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被用者年金一元化と遺族保障
生命保険論集第 194 号 被用者年金一元化と遺族保障 -潜在市場の規模と情報提供の在り方- 河本 淳孝 (中央大学 兼任講師) Ⅰ.はじめに 被用者年金一元化法1)が平成27年10月1日に施行されたことに伴い、 公務員の公的年金の老齢給付および遺族給付はそれぞれに減少して非 公務員との平衡が図られた。減少の程度は老齢給付よりも遺族給付が 相対的に大きい2)。それにもかかわらず、前者の減少は解説書等を通 して広く国民に周知される一方で、後者の減少は全くと言ってよいほ 1)本稿では、次の4本の法律をまとめて被用者年金一元化法と言う。「被用 者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律 (平成24年法律第63号) 」 、 「国家公務員の退職給付の給付水準の見直し等のた めの国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平成24年法律第96号) 」 、 「地方公務員等共済組合法及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生 年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第 97号) 」および「私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律(平成24年法 律第98号) 」 。いずれも一部を除き平成27年10月1日施行。 2)一元化に伴う公務員世帯(採用時年齢22歳の国家公務員・専業主婦・子有 世帯)の老齢給付の年金現価の減少は0.0%~9.33%であるのに対して、遺族 年金の同減少は0.0%~11.78%である(碓井社会保険労務士事務所と筆者が 共同で算出)。 ―277― 被用者年金一元化と遺族保障 ど周知されない。そこで、本稿は後者の遺族給付に焦点を当てて、被 用者年金一元化(以下では、「一元化」と言う。)が公務員の遺族保 障に及ぼす影響を明らかにし、それを踏まえて公的年金制度改正にか かる情報提供の在り方を考える。 本稿の構成は次のとおりである。まず始めに、わが国の公的年金が 一元化に至る経緯を概観し、次いで、一元化等によって退職給付の官 民較差が確かに解消されたか否かを検証する。そのうえで、今回の一 元化による公務員の遺族保障(死亡保障)の減少と、それによって生 じた潜在的な生命保険市場の規模を計測し、最後に、公的年金の制度 改正にかかる情報提供の在り方を考える。 以下の論述において、「遺族給付」は、1階部分の遺族基礎年金を 含まず、遺族共済年金(職域加算を含む)と遺族厚生年金のいずれか または合計を意味する。 Ⅱ.一元化の経緯 公的年金が一元化に至るまでの道程には、節目となる大きな制度改 正が3度あった。1度目は1961年(昭和36年)の皆年金実現、2度目 は1986年(昭和61年)の基礎年金導入、そして3度目が2015年(平成 27年)の一元化である。この章では、わが国の公的年金が一元化に至 る経緯について、公務員を対象とする年金制度の変遷に幾分重心を置 いて概説する。 1.皆年金実現まで (1)恩給制度 恩給制度3)の創設は、戦時下の徴用と徴兵とがその背景にある。わ 3)国家公務員の恩給制度の根拠法は恩給法であるが、地方公務員の恩給(退 ―278― 生命保険論集第 194 号 が国の恩給制度は1875年(明治8年)の海軍退隠令および1876年(明 治9年)の陸軍恩給令に始まった。その後、文官4)、警察官、教員等 にも恩給制度が設けられたものの、それぞれに独立した制度であった ため、1923年に恩給法(大正12年法律第48号)が制定されて制度の一 本化が図られた。 恩給とは公務員が退職または死亡した後に本人またはその遺族に 支給される金銭をいう5)。恩給制度が後に社会保険制度理念を基軸と する公務員共済制度へ移行したことは事実である。しかしながら、相 対的に少額の負担金(恩給納金)6)を国に直接納付する恩給制度は、 相互扶助の考え方に基づいて保険数理の原則によって負担金を計算す る社会保険としての公的年金とは異なる部分が少なくない。なお、現 在の恩給制度は、旧恩給制度が公務員共済制度へ移行した際に既に退 職していた公務員(旧軍人・軍属を含む)を対象とする制度となって いる。 (2)船員保険と労働者年金保険 民間労働者を対象とした社会保障年金は、1939年(昭和14年)にそ の根拠法が制定された船員保険に始まる。創設時の船員保険は、戦時 下の物資輸送船等の船員を主な被保険者とする医療、年金等を包含す る総合的な社会保険であった。また、1942年(昭和17年)には、工場 隠料)は各地方公共団体が定める条例(恩給条例など)に基づく。 4)文官(ぶんかん)とは武官(軍人)以外の官吏を指す。明治以降、国家行 政組織法以前のわが国では、内閣総理大臣や国務大臣をはじめ教師や警察官 などを含む軍人以外のすべての官職を文官に含め、文官任用令を適用した。 5)恩給には退職給付に相当する普通恩給、障害給付に相当する傷病恩給(増 加恩給、傷病年金、特例傷病恩給) 、遺族給付に相当する普通扶助料(障害者 の遺族には公務扶助料) 、増加非公死扶助料、特例扶助料、傷病者遺族特別年 金等がある。 6)恩給納金は、文官の場合は報酬の2%であった(恩給法第59条 公務員ハ 毎月其ノ俸給ノ百分ノ二ニ相当スル金額ヲ国庫ニ納付スベシ) 。他方、恩給制 度と統合した当時の共済組合の掛金は報酬の4.4%であった。 ―279― 被用者年金一元化と遺族保障 等で働く男性労働者(所謂、ブルーカラー)を対象とする労働者年金 保険が誕生した。ナチス・ドイツの年金制度を範として創設された労 働者年金保険には、戦費調達手段という一面もあった。労働者年金保 険は、1944年(昭和19年)には男性事務労働者(所謂、ホワイトカラー) および女性にも対象を拡大して、名称を厚生年金保険に改称した。 ちなみに、日本初の私的な企業年金は、1905年(明治38年)に鐘淵 紡績の経営者であった武藤山治がドイツ鉄鋼メーカーの福利厚生を参 考として始めた制度である。 (3)共済組合 第2次世界大戦以降は、職域ごとに年金制度が作られていった7)。 公務員等の年金制度の根拠法は、国家公務員共済組合法が1948年(昭 和23年) 、私立学校教職員共済組合法が1953年(昭和28年) 、地方公務 、公共企業体職員等共済組合法 員等共済組合法8)が1954年(昭和29年) が1956年(昭和31年) 、農林漁業団体職員共済組合法が1958年(昭和33 年)にそれぞれ制定された。その後、これらの5共済組合法は相互の 権衡に配慮しながら改正を重ねることになる。 また、恩給制度が共済制度へ移行したのは、国家公務員については 1958年(昭和33年)であり、地方公務員については1962年(昭和37年) であった。 (4)厚生年金に定額部分 1952年(昭和27年)の社会保障審議会答申は、後の皆年金実現を方 向づける役割を果たした。同審議会答申は、被用者年金の一部を定額 制にするよう勧告したのである。趣旨は定額部分による最低生活の保 7)第2次世界大戦後の日本には大量の失業者と貧困者とが存在した。また、 1945年(昭和20年)12月には労働組合法が制定されて、戦前には抑圧されて いた労働組合運動が活発化した。