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故郷の文化、食、自然 - 全国上下水道コンサルタント協会

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故郷の文化、食、自然 - 全国上下水道コンサルタント協会
水坤
寄稿
■ 1.はじめに
故郷の文化、食、自然
株式会社 日水コン/東北支所/支所長 大久保昌彦
左右上部の仕掛けをせり出して拡張変化し、道幅
一杯に構えて見得を切るポーズは、まさに迫力満
私の故郷は青森県八戸市です。そこで、誠に恐
点です。
縮ですが、本稿をお借りして、私の拙い “ お国自
山車1台当たり、大太鼓1つ、小太鼓5つ、山
慢 ” を披露させていただきたいと思います。
車の引き綱を引っ張る「引き子」やお囃子など、
自慢のメニューは、八戸地方の代表的な “ 文化
総勢 200 人前後で運行しますが、神社・御輿列を
(お祭り)”、“ 食(グルメ)” と “ 自然(名所)” に
含む山車行列の全長は延々3km にも達し、沿道
ついてです。
の観客を飽かすことなく楽しませます。私も小学
やや欲張りメニューですが、どうぞ気分転換に
校時代、弟と一緒に町内山車の引き子に参加して
でも、気楽にお目通し頂けますと幸いです。
いましたが、夕方、終日の運行を終えてヘトヘト
になって山車小屋に帰着後、褒美にもらって二人
■ 2.夏の祭り、冬の祭り
で即かぶりつく塩むすびと茄子の一本漬けの、あ
江戸時代を起源とし、290年の歴史と伝統を誇る
いています。
東北屈指の大規模祭礼(否、地元は「日本一の山
八戸観光コンベンション協会によると、昨年開
の格別の美味さは、今でも懐かしく脳裏に焼き付
車(だし)祭り!」と自信満々)
。厳かな神社行列
催期間中の入り込み客数は 89 万人。真夏の街(昼
と華やかな 27 台の山車行列。これが八戸の夏祭り
夜)を彩る豪華絢爛な山車は、観る人全てに感動
『八戸三社(さんしゃ)大祭』
(国指定重要無形民
を与えてくれます。是非、お出でになってご覧下
俗文化財)で、毎年7月 31 日から8月4日に開催
さい。
されます。
なお、八戸市内で通年山車(ミニチュア版含む)
町の安泰と五穀豊穣を願い、法霊大明神(おが
が見られる所は、JR八戸駅2階の「八戸総合観光
み神社)から新羅神社まで、雅で厳かな御輿行列
プラザ」(ミニ版)、同八戸駅東口にある八戸地域
が練り歩いたのが始まりと言われています。その
地場産業振興センター「ユートリー」の1階(実
後、人形屋台、神楽や虎舞など町民が編成した一
物)、八戸ポータルミュージアム「はっち」2階:
行も参列するようになりました。そして明治に入
市内三日町(ミニ版)、八戸市本庁舎1階(ミニ
って、神明宮も加わり三社祭になりました。
版)です。写真-1に、ユートリーのものを示し
祭りの華は何といっても山車です。明治以降、
ます。
時代と共に趣向と工夫が凝らされ、人形屋台から
(注1)の一つ、凍
次に、
「みちのく五大雪まつり」
現在の山車へと進化、今では各氏子町内が華麗さ
てついた土を踏みしめ、烏帽子(えぼし)が寒空
を競って山車作りをするようになりました。
神話、
を舞う、厳しい冬が育んだ春を呼ぶまつり。これ
軍記、伝説、童話、史実などを題材にした山車行
が『八戸えんぶり』(国指定重要無形民俗文化財)
列、その華やかさに心が躍ります。近代の山車は、
です。毎年、2月17日から2月20日に八戸一円で
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写真-1 ユートリー内の展示の様子〔実物〕
(カラーでなくて残念です。)
開催されます。
写真-2 烏帽子の展示〔八戸駅みどりの窓口〕
(金・銀・錦で、とても煌びやかです。
)
(写真-2)や、八戸市本庁舎1階ロビーに展示さ
えんぶりは、年の始めに豊年満作を祈る民俗芸
れています。
能で、800 年ほど前の鎌倉時代の初め、甲斐の国
