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アルジェリア - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

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アルジェリア - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
アルジェリア:
2013年炭化水素法改正と
新ライセンスラウンドの行方
2014年2月21日(金)
調査部 増野 伊登
1
目次
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
➣外資離れに直面するアルジェリア
➣注目される非在来型資源ポテンシャル
2.2013年炭化水素法改正の概要
3.新ライセンスラウンドの概要
4.イナメナス事件後の治安体制
2
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
資源大国アルジェリア
●LNGの商業的輸出を世界で初めて実施
●産出ガス量世界第10位、産油量世界第18位
(2013年BP統計)
●欧州向け主要ガス輸出国として地位確立
3
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
アルジェリアを悩ますジレンマ
油ガス生産量の減退
国内需要の増加
生産量低下を食い止めるには非在来型資源、辺境地、
地中海沖合を対象とした資源開発が必要
↓
技術・知見・インフラに乏しいアルジェリアにとって
外資の呼び戻しは急務
4
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
別添カラー資料6あり
原油
天然ガス
(BP統計2013: Thousand barrels daily)
(BP統計2013: Billion cubic feet per day)
原油生産量
天然ガス生産量
原油国内消費量
天然ガス国内消費量
9.0
2500
8.0
2000
7.0
6.0
1500
5.0
4.0
1000
3.0
2.0
500
1.0
2012
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1990
2012
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1992
0.0
0
5
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
エネルギー資源開発を巡る国内対立
外資呼び込みたい政府
意
見
の
相
違
資源ナショナリズム
(軍部・野党勢力)
2005年、新炭化水素法制定
●外資に対するSonatrachとのパートナーシップ義務撤廃
●Sonatrach権益比率51%から20~30%へ
国内からの反発を受け、2006年に急きょ法を改正
●Sonatrach権益比率再び51%に
●特別利潤税の導入→外資離れを促進
6
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
アルジェリアが陥った悪循環
イナメナス事件
の発生
生産量
の低下
技術・イ
ンフラの
不足
外資離
れ
2006年炭化水素
法改正
資源ナショナリズム
7
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
注目されるシェールガスのポテンシャル
EIA(2013年):シェールガスの技術的回収可能資源量を世界第3位
の707tcfと発表(中国、アルゼンチンに次ぐ)。米の665tcfを凌ぐ。
シェールガス技術的回収可能資源量(上位10か国)
(米国エネルギー情報局2013年報告)
1200
1000
800
600
400
200
0
8
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
国営Sonatrach:Bechar、Timimoun、Ahnet、Illizi、Berkine堆積盆の
原始埋蔵量は約5,000tcf、この内技術的回収可能量は741tcf。
シェールガスの原始埋蔵量(2013年Sonatrach調査)
堆積盆地
原始埋蔵量(tcf)
Timimoun
1,925
Ahnet
1,902
Berkine
954
Illizi
106
Bechar
53
合計
4,940
エネルギー鉱物資源省(MEM)報告を基に作成
9
1.アルジェリアにおける資源開発の現状
堆積盆分布図
Berkine
Timimoun
Ahnet
各種資料を基にJOGMEC作成
10
2.2013年炭化水素法改正の概要