この時期の反体制的な活動の鎮静化を目的 として、社会保障制度の導入が加速したという見解も存在する。 8)法制定時の名称は、市町村職員共済組合法であった。 ―280― 生命保険論集第 194 号 障である。また、同審議会では、最低生活の保障を意識した年金額と 生活保護の扶助費との関係についての議論も行われた。 この審議会答申を受けるかたちで、1954年(昭和29年)に厚生年金 保険法が改正された。それまで報酬比例のみであった厚生年金の給付 は定額部分と報酬比例部分の2本立てに改められた。厚生年金に最低 生活保障を意識した定額部分ができたことにより、憲法第25条に定め る生存権9)との関係が意識され10)、非被用者を含むすべての国民の生 活保障を視野に入れた皆年金の在り方についての議論が盛んに行われ るようになった。また、この改正により、厚生年金の財政方式は積立 方式から修正積立方式に変更された11)。さらに、国庫負担が導入され て、5年に1回の財政再検証が制度化された。 一方、共済年金の2本立て化が実現したのはこの厚生年金法改正か ら20年遅れの1974年(昭和49年)であった。共済年金の2本立て化は、 直前の厚生年金の給付水準引上げが契機となった。この引上げで共済 年金の給付水準が厚生年金の給付水準を下回る状態となったため、こ れを解消する方策として、まずは共済年金を定額部分と報酬比例部分 の2本立てに改めて、両者の合計と従来通りに全てを報酬比例で計算 9)憲法第25条は第1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を 営む権利を有する。」として生存権を保障。また第2項では「国は、すべて の生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努 めなければならない。」として社会福祉、社会保障および公衆衛生に対する 国の努力義務を定めている。 10)非被用者の年金加入を実現するために1959年(昭和34年)に制定された国 民年金法は、目的条文(第1条)において、国民年金は日本国憲法第25条第 2項の理念に基づく制度であると定めている。 11)修正積立方式とは、積立方式を基として積立不足分は賦課方式とする年金 の財政方式である。日本の公的年金制度は修正積立方式に基づいて運営され ている。この方式には、年金制度が成熟化していない間に積み立てられた積 立金が、年金制度が成熟化したときの保険料の高騰を緩和するという利点が ある。他方、公的年金制度が実質的には世代間の助け合いで運営されている という認識が希薄になるという欠点がある。 ―281― 被用者年金一元化と遺族保障 した年金額とを比べて、いずれか高い方を共済年金として支給する方 式を採用したのである。この共済年金の2本立て化は、後の基礎年金 創設につながる制度改正であった。ちなみに、この時点において、共 済年金の報酬比例部分の年金額計算は退職直前1年の平均俸給方式で あり、厚生年金の累積給与比例方式とは異なっていた12)。 (5)自由民主党の結党と福祉国家 皆年金実現を選挙公約に掲げたのは結党直後の自由民主党であっ た。1955年(昭和30年)に結党した自由民主党は、岸内閣及び池田内 閣の下で、国民所得倍増計画を閣議決定すると同時に党綱領には福祉 国家の建設をうたい、結党翌年の参議院選挙では、すべての国民を対 象とした老齢年金制度の創設を公約した。保守党政権が福祉国家建設 を標榜する背景には、第1与党の自由民主党と第1野党の日本社会党 という55年体制の緊張関係があり、さらにその背景には米ソの冷戦構 造があった。 当時の社会保障審議会の議事録を見ると、皆年金創設の是非をめぐ って、欧州で生まれた「福祉国家(welfare state)理念」やわが国に おける家制度崩壊の現状などについて活発な議論が行われている。一 方、皆年金の長期の財政見通しや持続可能性については十分な議論が 行われた形跡が見当たらない13)。 12)共済年金の2階部分の年金額計算は、基礎年金創設の1986年(昭和61年) に、退職直前1年の平均俸給方式から累積給与比例方式に変わり、厚生年金 との差異は解消された。 13)皆年金実現の背景について、国民年金法案作成プロジェクトの一員で後に 厚生事務次官を務めた吉原健二は次のように述懐している。 「あの時代、国の 大きなプロジェクトが一斉にスタートした。新幹線や高速道路の計画も1964 年の東京オリンピックを目指した。皆保険はまだしも皆年金なんてある意味 今考えても無茶なこと。政治が言い出したから厚生省はそんなことができる 訳ないじゃないかと思いながら必死に作った。少々出来が悪かったり問題点 があったりしても仕方がないではないかと言う思いも正直ある」(2013年10 月19日読売新聞) 。 ―282― 生命保険論集第 194 号 (6)国民年金法の制定と皆年金実現 国民年金法は1959年(昭和34年)に制定され、同年11月から一部の 年金支給が開始された。ただし、この年に支給されたのは、高齢者や 身体障害者など拠出制年金に加入できない者を対象とした無拠出制の 福祉年金であった。皆年金が達成されたのは、拠出制の年金が開始さ れた1961年(昭和36年)であった。皆年金はわが国に固有の制度と誤 解されることもあるが、 イギリスや北欧にも類似した制度が存在する。 皆年金と皆保険は、自力で最低限の生活を営む国民を支援する社会 保険制度として、いずれも1961年(昭和36年)に始まった。また、賃 金と社会保険給付を併せてもなお最低限の生活が営めない国民のため の公的扶助制度も併せてこの時期に整備され、わが国の社会保障制度 体系の基礎が確立した14)。 2.基礎年金の導入 (1)皆年金の課題 皆年金創設から20年余りが経過して、いくつかの課題が見えてきた。 ひとつ目の課題は、わが国の被用者年金が職域集団ごとに分立した状 態であったことに起因する。厚生年金、共済年金等は制度ごとに支給 要件、給付水準、国庫負担が異なるため、制度間の公平性に課題を抱 えていた。2つ目の課題は、皆年金と言いながらも独自の給付を持た ない集団が存在していたことに起因する。当時の皆年金は一部に重複 給付を容認する反面、被用者年金の被扶養配偶者には任意加入を認め るのみで、 女性の年金権確立と言う視点から異議を唱える声があった。 3つ目の課題は、産業構造や就業構造が変化したことに起因する。構 14)わが国における皆年金や公的扶助制度の基礎の確立には、戦後の経済復興 が大きな役割を果たしたと考えられる。とりわけ、1950年(昭和25年)から 始まった朝鮮戦争の特需は日本経済の復興ひいては福祉国家や皆年金実現に 向けた機運の追い風となった。 ―283― 被用者年金一元化と遺族保障 造変化が進むと労働力の移動が増加する。労働力が移動した結果、被 保険者が減少した制度は財政が不安定化する。また、1973年(昭和48 年)のオイルショックを契機に高度成長は終焉し、少子高齢化が進ん だため、分立する年金制度は総体として将来の財政に不安を覚えるよ うになった。 (2)基礎年金の創設 国民皆年金が抱える課題の解決に向けて、自由民主党第2次中曽根 内閣は基礎年金の創設と公的年金制度全体の一元化を閣議決定した。 「公的年金制度の改革について」と名付けられたこの閣議決定は、2 本柱で構成されていた。ひとつは、分立した国民年金を基礎年金とし て一元化すること(昭和61年から実施) 。もうひとつは、報酬比例部分 を含む公的年金制度全体の一元化を昭和70年度目途に完了させること であった。 