八戸観光コンベンション協会によると、今年の
からこの地に入った南部氏の始祖、南部光行の家
開催期間中の入り込み客数は約27万人。初日昼の
来によって始められたとされています。
全組勢揃いによる “ 圧巻 ” の「一斉摺り」、連日夕
「太夫」と呼ばれる舞手が、えんぶりの象徴とも
暮れからの “ 幽玄の世界へといざなう ”「かがり火
言える “ 馬の頭 ” を象った華やかな「烏帽子」を被
えんぶり」は必見です。
り、頭を大きく振る独特の舞い「摺(す)り」が
大きな特徴です。太夫の大地への祈りを込めた勇
壮な入魂の摺りは、稲作の一連の作業である種ま
■3.グルメ
きや田植えなどの動作を表しています。また、え
八戸のグルメといえば…そうです、『せんべい
んぶり摺りの合間に行われる子供達の可愛らしく
汁』です。今やご当地グルメによる町おこしイベ
て元気一杯の「えびす舞」や「大黒舞」などの祝
ントとして全国に知られるようになった「B級ご
福芸は、一連の荘厳なえんぶり芸の中にあって、
当地グルメの祭典!B‒1グランプリ」。このグラ
思わず見る人の笑みを誘い、癒してくれます。
ンプリは、八戸市民団体「八戸せんべい汁研究所」
えんぶり組は、3~5人の太夫が中心となり、
のプロデュースにより誕生したものであり、平成
囃子手、唄い手、祝舞いの子供らの20~30人で編
18 年、第1回B‒1グランプリが八戸市(八食セ
成されます。毎年 30 数組が活動する中、各組の大
ンター)で開催されました。
人達から次代を担う子供達への芸の伝承が、連綿
東日本大震災では、全国のグルメ団体との絆の
と営まれています。
下、同研究所が各被災地で炊き出しの支援活動を
通年、えんぶりが見られる所として前出の八戸
展開しました。そして昨年10月の第7回B‒1グラ
駅「八戸総合観光プラザ」と市内の「はっち」
(い
ンプリ北九州大会で、遂に「八戸せんべい汁」が
ずれも音声画像)や、
「ユートリー」1階の『えん
悲願の “ ゴールドグランプリ” に輝いたのです。先
ぶりガラス壁画』があります。この壁画は八戸在
に開催された同年8月のロンドン五輪レスリング
住のガラス工芸家、石橋忠三郎氏によるもので、
女子において、せんべい汁で育った八戸市出身の
6種のステンドグラス工法を駆使した日本随一の
伊調、小原両選手の優勝(伊調選手は3連覇、私
もの。最大高 2.9m、長さ 9.05m、重量 450kg の見
の中学の同窓)に続く快挙(3っつ目の金)は、大
ごたえのある大作(末尾:写真-5)です。また
いに地元・被災地を沸かせ、改めて「八戸」の名
「烏 帽 子」(実 物)は 、八 戸 駅 み ど り の 窓 口
が日本全国とともに世界中に知らしめられました。
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ウミネコは漁場を知らせてくれる鳥であり、弁
天様の使いとして大切にされてきたため、人家の
近くにありながら、島全体が別天地なのです。毎
年2月~7月の繁殖期には、4万羽近くのウミネ
コが乱舞、親子して境内を所狭しと闊歩する光景
は圧巻です。この期間中の参拝では、ウミネコ爆
弾(糞)の洗礼を受ける恐れがありますので傘が
必携ですが、むしろ被弾しても “ 運が付いた!” と
して、神社から「会運証明書」を賜ることが出来
るというユニークな御利益が用意されています。
写真-3 支所恒例「せんべい汁賞味会」の様子
(大好評につき、毎回完売御礼です。)
それと、神社で頒布している「かぶあがりひょう
たん御守」が商売繁盛・金運・仕事運などに効く
ということで全国的な話題となり、一時品薄状態
せんべい汁は、肉や魚等で出汁をとった鍋に、
に陥るほどに。お陰様で神社の株(蕪)も大いに
旬の野菜やキノコと一緒におつゆ用、鍋用のせん
上がっています。
べいを割って入れ、煮込んで作る八戸地方独特の
先の東日本大震災では、神社周辺も津波による
家庭料理。食べ方は「鶏×醤油系」
、
「魚×塩系」
、
