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電力中央研究所報告 情 報 通 信 光ファイバを活用したマイクロ波無線設備の耐雷 性能向上(その4) -光ファイバアンテナ給電システムの試作と性能検証- キーワード:耐雷,マイクロ波無線設備,光電波融合, 光ファイバ給電,雷サージ試験 背 報告書番号:R15003 景 当所ではマイクロ波無線設備の耐雷性能向上のために導波管の代わりに電気絶縁に優 れた光ファイバを利用したシステム(以下,光ファイバアンテナ給電システム)を提案 している 1)(図 1) 。光ファイバアンテナ給電システムには光電波融合 2)と光ファイバ給 電 3)を適用しており,実用化にはアンテナへ供給する無線送信出力の向上および,実無 線機を用いた通信性能の評価が必要である。 目 的 無線送信出力を向上させるために,光ファイバ給電で動作する送信信号用の高周波増 幅器を開発する。開発した高周波増幅器を組み込んだ光ファイバアンテナ給電システム を試作し,その通信性能の評価を行う。 主な成果 1.光ファイバ給電で動作する高周波増幅器の開発 市販のフォトディテクタ(PD)からの無線送信出力を増幅するために,光ファイバ給電 で動作可能な低消費電力のモジュールを多段で組み合わせた高周波増幅器を開発した。 その結果,高周波増幅器からの飽和出力として 138 mW を得ることができた。 2.実無線機を用いた通信性能評価 6.5 GHz 帯の実無線機(128QAM 4),104 Mbps/16QAM,32 Mbps)を用いて送受信のビ ット誤り率(BER)と無線送信出力の測定を行った(図 2) 。 送信系では,開発した高周波増幅器を低歪みで線形性の高い領域で動作させることで, BER が 10-7 以下を満足した状態で,128QAM,104 Mbps の無線信号を用いた際には約 15.5 mW(図 3) ,相対的に歪に強い 16QAM,32 Mbps の無線信号を用いた際には約 48.9 mW の無線送信出力を得ることに成功した。 受信系では,128QAM 適用時においても,フェージング等による 20 dB 以上の入力信 号強度の変動に対応できる良好な性能を確認した。 以上により,送信系・受信系とも光電波融合と光ファイバ給電を用いた光ファイバア ンテナ給電システムで無線送信出力が比較的小さい無線機に対応可能な実用的な通信性 能を得ることができた。 注 1)池田研介, 「光ファイバを活用したマイクロ波無線設備の耐雷性能向上(その 3)− 実無線機による通信品質評価と 信頼度確保の検討 −」電力中央研究所 研究報告, R14006, 2015。この報告では,アンテナ側 O/E 変換装置からの無 線信号出力が 0.1mW 以下であり,送信出力の向上が不可欠であった。 2)光アナログ変調を用い,無線信号を光信号に変換し,光ファイバで伝送する技術。光ファイバは低損失であるの で,高周波無線信号の長距離伝送が可能である。 3) 高出力のレーザ光を光ファイバで伝送し,その光を電力に変換することで電力供給を行う技術。 4)QAM(quadrature amplitude modulation(直交振幅変調) )は搬送波の振幅と位相に情報を載せる変調方式であり,振 幅と位相の組み合わせパターンを増やすことで,それぞれの組み合わせに複数ビットの情報を持たせることがで きるため,高い周波数利用効率が実現できる。 雷 1.00E-03 -3 10 アンテナ側 O/E・ E/O変換装置 (光ファイバ給電で動作) 1.00E-05 10-5 光ファイバケーブル 離隔 局舎側 O/E・ E/O変換装置 大地電位上昇 1dB 1.00E-06 10-6 通信ケーブル (光ファイバ) 局舎 サージ電流 除去 X 従来の構成 無線機直結 ビット誤り率 (BER) パラボラ アンテナ E/O,O/E使用(TX ATT26dB) (15.5mW 出力) 1.00E-04 10-4 配電線 1.00E-07 10-7 特性劣化 0.6dB 1.00E-08 10-8 無線機 10-9 1.00E-09 電源 大地電位上昇 の影響減少 1dBの劣化 許容ライン 10 1.00E-10 -10 -67 サージ電流低減 -65 -63 -61 -59 -57 実無線機Bへの入力信号強度 [dBm] O/E: 光/電気,E/O:電気/光 図 3 送信系 BER 測定結果 (128QAM, 104Mbps) 図 1 アンテナ~無線機間に光電波融合を用いた構成 今回の検討では,特性劣化量の許容値を既存の無 線機のマージンに十分収まると考えられる 1dB に 設定した。 光ファイバアンテナ給電システム 局舎側O/E・ E/O 実無線機A 変換装置 光ファイバ 送信機 f1 f1 E/O f2 f2 O/E 電源供給 LD 共用器 送信信号 アンテナ側O/E・E/O 変換装置 新規開発 O/E 受信機 光ファイバ給電 受信信号 光ファイバ給電 200m f1 送信 信号 無線送信 出力測定 PPC ATT f2 E/O 電源供給 LD BPF 実無線機B PPC BPF 伝搬 損失 受信 信号 受信機 f1 共用器 f2 送信機 アンテナ 共用器 BERT E/O: 電気/光, O/E: 光/電気, LD: レーザダイオード, PPC: 光電力変換器, BPF: 帯域通過フィルタ, BERT: ビット誤り率測定器, ATT: 可変減衰器, :高周波増幅器 :サーキュレータ 送信系測定時 受信系測定時 f1=6740MHz (128QAM, 104Mbps) f2=6580MHz (128QAM, 104Mbps) f1=6820MHz (16QAM, 32Mbps) f2=6660MHz (16QAM, 32Mbps) 図 2 実無線機を用いた通信性能測定実験系 関連研究報告書 「光ファイバを活用したマイクロ波無線設備の耐雷性能向上(その1) -光電波融合技術を用いた構成の提案と通信回線設計-」R12006(2013.5) 「光ファイバを活用したマイクロ波無線設備の耐雷性能向上(その2) -無線送受信系に光電波融合技術を用いた通信品質特性の評価-」R13008(2014.4) 「光ファイバを活用したマイクロ波無線設備の耐雷性能向上(その3) -実無線機による通信品質評価と信頼度確保の検討-」R14006(2015.5) 研究担当者 池田 研介(システム技術研究所 通信システム領域) 問い合わせ先 電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 03-3480-2111(代) E-mail:[email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] Ⓒ 2016 CRIEPI 平成28年7月発行