この閣議決定に沿って、基礎年金創設のための大改正が行われたの は1985年(昭和60年)であった。分立する制度ごとに独自の支給をし てきた1階部分の年金を単一の制度である基礎年金に統合するための 法改正であった。 また、この改正では、基礎年金の創設に加えて、皆年金の抱えるい くつかの課題に対応するための制度変更が行われた。まず、女性の年 金権確立については、被扶養配偶者のために第3号被保険者が創設さ れて強制加入となった。つぎに、財政面では、制度間の不公平感を減 じる措置が採られた。国民年金、厚生年金および共済年金の各制度が 基礎年金へ支払う拠出金にはそれぞれに国庫補助があるが、その国庫 補助の計算方法について、それまでは各制度の被保険者数に応じた案 分で計算してきたものを基礎年金拠出金の3分の1に統一した15)。 15)基礎年金拠出金に対する国庫補助は、平成24年から基礎年金拠出金の2分 の1に引上げられている(国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改 正する法律(平成24年法律第99号) ) 。 ―284― 生命保険論集第 194 号 この大改正により、国民年金制度は、自営業者等ばかりでなく、被 用者およびその被扶養配偶者も含む20歳以上60歳未満の全国民で支え る全国民共通の基礎的給付となった。また、被用者年金の加入者は、 この改正に伴い、国民年金と厚生年金または共済年金との2つの制度 に同時に加入することとなった。 (3)公的年金の一元化に向けた対応 基礎年金創設の傍らで、共済年金の報酬比例部分の給付設計を厚生 年金のそれに寄せる改正が行われた。これは、昭和70年を目途に完了 させる予定の公的年金制度全体の一元化に向けた取組みの一環であっ た。続いて、1991年(平成3年)には学生の国民年金加入が強制とな り、1997(平成9年)には三大公社(JR、NTT、JT)の共済組 合の厚生年金への統合が行われた。また、同年には、基礎年金番号が 導入された。さらに、2002年(平成14年)には農林漁業団体職員共済 組合が厚生年金へ統合され、2004年(平成16年)には国家公務員共済 組合と地方公務員共済組合の財政単位の一元化を図る法律が成立した。 ただし、最終目標である公的年金制度全体の一元化については、被用 者年金が成熟していく21世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急 ぐとの方針が自由民主党森内閣の下で閣議決定されたにとどまり、具 体案は先送りされた。 (4)国民年金の空洞化 基礎年金導入から数年が経過して、 保険料納付率の問題が浮上した。 第1号被保険者の保険料納付率(現年度分)は、1992年(平成4年) の85.7%をピークとして徐々に低下を始めて2002年(平成14年)には 62.8%まで下落した。とくに若年層の納付率は低く、20歳台は50%前 後まで低下した。また、会計検査院の調査では、2003年(平成15年) の1年間に1カ月以上未納した者は1,129万人、そのうち654万人が13 カ月~24カ月の長期未納者であった。未納者増加の背景には、雇用の 流動化と非正規化があった。雇用が流動化すると、制度間移動者の未 ―285― 被用者年金一元化と遺族保障 届け等が発生しやすい。未納や未届けが増加する国民年金の財政に対 する不安感は強まり、若年層を中心とした国民年金の未加入行動は社 会問題化した。 (5)一元化に向けた取組み このような状況下で、政府は2004年(平成16年)の年金改革におい て、 基礎年金の国庫負担割合を1/3から1/2に引上げることを決定した。 これに伴い、国庫負担1/2の財源確保手段として、消費税率の引上げや 税方式への移行16)等が議論された。また、同年金改革の法案審議の過 程において「平成19年3月までに年金一元化問題を含む社会保障制度 全般の一体的見直しを行うこと」が自公民により三党合意された。こ の合意に基づいて、社会保障制度改革に関する両院合同会議が設置さ れ、いくつかの一元化案が提言された。主な提案の類型は次の5つに 分類できる。①基礎年金の負担を定額保険料あるいは税方式で一元化 ②被用者年金の2階部分を一元化③自営業者に所得比例年金を創設④ 2階部分は積立て方式に変更して民営化⑤全国民対象の所得比例年金 と最低保障年金を創設。この時点での選択肢は多様であった。 2007年(平成19年)の国会に上述の②を基本とする被用者年金一元 化法案が提出された。しかしながら、この法案は成立には至らず、2009 年(平成21年)の衆議院解散により廃案となった。そして、この廃案と なった法案をベースとして、社会保障・税一体改革大綱の枠組みのな かで2012年(平成24年)の国会に再提出され成立したのが「被用者年 金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法 律」 (平成24年法律第63号)をはじめとした被用者年金一元化法であっ 16)社会保険方式がよいか税方式(社会扶助方式)がよいかについての議論は 現在も続いている。それぞれの利点と欠点については、財源の安定性、保険 料負担の納得性および一般会計予算とのリスク遮断の在り方等の視点から 様々な見解が存在する。また、そもそも税金が財源の5割を占める国民年金 を社会保険方式と呼ぶことを疑問視する声もある。 ―286― 生命保険論集第 194 号 た。 Ⅲ.官民較差の解消 退職給付水準の官民較差の解消は、被用者年金の一元化だけではな く、公務員の退職手当の引下げとあわせて評価すべきものである。本 章では、 公務員の退職手当の引下げと被用者年金の一元化とによって、 退職給付の官民較差が確かに解消されたか否かを検証する。 1.公務員の退職手当の引下げ 公務員の退職手当は、民間企業に勤める被用者の退職一時金に相当 する17)。被用者年金一元化法と同時に成立した国家公務員退職手当法 の改正法(平成24年法律第96号)は早々に施行されて、平成25年1月 1日には退職手当の調整が始まり平成26年7月1日には所定の引下げ を完了した18)。引下げの主な内容は、退職給付における官民較差402.6 万円の全額解消であり19)、民主党政権下の閣議決定に基づくものであ った。 この402.6万円の計算方法は、公務員の退職給付(退職手当と職域 加算現価との合計額)の平均値から民間企業の退職給付(一時金と年 金現価との合計額)の平均値を控除したもので、この金額を退職給付 17)公務員の退職手当は全額が一時金である(国家公務員退職手当法第2条の 3) 。 18)地方公務員の退職手当の引下げについては、地方公務員法の定めるところ により、国家公務員の制度等に準じて条例が改正され、平成26年7月1日ま でに実施された。 19)官民較差402.6万円は、人事院調査「民間の企業年金及び退職金の実態調査 の結果並びに当該調査の結果に係る本院の見解について」(2012年(平成24 年)公表)に基づく退職給付水準の官民較差の平均値。人事院はこの調査結 果を踏まえて、 「官民均衡の観点から、民間との較差を埋める措置が必要」と の見解を示した。 ―287― 被用者年金一元化と遺族保障 の官民較差と見なして、公務員の退職手当を402.6万円引下げた。その うえで、さらに共済年金の職域加算廃止を決定したため、一時的に官 と民との較差が逆転する状況が生じた。 2.