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最近の注目すべき動き - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
北アフリカ発 シェールガス革命到来か -アルジェリアでのシェールガス開発、事業環境改善の動き- 2012年9月13日 石油調査部 西村 昇平 1 最近の注目すべき動き 1.シェールガス開発を巡る動き 2.石油法改正の動き 3.海上鉱区等入札の動き 4.既契約案件の契約条件改善 2 アルジェリアのイメージ • 90年代のテロの時代 • 経済条件が厳しい ➤2006年の石油法改正 ➤特別利潤税による高税率 ➤ソナトラックの51%以上の事業参加 • 石油開発 冬の時代 ➤2008年以降の国際入札の低迷 3 天然ガス大国 アルジェリア • 世界で初めてLNGを出荷(商業的) • 世界で第4位のLNG輸出国 • マーケットは欧州市場 • 輸出インフラの充実 ➤国際ガスパイプライン(3本) ➤LNG液化施設(2カ所)が稼働中 ➤欧州地域は14%天然ガス輸入をアルジェリア に依存 4 EUはアルジェリアに 14%依存 エジプト 2% リビア 3% EUは北アフリカに 19%依存 その他 9% ナイジェリア 2% ロシア 34% カタール 5% EUの天然ガス輸入先 (Europe Energy Portal:2009年) アルジェリア 14% ノルウェー 31% 5 シェールガス開発に向けた動き • 原始埋蔵量653Tcf (EIA, 2011年2月) • 他の北アフリカ諸国でも ➤エジプト、チュニジア、モロッコでも • 欧州におけるシェールガス開発低調 ➤環境への懸念 モラトリアム • 欧州ではなく北アフリカでのシェールガス革 命が欧州市場に影響 6 7 シェールガス技術的回収可能資源量 国名 欧州地域合計 ポーランド フランス ドイツ オランダ ノルウェー 英国 デンマーク スウエーデン トルコ ウクライナ リトアニア その他 Tcf 639 187 180 8 17 83 20 23 41 15 42 4 19 国名 北アフリカ地域 アルジェリア リビア チュニジア モロッコ 北米地域合計 アメリカ カナダ メキシコ Tcf 550 231 290 18 11 1931 862 388 681 米国エネルギー情報局(2011年2月) 8 シェールガス開発 各社の動き 企業名 場所 状況 共同評価作業実施済み。ENIが既にシェールガスのポテ ンシャル評価を終えており、ソナトラックと新たなMOUを 締結して掘削作業を実施予定。 1 ENI 2 Shell Moudire盆地 ソナトラックと12カ月間の共同評価作業実施を合意済み。 評価対象は、シェールガス及びシェールオイル。近隣(南 西)に操業中のIn Salahガス田(BP/Statoil)あり。 3 BP Illizi盆地 Bourarhet鉱区 水圧破砕をすでに導入。Bourarhet鉱区は2005年の第6 次入札にてBPが権益を取得。 4 ExxonMobil 5 Total Ahnet鉱区 Ahnet鉱区は2011年Totalが権益を取得。当鉱区ではタ イトガス狙い。2015年から開発を目指しているものの、 石油法の改正待ち。 6 タリスマン Illizi盆地、Berkine 盆地付近 共同評価作業実施 7 ソナトラック Ahnet盆地 Ahnet1 掘削中。ターゲットはSilurian、Frasnian層。今後、水平 坑井を含む2坑井を掘削予定。 共同評価作業実施予定 9 2013年1月一部修正済 10 シェールガス開発技術革新 • 2000年代からの技術革新 ➤主要な技術 1.水平坑井 2.水圧破砕 3.マイクロサイスミック (割れ目の広がりモニタリング) 11 シェールガス開発技術 12 開発には最新鋭の技術が必要 • シェールガス開発には最新鋭の技術が必要 • ソナトラックが独自に開発をすることは難しい ➤ソナトラックには高い技術力と経験のある外 国石油会社の誘致が必要不可欠 13 石油法改正案の内容を確定 • ソナトラックは、非在来型資源開発を可能に する石油法改正案の内容を確定したと発表 ➤ 「外国石油会社との開発契約における財務 条件を大幅に緩和し、投資額が大きく、高い 探鉱リスクの伴う鉱区でのシェールガス開発 を可能にするもの」 ➤法改正に伴い地中海沿岸の海上鉱区の入 