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Ⅷ-3. 行政処分の附款
2013年 度 行 政 法 レ ジ ュ メ ( 8-3) Ⅷ-3. 行政処分の附款 講義で「行政処分の附款」について独自にとりあげる時間はないので、レジュ メ を 配 布 す る に と ど め る 。 な お 、 櫻 井 ・ 橋 本 p.106以 下 、 宇 賀 Ⅰ p.94以 下 参 照 。 1、附款とは 行政処分の法律上の効果を制限するために行政庁が付す、付加的な規律を附款という。 法律では「条件」という用語が用いられることが多いが、学説では次のように区別し ている。 cf. 伝統的には「行政行為の効果を制限するために、主たる意思表示に附加された従 たる意思表示」と説明された(田中二郎など)。 2、附款の種類 (1) 条件(停止条件と解除条件) 行政処分の効力の発生又は成立を、発生の不確実な事実にかからしめること。 ①停止条件とは、条件成立の時まで効力の発生を停止する。 例:会社の設立を条件に道路の占用許可を出す。 ②解除条件とは、条件成立の時に効力を消滅させる。 例:一定期間に工事に着手しなければ許可の効力を失効させる。 (2) 期限 行政処分の効力の発生又は成立を発生の確実な事実にかからしめること。 ①始期とは、事実発生の時に効力が生じる時点 例 : ○ ○ 年 4月 1日 よ り 有 効 と す る 。 ②終期とは、事実発生の時に効力が消滅する時点 例 : ○ ○ 年 12月 31日 ま で 有 効 と す る 。 相手方の死亡をもって失効する(不確定期限) (3) 負担 負担とは行政処分の主たる効果に付加して、義務(作為、不作為)を課すこと。 負担の履行の有無は行政処分の効力の発生消滅消長には関係しない(ここが条件と違 うところ)。但し、負担の不履行が撤回の理由となることはありうる。 以前に配布した集団示威行進(デモ行進)許可証の条件に「蛇行進、渦巻行進、いわ ゆ る フ ラ ン ス デ モ ・・・・を し な い こ と 」 と 書 い て あ る が 、 こ れ は 負 担 の 例 で あ る 。 (4) 撤回権の留保 行政処分をするにあたって、行政庁が当該処分を撤回をすることがあることを予め宣 言しておくこと。但し、撤回権発動のためには、それを正当とする具体的理由が必要 であって、単なる撤回権の留保は法的意味を持たない「例文」とされることがある。 (5) 法律効果の一部除外 ①法律効果の一部除外(例えば、限定運転免許など)。 従来は附款の一種であるとされていたが、最近は、行政処分の効果そのものであ - 132 - 2013 行政法 って、附款ではないと解する見解もある。 ②法律効果の一部除外は、法律の明文の根拠が必要であるとされている。 3、法定附款 行政庁の意思表示としてなされる附款ではなく、法律自体が条件や負担を課している ことがある。これを法定附款という。従来は、附款の一種として説明してきたが、正 確には附款というより、行政処分の法律効果そのものである。 ( 例 ) 土 地 収 用 法 § 29: 事 業 認 定 の 告 示 が あ っ た 日 か ら 1年 以 内 に 収 用 しないときは、事業認定は 4、附款の限 将来に向かって失効する。 裁決 の 申請 を 界 否 : 通 説 は 、 行 政 庁 は そ の 裁量 の 範囲 内 で 附 款 を 付 す こ と が で き る と 解している。但し、附款(法令用語としては「条件」)を付すことができる旨規定し て い る 例 は 少 な く な い 。 例 え ば 、 廃棄物 処 理 場 許 可 に 関 す る 廃棄物 処 理 法 の § 8の 2 ④ 、 同 法 § 15の 2④ な ど 。 ② 処 分 の 性質 上 、 あ る い は 当 該 処 分 に 関 す る 法 制 度 上 、 附 款 を 付 す こ と の で き な い 処 分 も あ る 。 帰化 の 許 可 に 条 件 は 付 せ ら れ な い と 解 さ れ る 。 ま た 、 通 説 は 建築 確 認 を 講 学 上 の 「 確 認 行 為 」 と 解 し て い る の で 、 法 律 上 の 効 果 を 制 限 す る 附 款 は そ の 性質 上 付 せ ら れ な い こ と に な る 。 し か し 、 許 可 行 為 と 解 す る と し て も 、 建築 確 認 は 羈束 行 為 ( 裁 量の余地のない行為)であるので附款を附すことはできないと解されている。 一 般 に 許 可 は 羈束 行 為 で あ る も の が 多 い が 、 許 可 処 分 を 行 う か ど う か の 裁量 は な い (つまり許可要件を満たせば許可しなければならない)とされていても、それに附 款を付すことが認められる例は少なくない(開発許可など)。すなわち、許可をす る か ど う か に 関 す る 裁量 の 有 無 と 、 ど の よ う な 内 容 の 許 可 を す る か の 裁量 の 有 無 は 別 々 に 検討 さ れ な け れ ば な ら な い 。 ま た 、 運 転 免 許 の よ う に 附 款 ( 眼鏡等 ) を 付 す べ き 要 件 と 内 容 が 決 ま っ て い る 場合 も あ る 。 ③ 法 律 の 趣旨 に 反 し た り 、 裁量 権 の 濫 用 と な る 附 款 ( 比 例 原則 に 違 反 す る 附 款 な ど ) は 、 ①法律の根拠の要 違法である。 5、附款と 争訟 だけの取消を求めることができるが、附 款 と 行 政 処 分 本 体 が 不 可 分 一 体 の 場合 は 、 附 款 の み の 取 消 は 許 さ れ な い と 解 さ れ て い る ( 後者 の 例 と し て 、 次 の 6 ① 判決 ) 附款を行政処分本体と可分であるときは、附款 6、附款が違法とされた事例 ① 労働委員 会 が 救済命令 を す る に 当 た り 、 労働者 に 一 定 の 行 為 を す る こ と を 条 件 と す る こ と は で き な い 。 東京 地 裁昭和 46.8.6 判決 ( 労民 22-4- 7 31、 判タ 2 7 0-298) こ れ は 公共企 業 体 等労働委員 会 が 、 労働組合側 に も 行 き す ぎ た 行 為 が あ っ た こ と を 認 定 し て 、 組合 が 遺憾 の 意 を 表 明 す る こ と を 停 止 条 件 と し て 救済命令 を 出 し た 事 件 。 判決 は 、 本 条 件 は 違 法 で あ り 、 そ れ は 救済命令全 体 の 違 法 を 招 来 す る と し て 、 救済 命令 そ れ 自 体 を 取 り 消 し た 。 但 し 、 差戻控訴審 で あ る 東京高裁昭和5 3.4.2 7判決 ( 労 民 29-2-262、 訟 月 24-6-12 7 8) は 本 件 条 件 を 適 法 と し た 。 ②消 防 法 の 危険物取扱所変更 許 可 処 分 に つ い て 、 隣接住民 の 同 意 書 を 提 出 す る こ と を 附 神戸 地 裁昭和5 0.9.12 判決 ( 民 集 36-6-11 55 、 款とすることは許されないとした事例。 - 133 - 2013 行政法 行 集 26-9-983) 、 5 91 -40) 。 大阪高裁昭和5 2.10.28 判決 ( 民 集 36-6-1161、 行 集 28-10-1190、 判 時 ③ デ モ 行 進 の 許 可 に 付 さ れ た 条 件 ( ジ グザグ 行 進 禁 止 や 進 路 変更 ) を 違 法 と し た 事 例 は 少 な く な い 。 例 え ば 東京高裁昭和5 1.3.2 5判決 ( 行 集 2 7 -3-3 75 、 判タ 334-121) 。 ※改 正 前 行 政 事 件 訴訟 法 の 時 で あ る が 、 デ モ 行 進 の 許 可 申請 に 対 し て 、 一 部 ルート ( 国 会 前 付 近 ) に つ い て デ モ 行 進 を 認 め な か っ た こ と が あ る 。 行 政 庁 ( 東京都公安委員 会 ) は 条 件 付 き 許 可 と か 一 部 不 許 可 と か 行 っ た が 、 こ れ に 対 し 、 東京 地 裁 は そ の 執 行 停止を認めて国会前でもデモ行進をしてよいといった。国会前のデモ行進は認めない という部分の執行停止をしたら国会前のデモ行進が許されることになるのだろうか。 申請 の あ っ た 状態 に 戻 る だ け で は な い だ ろ う か 。 裁判所 は ど ん な ロ ジ ック を 使 っ た の だ ろ う か 。 今 な ら ど の よ う な 訴訟 と 仮救済 が 可 能だ ろ う か 。 ( つ い で に い う と 、 本 件 は 執 行 停 止 決 定 に 対 す る 内 閣総 理 大臣 の 異議 が 出 さ れ た 事 件 と し て も 著名 で あ る 。 す な わ ち 、 東京 地 裁 の 執 行 停 止 決 定 に 対 し 、 時 の 佐藤栄 作 内 閣総 理 大臣 が 行 政 事 件 訴訟 法 § 2 7 ① に よ り 異議 を 述べ 、 東京 地 裁 は 同④ に よ り こ の 決 定 を 取 り 消 し た 。 ) 考えてみてください。 自 動 車 免 許 証 の 有 効 期 限 、 許 可 の 条 件 等 に 書 い て あ る 「 眼鏡等 」 、 「 オートマチック車 に限る」というのは、何にあたるのだろうか。 オートマ 限 定 普通 自 動 車 免 許 で 、 大型車 を 運 転 す る 場合 と 、 マニ ュ アルシ フ ト普通 自 動 車 を 運 転 す る 場合 と で は 、 ど の よ う な 違 い が あ る か 。 公共施 設 利 用 許 可 に 、 使 用 開 始 前 の 日 付 を 指 定 し て 、 「 こ の 日 ま で に 使 用 料 を 支払 う こ と 。 支払 が な か っ た 場合 、 許 可 は 効 力 を 失 う 。 」 と い う の は 、 何 に 当 た る か 。 も し 「 期 日までに使用料の納付がないときは、許可を取り消します。」と書いてあったらどうか。 近 隣住民 の 同 意 書 を 提 出 し な い と 許 可 し な い と い う の は 、 附 款 か 。 般職公 務 員 の 採 用 は す べ て 条 件 付 き の も の で あ る が ( 国家公 務 員 法 § 5 9① 参 照 ) 、 こ れは附款のいずれに該当するか。 一 - 134 - 2013 行政法