新しい3階部分の創設 この逆転した官民較差の平衡を図るのが、退職等年金給付(以下で は、 「年金払い退職給付」と言う。 )である。年金払い退職給付は、民 間の企業年金を参考に考案された。運営は積立方式で行われ、賦課方 式で運営を行ってきたこれまでの公的年金とは一線を画すところがあ る。また、給付設計はキャッシュバランス型20)を採用して、保険料の 追加拠出リスクを抑制したうえで、保険料率の上限を法定している。 掛金は労使折半、給付の半分は有期、残りの半分は終身で支給開始は いずれも65歳、旧職域加算の未裁定者については経過措置がある。蛇 足かもしれないが、年金払い退職給付への加入は任意ではなく強制で ある21)。また、年金受給開始後に死亡した場合は有期年金(年金払い 退職給付の半分)の未支給部分を遺族一時金として支給する22)。 退職給付の合計額(年金は現価で評価)は、民間企業の約2,540万 円に対して公務員は約2,519万円であり、両者は近い金額になる。この 視点からは、退職給付の官民較差は僅かなものになったと言える。た だし、内訳には、差異がある。先述の人事院調査(2012年(平成24年) 20)キャッシュバランス型の年金制度とは、確定給付制度の長所である一定の 給付保証性を維持しつつ、確定拠出制度の特徴である個人別残高を持つ仕組 みである。退職給付債務の安定化に資するため、今日では多くの企業が採用 している。確定給付型の特徴を維持しつつ、市中金利に連動して再評価率を 見直すことが可能であるため、金利変動リスクを一定程度軽減することがで きる。 21)国家公務員共済組合法第100条の定めによる。 22)年金受給開始前に死亡した場合は自己負担分相当額を遺族一時金として支 払う。 ―288― 生命保険論集第 194 号 公表) に基づくと、 民間企業の退職一時金は平均で約1,040万円である。 これに対して、引下げ後の公務員の退職手当23)(全額一時金)は平均 で約2,300万円である。また、民間の企業年金の現価は平均で約1,500 万円であるのに対して年金払い退職給付の現価は概算で219万円程度24) である。 民間企業の退職給付は、一定の条件のもとに一時金か年金か、終身 か有期かを選択できる制度となっている場合が多い。一方、公務員の 退職給付は、退職手当は全額一時金で、年金払いの選択肢がない。年 金払い退職給付は半分が終身で残りの半分は20年有期年金25)であるが、 その現価は退職給付全体の10分の1以下と少額である。 3.老齢給付の較差解消 結論から言えば、累積給与額が同じであれば老齢厚生年金の額も同 じであるという視点において、官民較差は解消したと言ってよいであ ろう。共済年金の旧職域加算26)は廃止され、在職老齢年金についても 共済年金が厚生年金に揃える形で差異は解消した27)。 ただし、旧職域加算の老齢給付の既得権に相当する部分は保護され るため、既に共済年金受給権のある者はもちろん、一元化移行当日に 23)公務員の退職手当は全額一時金、年金払いは選択できない。根拠法は、国 家公務員については、国家公務員退職手当法第二条の三および国家公務員退 職手当法施行令第一条の二 24)旧職域加算の現価の平均である約243.3万円(人事院調査、2012)に、1.8 万円/2.0万円を乗じた金額。1.8万円は年金払い退職給付のモデル年金月額、 2.0万円は一元化前の旧職域加算の同モデル年金月額である。 25)本人の選択で10年有期年金や一時金で受けとることも可能である。また、 繰り上げ(60歳まで)と繰り下げ(70歳まで)も可能である。 26)旧職域加算とは、共済組合員期間20年以上で老齢厚生年金の2割(平均標 準報酬額の1.096/1000) 、20年未満は同1割(平均標準報酬額の0.548/1000) が老齢年金に加算される公務員の年金制度。 27)激変緩和措置があるため、当面の間は完全に較差が解消したとは言えない。 ―289― 被用者年金一元化と遺族保障 おいて受給権を有していない者についても、それまでの加入期間に応 じた職域加算は終身で支給されることになる。しかしながら、これは 経過措置であり較差の未解決部分には含まなくてよいであろう。 もちろん、年金制度の較差が解消したからと言って、給与水準の違 いが解消する訳ではない。みずほ総合研究所の調査によると、平成24 年の標準報酬額28)の平均は厚生年金36.1万円に対して、国家公務員 51.1万円、地方公務員53.5万円である。ただし、これは給与水準の違 いであり、年金制度の較差ではない。また、公務員の給与水準は、非 公務員全体の給与水準と比べるのではなく、非公務員のうち大企業に 勤める者等の給与水準と比べるのが妥当であるという意見も存在する。 4.遺族給付の較差解消 遺族給付についても、結論から言えば、累積給与額が同じであれば 遺族厚生年金の額は基本的に同じであるという視点において、官民較 差は概ね解消したと言ってよいであろう。また、遺族年金の転給制度 についても、共済年金が厚生年金に揃える形で差異が解消された29)。 ただし、旧職域加算の遺族給付の既得権に相当する部分は基本的に 保護される。具体的には、一元化移行当日において受給権を有してい ない者(未裁定者)が本人死亡により受給権を取得した場合は、それ までの加入期間に応じた職域加算部分の遺族給付は原則として終身で 支給される30)。しかしながら、これは経過措置であり較差の未解決部 分には含まなくてよいであろう。 28)標準報酬額とは、標準報酬月額と標準賞与額の12分の1とを合計した額で ある。基本的には、年収の12分の1に近い金額になる。 29)遺族年金の転給とは、典型的には、第一順位者である妻が失権した場合に、 次順位者である父母等に権利が引き継がれて遺族年金が支給される制度であ る。遺族厚生年金は転給を認めていない。なお、共済年金の転給制度の廃止 は、受給者も含めて即時実施された。 30)遺族が30歳未満であると、終身で支給されない場合がある。 ―290― 生命保険論集第 194 号 遺族給付の較差が解消したことに伴い、公務員等の遺族給付は大幅 に減少した。減少の程度は、老齢給付よりも遺族給付が相対的に大き い。 それにもかかわらず、 前者の減少は広く国民に周知される一方で、 後者の減少は全くと言ってよいほど周知されない。 旧職域加算の遺族給付にはもうひとつ経過的な措置がある。遺族給 付額を本人給付相当額の75%から50%に減じる措置である。この経過 的な措置の完了は平成46年。平成37年から平成46年の10年間に毎年 2.5%を減じる。 50%に減じる理由は、年金払い退職給付の遺族一時金の給付水準と の平衡にある。遺族一時金は、年金受給開始後に死亡した場合は有期 年金(年金払い退職給付の50%に相当)の未支給部分を一時金として 支給する。 旧職域加算の遺族給付の支給額については、一元化前に公務員とし て採用された者と一元化後に公務員として採用された者との間に大き な差異がある。このような差異が生じた原因は、 「300月みなし」31)に ある。 5.その他の制度的な差異の解消 主なものは以下のとおりである。 (1)標準報酬制 地方公務員の共済年金保険料の算定基礎は、厚生年金と同じ標準報 酬制に移行した32)。移行前は、保険料の対象については、かつての給 料に手当率 (1.25) を乗じたものに期末手当等を加える方法であった。 31) 「300月みなし」とは、遺族年金額計算の際の加入期間が300月に満たない場 合は300月あったとみなすこと。加入期間の短い組合員の遺族に対する最低保 障に相当する。 