...

トランスサハラ・ガスパイプラインに関する解説記事

by user

on
Category: Documents
54

views

Report

Comments

Transcript

トランスサハラ・ガスパイプラインに関する解説記事
かわら版
2009 年 8 月 3 日
No.165
―東地中海地域ニュース―
アルジェリア:トランスサハラ・ガスパイプラインに関する解説記事
(7 月 29 日付エル・ワタン紙)
7 月 29 日付エル・ワタン紙に掲載された、トランスサハラ・ガスパイプラインに関す
る解説記事の概要は、以下の通りである。
1.
プロジェクト概要
(1)
トランスサハラ・ガスパイプライン(TSGP)プロジェクトは、全長 4128 キロ(ナイジ
ェリア国内 1037 キロ、ニジェール国内 841 キロ、アルジェリア国内 2310 キロ)で、2015
年までに、ヨーロッパへ年間 200 億から 300 億立方メートルのガス輸送を開始予定。
(2)
約 20 の圧送基地が建設予定。地中海への出口は、西部はベニサフ、東部はエルカ
ラ、となる。
(3)
2.
総投資額は 120 億ドル、3 カ国合計の雇用創出は約 500 万から 600 万人の見込み。
解説記事
(1)
(アルジェリア、ナイジェリア、ニジェールの 3 カ国が建設に関する協定に署名し
た)2009 年 7 月から、TSGP プロジェクトは公式にスタートし、生産開始は 2015 年に決
められた。TSGP は、ナイジェリアからニジェールとアルジェリアを通ってヨーロッパ
へとガスを供給する。同プロジェクトをめぐっては、関係各国で数年にわたって度重
なる議論が行われ、ついにナイジェリアのアブジャで確固とした協定が締結された。
(2)
この野心的なプロジェクトは、ヨーロッパへのガス供給を担う有望なプロジェクト
となると考えられている。フランスの TOTAL、ロシアの Gazprom、イギリスの Shell、
イタリアの Eni など多くの巨大石油会社が関心を寄せている。それらの企業はすでに、
同ガスパイプラインの完成で生じる潜在性と経済的影響を明らかにしている。だが同
時に、同プロジェクトは、複雑さや高費用の他、2006 年以来多くのトラブルを抱える
地域における政治的デリケートさの問題を、当初から指摘されている。
(3)
実際、3 カ国政府による協定締結の数時間後には、ナイジェリア南部の主要武装グ
ループのナイジャーデルタ解放運動(MEND)がプロジェクトの破壊をほのめかした。し
かし、この脅しは、何年もの交渉と調査の後にようやく具体的になり、アフリカに新
たなガス資源地図をもたらし、関係国経済に多くの外貨をもたらす同プロジェクト実
施の熱意を喪失させるようには見えない。
(4)
2003 年以来アルジェリアは、プロジェクトが実を結ぶよう努力を続けてきた。プロ
ジェクトは非常に高収益で、他のガスパイプライン・プロジェクトとともに、ヨーロ
ッパへのガス供給能力を向上させ、アルジェリアを重要な潜在国にしうると考えられ
ている。すでに、2003 年のプロジェクト構想のスタート時から、エネルギー鉱業大臣
は、アルジェリアがヨーロッパとアフリカ大陸の間における「エネルギーの橋頭堡
(tete de pont energetique)の役割を強化したいと宣言し、その政治的立場を告知し
ていた。
(5)
2008 年ヘリル大臣は、AU 諸国エネルギー大臣会合の記者会見で、この大型プロジ
ェクトの実現は、
「ナイジェリアに追加的な財政源をもたらし、ニジェールの対象地域
にガスを供給し、アルジェリアの政治経済計画にポジティブな影響を与えるだろう」
と述べた。
(6)
他方でこのプロジェクトの主要関係国は、NEPAD の枠組みにおける構想のスタート
時から、ソナトラックやナイジェリアの石油公団(NNPC)によってイギリスの調査会社
に発注された環境・リスクの経済学的調査によって証明されたプロジェクトの収益性
を強調した。イギリスのコンサルタント会社 Penspen IPA とソナトラック、NNPC の間
で 2005 年 5 月に調印された総額 204 万ドルの契約によって、2006 年、同プロジェクト
の技術・経済に関する事業採算性が明らかになった。調査は、市場や資源、経済・財
政面、エンジニアリング、パイプラインに必要なインフラ、環境への影響などに関し
て実施された。
(7)
同ガスパイプラインへの投資は、100 億から 120 億ドルと見積もられ、プロジェク
トの創始者(持ち分の 90%はソナトラックと NNPC によって、10%はニジェールによっ
て保有される)は、すでにパートナーを見つけるためにヨーロッパにおいて活動してい
る。2008 年、主要消費国に対してプロジェクト概要を説明し、関心を持つ投資家を見
つけるために、ブリュッセルで欧州委員会との会合が企画された。ヘリル大臣による
と、アルジェリア、ナイジェリアおよびニジェールは、
「第三者に自らの持ち分の一部
を供与することを決定する可能性」について言及した。同大臣によると、その持ち分
は「それぞれの参加に対して 2%から 3%」の割合で「(合計)約 20%の 20 億ドル」と
なると見込まれている。
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送、引用はご遠慮ください。
ご質問・お問合せ先 財団法人中東調査会 TEL:03-3371-5798、FAX:03-3371-5799
Fly UP