被害を受けています。島の麓の鳥居から頂上の神
「馬肉×味噌系」とバリエーションに富み、いずれ
社入口(標高約16m)までの参道は、70段の階段
も味わい深く、身も心も温まります。さらに、
『せ
が続いていますが、途中6段目に昭和三陸大津波
んべい汁で地酒を酌み交わす』こと最高です。是
(S8年3月3日)の 4.1 mの浸水標識(標高)が、
非!お試しください。写真-3に、支所恒例の「せ
さらに16段目には東日本大震災(H23年3月11日)
んべい汁賞味会」の一コマを紹介します。
による5.3mの浸水標識が設置されています。麓周
辺の標高が約2mですので、2~3mを越える津
■4.復興公園・北の玄関
波浸水深であったことがわかります。幸いにも、
八戸市にある国の名勝“種差海岸”の最北端に位
から、周辺地域での大きな人的被害はありません
置する『蕪島(かぶしま)』(写真-4)。本年5
でした。
月、震災復興の一環として創設された『三陸復興
読売巨人軍の花形・坂本選手は、高校時代を八
国立公園』の北の玄関口に生まれ変わりました。
戸(蕪島に近い光星学院)で過ごしていますが、
島も含め、高台(海岸段丘)が近くであったこと
そして蕪島から、近代日本画の傑作である東山魁
夷の『道』のモデルとなった種差海岸道を経て福
島県相馬市松川浦に至る長距離自然歩道「みちの
く潮風トレイル」の北の出発点にもなり、“地域の
宝から日本の宝へ!” と大きな期待が寄せられて
います。
蕪島は、間近でウミネコ(カモメ科の海鳥)を
観察できる国内唯一の繁殖地であるため、国の天
然記念物に指定されています。面積は約 1.8ha で、
かつては陸から離れた島でしたが、戦前の埋立に
より陸続きに。頂上には弁財天を奉る蕪嶋神社が
鎮座し、700 年以上にわたり、広く地元住民の信
仰を集めています。
写真-4 蕪嶋神社の参道〔5月中旬〕
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写真-5 えんぶりガラス壁画 〔ユートリー1階〕
(囃し手、太夫の摺り、祝福舞の子供ら等、えんぶり組の一連の様子が描かれています)
この参道階段が恰好のトレーニングコースだった
まれる等、地元との深い結びつきに、人知を越え
とか。坂本選手の息づかいを感じ、汗が染み込ん
るものをも感じています。
だ階段を踏み締めながら参拝してみてはいかがで
ここに、改めて “ 感謝報恩の志 ” とともに “ 故郷
しょうか。
への誇りの思い ” を新たにしているところです。
どうぞ皆様、蕪島の御利益をお授かりいただけ
最後に、お国自慢 “ 納めの一言 ” を。
ればと思います。
(注2)
『おんでやぁんせ! おあがりやぁんせ!』
■5.おわりに
どうぞ八戸で、金メダル級の感動をご体験下さい。
昭和51年、私は地元八戸から現在の会社に入社
しました。
幸運にも郷里が弊社の重要顧客であり、
後に長きに渡って、八戸市担当の専任技術者とし
て数々の下水道事業に携われる機会に恵まれたほ
か、業務で八戸を訪れる度に、地元同窓の皆様の
ご活躍ぶりに励まされる等、本市と弊社のご縁に
深く感謝しています。加えて昨年度、地元母校の
実習生が入社するという母校と弊社のご縁にも恵
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注1)みちのく五大雪まつり
① 青森県八戸市「八戸えんぶり」 (2/17~2/20)
② 青森県弘前市「弘前城雪燈籠まつり」 (2/ 8~2/11)
③ 岩手県雫石町「いわて雪まつり」 (2/ 1~2/11)
④ 秋田県男鹿市「なまはげ柴灯まつり」 (2/ 8~2/10)
⑤ 秋田県横手市「横手かまくら」 (2/15~2/16)
注2)おんでやぁんせ! おあがりやぁんせ!
おんでやぁんせ =どうぞ お越し下さい
おあがりやぁんせ=どうぞ お召し上がり下さい
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