32)国家公務員の共済年金保険料の算定基礎は、1986年(昭和61年)に標準報 酬制に移行済みである。 ―291― 被用者年金一元化と遺族保障 また、共済年金の2階部分の保険料率の引上げ目標値は、旧職域加算 が廃止されたために、厚生年金と同じ18.3%に変更された33)。 (2)保険料納付要件 障害給付の保険料納付要件は、一元化以降は厚生年金のルールに統 一される。つまり、一元化以降は、初診日の前々月までの保険料納付 済期間および保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上必要とな る。 (3)男女差 60歳台前半の特別支給の退職共済年金の支給開始年齢引上げスケ ジュールは、一元化後も変更されない。したがって、女性の公務員の 年金支給開始年齢は男性と同じままである(男女の引上げスケジュー ルには非公務員のような5年の差がない) 。この点については、官民較 差が解消していない。 また、一元化以降は、夫または父母が遺族年金受給者となる場合の 支給要件として、死亡当時の夫または父母の年齢が55歳以上でないと 受給できないという厚生年金のルールに統一される。この点について は、男女差のない共済年金のルールが男女差のある厚生年金のルール に統一される34)。 (4)被保険者の年齢制限 一元化以降は厚生年金のルールに統一される。つまり、被保険者の 上限は70歳となる。 5.財政面の効果 33)一元化前の保険料率の引上げ目標値は19.8%(平成35年達成)であった。 一元化後の目標値である保険料率18.3%の達成予定は、厚生年金は平成29年、 共済年金は平成30年、私学共済は平成39年である。なお、年金払い退職給付 の保険料率(労使合計で1.5%)は、これとは別に徴収される。 34)厚生年金のこのルールは女性優遇であり、見直すべきという意見が存在す る。 ―292― 生命保険論集第 194 号 財政の縦割り構造は、一元化によって解消される部分と温存される 部分とがある。共済組合の財政は厚生年金と完全に一体化するわけで はない。各共済組合の積立金は、一元化を境に、共通財源化する部分 と各共済組合の個別財源として残る部分とに仕分けられる。共通財源 化する部分とは1・2階部分の積立金であり、各共済組合の個別財源 として残る部分とは3階部分の積立金である35)。各共済組合は、新し い制度の発足にあたり、1・2階部分の支出の4.9年分に相当する積立 金を共通財源に仕分けて管理・運用を始めた36)。 共通財源に仕分けられた積立金は、引き続き各共済組合の積立金で あることに変わりはないが、厚生年金勘定との間で資金のやり取りが 行われる。各共済組合は、厚生年金に対して拠出金を支払い、厚生年 金から年金給付額を受取るというやり取りである。 支払う拠出金は基本的に応能負担であるのに対して、受取る交付金 は給付実費そのものである。この構造は、運用利回りを向上させるイ ンセンティブを抑制する可能性がある。共通財源に仕分けられた積立 金の運用利回りが向上して積立金残高が増えると拠出金の負担も増え てしまうからである。 積立金の管理・運用についても、一体性が確保される部分と縦割り 構造が温存される部分とがある。積立金全体の運用基本方針は、厚生 労働、財務、総務および文部科学の4大臣が共同で作成・公表する。 また、モデルポートフォリオは、GPIF、国共連、地共連および私学事 業団37)の4団体が共同で作成・公表する。ここまでは一体性が確保さ 35)旧職域加算および年金払い退職給付の給付を賄う積立金 36)4.9年分とは、一元化前の厚生年金の積立比率(年間支出の何年分を積立金 として保有しているか)である。この4.9年分は、過去の数値を用いて計算し た概算仕分けの見込み値であるため、実績の数値を踏まえて概算仕分けとの 差額調整が行われる。 37)GPIF、国共連、地共連および私学事業団の正式名称は、年金積立金管理運 用独立行政法人、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会お ―293― 被用者年金一元化と遺族保障 れる。一方、年金積立金の運用は各々が行う。当該4団体および傘下 の共済組合等が各々に運用ポートフォリオを定めて公表したうえで運 用する。運用ポートフォリオ決定においては、上述のモデルポートフ ォリオが参酌される。 一元化は公務員にとって、年金給付水準の引下げという負の面ばか りではなく共済年金財政の救済という正の面もあると言われる。年金 扶養比率38)の平成25年度実績を比べると、厚生年金2.32、私学共済4.04 に対して、国家公務員共済1.52、地方公務員共済1.43であり、公務員 2共済は高齢化の進展が早いため、被用者年金の共通財源化で救われ る部分があると言われる。 参考までに、一元化と同時に、わが国の年金財政全体にとって重要 な制度改正が行われている。物価スライド特例措置の解除39)とそれに 伴うマクロ経済スライドの発動である。公的年金の持続可能性を高め るという視点から重要な改正であるが、本稿の主題と直接的な関わり がないため、これについての論述は控える。 Ⅳ.遺族保障の減少額に伴う補完市場の規模 公的年金の遺族給付は死亡保険金の年金払いと見なすことができ る40)。したがって、一元化で公務員世帯が失う遺族給付の大きさは、 よび日本私立学校振興・共済事業団である。 38)1人の年金受給権者を何人の被保険者で支えるかを示す指標 39)物価スライド特例措置とは、特例法により平成11年~13年のマイナスの物 価スライドを行わず、平成12年度~14年度の年金額を据え置いた措置。社会 保障・税一体改革の一環として、平成27年4月までに解除することが定めら れていた(国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平 成24年法律第99号) ) 。 40)公的年金の遺族給付を受取る遺族が平均余命を生きると仮定して計算した 遺族年金の年金現価を死亡保障額とみなす。 ―294― 生命保険論集第 194 号 遺族保障(死亡保障)に換算することが可能である。公務員世帯の必 要保障額の充足率41)は一元化を境に一斉に低下した。一元化前の充足 率を維持するためには、遺族保障の減少を補う死亡保険(年金払い) 等の要否の検討が望まれる。 この章ではまず、標準的な国家公務員世帯42)の遺族保障が一元化で 幾ら減少したかを精緻に計算する。続いて、全ての公務員世帯がその 減少を民間の死亡保険加入で補うと仮定した場合の市場規模を推計す る43)。 1.世帯が失う遺族保障 国家公務員世帯が一元化によって失う遺族保障(死亡保障)の大き さを計算して図表1~図表4に示した。遺族保障の減少額とは、一元 化前のルールで計算した遺族保障と一元化後のルールで計算した遺族 保障との差額である。 (1)一元化前採用の国家公務員 一元化前に職員として採用された標準的な国家公務員世帯が失う 遺族保障(死亡保障)は、図表1に示したとおり4.0万円から339.5万 円弱であった。遺族保障の減少額は、法施行時年齢(平成27年10月1 日時点の年齢)および将来年齢(死亡時年齢)に応じて変化する。主 な理由は①加齢に伴う昇給②遺族給付開始までの加入期間44)③遺族給 41)必要保障の充足率とは、金融機関等が提供するライフプランニングの過程 でライフサイクル仮説に基づいて算定する死亡保険の必要保障額に対する既 加入の死亡保険金額の割合を言う。 