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行政法 II(8)
2012/06/01 興津征雄
Ⅱ 行政争訟(承前)
2 行政審判(準司法手続)(塩野・Ⅱ42 頁以下,宇賀・Ⅱ88 頁以下,宇賀・Ⅰ440 頁以下,LQ83 頁以下)1
《定義》「通常の行政機関の系統から独立した行政委員会又はそれに準ずる行政機関が,裁判類似の手続である
準司法手続によって一定の決定を行う場合のその決定そのもの,あるいはその決定にかかる手続を含めた制度全
体」(塩野・Ⅱ42~43 頁)
・事後手続(争訟手続)のみならず事前手続(行政手続)としても用いられる。
・行政審判手続に関する統一的な法律は存在しない。各個別法に定めがある。
(1)行政審判の類型2
①事後(争訟)手続として行われるもの
●行政処分に対する不服審査型
・公正取引委員会の審判手続(独禁 52 条以下)(→廃止法案が現在衆議院で審議中3)
・人事院の審理判定手続(国公 90~92 条)
・電波監理審議会による審理手続(電波 85 条以下)
・公害等調整委員会の土地利用裁定(土地利用調整 25 条以下)
●私人間の争訟裁定型
・労働委員会による不当労働行為救済手続(労組 19 条以下)←労働審判法に基づく労働審判とはまったく別物
・特許庁の特許無効審判(特許 123 条・131 条以下)
②不利益処分の事前手続として行われるもの
・内閣総理大臣(の委任を受けた金融庁長官)の行う金融商品取引法上の課徴金納付命令(金商 178 条以下)
・2005(平成 17)年改正前の公正取引委員会の排除措置・課徴金納付命令
(2)行政審判の制度的特徴
①組織(塩野・Ⅲ67~72 頁,宇賀・Ⅲ173~186 頁)
○行政委員会≒国家行政組織法 3 条 2 項の「委員会」
〔特徴〕
・職権行使の独立性
・合議体による意思決定
・準司法権限・準立法権限の行使
⇒あくまでも個別の設置根拠法に基づいてのみ認められる
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第二十七条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、第一条の目的を
達成することを任務とする公正取引委員会を置く。
2 公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
第二十七条の二 [略]
第二十八条 公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。
第二十九条 公正取引委員会は、委員長及び委員四人を以て、これを組織する。
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ジュリスト 1352 号(2008 年)の特集「準司法手続等の今日的意義―特例的行政手続の再検討」(特に 2 頁以下の座
談会),行政管理研究センター「準司法手続に関する調査研究報告書」(2007 年 10 月,http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~
iam/act_200710quasi_judical.html)などを参照。また,行政審判制度の原型となったアメリカ行政手続法の特徴を日本法
との対比で描き出すものとして,中川丈久『行政手続と行政指導』(2000 年)第 1 部を参照。
2
小早川・下Ⅰ102~104 頁,高橋滋「準司法手続・特例的行政手続の諸類型」ジュリスト 1352 号(2008 年)41 頁以下も
参照。
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公正取引委員会ウェブサイト(http://www.jftc.go.jp/)→最近の報道発表資料→平成 22 年 3 月 12 日付
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行政法 II(8)
2012/06/01 興津征雄
2 委員長及び委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大
臣が、両議院の同意を得て、これを任命する。
3 委員長の任免は、天皇が、これを認証する。
4 委員長及び委員は、これを官吏とする。
第三十条 委員長及び委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員長及び委員の任期は、前任者の残任期間とす
る。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
3 委員長及び委員は、年齢が七十年に達したときには、その地位を退く。
4 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のため両議
院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前条第二項に規定する資格を有する者のうちから、委員
長又は委員を任命することができる。この場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なけれ
ばならない。
第三十一条 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免さ
れることがない。
一 破産手続開始の決定を受けた場合
二 懲戒免官の処分を受けた場合
三 この法律の規定に違反して刑に処せられた場合
四 禁錮以上の刑に処せられた場合
五 公正取引委員会により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合
六 前条第四項の場合において、両議院の事後の承認を得られなかつたとき。
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・憲法 65 条との関係(→各自の憲法の教科書)4
・独立性の認められる実質的根拠
②手続
1)口頭審理主義(←→行審法は書面審理主義)
2)審判手続による事実認定(証拠は必ず両当事者の批判にさらされる)
3)三者構造(小早川・下Ⅰ105~107 頁)
・私人間の争訟裁定型: 審判庁
・不服審査型:
審判庁
・不利益処分型:
審判部局
⇒
⇒
⇒
私人 A vs 私人 B
処分庁 vs 私人 A
訴追部局 vs 私人 A (職能分離)
例)公正取引委員会の審判手続における審査官と審判官5
・審査官……審判手続開始前から調査に関与,審判に立ち会い証拠申出等(独禁 47 条 2 項・58 条等)