アルジェリア・エネルギー鉱物資源省(MEM)主催ロードショー
日程:2013年12月10日~12日
場所:ジャカルタ
主催者側出席者: MEM大臣顧問2名ほか6名
参加者: 約40名
Pertamina(インドネシア)、Petronas(マレーシア)、PetroVietnam(ヴェトナム)、
PTTEP(タイ)、Oman Oil Company(オマーン)、Oil & Gas Development Company
(パキスタン)、ONGC(インド)らNOCほか、Mubadala(UAE)リビア事務所、LG
International(韓)、Talisman(加)ジャカルタ事務所ほか
JOGMEC以外の日本企業の出席はなし
所感: 東南アジアの主要NOCが一堂に会し、ある程度の関心の
高さが見られた。
11
2.2013年炭化水素法改正の概要
2013年炭化水素法改正のポイント
①非在来型資源、辺境地・沖合の資源開発に有利な条件設定
②在来型資源に対しても限定的にインセンティブ付与する一方、商
業性の高い鉱区については税率が上がる可能性大
③Sonatrach最低権益比率51%で変更なし。しかし探鉱に参加する
オプション有
④改正条文中に特別利潤税に関する記述はなし
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2.2013年炭化水素法改正の概要
●契約条件の改善
①契約期間の延長
評価期間
探鉱期間
在来・非在来
2年+2年の延長可
在来型資源
7年+6カ月+更に2年の延長可
非在来型資源
7年+6カ月+更に2年の延長可
在来型資源
25年+5年(天然ガス)+探鉱段
階で使用しなかった期間
開発生産期間
原油
40年+5年+5年の延長可
ガス
30年+5年+5年の延長可
非在来
13
2.2013年炭化水素法改正の概要
②Sonatrach参加比率
➣以前と同様最低51%
➣しかし、51%の範囲内であればSonatrachも探鉱段階から
参加(費用を負担)するというオプションが新たに設けられた
➣探鉱への参加比率はSonatrachが決定
ただし、入札に先んじて国家炭化水素開発庁(Alnaft)に対
する事前の通知が義務付けられる他、同比率は探鉱契約
の中に明記される
14
2.2013年炭化水素法改正の概要
●税制の改善
在来
税制上のゾーン区分け(A~D)に従い課税
①地表税
非在来 例外なくゾーンA(最安値)の条件を適用
在来
日産量とゾーンに従い5.5~23%の課税率
非在来
例外なく5%(未探鉱、辺境地、インフラ未
整備の鉱区にも適用)
②ロイヤルティー
15
2.2013年炭化水素法改正の概要
●税制の改善
石油収入税・所得税率算出時に適用される新鉱区分類方法
Case1
在来型資源 Case2
Case3
最大日産量が50,000 boe/dを下回る鉱区
最大日産量が50,000 boe/d以上の鉱区
地理的に探鉱開発が困難、また/あるいは
インフラが未整備である、十分に探鉱活動
が行われていない鉱区
非在来型資源(上記3Caseの内に入らない)
16
2.2013年炭化水素法改正の概要
●税制の改善
在来
③石油収入税
生産高ではなく収益率に基づいて算出
Case1・3の税率幅20‐70%、Case2は30‐70%
(改正前は30‐70%)
非在来 税率幅10~40%
在来
Case1・3には補完所得税として19%課税
(ただし収益率が20%を超える場合80%に)
Case2は改正前と同様の30%課税
非在来
補完所得税として19%課税
(ただし収益率が20%を超える場合80%に)
④所得税
17
2.2013年炭化水素法改正の概要
補足情報
●契約形態: 契約形態は利権契約のみ
●適用対象: すでに権益を獲得済であっても、改正案が
発表された2013年2月24日時点でまだ生産段階に入っ
ていなかったコントラクターについては、改正案の適用を
申請することが可能。
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2.2013年炭化水素法改正の概要
➣今次法改正は限定的な改善に留まる
●改善点:
①非在来や、インフラ未整備地、沖合の探鉱開発に有利な条件設定
②Sonatrachの探鉱参加オプション
●問題点:
①Sonatrach最低権益比率51%→政府の優位変わらず
②商業性高い鉱区、政府取り分が改正前よりも増える可能性高い
→すでに開発の進んでいる東部など、利益還元率の高い地域では
Sonatrachが大部分の権益握る
今年3月3日の入札説明会で公開される各鉱区データを基に
→商業性の評価、入札すべきかどうかの最終的な判断が必要
19
3.新ライセンスラウンドの概要
改正後初となる新(第10次)ライセンスラウンドの要点
●入札対象となる鉱区は全31鉱区(南西部17か所、北部5
か所、中部9か所)
→内17鉱区に非在来型資源のポテンシャルが見込まれる