42)標準的な国家公務員世帯とは国家公務員共済組合に加入する男性、専業主 婦、子有の世帯。給与は、 「平成27年国家公務員給与等実態調査」および公務 員給与研究所の給与・年収データに基づく年齢別の平均とする。 43)市場規模の推計等に使用した計算モデルの概要は本稿末尾に脚注の補足と して掲載した。 44)加入期間のうち300月を超える部分を指す。 ―295― 被用者年金一元化と遺族保障 付の支給期間(遺族の平均余命)④経過措置45)の4点である。 図表1 一元化で失う遺族保障(死亡保障) 一元化前採用の男性、専業主婦・子有 (単位:千円) 将来年齢(死亡時年齢) 22歳 27歳 法施行時年齢 37歳 47歳 57歳 59歳 ▲ 366 ▲ 1,557 ▲ 2,265 ▲ 3,324 ▲ 3,395 ▲ 813 ▲ 2,050 ▲ 3,258 ▲ 3,360 22歳 ▲ 40 27歳 - ▲ 72 37歳 - - ▲ 70 ▲ 772 ▲ 3,206 ▲ 3,333 47歳 - - - ▲ 137 ▲ 2,087 ▲ 2,540 57歳 - - ▲ 197 ▲ 551 - - (出所) 「平成27年国家公務員給与等実態調査」および公務員給与研究所の給与・年収データ に基づいて碓井社会保険労務士事務所と筆者が共同で算出 図表2は図表1をグラフにしたものである。グラフの形状は押し並 べて右肩上がりである。グラフの形状にいくつかの節目がある主な理 由は、旧職域加算の遺族給付の経過措置にある。一元化後10年間は旧 職域加算の遺族給付の全額(死亡職員の老齢給付相当額の3/4)が支払 われる。その後、11年目からの10年間は3/4が1/2に漸減する期間とな り、20年目以降は1/2に固定される。また、46歳~47歳のあたりの節目 は「300月みなし」の影響である。なお、施行時年齢22歳のグラフを見 ると、40歳台前半の5年間の傾きがフラットになっているが、これは 「300月みなし」の最後の5年間は遺族年金の経過措置(20年間)が終 わっていることによる。 45)未裁定部分の遺族年金の給付水準は、平成46年に向けて現在の4分の3か ら2分の1に徐々に減少する。 ―296― 生命保険論集第 194 号 図表2 一元化で失う遺族保障(死亡保障) 一元化前採用の男性、専業主婦・子有 (単位:横軸の年齢は将来年齢(死亡時年齢) ) (万円) 400 凡例は法施行時年齢 22歳 27歳 37歳 47歳 57歳 350 300 250 200 150 100 50 0 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58(歳) (出所)図表1に同じ (2)一元化後採用の国家公務員 参考までに、一元化以降に採用される国家公務員についても、遺族 給付の減少額を計算してみた。図表3に示したとおり、採用時年齢・ 将来年齢を問わず概ね400万円を超えており、最大値は739.5万(採用 時年齢47歳の47歳死亡)に至る。図表1に比べて数字が大きくなる理 由は、一元化後採用には旧職域加算の遺族給付の経過措置がないため である。 図表4は図表3をグラフにしたものである。図表2とは対照的に5 本のグラフは右肩下がりの部分が多い。5本の傾きが異なる主な理由 は、採用時年齢が若いと、死亡時の累積給与の平均額が少なくなるこ とにある。また、2本のグラフについて、左から25年目以降の傾きが 反転して右肩上がりとなる理由は、 「300月みなし」にある。300月経過 ―297― 被用者年金一元化と遺族保障 後は、計算上の加入期間が増える。 一元化後に採用される国家公務員は、一元化による遺族保障の減少 を民間の生命保険加入で補完することについて強い動機を持たないと 思われる。 図表3 一元化で失う遺族保障(死亡保障) 一元化後採用の男性、専業主婦・子有 (単位:千円) 将来年齢(死亡時年齢) 採用時年齢 22歳 27歳 37歳 47歳 57歳 59歳 22歳 ▲ 4,068 ▲ 4,074 ▲ 4,075 ▲ 3,850 ▲ 4,653 ▲ 4,675 27歳 - ▲ 4,739 ▲ 4,697 ▲ 4,345 ▲ 4,330 ▲ 4,378 37歳 - - ▲ 6,350 ▲ 5,775 ▲ 4,416 ▲ 4,061 47歳 - - - ▲ 7,395 ▲ 5,601 ▲ 5,187 57歳 - - - - ▲ 6,588 ▲ 6,107 (出所)図表1に同じ ―298― 生命保険論集第 194 号 図表4 一元化で失う遺族保障(死亡保障) 一元化後採用の男性、専業主婦・子有 (単位:横軸の年齢は将来年齢(死亡時年齢) ) (万円) 凡例は採用時年齢 800 22歳 27歳 37歳 47歳 57歳 750 700 650 600 550 500 450 400 350 300 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58(歳) (出所)図表1に同じ 2.市場規模 一元化前採用の公務員が一元化によって失う遺族保障(死亡保障) の総額を求めてみよう。図表5は、図表1に示した世帯単位の遺族保 障減少額に公務員の人数46)を掛けて公務員市場全体の遺族保障減少額 を求めた結果である。この計算結果は、一元化前に採用された公務員 の遺族保障の減少の全てを民間の生命保険商品加入で補完すると仮定 した場合の市場規模の推計値になる。 まずは、補完商品を逓増型定期保険とした場合の市場規模をみる47)。 46) 「平成24年度財政状況-国家公務員共済組合-」 「平成25年度地方公務員共 済組合等事業年報」および「私学共済制度統計要覧平成25年版」から算出。 合計約425万人 47)逓増型定期保険の市場規模は、図表2の右肩上がりのグラフの各歳の保険 ―299― 被用者年金一元化と遺族保障 在職期間中の遺族保障の減少に連動して逓増する定期保険である。潜 在的な市場規模は一元化直後で5.3兆円弱、経過措置完了時には18.5 兆円弱となる(図表5) 。また、潜在的な市場規模を男女別に概算した 結果は図表6に示した。 図表5 逓増型定期保険の市場規模(年齢階層別) (単位:億円) 一元化直後 公務員計 10年後 20年後 経過措置完了時 52,635 116,091 154,372 184,773 20~24歳 3,626 8,692 8,692 8,692 25~29歳 8,017 20,105 20,105 20,105 30~34歳 7,860 17,155 21,061 21,061 35~39歳 8,706 13,299 24,998 24,998 40~44歳 9,084 14,761 24,144 27,573 45~49歳 7,754 13,920 17,042 26,330 50~54歳 5,373 14,511 19,062 28,556 55~59歳 2,215 13,648 19,268 27,458 (出所)図表1に同じ 図表6 逓増型定期保険の市場規模(男女別) (単位:億円) 一元化直後 10年後 20年後 経過措置完了時 公務員計 52,635 116,091 154,372 184,773 男性 32,330 71,673 96,063 116,463 女性 20,305 44,418 58,309 68,310 (出所)図表1に同じ 金額の平均値を求めて、その平均保険金額に公務員数を乗じて求めた値の総 計である。 ―300― 生命保険論集第 194 号 続いて、補完する商品を定額定期保険とした場合の市場規模をみる。 