業種で設備資
金に増加の動きが出ている(図表 21)。
図表 20.設備資金の新規借入・返済内訳(非製造業)
(兆円)
8
(兆円)
5
4
7
3
6
2
5
1
4
3
0
純借入額(右目盛)
新規借入金(左目盛)
期中返済額(左目盛)
-1
2
91
93
95
97
99
(注)4四半期移動平均
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
01
-2
03
05
(年、四半期)
このように、設備資金については、製造業、非製造業とも資金需要が下げ止まりから増
加に転じつつあることが伺える。
12
図表 21.業種別の設備資金借入残高(非製造業)
(前年比、%)
20
10
0
-10
-20
非製造業
運輸・通信
不動産
-30
建設
卸・小売・飲食店
リース
-40
99
01
03
05
(年、四半期)
(出所)日本銀行「金融経済統計月報」
②運転資金の動向
一方、運転資金については、製造業を中心に引き続き減少の余地がありそうである。企
業は、在庫や現預金といった流動資産が減少していることに合わせて短期借入金を中心と
した流動負債も減少させているが、製造業の流動比率は高い水準で推移しており(図表 22)、
さらに流動負債を減らすことが可能である。
設備資金が増加に転じたとしても、運転資金はなかなか増加しない可能性があろう。
図表 22.流動比率の推移
(%)
145
140
全産業
135
製造業
130
非製造業
125
120
115
110
105
100
95
70
75
80
85
90
(注)流動比率=流動資産÷流動負債
(出所)財務省「法人企業統計」
13
95
2000
05
(年、四半期)
Fly UP