札実施も可能に 14 事業環境の改善 • アナダルコ社の保有のEl Merk権益 • 2006年の石油法改正の影響を受け、特別利 潤税が導入 • 国際仲裁の結果、生産分与契約内容を改善 • 支払済の18億米ドルを回収予定(アナダルコ 社は、18億米ドル分の原油を取得) • ムーディーズの格付け上方修正 15 ブーテフリカ大統領と経済成長 • ブーテフリカ大統領就任前の90年代は、テロ による暗黒の時代 • 同大統領就任後、国内情勢安定、経済成長 • アルジェリア国民の生活向上 • エネルギー消費が1.5倍 • 原油と天然ガスの国内消費量が85%、30%増 加(1999年比) • 多くは発電需要(1999年比で総発電量倍増) 16 アルジェリアのGDP成長率 (IMF2012: Percent change) 8 ブーテフリカ大統領再選 新石油法制定 7 6 ブーテフリカ大統領就任 5 石油法改正 4 3 2 1 ブーテフリカ大統領3選 0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ‐1 ‐2 ‐3 17 アルジェリアの現状 • ガスがない! ➤パイプライン及びLNGによる推定輸出能力の 7.5Bcfd(2.7Tcf/年)を大きく下回る、4.8 Bcfd( 1.8Tcf/年)まで下落 ➤天然ガスを輸出するインフラは存在するにも 関わらず、そこに送るべきガスがない 18 天然ガス (BP2012: Billion cubic feet per day) 9.0 天然ガス生産量 8.0 7.0 天然ガス輸出量 天然ガス国内消費量 推定輸出能力 7.5Bcfd (パイプライン及びLNG) 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 1990199119921993199419951996199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011 19 20 天然ガス不足の原因は? • 原因 ➤経済成長、人々の生活の質の向上 ➤エネルギー内需の拡大 ➤エネルギー政策の失敗 ➤何が起こったか? 21 エネルギー政策の失敗 • 2006年石油法改正 • 上流事業環境の悪化 • 外資離れ ➤既存油ガス田の貯留層の適切な管理に問題 ➤増産技術の導入に遅れ ➤新規開発事業の立ち上げの遅れ 22 何が起こったか • 2008年から現在まで3回の入札ラウンドが開 催されたものの何れも入札が不調 • 2008年以降は原油・天然ガスの生産が共に 急激に減少 23 原油生産 14%▼ 原油輸出 22%▼ ※2005年比 天然ガス生産 12%▼ 天然ガス輸出 23%▼ ※2005年比 24 石油法改正案通過の見通し • 今年5月の下院選挙で、ブーテフリカ大統領 が率いる与党連合が勝利 • アルジェリアでは経済改革政策を推進する世 俗主義の与党が勝利 • アラブの春以降、隣国のチュニジアやエジプ トでは、いずれもイスラム主義政党が勝利 • 政権基盤は盤石? • 9月に内閣改造実施 25 エネルギー鉱物大臣が再任 • • • • 内閣改造の結果 ユーセフィ・エネルギー鉱物大臣が再任 エネルギー政策を中心となって牽引 今年中に石油法案可決に向け審議予定 • 今次内閣は、2014年の大統領選に向け準備 を進めていく 26 国内の動き • 今年の夏には電力需要が供給を昨年より14 %上回った結果、8月には停電も発生 • ここ数年で一次エネルギーの消費が増大 • 原因は国民の生活が豊かになったこと • 一方で、この豊かさの上昇率とは逆の動きが 原油・天然ガスの生産・輸出に発生 • 国家収入にも影響を与えつつある 27 石油法の改正は急務 • エネルギー政策の遅れが、国民の生活レベ ルの低下を招きつつある状況 • 国内への電力供給は政治への影響大 • アルジェリア政府は、人々の不満が高まる前 に、この問題に迅速に対応する必要がでてき ている • 外資の導入を促進すべく、石油法改正議論 が進展する可能性あり 28 まとめ • 最大のポイントは、シェールガス開発や海上 鉱区での炭化水素の開発を可能にする石油 法の改正がどのように進展するか • 石油法改正が実現するとシェールガス鉱区 や海上鉱区の入札への動きが加速する可能 性があり ➤アルジェリアのエネルギー鉱物省、ソナトラッ クの行政能力は周辺国の能力と比べ高い 29 終わり 30