図表1に示した在職期間中の遺族保障減少額の最大値を保険金とする 定額定期保険とした場合の計算である。潜在的な市場規模は、一元化 直後で10.6兆円強、経過措置完了時は19.9兆円弱となる(図表7) 。ま た、潜在的な市場規模を男女別に概算した結果は図表8に示した。 図表7 定額定期保険の市場規模(年齢階層別) (単位:億円) 一元化直後 公務員計 10年後 20年後 経過措置完了時 106,397 147,503 170,996 198,703 20~24歳 7,080 9,772 9,772 9,772 25~29歳 16,207 22,535 22,535 22,535 30~34歳 16,833 20,919 23,517 23,517 35~39歳 19,525 19,973 27,772 27,772 40~44歳 19,030 21,685 26,950 30,296 45~49歳 14,812 19,723 20,174 28,052 50~54歳 9,662 18,355 20,915 29,221 55~59歳 3,248 14,541 19,361 27,538 (出所)図表1に同じ 図表8 定額定期保険の市場規模(男女別) (単位:億円) 一元化直後 10年後 20年後 経過措置完了時 公務員計 106,397 147,503 170,996 198,703 男性 65,135 91,320 106,285 124,879 女性 41,262 56,183 64,711 73,824 (出所)図表1に同じ ―301― 被用者年金一元化と遺族保障 Ⅴ.情報提供の在り方 この章では、一元化で失われる公務員の死亡保障について、生命保 険会社等がどのような対応をしているかについての調査結果を踏まえ て、公的年金制度改正にかかる情報提供の在り方を考える。 1.調査の結果 まずは、この潜在的な市場に対する生命保険会社等の対応の現状を 見てみよう。調査は2015年11月下旬に実施した48)。各社のホームペー ジに設けられた問合せフォームに以下の質問を投稿して回答を集めた 結果が図表9である。 (質問)2015年10月1日施行の被用者年金一元化法により公 務員の遺族給付が減少します。その減少額を個人の属性に応 じて精緻に計算するツール及び減少額の補完を目的とした 保険商品等を御社は提供していますか。また、提供する予定 はありますか。 調査対象69社の中には、ホームページに設けられた問合せフォーム にアクセスできない会社が多数存在した。アクセスできない理由は、 アクセスが既契約者(証券番号あり)またはID登録者に限定されて いる場合とそもそもホームページ上に問合せフォームがない場合とが あった。結果として、質問可能な会社は69社中29社(42%)と半分を 下回った。 48)調査は碓井社会保険労務士事務所が実施。調査概要は本稿末尾に脚注の補 足として掲載した。 ―302― 生命保険論集第 194 号 図表9 民間生保の被用者年金一元化対応 -調査結果- 単位:会社数 調査対象 質問可能 10 1 0 0 3 2 1 0 外資系等生保 18 7 5 0 ネット系生保 8 2 0 0 かんぽ生命 1 1 0 0 乗合代理店 5 3 1 0 24 13 3 0 69 29 10 0 伝統的生保会社(注1) 損保子生保 少額短期保険業者等(注2) 合計 回答有 対応有 (注1)戦後再出発生保会社20社のうち現存する会社 (注2)平成17年の保険業法改正後に無認可共済から生保会社になった会社を含む 質問を受付けた29社のうち、何らかの回答があったのは10社(34%) であった。1社は電話での回答、それ以外の9社はメールでの回答で あった。 質問発信から調査終了まで調査側の待機日数は5日であった。 回答のあった10社のうち、一元化に伴う遺族給付の減少を補完する ツールおよび商品を提供または提供予定の会社(図表9の「対応有」 ) は皆無であった。原因としては、そもそも生命保険各社が一元化に伴 う遺族保障の減少の規模を把握していない、把握しているものの重要 な市場とは考えていない、把握しているものの保障見直しのニーズは 低いと判断している、公務員市場についての市場調査を行う部署がな い等が考えられる。もちろん、質問可能ではなかった40社の中に、 「対 応有」の会社が存在している可能性はある。 2.情報提供の在り方 一元化に伴い、約425万人の公務員全員の必要保障額の充足率は少 ―303― 被用者年金一元化と遺族保障 なからず低下した。37歳の国家公務員世帯(専業主婦、子有)の場合、 失った遺族保障は最大値で333.3万円であった(図表1) 。この公務員 の一元化前の必要保障額が3,500万円であった場合、 必要保障額の充足 率は一元化を境に1割弱低下したことになる。 必要保障額の充足率低下は世帯の生活設計に少なからずの影響を 及ぼす重要な情報である。この情報が契約者等に正しく提供されない 場合、保険市場における「市場の効率性」を損なう原因となる。 「市場 の効率性」を維持するためには、需給に影響のある情報が正しく解釈 されて広く市場に周知される必要がある。 情報偏在の緩和と言う視点から、市場関係者は情報提供の在り方を 見直すことが望まれる。 保険市場における情報偏在は、 事象に応じて、 保険会社と契約者等とのいずれか又は双方からのアプローチが必要で あるが、社会保障制度改正にかかる正しい情報を得るためには専門知 識と精緻な計算が欠かせない。それゆえに、情報優位の立場にある保 険会社等からのアプローチ(情報提供)が望まれる。そもそも死亡保 障ニーズには潜在性があり、契約者が自力で正しい情報を得て正しく 行動するのは容易ではない。 営業推進と言う視点からは、適切な見直しを提案した者が需要を獲 得し売上げを伸ばすことが期待される。情報提供の見返りは第一提供 者に厚くなるのが常である。潜在市場の規模は小さくない。一元化で 生じた遺族保障の市場規模は、逓増型定期保険で計算した場合で5兆 円強(一元化直後) 、定額定期保険で計算した場合は10兆円強(一元化 直後)と推計される。いずれも、標準的な国家公務員世帯をモデルと して、公務員全体の市場規模を推計した結果である。参考までに、保 有契約高が同規模の保険会社を探すと49)、5兆円強は第一フロンティ 49)平成26年度の個人保険・個人年金保険の保有契約高(各社ディスクローズ 資料より) ―304― 生命保険論集第 194 号 ア生命、10兆円強はエヌエヌ生命(旧アイエヌジー生命)が近い。 この市場における民間保険の購入意欲の強弱については十分な調 査や検証ができておらず意見が分かれるところかも知れないが、 「市場 の効率性」 の維持ならびに顧客満足度の維持・向上と言う視点からは、 営業的な見返りの多寡にかかわらず、生活設計にかかる正しい情報を 迅速に契約者等へ提供することが望まれる。 おわりに 本稿は、わが国の被用者年金が一元化に至る経緯を公務員を対象と する年金制度の変遷に幾分重心を置いて概観したうえで、一元化で生 じた公務員の遺族保障の減少を民間の生命保険商品加入で補完すると 仮定した場合の市場規模を推計し、この市場に対する情報提供の在り 方を考えた。 公的年金が一元化に至るまでの道のりは、明治初期から始まるわが 国の年金制度の歴史と重なる。恩給制度に始まる公務員の年金制度の 変遷をみると、多少の曲折を伴いながらも大きな流れは分立から統合 に向かうものであった。 第二次世界大戦直後のわが国は、生産年齢人口の過剰問題を抱えて いた。