●多くが辺境地、もしくは未開発の地域に位置する
●沖合鉱区(地中海沿岸)は今回含まれず
20
3.新ライセンスラウンドの概要
別添カラー資料7あり
入札対象鉱区(黄色の部分)
出典元:エネルギー鉱物資源省公開資料
21
3.新ライセンスラウンドの概要
新ライセンスラウンド日程
3月3日
入札説明会
3月17日~5月22日 データルームの開設
(データへのアクセス可能期間)
3月24日~5月29日 契約条件及び法的要件に関する説明会
6月5日
契約条件の修正案提出期限
6月30日
Alnaftが契約文書の最終版を発表
8月6日
入札(同日に入札状況が公開される)
9月5日
契約文書への署名
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3.新ライセンスラウンドの概要
●入札ラウンドに対する外資企業の反応
➣Repsol、Anadarko、Maersk、Eniなど既得権益組の欧米大手は
参加に対する明言避ける
➣Shellは上流事業参入に意欲見せる(2012年Sonatrachとシェー
ルガス開発に関するMoUを締結)
➣すでにシェールガス共同評価作業に関する合意を結んでいる
Shell以外のEni、BP、Talismanや交渉中のExxon Mobilなども入
札に参加する可能性あり
➣Pertamina(昨年ConocoPhillipsから油田権益買収)や、すでに
参入済みのPTTEPは、各々「いかなるビジネスチャンスも重要
視する」、「アルジェリアは自社の投資条件に見合った案件であ
る」と発言、積極性窺わせる。
→アジアNOCの今後の動向に注目集まる
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4.イナメナス事件後の治安体制
2013年1月、イナメナス事件発生
↓
軍部・諜報部門に対する信用が失墜
↓
ブーテフリカ大統領の権威基盤強化
内閣改造
軍部・諜報機関の組織編成敢行
↓
●東南端の国境地域及び上流施設に警備兵を増強
(リビアとチュニジアに接する国境に新たに12,000人を投入)
●一方、アルジェリア当局は自力で治安回復に当たる姿勢崩さず
民間企業や国際機関の警備関係者による油ガス田への立ち入り、
武器の携帯は依然として厳しく取り締まられている
24
4.イナメナス事件後の治安体制
●メジャーの対応
➣BPとStatoil、アルジェリア当局と安全強化のための交渉継続中
➣安全対策部の新設、緊急事態用の研修義務化、警備・情報担当
部門の強化を目的とした雇用の増加
➣部分的に社員駐在を再開。イナメナスへの駐在員派遣は決定保
留。
●北アフリカに進出するアジア企業からは楽観的な声も・・・
➣PTTEP(タイ):イナメナス事件以降も人員削減や撤退などの処置は
取っておらず、「その必要性は感じていない」 と発言
➣リビアに展開する東南アジア中小企業:「治安問題は特に不安材
料とは考えておらず、特別な対策も取っていない」
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4.イナメナス事件後の治安体制
今後注目すべき点
●大統領選(4月17日)の行方
➣ブーテフリカ大統領(76歳)再選有力、しかし健康問題に不安
➣外資参入を押しとどめたい軍部や野党勢力の巻き返し?
➣経済悪化(2012年のインフレ年平均率8.9%)で高まる国民の不満
政情安定の観点からは未だ予断を許さない状態
●イスラーム系テロ組織の活動状況
➣ベルモフタール「血盟団」司令官、西アフリカに規模拡大中との報道
➣米軍事当局:再度イナメナスと「同規模の襲撃実施する能力持つ」
➣アフリカ専門家たちの見解: ベルモフタールや「マグレブ・イスラーム
諸国のアルカイダ(AQIM)」、活動拠点である北アフリカ南部及びサ
ハラ一帯を中心に今後より地域性を強めていくか
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おわりに
●新ライセンスラウンドの行方
今次法改正は限定的な改善と見られ、また治安回復などの課題が
残る。一方で、シェールガスに関心を寄せる欧米大手や参入に積
極的姿勢を見せるアジア企業の存在もあり、不透明
●供給源の多様化やエネルギー安全保障上のリスク分散的観点か
ら、世界有数の資源ポテンシャルを持つ国として、天然ガスの宝庫
として関心を集める地中海沿岸諸国の一つとして、アルジェリアの
動向は今後も注視していく必要あり
●今後アルジェリアの欧州向けガス供給量が増えた場合、世界各国
のガス供給網や国際価格の変動に影響を与えることが予想され、
こうした変化に柔軟に対応できるよう態勢を整えておくことが重要
27
ご清聴ありがとうございました
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