・審判官……審判手続を行う。当該事件について審査官その他として審査に関与した者は指定できない(独禁
56 条)
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第四十七条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
三 帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。
四 事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査す
ること。
2 公正取引委員会が相当と認めるときは、政令で定めるところにより、公正取引委員会の職員を審査官に指定し、
前項の処分をさせることができる。
3 前項の規定により職員に立入検査をさせる場合においては、これに身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示
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淺野博宣「「行政権は,内閣に属する」の意義」安西文雄ほか『憲法学の現代的論点〔第 2 版〕』(2009 年)149 頁以下,
特に 160~164 頁。
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なお,審査官・審判官は公正取引委員会の委員(5 人しかいない)ではなく,事務職員であるため,この点が裁判手続と
の相違として指摘されることがある(塩野・Ⅱ47 頁)。
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させなければならない。
4 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第五十六条 公正取引委員会は、審判手続を開始した後、事件ごとに審判官を指定し、公正取引委員会規則で定め
るところにより、第四十一条の規定による調査の嘱託及び第四十七条第一項各号に掲げる処分のほか、その後の
審判手続(審決を除く。次項、第六十三条及び第六十四条において同じ。)の全部又は一部を行わせることができ
る。ただし、当該事件について審査官の職務を行つたことのある者その他当該事件の審査に関与したことのある者
については、指定することができない。
2 前項の規定により指定された審判官(複数の者が指定された場合にあつては、そのうち指名された一人の者)は、
公正取引委員会規則で定めるところにより、同項の規定に基づき公正取引委員会が行わせることとした審判手続に
係る事務を指揮するものとする。
第五十八条 第四十七条第二項の規定により指定された審査官は、審判に立ち会い、原処分の原因となる事実及び
法令の適用並びに原処分が相当であること(当該審判が第八条の四第一項に係る事件についての審判である場合
にあつては、独占的状態に該当する事実)について主張し、証拠の申出その他必要な行為をすることができる。
2 審査官は、前項の場合において、原処分の原因となる事実及び法令の適用(当該審判が第八条の四第一項に係
る事件についての審判である場合にあつては、独占的状態に該当する事実)について変更(公正取引委員会規則
で定める範囲のものに限る。)の必要があると認めるときは、これを主張することができる。ただし、被審人の利益を
害することとなる場合は、この限りでない。
第五十九条 被審人又はその代理人は、審判に際して、公正取引委員会が当該事件についてした原処分又は第八
条の四第一項の規定により命じようとする措置が不当である理由を述べ、かつ、これを立証する資料を提出し、公正
取引委員会に対し、必要な参考人を審尋し、鑑定人に鑑定を命じ、帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物
件の提出を命じ、必要な場所に立ち入つて業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査し、若しくは調査を
嘱託することを求め、又は公正取引委員会が出頭を命じた参考人若しくは鑑定人を審尋し、若しくは調査を嘱託され
た者に質問することができる。
2 [略]
第六十条 公正取引委員会又は審判官は、審査官又は被審人若しくはその代理人から申出のあつた証拠を採用し
ないときは、その理由を示さなければならない。
第六十一条 審判は、これを公開しなければならない。ただし、事業者の事業上の秘密を保つため必要があると認め
るとき、又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。
2 審判においては、公正取引委員会規則で定めるところにより、調書を作成しなければならない。
第六十八条 第六十六条第二項から第四項まで及び前条の規定による審決においては、被審人が争わない事実及
び公知の事実を除き、審判手続において取り調べた証拠によつて事実を認定しなければならない。
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(3)行政審判の司法審査6
①実質的証拠法則(substantial evidence rule)
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第七十七条 公正取引委員会の審決の取消しの訴えは、審決がその効力を生じた日から三十日(第八条の四第一
項の措置を命ずる審決については、三月)以内に提起しなければならない。
2 前項の期間は、不変期間とする。
3 審判請求をすることができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。
第八十条 第七十七条第一項に規定する訴訟については、公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実
質的な証拠があるときには、裁判所を拘束する。
2 前項に規定する実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断するものとする。
第八十二条 裁判所は、公正取引委員会の審決が、次の各号のいずれかに該当する場合には、これを取り消すこと
ができる。
一 審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
2 公正取引委員会は、審決(第六十六条の規定によるものに限る。)の取消しの判決が確定したときは、判決の趣
旨に従い、改めて審判請求に対する審決をしな ければならない。