福祉国家を目指しながらも完全雇用政策が主軸で社会保障制度 は副軸と言われた。一方、現在のわが国は高齢従属人口の過剰問題を 抱えている。かつては副軸と言われた社会保障制度は予算規模におい て主軸とならざるを得ない。また、予算規模は主軸でありながら受給 者単位の公的年金の給付額は切り詰めざるを得ない環境下にある。 被用者年金の一元化によって、公務員世帯の年金給付は減少し、公 的年金の2階部分の官民較差はほぼ解消した。較差解消の結果公務員 が失う遺族保障は決して少なくない。37歳の国家公務員世帯(専業主 婦、子有)の場合、失った遺族保障は333.3万円である。必要保障の充 ―305― 被用者年金一元化と遺族保障 足率は一元化を境に少なからず低下したことになる。しかしながら、 この情報は全くと言ってよいほど周知されていない。 必要保障の充足率低下は世帯の生活設計に少なからずの影響を及 ぼす重要な情報である。この情報が契約者等に正しく提供されない場 合、保険市場における「市場の効率性」を損なう原因となる。 「市場の 効率性」を維持するためには、需給に影響のある情報が正しく解釈さ れて広く周知される必要がある。 公務員の遺族保障の減少を民間の生命保険加入で補う場合の潜在 的な市場規模は、一元化直後で5兆円強から10兆円強と推計される。 この市場における生命保険の購入意欲の強弱については意見が分かれ るところかも知れないが、 「市場の効率性」を維持するという視点から は、営業的な見返りの多寡にかかわらず、生活設計にかかる正しい情 報を迅速に契約者等へ提供することが望まれる。 わが国の公的年金は当面の間、全体の予算規模の膨張を抑制するた めに個別の給付水準を縮減する方向での制度改正が続く見通しである。 公的年金の給付水準が低下すると必要保障額の充足率が低下してそれ を補う民間保障の見直しが必要になる。保障見直しに関する情報は、 市場で正しく解釈され広く周知されることが望まれるが、公的年金制 度の複雑さが災いしてか正しい情報が契約者等に届かない事態がしば しば生じる。このような情報の偏在が少しでも緩和されて保険市場に おける「市場の効率性」が高まることに期待したい。 ―306― 生命保険論集第 194 号 (脚注43の補足) 市場規模の推計等で使用した計算モデル ⑴ 遺族給付の減少は以下の①から②を差し引いた金額とする。 ①一元化前の遺族共済年金の職域加算が継続したと仮定した場合の金額 ②一元化による未裁定部分の遺族共済年金の職域加算額および退職等年金給付の遺族に対す る一時金(以下、遺族一時金)の合計 ⑵ 定額定期保険市場の推計は、定年までの各年の⑴①と⑴②との差額の最大値 ⑶ 共済組合の種類 国家公務員共済組合 ⑷ 共済組合加入年齢① 一元化前採用職員:22歳 ⑸ 共済組合加入年齢② 一元化後採用職員:22歳、27歳、37歳、47歳、57歳 ⑹ 世帯 妻年齢は夫の5歳年下、子有 ⑺ 採用される月 4月 ⑻ 共済組合定年 満60歳年度末(計算期間は年度始年齢満59歳の年度まで) ⑼ 給与更改時期 4月 ⑽ 職域加算の遺族共済年金の計算式 平成15年改正法本則の算式を使用。終身年金とする。 平均標準報酬額の計算は加入から死亡時までの平均給与年額 再評価率は1 ⑴①の遺族共済年金の職域加算額 平均標準報酬額(年額)/12月×該当年齢9月までの 組合員月数(300月未満は300月)×1.096/1000×3/4 ⑴②の未裁定部分の遺族共済年金職域加算額 平均標準報酬額(年額)/12月×2015年9月までの組合員 月数(300月未満は300月)×1.096/1000×3/4(2025年10月 以降毎年2.5%減。2035年10月以降1/2) ⑾ 退職等年金給付の遺族の一時金の計算(⑴②のみ) 当年9月30日給付算定基礎額=前年9月30日の給付算定基礎額× (1+基準利率)+(前年10月~当年9月までの給与)×付与率×(1+ 基準利率)^0.5 遺族一時金の額=給付算定基礎額×1/2(組合員期間1年未満はゼロ) 付与率 1.5% 基準利率 0.48% 死亡率 平成26年簡易生命表(満年齢変換後)を年金現価を求める 際に使用 ⑿ 給与額は、 「平成27年国家公務員給与等実態調査」および公務員給与研究所の給与・年収デー タに基づく年齢別の平均とする。 ―307― 被用者年金一元化と遺族保障 (脚注48の補足) 調査の概要 ⑴ 調査方法 各社のホームページに設けられた問合せフォームによる質問(会員登録等の条件がある会社 を除く) ⑵ 質問内容 2015年10月1日施行の被用者年金一元化法により公務員の遺族年金額が減少します。その減 少額を個人の属性に応じて精緻に計算するツール及び減少額の補完を目的とした保険商品を御 社では開発もしくは提供していますか。 ⑶ 調査時期 質問発信は、2015年11月24日(火) 質問回答期限は、2015年11月28日(土) ⑷ 調査対象 ①2015年9月14日現在の生命保険協会加盟41社 ②2015年6月22日現在の日本少額短期保険協会登録83社の内取扱種目に生命保険がある22社 ③大手乗合代理店5社 参考文献 厚生労働省(2015) 「被用者年金の一元化について」第67回社会保障審 議会年金数理部会資料1 土谷晃浩他(2013) 「国家公務員の「年金払い退職給付の創設」につい て」 『ファイナンス』2013年1月 pp.36-41 中川秀空(2005) 「基礎年金の財源と年金一元化問題」 『調査と情報』第 486号pp.1-11 坂本重雄(1982) 「公的年金制改革と共済年金統合論」 『季刊・社会保障 研究』Vol.18 No.2 pp.144-154 ―308― 生命保険論集第 194 号 厚生労働省(2018) 『厚生労働白書』pp.98-115 田多英範(2011) 「福祉国家と国民皆保険・皆年金体制の確立」 『季刊・ 社会保障研究』Vol.47 No.3 pp.220-230 広井良典(1999) 『日本の社会保障』岩波書店 神田眞人(2010) 「公僕の俸禄たてよこ(上)」 『ファイナンス』2010年 7月pp.59-73 神田眞人(2010) 「公僕の俸禄たてよこ(下)」 『ファイナンス』2010年 8月pp.49-59 村上清(1985) 「共済年金の改革の方向」 『生命保険文化研究所所報』 生命保険文化研究所第70号 pp.1-28 西村淳(2015) 『雇用の変容と公的年金』東洋経済新聞社 駒村康平(2014) 『日本の年金』岩波新書 石崎浩(2014) 『年金改革の基礎知識』信山社 松野晴菜(2014) 「平成26年公的年金財政検証と今後の年金制度改正の 行方(上) 」 『立法と調査』参議院2014年11月No.358 pp.26-45 人事院(2012) 「民間の企業年金及び退職金の実態調査の結果並びに当 該調査の結果に係る本院の見解について」人事院 青谷和夫(1983) 「共済年金制度改革案について」 『生命保険文化研究 所所報』生命保険文化研究所第64号pp.1-32 村上清(1992) 「年金制度の基本理念と当面の課題」 『文研論集』生命 保険文化研究所第98号pp.85-112 社会保障制度改革国民会議(2013) 「社会保障制度改革国民会議報告書 ~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」内閣府 共済年金職域部分と退職給付に関する有識者会議(2012) 「共済年金職 域部分と退職給付に関する有識者会議報告書」内閣府 ―309―