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山本隆司「行政審判と実質的証拠法則」『審判制度に関する今後の諸課題の調査研究報告書(平成 18 年度特許庁産
業財産権制度問題調査研究報告書)』(2007 年)186 頁以下[http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisank
en/1802all.pdf]
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*最判昭和 50・7・10 民集 29 巻 6 号 888 頁
「ところで、[独占禁止]法八〇条は、審決取消訴訟につきいわゆる実質的証拠の原則を採用し、審決の認定した事実
は、これを立証する実質的証拠があるときは裁判所を拘束する旨を定めている。したがつて、裁判所は、審決の認定事
実については、独自の立場で新たに認定をやり直すのではなく、審判で取り調べられた証拠から当該事実を認定するこ
とが合理的であるかどうかの点のみを審査するのであつて、右訴訟の提起があつたときは、裁判所は被上告委員会に
対して当該事件記録の送付を求めるべきものとされ(法七八条)、また、右訴訟においては、審判で取り調べられなかつ
た証拠の提出が制限され、裁判所が新たな証拠を取り調べる必要があると認めるときは、被上告委員会に事件を差し
戻すべきこととされている(法八一条)のは、これを前提とするものである。このような審判と訴訟との関係からすれば、
審判は、制度上訴訟の前審手続ではないけれども、審判で取り調べられた証拠はすべて当然に裁判所の判断資料とさ
れるべきものであり、右証拠につき改めて通常の訴訟におけるような証拠調に関する手続を行う余地はないと解すべき
である。」
②新証拠・新主張の提出制限
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第八十一条 当事者は、裁判所に対し、当該事件に関係のある新しい証拠の申出をすることができる。ただし、公正
取引委員会が認定した事実に関する証拠の申出は、次の各号の一に該当することを理由とするものであることを要
する。
一 公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかつた場合
二 公正取引委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、かつ、これを提出できなかつたことについ
て重大な過失がなかつた場合
2 前項ただし書に規定する証拠の申出については、当事者において、同項各号の一に該当する事実を明らかにしな
ければならない。
3 裁判所は、第一項ただし書に規定する証拠の申出に理由があり、当該証拠を取り調べる必要があると認めるとき
は、公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻 し、当該証拠を取り調べた上適当な措置をとるべきことを命じなけ
ればならない。
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*最判昭和 51・3・10 百選Ⅱ195 事件7
③審級省略
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第八十五条 次の各号のいずれかに該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る行政事件訴訟法第三条第一項に規定する抗告訴訟(同条第五項から第七項ま
でに規定する訴訟を除く。)
二 第二十五条の規定による損害賠償に係る訴訟
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※その他の不服申立て(塩野・Ⅱ53 頁以下,宇賀・Ⅱ85 頁以下),苦情処理・オンブズマン(塩野・Ⅱ58 頁以下,宇
賀・Ⅱ11 頁以下)は省略
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同判決に対する包括的な批判として,大渕哲也『特許審決取消訴訟基本構造論』(2003 年)。
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Comprehension check
行政審判(準司法手続)に関する次の各記述について,正しいものに○,誤っているものに×を付けなさい。
ア.行政審判とは,行政上の不服申立手続のうち,行政不服審査法が適用されないものをいうから,私人間の紛争
が行政審判手続で裁定されることはない。
イ.不利益処分をするための事前手続として行政審判が行われる例として,独占禁止法に基づく公正取引委員会
の審判手続がある。
ウ.公正取引委員会は,独立してその職権を行使し,内閣総理大臣の直接の指揮監督を受ける。
エ.公正取引委員会における審判手続には,行政手続法の聴聞に関する規定が準用される。
オ.公正取引委員会が審判手続を経て行った審決は,審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない
場合に,裁判所はこれを取消すことができる。
カ.公正取引委員会の審決に対する取消訴訟は,東京地方裁判所の専属管轄とされている。
Preparation
1.憲法の教科書・ノートを参照して,次の点について整理しておこう。
1)「司法権」(憲法 76 条)とは何か。司法権の範囲は,明治憲法と日本国憲法とで,どのように変わったか。
2)「法律上の争訟」(裁判所法 3 条)とは何か。それは,司法権の限界についてどのような意味を持つか。
3)学説上“客観訴訟”と呼ばれるのはどのような訴訟か。客観訴訟の裁判権を裁判所が持つことは,どのように正
当化されるか。
2.行政事件訴訟法の条文を見ながら,次のページの樹形図の空欄を埋めてみよう。
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行政法 II(8)
2012/06/01 興津征雄
行政事件訴訟(2 条)
主観訴訟
抗告訴訟(3 条 1 項)
(3 条 2 項・3 項)
(3 条 4 項)
(3 条 5 項)
(3 条 6 項)
申請型
(
号)
非申請型
(3 条 7 項)
無名(法定外)抗告訴訟
(4 条)
形式的当事者訴訟
(4 条
段)
実質的当事者訴訟
(4 条
段)
公法上の法律関係に関する
の訴え
客観訴訟
(5 条)
(6 条)
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号)
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